特許第6362938号(P6362938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362938
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】表示装置および表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20180712BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20180712BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20180712BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20180712BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G09F9/30 338
   G09F9/30 330
   G09F9/30 365
   G09F9/30 336
   G09F9/00 338
   H05B33/26 Z
   H05B33/12 B
   H05B33/10
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-136504(P2014-136504)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2015-121764(P2015-121764A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2017年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-241711(P2013-241711)
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】柏原 充宏
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利幸
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−108693(JP,A)
【文献】 特開2004−207217(JP,A)
【文献】 特開2005−093397(JP,A)
【文献】 特開2008−292678(JP,A)
【文献】 特開平10−289784(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0072482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00−9/46
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する表示装置であって、
前記画素に対応して設けられた画素電極と、
第1端部を有する第1補助配線と第2端部を有する第2補助配線とを含む複数の補助配線であって、複数の前記画素電極の間の少なくとも一部において、前記補助配線と前記画素電極との距離よりも短い距離で、前記第1端部と前記第2端部とが対向している補助配線と、
前記画素電極の一部を露出する第1開口部、および前記第1端部、前記第2端部およびこれらの端部間を露出する第2開口部を有し、前記画素電極および前記補助配線上に配置された絶縁層と、
前記第1開口部により露出された前記画素電極上および前記絶縁層上に配置された有機発光層と、
第1導電層と前記補助配線に接続された第2導電層とを含む導電層であって、前記画素電極上の前記有機発光層上に配置された電極、および前記第2開口部における前記補助配線と当該電極とを電気的に接続する接続部のそれぞれが、前記第1導電層および前記第2導電層の少なくとも一方を含み、前記接続部の少なくとも一部では、前記第1導電層上に前記第2導電層が積層されている導電層と、
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1導電層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド金属、アルミニウム、インジウム、スズ、ニッケル、銅および亜鉛の少なくとも1種の金属元素を含む単層または複数層の導電層であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1導電層が単層であり、
前記第1導電層の膜厚は、5.5nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1導電層が、前記第2導電層から最も離れた第1層と前記第2導電層側の第2層とを含む複数層であり、
前記第1層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド金属およびアルミニウムの少なくとも1種の金属元素を含み、
前記第1導電層の膜厚は、4nm以上8nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1層は、前記有機発光層上に形成され、仕事関数が4.3eV以下であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記端部間が1マイクロメートル乃至100マイクロメートルであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2開口部で電気的に接続された前記補助配線と前記導電層との接続部分が複数であり、
前記複数の接続部分には、接続抵抗が200kΩ以下である接続部分が含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1導電層は前記有機発光層上に配置された電極を含み、
前記第1導電層と前記第2導電層とは前記有機発光層上以外の部分で積層されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の表示装置。
【請求項9】
前記第2導電層は前記有機発光層上に配置された電極を含み、
前記第1導電層と前記第2導電層とは前記有機発光層上以外の部分で積層されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の表示装置。
【請求項10】
前記有機発光層を発光させるための電力が供給される電力供給配線を備え、
前記電力供給配線は、前記導電層が接続される一方、前記補助配線には前記導電層を介して間接的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の表示装置。
【請求項11】
複数の画素に対応した画素電極を有する表示装置の製造方法であって、
第1端部を有する第1補助配線と第2端部を有する第2補助配線とを含む複数の補助配線であって、複数の前記画素電極の間の少なくとも一部において、前記第1端部と前記第2端部とが対向している補助配線を形成し、
前記画素電極の一部を露出する第1開口部と、前記第1端部、前記第2端部およびこれらの端部間を露出する第2開口部とを有する絶縁層を、前記画素電極および前記補助配線上に形成し、
前記第1開口部により露出された前記画素電極上、前記第2開口部により露出された前記補助配線、および前記絶縁層上に有機発光層を形成し、
前記画素電極上の前記有機発光層上および少なくとも前記第2開口部により露出された前記補助配線上の前記有機発光層上に第1導電層を形成し、
