(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362975
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】産業用袋の内袋および産業用袋
(51)【国際特許分類】
B65D 90/04 20060101AFI20180712BHJP
B65D 88/22 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
B65D90/04 G
B65D88/22 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-187052(P2014-187052)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-60493(P2016-60493A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504297559
【氏名又は名称】堺商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591012392
【氏名又は名称】日本マタイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 広文
(72)【発明者】
【氏名】望月 正快
(72)【発明者】
【氏名】中島 信幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 靖士
【審査官】
植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−121611(JP,A)
【文献】
特開2003−335391(JP,A)
【文献】
特開平10−329844(JP,A)
【文献】
特開2007−223661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00−90/66
B65D 30/00−33/38
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガゼット状に製袋され、外袋に収容されて前記外袋とともに産業用袋を構成する内袋であって、
前記内袋の外方から順に未延伸ポリアミドフィルム/金属/ポリエチレンの層構成からなるフィルムを用いて形成され、開口部から底部に向かう深さ方向および前記深さ方向に直交する幅方向の引張破断伸度が、いずれも200%以上1000%以下である、内袋。
【請求項2】
前記内袋は複数枚の前記フィルムで形成され、前記複数枚のフィルムの少なくとも1枚は、未延伸ナイロン/アルミニウム/直鎖状低密度ポリエチレンの層構成からなる、請求項1に記載の内袋。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内袋と、前記内袋とを収容した外袋とを備える、産業用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用袋の内袋および産業用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加工食品、飼料、工業原料、合成樹脂、医療、農業、建設業など多様な分野で、原料、製品、土砂などを輸送、貯蔵するのに、フレキシブルコンテナバッグや土嚢袋が使用されている。フレキシブルコンテナバッグや土嚢袋は軽量、安価であり、また、使用しないときには折りたたんで輸送できることから輸送効率がよいという利点がある。これらフレキシブルコンテナバッグや土嚢袋のことを産業用袋と呼ぶことにする。
【0003】
フレキシブルコンテナバッグや土嚢袋は、外袋と内袋とからなる二重構造である。内袋は、内容物を収容し、内容物の飛散、漏れを防止する役割を果たし、熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。外袋は、内袋の重量を支える役割を果たし、熱可塑性樹脂繊維の織布が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−285898公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブルコンテバッグや土嚢袋は、瓦礫や木片等を内容物とした場合、内容物の尖った部分などが内袋に孔を開け、孔から内袋が引き裂かれて内容物が漏れてしまうおそれがあった。また、内容物に植物が混入している場合に、種子から芽が出て内袋を突き破ったり、内袋がポリエチレン製の場合、腐敗が進行し臭気が内袋を透過するおそれがあった。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、孔が拡がりにくく内容物や臭気の漏れを好適に抑制できるフレキシブルコンテナバッグや土嚢袋の内袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面は、ガゼット状に製袋され、外袋に収容されて外袋とともに産業用袋を構成する内袋であって、内袋の外方から順に未延伸ポリアミドフィルム/金属/ポリエチレンの層構成からなるフィルムを用いて形成され、開口部から底部に向かう深さ方向および深さ方向に直交する幅方向の引張破断伸度が、いずれも200%以上1000%以下である。
