特許第6362958号(P6362958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362958
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180712BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   A61B5/055 382
   A61B5/055 311
   G01N24/08 510Y
   G01N24/08 520Y
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-161810(P2014-161810)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-71031(P2015-71031A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2017年8月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-183958(P2013-183958)
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂下 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】木村 徳典
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−342555(JP,A)
【文献】 特開2011−083592(JP,A)
【文献】 特開2013−013512(JP,A)
【文献】 特開2013−236932(JP,A)
【文献】 特開2012−110690(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0277828(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0260725(US,A1)
【文献】 特開2003−235827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/563
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の撮像領域に流入する流体にラベリングパルスを印加してから所定の待ち時間が経過した後にデータを収集する第1のデータ収集と、前記ラベリングパルスを印加せずにデータを収集する第2のデータ収集とを実行する実行部と、
前記第1のデータ収集によって収集された第1のデータと前記第2のデータ収集によって収集された第2のデータとを用いて差分画像を生成する生成部と
を備え、
前記生成部は、前記待ち時間と前記流体の縦緩和時間との関係に応じて、異なる差分方式で前記差分画像を生成する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記実行部は、前記第2のデータ収集として、前記流体に影響を与えない位置に前記ラベリングパルスと同様のコントロールパルスを印加してから前記待ち時間が経過した後にデータ収集を実行する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記実行部は、前記第2のデータ収集として、コントロールパルスを印加せずにデータ収集を実行する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記待ち時間が、前記ラベリングパルスが印加されてから前記流体の縦磁化がゼロになるまでの経過時間より短いか前記経過時間以上であるかに応じて、異なる差分方式で前記差分画像を生成する、
請求項1、2又は3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記生成部は、
前記待ち時間が前記経過時間より短い場合は、前記第1のデータと前記第2のデータとを差分して差分データを生成し、生成した差分データをフーリエ変換することで前記差分画像を生成し、
前記待ち時間が前記経過時間以上である場合は、前記第1のデータをフーリエ変換して第1の絶対値画像を生成し、前記第2のデータをフーリエ変換して第2の絶対値画像を生成し、前記第1の絶対値画像と前記第2の絶対値画像とを差分することで前記差分画像を生成する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記生成部は、
前記待ち時間が前記経過時間より短い場合は、前記第1のデータをフーリエ変換して第1の複素画像を生成し、前記第2のデータをフーリエ変換して第2の複素画像を生成し、前記第1の複素画像と前記第2の複素画像とを差分することで前記差分画像を生成し、
前記待ち時間が前記経過時間以上である場合は、前記第1のデータをフーリエ変換して第1の絶対値画像を生成し、前記第2のデータをフーリエ変換して第2の絶対値画像を生成し、前記第1の絶対値画像と前記第2の絶対値画像とを差分することで前記差分画像を生成する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記生成部は、
前記待ち時間が前記経過時間より短い場合は、前記第1のデータをフーリエ変換して第1のリアル画像を生成し、前記第2のデータをフーリエ変換して第2のリアル画像を生成し、前記第1のリアル画像と前記第2のリアル画像とを差分することで前記差分画像を生成し、
前記待ち時間が前記経過時間以上である場合は、前記第1のデータをフーリエ変換して第1の絶対値画像を生成し、前記第2のデータをフーリエ変換して第2の絶対値画像を生成し、前記第1の絶対値画像と前記第2の絶対値画像とを差分することで前記差分画像を生成する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記第1のデータに対して位相補正を行って前記第1のリアル画像を生成し、前記第2のデータに対して位相補正を行って前記第2のリアル画像を生成する、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記生成部は、
前記第1のデータをフーリエ変換して第1の絶対値画像を生成し、前記第2のデータをフーリエ変換して第2の絶対値画像を生成し、
前記待ち時間が前記経過時間より短い場合は、前記第1の絶対値画像と前記第2の絶対値画像とを加算することで前記差分画像を生成し、
前記待ち時間が前記経過時間以上である場合は、前記第1の絶対値画像と前記第2の絶対値画像とを差分することで前記差分画像を生成する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記第1の絶対値画像及び前記第2の絶対値画像は、背景信号が無い、又は、流体成分と比較して背景信号が小さいものである、
請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記生成部は、前記第1の絶対値画像及び前記第2の絶対値画像それぞれについて、マスク処理によって背景部分と流体部分とを区分けし、背景部分については、前記待ち時間によらずに絶対値を差分し、流体部分については、前記待ち時間が前記経過時間より短い場合は絶対値を加算し、前記待ち時間が前記経過時間以上である場合は絶対値を差分することで、前記差分画像を生成する、
請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
撮像対象の流体のT1値に基づいて、前記ラベリングパルスが印加されてから前記流体の縦磁化がゼロになるまでの時間を算出する設定部をさらに備え、
前記生成部は、前記設定部によって算出された時間を前記経過時間として用いる、
請求項4〜11のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記ラベリングパルスを印加してから所定の待ち時間が経過した後にデータを収集するデータ収集を前記待ち時間を変えながら複数回行うプリスキャンによって得られたデータに基づいて、前記ラベリングパルスが印加されてから前記流体の縦磁化がゼロになるまでの時間を算出する設定部をさらに備え、
