特許第6362967号(P6362967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6362967-空気入りタイヤ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362967
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20180712BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B60C9/18 K
   B60C9/18 N
   B60C9/22 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-175310(P2014-175310)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49843(P2016-49843A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝田 広一
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−196895(JP,A)
【文献】 特開2000−185518(JP,A)
【文献】 特開2009−73245(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/010348(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の環状のビード部で両端が巻き返されたカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配され、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びるコードが配列されたベルトを複数積層して形成されたベルト層と、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層が、コードがタイヤ幅方向に対して互いに逆向きに傾斜して交差する第1及び第2ベルトと、前記第1及び第2ベルトのタイヤ径方向外側に配され、タイヤ幅方向に対するコードの傾斜角度が前記第1及び第2ベルトのコードの傾斜角度よりも大きい第3ベルトと、を含み、
前記第3ベルトのタイヤ幅方向端部は、タイヤ幅方向の最外側に設けられる一対のショルダー主溝と接地端との間に位置し、かつ前記ショルダー主溝から接地端までの距離の25〜50%の範囲に位置することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第3ベルトのタイヤ幅方向端部は、トレッド部に設けられた主溝のタイヤ径方向内側以外に位置することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第3ベルトのコードは、前記第3ベルトに隣接する前記第2ベルトのコードと同じ向きに傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第3ベルトのタイヤ径方向外側に前記第3ベルトのタイヤ幅方向端部を覆うベルト補強層を備え、
前記ベルト補強層は、タイヤ赤道を挟んで隣接するように設けられる少なくとも一対のセンター主溝よりもタイヤ幅方向外側にそれぞれ配されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の環状のビード部で両端が巻き返されたカーカス層と、カーカス層のタイヤ径方向外側に配され、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びるコードが配列されたベルトを複数積層して形成されたベルト層と、を備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤの内部構造として、タイヤの骨格となるカーカス層の外周側に補強用のベルト層を配置したものが公知である。ベルト層としては、タイヤ周方向に対して傾斜したコードを有する2枚のベルトを積層したものが多く採用されている。
【0003】
ところで、トラックやバスなどの重荷重車両に用いられる空気入りタイヤでは、センター部の接地圧が高いため、センター部の剛性が不足して耐摩耗性が悪くなる傾向にあった。そのため、このような重荷重用空気入りタイヤでは、センター部の剛性を高めるために3枚以上のベルトを積層したものが存在する(例えば、下記特許文献1及び2等)。これにより、センター部の剛性を確保でき、耐摩耗性を向上できる。
【0004】
しかしながら、このような3枚以上のベルトを積層したベルト層の構造では、センター部の剛性を確保できるものの、走行時におけるトレッド部の径成長、とりわけトレッドショルダー部の径成長が大きくなるため、トレッドショルダー部での接地圧が増大し、タイヤの偏摩耗を引き起こすおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−359030号公報