【0008】
内袋は複数枚のフィルムで形成され、複数枚のフィルムの少なくとも1枚は、未延伸ナイロン/アルミニウム/直鎖状低密度ポリエチレンの層構成であってもよい。
【0009】
本発明の他の局面は、上述の内袋とこれを収容した外袋とを備える、フレキシブルコンテナバッグや土嚢袋である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、充分な引張破断伸度および引裂強度を有し、孔が拡がりにくく内容物や臭気の漏れを好適に抑制できる産業用袋の内袋を提供することができる。また、金属層を設けることによって、デッドホールド性が向上し、充填作業が行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の一実施形態に係る産業用袋の内袋の製造方法を示す図
【
図3】本発明の一実施形態に係る産業用袋の内袋のフィルムの層構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
図1に、本実施形態に係る産業用袋300の斜視図を示す。産業用袋300は外袋200とこれに収納される内袋100とを備える。
図2に内袋100の製造方法を示す。内袋100は一例として4枚のフィルム101を
図2に示すように重ね合わせ、それぞれの周縁部を開口部となる部分を除いてシールし、底部を折り込むことによって、ガゼット状に形成することによって製袋される。
【0013】
図3にフィルム101の層構成を示す。フィルム101は、内袋100の外方となる側から順に未延伸ナイロン/アルミニウム/直鎖状低密度ポリエチレンの層構成からなる。一例として、内袋100の開口部から底部に向かう深さ方向が、フィルム101のMD方向(Machine Direction)に一致し、深さ方向に直交する幅方向が、TD方向(Transverse Direction)に一致する。
【0014】
内袋100のサイズは限定されないが、例えば3m×1mの4枚のフィルム101を用いてガゼットを形成し、底部を1mほど折り込んで、一辺1mの立方体形状とすることができる。
【0015】
フィルム101は未延伸ナイロンによって一定の突刺強度を有し、尖った内容物によっても孔が開きにくくなっている。また、フィルム101を引っ張った際には、内部のアルミニウム層が延びずに随所で断裂して、未延伸ナイロン層と直鎖状低密度ポリエチレン層とが、この断裂箇所においてアルミニウム層からそれぞれ剥離する。そのため、未延伸ナイロン層と直鎖状低密度ポリエチレン層とは互いに部分的に遊離した状態となり、直鎖状低密度ポリエチレン層の延伸が、これより延伸しにくい未延伸ナイロン層によって抑制されにくくなり、フィルム101全体として引張破断伸度が大きくなる。またこれにともなって、引裂強度も大きくなる。フィルム101は各層の厚さ等を適宜設定することにより、MD方向およびTD方向の引張破断伸度を、いずれも200%以上1000%以下とすることが好ましい。引張破断伸度を200%以上とすることにより、充分な破断伸度が得られ、孔が開いても拡がりにくく内容物の漏れを抑制することができる。引張破断伸度を400%以上とすることにより、さらに孔が拡がりにくくなり、より好ましい。また、引張破断伸度を1000%以下とすることにより、内袋100が延びすぎて内容物の重量が直接的に外袋200にかかって外袋200が裂けるのを防ぐことができる。
【0016】
フィルム101は、臭気等を透過しにくいアルミニウム層を含むため、内容物が腐敗した場合でも臭気が漏れるのを抑制することができる。また、アルミニウム層は、光を透過しにくいため、内容物に植物が含まれていても植物の光合成を抑制し、成長した植物がフィルム101を突き破るのを防ぐことができる。
【0017】
なお、フィルム101の層構成は、内袋100の外側から順に未延伸樹脂(例えばポリアミド)フィルム/金属/ポリエチレンの層構成であればよく、上述の例に限られない。例えば未延伸樹脂フィルムとして、未延伸ポリプロピレン、未延伸EVOH樹脂(エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)等を用いてもよい。また、最内層はポリエチレンではなくポリプロピレンを使用しても良い。また、内袋100は、このようなフィルム101を少なくとも一部に用いれば、上述の方法で形成されなくてもよい。
【0018】
外袋200は、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂繊維を材料とすることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して得られたエチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体が使用でき、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが使用できる。これらの材料からなるフィルムをスリットして延伸したフラットヤーンや、紡糸ノズルから押し出したフィラメントを延伸したモノフィラメントなどを用いて外袋200を形成することができる。