前記生成部は、前記設定部によって算出された時間を前記経過時間として用いる、
請求項12に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置によって被検体内を流れる流体を撮像する撮像法として、ASL(Arterial Spin Labeling)と呼ばれる方法が知られている。
【0003】
ASLでは、一般的に、被検体の撮像領域に流入する流体を標識化するためのラベリングパルスを印加してから所定の待ち時間が経過した後にデータを収集するラベリングモードのデータ収集と、当該流体に影響を与えない位置にラベリングパルスと同様のコントロールパルスを印加してから同じ待ち時間が経過した後にデータを収集するコントロールモードのデータ収集とが実行される。そして、ラベリングモードで収集されたデータからラベリング画像が生成され、コントロールモードで収集されたデータからコントロール画像が生成され、これらの画像を差分することで、撮像対象の流体が描出された流体画像が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6564080号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、流体の差分画像の画質や定量性を向上させることができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置は、実行部と、生成部とを備える。実行部は、被検体の撮像領域に流入する流体にラベリングパルスを印加してから所定の待ち時間が経過した後にデータを収集する第1のデータ収集と、前記ラベリングパルスを印加せずにデータを収集する第2のデータ収集とを実行する。生成部は、前記第1のデータ収集によって収集された第1のデータと前記第2のデータ収集によって収集された第2のデータとを用いて差分画像を生成する。ここで、生成部は、前記待ち時間と前記流体の縦緩和時間との関係に応じて、異なる差分方式で前記差分画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るMRI装置の詳細な構成例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る撮像条件設定部によって設定される差分方式のモードを説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るASLのラベリングモードで実行されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るASLのコントロールモードで実行されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るASLのコントロールモードで実行されるパルスシーケンスの他の例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる流体撮像の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる流体撮像の一例を示す図(1)である。
図9図9は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる流体撮像の一例を示す図(2)である。
図10図10は、第1の実施形態の第1の変形例に係る流体撮像の一例を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態の第2の変形例に係る流体撮像の一例を示す図である。
図12図12は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われる流体撮像の流れを示すフローチャートである。
図13図13は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われる流体撮像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では添付図面を参照して、MRI装置の実施形態を説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石11と、傾斜磁場コイル12と、送信コイル13と、受信コイル14と、架台15と、傾斜磁場電源21と、送信部22と、受信部23とを備える。また、MRI装置100は、寝台装置31と、寝台制御部32と、計算機システム40とを備える。
【0010】
静磁場磁石11は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、円筒内部の空間に一様な静磁場Bを発生する。例えば、静磁場磁石11は、永久磁石や超伝導磁石などである。
【0011】
傾斜磁場コイル12は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、円筒内部の空間に、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸それぞれの方向に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場コイル12は、X軸、Y軸及びZ軸それぞれの方向に沿った傾斜磁場を発生させるための3つのコイルを備える。これら3つのコイルは、傾斜磁場電源21から個別に電流供給を受けて、物理軸の方向であるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させ、各方向の傾斜磁場を合成することで、互いに直交する論理軸の方向であるリードアウト方向、位相エンコード方向、スライス選択方向それぞれに沿った傾斜磁場を任意に設定する。
【0012】
ここで、リードアウト方向に設定される傾斜磁場は、リードアウト用傾斜磁場Grと呼ばれ、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。また、位相エンコード方向に設定される傾斜磁場は、位相エンコード用傾斜磁場Geと呼ばれ、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。また、スライス選択方向に設定される傾斜磁場は、スライス選択用傾斜磁場Gsと呼ばれ、任意に撮像断面を決めるために利用される。これらリードアウト用傾斜磁場Gr、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びスライス選択用傾斜磁場Gsは、静磁場Bに重畳される。
【0013】
送信コイル13は、中空の円筒状に形成されたコイルであり、送信部22から高周波電流の供給を受けて、円筒内部の空間に配置された被検体Sに高周波パルスを印加する。なお、送信コイル13は、高周波パルスの影響によって被検体Sから放射される磁気共鳴信号を受信する受信コイルの機能を兼ね備えていてもよい。
【0014】
受信コイル14は、高周波パルスの影響によって被検体Sから放射される磁気共鳴信号を受信する。また、受信コイル14は、受信した磁気共鳴信号を受信部23へ出力する。なお、図1に示す受信コイル14は頭部用の受信コイルであるが、受信コイル14としては、例えば腹部用の受信コイルや脊椎用の受信コイルなどのように、撮像対象となる撮像部位に応じて各種の受信コイルが用いられる。
【0015】
架台15は、概略円筒形上に形成された静磁場磁石11、傾斜磁場コイル12、及び送信コイル13を、それぞれの円筒の中心軸が揃うように配置して支持する。具体的には、架台15は、静磁場磁石11の内周側に傾斜磁場コイル12を配置し、傾斜磁場コイル12の内周側に送信コイル13を配置した状態でそれぞれを支持することで、送信コイル13の内周側に撮像空間を形成する。
【0016】
傾斜磁場電源21は、シーケンス制御部45による制御に応じて、傾斜磁場コイル12に電流を供給する。具体的には、傾斜磁場電源21は、高圧発生回路や傾斜磁場アンプなどを含む。高圧発生回路は、商用交流電源から供給されるAC(Alternate Current)電流を所定の電圧のDC(Direct Current)電流に変換して傾斜磁場アンプに供給する。傾斜磁場アンプは、高圧発生回路から供給されるDC電流を増幅して傾斜磁場コイル12に供給する。
【0017】