【特許文献2】特開2001−213115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐摩耗性を向上しつつ、偏摩耗を抑制できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明の空気入りタイヤは、一対の環状のビード部で両端が巻き返されたカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配され、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びるコードが配列されたベルトを複数積層して形成されたベルト層と、を備える空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層が、コードがタイヤ幅方向に対して互いに逆向きに傾斜して交差する第1及び第2ベルトと、前記第1及び第2ベルトのタイヤ径方向外側に配され、タイヤ幅方向に対するコードの傾斜角度が前記第1及び第2ベルトのコードの傾斜角度よりも大きい第3ベルトと、を含むものである。
【0008】
本発明の空気入りタイヤは、カーカス層のタイヤ径方向外側に、複数のベルトを積層して形成されたベルト層を備えている。ベルト層は、第1及び第2ベルトと、第1及び第2ベルトのタイヤ径方向外側に配された第3ベルトとを含む。これにより、センター部の剛性を確保でき、耐摩耗性を向上できる。第1ベルトと第2ベルトは、コードがタイヤ幅方向に対して互いに逆向きに傾斜して交差しており、ワーキングベルトとして機能する。これに対し、第3ベルトは、タイヤ幅方向に対するコードの傾斜角度が第1及び第2ベルトのコードの傾斜角度よりも大きくなっており、第3ベルトによるセンター部の拘束力は比較的弱く、トレッドセンター部は膨らみやすい。これにより、トレッドショルダー部が接地しにくくなり、トレッドショルダー部の接地圧を下げることができる。その結果、トレッドショルダー部の摩耗を減少させて、偏摩耗を抑制できる。
【0009】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第3ベルトのタイヤ幅方向端部は、トレッド部に設けられた主溝のタイヤ径方向内側以外に位置することが好ましい。この構成によれば、溝底に歪が集中して起こる主溝の溝底を起点としたクラック(グルーブクラック)の発生を抑制することができる。
【0010】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第3ベルトのタイヤ幅方向端部は、タイヤ幅方向の最外側に設けられる一対のショルダー主溝と接地端との間に位置することが好ましい。この構成によれば、トレッドショルダー部の摩耗を減少させて、偏摩耗を抑制できる。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第3ベルトのコードは、前記第3ベルトに隣接する前記第2ベルトのコードと同じ向きに傾斜していることが好ましい。この構成によれば、第3ベルトが、ワーキングベルトとしての第2ベルトの機能を阻害しないため、センター部の剛性を確保でき、耐摩耗性を向上できる。さらに、第3ベルトのコードのタイヤ幅方向に対する傾斜角度を大きくすることでベルト層によるハンドル流れを抑制できる。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第3ベルトのタイヤ径方向外側に前記第3ベルトのタイヤ幅方向端部を覆うベルト補強層を備え、前記ベルト補強層は、タイヤ赤道を挟んで隣接するように設けられる少なくとも一対のセンター主溝よりもタイヤ幅方向外側にそれぞれ配されることが好ましい。この構成によれば、ベルト補強層によってトレッドショルダー部の径成長を抑制することで偏摩耗を抑制できる。また、ベルト補強層をセンター主溝間に配置しないことで、センター部の剛性を確保でき、耐摩耗性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
図2】ベルト層を模式的に示す平面図
図3】別実施形態に係る空気入りタイヤを示すタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図である。図2は、図1の空気入りタイヤのベルト層を模式的に示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、空気入りタイヤは、一対の環状のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3と、その一対のビード部1の間を補強するカーカス層4とを備えている。カーカス層4は、一対のビード部1で両端が巻き返されている。より具体的には、カーカス層4は、トロイド状をなすカーカスプライからなり、その端部はビードコア1aとビードフィラー1bを挟み込むようにして折り返されている。
【0016】
トレッド部3におけるカーカス層4のタイヤ径方向外側には、たが効果によりカーカス層4を補強するベルト層5が配設されている。図2は、ベルト層5の平面図であるが、図中のコードは概念的に記載されており、実際の配列ピッチはもっと密なものとなる。
【0017】
