特許第6362965号(P6362965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362965
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】外装部材構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   E04F11/18
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-169098(P2014-169098)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-44457(P2016-44457A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 優
(72)【発明者】
【氏名】冨高 隆
【審査官】 坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−152705(JP,A)
【文献】 特開2009−041320(JP,A)
【文献】 実開昭56−039547(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0109025(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04F 10/08−10/10
E04H 17/00−17/26
E04H 9/14
E06B 11/00−11/08
E06B 9/01
E04B 1/00
E04G 23/00−23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外気に曝される外装部材の構造であって、
前記建物のバルコニーのスラブの周縁に沿って所定間隔おきに設けられた複数の支柱と、
当該複数の支柱同士の間に所定間隔おきに設けられた複数の手摺子と、
前記各支柱から前記建物の外側に向かって延びる複数の延出部と、
前記各支柱に設けられて前記延出部の当該支柱からの突出寸法を調整する調整機構と、を備えることを特徴とする外装部材構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニーに設けられる手摺や目隠しルーバーなどの外装部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ベランダやバルコニーの外周縁に設けられる手摺には、水平方向に並んで配置される複数本の手摺子を備えるものがある。このような構造の手摺では、強風が吹くと風騒音(風切音、風鳴音とも呼ぶ)が発生する。
そこで、このような風騒音を防止するため、手摺子の断面形状や配置を変化させた手摺構造が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−41320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上の提案では、断面形状の異なる手摺子の製造や、手摺子の配置の変化が要求されるため、手摺の生産や取付けに手間がかかる、という問題があった。
また、風騒音の問題は、手摺の施工後に顕在化することが多いため、後施工により風騒音を低減する必要が生じることが多い。
【0005】
本発明は、容易に製造できかつ後施工可能な、風騒音を低減できる外装部材構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の建物の外気に曝される外装部材の構造(例えば、後述の手摺構造10、10A、ルーバー構造30)であって、互いに略平行にかつ並んで配置される複数の棒状部材(例えば、後述の支柱11、手摺子14、ルーバー31)と、当該複数の棒状部材の配置間隔よりも大きい間隔で前記複数の棒状部材から外側に向かって延びる複数の板状部材(例えば、後述の延出部20、40)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、外装部材としては、風騒音の音源となる外装部材としては、バルコニーの縦格子手摺、日除けルーバー、目隠しルーバー、その他これらに類する形状の化粧部材などが挙げられる。
これら並んで配置される複数の棒状部材では、棒状部材が構成する面に沿ってかつ棒状部材に対し直角方向に強風が流れた場合に、住環境上障害となり得る風騒音が発生する可能性が高い。
【0008】
この発明によれば、上記に該当する気流が作用しても、強風が棒状部材群上を沿うように流れるのを防止できるので、延出部同士の間では弱風となる。つまり、強風領域が延出部の外側に移動し、棒状部材群近傍は弱風領域となる。よって、従来構造において発生が懸念される風騒音を低減できる。
また、既存の棒状部材群については、配置その他の仕様を変更することなく、延出部を取り付けるだけでよいので、延出部の製造が容易であり、また、軽微な工事で後施工が可能である。
なお、ここで対象としている風騒音は、比較的断面規模の小さい部材群における微細な流体現象および共鳴機構によるものであるため、付設される延出部自体が新たな風騒音を発生させる可能性は低い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強風が棒状部材群上を沿うように流れるのを防止できるので、延出部同士の間では弱風となるから、風騒音を低減できる。また、既存の棒状部材群については、配置その他の仕様を変更することなく、延出部を取り付けるだけでよいので、延出部の製造が容易であり、また、軽微な工事で後施工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1参考例に係る外装部材構造の斜視図である。