送信部22は、シーケンス制御部45による制御に応じて、ラーモア周波数に対応する高周波電流を送信コイル13に供給する。具体的には、送信部22は、発振部や位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波増幅器などを含む。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数のRFパルスを発生する。位相選択部は、発振部によって発生したRFパルスの位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波パルスの周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力された高周波パルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波増幅器は、振幅変調部から出力された高周波パルスを増幅して送信コイル13に供給する。
【0018】
受信部23は、シーケンス制御部45による制御に応じて、受信コイル14から出力される磁気共鳴信号をA/D(Analog-to-Digital)変換することによって生データを生成する。また、受信部23は、生成した生データを収集部46に送信する。具体的には、受信部23は、選択器や前段増幅器、位相検波器、A/D変換器などを含む。選択器は、受信コイル14から出力される磁気共鳴信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力される磁気共鳴信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力される磁気共鳴信号の位相を検波する。A/D変換器は、位相検波器から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して生データを生成する。
【0019】
寝台装置31は、被検体Sが撮像される際に被検体Sを支持する。具体的には、寝台装置31は、被検体Sが置かれる天板33と、天板33を長手方向、短手方向及び上下方向に移動するための移動機構を有する。通常、寝台装置31は、天板33の長手方向が静磁場磁石11の中心軸と平行になるように設置される。
【0020】
寝台制御部32は、計算機システム40による制御に応じて、寝台装置31を制御する。具体的には、寝台制御部32は、寝台装置31の移動機構を駆動して、天板33を長手方向、短手方向及び上下方向に移動する。例えば、寝台制御部32は、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが置かれた天板33を架台15の内部に形成された撮像空間に移動させる。
【0021】
計算機システム40は、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、計算機システム40は、記憶部41と、操作部42と、表示部43と、制御部44と、シーケンス制御部45と、収集部46と、画像再構成部47とを有する。
【0022】
記憶部41は、収集部46によって収集された生データや、画像再構成部47によって生成されたスペクトラムデータ又は画像データなどを被検体Sごとに記憶する。
【0023】
操作部42は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。この操作部42としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0024】
表示部43は、制御部44による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部43としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0025】
制御部44は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、これらCPU及びメモリによって各種プログラムを実行することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、制御部44は、操作部42を介して操作者から撮像条件の入力を受け付け、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成する。また、例えば、制御部44は、操作部42を介して操作者から画像の表示要求を受け付け、要求された画像データを記憶部41から読み出して表示部43に表示させる。
【0026】
シーケンス制御部45は、制御部44によって生成されるシーケンス実行データに基づいて、当該シーケンス実行データによって定義されるパルスシーケンスが実行されるように、傾斜磁場電源21、送信部22及び受信部23を制御する。
【0027】
ここで、シーケンス実行データとは、被検体Sに関する生データを収集するためのパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源21が傾斜磁場コイル12に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部22が送信コイル13に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部23が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、データ収集を行うための手順を定義した情報である。
【0028】
収集部46は、シーケンス制御部45によってパルスシーケンスが実行された結果として、受信部23から送信される生データを収集する。また、収集部46は、収集した生データを被検体Sごとに記憶部41に格納する。
【0029】
画像再構成部47は、記憶部41によって記憶された生データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、被検体Sの体内における所望の核スピンのスペクトラムデータ又は画像データを生成する。また、画像再構成部47は、生成したスペクトラムデータ又は画像データを被検体Sごとに記憶部41に格納する。
【0030】
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。このような構成のもと、MRI装置100は、ASLによって被検体S内を流れる流体を撮像する機能を有する。
【0031】
ASLでは、一般的に、被検体の撮像領域に流入する流体を標識化するためのラベリングパルスを印加してから所定の待ち時間(以下、TIと表す)が経過した後にデータを収集するラベリングモードのデータ収集と、当該流体に影響を与えない位置にラベリングパルスと同様のコントロールパルスを印加してから同じTIが経過した後にデータを収集するコントロールモードのデータ収集とが実行される。ここで、ラベリングパルスとは、縦磁化が負の値になるRFパルスである。例えば、ラベリングパルスは、フリップ角が90度より大きいRFパルスであり、より具体的な例としては、フリップ角が180度の反転パルスである。そして、ラベリングモードで収集されたデータからラベリング画像が生成され、コントロールモードで収集されたデータからコントロール画像が生成され、これらの画像を差分することで、撮像対象の流体が描出された流体画像が生成される。
【0032】
ここで、従来、ラベリング画像とコントロール画像とを差分する差分方式としては、絶対値差分及び複素差分が知られている。絶対値差分は、ラベリングモードで収集されたデータ及びコントロールモードで収集されたデータそれぞれに対してフーリエ変換を行い、それにより生成された絶対値画像を差分する方法である。また、複素差分は、絶対値差分以外の差分方式であり、例えば、ラベリングモードで収集されたデータとコントロールモードで収集されたデータとを生データで差分し、それにより得られた差分データをフーリエ変換する方法である。これら2つの方法のどちらを採用するかは、MRI装置のベンダーによって異なっている。
【0033】