【実施例】
【0019】
以下の本発明の実施例および比較例について説明する。
(実施例1)
3m×1mの4枚のフィルムを用いてガゼットを形成し、底部を1mほど折り込んで、一辺1mの立方体形状の内袋を形成した。内袋の開口部から底部に向かう深さ方向をフィルムのMD方向に一致させ、深さ方向に直交する幅方向をTD方向に一致させた。フィルムの層構成は、未延伸ナイロン(30μm)/アルミニウム(9μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(70μm)とした。また、外袋はポリプロピレンを用いて形成した。
【0020】
(実施例2)
フィルムの層構成を、未延伸ナイロン(30μm)/アルミニウム(9μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(100μm)とした点のみ実施例1と異なる。
【0021】
(実施例3)
フィルムの層構成を、未延伸ナイロン(50μm)/アルミニウム(9μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(100μm)とした点のみ実施例1と異なる。
【0022】
(比較例1)
フィルムの層構成を、延伸ポリエチレンテレフタレート(12μm)/アルミニウム(9μm)/延伸ナイロン(15μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(70μm)とした点のみ実施例1と異なる。
【0023】
(比較例2)
フィルムの層構成を、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(12μm)/延伸ポリプロピレン(30μm)/未延伸ナイロン(30μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(70μm)とした点のみ実施例1と異なる。
【0024】
(比較例3)
フィルムの層構成を、未延伸ナイロン(20μm)/アルミニウム(9μm)/未延伸ナイロン(20μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(80μm)とした点のみ実施例1と異なる。
【0025】
以上の実施例、比較例について、以下の評価を行った。
(評価1)フレキシブルコンテナバッグに土砂・砕石を1.5t封入し、80cmの高さから自由落下させ、内袋の破れがないか目視確認した。
(評価2)内袋のフィルムの引張破断伸度を、JIS Z 1707の引張強さ試験規格に基づき、JIS K 7127に準拠して、MD方向およびTD方向について測定した。
(評価3)内袋のフィルムの引裂強度を、JIS K 7128−1の引裂強さ試験規格に準拠して、MD方向およびTD方向について測定した。
以下の表1に、各評価結果を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
(評価1)において、実施例1〜3および比較例3では、内袋のフィルムに破れがないことが確認できた。比較例1、2では、フィルムどうしのシール箇所およびシール箇所以外の箇所に孔が開きそこからフィルムが破れた。
(評価2)において、実施例1〜3および比較例3ではMD方向、TD方向ともに200%以上の引張破断伸度が確認できた。実施例1〜3では、さらにMD方向、TD方向ともに400%以上の引張破断伸度が確認できた。比較例1、2では、MD方向、TD方向ともに200%未満の引張破断伸度であった。
(評価3)において、実施例1〜3ではMD方向、TD方向ともに10N以上の引裂強度が確認できた。比較例1〜3では、MD方向、TD方向ともに3N未満の引張破断伸度であった。
【0028】
以上のことから、実施例1〜3では、引張破断伸度および引裂強度が比較例1〜3に比べて大きく、また実際にフィルムの破れが起こりにくいことが確認できた。
【0029】
なお、比較例3では、引張破断伸度が比較例1、2に比べて大きく、(評価1)ではフィルムの破れが発生しなかったが、引裂強度が実施例1〜3よりはるかに小さいため、(評価1)よりも過酷な条件で落下試験を行った場合、フィルムの破れが起こるおそれがある。これは、比較例3のフィルムを引っ張り、内部のアルミニウム層が断裂しても、アルミニウム層と直鎖状低密度ポリエチレン層との間にある未延伸ナイロン層が直鎖状低密度ポリエチレン層から剥離しないため、直鎖状低密度ポリエチレン層の延伸が、これより延伸しにくい未延伸ナイロン層によって抑制され、フィルム全体として引張破断伸度があまり大きくならないため、引裂強度も大きくならないと考えられる。
【0030】
以上のように、本発明によれば、充分な引張破断伸度および引裂強度を有し、孔が拡がりにくく内容物や臭気の漏れを好適に抑制できるフレキシブルコンテナバッグの内袋を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、フレキシブルコンテナバッグや土嚢袋等に有用である。
【符号の説明】
【0032】
100 内袋
101 フィルム
200 外袋
300 産業用袋