(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に模式的に示すように、本発明の太陽電池100は、光電変換部50の一主面上に集電極7を備える。集電極7は、光電変換部50側から順に、第一集電極71、第二集電極72を含む。光電変換部の裏面側表面上には第一裏面電極81、第二裏面電極82を含む裏面電極8が形成されている。本発明においては、
図1に示すように、第二集電極72として、光電変換部側から、第一の第二集電極721および第二の第二集電極722の2層有することが好ましい。また第二裏面電極として、光電変換部側から、第一の第二裏面電極821および第二の第二裏面電極822の2層有することが好ましい。
【0028】
集電極7の第二集電極72上には、配線材34が接続されている。また裏面電極8の第二裏面電極82上には、他の配線材(不図示)が接続されている。配線材34は、芯材341と、芯材の表面を覆う導電体342により形成されている。
【0029】
第二集電極と第二裏面電極は、同一の導電材料を主成分とするものを用いることができる。これにより、温度変化に対する耐久性を向上させることができる。ここで本発明において「主成分とする」とはある成分を50重量%よりも多く含むことを意味し、65重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0030】
なお、本発明においては、受光面側の第二集電極の最表面層と裏面側の第二裏面電極の最表面層として同一の導電材料を主成分とするものを用いればよい。例えば、第二集電極や第二裏面電極として1層のものを用いた場合は、第二集電極と第二裏面電極が最表面層となり、当該最表面層として同一の導電材料を用いればよい。また第二集電極や第二裏面電極として、2層以上の複数層を有するものを用いる場合、少なくとも第二集電極の最表面層と、第二裏面電極の最表面層として、同一の導電材料を主成分とするものを用いればよい。これは受光面側や裏面側の最表面層が配線材に接続されるため、配線材接続時に熱による影響をより受けやすいためである。
【0031】
特に、太陽電池モジュールは、屋根や地上などに設置されるため、氷点下になる場合や、60〜80度程度の高温になる場合があるために、温度変化に対してセル表面と裏面の膨張、収縮が異なるため、配線材の集電極からの剥離が発生したり、セル割れが発生したりして、出力が低下するといった問題が生じうる。
【0032】
しかしながら、受光面側の集電極の最表面層と裏面側の裏面電極の最表面層として同一の導電材料を主成分とするものを用いることで、モジュールの信頼性を確保することができる。これはセル表裏の材料の熱膨張係数を同程度にすることができ、配線材の剥離やセル割れを防ぐことができるためと考えられる。なかでも、受光面側と裏面側の熱膨張係数をより近づけることができ、より破損等を防ぐ観点から、第一集電極と第一裏面電極も同一の導電材料を主成分とするものを用いることが好ましい。
【0033】
(光入射面側の集電極)
光電変換部50表面の光入射側表面上には、第一集電極71、第二集電極72を含む集電極7が形成されている。
【0034】
本発明においては、第二集電極72の表面粗さは第一集電極71より大きくなる。すなわち、第一集電極71及び第二集電極72の表面粗さを各々Ra1、Ra2としたとき、Ra1<Ra2を満たす。また本発明においては、Ra1を1.0μm以上10.0μm以下にすると、第一集電極と第二集電極の密着性を向上させることができる。さらに、Ra1<Ra2とすることにより、配線部材と接続される表面積が大きくなるため、接続性を向上させることができる。中でも、配線部材との接続性をより向上できる観点から、Ra2=3.0〜13.0μmを満たすことが好ましい。
【0035】
ここで、第二集電極の表面粗さRa2は、第二集電極の最表面層の表面粗さを意味する。例えば第二集電極として、光電変換部側から第一の第二集電極と第二の第二集電極を有する場合、第二の第二集電極の表面粗さがRa2となる。この際、第一の第二集電極の表面粗さRa2’は、Ra1<Ra2’およびRa1<Ra2を満たせば良いが、より密着性を向上させる観点から、Ra1<Ra2’≦Ra2を満たすことが好ましく、Ra2’<Ra2を満たすことがより好ましい。
【0036】
ここで、
図3(a)に示すように、太陽電池は、一般的に、配線部材34により他の太陽電池または外部電極と接続した太陽電池モジュール200として使用されている。
図3(b)に示すように、配線部材34は、芯材341と、芯材の表面を覆う導電体342とから構成されている。
図3(c)に示すように、太陽電池と配線部材34の接続は、一般的に、配線部材の導電体と、太陽電池の集電極が接続されるが、特に受光面側の集電極は、光を取り込むためにパターン状に形成されており、このようなパターン状の集電極上に配線材を接続させる場合、集電極の表面粗さがRa1が小さすぎる場合、第一集電極と第二集電極の密着性が低くなり、またRa2が小さすぎる場合、初期性能が低下したり、信頼性が低下するといった問題点が生じることが明らかとなった。
【0037】
本発明においては、第二集電極の表面粗さをRa1<Ra2とすることにより、太陽電池モジュール200を作製する際、配線部材の導電体と接続される表面積を大きくできるため、導通性、接続性がより向上し、初期性能、信頼性をより向上させることが可能となる。この際、Ra2は、1.5μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましい。またモジュール作製時に使用する配線部材の導電体と集電極との接続不良やセル割れをより防止できる観点から、接続性の点から20.0μm以下が好ましく、13.0μm以下がより好ましい。3.0〜13.0μmとすることで、集電極が配線材に埋め込まれ易くなるため、導通性、接続性がより向上する。
【0038】
また本発明においては、Ra1=1.0μm以上10μm以下とすることにより、その上に形成する絶縁層や第二集電極との密着性をより向上させることができ、セル特性などを向上させることができる。
【0039】
本実施形態においては、集電極として第一集電極/第一の第二集電極/第二の第二集電極の構成のものを用いており、後述のように、各層の製膜条件等によりRa2を所望の範囲に適宜設定しうると考えられる。また、各層の下地となる層の表面粗さにも影響を及ぼされると考えられる。即ち、第一集電極上の第一の第二集電極の表面粗さRa2’はRa1に、また同様にRa2もRa2’に影響を及ぼされうると考えられる。従って、Ra2を所定の範囲とするために、Ra1を調整することが好ましい。この際、Ra1は3.0μm以上が好ましい。またRa1は5.0μm以下が好ましい。
【0040】
上記範囲にすることで、第二集電極のRa2を容易に所望の値に近づけることができるため、上記太陽電池を太陽電池モジュールとして用いる際、第二集電極と配線部材の導電体との導通性、接続性をより向上でき、モジュール性能、信頼性をより向上させることができる。なお、第二集電極として1層のものを用いる場合も同様である。
【0041】
光入射面側の集電極7は、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法等の公知技術によって作製できる。集電極7は、櫛形等の所定形状にパターン化されていることが好ましい。中でも、パターン化された第一集電極の形成には、生産性の観点からスクリーン印刷法が適している。スクリーン印刷法では、導電性材料を含む印刷ペースト、および集電極のパターン形状に対応した開口パターンを有するスクリーン版を用いて、集電極パターンを印刷する方法が好ましく用いられる。
【0042】
第一集電極を、印刷ペースト等によりパターン状に形成する場合、容易にRa1を所定範囲にすることができ、その上に形成する第二集電極との密着性を向上させることができる。印刷ペースト等により第一集電極を形成する場合、通常、導電性材料と、硬化性樹脂とを含有するペーストを好ましく用いることができる。この際、第一集電極に含まれる導電性材料の材料、粒子径、含有量、また粘度などの条件等を適宜調整することにより、Ra1を所定の範囲に容易に設定できる。
【0043】
第一集電極71に含まれる導電性材料としては、特に限定されず、例えば銀、銅、アルミニウムなどを用いることができる。後述のように、第二集電極をめっき法により形成する場合、導電性材料は、熱流動開始温度T
1の低融点材料を含むことが好ましい。特に、導電性材料として低融点材料を用いた場合、低融点材料の粒子径や含有量、また低融点材料以外(高融点材料など)の種類、含有量、または粘度などを適宜調整することにより容易にRa1を上記範囲に設定することができる。
【0044】
第一集電極71の膜厚は、コスト的な観点から20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。一方、第一集電極71のライン抵抗を所望の範囲とする観点から、膜厚は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。例えば、第一集電極に印刷ペーストを有するものを用いた場合、印刷ペーストの粘度は、20Pa・s以上500Pa・s以下が好ましい。上記範囲とすることで、第一集電極のRa1をより容易に所定の範囲にすることが可能となる。
【0045】
粘度を20Pa・s以上とすることにより、高いアスペクト比とすることができ、遮光ロスやライン抵抗を軽減することができる。中でも50Pa・s以上であることがより好ましく、80Pa・s以上であることが特に好ましい。また透明導電層とのコンタクトを良好にするため印刷ペーストの粘度は500Pa・s以下であることが好ましく、400Pa・s以下であることがより好ましく、300Pa・s以下であることが特に好ましい。