しかしながら、上述した絶対値差分及び複素差分には、それぞれ次のような課題がある。具体的には、ASLでは、ラベリングモードでデータ収集が行われる際には、流体の縦磁化が、ラベリングパルスが印加された時点で反転して負の値となり、その後、時間が経過するにつれて徐々に回復して正の値となる。このため、ラベリングモードでは、流体の信号値は、ラベリングパルスが印加されてから流体の縦磁化がゼロになるまでの間は負の値となり、その後は正の値となる。一方、コントロールモードでデータ収集が行われる際には、流体に影響を与えない位置にラベリングパルスと同様のコントロールパルスが印加されるため、流体の縦磁化が常に正の値となる。このため、コントロールモードでは、流体の信号値は常に正の値となる。すなわち、ASLでは、ラベリングパルスが印加されてから流体の縦磁化がゼロになるまでの間は、ラベリング画像とコントロール画像とで信号値の正負が反対となる。しかし、絶対値差分では、信号値が常に絶対値で差分されるため、ラベリングパルスが印加されてから流体の縦磁化がゼロになるまでの経過時間(以下、t(null point)と表す)よりTIが短い場合には、差分によって得られる信号値が適切な値にならないことがある。また、例えば、複素差分では、TIが長い場合に、体幹部などのように動きの影響を受けやすい部位で位相誤差によるアーチファクトが増加して、画質が劣化することがある。
【0034】
これに対し、本実施形態に係るMRI装置100は、TIがt(null point)より短いかt(null point)以上であるかに応じて、異なる差分方式で差分画像を生成する。具体的には、MRI装置100は、TIがt(null point)より短い場合は複素差分を用いて差分画像を生成し、TIがt(null point)以上である場合は絶対値差分を用いて差分画像を生成する。したがって、本実施形態に係るMRI装置100によれば、どのような待ち時間TIにおいても正確かつ良好な差分画像が得られるので、流体画像の画質や定量性を向上させることができる。以下では、上述したMRI装置100の構成例について、より詳細に説明する。
【0035】
図2は、第1の実施形態に係るMRI装置の詳細な構成例を示す図である。図2は、図1に示した計算機システム40を示しており、さらに、計算機システム40が有する機能部のうち、シーケンス制御部45と、収集部46と、画像再構成部47と、記憶部41と、操作部42と、表示部43と、制御部44とを示している。
【0036】
図2に示すように、記憶部41は、撮像条件記憶部41aと、生データ記憶部41bと、画像データ記憶部41cとを有する。また、制御部44は、撮像条件設定部44aと、表示制御部44bとを有する。また、シーケンス制御部45は、実行部45aを有する。また、画像再構成部47は、生成部47aを有する。
【0037】
記憶部41の撮像条件記憶部41aは、撮像法及び撮像対象の部位に応じたプロトコルごとに定義された撮像条件を記憶する。ここでいう撮像条件には、例えば、パルスシーケンスの種類や、当該パルスシーケンスを実行するために必要な各種の撮像パラメータが含まれる。例えば、ASLによる撮像を行うための撮像条件には、TIや、流体を標識化するためのラベリングパルスのフリップ角などの撮像パラメータが含まれる。
【0038】
記憶部41の生データ記憶部41bは、収集部46によって収集された生データを記憶する。画像データ記憶部41cは、画像再構成部47によって生成された画像データを記憶する。なお、収集部46によって収集された生データは、画像データとして画像データ記憶部41cに記憶されてもよい。
【0039】
制御部44の撮像条件設定部44aは、操作者からの指示に基づいて撮像条件を設定する。具体的には、撮像条件設定部44aは、操作部42を介して、操作者からプロトコルの選択を受け付ける。また、撮像条件設定部44aは、選択されたプロトコルに関する撮像条件を撮像条件記憶部41aから取得し、取得した撮像条件に含まれる撮像パラメータに関するパラメータ値の入力を操作者から受け付ける。そして、撮像条件設定部44aは、入力されたパラメータ値に基づいて、選択されたプロトコルで撮像対象の部位を撮像するためのシーケンス実行データを生成する。
【0040】
例えば、ASLによる撮像が行われる場合には、撮像条件設定部44aは、TIや、流体を標識化するためのラベリングパルスのフリップ角などの入力を受け付ける。また、撮像条件設定部44aは、操作者によって選択されたプロトコルに基づいて撮像対象の流体を特定し、さらに、撮像対象の流体のT1値を特定する。例えば、撮像対象の流体のT1値は、あらかじめ流体の種類ごとに記憶部41に記憶される。そして、撮像条件設定部44aは、特定したT1値に基づいてt(null point)を算出する。
【0041】
例えば、平衡状態での縦磁化をM0、ラベリングパルスが印加される直前の流体の縦磁化をMとした場合に、t=0でフリップ角がαのラベリングパルスが印加されたとすると、t=TIにおけるMzは、以下の式(1)で表される。
【0042】
Mz=M0+(M*(1−(1−cosα))−M0)*exp[−TI/T1]
・・・(1)
【0043】
この式(1)から、ラベリングパルスが印加されてからMz=0となるまでの経過時間であるt(null point)は、以下の式(2)で得られる。
【0044】
t(null point)=T1*ln((M*(1−(1−cosα))−M0)/M0)
・・・(2)
【0045】
例えば、撮像条件設定部44aは、上記式(2)によってt(null point)を算出する。例えば、撮像対象が血液の場合には、例えば、T1=1700ms、M=M0、α=180度とすると、t(null point)は約1178msとなる。
【0046】
なお、ここでは、撮像条件設定部44aが、操作者によって選択されたプロトコルに基づいて撮像対象の流体を特定する場合の例を説明するが、撮像対象の流体を特定する方法はこれに限られない。例えば、撮像条件設定部44aは、操作者から撮像対象の流体を選択するためのGUI(graphical user interface)を表示部43に表示させ、当該GUIを介して選択された流体を撮像対象として特定してもよい。
【0047】
また、ここでは、撮像条件設定部44aが、撮像対象の流体のT1値に基づいてt(null point)を算出する場合の例を説明したが、t(null point)を算出する方法はこれに限られない。例えば、撮像条件設定部44aは、プリスキャンによって得られたデータに基づいてt(null point)を算出してもよい。この場合には、例えば、プリスキャンとして、流体を標識化するためのラベリングパルスを印加してからTIが経過した後にデータを収集するデータ収集が、TIを変えながら複数回行われる。そして、例えば、撮像条件設定部44aは、複数のTIそれぞれで収集されたデータにおける位相補正後のリアル成分の信号強度の正負を判別することで、t(null point)を算出する。
【0048】
そして、撮像条件設定部44aは、t(null point)を算出した後に、算出したt(null point)と操作者によって入力されたTIとを比較して、差分方式のモードを設定する。具体的には、撮像条件設定部44aは、TIがt(null point)より短いかt(null point)以上であるかに応じて、異なる差分方式のモードを設定する。
【0049】
図3は、第1の実施形態に係る撮像条件設定部によって設定される差分方式のモードを説明するための図である。図3は、ASLによって流体が撮像される場合の流体の縦磁化の変化を示しており、横軸は、ラベリングパルスが印加されてからの経過時間tを示しており、縦軸は、流体の縦磁化Mzを示している。例えば、図3に示すように、撮像条件設定部44aは、TIがt(null point)より短い場合は、差分方式のモードを複素差分モードに設定し、TIがt(null point)以上である場合は、差分方式のモードを絶対値差分モードに設定する。ここで、複素差分モードは、複素差分により差分画像を生成するモードであり、絶対値差分モードは、絶対値差分により差分画像を生成するモードである。
【0050】
図2に戻って、制御部44の表示制御部44bは、生成部47aによって生成される流体画像を表示部43に表示させる。具体的には、表示制御部44bは、生成部47aによって流体画像が生成されると、生成された流体画像を画像データ記憶部41cから読み出して表示部43に表示させる。
【0051】