図2】建物外装部に沿って強風が流れる具体例である。
図3】本発明の実施例および比較例のバルコニー近傍の流れ場を可視化した図である。
図4】本発明の第2参考例に係る外装部材構造の斜視図である。
図5】本発明の第実施形態に係る外装部材構造の斜視図である。
図6】前記実施形態に係る外装部材構造の調整機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の参考例および実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の参考例および実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1参考例
図1は、本発明の第1参考例に係る外装部材構造としての手摺構造10の斜視図である。
建物1の壁面2には、バルコニー3が設けられており、このバルコニー3は、スラブ4と、このスラブ4の外周縁に沿って設けられた手摺構造10と、を備える。
【0012】
この手摺構造10は、スラブ4の周縁に沿って所定間隔で設けられた棒状部材としての支柱11と、この支柱11の下部同士を連結する下弦材12と、支柱11の上端部同士を連結する笠木13と、支柱11同士の間に所定間隔おきに設けられて下弦材12から笠木13まで略鉛直方向に延びる棒状部材としての手摺子14と、を備える。つまり、これら支柱11および手摺子14は、互いに略平行にかつ並んで配置されている。
【0013】
各支柱11には、建物の外側に向かって延びる延出部20が設けられている。これにより、延出部20は、これら手摺子14の配置間隔よりも大きい間隔で配置される。
【0014】
各延出部20の下端は、手摺子14の下端に略等しい高さであり、各延出部20の上端は、手摺子14の上端に略等しい高さとなっている。
【0015】
次に、本発明の実施例および比較例について説明する。
これら実施例および比較例について、図2に示すようなモデルを用いて、気流解析を行った。具体的には、建物1を平面視で正方形角柱状とし、この建物1に対して図2に示すように風騒音が発生しやすい風向とした。
【0016】
図3は、バルコニー近傍の流れ場を可視化した図である。
図3に示すように、延出部を設けない場合には、手摺子の配列方向に沿って風が流れることが判る。一方、延出部20を設けた場合には、強風域が延出部外側に移動し、手摺子の周囲は弱風域となることが判る。
【0017】
参考例によれば、以下のような効果がある。
(1)手摺子14の配列方向に沿って強風が吹いても、延出部20同士の間では弱風となる。つまり、強風領域が延出部20の外側に移動し、手摺子14の近傍は弱風領域となる。よって、風騒音を低減できる。
また、手摺子14の配置を変更することなく、延出部20を支柱11に取り付けるだけでよいので、延出部20の製造が容易であり、また、軽微な工事で後施工が可能である。
【0018】
〔第2参考例
図4は、本発明の第2参考例に係る外装部材構造としてのルーバー構造30の斜視図である。
【0019】
建物1の壁面2に沿ってルーバー構造30が設けられている。
このルーバー構造30は、上下方向に並んで配置されて略水平方向に延びる複数の棒状部材としてのルーバー31と、上下方向に並んで所定間隔おきに配置される延出部40と、を備える。つまり、ルーバー31は、互いに略平行にかつ並んで配置されている。
【0020】
これにより、延出部40は、これらルーバー31の配置間隔よりも大きい間隔で配置されることになる。
また、各延出部40の両端は、ルーバー31の両端に略等しい位置まで延びている。
【0021】
参考例によれば、建物壁面の上昇気流もしくは下降気流に対して、上述の(1)と同様の効果がある。
【0022】
〔第実施形態〕
図5は、本発明の第実施形態に係る外装部材構造としての手摺構造10Aの斜視図である。
本実施形態では、調整機構50を設けた点が、第1参考例と異なる。
すなわち、各支柱11の上端側および下端側には、延出部20の支柱11からの突出寸法を調整する調整機構50が設けられている。
【0023】
図6は、調整機構50の斜視図である。
調整機構50は、ナット部51と、支柱11に設けられてナット部51を回転可能に保持する保持部52と、ナット部51に螺合しかつ先端が延出部に連結されたボルト53と、ナット部51に着脱可能なハンドル54と、を備える。
この調整機構50によれば、ハンドル54をナット部51に差し込むことで、ハンドル54とナット部51とを係合させる。そして、ハンドル54を把持して回転させることで、ナット部51を回転させる。すると、ボルト53がナット部51に螺合しているので、このボルト53のナット部51からの突出寸法が変化する。このようにして、延出部20の支柱11からの突出寸法dを調整する。
【0024】
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(2)調整機構50で延出部20の突出寸法を調整することで、延出部20を、風騒音を最も低減できる位置に容易に設定できる。
また、ハンドル54を着脱可能としたので、延出部20の位置を調整する場合のみ、ハンドル54を調整機構50に取り付ければよいので、バルコニー3の使い勝手や美観を損なうことはない。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0026】
1…建物
2…壁面
3…バルコニー
4…スラブ
10、10A…手摺構造(外装部材構造)
11…支柱(棒状部材)
12…下弦材
13…笠木
14…手摺子(棒状部材)
20…延出部
30…ルーバー構造(外装部材構造)
31…ルーバー(棒状部材)
40…延出部
50…調整機構
51…ナット部
52…保持部
53…ボルト
54…ハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6