特許第6362933号(P6362933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ジャパンエンジンコーポレーションの特許一覧

特許6362933エンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法
<>
  • 特許6362933-エンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法 図000002
  • 特許6362933-エンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法 図000003
  • 特許6362933-エンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法 図000004
  • 特許6362933-エンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法 図000005
  • 特許6362933-エンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法 図000006
  • 特許6362933-エンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362933
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】エンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20180712BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20180712BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   F02M21/02 301A
   F02M21/02 301R
   F02D41/02 330
   F02D41/04 330P
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-127517(P2014-127517)
(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公開番号】特開2016-8506(P2016-8506A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(72)【発明者】
【氏名】岩永 健一
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 壮太
(72)【発明者】
【氏名】平岡 直大
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−058962(JP,A)
【文献】 特開2008−223493(JP,A)
【文献】 特開2009−133256(JP,A)
【文献】 特開2013−184517(JP,A)
【文献】 特開平10−061460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
F02D 41/02
F02D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスによって運転されるエンジンへ燃料を噴射する燃料ガス噴射弁と、
前記燃料ガスの発熱量を計測する発熱量計測手段と、
前記燃料ガス噴射弁を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記発熱量計測手段によって計測された発熱量計測値を有する前記燃料ガスが前記エンジンに到達する到達時間を予測し、前記発熱量計測値及び前記到達時間に応じて前記燃料ガス噴射弁の噴射タイミングの制御を行い、
予め前記エンジンのエンジン負荷ごとに、前記燃料ガスの前記発熱量計測値と前記燃料ガス噴射弁の噴射期間とを関連づけてマッピングした制御マップと、前記燃料ガスの前記発熱量計測値と前記エンジンに異常燃焼が発生する場合の前記燃料ガス噴射弁の限界値である最大噴射量とを関連づけてマッピングした前記制御マップとをそれぞれ記憶しておき、前記エンジンの前記エンジン負荷と前記発熱量計測値に基づき各前記制御マップから前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間および前記最大噴射量を取得し、前記燃料ガス噴射弁の制御を行い、
前記発熱量計測手段によって計測された前記発熱量計測値に基づき前記制御マップから取得した前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間が前記到達時間に前記発熱量計測値における前記最大噴射量を超えることが予測される場合に、前記到達時間前に前記燃料ガス噴射弁に対し前記燃料ガスの前記噴射タイミングを遅らせる制御を行うことを特徴とするエンジン制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記発熱量計測手段によって計測された前記発熱量計測値に基づき前記制御マップから取得した前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間が前記到達時間に前記発熱量計測値における前記最大噴射