シーケンス制御部45の実行部45aは、撮像条件設定部44aによって生成されたシーケンス実行データに従って傾斜磁場電源21、送信部22及び受信部23を制御することで、当該シーケンス実行データによって定義されるパルスシーケンスを実行する。
【0052】
例えば、ASLによる撮像が行われる場合には、実行部45aは、撮像条件設定部44aによって生成されたASLのシーケンス実行データに基づいて、ラベリングモードのデータ収集とコントロールモードのデータ収集とを実行する。ここで、ラベリングモードは、被検体Sの撮像領域に流入する流体を標識化するためのラベリングパルスを印加してからTIが経過した後にデータを収集するモードである。また、コントロールモードは、被検体Sの撮像領域に流入する流体に影響を与えない位置に、ラベリングパルスによって生じたMT効果を相殺するように、ラベリングパルスと同様のコントロールパルスを印加してから同じTIが経過した後にデータを収集するモードである。なお、MT効果は相殺されなくとも、各モードで得られた画像を差分することは可能である。そのため、コントロールモードでは、コントロールパルスを印加せずにデータを収集してもよい。
【0053】
図4は、第1の実施形態に係るASLのラベリングモードで実行されるパルスシーケンスの一例を示す図である。例えば、図4に示すように、ラベリングモードで実行されるパルスシーケンスでは、ラベリングパルス101を印加してからTIが経過した後に、読み出しシーケンス102が実行される。なお、ラベリングパルス101が印加される前に、サチュレーションパルスなどの各種のプリパルスが印加される場合もある。
【0054】
ここで、読み出しシーケンス102は、励起用のRFパルスを印加してから磁気共鳴信号を取得するまでのデータ収集用のシーケンスである。例えば、読み出しシーケンスは、GRE(Gradient Echo)系のシーケンス、SE(Spin Echo)系のシーケンス、SSFP(Steady State Free Precession)系のシーケンスなどである。
【0055】
図5は、第1の実施形態に係るASLのコントロールモードで実行されるパルスシーケンスの一例を示す図である。例えば、図5に示すように、コントロールモードで実行されるパルスシーケンスでは、コントロールパルス111を印加してから、ラベリングモードにおけるTIと同じ長さのTIが経過した後に、読み出しシーケンス112が実行される。なお、ラベリングモードでサチュレーションパルスなどの各種のプリパルスが印加される場合には、コントロールモードでも同じプリパルスが印加される。また、コントロールモードにおける読み出しシーケンス112は、ラベリングモードにおける読み出しシーケンス102と同じものである。
【0056】
図6は、第1の実施形態に係るASLのコントロールモードで実行されるパルスシーケンスの他の例を示す図である。例えば、図6に示すように、コントロールモードでは、コントロールパルスを印加せずに、所定のタイミングからラベリングモードにおけるTIと同じ長さのTIが経過した後に、読み出しシーケンスが実行されてもよい。ここで、読み出しシーケンスが実行されるタイミングは、所定のタイミングとTIとから定められるのではなく、任意の時点でもよい。例えば、ラベリングモードでサチュレーションパルスなどの各種のプリパルスが印加される場合には、同じプリパルスが印加されてから、ラベリングモードにおいてプリパルスが印加されてから読み出しシーケンスが開始されるまでの時間と同じ時間が経過した後に、読み出しシーケンス112が実行される。
【0057】
なお、複数の差分画像を得るために、ラベリングモード及びコントロールモードが複数回実行される場合には、例えば、各モードは、被検体Sに取り付けられた心電計から出力されるECG(Electrocardiogram)信号や、被検体Sに取り付けられた脈波計から出力される脈波信号、制御部44が有するCPUが発生するクロック数に基づいて周期的に生成される制御信号に同期させて実行される。また、1つの画像を生成するために必要な生データが複数回に分けて収集される場合には、ラベリングモードとコントロールモードとが交互に実行されてもよい。
【0058】
画像再構成部47の生成部47aは、ラベリングモードのデータ収集によって収集されたデータとコントロールモードのデータ収集によって収集されたデータとを用いて差分画像を生成することで、撮像対象の流体が描出された流体画像を生成する。ここで、生成部47aは、TIが経過時間t(null point)より短いか経過時間t(null point)以上であるかに応じて、異なる差分方式で差分画像を生成する。
【0059】
具体的には、生成部47aは、撮像条件設定部44aによって複素差分モードが設定されていた場合、すなわちTIがt(null point)より短い場合は、ラベリングモードで収集された生データとコントロールモードで収集された生データとを差分して差分データを生成し、生成した差分データをフーリエ変換することで差分画像を生成する。また、生成部47aは、撮像条件設定部44aによって絶対値差分モードが設定されていた場合、すなわちTIがt(null point)以上である場合は、ラベリングモードで収集された生データをフーリエ変換して第1の絶対値画像を生成し、コントロールモードで収集された生データをフーリエ変換して第2の絶対値画像を生成し、それぞれの絶対値画像を差分することで差分画像を生成する。そして、生成部47aは、生成した差分画像を流体画像として画像データ記憶部41cに格納する。
【0060】
図7は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる流体撮像の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、操作者からASLの撮像を開始する指示を受け付けた場合に(ステップS101,Yes)、以下に示す処理を実行する。
【0061】
まず、撮像条件設定部44aが、撮像対象の流体を特定し(ステップS102)、さらに、TIを取得する(ステップS103)。その後、撮像条件設定部44aは、撮像対象の流体のT1値に基づいてt(null point)を算出し(ステップS104)、TIがt(null point)より短いかt(null point)以上であるかを判定する(ステップS105)。
【0062】
そして、TIがt(null point)より短い場合には(ステップS105,Yes)、撮像条件設定部44aは、差分方式のモードを複素差分モードに設定する(ステップS106)。一方、TIがt(null point)以上である場合には(ステップS105,No)、撮像条件設定部44aは、差分方式のモードを絶対値差分モードに設定する(ステップS107)。
【0063】
続いて、実行部45aが、ラベリングモードのデータ収集を実行し(ステップS108)、その後、コントロールモードのデータ収集を実行する(ステップS109)。なお、実行部45aは、コントロールモードのデータ収集を実行した後にラベリングモードのデータ収集を実行してもよい。
【0064】
続いて、生成部47aが、差分方式のモードとして複素差分モードが設定されていた場合には(ステップS110,Yes)、ラベリングモードで収集された生データとコントロールモードで収集された生データとを差分して差分データを生成する(ステップS111)。その後、生成部47aは、生成した差分データをフーリエ変換することで差分画像を生成する(ステップS112)。
【0065】
一方、生成部47aは、差分方式のモードとして絶対値差分モードが設定されていた場合には(ステップS110,No)、ラベリングモードで収集された生データをフーリエ変換して第1の絶対値画像を生成する(ステップS113)。また、生成部47aは、コントロールモードで収集された生データをフーリエ変換して第2の絶対値画像を生成する(ステップS114)。その後、生成部47aは、第1の絶対値画像と第2の絶対値画像とを差分することで差分画像を生成する(ステップS115)。
【0066】
その後、表示制御部44bが、生成部47aによって生成された差分画像を流体画像として表示部43に表示させる(ステップS116)。
【0067】