本発明において、Ra1<Ra2とする方法としては、第二集電極の形成条件を調整する方法、第二集電極表面を機械的研磨により調整する方法などが挙げられる。
【0046】
このような方法を、上述の第二集電極の下に形成される層の表面凹凸を調整する方法と併用して用いることで、Ra2を所望の範囲により容易に調整することが可能となる。第二集電極の下に形成される層としては、第一集電極や、第一集電極と第二集電極の間に絶縁層を有する場合、該絶縁層などが挙げられる。
【0047】
第二集電極は、第一集電極71を導電性下地層としてめっき法により形成することが好ましい。この場合、Ra2を上記範囲にする方法としては、めっき液の温度、めっき時間やめっき時の電流等を調整したり膜厚を制御する方法などが挙げられる。中でも、第二集電極の凹凸を容易に調整できる点で、第二集電極の下に形成される層の表面の凹凸形状を調整し、かつ、第二集電極の形成条件を調整する方法がより好ましい。
【0048】
第二集電極として、第一の第二集電極と第二の第二集電極との2層構成のものを用いる場合、第二集電極の表面粗さRa2(第二の第二集電極の表面粗さ)は、第二の第二集電極の表面の形状を調整することにより、適宜調整することができる。
【0049】
以下で、第一集電極上にめっき法により第二集電極を形成する方法について説明する。通常、光入射面側の集電極は、光を取り込む必要があるため、パターン状に形成される。この際、光電変換部の表面には、シリコン層や、透明電極層などが形成されているため、光電変換部の集電極形成領域以外の領域をめっき液から保護するために、絶縁層で覆う必要がある。
【0050】
特に、例えばヘテロ接合太陽電池など、光電変換部の第一主面上の最表面層として透明電極層を有するものを用いる場合、透明電極層上における第一集電極非形成領域にレジストや絶縁層が製膜されている必要がある。
【0051】
この際、絶縁層で覆う方法としては、第一集電極形成前に、開口部を有する絶縁層を形成し、該開口部に第一集電極を形成し、その上に第二集電極を形成する方法、第一集電極を光電変換部の第一主面上のほぼ全面に形成した後、開口部を有するレジストを形成し、該開口部に第二集電極を形成する方法、第一集電極を形成後に、マスクを用いて絶縁層を形成して第一集電極上に絶縁層の開口部を形成し、該開口部に第二集電極を形成する方法、第一集電極を形成後に第一集電極形成領域と非形成領域を覆うように開口部を有する絶縁層を形成し、該開口部に第二集電極を形成する方法、などが挙げられる。第二集電極として2層構成とし、いずれの層もめっき法で形成する場合も同様である。
【0052】
めっき法により集電極を形成する方法としては、特に制限されないが、第一集電極と第二集電極の間に開口部を有する絶縁層を有し、該開口部を通じで第一集電極と第二集電極が導通されることが好ましい。これにより、第一集電極と第二集電極の密着性がより向上すると考えられる。
【0053】
絶縁層9に、第一集電極と第二集電極とを導通させるための開口部を形成する方法は特に制限されず、レーザー照射、機械的な孔開け、化学エッチング等の方法が採用できる。一実施形態では、第一集電極中の導電性材料として低融点材料を用い、該低融点材料を熱流動させることによって、その上に形成された絶縁層に開口部を形成する方法が挙げられる。
【0054】
第一集電極中の低融点材料の熱流動により開口を形成する方法としては、低融点材料を含有する第一集電極71上に絶縁層9を形成後、低融点材料の熱流動開始温度T1以上に加熱(アニール)して第一集電極の表面形状に変化が生じさせ、その上に形成されている絶縁層9に開口(き裂)を形成する方法;あるいは、低融点材料を含有する第一集電極71上に絶縁層9を形成する際にT1以上に加熱することにより、低融点材料を熱流動させ、絶縁層の形成と同時に開口を形成する方法が挙げられる。
【0055】
以下、第一集電極中の低融点材料の熱流動を利用して、絶縁層に開口を形成する方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明においては、以下の実施形態に限定されない。
【0056】
図4は、太陽電池の光電変換部50上への集電極7の形成方法の一実施形態を示す工程概念図である。この実施形態では、まず、光電変換部50が準備される(光電変換部準備工程、
図4(A))。光電変換部の一主面上に、低融点材料711を含む第一集電極71が形成される(第一集電極形成工程、
図4(B))。第一集電極71上には、絶縁層9が形成される(絶縁層形成工程、
図4(C))。本実施形態においては、絶縁層9は、第一集電極71上および光電変換部50の第一集電極71が形成されていない領域(第一集電極非形成領域)上に形成されている。
【0057】
絶縁層9が形成された後、加熱によるアニール処理が行われる(アニール工程、
図4(D))。アニール処理により、第一集電極71がアニール温度Taに加熱され、低融点材料が熱流動することによって表面形状が変化し、それに伴って第一集電極71上に形成された絶縁層9に変形が生じる。絶縁層9の変形は、典型的には、絶縁層への開口部9hの形成である。開口部9hは、例えばき裂状に形成される。
【0058】
アニール処理により絶縁層9に開口部を形成した後に、めっき法により第二集電極72が形成される(めっき工程1、
図4(E))。第一集電極71は絶縁層9により被覆されているが、絶縁層9に開口部9hが形成された部分では、第一集電極71が露出した状態である。そのため、第一集電極71がめっき液に曝されることとなり、この開口部9hを起点として金属の析出が可能となる。このようにして、本実施形態においては、第一集電極71と第二集電極72との間に開口部を有する絶縁層9が形成される。集電極7において、第二集電極72の一部は、第一集電極71に導通されている。ここで「一部が導通されている」とは、典型的には絶縁層に開口部が形成され、その開口部に第二集電極の材料が充填されていることによって、導通されている状態であり、また絶縁層の一部の膜厚が、数nm程度と非常に薄くなる(すなわち局所的に薄い膜厚の領域が形成される)ことによって、第二集電極72が第一集電極71に導通しているものも含む。例えば、第一集電極71の導電性材料がアルミニウム等の金属材料である場合、その表面に形成された酸化被膜(絶縁層に相当)を介して第一集電極71と第二集電極72との間が導通されている状態が挙げられる。
【0059】
第二集電極が2層構成の場合第一の第二集電極72上には、めっき法により第二の第二集電極722が形成されることが好ましい(めっき工程2、
図4(F))。
【0060】
(裏面電極)
裏面側透明電極層6b上には第一裏面電極81、第二裏面電極82を含む裏面電極8が形成されている。第一裏面電極81としては、近赤外から赤外域の反射率が高く、かつ導電性や化学的安定性が高い材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料としては、銀やアルミニウム等が挙げられる。第一裏面電極81の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法や真空蒸着法等の物理気相堆積法や、スクリーン印刷等の印刷法等が適用可能である。
【0061】
また、第二裏面電極82としては、1層でもよく、2層以上でもよいが、例えば、第二裏面電極として、光電変換部側から、第一の第二裏面電極と第二の第二裏面電極の構成のものを用いる場合、第一裏面電極側、すなわち第一の第二裏面電極821としては、電気抵抗を十分に抑制できる材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料としては、銀や銅、亜鉛等が挙げられる。第二裏面電極の製膜方法は、特に限定されないが、容易に膜厚を厚くできることから、めっき法、蒸着法等が適用可能である。
【0062】
また、第二の第二裏面電極822としては、第一の第二裏面電極の酸化やマイグレーションを抑制できる材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料として、錫、ニッケル、チタン、クロム等が挙げられる。
【0063】
第二の第二裏面電極822の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法や真空蒸着法、めっき法等が適用可能である。
【0064】
中でも、第二裏面電極として1層のものを用いた場合、第一裏面電極/第二裏面電極として、銀/銅、アルミ/銅が好ましく、2層のものを用いた場合、第一裏面電極/第一の第二裏面電極/第二の第二裏面電極として、銀/銅/ニッケル、銀/銅/錫、銀/銅/銀、アルミ/銅/ニッケル、アルミ/銅/錫を用いることが好ましく、銀/銅/錫を用いることがより好ましい。
【0065】
本発明における裏面電極の膜厚は、例えば、裏面側の全面に裏面電極を製膜する場合、低抵抗化の観点から、1200〜6000nmが好ましい。例えば第一集電極/第一の第二集電極/第二の第二集電極として、銀/銅/錫を用いる場合、第一集電極=8〜100nm、第一の第二集電極=200〜1000nm、第二の第二集電極=1000nm〜5000nmなどを用いることができる。
【0066】
本発明においては、受光面側の第二集電極と裏面側の第二裏面電極として同一の導電材料を主成分とするものを用いる。また第二集電極や第二裏面電極が複数層から構成される場合、少なくとも受光面側の最表面層と裏面側の最表面層の導電材料の主成分を同一にすればよく、また製膜方法などは問わない。例えば、受光面側の第一集電極はスクリーン印刷で銀ペーストを印刷し、第一裏面電極はスパッタ法で銀を製膜してもよく、また受光面側の第二集電極はめっき法で銅を堆積し、第二裏面電極はスパッタ法で銅を製膜してもよいが、中でも同一の製法で作製することが好ましい。この場合、製造工程を簡略化できると共に、線膨張係数をより近くすることができる。
【0067】