量を超えることが予測される場合に、前記到達時間前に前記燃料ガス噴射弁に対し前記燃料ガスの噴射量を減らす制御を行うことを特徴とする請求項に記載のエンジン制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記発熱量計測手段によって計測された前記発熱量計測値が第1の所定値を超えることが予測される場合、前記燃料ガスの前記発熱量計測値が前記第1の所定値を超える前に前記最大噴射量を小さくすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンジン制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記発熱量計測手段によって計測された前記発熱量計測値が第1の所定値よりも小さい第2の所定値を下回ることが予測される場合、前記発熱量計測値が前記第2の所定値を下回ると同時に前記最大噴射量を大きくすることを特徴とする請求項に記載のエンジン制御システム。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載されたエンジン制御システムを備えたエンジン。
【請求項6】
請求項に記載されたエンジンを搭載する船舶。
【請求項7】
発熱量計測値を有する燃料ガスがエンジンに到達する到達時間を予測するステップと、
前記発熱量計測値及び前記到達時間に応じて燃料ガス噴射弁の噴射タイミングの制御を行うステップと、
予め前記エンジンのエンジン負荷ごとに、前記燃料ガスの前記発熱量計測値と前記燃料ガス噴射弁の噴射期間とを関連づけてマッピングした制御マップと、前記燃料ガスの前記発熱量計測値と前記エンジンに異常燃焼が発生する場合の前記燃料ガス噴射弁の限界値である最大噴射量とを関連づけてマッピングした前記制御マップとをそれぞれ記憶するステップと、
前記エンジンの前記エンジン負荷と前記発熱量計測値に基づき各前記制御マップから前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間および前記最大噴射量を取得し、前記燃料ガス噴射弁の制御を行うステップと、
前記発熱量計測値に基づき前記制御マップから取得した前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間が前記到達時間に前記発熱量計測値における前記最大噴射量を超えることが予測される場合に、前記到達時間前に前記燃料ガス噴射弁に対し前記燃料ガスの前記噴射タイミングを遅らせる制御を行うステップと、
を備えることを特徴とするエンジン制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスを燃料として用いるエンジンにおいては、発熱量が高くかつ発熱量が変動しないガスを燃料ガスとして用いることで安定した運転を行うことができる。
しかし、供給される燃料ガスの発熱量が変動する場合には、エンジンの運転が不安定になる恐れがある。
そこで、例えば特許文献1では、燃料ガスの単位体積当たりの発熱量を計測し、その計測結果に基づいてエンジンの空燃比、点火タイミング及び高発熱量燃料ガスの供給を制御することが開示されている。
また、特許文献2には、筒内圧力を検出し、筒内最高圧力の過昇やノッキング発生などの過大な筒内圧力となる過剰燃焼が検知されると、補助燃料ガスの供給量を減少させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−55952号公報
【特許文献2】特開2005−171975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された発明では、定置用のエンジンに関する発明であるため、例えば船舶に搭載されるエンジンなどのように、供給される燃料ガスの貯留タンクがエンジン運転時に揺動することにより燃料ガスが有する発熱量の変動をコントロールできない場合について検討されていないという問題があった。
また、筒内の異常な状態(例えばノッキング)を回避するために特許文献1及び2の技術を用いる場合、筒内の異常な状態を計測してそれをもとに判断し制御するため、制御を行う前提として筒内に異常な状態が発生している必要があった。つまり、制御を行う前に筒内が極端に異常な状態となることによりエンジンにダメージを与えてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃料ガスの発熱量の変動に対応可能なエンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のエンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法は以下の手段を採用する。
