特許第6362948号(P6362948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362948
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】シートバックフレーム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20180712BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B60N2/68
   B60N2/42
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-150130(P2014-150130)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-22901(P2016-22901A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢三
(72)【発明者】
【氏名】櫛来 宏
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 智幸
(72)【発明者】
【氏名】永尾 良太郎
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−521715(JP,A)
【文献】 特開2004−322881(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02165145(GB,A)
【文献】 特表2013−539438(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/027627(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00875416(EP,A2)
【文献】 欧州特許出願公開第02233352(EP,A1)
【文献】 中国特許第102717740(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座した乗員の背部を支持するシートバックの骨格を構成し、一体的に樹脂成形されたシートバックフレームであって、
ヘッドレストを保持するヘッドレスト保持部を含み、前記シートバックフレームの上端に位置し、シート幅方向に延在する上側フレーム部と、
前記上側フレーム部のシート幅方向両端部と上方で接続され、前記シートバックフレームのシート上下方向に延在する一対のサイドフレーム部と、
前記上側フレーム部において、少なくとも前記ヘッドレスト保持部からシート幅方向端部にかけて、シート前後方向に延在する凹部がシート上下方向に複数形成され、一方の前記凹部はシート後方側に開放され、シート前方側にシート上下方向に延在する壁面が形成され、他方の前記凹部は、シート前方側に開放され、シート後方側にシート上下方向に延在する壁面が形成された補強部と、
を備えるシートバックフレーム。
【請求項2】
前記補強部のシート上下方向に複数の前記凹部が配設され、上端に位置する前記凹部は、シート前方側に開放され、シート後方側に壁面が形成されている請求項1記載のシートバックフレーム。
【請求項3】
前記補強部の複数の前記凹部を構成する壁面は、前記ヘッドレスト保持部から前記シート幅方向端部に向けて連続的に形成されている請求項1又は2記載のシートバックフレーム。
【請求項4】
一対の前記サイドフレーム部間をシート幅方向に延在し、シート幅方向端部で前記サイドフレーム部に連続すると共に、シート上方向端部で前記上側フレーム部に連続する背面パネル部を備える請求項1〜3のいずれか1項記載のシートバックフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のシートバックフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車両用シートでは、成形性や軽量化の観点から樹脂成形されたシートバックフレームが採用されてきている。シートバックフレームは、正面視において略矩形状に形成されており、上部にシート幅方向に延在する上側フレーム部と、上側フレーム部のシート幅方向両端部で接続され、シート上下方向に延在する一対のサイドフレーム部を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−4977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシートバックフレームを車両用シートに適用した場合、例えば、車両の後突時に乗員の頭部がヘッドレストに衝突することにより、ヘッドレストから樹脂成形されたシートバックフレームに荷重が入力すると、上側フレーム部からサイドフレーム部を介してシートクッションフレームに荷重が伝達される。この際、上側フレーム部とサイドフレーム部の接続部に応力が集中するという課題があった。
【0005】
