特許第6362986号(P6362986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362986
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】油圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B64C 13/40 20060101AFI20180712BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B64C13/40
   F15B15/14 345Z
   F15B15/14 365
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-202914(P2014-202914)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-68890(P2016-68890A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩二
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−529871(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00708582(GB,A)
【文献】 実開昭63−152004(JP,U)
【文献】 米国特許第06343537(US,B1)
【文献】 米国特許第05941158(US,A)
【文献】 実開昭64−055310(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0061922(US,A1)
【文献】 米国特許第09038964(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0006156(US,A1)
【文献】 米国特許第04720066(US,A)
【文献】 米国特許第04784355(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0292452(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0096617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 9/00− 9/38
B64C 13/38−13/40
F15B 15/14−15/16
F15B 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼に取り付けられ、揚力を減少させるスポイラを駆動させる油圧アクチュエータであって、
前記翼に取り付けられたフラップの駆動範囲と前記スポイラの駆動範囲とが重複する重複領域において前記スポイラを駆動させるとき、前記重複領域における前記油圧アクチュエータの駆動出力である第1駆動出力を、前記重複領域以外の前記スポイラの駆動範囲における前記油圧アクチュエータの駆動出力である第2駆動出力よりも小さくする出力抑制手段を備える
油圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記出力抑制手段は、油圧により前記第1駆動出力を前記第2駆動出力よりも小さくする
請求項1に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記出力抑制手段は、前記油圧アクチュエータにおいて前記スポイラを駆動させるためのピストンロッドを駆動させる油圧を用いて、前記第1駆動出力を前記第2駆動出力よりも小さくする
請求項2に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記出力抑制手段は、前記ピストンロッドのピストンにより区画された第1油圧室および第2油圧室のうちの前記第2油圧室に配置され、前記ピストンロッドに対して移動可能な抵抗ピストンと、前記ピストンロッドが前記重複領域において前記第1油圧室を収縮するように移動するときに前記抵抗ピストンと接触して前記ピストンロッドの移動を規制するストッパとを備える
請求項3に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記抵抗ピストンと前記ストッパとの相対位置を調節可能な調節機能を備える
請求項4に記載の油圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の翼のスポイラを駆動する油圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、航空機の翼のスポイラを油圧アクチュエータにより駆動させるスポイラ駆動機構が用いられる構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。図5は、スポイラ駆動機構の構成の一例を示し、航空機が巡航しているときの翼100のフラップ110およびスポイラ120の状態を実線で示している。なお、実線で示されたフラップ110およびスポイラ120の位置を中立位置とする。
【0003】
スポイラ駆動機構の油圧アクチュエータ130は、スポイラ120に連結され、油圧アクチュエータ130のピストンロッド131の往復動に基づいてスポイラ120が昇降する。そしてフラップ110およびスポイラ120が高揚力構造に展開されるとき、二点鎖線で示されるように、フラップ110を駆動するアクチュエータ(図示略)によりフラップ110が中立位置から降下し、油圧アクチュエータ130によりスポイラ120が中立位置から降下する。これにより、翼100とフラップ110との間に形成された隙間Gの一部がスポイラ120により埋められる。
【0004】