燃料ガスによって運転されるエンジンへ燃料を噴射する燃料ガス噴射弁と、前記燃料ガスの発熱量を計測する発熱量計測手段と、前記燃料ガス噴射弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記発熱量計測手段によって計測された発熱量計測値を有する前記燃料ガスが前記エンジンに到達する到達時間を予測し、前記発熱量計測値及び前記到達時間に応じて前記燃料ガス噴射弁の噴射タイミングの制御を行い、予め前記エンジンのエンジン負荷ごとに、前記燃料ガスの前記発熱量計測値と前記燃料ガス噴射弁の噴射期間とを関連づけてマッピングした制御マップと、前記燃料ガスの前記発熱量計測値と前記エンジンに異常燃焼が発生する場合の前記燃料ガス噴射弁の限界値である最大噴射量とを関連づけてマッピングした前記制御マップとをそれぞれ記憶しておき、前記エンジンの前記エンジン負荷と前記発熱量計測値に基づき各前記制御マップから前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間および前記最大噴射量を取得し、前記燃料ガス噴射弁の制御を行い、前記発熱量計測手段によって計測された前記発熱量計測値に基づき前記制御マップから取得した前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間が前記到達時間に前記発熱量計測値における前記最大噴射量を超えることが予測される場合に、前記到達時間前に前記燃料ガス噴射弁に対し前記燃料ガスの前記噴射タイミングを遅らせる制御を行うことを特徴とするエンジン制御システムを採用する。
【0007】
本発明によれば、燃料ガスによって運転されるエンジンへ燃料を噴射する燃料ガス噴射弁と、燃料ガスの発熱量を計測する発熱量計測手段と、燃料ガス噴射弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、発熱量計測手段によって計測された発熱量計測値を有する燃料ガスがエンジンに到達する到達時間を予測し、発熱量計測値及び到達時間に応じて燃料ガス噴射弁の制御を行うことから、燃料ガスの発熱量が変動する場合であっても、あらかじめ発熱量変動を予測してエンジンに供給される燃料ガスの発熱量に応じた適切な燃料ガスの噴射量を調整することができる。また、ノッキング(異常燃焼)が発生する前に燃料ガス噴射弁の制御を行うことができる。これにより、エンジンの燃料ガスが不足して必要な出力を取り出せないことや、燃料ガスが供給過多になりノッキングが発生することを予め抑止し、エンジンの安定稼働を行うことができる。
【0009】
本発明によれば、制御部は、予めエンジンのエンジン負荷ごとに、燃料ガスの発熱量計測値と燃料ガス噴射弁の噴射期間とを関連づけてマッピングした制御マップを記憶しておき、運転中のエンジンのエンジン負荷と発熱量計測値に基づき制御マップから燃料ガス噴射弁の噴射期間を取得して制御を行うことから、エンジンのエンジン負荷および燃料ガスの発熱量計測値に応じた燃料ガス噴射弁の調整が可能である。また、燃料ガスの発熱量が変動しても、それに応じて燃料ガス噴射弁を制御することから、エンジンに対して適切な燃料ガス供給が行え、安定したエンジンの運転ができる。
【0010】
本発明によれば、制御部は、予めエンジンのエンジン負荷ごとに、燃料ガスの発熱量計測値と燃料ガス噴射弁の最大噴射量とを関連づけてマッピングした制御マップを記憶する。最大噴射量は、ノッキングを起こしエンジンが損傷する恐れがある時の限界値であることから、最大噴射量を含む制御マップを用いることで、エンジンの負荷及び発熱量計測値に応じてノッキングを発生させないように燃料ガス噴射弁の制御を行うことができる。
【0011】
本発明によれば、制御部は、発熱量計測値に基づき制御マップから取得した燃料ガス噴射弁の噴射期間が到達時間にその発熱量計測値における最大噴射量を超えることが予測される場合に、到達時間前に燃料ガス噴射弁に対し燃料ガスの噴射タイミングを遅らせる制御を行うことから、ノッキングが発生する前に燃料ガスの噴射タイミングを遅らせることでノッキングを回避することができる。
【0012】
上記発明において、前記制御部は、前記発熱量計測手段によって計測された前記発熱量計測値に基づき前記制御マップから取得した前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間が前記到達時間に前記発熱量計測値における前記最大噴射量を超えることが予測される場合に、前記到達時間前に前記燃料ガス噴射弁に対し前記燃料ガスの噴射量を減らす制御を行うこととしてもよい。
【0013】
本発明によれば、制御部は、発熱量計測値に基づき制御マップから取得した燃料ガス噴射弁の噴射期間が到達時間にその発熱量計測値における最大噴射量を超えることが予測される場合に、到達時間前に燃料ガス噴射弁に対し燃料ガスの噴射量を減らす制御を行うことから、ノッキングが発生する前に燃料ガスの噴射量を減らすことでノッキングを回避することができる。
【0015】
本発明によれば、制御部は、発熱量計測値に基づき制御マップから取得した燃料ガス噴射弁の噴射期間が到達時間にその発熱量計測値における最大噴射量を超えることが予測される場合に、到達時間前に燃料ガス噴射弁に対し燃料ガスの噴射タイミングを遅らせる制御を行うことから、ノッキングが発生する前に燃料ガスの噴射タイミングを遅らせることでノッキングを回避することができる。
【0016】
上記発明において、前記制御部は、前記発熱量計測手段によって計測された前記発熱量計測値が第1の所定値を超えることが予測される場合、前記燃料ガスの前記発熱量計測値が前記第1の所定値を超える前に前記最大噴射量を小さくすることとしてもよい。
【0017】
本発明によれば、制御部は、発熱量計測値が第1の所定値を超えることが予測される場合、第1の所定値を超える前に最大噴射量を小さくすることから、燃料ガス噴射弁の噴射期間を短くし噴射量を抑えることが可能となる。また、発熱量が高い燃料ガスが消費される前に最大噴射量を小さく変更することで、ノッキングによるエンジンの損傷を防止することができる。
【0018】