トレッド部3におけるベルト層5の外周側には、接地面を構成するトレッドゴム7が設けられている。トレッドゴム7の外表面であるトレッド面TRには、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、これらの主溝により区画された複数の陸部とが設けられている。本実施形態では、4本の主溝が設けられている。本発明における主溝は、直線状に形成されるもののほか、ジグザグ状、あるいは波形状に形成されるものでもよい。本発明では、タイヤ赤道CLを挟んで隣接するように設けられる一対の主溝をセンター主溝81と称し、タイヤ幅方向WDの最外側に位置する一対の主溝をショルダー主溝82と称する。トレッドゴム7は、一対のショルダー主溝82間に配置されるセンター部Ceと、各ショルダー主溝82のタイヤ幅方向WDの外側に配置される一対のショルダー部Shとを備えている。
【0018】
ベルト層5は、タイヤ幅方向WDに対して傾斜して延びるコードが配列されたベルトを複数積層して形成されている。ベルト層5は、コードがタイヤ幅方向WDに対して互いに逆向きに傾斜して交差する第1ベルト51及び第2ベルト52を含んでいる。本実施形態では、第1ベルト51がカーカス層4に隣接し、第1ベルト51のタイヤ径方向外側に第2ベルト52が配置されている。
【0019】
第1ベルト51のコード51Cのタイヤ幅方向WDに対する傾斜角度αは、18〜22°が好ましい。また、第2ベルト52のコード52Cのタイヤ幅方向WDに対する傾斜角度βは、18〜22°が好ましい。さらに、傾斜角度αと傾斜角度βは、同一であることが好ましい。
【0020】
ベルト層5は、第1ベルト51及び第2ベルト52のタイヤ径方向外側に配される第3ベルト53をさらに含んでいる。本実施形態の第3ベルト53は、第2ベルト52のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。第3ベルト53のコード53Cのタイヤ幅方向WDに対する傾斜角度γは、第1ベルト51のコード51Cの傾斜角度α及び第2ベルト52のコード52Cの傾斜角度βよりも大きくなっている。この構成によれば、第3ベルト53によるセンター部Ceの拘束力は比較的弱く、センター部Ceは膨らみやすい。これにより、ショルダー部Shが接地しにくくなり、ショルダー部Shの接地圧を下げることができる。その結果、ショルダー部Shの摩耗を減少させて、偏摩耗を抑制できる。
【0021】
第3ベルト53のコード53Cのタイヤ幅方向WDに対する傾斜角度γは、22〜25°が好ましい。また、第3ベルト53のコード53Cは、第3ベルト53に隣接する第2ベルト52のコード52Cと同じ向きに傾斜していることが好ましい。第3ベルト53のコード53Cは、第2ベルト52のコード52Cと逆の向きに傾斜していてもよいが、第2ベルト52のコード52Cと同じ向きに傾斜させることで、第3ベルト53が、ワーキングベルトとしての第2ベルトの機能を阻害しないため、センター部Ceの剛性を確保でき、耐摩耗性を向上できる。さらに、第3ベルト53のコード53Cのタイヤ幅方向WDに対する傾斜角度γを大きくすることでベルト層5によるハンドル流れを抑制できる。
【0022】
第1ベルト51のコード51Cと第2ベルト52のコード52Cは、同じ線径である。一方、第3ベルト53のコード53Cの線径は、第1ベルト51のコード51Cと第2ベルト52のコード52Cの線径と同じでもよいが、第1ベルト51のコード51Cと第2ベルト52のコード52Cの線径よりも細いことが好ましい。より具体的には、コード53Cの線径は、コード51C及びコード52Cの線径の50〜80%であることが好ましい。第3ベルト53のコード53Cを細くして、第3ベルト53の剛性を低下させることで、ハンドル流れを抑制することができる。
【0023】
第3ベルト53のタイヤ幅方向端部53eは、トレッド部3に設けられた主溝81,82のタイヤ径方向内側以外に位置することが好ましい。すなわち、第3ベルト53のタイヤ幅方向端部53eは、主溝81,82により区画された陸部のタイヤ径方向内側に位置することが好ましい。第3ベルト53のタイヤ幅方向端部53eの周辺では、歪が集中しやすく、第3ベルト53のタイヤ幅方向端部53eを主溝81,82の近くに配置すると、主溝81,82の溝底に歪が集中してグルーブクラックが発生しやすくなる。よって、第3ベルト53のタイヤ幅方向端部53eを、主溝81,82のタイヤ径方向内側以外に配置することで、グルーブクラックの発生を抑制できる。
【0024】
第3ベルト53のタイヤ幅方向端部53eは、主溝81,82のタイヤ径方向内側以外に位置すればよく、例えば、センター主溝81とショルダー主溝82の間の陸部のタイヤ径方向内側に位置してもよい。ただし、第3ベルト53のタイヤ幅方向端部53eは、タイヤ幅方向WDの最外側に設けられる一対のショルダー主溝82と接地端TEとの間に位置することが好ましい。特に、第3ベルト53のタイヤ幅方向端部53eは、ショルダー主溝82から接地端TEまでの距離の25〜50%の範囲に位置するのが好ましい。このとき、ショルダー主溝82のタイヤ幅方向中央を基準としている。この構成によれば、ショルダー部Shの摩耗を減少させて、偏摩耗を抑制できる。
【0025】
第2ベルト52の幅は、第1ベルト51の幅の90〜95%である。また、第3ベルト53の幅は、第1ベルト51の幅の70〜90%である。
【0026】
<別実施形態>