また、航空機を減速させるとき、図中の破線で示されるように、油圧アクチュエータ130によりスポイラ120を中立位置から上昇させる。これにより、スポイラ120が空気抵抗となり、航空機の速度が低下する。
【0005】
このように、スポイラ120は二点鎖線の位置から破線の位置まで昇降する一方、フラップ110は二点鎖線の位置から中立位置まで昇降するため、スポイラ120の駆動範囲DSとフラップ110の駆動範囲DFとが重なる重複領域Rが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−529871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図5のスポイラ駆動機構では、スポイラ120が重複領域Rに位置した状態で電力が喪失する等の理由により油圧アクチュエータ130が駆動停止したときにフラップ110とスポイラ120とが干渉する問題がある。この問題を解決するため、図5のスポイラ駆動機構は、フラップ110とスポイラ120とが干渉したとき、油圧アクチュエータ130からスポイラ120に加えられている油圧を解放し、スポイラ120を中立位置に戻せるように駆動できる放出弁(図示略)を備えている。
【0008】
しかし、図5のスポイラ駆動機構は、放出弁が設けられるため、部品点数が増加し、それにともない油圧回路が複雑化および大型化してしまう。
本発明の目的は、スポイラ駆動機構の大型化を抑制することが可能な油圧アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一形態に従う油圧アクチュエータは、翼に取り付けられ、揚力を減少させるスポイラを駆動させる油圧アクチュエータであって、前記翼に取り付けられたフラップの駆動範囲と前記スポイラの駆動範囲とが重複する重複領域において前記スポイラを駆動させるとき、前記重複領域における前記油圧アクチュエータの駆動出力である第1駆動出力を、前記重複領域以外の前記スポイラの駆動範囲における前記油圧アクチュエータの駆動出力である第2駆動出力よりも小さくする出力抑制手段を備えるように構成されている。
【0010】
本油圧アクチュエータによれば、出力抑制手段により重複領域においてスポイラがフラップに向けて移動する力が小さくなる。このため、例えば電力が喪失することにともないスポイラがフラップに向けて移動して重複領域においてフラップにスポイラが接触したとしても、スポイラがフラップを過度な力で押すことが抑制される。したがって、図5のスポイラ駆動機構のような放出弁が必要ないため、スポイラ駆動機構の大型化を抑制することができる。
【0011】
(2)上記油圧アクチュエータに従属する一形態によれば、前記出力抑制手段は、油圧により前記第1駆動出力を前記第2駆動出力よりも小さくするように構成されている。
【0012】
本油圧アクチュエータによれば、例えば油圧アクチュエータ内の油圧を用いることにより、出力抑制手段として例えば油圧アクチュエータの駆動出力をばねにより抑制する構成と比較して、出力抑制手段を小型化することができる。なお、油圧により第1駆動出力を第2駆動出力よりも小さくする構成は、油圧アクチュエータ内の油圧に限られない。
【0013】
(3)上記油圧アクチュエータに従属する一形態によれば、前記出力抑制手段は、前記油圧アクチュエータにおいて前記スポイラを駆動させるためのピストンロッドを駆動させる油圧を用いて、前記第1駆動出力を前記第2駆動出力よりも小さくするように構成されている。
【0014】
本油圧アクチュエータによれば、出力抑制手段として油圧アクチュエータ内の油圧を用いるため、出力抑制手段として油圧アクチュエータの外部の油圧回路の油圧を用いる場合と比較して、油路を短くすることができる。したがって、出力抑制手段を小型化することができる。
【0015】
(4)上記油圧アクチュエータに従属する一形態によれば、前記出力抑制手段は、前記ピストンロッドのピストンにより区画された第1油圧室および第2油圧室のうちの前記第2油圧室に配置され、前記ピストンロッドに対して移動可能な抵抗ピストンと、前記ピストンロッドが前記重複領域において前記第1油圧室を収縮するように移動するときに前記抵抗ピストンと接触して前記ピストンロッドの移動を規制するストッパとを備えるように構成されている。
【0016】
本油圧アクチュエータによれば、抵抗ピストンがピストンロッドの移動に対する抗力となりピストンロッドの移動が制限されるため、油圧アクチュエータの第1駆動出力が第2駆動出力よりも小さくなる。またこのような構成とすることにより、油圧アクチュエータに出力抑制手段のための油圧回路が不要となり、油圧アクチュエータの大型化を抑制することができる。
【0017】
(5)上記油圧アクチュエータに従属する一形態によれば、前記抵抗ピストンと前記ストッパとの相対位置を調節可能な調節機能を備えるように構成されている。
【0018】
本油圧アクチュエータによれば、調節機能により油圧アクチュエータの第1駆動出力が第2駆動出力よりも小さくする位置、すなわち重複領域におけるスポイラがフラップを押す力を小さくする位置を適切な位置に調節することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる油圧アクチュエータによれば、スポイラ駆動機構の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態の油圧アクチュエータを備えるスポイラ駆動機構の構成図。
図2】スポイラを重複領域外で昇降させたときの図1の油圧アクチュエータの断面図。
図3】スポイラを重複領域内で昇降させたときの図1の油圧アクチュエータの断面図。
図4】変形例の油圧アクチュエータのピストンロッドの先端部を拡大した断面図。