すなわち、樹脂成形されたシートバックフレームにおいて、ヘッドレストからの荷重入力時に上側フレーム部とサイドフレーム部との接続部への応力集中の抑制が望まれている。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、車両の衝突時にヘッドレストから荷重が入力した際に応力集中を抑制できるシートバックフレームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の発明は、着座した乗員の背部を支持するシートバックの骨格を構成し、一体的に樹脂成形されたシートバックフレームであって、ヘッドレストを保持するヘッドレスト保持部を含み、前記シートバックフレームの上端に位置し、シート幅方向に延在する上側フレーム部と、前記上側フレーム部のシート幅方向両端部と上方で接続され、前記シートバックフレームのシート上下方向に延在する一対のサイドフレーム部と、前記上側フレーム部において、少なくとも前記ヘッドレスト保持部からシート幅方向端部にかけて、シート前後方向に延在する凹部がシート上下方向に複数形成され、一方の前記凹部はシート後方側に開放され、シート前方側にシート上下方向に延在する壁面が形成され、他方の前記凹部は、シート前方側に開放され、シート後方側にシート上下方向に延在する壁面が形成された補強部と、を備える。
【0008】
このシートバックフレームは、一体的に樹脂成形されているものであって、ヘッドレスト保持部を有する上側フレーム部と、上側フレーム部のシート幅方向両端部で接続されるサイドフレーム部とを備えている。したがって、車両の後突時に頭部が前方からヘッドレストに衝突することにより、ヘッドレスト保持部にモーメントが作用する。すなわち、ヘッドレスト保持部の上端側にシート後方側への荷重が入力され、ヘッドレスト保持部の下端側にシート前方への荷重が入力される。したがって、ヘッドレスト保持部から上側フレーム部に入力された荷重も、上側フレーム部の上端側でシート後方側、下端側でシート前方側に作用する。
【0009】
また、車両の前突時には後部座席の乗員の頭部がヘッドレストに後方斜め上方から衝突することにより、後突の場合と反対方向のモーメントがヘッドレスト保持部に作用する。この結果、ヘッドレスト保持部から上側フレーム部に入力された荷重も、上側フレーム部の上端側でシート前方側、下端側でシート後方側に作用する。
【0010】
ここで、上側フレーム部の補強部には、シート後方側に開放される凹部と、シート前方側に開放される凹部とが形成されており、上側フレーム部のシート前方側とシート後方側にシート上下方向に延在する壁面を有する。したがって、シート前方側の壁面で上側フレーム部のシート前方側に作用する荷重を分散させると共に、シート後方側の壁面で上側フレーム部のシート後方側に作用する荷重を分散させることができる。この結果、車両の衝突時の上側フレーム部のサイドフレーム部との接続部に対する応力集中を一層抑制することができる。
【0011】
本発明の請求項2記載の発明は、本発明の請求項1記載の発明において、前記補強部のシート上下方向に複数の前記凹部が配設され、上端に位置する前記凹部は、シート前方側に開放され、シート後方側に壁面が形成されている。
【0012】
このシートバックフレームでは、補強部のシート上端に位置する凹部がシート前方側に開放されている。したがって、凹部の端部を構成する突起がシート前方側に位置することになる。すなわち、上側フレーム部の上端のシート後方側には突起物が存在しないことになる。
【0013】
本発明の請求項3記載の発明は、本発明の請求項1又は2記載の発明において、前記補強部の複数の前記凹部を構成する壁面は、前記ヘッドレスト保持部から前記シート幅方向端部に向けて連続的に形成されている。
【0014】
このシートバックフレームでは、補強部の凹部を構成するシート前方側の壁面等が、ヘッドレスト保持部からシート幅方向両端部、すなわちサイドフレーム部との接続部まで連続的に形成されている。したがって、車両の後突時にヘッドレストから上側フレーム部に入力される荷重がヘッドレスト保持部からサイドフレーム部との接続部で連続的に形成された壁面によって一層分散され、サイドフレーム部との接続部における応力集中が一層抑制される。
【0015】
本発明の請求項4記載の発明は、本発明の請求項1〜3のいずれか1項記載の発明において、一対の前記サイドフレーム部間をシート幅方向に延在し、シート幅方向端部で前記サイドフレーム部に連続すると共に、シート上方向端部で前記上側フレーム部に連続する背面パネル部を備える。
【0016】
このシートバックフレームでは、一対のサイドフレーム部の間に、上側フレーム部及びサイドフレーム部に連続する背面パネル部を備える。したがって、車両の衝突時にヘッドレストからヘッドレスト保持部に荷重が入力されると、上側フレーム部から背面パネル部にこの荷重の一部が伝達される。したがって、上側フレーム部とサイドフレーム部との接続部に対する応力集中を一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1、3、4記載の本発明により、上側フレーム部のサイドフレーム部との接続部における応力集中を抑制することができる。
【0022】