上記発明において、前記制御部は、前記発熱量計測手段によって計測された前記発熱量計測値が第1の所定値よりも小さい第2の所定値を下回ることが予測される場合、前記発熱量計測値が前記第2の所定値を下回ると同時に前記最大噴射量を大きくすることとしてもよい。
【0019】
本発明によれば、制御部は、発熱量計測値が第1の所定値よりも小さい第2の所定値を下回ることが予測される場合、第2の所定値を下回ると同時に最大噴射量を大きくすることから、燃料ガス噴射弁の噴射期間を長くし、噴射量を多くすることを許容できる。また、発熱量が低い燃料ガスが消費される時に最大噴射量を大きくすることを許容することにより、エンジンの出力が不足するのを防ぐことができる。
【0020】
本発明は、上記のいずれかに記載されたエンジン制御システムを備えたエンジンを採用する。
【0021】
本発明によれば、エンジンは、前述のいずれかのエンジン制御システムを備えることから、エンジンに対し供給される燃料ガスの発熱量とその燃料ガスがエンジンに到達する到達時間から適切な燃料ガスの噴射量が制御される。そのため、エンジンの負荷に対して燃料ガスが不足して必要な出力を取り出せないことや、エンジンの負荷に対して燃料ガスが供給過多になりノッキングが発生することを予め抑止し、エンジンは安定稼働を行うことができる。
【0022】
本発明は、上記に記載されたエンジンを搭載する船舶を採用する。
【0023】
本発明によれば、船舶は前述のエンジンを搭載することから、供給される燃料ガスの発熱量とその燃料ガスがエンジンに到達する到達時間から適切な燃料ガスの噴射量が制御されるエンジンにより駆動する。そのため、エンジンの負荷に対して燃料ガスが不足して必要な出力を取り出せないことやエンジンの負荷に対して燃料ガスが供給過多になりノッキングが発生することを予め抑止し、エンジンが安定稼働するため、船舶は安定した運行を行うことができる。
【0024】
本発明は、発熱量計測値を有する燃料ガスがエンジンに到達する到達時間を予測するステップと、前記発熱量計測値及び前記到達時間に応じて燃料ガス噴射弁の噴射タイミングの制御を行うステップと、予め前記エンジンのエンジン負荷ごとに、前記燃料ガスの前記発熱量計測値と前記燃料ガス噴射弁の噴射期間とを関連づけてマッピングした制御マップと、前記燃料ガスの前記発熱量計測値と前記エンジンに異常燃焼が発生する場合の前記燃料ガス噴射弁の限界値である最大噴射量とを関連づけてマッピングした前記制御マップとをそれぞれ記憶するステップと、前記エンジンの前記エンジン負荷と前記発熱量計測値に基づき各前記制御マップから前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間および前記最大噴射量を取得し、前記燃料ガス噴射弁の制御を行うステップと、前記発熱量計測値に基づき前記制御マップから取得した前記燃料ガス噴射弁の前記噴射期間が前記到達時間に前記発熱量計測値における前記最大噴射量を超えることが予測される場合に、前記到達時間前に前記燃料ガス噴射弁に対し前記燃料ガスの前記噴射タイミングを遅らせる制御を行うステップと、を備えることを特徴とするエンジン制御方法を採用する。
【0025】
本発明によれば、発熱量計測値を有する燃料ガスがエンジンに到達する到達時間を予測するステップと、発熱量計測値及び到達時間に応じて燃料ガス噴射弁の制御を行うステップと、を備えることから、燃料ガスの発熱量が変動する場合であっても、あらかじめ発熱量変動を予測してエンジンに供給される燃料ガスの発熱量に応じた適切な燃料ガスの噴射量を調整することができる。また、ノッキングが発生する前に燃料ガス噴射弁の制御を行うことができる。これにより、エンジンの燃料ガスが不足して必要な出力を取り出せないことや、燃料ガスが供給過多になりノッキングが発生することを予め抑止し、エンジンの安定稼働を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、変動する発熱量に応じて燃料ガス噴射弁の制御を行うので、ノッキングなどの筒内の異常な状態を回避することができる。
また、本発明によれば、筒内の異常な状態を事前に予測し回避することから、エンジンの損傷を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジン制御システムを示した概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るエンジン制御システムの特定のエンジン負荷における燃料ガスの発熱量計測値と噴射期間および最大噴射量との制御マップである。
図3】本発明の第1実施形態に係るエンジンの筒内圧力の時間経過を示したグラフである。
図4】従来のエンジンの筒内圧力の時間経過を示したグラフである。
図5】本発明の第2実施形態に係るエンジン制御システムのエンジン負荷と燃料ガスの噴射期間とのグラフである。
図6】本発明の第2実施形態に係る燃料ガスの発熱量計測値と最大噴射量の時間経過を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係るエンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係るエンジン制御システムが示されている。
エンジン制御システム1は、制御部20と、発熱量計(発熱量計測手段)50と、流量計(流量計測手段)60とを主な構成として備え、燃料ガスタンク30から燃料ガス噴射弁40を介してエンジン10へ供給される燃料ガスの制御を行う。