中でも、配線材と接続される第二集電極と、第二裏面電極は、配線材を接続する際の熱膨張や、接続後の冷却による収縮の影響を受けやすいため、同一の製法で作製することがより好ましい。この場合、容易に膜厚を同程度にすることができ、それにより、熱膨張係数をより近くすることが出来るため、配線材の剥離やセル割れを防ぐことができ、モジュールの信頼性を確保することができる。中でも、製造工程を大幅に簡略化できるため、第二集電極と第二裏面電極はめっき法により形成することが好ましい。また第二集電極や第二裏面電極が複数層から構成される場合、最表面層以外の層も同一の導電材料を主成分とすることが好ましく、同一の導電材料により形成されることが好ましく、同様にめっき法により形成することが好ましい。例えば、各々2層により構成される場合、第一の第二集電極と第一の第二裏面電極の熱膨張係数も同程度にすることが出来るため、配線材の熱圧着の際の影響をより防止することができる。
【0068】
また裏面電極としては、スクリーン印刷等により、パターン状に形成することができる。この場合、第一裏面電極および第二裏面電極は、各々、第一集電極および第二集電極と同じ材料を用いることが好ましい。またこの場合、第一裏面電極および第二裏面電極の表面粗さを各々Ra’1、Ra’2としたとき、光入射面側と同様に、Ra’1<Ra’2を満たすことが好ましく、Ra’1=1.0μm〜10μmを満たすことが好ましい。また受光面側と同様に第二裏面電極として2層有する場合、第一の第二裏面電極の表面粗さRa’2’は、Ra’1<Ra’2’を満たせばよいが、Ra’1<Ra’2’≦Ra’2を満たすことがより好ましい。Ra’1<Ra’2’<Ra’2を満たすことがさらに好ましく、Ra’2=3.0μm〜13.0μmを満たすことが好ましい。
【0069】
(配線材)
本発明の太陽電池は、実用に供するに際して、例えば
図3(a)に示すように、モジュール化される。太陽電池のモジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、集電極に配線部材が接続されることによって、複数の太陽電池セルが直列または並列に接続され、封止材およびガラス板により封止されることによりモジュール化が行われる。
【0070】
図3(b)に示すように配線材は、芯材341と、芯材の表面を覆う導電体342とから構成されている。
【0071】
本発明においては、
図3(c−1)に示すように、太陽電池の集電極と配線材の導電体とが接続され、また別の太陽電池の裏面電極と他の配線材の導電体とが接続され、太陽電池ストリングを作製することが好ましい。太陽電池の集電極は、一定間隔を隔てて互いに平行に延びるように形成された複数のフィンガー電極と、フィンガー電極により収集された電流を集めるバスバー電極とによって構成されている。一般的に、フィンガー電極に略垂直になるようにバスバー電極が形成される。受光面側では集電極のバスバー電極と配線材が接続され((c−2))、裏面側では全面に覆われた裏面電極と配線材が接続される((c−3))。この際、集電極がフィンガーとバスバーから構成される場合、少なくとも配線材が接続される領域(バスバー)が第一集電極と第二集電極の構成であれば良い。
【0072】
配線材と、太陽電池との接続は、半田付けにより太陽電池と接着される方法((d−1))や導電性微粒子を含有する導電性接着剤を用いる方法((d−2))などが挙げられるが、コスト増加抑制や生産性を高めるという観点から、半田付けにより太陽電池と接続されることが好ましい。配線材と太陽電池を接続する際、加熱圧着により接続する必要があり、この場合、太陽電池セルの集電極、裏面電極の熱膨張係数(材料)が大幅に異なっていると、接続後のセル反りに起因して封止後セル割れが発生、また、温度変化に対して配線材が集電極や裏面電極から剥離し、モジュールの性能が低下するといった課題が生じる。特に、半田付けによる方法では、導電性接着剤での接続方法と比べて高温で接続する必要があるため、顕著である。それに対し、本発明のように受光面側の第二集電極と裏面側の第二裏面電極として同一の導電材料を主成分とした構造にすることで、接続後のセル反り、温度変化に対する配線材の剥離を防止でき、モジュール性能の低下を抑制できる。
【0073】
特に第二集電極と第二裏面電極の導電材料として、配線材の導電体に含まれる材料と同一にすることで、電極と配線材との密着性がより向上し剥離を防止できる。なお、第二集電極や第二裏面電極として複数層を有するものを用いる場合、最表面層の導電材料が、配線材の導電体の材料と同じであることが好ましい。
【0074】
裏面電極として、裏面のほぼ全面を覆い、かつ配線材と裏面電極とを導電体により直接接続させた場合、熱により溶融した配線材の導電体が配線材の幅より拡がるため、接触面積が大きくなるため安定的に付着すると考えられる。導電性接着剤を介して配線材と裏面電極を接続させた場合も、導電性接着剤が熱により圧着されて拡がる場合も、安定的に付着すると考えられる。一方、裏面電極として受光面側と同様にパターン状にした場合、上述のように、所定の表面粗さを有するものを用いることが好ましい。
【0075】
配線材の材料は、特に制限されないが、導電体として半田、また芯材として銅箔を用い、表面が半田層で被覆された銅箔からなるものを用いることが好ましい。半田を銅箔の表面に形成することにより、銅箔の表面の腐食を防止する効果とともに集電極との接続の役割を果たす。また、配線材で反射された光による電流向上の効果も期待できる。
【0076】
半田を構成する材料としては、Snを主成分として、Cu、Ni、Ag、Pbの内選ばれた1種以上の元素を有する合金半田で行うことが好ましい。例えば、Snが96.5質量%、Agが3.0質量%、Cuが0.5質量%の合金、Snが99〜99.5質量%、Cuが0.5〜1.0質量%の合金、Agが1〜1.5質量%、Biが30〜60質量%、残りがSnを主成分とする合金、Snが60質量%、Pbが40%質量%の合金、Cuが0.05〜2.0質量%、Niが0.001〜2.0質量%、残りがSnを主成分とする合金などとし、その他Snを主成分としてCu、Ni、Ag、Bi、Inなどを含む合金とすることが好ましい。コストの観点からSnが60質量%、Pbが40%質量%の合金が好ましい。また、半田層の厚みは銅箔の酸化を防ぎ、集電極との接続を担う必要があるため、60μm以下が好ましい。半田メッキ工程の厚みバラツキの安定性、コストの観点から20μm程度がより好ましい。
【0077】
次に、
図3(a)に示すように、受光面側保護材上に、封止材、太陽電池ストリング、封止材及び裏面側保護材を順次積層して積層体とすることが好ましい。 次に、上記積層体を所定条件で加熱することにより、封止材を硬化させることが好ましい。そしてAlフレーム等を取り付けることで太陽電池モジュール200を作製することができる。
【0078】
受光面側保護材は、複数の太陽電池それぞれの受光面側(光入射面側)に配置し、太陽電池の表面を保護することが好ましい。受光面側保護材としては、透光性及び遮水性を有するガラス、透光性プラスチック等を用いることができる。裏面側保護材は、複数の太陽電池それぞれの裏面側に配置し、太陽電池の裏面を保護することが好ましい。裏面側保護材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム、Al箔を樹脂フィルムでサンドイッチした構造を有する積層フィルム等を用いることができる。
【0079】
封止材は、受光面側保護材と裏面側保護材との間で太陽電池ストリングを封止する。封止材としては、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA),エチレンーエチルアクリレート共重合樹脂(EEA),ポリビニルブチラール樹脂(PVB),シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ、ポリオレフィン等の透光性の樹脂を用いることができる。
【0080】
以上のようにして太陽電池モジュール200を作製することができるが、上記に限定されるものではない。
【0081】
(太陽電池の光電変換部)
本発明においては、太陽電池として結晶シリコン系太陽電池を用いることが好ましい。本実施形態の太陽電池2は、ヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(以下、ヘテロ接合太陽電池ともいう)を採用している。
【0082】
具体的には、太陽電池101は、
図2のように、基板1の一方の面(光入射側の面,表面)上に、真性シリコン系薄膜2a、導電型シリコン系薄膜3a、及び透明電極層6aがこの順に積層されている。また、太陽電池101は、さらに、透明電極層6aの上に、集電極7が設けられている。一方、基板15の他方の面(光反射側の面,裏面)上に真性シリコン系薄膜2b、導電型シリコン系薄膜3b及び透明電極層6bがこの順に積層されている。また、太陽電池101は、さらに、透明電極層6b上に、裏面電極8が積層されている。
【0083】
基板1は、一導電型単結晶シリコン基板によって形成されている。ここで、一般的に単結晶シリコン基板には、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばホウ素)を含有させたp型がある。ここでいう「一導電型」とは、n型又はp型のどちらか一方であることをいう。つまり、基板1は、n型又はp型のどちらか一方の単結晶シリコン基板である。本実施形態の基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。
【0084】
基板1は、表面及び裏面にテクスチャ構造を有している。すなわち、基板1を基体として形成される光電変換部50もテクスチャ構造を備える。そのため、太陽電池101は、入射した光を光電変換部50に閉じ込めることができ、発電効率が高い。