請求項2記載の本発明により、新たな構成要素を付加することなく、シートバックフレームを樹脂成形するだけで、内突要件をクリアすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るシートバックフレームの斜視説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るシートバックフレームの正面説明図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るシートバックフレームのシート前方側の要部斜視説明図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るシートバックフレームのシート後方側の要部斜視説明図である。
図5図2の5−5線断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの乗員着座状態説明図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るシートバックフレームの要部断面図である。
図8】本発明の第2実施形態の他の例に係るシートバックフレームの要部断面図である。
図9】比較例に係るシートバックフレームのシート前方側の要部斜視説明図である。
図10】比較例に係るシートバックフレームの正面説明図である。
図11図10の11−11線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
【0026】
本発明の第1実施形態に係るシートバックフレームについて、図1図6図9図11を参照して説明する。なお、図面において、矢印FRはシート前方を示し、矢印UPはシート上方を示し、矢印Wはシート幅方向を示す。
【0027】
車両用シート10は、図6に示すように、乗員Pが着座するシートクッション12と、乗員Pの背部を支持するシートバック14を備えている。シートクッション12は、周知のスライド機構を介して車体フロアに連結されている。また、シートバック14は、シートクッション12の後端部に下端部が連結されている。
【0028】
シートバック14の内部には、図1に示すようにシートバック14の骨格を構成するシートバックフレーム22が形成されている。シートバックフレーム22は、樹脂(例えば、炭素繊維入り強化プラスチック)によって構成され、全体として所謂シェル状に形成されている。シートバックフレーム22に用いられる樹脂としては、特に限定するものではないが、繊維材を含有しない樹脂、又は短繊維若しくは長繊維を含有する樹脂が好ましい。
【0029】
シートバックフレーム22は、シートバックフレーム22の外周部を構成する枠フレーム部24と、枠フレーム部24の内側に配置される背面パネル部26とを備える。枠フレーム部24と背面パネル部26は、樹脂で一体成形されている。
【0030】
枠フレーム部24は、図1及び図2に示すように、正面視でシート下方側に開放された略逆U字形状に形成されている。枠フレーム部24は、シートバックフレーム22のシート幅方向両端部に形成された一対のサイドフレーム部28と、シートバックフレーム22の上部を構成するアッパフレーム部30とを備える。したがって、背面パネル部26は、シート幅方向両端部でサイドフレーム部28と連続しており、シート上方でアッパフレーム部30と連続している。
【0031】
サイドフレーム部28は、略板状に形成され、板厚方向をシート幅方向にしてシート上下方向に延在している。
【0032】
サイドフレーム部28の下端部には、図1に示すように、周知のリクライニング機構32が取り付けられており、シートクッションフレーム34にリクライニング機構32を介して連結されている。
【0033】
アッパフレーム部30は、シート前後方向断面において所定の厚みを有する略矩形体とされ、シート幅方向に延在すると共に、シート幅方向両端の接続部39でサイドフレーム部28の上端と連続的に形成されている。図3に示すように、アッパフレーム部30のシート幅方向中央側には、一対の支持部36が形成されている。支持部36は、シート上下方向が軸方向とされた断面矩形状の筒体が形成されている。この支持部36内には、ヘッドレスト37を支持するグロメット38が挿入されており、ヘッドレスト37のステー40がグロメット38に挿入されることにより、ヘッドレスト37がシートバックフレーム22に支持されることになる。
【0034】
図3に示すように、アッパフレーム部30の一対の支持部36間には、シート前後方向に延在し、シート前方に開放された凹部42が形成されている。この凹部42は、シート前後方向に延在するリブ44によって複数の凹部に分割されている。
【0035】
一方、アッパフレーム部30の一対の支持部36よりもそれぞれシート幅方向端部(サイドフレーム部28)側には、図3に示すように、上段側にシート前後方向に延在し、シート前方に開放された凹部46が形成されている。凹部46は、シート前後方向に延在するリブ48によって複数の凹部に分割されている。
【0036】
また、図4に示すように、アッパフレーム部30の支持部36よりもサイドフレーム部28側の下段側には、シート前後方向に延在し、シート後方に開放された凹部50が形成されている。この凹部50は、シート前後方向に延在するリブ52によって複数の凹部に分割されている。
【0037】