前記第1補助配線と前記第2補助配線との間に電圧を印加して前記端部間に放電または前記端部間に前記第1導電層を介して放電を起こして、前記第2開口部に露出された前記補助配線の少なくとも一部が露出するように前記有機発光層を除去し、
前記第2開口部において露出させた前記補助配線と前記第1導電層とを電気的に接続する接続部を含む第2導電層を形成すること、
を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項12】
複数の画素に対応した画素電極を有する表示装置の製造方法であって、
第1端部を有する第1補助配線と第2端部を有する第2補助配線とを含む複数の補助配線であって、複数の前記画素電極の間の少なくとも一部において、前記第1端部と前記第2端部とが対向している補助配線を形成し、
前記画素電極の一部を露出する第1開口部と、前記第1端部、前記第2端部およびこれらの端部間を露出する第2開口部とを有する絶縁層を、前記画素電極および前記補助配線上に形成し、
前記第1開口部により露出された前記画素電極上、前記第2開口部により露出された前記補助配線、および前記絶縁層上に有機発光層を形成し、
少なくとも前記第2開口部により露出された前記補助配線上の前記有機発光層上に第1導電層を形成し、
前記第1補助配線と前記第2補助配線との間に電圧を印加して前記端部間に放電または前記端部間に前記第1導電層を介して放電を起こして、前記第2開口部に露出された前記補助配線の少なくとも一部が露出するように前記有機発光層を除去し、
前記画素電極上の前記有機発光層上に配置された電極、および前記第2開口部において露出させた前記補助配線と当該電極とを電気的に接続する接続部を含む第2導電層を形成すること、
を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1補助配線と前記第2補助配線との間に印加される前記電圧は、交流電源から印加されることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の画質を改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(Organic Electroluminescence)など、供給される電流に応じた強度で発光する素子を用いた表示装置が開発されている。このような表示装置として、トップエミッション型アクティブマトリックス有機ELディスプレイがある。この表示装置によれば、発光素子の発光方向が、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)とは逆の方向になる。そこで、発光素子の発光方向側(TFTとは逆側)の電極(以下、上部電極という)に、光透過性を有する程度に薄膜化した金属を用いたり、透明導電性酸化物を用いたりする必要がある。しかし、これらは、低抵抗化することが困難であり、電圧降下に伴う画面内の輝度分布が発生する。
【0003】
この輝度分布は、高電流が必要な高輝度にするほど、また、大画面化するほど顕著になってくる。そのため、補助配線を用いて上部電極と接続することにより、電圧降下を減らす試みがなされている(例えば、特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−195008号公報
【特許文献2】特開2001−230086号公報
【特許文献3】特開2005−011810号公報
【特許文献4】特開2005−093398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL層を成膜する場合には、共通に成膜できる層が多いほど製造が容易になる。その場合には、特許文献3、4に開示された方法のように、補助配線上に成膜された有機膜を除去する工程を追加したり、有機膜を成膜するときに補助配線上に付着しないようにしたりする必要がある。したがって、工程が煩雑になるため、量産時の歩留まりを低下させる要因となり得る。
【0006】
例えば、特許文献3に開示された方法においては、大画面のディスプレイに対して、必要な部分にだけレーザ照射をするための遮蔽マスクをアライメントして配置したり、真空中で高精細なアライメントを行いつつ多数回のレーザのスポット照射を行ったりする必要がある。
【0007】
本発明の目的の一つは、補助配線と上部電極との接続をするための工程を簡略化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、複数の画素を有する表示装置であって、前記画素に対応して設けられた画素電極と、第1端部を有する第1補助配線と第2端部を有する第2補助配線とを含む複数の補助配線であって、複数の前記画素電極の間の少なくとも一部において、前記補助配線と前記画素電極との距離よりも短い距離で、前記第1端部と前記第2端部とが対向している補助配線と、前記画素電極の一部を露出する第1開口部、および前記第1端部、前記第2端部およびこれらの端部間を露出する第2開口部を有し、前記画素電極および前記補助配線上に配置された絶縁層と、前記第1開口部により露出された前記画素電極上および前記絶縁層上に配置された有機発光層と、第1導電層と前記補助配線に接続された第2導電層とを含む導電層であって、前記画素電極上の前記有機発光層上に配置された電極、および前記第2開口部における前記補助配線と当該電極とを電気的に接続する接続部のそれぞれが、前記第1導電層および前記第2導電層の少なくとも一方を含み、前記接続部の少なくとも一部では、前記第1導電層上に前記第2導電層が積層されている導電層と、を備えることを特徴とする表示装置が提供される。
【0009】
この表示装置によれば、補助配線と上部電極との接続をするための工程を簡略化することができる。
【0010】
また、別の好ましい態様において、前記端部間の距離が1マイクロメートル乃至100マイクロメートルであってもよい。
【0011】
この表示装置によれば、端部間近傍の有機発光層の除去を効率的に行うことができる。
【0012】
また、別の好ましい態様において、前記第2開口部で電気的に接続された前記補助配線と前記導電層との接続部分が複数であり、前記複数の接続部分には、接続抵抗が200kΩ以下である接続部分が含まれていてもよい。
【0013】
この表示装置によれば、画面内の輝度分布を良好にすることができる。
【0014】
また、別の好ましい態様において、前記第1導電層は前記有機発光層上に配置された電極を含み、前記第1導電層と前記第2導電層とは前記有機発光層上以外の部分で積層されていてもよい。
【0015】
この表示装置によれば、有機発光層からの導電層を通過する光を効率的に用いることができる。
【0016】
また、別の好ましい態様において、前前記第2導電層は前記有機発光層上に配置された電極を含み、前記第1導電層と前記第2導電層とは前記有機発光層上以外の部分で積層されていてもよい。
【0017】
この表示装置によれば、有機発光層からの導電層を通過する光を効率的に用いることができる。
【0018】
また、別の好ましい態様において、前記有機発光層を発光させるための電力が供給される電源接続電極を備え、前記電源接続電極は、前記導電層が接続される一方、前記補助配線には前記導電層を介して間接的に接続されていてもよい。
【0019】
