(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362969
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】無線通信システム及び無線回線制御装置
(51)【国際特許分類】
H04W 56/00 20090101AFI20180712BHJP
H04W 28/16 20090101ALI20180712BHJP
H04W 92/12 20090101ALI20180712BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
H04W56/00 110
H04W28/16
H04W92/12
H04M1/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-177002(P2014-177002)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-52028(P2016-52028A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 収
【審査官】
望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/102423(WO,A1)
【文献】
特表2012−520029(JP,A)
【文献】
特開2001−308785(JP,A)
【文献】
特開2012−88730(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0029586(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00−H04W99/00
H04B7/24−H04B7/26
H04M1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局と、複数の移動局と、前記複数の基地局に接続され、前記複数の基地局と前記複数の移動局とを無線接続する無線回線制御装置と、を備えた無線通信システムにおいて、
前記無線回線制御装置と前記複数の基地局とは同期をとり、前記無線回線制御装置は、データを前記複数の基地局のうちの少なくとも2つの隣接する基地局より同一周波数で同時に送信させる際、これら少なくとも2つの隣接する基地局の符号化部へリセット指示を行い、前記少なくとも2つの隣接する基地局は前記リセット指示に基づいて符号化部をリセットすることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
複数の基地局に接続され、前記複数の基地局と複数の移動局とを無線接続する無線回線制御装置であって、
前記複数の基地局とは同期をとり、データを前記複数の基地局のうちの少なくとも2つの隣接する基地局より同一周波数で同時に送信させる際、これら少なくとも2つの隣接する基地局の符号化部をリセットするリセット指示を送信することを特徴とする無線回線制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局を介して移動局と移動局との間の無線通話や、基地局を介して移動局と指令台との間の無線通話等を行う無線通信システムに関し、特に基地局間の周波数干渉を軽減し通話エリアを拡大することができるデジタル移動通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に本技術分野に関する無線通信システムの概略構成例を示す。この無線通信システムにおいては、音声データを伝送するチャネル1つに対して1つのキャリアを割り当てるSCPC方式(Single Channel Per Carrier)が用いられている。SCPC方式のデジタル無線システムは、例えば、デジタル通信方式標準規格ARIB STD−T61で規定されている。
図4において、無線回線制御装置401は、操作卓(指令台、統制卓、通信卓ともいう。)406、基地局(A)402を経由して接続する複数の移動局(移動局(A)404、基地局(B)403)を経由して接続する移動局(B)405の回線を交換する機能を有する。
【0003】
図1に本技術分野および本発明に係る無線回線制御装置のブロック図を示し、回線交換の仕組みについて説明する。
図1において、障害監視IF部101は無線回線制御装置内部の状態を監視し、その状態を外部の機器に通知する機能を有する。
呼制御部102は、システムの呼接続、呼切断を制御する機能を有する。
【0004】
交換制御部103は、無線回線制御装置の主たる機能であり、
図4で説明したように操作卓406、移動局(A)404そして移動局(B)405相互の回線を交換するスイッチの機能を有する。
操作部IF部105は、操作卓108のインタフェースであり、具体的には操作卓108からの音声をアナログ/デジタル(A/D)変換する機能、デジタル/アナログ(D/A)変換した音声を操作卓108へ出力する機能を有する。
【0005】
基地局(A)IF部106は音声符号化/復号化機能を有し、基地局109とのインタフェース機能を有する。基地局(B)IF部107も基地局(A)IF部106と同様の機能を有する。
集線・分配部104は、無線回線制御装置内の制御情報を伝送するARCNET,音声信号を伝送する機能をハイウェイ機能(HighWay)として各々集線・分配する機能を有する。
【0006】
下記の特許文献1、2には、ARIB STD−T61に関連するSCPC方式のデジタル無線システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011‐71703公報