【0085】
シリコン系薄膜2a,3a,2b,3bの成膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。導電型シリコン系薄膜3a,3bは、一導電型又は逆導電型のシリコン系薄膜である。ここでいう「逆導電型」とは、「一導電型」と異なる導電型であることをいう。例えば、「一導電型」がn型である場合には、「逆導電型」はp型である。本実施形態では、導電型シリコン系薄膜3aは、逆導電型シリコン系薄膜であり、導電型シリコン系薄膜3bは、一導電型シリコン系薄膜である。シリコン系薄膜は、シリコン系薄膜であれば特に限定されないが、非晶質シリコン系薄膜を用いることが好ましい。
【0086】
本実施形態では、導電型シリコン系薄膜3aは、p型非晶質シリコン系薄膜であり、導電型シリコン系薄膜3bは、n型非晶質シリコン系薄膜を採用している。真性シリコン系薄膜2a,2bとしては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。
【0087】
太陽電池101の光電変換部50は、
図2のように導電型シリコン系薄膜3a,3b上の外側に、透明電極層6a,6bを備えている。透明電極層6a,6bは、導電性酸化物を主成分としていることが好ましい。導電性酸化物の中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましい。透明電極層6a,6bは、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。透明電極層6a,6bには、ドーピング剤を添加することもできる。光入射側の透明電極層6aの膜厚は、透明性、導電性、及び光反射低減の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましい。
【0088】
透明電極層6aの役割は、集電極7へのキャリアの輸送であるから、膜厚を10nm以上にすることによって、必要な導電性を備えることができる。膜厚を140nm以下にすることにより、透明電極層6aでの吸収ロスが小さく、透過率の低下に伴う光電変換効率の低下を抑制することができる。また、透明電極層6aの膜厚が上記範囲内であれば、透明電極層6a内のキャリア濃度上昇も防ぐことができる。そのため、赤外域の透過率低下に伴う光電変換効率の低下も抑制される。透明電極層6a,6bの成膜方法は、特に限定されないが、例えばスパッタ法などにより形成することができる。
【0089】
ヘテロ接合太陽電池のように結晶シリコン基板を用いた太陽電池は、電流量が大きいため、一般に、透明電極層/集電極間の接触抵抗の損失による発電ロスが顕著となる傾向がある。これに対して、本発明では、第一集電極と第二集電極を有する集電極は、透明電極層との接触抵抗が低いため、接触抵抗に起因する発電ロスを低減することが可能となる。
【0090】
また、本発明は、ヘテロ接合太陽電池以外の結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板が用いられる太陽電池、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン系薄膜のpin接合あるいはpn接合上に透明電極層が形成されたシリコン系薄膜太陽電池や、CIS,CIGS等の化合物半導体太陽電池、色素増感太陽電池や有機薄膜(導電性ポリマー)等の有機薄膜太陽電池のような各種の太陽電池に適用可能である。
【0091】
(第一集電極)
第一集電極71は、導電性を有するものを用いることができるが、例えば第二集電極をめっき法により形成する場合、導電性下地層として機能し得る程度の導電性を有していればよい。なお、本明細書においては、体積抵抗率が10
−2Ω・cm以下であれば導電性であると定義する。また、体積抵抗率が、10
2Ω・cm以上であれば、絶縁性であると定義する。
【0092】
上述のように、第一集電極と第二集電極の間に絶縁層を有するものを用いる場合、導電性材料は、熱流動開始温度T
1の低融点材料を含むことが好ましい。熱流動開始温度とは、加熱により材料が熱流動を生じ、低融点材料を含む層の表面形状が変化する温度であり、典型的には融点である。高分子材料やガラスでは、融点よりも低温で材料が軟化して熱流動を生じる場合がある。このような材料では、熱流動開始温度=軟化点と定義できる。軟化点とは、粘度が4.5×10
6Pa・sとなる温度である(ガラスの軟化点の定義に同じ)。
【0093】
低融点材料は、アニール処理において熱流動を生じ、第一集電極71の表面形状に変化を生じさせるものであることが好ましい。そのため、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、アニール温度Taよりも低温であることが好ましい。また、本発明においては、光電変換部50の耐熱温度よりも低温のアニール温度Taでアニール処理が行われることが好ましい。したがって、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0094】
光電変換部の耐熱温度とは、当該光電変換部を備える太陽電池(「太陽電池セル」または「セル」ともいう)あるいは太陽電池セルを用いて作製した太陽電池モジュールの特性が不可逆的に低下する温度である。例えば、
図2に示すヘテロ接合太陽電池101では、光電変換部50を構成する単結晶シリコン基板1は、500℃以上の高温に加熱された場合でも特性変化を生じ難いが、透明電極層6や非晶質シリコン系薄膜2,3は250℃程度に加熱されると、熱劣化を生じたり、ドープ不純物の拡散を生じ、太陽電池特性の不可逆的な低下を生じる場合がある。そのため、ヘテロ接合太陽電池においては、第一集電極71は、熱流動開始温度T
1が250℃以下の低融点材料を含むことが好ましい。
【0095】
低融点材料の熱流動開始温度T
1の下限は特に限定されない。アニール処理時における第一集電極の表面形状の変化量を大きくして、絶縁層9に開口部9hを容易に形成する観点からは、第一集電極の形成工程において、低融点材料は熱流動を生じないことが好ましい。例えば、塗布や印刷により第一集電極が形成される場合は、乾燥のために加熱が行われることがある。この場合は、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、第一集電極の乾燥のための加熱温度よりも高温であることが好ましい。かかる観点から、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0096】
低融点材料は、導電性を有する金属材料であることが望ましい。低融点材料が金属材料であれば、第一集電極の抵抗値を小さくできるため、電気めっきにより第二集電極が形成される場合に、第二集電極の膜厚の均一性を高めることができる。また、低融点材料が金属材料であれば、光電変換部50と集電極7との間の接触抵抗を低下させることも可能となる。
【0097】
低融点材料としては、低融点金属材料の単体もしくは合金、複数の低融点金属材料の混合物を好適に用いることができる。低融点金属材料としては、例えば、インジウムやビスマス、ガリウム等が挙げられる。
【0098】
第一集電極71は、導電性材料として、上記の低融点材料に加えて、低融点材料よりも相対的に高温の熱流動開始温度T
2を有する高融点材料を含有しても良い。第一集電極71が高融点材料を有することで、第一集電極と第二集電極とを効率よく導通させることができ、太陽電池の変換効率を向上させることができる。
【0099】
高融点材料の熱流動開始温度T
2は、アニール温度Taよりも高いことが好ましい。すなわち、第一集電極71が低融点材料および高融点材料を含有する場合、低融点材料の熱流動開始温度T
1、高融点材料の熱流動開始温度T
2、およびアニール処理におけるアニール温度Taは、T
1<Ta<T
2を満たすことが好ましい。高融点材料は、絶縁性材料であっても導電性材料であってもよいが、第一集電極の抵抗をより小さくする観点から導電性材料が好ましい。導電性の高融点材料としては、例えば、銀、アルミニウム、銅などの金属材料の単体もしくは、複数の金属材料を好ましく用いることができる。
【0100】
第一集電極71が低融点材料と高融点材料とを含有する場合、その含有比は、低融点材料粗大化による断線の抑止や、第一集電極の導電性、絶縁層への開口部の形成容易性(第二集電極の金属析出の起点数の増大)等の観点から、適宜に調整される。
【0101】
第一集電極71の材料として、例えば、金属粒子等の粒子状低融点材料が用いられる場合、アニール処理による絶縁層への開口の形成を容易とする観点から、低融点材料の粒径D
Lは、第一集電極の膜厚dの1/20以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましい。低融点材料の粒径D
Lは、0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、第一集電極71が、スクリーン印刷等の印刷法により形成される場合、粒子の粒径は、スクリーン版のメッシュサイズ等に応じて適宜に設定され得る。
【0102】
第一集電極71の材料として上記のような低融点材料と高融点材料との組合せ以外に、材料の大きさ(例えば、粒径)等を調整することにより、アニール処理時の加熱による第一集電極の断線を抑制し、変換効率を向上させることも可能である。例えば、銀、銅、金等の高い融点を有する材料も、粒径が1μm以下の微粒子であれば、融点よりも低温の200℃程度あるいはそれ以下の温度T
1’で焼結ネッキング(微粒子の融着)を生じるため、本発明の「低融点材料」として用いることができる。このような焼結ネッキングを生じる材料は、焼結ネッキング開始温度T