この表示装置によれば、補助配線と電源接続電極とのレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、複数の画素に対応した画素電極を有する表示装置の製造方法であって、第1端部を有する第1補助配線と第2端部を有する第2補助配線とを含む複数の補助配線であって、複数の前記画素電極の間の少なくとも一部において、前記第1端部と前記第2端部とが対向している補助配線を形成し、前記画素電極の一部を露出する第1開口部と、前記第1端部、前記第2端部およびこれらの端部間を露出する第2開口部とを有する絶縁層を、前記画素電極および前記補助配線上に形成し、前記第1開口部により露出された前記画素電極上、前記第2開口部により露出された前記補助配線、および前記絶縁層上に有機発光層を形成し、前記画素電極上の前記有機発光層上および少なくとも前記第2開口部により露出された前記補助配線上の前記有機発光層上に第1導電層を形成し、前記第1補助配線と前記第2補助配線との間に電圧を印加して前記端部間に放電または前記端部間に前記第1導電層を介して放電を起こして、前記第2開口部に露出された前記補助配線の少なくとも一部が露出するように前記有機発光層を除去し、前記第2開口部において露出させた前記補助配線と前記第1導電層とを電気的に接続する接続部を含む第2導電層を形成すること、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法が提供される。
【0021】
この表示装置の製造方法によれば、補助配線と上部電極との接続をするための工程を簡略化することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、複数の画素に対応した画素電極を有する表示装置の製造方法であって、第1端部を有する第1補助配線と第2端部を有する第2補助配線とを含む複数の補助配線であって、複数の前記画素電極の間の少なくとも一部において、前記第1端部と前記第2端部とが対向している補助配線を形成し、前記画素電極の一部を露出する第1開口部と、前記第1端部、前記第2端部およびこれらの端部間を露出する第2開口部とを有する絶縁層を、前記画素電極および前記補助配線上に形成し、前記第1開口部により露出された前記画素電極上、前記第2開口部により露出された前記補助配線、および前記絶縁層上に有機発光層を形成し、少なくとも前記第2開口部により露出された前記補助配線上の前記有機発光層上に第1導電層を形成し、前記第1補助配線と前記第2補助配線との間に電圧を印加して前記端部間に放電または前記端部間に前記第1導電層を介して放電を起こして、前記第2開口部に露出された前記補助配線の少なくとも一部が露出するように前記有機発光層を除去し、前記画素電極上の前記有機発光層上に配置された電極、および前記第2開口部において露出させた前記補助配線と当該電極とを電気的に接続する接続部を含む第2導電層を形成すること、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法が提供される。
【0023】
この表示装置の製造方法によれば、補助配線と上部電極との接続をするための工程を簡略化することができる。
【0024】
また、別の好ましい態様において、前記第1補助配線と前記第2補助配線との間に印加される前記電圧は、交流電源から印加されてもよい
【0025】
この表示装置の製造方法によれば、端部間近傍の有機発光層の除去を効率的に行うことができる。
【0026】
また、別の好ましい態様において、前記第1導電層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド金属、アルミニウム、インジウム、スズ、ニッケル、銅および亜鉛の少なくとも1種の金属元素を含む単層または複数層の導電層であってもよい。
【0027】
また、別の好ましい態様において、前記第1導電層が単層であり、前記第1導電層の膜厚は、5.5nm以上10nm以下であってもよい。
【0028】
また、別の好ましい態様において、前記第1導電層が、前記第2導電層から最も離れた第1層と前記第2導電層側の第2層とを含む複数層であり、前記第1層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド金属およびアルミニウムの少なくとも1種の金属元素を含み、前記第1導電層の膜厚は、4nm以上8nm以下であってもよい。
【0029】
また、別の好ましい態様において、前記第1層は、前記有機発光層上に形成され、仕事関数が4.3eV以下であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、補助配線と上部電極との接続をするための工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態における表示装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の第1実施形態における補助配線のレイアウトを説明する図である。
図3】本発明の第1実施形態における第2開口部近傍のレイアウトを説明する図である。
図4図2に示すIV−IV’方向にみた断面の模式図である。
図5】本発明の第1実施形態における表示装置1の製造方法において、画素電極と補助配線が形成された基板の断面を示す模式図である。
図6】本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法において、絶縁膜が形成された基板の断面を示す模式図である。
図7】本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法において、有機EL層および第1導電層が形成された基板の断面を示す模式図である。
図8】本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法において、端部間の有機EL層および第1導電層が除去された基板の断面を示す模式図である。
図9】本発明の第2実施形態における表示装置の補助配線への分割した電圧印加を説明する図である。
図10】本発明の第3実施形態における表示装置の製造方法において、有機EL層および第1導電層が形成された基板の断面を示す模式図である。
図11】本発明の第3実施形態における表示装置の製造方法において、端部間の有機EL層および第1導電層が除去された基板の断面を示す模式図である。
図12】本発明の第3実施形態における表示装置の製造方法において、第2導電層が形成された基板の断面を示す模式図である。
図13】本発明の第4実施形態における補助配線端部の形状の第1の例を説明する図である。
図14】本発明の第4実施形態における補助配線端部の形状の第2の例を説明する図である。
図15】接触抵抗測定のための補助配線のレイアウトを説明する図である。
図16】絶縁破壊最大径を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態における表示装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、種々の変形を行ない実施することが可能である。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、基板上に形成される、とは、基板に接触して形成される場合だけでなく、基板との間に他の構成を挟んで形成される場合を含む。