したがって、アッパフレーム部30は、図5に示すように、背面パネル部26の上端からシート前方に延在するアッパフレーム部30の下壁54と、下壁54のシート前方端からシート上方に延在する前壁56と、前壁56のシート上端からシート後方に延在し、上段の凹部46と下段の凹部50を隔てる隔壁58と、隔壁58のシート後端からシート上方に延在する後壁60と、後壁60のシート上端からシート前方に延在する上壁62とを備える。
【0038】
すなわち、下壁54、前壁56、隔壁58によって凹部50が構成され、隔壁58、後壁60、上壁62によって凹部46が構成されている。
【0039】
また、前壁56、後壁60は、それぞれ図3図4に示すように、支持部36からシート幅方向端部(接続部39)まで、連続的な面として形成されている。
【0040】
なお、アッパフレーム部30において、支持部36からシート幅方向端部(接続部39)までの範囲、すなわち凹部46、50が複数の凹部に分割されている範囲を補強部63とする。
【0041】
次に、本実施形態のシートバックフレーム22の作用について説明する。この作用を説明するために、先ず対比する比較例の説明を行う。
【0042】
比較例に係るシートバックフレーム100は、アッパフレーム部130を除いて本実施形態に係るシートバックフレーム22と同様である。したがって、シートバックフレーム100でシートバックフレーム22と同様の構成要素には、同一の参照番号に100を足した参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
図9および図10に示すように、アッパフレーム部130は、補強部163の全域に亘って、シート前後方向に延在し、シート前方に開放された凹部164が形成されている。図11に示すように、凹部164は、上壁162、下壁154、後壁160から形成されており、シート前後方向に延在するリブ166によって複数の凹部に分割されている。
【0044】
このように形成されたシートバックフレーム100も、アッパフレーム部130の凹部164に複数のリブ166を形成することによってアッパフレーム部130の補強が行われている。
【0045】
このように構成された比較例に係るシートバックフレーム100に対して車両の後突時に、ヘッドレスト(図示せず)に乗員Pの頭部が衝突することにより、ヘッドレストのステーからアッパフレーム部130の支持部136にモーメントが作用する。この結果、支持部136の上端側には、シート後方への荷重が入力され、下端側にはシート前方への荷重が入力される。この荷重は、アッパフレーム部130(補強部163)からサイドフレーム部128を介してシートクッションフレーム34に伝達される。
【0046】
この際、アッパフレーム部130では、主に後壁160を介して荷重が伝達され、アッパフレーム部130のサイドフレーム部128との接続部139のシート前方側に応力が集中する。
【0047】
これに対して、本実施形態に係るシートバックフレーム22は、アッパフレーム部30の補強部63には、上段側にシート前方に開放された凹部46が形成されると共に、下段側にシート後方に開放された凹部50が形成されている。すなわち、補強部63には、支持部36から接続部39まで連続的に延在する前壁56及び後壁60が形成されている。
【0048】
したがって、車両の後突時に着座乗員Pの頭部H1がヘッドレスト37に衝突してシートバックフレーム22の支持部36にモーメントが作用し、アッパフレーム部30(補強部63)の上端側にシート後方への荷重、下端側にシート前方への荷重が入力された場合、それぞれの荷重が後壁60及び前壁56で分散されるため、接続部39に対する応力集中を抑制することができる。
【0049】
特に、前壁56および後壁60は、支持部36から接続部39まで連続的に形成されているため、荷重を一層効率的に分散でき、接続部39の応力集中を一層抑制できる。
【0050】
さらに、補強部63において前壁56が下段、後壁60が上段に形成されているため、補強部63の下端でシート前方に作用する荷重、上端でシート後方に作用する荷重の作用位置に対応した位置にそれぞれ前壁56、後壁60が形成されており、補強部63に入力した荷重を一層効果的に分散することができる。この結果、アッパフレーム部30とサイドフレーム部28との接続部39に対する応力集中が一層抑制される。
【0051】
さらにまた、シートバックフレーム22は、アッパフレーム部30に連続して背面パネル部26が形成されているため、ヘッドレスト37からアッパフレーム部30(補強部63)に入力された荷重の一部が背面パネル部26に伝達され、アッパフレーム部30とサイドフレーム部28との接続部39に対する応力集中が一層抑制される。
【0052】
またさらに、シートバックフレーム22は、支持部36と補強部63を含むアッパフレーム部30と、サイドフレーム部28とが樹脂で一体成形されているため、シートバックフレーム22に発生する応力集中を効果的に抑制することができる。
【0053】
また、アッパフレーム部30の支持部36からシート幅方向端部にかけて、上段側にシート前方に開放される凹部46を形成しているため、図5に示すように、アッパフレーム部30のシート後方側上端(後壁60と上壁62の角部)にRをつけて樹脂成形すれば、内突要件を満たすことができる。すなわち、樹脂成形時に特別な要素を付加することなく、シートバックフレーム22を樹脂成形するだけで、内突要件を満たすことができる。