図3は、別実施形態に係る空気入りタイヤを示すタイヤ子午線断面図である。このように、本発明において、第3ベルト53のタイヤ径方向外側に第3ベルト53のタイヤ幅方向端部53eを覆うベルト補強層61,62を備え、ベルト補強層61,62は、タイヤ赤道CLを挟んで隣接するように設けられる少なくとも一対のセンター主溝81よりもタイヤ幅方向外側にそれぞれ配されることが好ましい。この構成によれば、ベルト補強層61,62によってショルダー部Shの径成長を抑制することで偏摩耗を抑制できる。また、ベルト補強層61,62をセンター主溝81間に配置しないことで、センター部Ceの剛性を確保でき、耐摩耗性を向上できる。
【0027】
ベルト補強層61,62の全幅6w(ベルト補強層61のタイヤ幅方向最外端とベルト補強層62のタイヤ幅方向最外端との距離)は、最も幅広の第1ベルト51の幅5wの100〜105%であることが好ましい。ベルト補強層61,62によりベルト層5の両端部を覆うことで、ベルト層5の耐久性を向上できる。
【0028】
また、ベルト補強層61,62の中抜き幅6n(ベルト補強層61のタイヤ幅方向最内端とベルト補強層62のタイヤ幅方向最内端との距離)は、ベルト補強層61,62の全幅6wの35〜40%であることが好ましい。また、ベルト補強層61のタイヤ幅方向最内端とベルト補強層62のタイヤ幅方向最内端は、センター主溝81及びショルダー主溝82のタイヤ径方向内側以外に位置することが好ましく、センター主溝81とショルダー主溝82の間にそれぞれ位置することがより好ましい。
【0029】
ベルト補強層61,62は、タイヤ周方向CDに実質的に平行に配列した補強コードからなる。補強コードの材料としては、有機繊維コードが例示される。有機繊維コードの素材としては、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンを例示することができるが、ナイロンが好ましい。
【0030】
ベルト補強層61,62は、ベルト層5の外周側に、補強コードをスパイラル状に巻回することにより形成される。このとき、巻回する際の送りピッチを適宜変えることで、補強コードの配列密度を設定できる。補強コードの配列密度とは、単位幅あたりのコード本数のことであり、エンド数と呼ばれることもある。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0032】
(1)耐摩耗性
実車にタイヤを装着して一般路を50000km走行した後、摩耗量を測定し、その摩耗量の逆数を算出した。評価は、比較例1を100としたときの指数で示し、数値が大きいほど性能が優れていることを示す。
【0033】
(2)耐偏摩耗性
上記した走行後のタイヤにおいて、センター部における摩耗量(センター摩耗量)とショルダー部における摩耗量(ショルダー摩耗量)との差(センター摩耗量−ショルダー摩耗量)を算出した。この差が1に近いほど均一摩耗の傾向にあり、性能が優れていることを示す。
【0034】
(3)耐久性(ベルト耐久力)
所定の内圧にしたタイヤを所定の荷重で回転ドラムに押し付けて一定速度で走行させ、その荷重を一定時間ごとに上昇させていくベルト耐久力試験を実施した。ベルト層に故障(ベルトセパ)が発生するまでの走行距離を成績として、比較例1の結果を100としたときの指数で示し、数値が大きいほどベルト耐久力が高く、耐久性に優れていることを示す。
【0035】
(4)耐グルーブクラック性
オゾンにて劣化させながら一定条件下(内圧・荷重)のもとドラム試験を実施し、溝底クラックの発生状況を24時間毎に確認した。クラック発生の程度(発生範囲(数)、長さおよび深さ)を比較例1の結果を100としたときの指数で示し、数値が大きいほどクラックの発生の程度が小さく、耐グルーブクラック性に優れていることを示す。
【0036】
(5)ハンドル流れ性
ハンドルを操舵せず、車両の流れた距離を測定した。数値が0に近いほどハンドル流れが小さく、ハンドル流れ性が良好であることを示す。
【0037】
図1に示した構造のタイヤ(サイズLT265/70R17)において、第3ベルトのコードのタイヤ幅方向に対する傾斜角度が、第1及び第2ベルトのコードの傾斜角度よりも小さいものを比較例1とし、第3ベルトのコードのタイヤ幅方向に対する傾斜角度が、第1及び第2ベルトのコードの傾斜角度よりも大きいものを実施例1とした。また、実施例1に比較し第3ベルトのタイヤ幅方向端部がショルダー主溝を越えるものを実施例2、実施例2に図3のような中抜きのベルト補強層を追加したものを実施例3、第1及び第2ベルトのコード線径に対し、第3ベルトのコード線径が細い(50〜80%)ものを実施例4とした。評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果から以下のことが分かる。実施例1の空気入りタイヤは、比較例1と比較して、偏摩耗を抑制できた。実施例2は、実施例1と比較して、グルーブクラックを抑制できた。実施例3は、実施例2と比較して、偏摩耗を抑制できた。実施例4は、実施例3と比較して、ハンドル流れを抑制できた。
【符号の説明】
【0040】
4 カーカス層
5 ベルト層
51 第1ベルト
52 第2ベルト
53 第3ベルト
61 ベルト補強層
62 ベルト補強層
81 センター主溝
82 ショルダー主溝
CL タイヤ赤道
CD タイヤ周方向
WD タイヤ幅方向
TE 接地端
図1
図2
図3