【0033】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態における表示装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1実施形態における表示装置の構成を示す概略図である。表示装置1は、トップエミッション型有機ELディスプレイである。表示装置1は、スマートフォン、携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビなど、画像を表示する電子機器に用いられる。基板10は、表示装置1を駆動するための素子等が形成されている。表示領域100、表示領域100の周囲に設けられた駆動回路71、72、73、74、および電圧印加部70が、基板10に備えられている。
【0035】
表示領域100には、TFTにより有機EL層の発光が制御される複数の画素、複数の画素を制御するための制御線が形成されている。また、表示領域100には、有機EL層の上部電極と接続される2系統の補助配線が形成されている。補助配線の詳細の説明は後述する。駆動回路71、72、73、74は、制御線を介して表示領域100の各画素に設けられた画素回路を制御するためのドライバである。また、表示領域100の外側には有機EL層を発光させるための電力を供給する電源と上部電極とを接続するための電源接続電極が設けられている。電圧印加部70は、2系統の補助配線に交流電圧を印加するための電源が接続される。なお、この例では交流電圧として説明するが、2系統の補助配線に直流電圧を印加するための電源が接続されてもよい。
【0036】
図2は、本発明の第1実施形態における補助配線のレイアウトを説明する図である。図2は、表示領域100における補助配線のレイアウトがわかりやすくなるように、一部の構成を省略して表した図である。
【0037】
画素電極110B、110G、110R(以下、それぞれを区別しない場合には画素電極110という)は、それぞれ発光色が青、緑、赤の画素に対応する。各画素電極110は、TFTを用いて形成された画素回路に接続されている。以下に説明する設計値の例示は、画素ピッチPPが636μmである場合を例としているが、この例に限られない。
【0038】
補助配線210、220(以下、それぞれを区別しない場合には補助配線200という)は、それぞれ分離して形成された2系統の補助配線である。補助配線200は、隣接する画素電極110間に設けられている。なお、補助配線200は、少なくとも一部の画素電極110間に設けられていればよい。補助配線200の線幅L1、L2は、この例では、66μm、22μmである。
【0039】
画素電極110と補助配線200とは、同一層の導電膜で形成されている。導電膜は、この例では、下層に銀合金(例えば、AgPdCu等)、上層に透明導電性酸化物(例えばITO等)の積層で形成されている。なお、補助配線200は、画素電極110とは異なる層の導電膜で形成されていてもよい。
【0040】
絶縁層300は、画素電極110の一部および補助配線200の一部を露出しつつ、画素電極110および補助配線200を覆うように形成されている。絶縁層300は、ポリイミド等の有機樹脂で形成されている。
【0041】
絶縁層300には、画素電極110の一部を露出する第1開口部310、および補助配線200の一部を露出する第2開口部320が設けられている。第1開口部310は、画素電極110と有機EL層とを接続し、有機EL層へ電流を流すための領域を形成する。第2開口部320は、有機EL層の上部電極と補助配線200とを接続するために設けられた領域であり、画素電極110間に設けられている。
【0042】
図3は、本発明の第1実施形態における第2開口部近傍のレイアウトを説明する図である。補助配線210の端部210Tと補助配線220の端部220Tとが対向する部分に、第2開口部320が設けられている。この例では、第2開口部320の開口寸法A1、A2は、15μm(10〜20μm)、35μm(30〜40μm)である。
【0043】
端部210Tと端部220Tとの間BW(以下、端部間BWという場合がある)の距離Waは、例えば、1μm〜20μmであり、画素電極110と補助配線200とが最も近い部分の距離Wp(図2参照)よりも短くなっている。なお、図示していないが、端部間BWの距離は、画素回路のTFT等、補助配線200以外の他の導電性を有する部材と補助配線200との距離のいずれよりも短くなっていることが望ましい。
【0044】
図2に戻って説明を続ける。表示領域100の外側において、有機EL層を発光させるための電力を供給する電源と上部電極とを接続するための電源接続電極250が設けられている。電源接続電極250は、絶縁層300に覆われ、その一部が第3開口部350によって露出されている。
【0045】
図4は、図2に示すIV−IV’方向にみた断面の模式図である。基板1000は、ガラス基板にTFT等で形成された画素回路を含む基板を示し、表面はポリイミド等の絶縁膜で平坦化されている。画素電極110Bは、スルーホールを介してこの画素回路に接続されている。画素電極110、補助配線210、220、および電源接続電極250は、同一の導電膜で形成されている。絶縁層300は、画素電極110の一部を露出する第1開口部310、補助配線200の一部を露出する第2開口部320、および電源接続電極250の一部を露出する第3開口部350が形成されている。上述した図2においては、画素電極110、補助配線210、220、電源接続電極250、および絶縁層300が示されている。
【0046】
有機EL層400は、表示領域100の絶縁層300上に形成されている。有機EL層400は、端部間BW近傍において後述するように除去されている。なお、図示のとおり端部間BWには、有機EL層400の残渣物450が存在する場合がある。第1導電層510は、有機EL層400上に形成された導電層である。また、第2導電層520は、開口部320およびその周囲に形成された導電層である。第1導電層510および第2導電層520は、画素電極110上の有機EL層400上(有機EL層400が発光する部分)以外の部分で積層して電気的に接続されている。以下、第1導電層510および第2導電層520を含む導電層を上部電極500という場合がある。
【0047】
なお、端部間BW近傍において、有機EL層400が除去されているため、第2導電層520は、補助配線210の端部210Tと補助配線220の端部220Tとに接触して電気的に接続されている。すなわち、上部電極500は、画素電極110上の有機EL層400(有機EL層400が発光する部分)上に形成された電極と、この電極と端部210Tおよび端部220Tとを接続するための接続部を有している。
【0048】
また、この例では、電源接続電極250上にも上部電極500が形成されている。この例では、電源接続電極250上には、第1導電層510および第2導電層520の積層が形成されているが、第1導電層510または第2導電層520のいずれか一方であってもよい。
【0049】
そのため、電源接続電極250から画素電極110上の上部電極500に有機EL層400を発光させるための電力が供給される。この例では画素電極110は有機EL層400のアノードとして用いられている。この際、補助配線200が上部電極500を介して間接的に電源接続電極250に接続されることになり、電源接続電極250から画素電極110上の上部電極500までの電気抵抗を小さくすることができる。補助配線200が上部電極500を介して間接的に電源接続電極250に接続されることにより、補助配線と電源接続電極とのレイアウトの自由度を向上させることができる。このとき、電源接続電極250と電圧印加部70とが上部電極500を介して間接的に接続されていてもよい。
【0050】
なお、補助配線200と電源接続電極250とが直接的に接続していてもよく、その場合には、上部電極500は、電源接続電極250と上記の通り直接的に接続していてもよいし、補助配線200を介して間接的に接続していてもよい。