本実施形態では、エンジン制御システム1、エンジン10、燃料ガスタンク30及び燃料ガス噴射弁40は、船舶に搭載されている。この場合、エンジン10は船舶の主機として用いられる。例えば、液化天然ガス(LNG)を運搬する船舶であるならば、運搬するLNGの余剰分やLNGのボイルオフガス(BOG)を燃料ガスとして用いることが可能である。
【0029】
エンジン10には、燃料ガスタンク30から供給された燃料ガスが燃料ガス噴射弁40から噴射、供給され、エンジン10内部で燃焼される。また、燃焼に用いるためにエンジン10に取り込まれた空気は、燃料ガスとともに燃焼された後に排気となってエンジン10外部へ排出される。エンジン10に備えられた燃料ガス噴射弁40は、電磁弁により制御される。
燃料ガスタンク30からエンジン10への燃料ガス流路70には、発熱量計50及び流量計60が設置されている。発熱量計50と流量計60との間の燃料ガス流路70の距離はL1、流量計60とエンジン10との間の燃料ガス流路70の距離はL2である。
【0030】
発熱量計50は、エンジン10に供給される燃料ガスの発熱量を計測する。制御部20は、発熱量計50から実時間の発熱量計測値情報を取得する。
流量計60は、エンジン10に供給される燃料ガスの流量を計測する。制御部20は、流量計60から実時間の燃料ガス流量情報を取得する。
また制御部20は、実時間のエンジン負荷情報を取得する。
【0031】
制御部20は、たとえばコンピュータであり、CPU(中央演算処理装置)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置、外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置等などで構成されている。補助記憶装置には、各種プログラム(例えば、アプリケーションソフトウェア)が格納されており、CPUが補助記憶装置から主記憶装置にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0032】
燃料ガスタンク30に貯蔵されている燃料ガスは、LNG由来の場合、メタンが主成分とされている。その他の成分としては、数%から数十%のプロパン、ブタンなどが含まれている。
燃料ガスタンク30内では液相と気相とが存在するが、メタンとその他の成分との沸点が異なることから、液相と気相とではメタンやその他の成分の成分比が異なる。さらに、メタンとその他の成分とは発熱量が異なるため、気相の単位当たりの発熱量と液相の単位当たりの発熱量とはその発熱量が異なる。
一方、エンジン制御システム1及び燃料ガスタンク30は、船舶に搭載されていることから航行など外部からの影響により揺動する。よって、燃料ガスタンク30の揺動により、燃料ガスタンク30内の気相と液相との混合割合が不定期に変動することになり、燃料ガスタンク30から供給される燃料ガスの発熱量は不定期に変動する。
【0033】
一般的に、メタン以外のその他の成分であるプロパン及びブタンの発熱量はメタンの発熱量の約2倍である。そのため、エンジン出力が一定で運転している状態で、メタンに対するプロパンやブタンの量が変化した状態の燃料ガスが噴射される場合は、噴射量を制御しない限り、異常燃焼や出力不足が生じてしまう。特に発熱量が増加方向に変動するとエンジン10が異常燃焼を起こす。この異常燃焼をノッキングという。ノッキングが発生すると、エンジン10は異常燃焼による圧力上昇などにより損傷を受ける。
そこで本実施形態では、ノッキングの発生を予め回避するため、エンジン10に供給される燃料ガスの発熱量と流量を、発熱量計50及び流量計60にて計測し、計測値に応じて燃料ガス噴射弁40の制御を行う。
【0034】
予め、エンジン10の運転条件(エンジン10の負荷)、燃料ガスの発熱量及び燃料ガス噴射弁40の噴射期間と、ノッキングの有無の関係とを、試験にて把握する。この試験結果は、エンジン10のエンジン負荷ごとにマッピングを行うことで、制御マップとされる。
図2は、エンジン10の特定のエンジン負荷における制御マップを示している。縦軸は燃料ガス噴射弁40の噴射期間、横軸は燃料ガスの発熱量であり、実線は最大噴射量、破線はエンジン10のエンジン負荷が100%の場合の発熱量に応じた噴射期間を表している。例えば、燃料ガスの発熱量がQの場合にエンジン10のエンジン負荷が100%の時、燃料ガス噴射弁40の噴射期間がRとなることを示している。
また、最大噴射量とは、エンジン10の損傷を防ぐために、エンジン10のエンジン負荷ごとに設定された燃料ガス噴射弁40の噴射量の限界値である。したがって、最大噴射量を超えた燃料ガスの噴射は制限されることになる。
図2に示されるように、発熱量が高くなると、噴射期間は短くなり、また最大噴射量は少なくなる。
【0035】
制御部20は、エンジン10のエンジン負荷情報と、発熱量計50が計測した燃料ガスの発熱量計測値情報と、流量計60が計測した燃料ガス流量情報とを取得する。
発熱量計50が計測した発熱量計測値を有する燃料ガスがエンジン10に到達するまでの燃料ガス流路70の距離はL1+L2であり、その距離分だけ発熱量計50が計測した発熱量計測値を有する燃料ガスのエンジン10への到達が遅れる。そこで、エンジン10の筒内における燃料ガスの燃焼に対する燃料ガスの流量及び到達距離から、発熱量計測値の燃料ガスのエンジン10への到達時間を予測することができる。すなわち、制御部20は、エンジン負荷、燃料ガス流量及び距離L1+L2より到達時間を予測する。