【特許文献2】特開2013‐48323公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した無線通信システムにおいて、音声符号化方式としてCELP(Code-Excited Linear Prediction:符号励振線形予測)方式をベースとする音声符号化方式を使用した場合、その性質上過去の音声データを保存しておき、再利用して符号化する事から、音声符号化部に入力する音声データの先頭を複数の基地局間で同一にしないと音声符号化後のデータが一致しないという課題があった。
【0009】
ここで、複数の基地局が同一周波数で無線送信する無線通信システムにおいて、複数の基地局間で同期をとって同一タイミングで無線送信することで干渉を低減する場合、複数の基地局間で送信タイミングを合わせても、送信データが一致しないと干渉の低減効果が見込めないという問題がある。
本発明は、このような背景技術の課題を解決するために為されたもので、複数の基地局間で同期を取るシステムにおいて、複数の基地局間でデータ送信するタイミングと送信データとを一致させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための、本願発明の無線通信システムの代表的な第1の構成は、次のとおりである。すなわち、複数の基地局と複数の移動局とこれらを無線接続する無線回線制御装置とより構成される無線通信システムにおいて、前記無線回線制御装置と複数の基地局とは同期をとり、前記無線回線制御装置は、データを前記複数の基地局のうちの少なくとも2つの隣接する基地局より同一周波数で同時に送信させる際、これら少なくとも2つの隣接する基地局の符号化部へリセット指示を行い、前記少なくとも2つの隣接する基地局は前記リセット指示に基づいて符号化部をリセットすることを特徴とする無線通信システム。
【0011】
また、本願発明の無線通信システムの代表的な第2の構成は、次のとおりである。すなわち、複数の基地局と複数の移動局とこれらを無線接続する無線回線制御装置において、複数の基地局とは同期をとり、データを前記複数の基地局のうちの少なくとも2つの隣接する基地局より同一周波数で同時に送信させる際、これら少なくとも2つの隣接する基地局の符号化部をリセットするリセット指示を送信することを特徴とする無線回線制御装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の基地局が同一周波数で同時に無線送信する際、同一データを確実に送信できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る無線回線制御装置のブロック図を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るシステム管理用スロット通信に対応するコマンド一覧表(表1)を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るブロードキャストリセットコマンドのレジスタマップの表(表2)を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る無線通信システムの概略構成例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に動作制御フローチャート図を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るシステム管理用スロット通信における通信フローチャート図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、背景技術の説明で述べたように、本技術分野および本発明に係る無線回線制御装置のブロック図を示すものであり、背景技術で述べた点は説明を省略する。なお、無線回線制御装置の機能を操作卓に組み込むように構成することもできる。
図1において、操作卓108と移動局(A)111、移動局(B)112で音声通信する動作について説明する。
【0015】
操作卓108より移動局(A)111、移動局(B)112に同時に発呼すると、呼制御部102がその呼接続要求を受け、交換制御部103に対し操作卓108と移動局111、操作卓108と移動局112に対しそれぞれ回線を接続するようARCNET制御信号線を経由し命令する。
この命令を受けた交換制御部103は、操作卓108から入力された音声信号を移動局(A)111へ、同じく操作卓108から入力された音声信号を移動局(B)112へ出力するようHighWayパスを接続する。
その後、操作卓108から入力された音声信号は操作卓IF部105にてA/D変換されデジタル信号(uLaw)でHighWay上に出力される。
その後集約・分配部104を経由して交換制御部103に入力され、予め接続されたHighWayパスを通り、また集約・分配部104を経由し基地局(A)IF部106と基地局(B)IF部107に出力される。
【0016】
基地局(A)IF部106、基地局(B)IF部107では、音声符号化部(符号化部)を備え、音声符号化部でuLawフォーマットを無線伝送のための符号化方式に符号化し、それぞれ基地局(A)109、基地局(B)110に出力する。
基地局(A)109、基地局(B)110からは、無線に乗せてそれぞれ移動局(A)111、移動局(B)112に音声符号化された音声を送信する。それを移動局(A)111、移動局(B)112で受信し、音声符号化された音声を復号し再生する。
【0017】
ここで、無線回線制御装置と基地局間はGPS(Global Positioning System)でクロック同期をとり、スーパーフレームタイミングを合わせて送信することで、基地局(A)109、基地局(B)110から移動局(A)111、移動局(B)112に対し同一周波数で無線送信する。
このように同一周波数にて複数基地局から同一のデータ送信がされるため、例えば複数無線エリアの境界の無線不感地域を少なくすることができる。
【0018】
図5は、本発明の実施形態に動作制御フローチャート図を示す。本動作制御フローに沿って説明する。
(501):操作卓にて、送信したい基地局を選択する。前述の説明では、基地局(A)、基地局(B)を選択している。