【0051】
続いて、図4に示すような表示装置1の製造方法について、図5図8を用いて説明する。
【0052】
図5は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法において、画素電極と補助配線が形成された基板の断面を示す模式図である。基板1000上に導電層が成膜され、フォトリソグラフィによるパターニングにより、画素電極110、補助配線210、220および電源接続電極250が形成される。
【0053】
図6は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法において、絶縁膜が形成された基板の断面を示す模式図である。図5に示す工程の後に絶縁膜300が成膜され、フォトリソグラフィによるパターニングにより、第1開口部310、第2開口部320および第3開口部350が形成される。絶縁膜300は、感光性ポリイミド等を用い、露光、現像によりパターンが形成されてもよい。
【0054】
図7は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法において、有機EL層および第1導電層が形成された基板の断面を示す模式図である。図6に示す工程の後に、酸素プラズマ処理を施し、マスク等を用いて表示領域100に有機EL層400を成膜する。有機EL層400は、複数の有機層の積層構造であり、例えば、下層から上層に向けて「m−MTDATA」、「NPB」、「Blue EML」、「Alq」という積層構造になっている。なお、「Blue EML」については、少なくとも画素電極110B上に存在すればよいため、その他の領域においては存在しないように形成される場合もある。すなわち、図7等の記載において、有機EL層400は、成膜される領域のいずれでも同様の厚さで記載しているが、領域によっては厚さ、積層構造が異なる場合がある。
【0055】
その後、第1導電層510が成膜される。第1導電層510は、この例では、MgAgであり、画素電極110上の有機EL層400(有機EL層400が発光する部分)上に形成された電極を含むため、有機EL層400のカソードとして用いられている。なお、第1導電層510と有機EL層400との間にLiF等の電子注入層が設けられていてもよい。
【0056】
第1導電層510は、MgAgに限られず、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド金属、アルミニウム、インジウム、スズ、ニッケル、銅および亜鉛の少なくとも1種の金属元素を含む単層または複数層の導電層であってもよい。第1導電層510が複数層である場合には、最も有機EL層400の側の第1層(第2導電層520から最も離れた層)がアルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド金属およびアルミニウムの少なくとも1種の金属元素を含むことが望ましい。そして、第1導電層510の第1層は、仕事関数は、4.3eV以下であることが望ましい。
【0057】
第1導電層510の膜厚は、2nm以上10nm以下であればよい。特に、第1導電層510が単層である場合には、5.5nm以上10nm以下であることが望ましく、5.5nm以上8nm以下であることがさらに望ましい。また、第1導電層510が複数層である場合には、2nm以上8nm以下であることが望ましく、4nm以上8nm以下であることがさらに望ましい。
【0058】
第1導電層510の膜厚が薄すぎると、導電層としての機能が失われて絶縁破壊(放電)させるための電圧が大きくなり、その結果、表示領域100の一部において大きな絶縁破壊が発生し、配線およびTFT回路等への悪影響を及ぼす場合がある。第1導電層510を複数層で形成すると、第1導電層510全体としての膜厚が薄くても導電層としての機能が失われにくい。一方、第1導電層510の膜厚が厚すぎると、絶縁破壊時に生じる第1導電膜の剥離の影響が大きく拡がってしまい、画素間の距離が短い高精細な表示装置では表示不良の原因となる場合がある。
【0059】
図8は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法において、端部間の有機EL層および第1導電層が除去された基板の断面を示す模式図である。図7に示す工程の後、電圧印加部70を介して、交流電圧を補助配線210と補助配線220との間に印加する。例えば、周波数1kHz〜100kHz、実効印加電圧が10〜100Vrms程度であると端部間BWに放電が発生し、図8に示すように、有機EL層400および第1導電層510が除去される。このとき、補助配線210の端部210Tおよび補助配線220の端部220Tの少なくとも一部が露出されるが、一部に有機EL層400の残渣物450(第1導電層510の残渣物が含まれていてもよい)が残ってもよい。このとき、有機EL層400と第1導電層510とが周囲に吹き飛ぶことがあり、その拡がりを以下の説明では、図16に示す絶縁破壊最大径DBで表す。
【0060】
この例では、放電による有機EL層400および第1導電層510を除去するときには、表示領域100に存在する全ての補助配線200に電圧を印加して、全ての端部間BWで放電させる。ただし、一部の端部間BWにおいて生じた放電によって端部間BWに短絡を生じさせる場合もある。その場合には、その端部間BWと同じ補助配線210、220によって構成される端部間BWにおいては放電しにくくなる場合がある。したがって、必ずしも全ての端部間BWで放電しない場合もある。なお、放電においては補助配線210、220と第1導電層510との間に発生する場合もある。表示領域100内の全部の端部間BWに対する、放電が生じた端部間BWの数を、以下の説明では絶縁破壊発生率という。
【0061】
図8に示す工程の後、第2導電層520を形成すると、図4に示すような構造となる。第2導電層520は、この例では、MgAgである。このとき、第2導電層520は、画素電極110上の有機EL層400(有機EL層400が発光する部分)上に形成された電極上には、形成されないようにして、上部電極500として透過率が低下しすぎないようにすることが望ましいが、有機EL層400が発光する部分に形成されてもよい。なお、第2導電層520は、透明導電性酸化物(例えばITO等)であってもよく、この場合には、画素電極110上の有機EL層400(有機EL層400が発光する部分)上に形成された電極上にも形成されていてもよい。なお、表示装置1は、さらに、窒素雰囲気下で透明封止ガラスを用いて、少なくとも表示領域100の封止を行う。このとき、基板周囲がUV硬化樹脂等で囲まれて、内部が封止される。
【0062】
端部間BWの距離は、有機EL膜400を除去して端部210T、220Tの一部を露出されるためには、1μm以上100μm以下であることが望ましく、1μm以上20μm以下であることがさらに望ましい。端部間BWの距離が1μm未満になると、大画面の表示装置の場合に、パターン形成を精度よく行うことが困難になり、短絡部が形成される等のリスクがある。一方、端部間BWの距離が大きくなりすぎると、放電を起こす条件が厳しくなり、より印加電圧を増加させる必要があるため、TFTへの放電による熱および電気的ダメージの可能性が高くなってしまう。そのため、画素電極110と補助配線200との間隔をさらに広げる必要があるなど、レイアウト上の制限が加わってしまう。そのため、端部間BWの距離は、20μm以下であることがさらに望ましい。
【0063】