このように、本実施形態では、TIがt(null point)より短い場合には、生成部47aによって、ラベリングモードで収集された生データとコントロールモードで収集された生データとから差分データが生成され、生成された差分データから差分画像が生成される。すなわち、この場合には、複素差分により差分画像が生成される。また、TIがt(null point)以上である場合には、生成部47aによって、ラベリングモードで収集された生データから第1の絶対値画像が生成され、コントロールモードで収集された生データから第2の絶対値画像が生成され、それぞれの絶対値画像から差分画像が生成される。すなわち、この場合には、絶対値差分により差分画像が生成される。
【0068】
図8及び9は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる流体撮像の一例を示す図である。なお、ここでは、撮像対象が血液である場合の例を説明するが、撮像対象の流体は血液に限られない。例えば、本実施形態は、脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)や胆汁、リンパ液が撮像対象である場合でも同様に適用可能である。
【0069】
図8に示すように、例えば、撮像対象の流体が血液であった場合には、撮像条件設定部44aは、t(null point)=1178msを算出する。ここで、例えば、TI=800msであった場合には、撮像条件設定部44aは、TI<t(null point)であるので、差分方式のモードとして複素差分モードを設定する。
【0070】
そして、実行部45aが、ラベリングモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ51(A,Bを実数とした場合に、複素数A+iBで表される複素データ)を収集する。続いて、実行部45aは、コントロールモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ52(C,Dを実数とした場合に、複素数C+iDで表される複素データ)を収集する。そして、生成部47aが、生データ51と生データ52とを差分(複素差分A−C+i(B−D))して差分データ53を生成し、さらに、差分データ53をフーリエ変換して絶対値画像54(実データS)とすることで、血流画像となる差分画像を生成する。
【0071】
一方、例えば、図9に示すように、TI=2400msであった場合には、撮像条件設定部44aは、TI≧t(null point)であるので、差分方式のモードとして絶対値差分モードを設定する。
【0072】
そして、実行部45aが、ラベリングモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ61(複素データA+iB)を収集し、生成部47aが、生データ61をフーリエ変換して絶対値画像63(実データS1)を生成する。続いて、実行部45aは、コントロールモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ62(複素データC+iD)を収集し、生成部47aが、生データ62をフーリエ変換して絶対値画像64(実データS2)を生成する。そして、生成部47aが、絶対値画像63と絶対値画像64とを差分(絶対値差分S2−S1)することで、血流画像となる差分画像65を生成する。
【0073】
なお、差分前には、静止部(背景)の組織には、最終的に必要な流体以外の成分(例えば、脂肪や実質臓器など)、すなわち、T1値が異なる複数の成分が存在する。しかし、ラベリングモードで収集された生データから生成された画像とコントロールモードで収集された生データから生成された画像とでは、静止部の信号値はほぼ同一の大きさなので、これらの画像を差分することによって静止部が消え、流体成分のみが残ることになる。このため、単一のT1に基づくt(null point)のみを想定すればよいのである。
【0074】
上述したように、第1の実施形態に係るMRI装置100によれば、TIがt(null point)より短い場合は、生データを差分した差分データをフーリエ変換することで差分画像が生成され、TIがt(null point)以上である場合は、生データをフーリエ変換した絶対値画像を差分することで差分画像が生成される。すなわち、第1の実施形態では、TIがt(null point)より短い場合は複素差分で差分画像が生成され、TIがt(null point)以上である場合は絶対値差分で差分画像が生成される。ここで、絶対値差分では、演算が簡単になるのに加え、位相補正を行わなくても動きなどによる位相差に起因する背景組織の差分誤差が低減する。また、複素差分では、磁化が反転状態でも差分が正しく算出される。このため、どのような待ち時間TIにおいても、正確かつ良好な流体画像が得られる。したがって、本実施形態に係るMRI装置100によれば、流体画像の画質や定量性を向上させることができる。
【0075】
なお、上述した第1の実施形態では、TIがt(null point)より短い場合に、生データを差分した差分データをフーリエ変換することで差分画像を生成する場合の例を説明したが、TIがt(null point)より短い場合の複素差分による差分方式はこれに限られない。以下では、TIがt(null point)より短い場合の差分方式に関する2つの変形例を説明する。なお、TIがt(null point)以上である場合の絶対値差分による差分方式については第1の実施形態で説明したものと同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0076】
(第1の実施形態の第1の変形例)
まず、第1の変形例として、生データをフーリエ変換して複素画像を生成した後に、生成した複素画像を差分することで差分画像を生成する場合の例を説明する。
【0077】
具体的には、生成部47aは、撮像条件設定部44aによって複素差分モードが設定されていた場合、すなわちTIがt(null point)より短い場合に、ラベリングモードで収集された生データをフーリエ変換して第1の複素画像を生成し、コントロールモードで収集された生データをフーリエ変換して第2の複素画像を生成する。そして、生成部47aは、生成した第1の複素画像と第2の複素画像とを差分することで、血流画像となる差分画像を生成する。
【0078】
図10は、第1の実施形態の第1の変形例に係る流体撮像の一例を示す図である。図10に示すように、例えば、撮像対象の流体が血液であった場合には、撮像条件設定部44aは、t(null point)=1178msを算出する。ここで、例えば、TI=800msであった場合には、撮像条件設定部44aは、TI<t(null point)であるので、差分方式のモードとして複素差分モードを設定する。
【0079】
そして、実行部45aが、ラベリングモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ71(複素データA+iB)を収集する。その後、生成部47aが、生データ71をフーリエ変換して、リアル(real)成分の画像であるリアル画像(R1)と、イマジナリ(imaginary)成分の画像であるイマジナリ画像(I1)とを生成し、さらに、リアル画像及びイマジナリ画像から複素画像73(R1+iI1)を生成する。
【0080】
続いて、実行部45aは、コントロールモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ72(複素データC+iD)を収集する。その後、生成部47aが、生データ72をフーリエ変換して、リアル(real)成分の画像であるリアル画像(R2)と、イマジナリ(imaginary)成分の画像であるイマジナリ画像(I2)とを生成し、さらに、リアル画像及びイマジナリ画像から複素画像74(R2+iI2)を生成する。
【0081】
そして、生成部47aが、複素画像73と複素画像74とを差分(R1−R2+i(I1−I2))して差分データを生成し、その絶対値画像75(実データS)を生成することで、血流画像となる差分画像を生成する。なお、このとき、必ずしも差分画像は絶対値画像でなくてもよい。例えば、位相エラーが無い又は補正されていれば、差分によって符号が維持された画像が得られるので、撮像領域の両側に流体の流れがあり、両側にラベリングパルスが印加されていれば、流体の流れの方向が分かる。
【0082】
(第1の実施形態の第2の変形例)