1’以上に加熱されると、微粒子の外周部付近に変形が生じるため、第一集電極の表面形状を変化させ、絶縁層9に開口部を形成することができる。また、微粒子が焼結ネッキング開始温度以上に加熱された場合であっても、融点T
2’未満の温度であれば微粒子は固相状態を維持するため、
図5に示すような材料の粗大化による断線が生じ難い。すなわち、金属微粒子等の焼結ネッキングを生じる材料は、本発明における「低融点材料」でありながら、「高融点材料」としての側面も有しているといえる。
【0103】
このような焼結ネッキングを生じる材料では、焼結ネッキング開始温度T
1’=熱流動開始温度T
1と定義できる。
図6は、焼結ネッキング開始温度について説明するための図である。
図6(A)は、焼結前の粒子を模式的に示す平面図である。焼結前であることから、粒子は互いに点で接触している。
図6(B)および
図6(C)は、焼結が開始した後の粒子を、各粒子の中心を通る断面で切ったときの様子を模式的に示す断面図である。
図6(B)は焼結開始後(焼結初期段階)、
図6(C)は、(B)から焼結が進行した状態を示している。
図6(B)において、粒子A(半径r
A)と粒子B(半径r
B)との粒界は長さa
ABの点線で示されている。
【0104】
焼結ネッキング開始温度T
1’は、r
Aとr
Bの大きい方の値max(r
A,r
B)と、粒界の長さa
ABとの比、a
AB/max(r
A,r
B)が、0.1以上となるときの温度で定義される。すなわち、少なくとも一対の粒子のa
AB/max(r
A,r
B)が0.1以上となる温度を焼結ネッキング開始温度という。なお、
図7では単純化のために、粒子を球形として示しているが、粒子が球形でない場合は、粒界近傍における粒子の曲率半径を粒子の半径とみなす。また、粒界近傍における粒子の曲率半径が場所によって異なる場合は、測定点の中で最も大きな曲率半径を、その粒子の半径とみなす。例えば、
図7(A)に示すように、焼結を生じた一対の微粒子A,B間には、長さa
ABの粒界が形成されている。この場合、粒子Aの粒界近傍の形状は、点線で示された仮想円Aの弧で近似される。一方、粒子Bの粒界近傍は、一方が破線で示された仮想円B
1の弧で近似され、他方が実線で示された仮想円B
2の弧で近似される。
図7(B)に示されるように、r
B2>r
B1であるため、r
B2を粒子Bの半径r
Bとみなす。なお、上記の仮想円は、断面もしくは表面の観察像の白黒2値化処理により境界を定め、粒界近傍の境界の座標に基づいて最小二乗法により中心座標および半径を算出する方法により、決定できる。なお、上記の定義により焼結ネッキング開始温度を厳密に測定することが困難な場合は、微粒子を含有する第一集電極を形成し、加熱により絶縁層に開口部(き裂)が生じる温度を焼結ネッキング開始温度とみなすことができる。後述するように、絶縁層形成時に加熱が行われる場合は、絶縁層形成時の基板の加熱により開口部(き裂)が生じる温度を焼成ネッキング開始温度とみなすことができる。
【0105】
また、上記のように、第一集電極の導電性材料として、低融点材料を有するもの以外に、例えば、低融点材料を有さないもの(例えば上記高融点材料のみ、など)を用いることもできる。低融点材料を有さない場合であっても、上述のように、第一集電極を覆うように絶縁層を製膜した後、絶縁層に開口部を別途形成する方法などにより、第一集電極上の絶縁層に開口部を形成することができる。
【0106】
第一集電極の形成材料には、上記の導電性材料(例えば、低融点材料および/または高融点材料など)に加えて、絶縁性材料を有していても良い。絶縁性材料としては、バインダー樹脂等を含有するペースト等を好ましく用いることができる。また、スクリーン印刷法により形成された第一集電極の導電性を十分向上させるためには、熱処理により第一集電極を硬化させることが望ましい。したがって、ペーストに含まれるバインダー樹脂としては、上記乾燥温度にて硬化させることができる材料を用いることが好ましく、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等が適用可能である。
【0107】
印刷ペーストとして、溶剤を含む材料が用いられる場合には、溶剤を除去するための乾燥工程が必要となる。前述のごとく、この場合の乾燥温度は、光電変換部の耐熱温度よりも低いことが好ましい。例えば、光電変換部に透明電極層や非晶質シリコン系薄膜などを有する場合、乾燥温度は250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。また低融点材料を用いる場合、低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温であることが好ましい。乾燥時間は、例えば5分間〜1時間程度で適宜に設定され得る。
【0108】
(第二集電極)
第二集電極は、第一集電極71を導電性下地層としてめっき法により形成することが好ましい。第二集電極は、無電解めっき法、電解めっき法のいずれでも形成され得るが、生産性の観点から、電解めっき法を用いることが好適である。電解めっき法では、金属の析出速度を大きくすることができるため、第二集電極を短時間で形成することができる。この際、第二集電極として析出させる金属は、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム等、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0109】
太陽電池の動作時(発電時)には、電流は主として第二集電極を流れる。そのため、第二集電極での抵抗損を抑制する観点から、第二集電極のライン抵抗は、できる限り小さいことが好ましい。具体的には、第二集電極のライン抵抗は、1Ω/cm以下であることが好ましく、0.5Ω/cm以下であることがより好ましい。一方、第一集電極のライン抵抗は、電気めっきの際の下地層として機能し得る程度に小さければよく、例えば、5Ω/cm以下にすればよい。
【0110】
例えば、第二集電極として、銅を電解めっきにより形成する場合、めっき液としては、例えば硫酸銅、硫酸、水を主成分とする公知の組成の酸性銅めっき液が使用可能であり、これに300mA〜4000mAの電流を流すことにより、第二集電極である金属を析出させることができる。適切なめっき時間は、集電極の面積、電流、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。また、電流を変更することで、金属析出のレート、または膜質(表面凹凸)などの調整を可能にする。例えば、表面凹凸の制御のしやすさ、および工程でのタクトを考慮すると、電流を500mA〜3000mAとすることが好ましい。さらに、750mA〜2500mAとすることにより、析出する金属の膜質、具体的には第二集電極の表面粗さ(R2)などをより容易に所定の範囲(Ra1<Ra2)に調整できる。
【0111】
第二集電極として2層以上のものを用いる場合、少なくとも1層がめっき法により形成されることが好ましく、いずれもめっき法により形成されることがより好ましい。例えば、第一の第二集電極をめっき法により形成する場合、第二の第二集電極も同様に電解めっき法で形成することが好ましい。この際、別のめっき液、例えば、錫イオンを含んだメタンスルホン酸を用いて電解メッキを行う。メタンスルホン酸は錫イオンを含む。
【0112】
メタンスルホン酸、水を主成分とする公知の組成のものが使用可能であり、これに10mA〜500mAの電流を流すことにより、第二の第二集電極である金属を析出させることができる。適切なめっき時間は、集電極の面積、電流、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。また、電流を変更することで、金属析出のレート、または膜質(表面凹凸)などの調整を可能にする。例えば、表面凹凸の制御のしやすさ、および工程でのタクトを考慮すると50mA〜300mAとすることが好ましい。電流を、80mA〜250mAとすることにより、析出する金属の膜質、具体的には第二の第二集電極の表面粗さ(Ra2)などをより容易に所定の範囲(Ra1<Ra2’≦Ra2)に調整できる。
【0113】
(絶縁層)
光電変換部の一主面側には、絶縁層9が形成される。ここで、第一集電極71が所定のパターン(例えば櫛形)に形成された場合、光電変換部の表面上には、第一集電極が形成されている第一集電極形成領域と、第一集電極が形成されていない第一集電極非形成領域とが存在する。
【0114】
絶縁層9は、
図8に示されるように少なくとも第一集電極非形成領域に形成される。本発明において、絶縁層9は、第一集電極非形成領域の全面に形成されていることが好ましい。絶縁層が第一集電極非形成領域の全面に形成されている場合、めっき法により第二集電極が形成される際に、光電変換部や透明電極層をめっき液から化学的および電気的に保護することが可能となる。例えば、ヘテロ接合太陽電池のように光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、透明電極層の表面に絶縁層が形成されることで、透明電極層とめっき液との接触が抑止され、透明電極層上への金属層(第二集電極)の析出を防ぐことができる。
【0115】
本発明における絶縁層は、めっき前に形成されればよく、光電変換部作製後第一集電極形成前、あるいは第一集電極形成後めっき前のいずれであってもよい。例えば、
図8に示すように、第一集電極形成前に形成される場合、マスクにより第一集電極に対応する部分を保護し、第一集電極を形成する以外の部分に絶縁層を形成する方法などが挙げられる。また第一集電極形後に形成される場合、少なくとも第一集電極非形成領域上に絶縁層が形成される。
【0116】
この場合、絶縁層9は第一集電極形成領域上にも形成されていることが好ましい。すなわち第一集電極を被覆するように形成されることにより、後述のように、めっき液から光電変換部をより保護することができる。また、生産性の観点からも、第一集電極形成領域と第一集電極非形成領域との全体に絶縁層が形成されることがより好ましい。