また、補助配線200と第2導電層520との接続部分の電気抵抗が小さいほど、画面輝度の均一性確保、消費電力の低減に有利である。例えば、各画素に対して1箇所の接続部分を形成した場合、画素回路のTFTのしきい電圧等を考慮すると、画面輝度の均一性確保のために、接続部分での電圧降下を2V以下に抑制することが望ましい。この場合、接続部分の電気抵抗は、有機EL層の発光のために要する1画素のピーク電流が100μAの高輝度ディスプレイにおいて、200kΩ以下であることが望ましい。さらに接続部分での電圧降下を0.5V以下に抑制する、すなわち電気抵抗は50kΩ以下であることがさらに望ましい。
【0064】
なお、接続部分は、1画素に1箇所でなく、複数画素に1箇所であってもよい。例えば、N画素に対して1箇所であれば、接続部分での電圧降下を2V以下に抑制するためには、1箇所当たりの接続部分の電気抵抗は200kΩ×(1/N)以下であることが望ましく、電圧降下を0.5V以下に抑制する、すなわち電気抵抗は50kΩ×(1/N)以下であることが望ましい。
【0065】
このように、本発明の第1実施形態における表示装置1においては、第2導電層520を成膜する前に補助配線200に電圧を印加し、端部間BWに放電を生じさせて有機EL層400および第1導電層510を除去する。したがって、第2導電層520を成膜するときには、端部210Tおよび端部220Tの少なくとも一部を露出させていることから、第2導電層520(上部電極500)と補助配線200とを電気的に接続することができる。
【0066】
このように、放電により電気的に端部間BW近傍の有機EL層を除去することができるため、従来のように、精密なマスクのアライメント、選択的なレーザ照射等を行ったりする必要がないため、工程の簡略化が実現できる。この結果、画面の欠陥発生確率が増大することを抑制しつつ、上部電極の電圧降下を抑えて画面内の輝度分布を良好にすることができる。
【0067】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、端部間BWで放電させるときには、表示領域100全ての補助配線200に電圧が印加され、全ての端部間BWにおいて放電を促していた。第2実施形態においては、表示領域100を複数に分けて放電させる。
【0068】
図9は、本発明の第2実施形態における表示装置の補助配線への分割した電圧印加を説明する図である。表示装置1Aにおいては、表示領域は表示領域100A1、100A2の2領域に分割されている。表示装置1には、表示領域100A1の補助配線200に電圧を印加するための電圧印加部70A1、および表示領域100A2の補助配線200に電圧を印加するための電圧印加部70A2が設けられている。このようにすると、大面積を一度に処理することによる電流の増加を抑制することができ、過大な電流による焼損の不具合の発生を抑制することができる。また、表示領域100A1における放電で複数の端部間BWの一部に短絡が生じた場合があっても、表示領域100A2における放電に影響を与えないようにすることができる。
【0069】
<第3実施形態>
上述した第1実施形態においては、第1導電層510が有機EL層400のカソードとして用いられていたが、第3実施形態においては、第2導電層520が有機EL層400のカソードとして用いられた構成である。
【0070】
図10は、本発明の第3実施形態における表示装置の製造方法において、有機EL層および第1導電層が形成された基板の断面を示す模式図である。この工程は、第1実施形態の図7で説明した工程に対応している。第3実施形態における第1導電層510は、例えば、MgAgであり、図10に示すように、第1開口部310およびその周囲において、形成されていない。なお、第1導電層510の材料、膜厚は、第1実施形態と同様の範囲であればよい。
【0071】
図11は、本発明の第3実施形態における表示装置の製造方法において、端部間の有機EL層および第1導電層が除去された基板の断面を示す模式図である。この工程は、第1実施形態の図8で説明した工程に対応している。図10に示す工程の後、電圧印加部70を介して、交流電圧を補助配線210と補助配線220との間に印加する。例えば、周波数1kHz〜100kHz、実効印加電圧が10〜100Vrms程度であると端部間BWに放電が発生し、図11に示すように、有機EL層400および第1導電層510が除去される。
【0072】
図12は、本発明の第3実施形態における表示装置の製造方法において、第2導電層が形成された基板の断面を示す模式図である。図12は、第1実施形態において説明した図4に対応する。図11に示す工程の後、第2導電層520を形成すると、図12に示すような構造となる。第2導電層520は、この例では、MgAgであり、画素電極110上の有機EL層400(有機EL層400が発光する部分)上に形成された電極を含むため、有機EL層400のカソードとして用いられている。なお、第2導電層520と有機EL層400との間にLiF等の電子注入層が設けられていてもよい。
【0073】
なお、各実施形態に共通して、補助配線210と補助配線220とに電圧を印加して放電を発生させるときに、補助配線210の端部210T、補助配線220の端部220T、および端部間BWにわたって広がる第1導電層510が存在している。このようにすると、第1導電層510の効果により、各端部間BWにおいて安定して放電が発生しやすくなる。そして、有機EL層400と第1導電層510とが放電により除去された部分を、第2導電層520が覆う。これにより、第2導電層520は補助配線200と電気的に接続される。
【0074】
<第4実施形態>
第1実施形態においては、補助配線210の端部210T、および補助配線220の端部220Tの形状は矩形状であったが、異なる形状であってもよい。第4実施形態では、端部210T、220Tの形状として、2つの例を説明する。
【0075】
図13は、本発明の第4実施形態における補助配線端部の形状の第1の例を説明する図である。図13に示す第1の例では、いずれも三角形状の端部210TB、220TBである。端部210TBと端部220TBとの距離は頂点同士の距離である。
【0076】
図14は、本発明の第3実施形態における補助配線端部の形状の第2の例を説明する図である。図14に示す第2の例では、一方の端部210TBは第1の例と同じであるが、端部220TCは、矩形状である。ただし、第1実施形態の場合とは異なり、補助配線220の線幅よりも拡がっている。なお、端部210TBについても端部220TCと同じ形状であってもよいし、端部210TBと端部220TCとが入れ替わった形状であってもよい。
【0077】
[実施例1]
第1実施形態における構成に類似した構成で補助配線と上部電極との接続部分の電気抵抗(以下接触抵抗という)を測定した。
【0078】
図15は、接触抵抗測定のための補助配線のレイアウトを説明する図である。この実施例では、2系統の補助配線BL1、BL2を想定し、各画素pixの2辺に対応して補助配線BL1、BL2が対向した端部間BWを設けている。この図では、画素pixは、6行6列に配置されているが、以下に説明する実施例では10行10列に配置されたものを用いている。画素pixの画素ピッチは318μmとした。
【0079】