また制御部20は、エンジン10のエンジン負荷から、エンジン負荷に応じた制御マップを選択する。例えば制御部20が図2の制御マップを選択したものとする。制御部20は、発熱量計測値がQでありエンジン10のエンジン負荷が100%である場合、これに対応する燃料ガス噴射弁40の噴射期間はRであるため、Qの発熱量計測値を得てからこの発熱量計測値の燃料ガスがエンジン10に到達するまでの到達時間を予測し、この到達時間直前に燃料ガス噴射弁40の噴射期間をRにするように制御を行う。
【0036】
またエンジン10が必要な燃料ガスの発熱量よりも大きい発熱量の燃料ガスが燃料ガスタンク30から供給された場合であっても、発熱量計50が発熱量変動を検知し、エンジン負荷および燃料ガス流量からエンジン10への到達時間を予測し、燃料ガス噴射弁40の制御を行うため、異常燃焼が起きる前に適正な制御が行え、ノッキングを回避する。
例えば、燃料ガスの発熱量計測値がQであるため燃料ガス噴射弁40の噴射期間をRで制御している場合に、発熱量計50が発熱量計測値Qを検知したにもかかわらずそのまま噴射期間Rで運転すると、最大噴射量を超えることになり、エンジン10にノッキングが発生することになる。そこで、発熱量計測値がQでありエンジン10のエンジン負荷が100%の場合に燃料ガスがエンジン10に到達する到達時間を予測し、この到達直前に燃料ガス噴射弁40の噴射期間をR未満、好ましくはRにするように制御を行う。
【0037】
ここで、制御部20による燃料ガス噴射弁40の制御とは、具体的には、燃料ガス噴射弁40の噴射期間を変えて噴射量を変更する、または、燃料ガス噴射弁40の噴射タイミングを変更することである。例えば、エンジン10が必要な燃料ガスの発熱量よりも大きい発熱量が供給される場合には、燃料ガス噴射弁40の噴射期間を短くして噴射量を減らす制御、または燃料ガス噴射弁40の噴射タイミングを遅らせる制御を行う。
【0038】
また、エンジン10が必要な燃料ガスの発熱量よりも小さい発熱量が燃料ガスタンク30から供給された場合は、発熱量計50が発熱量変動を検知し、エンジン負荷および燃料ガス流量からエンジン10への到達時間を予測し、燃料ガス噴射弁40の噴射期間を長くして噴射量を増やす制御、または燃料ガス噴射弁40の噴射タイミングを早める制御を行う。
【0039】
図3には、本実施形態による燃料ガス噴射弁40の制御による効果として、エンジンの筒内圧力の時間経過が示されている。
図3において、縦軸はエンジン10の筒内圧力、横軸は時間であり、実線が筒内圧力の推移、破線はエンジン10における筒内圧力のノッキング発生の恐れのある限界値である。すなわち、実線が破線を超えると、エンジン10にはノッキングが発生していることになる。
本実施形態では、ノッキングが発生する前にノッキングを予測して燃料ガス噴射弁40の制御を行うため、図3の実線のように筒内圧力が限界値に近づいても限界値を超えることがない。
【0040】
図4には、従来のエンジンの筒内圧力の時間経過を表すグラフが示されている。
図4において、図3と同様に、縦軸はエンジン10の筒内圧力、横軸は時間であり、実線が筒内圧力の推移、破線はエンジン10においてノッキングが発生したと判断される筒内圧力である。
図4の場合、1回目のサイクルに投入される燃料ガスの発熱量が通常より高くなることで筒内圧力が上がると、破線を超えてノッキングが発生する。このノッキングの発生有無を筒内圧力の計測値により判断し、これを元に燃料ガス噴射弁の制御を行う。ただし、1回目のサイクルにおいてノッキングが発生した後に燃料ガス噴射弁の制御を行っても、制御遅れが生じた場合には、2回目のサイクルにおいてもノッキングが発生してしまう。その後、燃料ガス噴射弁の制御によりエンジンは正常燃焼に戻り、3回目のサイクルはノッキングが発生していない。
このように、従来のエンジンは、例えば筒内圧力を計測し、それに応じて燃料ガス噴射弁の制御を行っている。そのため、ノッキングの発生においても、ノッキングしたことを検知し、その後に燃料ガス噴射弁の制御を行うことから、ノッキングが発生する頻度が高い。ノッキングにより過度の筒内圧力上昇が生じた場合にはエンジンが損傷を受けるため、ノッキングの頻度が高いほどエンジンが損傷を受ける確率が高くなる。
【0041】
以上、説明してきたように、本実施形態に係るエンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
燃料ガスによって運転されるエンジン10へ燃料を噴射する燃料ガス噴射弁40と、燃料ガスの発熱量を計測する発熱量計50と、燃料ガス噴射弁40を制御する制御部20と、を備え、制御部20は、発熱量計50によって計測された発熱量計測値を有する燃料ガスがエンジン10に到達する到達時間を予測し、発熱量計測値及び到達時間に応じて燃料ガス噴射弁40の制御を行うことから、燃料ガスの発熱量が変動する場合であっても、あらかじめ発熱量変動を予測してエンジン10に供給される燃料ガスの発熱量に応じた適切な燃料ガスの噴射量を調整することができる。また、ノッキングが発生する前に燃料ガス噴射弁40の制御を行うことができる。これにより、エンジン10の燃料ガスが不足して必要な出力を取り出せないことや、燃料ガスが供給過多になりノッキングが発生することを予め抑止し、エンジン10の安定稼働を行うことができる。
【0042】