【0117】
一般的に、集光効率を向上させる観点から細線化した集電極が好ましく用いられ、この場合、第一集電極と第二集電極の間の密着性をより向上させることが望まれている。
【0118】
本実施形態では、第一集電極と第二集電極の間に絶縁層を形成し、かつ、第一集電極のRa1を所定の範囲にすることにより、絶縁層の第二集電極側の表面に凹凸構造を容易に形成することができ、その上に形成する第二集電極との密着性が向上すると考えられる。その結果、集電極を細線化した際も、第一集電極と第二集電極の間の剥離防止効果がより期待できる。これにより、歩留まりの向上(剥がれ防止による効果)や集光効率の向上(細線化による効果)などがより期待できると考えられる。
【0119】
絶縁層9の材料としては、電気的に絶縁性を示す材料が用いられる。また、絶縁層9は、めっき液に対する化学的安定性を有する材料であることが望ましい。この場合、第二集電極形成時のめっき工程中に、絶縁層が溶解しにくく、光電変換部表面へのダメージが生じにくくなる。また、めっき工程前に第一集電極非形成領域上に絶縁層9が形成される場合、絶縁層は、光電変換部50との付着強度が大きいことが好ましい。例えば、ヘテロ接合太陽電池では、絶縁層9は、光電変換部50表面の透明電極層6aとの付着強度が大きいことが好ましい。透明電極層と絶縁層との付着強度を大きくすることにより、めっき工程中に、絶縁層が剥離しにくくなり、透明電極層上への金属の析出を防ぐことができる。
【0120】
絶縁層9には、光吸収が少ない材料を用いることが好ましい。絶縁層9は、光電変換部50の光入射面側に形成されるため、絶縁層による光吸収が小さければ、より多くの光を光電変換部へ取り込むことが可能となる。例えば、絶縁層9が透過率90%以上の十分な透明性を有する場合、絶縁層での光吸収による光学的な損失が小さく、第二集電極形成後に絶縁層を除去することなく、そのまま太陽電池として使用することができる。そのため、太陽電池の製造工程を単純化でき、生産性をより向上させることが可能となる。絶縁層9が除去されることなくそのまま太陽電池として使用される場合、絶縁層9は、透明性に加えて、十分な耐候性、および熱・湿度に対する安定性を有する材料を用いることがより望ましい。
【0121】
絶縁層の材料は、無機絶縁性材料でも、有機絶縁性材料でもよい。無機絶縁性材料の中でも、めっき液耐性や透明性の観点からは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタル
、フッ化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等が好ましく用いられる。中でも、電気的特性や透明電極層との密着性等の観点からは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタル
、フッ化マグネシウム等が好ましく、屈折率を適宜に調整し得る観点からは、酸化シリコンや窒化シリコン等が特に好ましく用いられる。なお、これらの無機材料は、化学量論的(stoichiometric)組成を有するものに限定されず、酸素欠損等を含むものであってもよい。有機絶縁性材料としては、例えば、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル、エポキシ、ポリウレタン等の材料を用いることができる。
【0122】
絶縁層9の膜厚は、絶縁層の材料や形成方法に応じて適宜設定される。第一集電極として、低融点材料を含むものを用い、第一集電極上にも絶縁層を形成する場合、絶縁層9の膜厚は、アニール処理における第一集電極の表面形状の変化に伴って生じる界面の応力等によって、絶縁層に開口部が形成され得る程度に薄いことが好ましい。かかる観点から、絶縁層9の膜厚は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。また、第一集電極非形成部における絶縁層9の光学特性や膜厚を適宜設定することで、光反射特性を改善し、太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させ、変換効率をより向上させることが可能となる。このような効果を得るためには、絶縁層9の屈折率が、光電変換部50表面の屈折率よりも低いことが好ましい。また、絶縁層9に好適な反射防止特性を付与する観点から、膜厚は30nm〜250nmの範囲内で設定されることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内で設定されることがより好ましい。また、無機絶縁性材料を塗布する場合、テクスチャの凹部や凸部が満たされるように1μm以上が好ましく3μm以上がより好ましい。さらに第一集電極の高さを超えないように15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。なお、第一集電極上にも絶縁層を形成する場合、第一集電極形成領域上の絶縁層の膜厚と第一集電極非形成領域上の絶縁層の膜厚は異なっていてもよい。例えば、第一集電極形成領域では、アニール処理による開口部の形成を容易とする観点で絶縁層の膜厚が設定され、第一集電極非形成領域では、適宜の反射防止特性を有する光学膜厚となるように絶縁層の膜厚が設定されてもよい。
【0123】
ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層(一般には屈折率:1.9〜2.1程度)を有する場合、界面での光反射防止効果を高めて太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させるために、絶縁層の屈折率は、空気(屈折率=1.0)と透明電極層との中間的な値であることが好ましい。また、太陽電池セルが封止されてモジュール化される場合、絶縁層の屈折率は、封止材と透明電極層の中間的な値であることが好ましい。かかる観点から、絶縁層9の屈折率は、例えば1.4〜1.9が好ましく、1.5〜1.8がより好ましく、1.55〜1.75がさらに好ましい。また、屈折率を上記範囲にすることで、めっき液に対する撥水性を抑制できることから、めっき層の膜厚、膜質を容易に調整できると考えられる。
【0124】
絶縁層の屈折率は、絶縁層の材料、組成等により所望の範囲に調整され得る。例えば、酸化シリコンの場合は、酸素含有量を小さくすることにより、屈折率が高くなる。なお、本明細書における屈折率は、特に断りがない限り、波長550nmの光に対する屈折率であり、分光エリプソメトリーにより測定される値である。また、絶縁層の屈折率に応じて、反射防止特性が向上するように絶縁層の光学膜厚(屈折率×膜厚)が設定されることが好ましい。
【0125】
絶縁層は、公知の方法を用いて形成できる。例えば、酸化シリコンや窒化シリコン等の無機絶縁性材料の場合は、プラズマCVD法、スパッタ法等の乾式法が好ましく用いられる。また、有機絶縁性材料の場合は、スピンコート法、スクリーン印刷法等の湿式法が好ましく用いられる。これらの方法によれば、ピンホール等の欠陥が少なく、緻密な構造の膜を形成することが可能となる。
【0126】
中でも、
図2に示す結晶シリコン系太陽電池のように、光電変換部50の表面にテクスチャ構造(凹凸構造)を有する場合、テクスチャの凹部や凸部に精度よく膜形成できる観点から、絶縁層9はプラズマCVD法やスクリーン印刷法により形成されることが好ましい。精度のよい絶縁層を用いることにより、めっき処理時の透明電極層へのダメージを低減できることに加えて、透明電極層上への金属の析出を防止することができる。このように精度のよい絶縁膜は、
図2の結晶シリコン系太陽電池におけるシリコン系薄膜のように、光電変換部50内部の層に対しても、水や酸素などのバリア層として機能し得るため、太陽電池の長期信頼性の向上の効果も期待できる。
【0127】
第一集電極と第二集電極の間に絶縁層がある場合、絶縁層9は、第一集電極71と第二集電極72との付着力の向上にも寄与し得る。例えば、下地電極層である銀層上にめっき法により銅層が形成される場合、銀層と銅層との付着力は小さいが、酸化シリコン等の絶縁層上に銅層が形成されることにより、第二集電極の付着力が高められ、太陽電池の信頼性を向上することが期待される。
【0128】
上述のように、第一集電極として例えば低融点材料を有する場合、第一集電極71上に絶縁層が形成された後、第二集電極72が形成される前にアニール処理が行われる。アニール処理時に、第一集電極71が低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温に加熱され、低融点材料が流動状態となるために、第一集電極の表面形状が変化する。この変化に伴って、その上に形成される絶縁層9に開口部9hが形成される。したがって、その後のめっき工程において、第一集電極71の表面の一部が、めっき液に曝されて導通するため、
図4(E)に示すように、この導通部を起点として金属を析出させることが可能となる。
【0129】
アニール処理時におけるアニール温度(加熱温度)Taは、低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温、すなわちT
1<Taであることが好ましい。アニール温度は、第一集電極の材料の組成や含有量等に応じて適宜設定され得る。また、前述のごとく、アニール温度Taは、光電変換部50の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0130】