まず、基板上に低温ポリシリコンを用いたTFTで画素回路を形成し、ポリイミド2μmを形成した後、画素電極と接続するためのスルーホールを形成した。そして、画素pixに対応した画素電極と、補助配線BL1、BL2を形成した。画素電極、および電気的に分離された2系統の補助配線BL1、BL2は、下層が銀合金(150nm)、上層がITO(20nm)の積層電極膜で形成されている。続いて、補助配線BL1、BL2が対向する端部および端部間BWを開口した絶縁膜を形成した。端部間BWの距離は、どの部分でも同じに形成され、5μm、10μm、15μm、20μmの4種類の実験サンプルを作成した。なお、補助配線BL1、BL2と画素電極との距離(最も近い部分)は20μmより大きく形成されている。
【0080】
表面に酸素プラズマ処理を行った後、下層から上層に向けて、m−MTDATA(50nm)、NPB(70nm)、Blue EML(30nm)、Alq(30nm)という積層構造の有機EL層を成膜した。有機EL層の成膜に続けて、LiF(1nm)を成膜し、続いてMgAg(Mg:Ag=10:1)(10nm)の第1導電層を成膜した。このとき、補助配線BL1、BL2の通電用パッド部分には有機EL層が成膜されないように、各層の蒸着時にマスクをした。
【0081】
そして、窒素雰囲気下において、2系統の補助配線BL1、BL2に対して、交流電源AGを用いて通電用パッド部分から交流電圧を印加した。この交流電圧は、周波数100kHz、実効印加電圧10V〜30Vrmsの範囲で行った。交流電圧の印加により端部間BWで放電が発生し、1箇所以上の端部間BW近傍で有機EL層が除去された。
【0082】
その後、画素pix周囲の補助配線BL1、BL2を覆うように第2導電層を成膜し、画素pixおよびその周辺を含む領域をガラス基板で封止した。第2導電層は、MgAg(Mg:Ag=10:1)(10nm)とした。なお、上部電極とカソード電源とは補助配線を介して間接的に接続されている。
【0083】
実施例1は、上述の通り、第1実施形態において、第2導電層520が、画素電極110上の有機EL層400(有機EL層400が発光する部分)上にも形成されている場合の構成に対応する。
【0084】
このようにして作成した有機ELディスプレイを駆動したところ、3mAの電流で駆動電圧7.05A、発光効率4.5cd/Aであった。また接続部分の電気抵抗を測定したところ一箇所当たりの平均が1700Ωであった。
【0085】
[実施例2]
実施例1において第1導電層をMgAg(Mg:Ag=10:1)(15nm)とし、第2導電層をITO(20nm)とした。それ以外の条件については実施例1と同様である。すなわち、第1実施形態において、ITOで形成された第2導電層520が、画素電極110上の有機EL層400(有機EL層400が発光する部分)上にも形成されている場合の構成に対応する。
【0086】
このようにして作成した有機ELディスプレイを駆動したところ、3mAの電流で駆動電圧7.07A、発光効率4.5cd/Aであった。また接続部分の電気抵抗を測定したところ一箇所当たりの平均が2300Ωであった。
【0087】
[実施例3]
実施例1において第1導電層をMgAg(Mg:Ag=10:1)(12nm)とした。このとき、補助配線BL1、BL2が対向する端部および端部間BWの近傍において選択的に成膜され、画素電極上の有機EL層(有機EL層が発光する部分)上において成膜されないようにした。また、第1導電層の下層にはLiFが成膜されていない。一方、第2導電層は、MgAg(Mg:Ag=10:1)(15nm)とし、その下層にLiF(1nm)を成膜した。それ以外の条件については実施例1と同様である。すなわち、第3実施形態に対応する構成である。
【0088】
このようにして作成した有機ELディスプレイを駆動したところ、3mAの電流で駆動電圧7.04A、発光効率4.5cd/Aであった。また接続部分の電気抵抗を測定したところ一箇所当たりの平均が1300Ωであった。
【0089】
[実施例4]
実施例1において第1導電層をMgAg(Mg:Ag=10:1)(15nm)とした。一方、第2導電層は、MgAg(Mg:Ag=10:1)(12nm)とし、補助配線BL1、BL2が対向する端部および端部間BWの近傍において選択的に成膜され、画素電極上の有機EL層(有機EL層が発光する部分)上において成膜されないようにした。それ以外の条件については実施例1と同様である。すなわち、第1実施形態に対応する構成である。
【0090】
このようにして作成した有機ELディスプレイを駆動したところ、3mAの電流で駆動電圧7.04A、発光効率4.5cd/Aであった。また接続部分の電気抵抗を測定したところ一箇所当たりの平均が1300Ωであった。
【0091】
[比較例1]
上部電極とカソード電源とは補助配線を介して間接的に接続されるのではなく、上部電極とカソード電源とを直接接続したところ、3mAの電流で駆動電圧7.0V、発光効率4.5cd/Aであった。したがって、上記実施例1のように有機EL層を除去した部分において上部電極と補助配線とが接続し、上部電極とカソード電源とが補助配線を介して間接的に接続されている場合であっても、有機EL層の発光には大きな影響を与えていない、すなわち、実施例1における上部電極と補助電極との接触部分の電気抵抗が、有機EL層の発光に問題ない程度の抵抗として実現できていることが確認された。
【0092】
[比較例2]
実施例1において放電による有機EL層の除去を行わなかったところ、接続部分の電気抵抗は測定限界(1GΩ)以上であった。上部電極とカソード電源とは補助配線を介して間接的に接続されているが、接続部分の抵抗は測定限界以上に高いため、電流が流れず有機EL層の点灯ができなかった。
【0093】
[実施例5]
第1実施形態における構成に類似した構成で補助配線間に電圧を印加し、絶縁破壊による放電が発生するために必要な電圧、絶縁破壊最大径、絶縁破壊発生率、および発光異常の発生の有無について、第1導電層510による影響を調査した。この実施例では、図15に示すレイアウトにおいて、画素pixが136行×904列に配置され、画素ピッチが145μmであるものを用いた。
【0094】
まず、基板上に低温ポリシリコンを用いたTFTで画素回路を形成し、ポリイミド2μmを形成した後、画素電極と接続するためのスルーホールを形成した。そして、画素pixに対応した画素電極と、補助配線BL1、BL2を形成した。画素電極、および電気的に分離された2系統の補助配線BL1、BL2は、下層が銀合金(150nm)、上層がITO(20nm)の積層電極膜で形成されている。続いて、補助配線BL1、BL2が対向する端部および端部間BW(第2開口部という)と画素電極に対応する部分(第1開口部という)を開口した絶縁膜(ポリイミド)を形成した。端部間BWの距離は、どの部分でも同じに形成され、4.0μmである。
【0095】
第2開口部は、1画素に付き1箇所形成した。なお、補助配線BL1、BL2は、表示領域の外側に通電用パッド部分を有するように形成し、後の工程において、補助配線BL1と補助配線BL2との間で電圧を印加できるようにした。また、電源接続電極は表示装置の表示領域の外側に形成した。
【0096】
表面に酸素プラズマ処理を行った後、下層から上層に向けて、m−MTDATA(50nm)、NPB(70nm)、発光層(30nm)、Alq(30nm)という積層構造の有機EL層を成膜した。有機EL層の成膜に続けて、LiF(1nm)層を成膜した。ここで、発光層は、ADN(9,10−Di(2−naphthyl)anthracene)と、発光層の総重量に対して5質量%のDPAVBi(4,4’−Bis[2−{4−(N,N−diphenylamino)phenyl}vinyl]biphenyl)とを共蒸着することで形成した。なお、有機EL層は、マスクを用いて表示装置の表示領域にのみ成膜し、表示領域の外側の通電用パッド部分等には成膜されないようにした。