また、制御部20は、予めエンジン10のエンジン負荷ごとに、燃料ガスの発熱量計測値と燃料ガス噴射弁40の噴射期間とを関連づけてマッピングした制御マップを記憶しておき、運転中のエンジン10のエンジン負荷と発熱量計測値に基づき制御マップから燃料ガス噴射弁40の噴射期間を取得して制御を行うことから、エンジン10のエンジン負荷および燃料ガスの発熱量に応じた燃料ガス噴射弁40の調整が可能である。また、燃料ガスの発熱量が変動しても、それに応じて燃料ガス噴射弁40を制御することから、エンジン10に対して適切な燃料ガス供給が行え、安定したエンジン10の運転ができる。
【0043】
また制御部20は、予めエンジン10のエンジン負荷ごとに、燃料ガスの発熱量計測値と燃料ガス噴射弁の最大噴射量とを関連づけてマッピングした制御マップを記憶する。最大噴射量は、ノッキングを起こしエンジンが損傷する恐れがある時の限界値であることから、最大噴射量を含む制御マップを用いることで、エンジンの負荷及び発熱量計測値に応じてノッキングを発生させないように燃料ガス噴射弁40の制御を行うことができる。
【0044】
また制御部20は、発熱量計測値に基づき制御マップから取得した燃料ガス噴射弁40の噴射期間が到達時間にその発熱量計測値における最大噴射量を超えることが予測される場合に、到達時間前に燃料ガス噴射弁40に対し燃料ガスの噴射量を減らす制御を行うことから、ノッキングが発生する前にノッキングを回避することができる。
【0045】
また制御部20は、発熱量計測値に基づき制御マップから取得した燃料ガス噴射弁40の噴射期間が到達時間にその発熱量計測値における最大噴射量を超えることが予測される場合に、到達時間前に燃料ガス噴射弁40に対し燃料ガスの噴射タイミングを遅らせる制御を行うことから、ノッキングが発生する前にノッキングを回避することができる。
【0046】
またエンジン10は、前述のいずれかのエンジン制御システム1を備えることから、エンジン10に対し供給される燃料ガスの発熱量とその燃料ガスがエンジンに到達する到達時間から適切な燃料ガスの噴射量が調整される。そのため、エンジン負荷に対して燃料ガスが不足して必要な出力を取り出せないことや、エンジン負荷に対して燃料ガスが供給過多になりノッキングが発生することを予め抑止し、エンジン10は安定稼働を行うことができる。
【0047】
また船舶は前述のエンジン10を搭載することから、供給される燃料ガスの発熱量とその燃料ガスがエンジンに到達する到達時間から適切な燃料ガスの噴射量が制御されるエンジン10により駆動する。そのため、エンジン負荷に対して燃料ガスが不足して必要な出力を取り出せないことやエンジン負荷に対して燃料ガスが供給過多になりノッキングが発生することを予め抑止し、エンジン10が安定稼働するため、船舶は安定した運行を行うことができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について、図5及び6を用いて説明する。
上記した第1実施形態では、最大噴射量は制御マップにより設定されるとしたが、本実施形態では、燃料ガスの発熱量が高い方向に変動する場合に、発熱量の変動よりも先に最大噴射量の値を変更するものである。その他の点については第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0049】
図5には、本実施形態に係るエンジン制御システムのエンジン負荷と燃料ガスの噴射期間とのグラフが示されている。
図5のグラフにおいて、縦軸は燃料ガス噴射弁40の噴射期間、横軸はエンジン10のエンジン負荷であり、実線は最大噴射量、破線はエンジン10の負荷が100%の場合の噴射期間を表している。図5に示されるように、エンジン負荷が高くなると、噴射期間は長くなり、また最大噴射量は多くなる。
【0050】
エンジン10のエンジン負荷は常に変動しており、これに合わせて制御部20は、燃料ガス噴射弁40の噴射期間も追従するように細かく制御する必要がある。噴射期間をエンジン負荷に対応するように変動させることにより、エンジン10のエンジン負荷を維持している。燃料ガス噴射弁40は電磁弁によって制御されており、ON/OFFを細かく制御することによってエンジン負荷の変動に追従させるようにしている。ただし、電磁弁のON/OFFの細かい制御には限界があり、急激な変動には追従することが困難である。
【0051】
例えばエンジン負荷が大きく低下した場合は、燃料ガス噴射弁40はエンジン負荷に追従するように噴射期間を制御することができず、低下した負荷に対して多くの量の燃料ガスを噴射してしまう場合がある。
例えば、図5に示すように、エンジン負荷がLの場合、噴射期間はRとなるように追従している。ここでエンジン負荷がLからLに大きく低下した場合、噴射期間はRからRへ破線上を移動するように電磁弁のON/OFFを細かく制御して徐々に噴射期間を短くするように追従すべきである。しかし、電磁弁による追従性の限界によって燃料ガス噴射弁40の追従に遅れが生じ、一点鎖線に示されるように所定時間はRが維持されたままで、その後RからRへ急激に値が減少することとなる。この時、所定時間はRが維持されてR−Rの余剰分だけ噴射量を多く噴射していることになるが、最大噴射量(実線)が設定されているので最大噴射量を超えた燃料ガスが噴射されることはない。
【0052】
以上のように、エンジン負荷に対して最大噴射量を設定することで、エンジン10のノッキングによる損傷を防ぐことができる。本実施形態では、さらに燃料ガスの発熱量に対して最大噴射量を設定する。
図6には、本発明の第2実施形態に係る燃料ガスの発熱量計測値と最大噴射量の時間経過を表したグラフが示されている。