なお、絶縁層への開口部の形成方法は、上記のように、絶縁層形成後にアニール処理を行う方法に限定されない。例えば、基板を加熱しながら絶縁層が形成されることで、絶縁層の形成と略同時に開口部が形成されてもよい。絶縁層形成工程においてアニール処理を行う場合、絶縁層の材料および組成、製膜条件(製膜方法、基板温度、導入ガスの種類および導入量、製膜圧力、パワー密度等)を適宜調整することにより、絶縁層に開口部を形成することができる。
【0131】
(第二集電極)
上記のように、開口部9hを有する絶縁層9が形成された後、第一集電極形成領域の絶縁層9上に第二集電極72がめっき法により形成される。この際、第二集電極として析出させる金属は、めっき法で形成できる材料であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム等、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0132】
めっき工程の後には、めっき液除去工程を設けて、基板12の表面に残留しためっき液を除去することが好ましい。めっき液除去工程を設けることによって、アニール処理で形成された絶縁層9の開口部9h以外を起点として析出し得る金属を除去することができる。開口部9h以外を起点として析出する金属としては、例えば絶縁層9のピンホール等を起点とするものが挙げられる。めっき液除去工程によってこのような金属が除去されることによって、遮光損が低減され、太陽電池特性をより向上させることが可能となる。
【0133】
本発明においては、集電極形成後(めっき工程後)に絶縁層除去工程が行われてもよい。特に、絶縁層として光吸収の大きい材料が用いられる場合は、絶縁層の光吸収による太陽電池特性の低下を抑制するために、絶縁層除去工程が行われることが好ましい。絶縁層の除去方法は、絶縁層材料の特性に応じて適宜選択される。なお、絶縁層として光吸収の小さい材料が用いられる場合は、絶縁層除去工程が行われる必要はない。
【実施例】
【0134】
以下、
図2に示すヘテロ接合太陽電池に関する実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0135】
[表面粗さ測定]
第一集電極、第二集電極の表面を、キーエンス社製のレーザー顕微鏡VK−8510を用いて、JIS B 0601:2001(ISO 4287:1997に対応)に基づいて、表面粗さRaを測定した。
【0136】
[粘度測定]
印刷ペーストの粘度は、株式会社ブルックフィールド社製の回転式粘度計により、溶液温度25℃回転速度10rpmで測定した。
【0137】
(実験例1)
実験例1のヘテロ接合太陽電池を、以下のようにして製造した。
【0138】
一導電型単結晶シリコン基板として、入射面の面方位が(100)で、厚みが200μmのn型単結晶シリコンウェハを用い、このシリコンウェハを2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜が除去された後、超純水によるリンスが2回行われた。このシリコン基板を、70℃に保持された5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、ウェハの表面をエッチングすることでテクスチャが形成された。その後に超純水によるリンスが2回行われた。原子間力顕微鏡(AFM パシフィックナノテクノロジー社製)により、ウェハの表面観察を行ったところ、ウェハの表面はエッチングが最も進行しており、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
【0139】
エッチング後のウェハがCVD装置へ導入され、その光入射側に、真性シリコン系薄膜2aとしてi型非晶質シリコンが5nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコンの製膜条件は、基板温度:170℃、圧力:100Pa、SiH4/H2流量比:3/10、投入パワー密度:0.011W/cm2であった。なお、本実施例における薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて製膜された薄膜の膜厚を、分光エリプソメトリー(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)にて測定することにより求められた製膜速度から算出された値である。
【0140】
i型非晶質シリコン層2a上に、逆導電型シリコン系薄膜3aとしてp型非晶質シリコンが7nmの膜厚で製膜された。p型非晶質シリコン層3aの製膜条件は、基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH4/B2H6流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm2であった。なお、上記でいうB2H6ガス流量は、H2によりB2H6濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0141】
次にウェハの裏面側に、真性シリコン系薄膜2bとしてi型非晶質シリコン層が6nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコン層2bの製膜条件は、上記のi型非晶質シリコン層2aの製膜条件と同様であった。i型非晶質シリコン層2b上に、一導電型シリコン系薄膜3bとしてn型非晶質シリコン層が4nmの膜厚で製膜された。n型非晶質シリコン層3bの製膜条件は、基板温度:170℃、圧力:60Pa、SiH4/PH3流量比:1/2、投入パワー密度:0.01W/cm2であった。なお、上記でいうPH3ガス流量は、H2によりPH3濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0142】
この上に透明電極層6aおよび6bとして、各々酸化インジウム錫(ITO、屈折率:1.9)が100nmの膜厚で製膜された。ターゲットとして酸化インジウムを用い、基板温度:室温、圧力:0.2Paのアルゴン雰囲気中で、0.5W/cm2のパワー密度を印加して透明電極層の製膜が行われた。
【0143】
裏面側透明電極層6b上には、第一裏面電極81として、スパッタ法により銀が100nmの膜厚で形成された。第二裏面電極82として第一の第二裏面電極821と第二の第二裏面電極822、光入射側透明電極層6a上の第一集電極71、第二集電極72として第一の第二集電極721と第二の第二集電極722を有する集電極7が以下のように形成された。
【0144】
第一集電極71の形成には、導電性材料として低融点材料(粒径DL=0.3〜0.7μmの銀微粒子)を用い、バインダー樹脂としてエポキシ系樹脂を含む印刷ペーストが用いられた(粘度=80Pa・s)。さらにこの印刷ペーストを、集電極パターンに対応する開口幅(L=60μm)を有する#230メッシュのスクリーン版を用いて、スクリーン印刷し、130℃で乾燥が行われた。
【0145】
第一集電極71が形成されたウェハが、CVD装置に投入され、絶縁層9として酸化シリコン層(屈折率:1.5)が、プラズマCVD法により100nmの厚みで光入射面側に形成された。絶縁層9の製膜条件は、基板温度:135℃、圧力133Pa、SiH4/CO2流量比:1/20、投入パワー密度:0.05W/cm2(周波数13.56MHz)であった。製膜後、180℃でアニールが行われた。
【0146】
以上のようにアニール工程までが行われた基板が、めっき槽に投入された。めっき液には、硫酸銅五水和物、硫酸、および塩化ナトリウムが、それぞれ120g/l、130g/l、および70mg/lの濃度となるように調製された溶液に、添加剤(上村工業製:品番ESY−2B、ESY−H、ESY−1A)が添加されたものが用いられた。このめっき液を用いて、温度25℃、電流700mA、時間7分の条件でめっきが行われ、第一集電極71上の絶縁層上及び第一裏面電極上81に、10μm程度の厚みでそれぞれ第一の第二集電極721及び第一の第二裏面電極821として銅が均一に析出した。第一集電極が形成されていない領域への銅の析出はほとんど見られなかった。
【0147】
その後、基板が、別のめっき槽に投入された。めっき液には、メタンスルホン酸が96g/lの濃度にとなるように調製されたが用いられた。このめっき液を用いて、温度40℃、電流100mA、時間2分の条件でめっきが行われ、第一の第二集電極721、第一の第二裏面電極上に3μm程度の厚みでそれぞれ第二の第二集電極722、第二の第二裏面電極822として錫が均一に析出した。第一集電極が形成されていない領域への銅、錫の析出はほとんど見られなかった。その後、レーザー加工機によりセル外周部のシリコンウェハが0.5mmの幅で除去され、本発明のヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0148】
次に第二の第二集電極、第二の第二裏面電極が形成されたバスバー電極上に厚み40μmの錫60%、鉛40%の合金半田層でめっきされた銅箔からなる配線部材を配置した後、配線部材の上部より、250℃の熱風で3秒加熱することで、合金半田を溶融させ、第二集電極に接続した。
【0149】
以上の様にして、配線部材34を張り付けた太陽電池を用い、ガラス、EVA(封止材)、太陽電池、EVA、及び裏面保護シートの順に積層させた。その後、大気圧での加熱圧着を5分間行い、EVA樹脂で太陽電池をモールドした。続いて、150℃にて50分間保持して、EVA樹脂を架橋させて太陽電池モジュール200とした。
【0150】
(実験例2)
第一集電極71形成用印刷ペーストの導電材料の導電材料径、第一の第二集電極の印加電流、時間が表1に示すように変更された点を除いて、実験例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0151】
(実験例3〜6)