(502):操作卓にて、ハンドセットのプレス釦を押下する)。
(503)(501):(502)の情報は、
図1におけるARCNETを経由して呼制御部に通知され、呼接続を開始する。
(504):操作卓から基地局(A)、基地局(B)対し音声を伝送するため、交換制御部に対しARCNET経由でパス設定命令を送出する。
(505)(506):交換制御部にて操作卓から入力された音声を基地局(A)、基地局(B)に対し出力するようパスを接続する。なお、この時点で、操作卓から
図1に示すHighWay経由で交換制御部に入力された音声信号は基地局(A)IF部、基地局(B)IF部に入力される。
(507):交換制御部にて、システム管理スロット通信用レジスタに基地局(A)用、基地局(B)用音声CODECに対しリセット指示を書き込み、HighWayを介してブロードキャストで基地局(A)IF部、基地局(B)IF部へリセット命令を送出する。(詳細は後述(
図6)する。)
(508)(509):ブロードキャストでリセット命令を受けた基地局(A)IF部、基地局(B)IF部は、リセット命令をデコードし対象の音声CODEC部をリセットする。
(510)(511):リセット後、入力される音声データを音声符号化する。
(512)(513):音声符号化後のデータにスーパーフレーム番号を付与する。
(514)(515):基地局(A)、基地局(B)にデータを無線で送出する。
【0019】
上述したように、交換制御部が複数の基地局に対してリセット指示を行い、リセット命令を受けた各基地局はリセット命令に従って対象となる音声コーデックをリセットする(特に(507)、(508)、(509))ことにより、複数無線エリアの境界の無線不感地域を少なくすることができる。
【0020】
ここで、音声CODECにリセット命令を出すための仕組み、システム管理スロット通信の手順とその仕組みについては説明する。
図6は、本発明の実施形態に係るシステム管理用スロット通信における通信フローチャート図を示す。
図2は、本発明の実施形態に係るシステム管理用スロット通信に対応するコマンド一覧表(表1)を示す。
図3は、本発明の実施形態に係るブロードキャストリセットコマンドのレジスタマップの表(表2)を示す。
【0021】
システム管理用スロットはシングル・マスタのシリアル・バスとして振る舞い、交換制御部がバス・マスタとなり、基地局IF部がバス・スレーブとなって、システム管理情報の通信を行うことができる。
図6のように、基地局IF部はコマンド・パケットを受信すると、Package ID =自番号のアクノリッジ・パケットを返送する。本基板のシステム管理用はアクノリッジ・パケットの正常受信をもって通信完了と判断するものとする。
本実施形態では、表1(
図2)のブロードキャストコマンド(h’4)を用いている。
また本実施形態では、表2(
図3)のオクテッド6〜37までが基地局IF部に対応しており、各基地局IF部は8ch分の音声CODECを実装しているため、全部で256ch(=32×8)分の音声CODECを同時にリセットできる。
なお、リセットしたい音声CODECのbit位置に“1“を立てると音声CODECリセット、“0”で非リセットである。
【0022】
上述した本実施形態により、複数の基地局を選択し音声を送信する場合、対象の音声CODECを同時にリセットし音声符号化する無線通信システムを実現でき、これにより、同一周波数で無線送信する事によって生じるエリア境界の不感地帯を軽減することができる無線通信システムを提供することができる。
【0023】
本発明の実勢の形態によれば、複数の基地局と複数の移動局とこれらを無線接続する無線回線制御装置とより構成される無線通信システムにおいて、
前記無線回線制御装置と複数の基地局はクロック同期を取得し、
前記無線回線制御装置からの指令データを前記複数の基地局のうちの少なくとも2つの隣接する基地局より同一周波数で送信し、
また、基地局に対して所望の音声コーデックのリセット指示を行う手段と、
該リセット命令を受けた基地局はリセット命令に従って対象となる音声コーデックをリセットする手段を備えたことを特徴とする無線通信システムである。
【0024】
また、本発明の実施の形態によれば、複数の基地局と複数の移動局とこれらを無線接続する無線回線制御装置とより構成される無線通信システムの無線回線制御装置において、
前記無線回線制御装置より前記複数の基地局のうちの少なくとも2つの隣接する基地局に対して同一周波数で指令データを送信する制御を行う手段と、
当該指令データを送信する場合には、該当する複数の基地局に同時送信とするクロック同期を取得させる制御を行う手段を備え、
また、該無線回線制御装置は前記複数の基地局のうちの少なくとも2つの隣接する基地局に対して所望の対象となる音声コーデックをリセットする指示を行う手段を備えたことを特徴とする無線回線制御装置である。
【0025】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
また、本発明は、本発明に係る処理を実行するシステムとしてだけでなく、装置、方法として、或いは、このような方法やシステムを実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
また、本発明は、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することにより制御する構成としてもよく、また、ハードウエア回路として構成してもよい。
【符号の説明】
【0026】
101・・障害監視IF部、102・・呼制御部、103・・交換制御部、104・・集約・分配部、105・・操作卓IF部、106〜107・・基地局IF部、108、406・・操作卓、109、402・・基地局(A)、110、403・・基地局(B)、111、404・・移動局(A)、112、405・・移動局(B)、401・・無線回線制御装置、501〜515・・各動作手段(フロー)。