図6(A)において、縦軸は燃料ガスの発熱量、横軸は時間、実線は燃料ガスの発熱量の推移である。図6(B)において、縦軸は最大噴射量、横軸は時間、実線は最大噴射量の推移である。図6(A)に示されるように、燃料ガスの発熱量は時間経過とともに連続的にその値が変動している。
また、燃料ガスの発熱量には、第1の所定値Qおよび第2の所定値Qが設定されている。第2の所定値Qは第1の所定値Qよりも小さい値であるとする。燃料ガスの発熱量は、第2の所定値Qより大きく第1の所定値Q未満である場合、すなわち第1の所定値Qと第2の所定値Qの間の値である場合、標準値であるとされる。
【0053】
燃料ガスタンク30から供給される燃料ガスの発熱量は、前述したように不定期に変動している。燃料ガスタンク30内部では、メタンにその他の成分であるプロパンやブタン等が連続的に存在していることが予想され、またその分布はエンジンのサイクル(例えば約1秒)に比べて緩やかに分布していると予測される。
そのため、発熱量計50により発熱量を時系列的に計測していれば、燃料ガスの発熱量の変動を予測することができる。
【0054】
時間tまでの間、燃料ガスの発熱量は標準値である第1の所定値Qと第2の所定値Qとの間を推移しており、最大噴射量には発熱量の標準値に対応する最大噴射量の標準値Mが設定される。
時間tからtの間は、発熱量は第2の所定値Qを下回る。この場合、エンジン10のノッキングによる損傷などの発生は無いことから、発熱量が第2の所定値Qを下回ると同時に最大噴射量には最大噴射量の標準値Mよりも大きい最大噴射量Mが設定される。最大噴射量Mが設定されることで、燃料ガス噴射弁40の噴射期間を長くすることができ、これにより噴射量を増加させることが可能となる。
ここで、最大噴射量Mは、燃料ガスの発熱量の推移の傾向により設定される値であり、その傾向に応じて設定させる変動する値である。
時間tにおいて、発熱量は第2の所定値Qを上回り、これと同時に最大噴射量にはMが設定される。
【0055】
時間tからtの間は、最大噴射量にはMが設定されているが、燃料ガスの発熱量は上昇を続けており、その推移から発熱量は第1の所定値Qを超えることが予測される。具体的には、発熱量の推移の予測が第1の所定値Qを超え、かつ単位時間Δtの発熱量の推移における微分値が一定の値を超える場合である。燃料ガスの発熱量が高くなりすぎると、ノッキングが発生しエンジン10の損傷につながるおそれがあることから、本実施形態では、燃料ガスの発熱量の上昇の予測から、第1の所定値Qを超える前のタイミングで、第1の所定値Qよりも高い発熱量の場合の最大噴射量Mを設定する。すなわち、第1の所定値Qを超えることが予測される時間tよりも前のタイミングである時間tにおいて、最大噴射量の標準値Mよりも小さい値の最大噴射量Mを設定する。最大噴射量Mが設定されることで、燃料ガス噴射弁40の噴射期間を短く抑えることができ、これにより噴射量を減少させることが可能となる。
ここで、最大噴射量Mは、燃料ガスの発熱量の推移の傾向により設定される値であり、その傾向に応じて変動する値である。
【0056】
時間tからtの間は、燃料ガスの発熱量は上昇を続けるが、ある時点から下降する。
時間tにおいて、発熱量は第1の所定値Qを下回り、標準値の間を推移することになる。よって、最大噴射量にはMが設定される。
【0057】
以上、説明してきたように、本実施形態に係るエンジン制御システム及びこれを備えたエンジン並びにこれを備えた船舶、及びエンジン制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
制御部20は、発熱量計測値が第1の所定値Qを超えることが予測される場合、第1の所定値Qを超える前に最大噴射量を小さくすることから、燃料ガス噴射弁40の噴射期間を短くし噴射量を抑えることが可能となる。また、発熱量が高い燃料ガスが消費される前に最大噴射量を小さく変更することで、ノッキングによるエンジン10の損傷を防止することができる。
【0058】
制御部20は、発熱量計測値が第1の所定値Qよりも小さい第2の所定値Qを下回ることが予測される場合、第2の所定値Qを下回ると同時に最大噴射量を大きくすることから、燃料ガス噴射弁40の噴射期間を長くし、噴射量を多くすることが許容できる。また、発熱量が低い燃料ガスが消費される時に最大噴射量を大きくすることを許容することにより、エンジン10の出力が不足するのを防ぐことができる。
【0059】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども含まれる。
【0060】
例えば、上述した各実施形態においてはエンジン制御システム1を備えたエンジン10は船舶に搭載されるエンジンであるとしたが、定置用エンジンであるとしてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態において、燃料ガスの発熱量の所定値として第1の所定値Qおよび第2の所定値Qを設定して燃料ガスの噴射量を制御するとしたが、さらに複数の所定値を設定して燃料ガスの噴射量を制御してもよい。この場合、燃料ガスの噴射量をさらに細かく制御することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 エンジン制御システム
10 エンジン
20 制御部
30 燃料ガスタンク
40 燃料ガス噴射弁
50 発熱量計(発熱量計測手段)
60 流量計(流量計測手段)
70 燃料ガス流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6