【0097】
さらに、真空蒸着法にて第1導電層510を形成した。ここでは第1層としてCa(膜厚Xnm)と、第1層上の第2層としてMgAg(Mg:Ag=10:1)(膜厚Ynm)とを第1導電層510として形成した。ここで、第1導電層510においても通電用パッド部分を有するパターンが形成されるようにマスクを用いて成膜した。この実施例では、Caを成膜しない場合、および2nm成膜した場合において、MgAgの膜厚を異ならせてサンプルを作成した。
【0098】
次に、窒素雰囲気下において2系統の補助配線BL1、BL2に対して、交流電源AGを用いて通電用パッド部分から交流電圧を印加した。この交流電圧は、矩形電圧であり、周波数10kHzである。この電圧印加により、補助配線BL1、BL2の端部間で絶縁破壊による放電が発生し、一部の第2開口部においては有機EL層および第1導電部510が一部溶融し、除去されていることを確認した。表示領域内の別の第2開口部においては明確な有機EL層の除去ではないが下層の補助配線BL1、BL2が電気的エネルギによって溶融した痕跡があり、上部の有機EL層を含めて混合した領域を形成した。
【0099】
さらに、真空蒸着法にて第2導電層520を形成した。ここでは第2導電層520は、MgAg(Mg:Ag=10:1)を(12−Y)nm形成し、電源接続電極、補助配線BL1、BL2および第1導電層510を接続した。続いて、窒素雰囲気において、基板の表示領域を透明封止ガラスで覆い、基板と透明封止ガラスとをUV硬化樹脂で接着し封止することで表示装置を製造した。
【0100】
以下の表1は、第1層Caの膜厚と第2層MgAgの膜厚との組み合わせにより、絶縁破壊に必要な電圧、絶縁破壊最大径、絶縁破壊発生率、および発光異常の発生の有無についての結果である。
【0101】
【表1】

【0102】
表1の結果によると、第1導電層510がMgAg単層である場合、5.5nm〜6.0nm(条件2、3)の膜厚で、良好な結果が得られた。5nm(条件1)以下では絶縁破壊のための必要電圧が非常に大きく、破壊が起きた場合の影響が巨大なものとなって発光異常がみられた。また、MgAgが12nm(条件4)である場合には、絶縁破壊に必要な電圧が低くなるが、絶縁破壊時にMgAgが剥離する範囲が大きくなって発光異常がみられた。ただし、条件1、4は、最適条件ではないが、第2開口部と画素との距離を大きくとれる画素ピッチであれば、適用可能な条件となり得る。
【0103】
第1導電層510がCa(2.0nm)とMgAgの積層である場合、MgAgが2.0nm(条件5)〜6.0nm(条件8)の膜厚で良好な結果が得られ、また、面内の分布も良好であった。MgAgが8.0nm(条件9)では、絶縁破壊に必要な電圧が低くなるが、絶縁破壊時にMgAgが剥離する範囲が大きくなって発光異常がみられた。ただし、条件9は、最適条件ではないが、第2開口部と画素との距離を大きくとれる画素ピッチであれば、適用可能な条件となり得る。
【0104】
なお、絶縁破壊発生率は、100%である必要は無い。この実施例では、絶縁破壊発生率が35%以上50%以下になるように、絶縁破壊に必要な電圧を設定した。
【0105】
上記の通り、この実施例における各条件(画素ピッチ等)の下では、第1導電層510が条件2、3、5〜8において画素に欠陥がなく、良好な点灯が可能であった。この際、カソードは、補助配線BL1、BL2にのみ接続されており、有機EL層への電子供給は全て補助配線BL1、BL2を経由している。以下の表2は、これらの条件において、100mA通電時の特性(駆動電圧、効率)であり、いずれも良好な結果を示している。
【0106】
【表2】

【0107】
[実施例6]
実施例5の条件6において、絶縁破壊発生率が変化するように絶縁破壊電圧を調整し、表示装置を製造した。この際、表示領域の左端部に補助配線BL1用抵抗測定端子を設け、右端部に補助配線BL2用抵抗測定端子を設けて、両端子間の抵抗を測定できるようにした。両端子間の抵抗に表示領域の縦横比をかけることで補助配線BL1、BL2と第2導電層520とを合成した層を想定したシート抵抗を算出した。これによって、補助配線BL1、BL2の抵抗低減効果を検証した。この結果を以下の表3に示す。なお、画素電極におけるカソードは、第1導電層510と第2導電層520との積層になる。この積層は、Ca(2nm)上にMgAg(12nm)を積層したものであり、このシート抵抗は、35(Ω/□)であった。一方、接続部の抵抗を無視した補助配線BL1、BL2のシート抵抗は、8.1(Ω/□)であった。
【0108】
【表3】

【0109】
表3に示す結果によれば、絶縁破壊発生率は2%(条件6−1)でも十分シート抵抗の低減効果が見られる。シート抵抗の低減効果が見られるための絶縁破壊発生率は、補助配線BL1、BL2の線幅および膜厚の条件、補助配線BL1、BL2と第2導電層520との接続部分の抵抗に変化するが、100%にする必要はない。すなわち、100%の絶縁破壊発生率を得るのに必要な高い電圧を印加する必要はない。印加する電圧を低くすることで、絶縁破壊による画素部分への影響を抑制したり、異常な放電を抑制したりすることができる。
【0110】
[実施例7]
実施例5の条件6において、端部間BWの距離を2.5μmにした表示装置と、6.0μmにした表示装置を製造した。その結果を以下の表4に示す。
【0111】
【表4】

【0112】
表4に示す結果によれば、端部間BWの距離が2.5μm〜6.0μmでは、いずれも良好な結果が得られた。
【0113】
なお、上記の実施例5〜7において、第1導電層510が、MgAgの共蒸着膜単層である場合と、CaとMgAgとの積層膜である場合を示したが、実施形態で説明したとおり、この組み合わせに限られるものではない。積層構造にする場合には、電子注入材料との組み合わせにもよるが、有機EL層に近い側に形成される層(第1層)としてCaの代わりに他の金属を用いることができる。第1層としては、特に、仕事関数が4.3eVよりも小さく、有機EL層への電子注入が容易である材料を用いることが望ましく、さらに、次いで積層される金属膜(上記の各実施例ではMgAg)の膜質を良好に保つ、すなわち、単層の場合より薄くしても導電層として機能することができる材料を用いることが望ましい。このような材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド金属およびアルミニウムの少なくとも1種の金属元素を含む。
【0114】
第1層の膜厚も、2nmに限定されず、他の様々な条件に応じて適宜決められればよい。第1層上に積層される第2層であるMgAgの共蒸着比率も適宜決定されればよく、例えば、AgをMgよりも大きくした比率にしてもよい。また、第2層は、MgAg(Mg:Ag=10:1)以外の異なる材料を用いることもでき、膜質、導電性、絶縁破壊条件、発光特性等の各条件に応じて、材料、共蒸着比、膜厚が適宜決められればよい。
【符号の説明】
【0115】
1…表示装置、10…基板、70…電圧印加部、71,72,73,74…駆動回路、100…表示領域、110,110B,110G,100R…画素電極、210,220…補助配線、210T,220T…端部、250…電源接続電極、300…絶縁層、310…第1開口部、320…第2開口部、350…第3開口部、400…有機EL層、450…残渣物、500…上部電極、510…第1導電層、520…第2導電層、1000…基板
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