次に、第2の変形例として、生データをフーリエ変換してリアル画像を生成した後に、生成したリアル画像を差分することで差分画像を生成する場合の例を説明する。
【0083】
具体的には、生成部47aは、撮像条件設定部44aによって複素差分モードが設定されていた場合、すなわちTIがt(null point)より短い場合に、ラベリングモードで収集された生データをフーリエ変換して第1のリアル画像を生成し、コントロールモードで収集された生データをフーリエ変換して第2のリアル画像を生成する。
【0084】
なお、生成部47aは、ラベリングモードで収集された生データにおける位相成分をゼロとして換算して第1のリアル画像を生成し、コントロールモードで収集された生データにおける位相成分をゼロとして換算して第2のリアル画像を生成する。そして、生成部47aは、生成した第1のリアル画像と第2のリアル画像とを差分することで、血流画像となる差分画像を生成する。
【0085】
図11は、第1の実施形態の第2の変形例に係る流体撮像の一例を示す図である。図11に示すように、例えば、撮像対象の流体が血液であった場合には、撮像条件設定部44aは、t(null point)=1178msを算出する。ここで、例えば、TI=800msであった場合には、撮像条件設定部44aは、TI<t(null point)であるので、差分方式のモードとして複素差分モードを設定する。
【0086】
そして、実行部45aが、ラベリングモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ81(複素データA+iB)を収集する。その後、生成部47aが、生データ81をフーリエ変換して、リアル(real)成分の画像であるリアル画像83(R1)を生成する。続いて、実行部45aは、コントロールモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ82(複素データC+iD)を収集する。その後、生成部47aが、生データ82をフーリエ変換して、リアル(real)成分の画像であるリアル画像84(R2)を生成する。
【0087】
そして、生成部47aが、リアル画像83とリアル画像84とを差分(リアル差分R1−R2)することで、血流画像となる差分画像85を生成する。
【0088】
このように、位相補正後にリアル差分を行うことで、TIによる処理の切り分けを行わなくてもSNRが低い流体画像においてSNRが低い部分のノイズのバイアスが低減するので、全体的にSNRを向上させることができる。
【0089】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態では、TIがt(null point)より短い場合に、複素差分によって差分画像を生成し、TIがt(null point)以上である場合に、絶対値差分によって差分画像を生成する場合の例を説明した。これに対し、第2の実施形態では、TIがt(null point)より短い場合に、絶対値加算によって差分画像を生成し、TIがt(null point)以上である場合に、絶対値差分によって差分画像を生成する場合の例を説明する。
【0090】
なお、第2の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には図1及び2に示したものと同じであるが、撮像条件設定部44a及び生成部47aによって行われる処理が異なる。そこで、以下では、本実施形態に係る撮像条件設定部44a及び生成部47aによって行われる処理について説明する。
【0091】
図12は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われる流体撮像の流れを示すフローチャートである。図12に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、操作者からASLの撮像を開始する指示を受け付けた場合に(ステップS201,Yes)、以下に示す処理を実行する。
【0092】
まず、撮像条件設定部44aが、撮像対象の流体を特定し(ステップS202)、さらに、TIを取得する(ステップS203)。その後、撮像条件設定部44aは、撮像対象の流体のT1値に基づいてt(null point)を算出し(ステップS204)、TIがt(null point)より短いかt(null point)以上であるかを判定する(ステップS205)。
【0093】
そして、TIがt(null point)より短い場合には(ステップS205,Yes)、撮像条件設定部44aは、差分方式のモードを絶対値加算モードに設定する(ステップS206)。ここで、絶対値加算モードは、絶対値を加算することで差分画像を生成するモードである。一方、TIがt(null point)以上である場合には(ステップS205,No)、撮像条件設定部44aは、差分方式のモードを絶対値差分モードに設定する(ステップS207)。ここで、絶対値差分モードは、絶対値を差分することで差分画像を生成するモードである。
【0094】
続いて、実行部45aが、ラベリングモードのデータ収集を実行し(ステップS208)、その後、コントロールモードのデータ収集を実行する(ステップS209)。なお、実行部45aは、コントロールモードのデータ収集を実行した後にラベリングモードのデータ収集を実行してもよい。
【0095】
続いて、生成部47aが、ラベリングモードで収集された生データをフーリエ変換して第1の絶対値画像を生成し(ステップS210)、コントロールモードで収集された生データをフーリエ変換して第2の絶対値画像を生成する(ステップS211)。
【0096】
そして、生成部47aは、差分方式のモードとして絶対値加算モードが設定されていた場合には(ステップS212,Yes)、第1の絶対値画像と第2の絶対値画像とを加算することで差分画像を生成する(ステップS213)。一方、生成部47aは、差分方式のモードとして絶対値差分モードが設定されていた場合には(ステップS212,No)、第1の絶対値画像と第2の絶対値画像とを差分することで差分画像を生成する(ステップS214)。
【0097】
その後、表示制御部44bが、生成部47aによって生成された差分画像を流体画像として表示部43に表示させる(ステップS215)。
【0098】
このように、本実施形態では、生成部47aによって、ラベリングモードで収集された生データから第1の絶対値画像が生成され、コントロールモードで収集された生データから第2の絶対値画像が生成される。そして、TIがt(null point)より短い場合には、生成部47aによって、第1の絶対値画像と第2の絶対値画像とから絶対値加算によって差分画像が生成され、TIがt(null point)以上である場合には、第1の絶対値画像と第2の絶対値画像とから絶対値差分によって差分画像が生成される。
【0099】
図13は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われる流体撮像の一例を示す図である。なお、TIがt(null point)以上である場合の絶対値差分による差分方式については、図9に示した絶対値差分による差分方式と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0100】
図13に示すように、例えば、撮像対象の流体が血液であった場合には、撮像条件設定部44aは、t(null point)=1178msを算出する。ここで、例えば、TI=800msであった場合には、撮像条件設定部44aは、TI<t(null point)であるので、差分方式のモードとして絶対値加算モードを設定する。
【0101】
そして、実行部45aが、ラベリングモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ91(複素データA+iB)を収集し、生成部47aが、生データ91をフーリエ変換して絶対値画像93(実データS1)を生成する。続いて、実行部45aは、コントロールモードのデータ収集を実行し、これにより、収集部46が生データ92(複素データC+iD)を収集し、生成部47aが、生データ92をフーリエ変換して絶対値画像94(実データS2)を生成する。
【0102】