低融点材料としてSnBi金属粉末(融点T1=141℃)と、高融点材料として銀粉末(粒径DH=2〜3μm、融点T2=971℃)と20:80の重量比で含む、導電性材料を用い、また第一集電極71形成用印刷ペーストの粘度、低融点材料径、および第二集電極めっき時の印加電流、時間が表1に示すように変更された点を除いて、実験例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0152】
(実験例7)
裏面電極として、第一裏面電極81と第一の第二裏面電極821のみが形成された点を除いて、実験例3と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0153】
(実験例8)
第一集電極形成用の印刷ペーストとして、低融点材料を含まない銀ペースト(すなわち金属材料粉末と銀粉末との比率を0:100としたもの)が用いられた点を除いて、実験例3と同様にして第一集電極(銀電極)71の形成までが行われた。その後、絶縁層形成工程、アニール工程、第二集電極形成工程のいずれも実施せず、この銀電極を集電極とするヘテロ接合太陽電池が作製された。ここで、裏面電極は第一裏面電極の銀のみを形成した構造とした。
【0154】
(実験例9)
第二集電極の印加電流、時間が表1に示すように変更され、さらに裏面電極として、第一裏面電極81と第一の第二裏面電極821のみが形成された点を除いて、実験例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0155】
[太陽電池セル特性測定、モジュール初期性能測定]
各実験例のヘテロ接合太陽電池セルの太陽電池特性の測定を行った。また、実験例8に示す方法において作製した太陽電池セルにおける太陽電池特性評価結果を基準(1.0)とし、各実験例に係る太陽電池セルにおける太陽電池特性(セル性能)の評価結果を比較する事により、出力の相関を評価した。
【0156】
[剥離強度試験]
めっき前後の集電極の表面粗さと、該集電極と配線部材とを合金半田にて接続した際の剥離強度との関係を検証した。
【0157】
具体的には、
図3に示すように、各実験例で得られた太陽電池の集電極の上に、幅:1.5mm、銅厚み150μm、合金半田厚み40μmの配線部材を接続した。この際、第一の第二集電極、第二の第二集電極がめっきにより形成されたものは、めっき前後における第一集電極、第一の第二集電極、第二の第二集電極の表面粗さ(Ra1、Ra2’、Ra2)を求め、第二集電極上に前記配線部材と接続させた。一方、めっきを行わなかった実験例8については、めっき前の第一集電極の表面粗さ(Ra1)を求めた。
【0158】
その後、剥離強度試験器(IMADA社製 MX−2000N)を用いて、銅箔の法線方向に沿って、40mm/分の速度で配線部材(銅箔)を引張り、銅箔が剥離したときの最大荷重を剥離強度(g)として求めた。また、各実験例に係る太陽電池セルにおける剥離強度を比較する事により、出力の相関を評価した。
【0159】
[温度サイクル試験]
各実験例に係る太陽電池モジュールにおいて、JIS C 8917に従い、温度サイクル試験を実施した。具体的には、温度サイクル試験を実施する前のモジュール出力と、温度サイクル試験を実施した後のモジュール出力を比較する事により、出力の相関を評価した。また各実験例において作製した太陽電池モジュールにおける温度サイクル試験前の出力を各々1とし、温度サイクル試験実施後の出力すなわち、サイクル試験前後の保持率(モジュール性能)を比較する事により、出力の相関を評価した。保持率は、95%以上を合格とした。
【0160】
上記の結果をまとめたものを表1に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
実験例1〜7において、めっき工程により第二集電極として銅が析出したのは、アニール処理により第一集電極形成領域上の絶縁層に開口部が形成され、第一集電極がめっき液と接触(導通)し、この開口部を析出の起点として、めっきが行われたためである。
【0163】
表1から、第一集電極71形成用印刷ペーストの粘度または導電性材料として用いた低融点材料径を変更することにより、第一集電極表面の表面粗さRa1を適宜調整できることがわかる。
【0164】
実験例3と4、もしくは実験例5と6、を各々比較することにより、印刷ペーストの粘度を高くすると、第一集電極表面の表面粗さRa1を大きくできることがわかる。また、実験例3と5、もしくは実験例4と6、を各々比較することにより、低融点材料径を大きくすると、第一集電極表面の表面粗さRa1を大きくできることがわかる。この結果から、上記実施形態において、第一集電極71形成用印刷ペーストの粘度または導電性材料の粒径などを変更させることにより、第一集電極表面の表面粗さRa1を制御できると考えられる。
実験例2と3を比較すると、第一集電極のRa1は3.5μmと3.2μmとほぼ同程度であるのに対し、第二集電極をめっきにより形成する際の印加電流が大きい実験例3の方がRa2=5.2μmとなり、Ra2=0.9μmの実験例2よりも大きくなった。またそれに伴い、剥離強度も大きくなり、結果としてサイクル試験後のモジュール性能が向上した。これにより、めっきの際の印加電流等、めっき条件を適宜調整することにより、第二集電極の表面粗さを調整することができることがわかる。さらに、実験例1〜6を比較すると、第二集電極のめっき条件を同じにした場合、その下地となる第一集電極のRa1が大きくなるにつれて、その上に形成される第二集電極の表面粗さ(Ra2’およびRa2)が大きくなることがわかる。
以上より、第二集電極を形成する際のめっき条件や、下地となる層の表面粗さを調整することにより、第二集電極の表面粗さを所望の範囲に調整できると考えられる。
【0165】
実験例1〜6と実験例8とのセルにおける太陽電池特性(セル性能)の比較から、本発明の太陽電池は、銀ペースト電極1層からなる集電極を有する実験例8のような従来の太陽電池に比べて、太陽電池セル特性が向上している。これは、実施例の太陽電池においては、集電極の抵抗が低くなり、曲線因子が向上したためと考えられる。
【0166】
実験例1〜6の比較より、Ra1が1.0μm程度の小さい範囲では、Ra1が大きくなるにつれてセル特性が向上した。またRa1が1.0μm以上の実験例2〜5と、Ra1=9.7μmの実験例6では、セル特性がほぼ同程度になった。これは、Ra1が1.0μmより大きくなることで、第一集電極と第二集電極の密着性が向上したためと考えられる。
【0167】
実験例1〜6は、実験例8に比べて剥離強度、モジュール初期性能が向上した。実験例2〜4を比較すると、Ra2が1.0μmから大きくなるにつれて剥離強度、モジュール初期性能が向上した。これは、Ra2が大きくなると、集電極が配線材に埋め込まれることにより接続される表面積を大きくできるためと考えられる。
【0168】
剥離強度は主に、第二集電極と配線部材の導電体との接続性に影響を及ぼされていると考えられることから、Ra2を3.0〜13.0μmとすることにより、第二集電極と配線部材の導電体との接続性や導通性がより向上すると考えられる。
【0169】
さらに実験例9と実験例3を比較する。実験例9と実験例3は、第二集電極の印加電流は同じで、Ra1<Ra’2<Ra2となったが、実験例9より実験例3の方が剥離強度が大きくなった。これは、実験例9では、Ra1<1のため、第一集電極の表面凹凸が小さく、第一集電極と第一の第二集電極の密着性が弱く、剥離強度が低下したのに対し、実験例3では、第一集電極上に所望の第二集電極を形成できたため、剥離強度が向上し、モジュール性能に寄与したためと考えられる。
【0170】
また実験例9は、実験例1とRa1は同等であるものの、セル特性および剥離強度は実験例9の方が低下した。これは、第一の第二集電極形成時の印加電流が実験例1の方が小さく、実験例9に比べて、より緻密に第一の第二集電極が形成されて第一集電極との密着性が向上したためと考えられる。
【0171】
実験例1〜6、及び実験例8とのモジュールにおける出力評価(保持率)の比較から、実験例1〜6の太陽電池モジュールは、銀ペースト電極からなる集電極を有する従来の太陽電池(実験例8)に比べて、温度サイクル試験後のモジュール効率が向上している。これは、実験例1〜6の太陽電池においては、第一集電極と第二集電極の密着強度向上によりセル性能が高くなったことに加え、第二集電極と配線部材との接続性が高いため、温度サイクル試験における信頼性が高くなったためと考えられる。
【0172】
また、実験例3〜6は実験例1と比べてモジュールに対する温度サイクル試験後の保持率が向上した。これはRa2を大きくすると第二集電極と配線部材の導電体との接続面積が大きくなるため、導通性が向上したためであると考えられる。
【0173】
実験例3と実験例7を比較すると、実験例3の方が、剥離強度や温度サイクル試験後の保持率が向上した。これは、実験例7のように裏面電極を第一裏面電極、第一の第二裏面電極のみの構造では、配線材に接続される電極が各々、第二の第二集電極(錫)と第一の第二裏面電極(銅)であり、受光面と裏面の最表面電極の主成分が異なっているのに対し、実験例3のように第一裏面電極、第一の第二裏面電極、第二の第二裏面電極の構造とし、それぞれ第一集電極、第一の第二集電極、第二の第二集電極とすることにより配線材に接続される電極が各々、第二集電極(錫)と第二裏面電極(錫)であり、受光面と裏面の際表面電極の導電材料の主成分が同じであるため、温度変化に対する材料の膨張、収縮が表裏で同程度となり、密着性が向上して剥離が生じにくくなり、保持率が向上したためと考えられる。
【0174】
以上、実験例を用いて説明したように、本発明によれば、集電極の表面粗さを規定することにより太陽電池モジュールの性能を向上でき、長期信頼性の向上が可能となる。さらに、太陽電池の表裏の電極の層構成の主成分を同一にし、熱膨張係数を同程度にすることにより、温度変化に対する、信頼性をより向上させることができる。