【0054】
なお、本実施形態では、上段側と下段側の2段でそれぞれ凹部46、50の開口方向を反対にしたが、少なくとも一つの凹部が他の凹部と反対側に開放するものであると共に、上端の凹部がシート前方側に開放されていれば、3段以上でも良い。
【0055】
また、本実施形態では車両の後突時について説明したが、車両の前突時にも同様の作用効果を奏する。すなわち、図1に示すように、車両の前突時に後部座席の乗員の頭部H2がシート後方の斜め上方からヘッドレスト37に衝突し、支持部36を介してアッパフレーム部30(補強部63)のシート上端側でシート前方に荷重が作用し、シート下端側でシート後方に荷重が作用する場合にも、車両の後突時と同様に、接続部39に対する応力集中を抑制する。
【0056】
[第2実施形態]
【0057】
本発明の第2実施形態のシートバックフレームについて説明する。第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。なお、本実施形態が第1実施形態と実質的に異なるのはアッパフレーム部のみなので、その点を中心に説明する。
【0058】
第1実施形態のアッパフレーム部30の上段に形成された凹部46と下段に形成された凹部50(図5参照)と開口の向きが反対となるように凹部72と凹部76(図7参照)を形成したものである。
【0059】
すなわち、シートバックフレーム70のアッパフレーム部30の補強部63には、上段にシート後方に開放されシート前後方向に延在する凹部72が形成されている。凹部72は、シート前後方向に延在するリブ74によって複数の凹部に分割されている。
【0060】
また、シートバックフレーム70のアッパフレーム部30の補強部63には、下段にシート前方に開放されシート前後方向に延在する凹部76が形成されている。凹部76は、シート前後方向に延在するリブ78によって複数の凹部に分割されている。
【0061】
凹部76は、図7に示すように、下壁54と、隔壁58と、背面パネル部26に連続する後壁80によって構成されている。凹部72は、上壁62と、隔壁58と前壁82によって形成されている。
【0062】
また、図7に示すように、アッパフレーム部30の凹部72を構成する上壁62のシート後方側端部62Aには、シート前後方向断面が円形でシート幅方向に延在する玉縁部84が形成されている。
【0063】
シートバックフレーム70の作用について説明する。
【0064】
シートバックフレーム70のアッパフレーム部30の一対の支持部36よりもシート幅方向端部(サイドフレーム部28)側に、上段にシート後方側に開口する凹部72が形成され、下段にシート前方側に開口する凹部76が形成されている。
【0065】
したがって、車両の後突時に着座乗員の頭部がヘッドレスト37に衝突することにより、ヘッドレスト37のステー40を介してアッパフレーム部30の一対の支持部36にモーメントが作用する。この結果、支持部36(アッパフレーム部30)の上端側にシート後方への荷重が作用し、下端側にシート前方への荷重が作用する。この際、荷重はアッパフレーム部30のシート幅方向に伝達され、接続部39、サイドフレーム部28を介してシートクッションフレーム34に伝達される。
【0066】
ここで、アッパフレーム部30は、補強部63のシート前方側に前壁82が形成され、シート後方側に後壁80が形成されている。したがって、アッパフレーム部30(補強部63)に入力されたシート後方側への荷重やシート前方側への荷重がそれぞれ後壁80と前壁82で分散され、接続部39に対する応力集中が緩和される。
【0067】
一方、車両の前突時には、車両の後突時と同様の効果を奏する他に、シート前方側への荷重が作用するシート上端側に前壁82が形成され、シート後方側の荷重が作用するシート下端側に後壁80が形成されているため、補強部63に入力した荷重を一層効率的に分散でき、接続部39に対する応力集中が一層抑制できる。
【0068】
なお、図7に示すように、凹部72を構成する上壁62のシート後方側端部62Aには玉縁部84が形成されているため、車両の前突時に後部座席に着座した乗員の頭部が前部座席のシートバック14に衝突しても受傷する可能性を抑制することができる。すなわち、内突要件を満たすことができる。
【0069】
また、本実施形態のシートバックフレーム70では、アッパフレーム部30の上壁62のシート後方側端部62Aに玉縁部84を設けたが、シート後方側端部62Aの尖った部分を解消できる構成ならば、これに限定するものではない。例えば、図8に示すように、角部がR形状とされた樹脂製の嵌合部材86を凹部72に嵌合することによって、嵌合部材86がアッパフレーム部30のシート後方側端部62Aを覆う構成としても良い。
【符号の説明】
【0070】
14 シートバック
22 シートバックフレーム
28 サイドフレーム部
30 アッパフレーム部(上側フレーム部)
36 支持部(ヘッドレスト保持部)
46、50 凹部
56、82 前壁(壁面)
60、80 後壁(壁面)
63 補強部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11