そして、生成部47aが、ラベリングモードで収集された生データ91から生成された絶対値画像93における信号値の符号を反転して、コントロールモードで収集された生データ92から生成された絶対値画像94から差分(絶対値差分S2−(−S1))することで、血流画像となる差分画像を生成する。すなわち、生成部47aは、絶対値画像93と絶対値画像94とを加算(絶対値加算S2+S1)することで、血流画像となる差分画像95を生成する。
【0103】
なお、従来の方法では、TI<t(null point)となる範囲では、ラベリング画像とコントロール画像とで信号値の符号の正負が反対になるため、絶対値差分では適切な差分画像が得られない場合があった。これに対し、本実施形態では、TI<t(null point)である場合に、ラベリングモードで収集された生データから生成された絶対値画像について信号値の符号が反転された後に絶対値差分が行われるので、適切な差分画像が得られる。
【0104】
また、第2の実施形態において、ラベリングモードで収集された生データから生成される第1の絶対値画像、及び、コントロールモードで収集された生データから生成される第2の絶対値画像は、背景信号が無い、又は、流体成分と比較して背景信号が小さいものであることが望ましい。例えば、第2の実施形態は、肺野を撮像する場合に適用される。
【0105】
また、流体成分と比較して背景信号を小さくする方法として、撮像領域に対して反転パルスを複数回印加することで、背景となる組織の信号を抑制する方法がある。この方法は、組織ごとに縦緩和時間T1が異なることを利用して、背景となる組織の縦磁化を反転パルスによって複数回反転させることで、流体の縦磁化の絶対値が十分に大きく、かつ、信号を抑制すべき組織の縦磁化の絶対値がゼロ付近とみなせる範囲内となったタイミングで、データ収集を行うものである。なお、流体の縦磁化は、ラベリングモード及びコントロールモードのそれぞれで反転するが、その差分の絶対値は、反転パルスが完全に180度であれば、その影響を受けず、TIに応じた緩和による減衰のみになる。第2の実施形態では、このような方法を併用することで、より適切な流体画像を得ることができる。
【0106】
また、絶対値画像における背景部分と流体部分とをマスク処理によって切り分け、背景部分と流体部分とで適宜に絶対値差分又は絶対値加算を行うようにしてもよい。
【0107】
この場合には、生成部47aが、第1の絶対値画像及び第2の絶対値画像それぞれについて、マスク処理によって背景部分と流体部分とを区分けする。例えば、生成部47aは、流体部分が顕著に描出された画像に基づいて、流体部分の信号値のみを識別するための閾値を設定し、閾値処理によって背景部分と流体部分とを区分けする。
【0108】
そして、生成部47aは、背景部分については、TIによらずに絶対値を差分し、流体部分については、TIがt(null point)より短い場合は絶対値を加算し、TIがt(null point)以上である場合は絶対値を差分することで、差分画像を生成する。これにより、流体成分と比較して背景信号が大きいか小さいかにかかわらず、背景信号が精度良く消された流体画像を得ることができる。
【0109】
または、生成部47aは、t(null point)より短いTIで撮像された画像を用いて、信号値の符号が負となっている部分を血液部分として設定し、信号値の符号が正となっている部分を背景部分として設定することで、マスク処理を行ってもよい。
【0110】
なお、上述した各実施形態では、1つのTIでデータを収集する場合の例を説明したが、各実施形態は、複数のTIでデータを収集する場合も同様に適用可能である。例えば、各実施形態は、標識化用のラベリングパルスを印加してからTIが経過した後にデータを収集するパターンをTIを変えながら複数回実行するMT−MI(multi-tag/multi-TI)法で流体を撮像する場合や、標識化用のラベリングパルスを印加してから複数のTIごとにデータ収集を行うST−MI(single-tag/multi-TI)法で流体を撮像する場合でも、同様に適用可能である。いずれの方法でも、生成部47aが、TIごとに差分画像を生成する際に、TIがt(null point)より短いかt(null point)以上であるかに応じて差分方式を切り替えることで、流体画像となる差分画像の画質や定量性を向上させることができる。
【0111】
なお、上述した各実施形態では、TIがt(null point)より短いかt(null point)以上であるかに応じて差分方式を切り替える場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。前述したように、ASLでは、TIがt(null point)より短い場合は、絶対差分では信号値が適切な値にならないことがあるため、複素差分を用いて差分画像を生成するのが望ましい。一方、TIがt(null point)以上である場合は、複素差分では動きの影響を受けやすい部位を撮像するときに画質が劣化することがあるため、絶対差分を用いて差分画像を生成するのが望ましい。しかし、例えば、動きの影響が少ない部位を撮像する場合のように、画質の劣化がさほど問題にならないときには、TIがt(null point)以上である場合でも、複素差分を用いることができる。
【0112】
したがって、例えば、差分方式を切り替えるタイミングは、t(null point)より後の時点であってもよい。その場合には、例えば、撮像条件設定部44aが、撮像対象の流体のT1値に基づいてt(null point)を算出した後に、t(null point)に所定の時間を加算した時間t(α)を算出する。そして、撮像条件設定部44aは、TIがt(α)より短いかt(α)以上であるかに応じて、差分方式のモードを切り替える。例えば、撮像条件設定部44aは、TIがt(α)より短い場合には、差分方式のモードを複素差分モードに設定し、TIがt(α)以上である場合には、差分方式のモードを絶対値差分モードに設定する。なお、ここでいう所定の時間には、例えば、あらかじめ決められて記憶部41に記憶された時間が用いられてもよいし、操作者から入力された時間が用いられてもよい。
【0113】
また、上述した各実施形態では、被検体内を流れる流体を撮像する撮像法として、ASLを用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、流体を撮像する撮像法として、他の撮像法が用いられてもよい。例えば、Time−SLIP(Spatial Labeling Inversion Pulse)と呼ばれる撮像法が用いられてもよい。
【0114】
Time―SLIPは、撮像領域とは独立に設定される標識化領域で、組織の縦磁化成分を反転させる反転パルスを流体に印加し、所定時間が経過した後に関心領域のデータを収集することで、関心領域内に流入した流体を選択的に描出する撮像法である。ここでいう所定時間は、例えば、BBTI(Black Blood Time to Inversion)と呼ばれる。
【0115】
このようなTime−SLIPによる撮像でも、反転パルスを印加して収集されたデータと、反転パルスを印加せずに収集されたデータとを用いて、差分画像が生成される場合がある。この場合に、上述した各実施形態で説明した処理を行うことで、待ち時間すなわちBBTIと流体の縦緩和時間との関係に応じて、異なる差分方式で差分画像を生成することが可能である。
【0116】
また、上述した各実施形態では、画像再構成部47の生成部47aが、ラベリングモード及びコントロールモードそれぞれで収集されたデータを用いて差分画像を生成することで、流体画像を生成する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、生成部47aによって最終的に生成される画像は、流体画像を解析することによって得られた結果を反映した計算画像であってもよい。
【0117】
上述した少なくとも1つの実施形態に係るMRI装置によれば、流体画像の画質や定量性を向上させることができる。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0119】
100 MRI装置
40 計算機システム
45 シーケンス制御部
45a 実行部
47 画像再構成部
47a 生成部
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