図5】従来のスポイラおよびフラップの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照して、航空機の翼のスポイラを駆動するスポイラ駆動機構1の構成について説明する。なお、以降では、翼、スポイラ、および、フラップの説明においては、便宜上、図5のスポイラ120およびフラップ110の構成図を用いる。
【0022】
スポイラ駆動機構1は、スポイラ120を駆動させるための油圧アクチュエータ20と、油圧アクチュエータ20に油を供給する油圧源10と、油圧アクチュエータ20から排出された油を貯留するリザーバ11とを備えている。油圧アクチュエータ20、油圧源10、および、リザーバ11は、油路により接続されている。油圧アクチュエータ20と油圧源10およびリザーバ11との間には、油の流れを制御するため、制御バルブ12および油圧バルブ13が設けられている。
【0023】
油圧アクチュエータ20のハウジング21内は、スポイラ120に連結されたピストンロッド30のピストン31により第1油圧室22と第2油圧室23とに区画されている。
制御バルブ12は、例えばソレノイドバルブであり、油圧源10、リザーバ11、油圧バルブ13、および、油圧アクチュエータ20の第1油圧室22に接続されている。制御バルブ12は、第1油圧室22に油を供給し、第2油圧室23から油を排出する第1連通位置12X、第1油圧室22から油を排出し、第2油圧室23に油を供給する第2連通位置12Y、および、各油圧室22,23への油の供給および各油圧室22,23への油の排出を遮断する遮断位置12Zに切り替え可能である。制御バルブ12は、電力が供給されないとき、第2連通位置12Yとなる。
【0024】
油圧バルブ13は、例えばソレノイドバルブであり、制御バルブ12および第2油圧室23に接続されている。油圧バルブ13は、第2油圧室23と制御バルブ12とを連通する連通位置13X、および、第2油圧室23と制御バルブ12との連通を遮断する遮断位置13Yに切り替え可能である。また油圧バルブ13は、遮断位置13Yにおいて、第2油圧室23の油圧が規定値以上となるときに制御バルブ12に油を排出するリリーフ機能を備えている。
【0025】
次に、油圧アクチュエータ20の詳細な構成について説明する。なお、図1は、航空機が巡航しているときのスポイラ120の位置(以下、「中立位置」)における油圧アクチュエータ20の状態を示している。このときのピストン31の位置を中立位置PNとする。
【0026】
ハウジング21には、第1油圧室22と制御バルブ12に接続された油路とを連通する第1ポート21Aと、第2油圧室23と油圧バルブ13に接続された油路とを連通する第2ポート21Bと、ピストンロッド30が挿入される挿入孔21Cとが形成されている。挿入孔21Cを構成する内周部分には、シール部材51が取り付けられている。シール部材51は、弾性部材であり、例えばOリングである。また第1油圧室22内には、ピストンロッド30の位置を検出する位置センサ24が収納されている。なお、位置センサ24は、ハウジング21の外部に配置されていてもよい。
【0027】
ピストンロッド30は、第1油圧室22と第2油圧室23とを区画するピストン31と、位置センサ24の一部を収納する凹部32とを備えている。ピストン31の外周部分には、シール部材52が取り付けられている。シール部材52は、弾性部材であり、例えばOリングである。またピストンロッド30におけるハウジング21から突出する部分には、ピストンロッド30の移動を規制するロッドストッパ33と、スポイラ120に連結されてスポイラを駆動させる出力部34とが形成されている。なお、ロッドストッパ33は出力抑制手段のストッパに相当する。
【0028】
ピストンロッド30とハウジング21の挿入孔21Cとの間には、出力抑制手段の一例である円筒状の抵抗ピストン40がピストンロッド30とハウジング21とに対する移動が可能な状態でピストンロッド30とハウジング21の挿入孔21Cとに嵌め合わせられている。抵抗ピストン40は、第2油圧室23内において抵抗ピストン40の移動を規制する第1ストッパ41と、ハウジング21の外部において抵抗ピストン40の移動を規制する第2ストッパ42とを備えている。各ストッパ41,42は、抵抗ピストン40の端部において外側に突出する円環状に形成されている。各ストッパ41,42の外径は、ハウジング21の挿入孔21Cの内径よりも大きい。抵抗ピストン40の内周部分には、シール部材53が取り付けられている。シール部材53は、弾性部材であり、例えばOリングである。
【0029】
図1に示されるとおり、ピストン31が中立位置PNのとき、抵抗ピストン40の第1ストッパ41はハウジング21の挿入孔21Cの周縁と接触する一方、第2ストッパ42はハウジング21から離間してロッドストッパ33に接触している。
【0030】
なお、各ストッパ41,42の外径は任意に変更可能であり、本実施形態の各ストッパ41,42の外径よりも大きくても小さくてもよい。また第1ストッパ41の外径は、抵抗ピストン40に加えられる第2油圧室23の油圧に基づく力が設定範囲内となるように設定されることが好ましい。また各ストッパ41,42は、多角形等の円環状以外の形状、または抵抗ピストン40の周方向において1つまたは複数の突起からなるものであってもよい。
【0031】
また、ピストンロッド30は、抵抗ピストン40を組み付けやすくするため、ロッドストッパ33および出力部34をピストンロッド30とは個別に形成してもよい。この場合、ピストンロッド30に抵抗ピストン40を嵌め合わせた後、ロッドストッパ33および出力部34をピストンロッド30に組み付ける。
【0032】
図1図3を参照して、スポイラ駆動機構1の動作について説明する。以下の説明において、「第1移動方向W1」は、ピストンロッド30が第1油圧室22を収縮させ、第2油圧室23を膨張させる移動方向を示し、「第2移動方向W2」は、ピストンロッド30が第1油圧室22を膨張させ、第2油圧室23を収縮させる移動方向を示す。
【0033】
図1に示されるように、スポイラ駆動機構1において制御バルブ12が第1連通位置12Xに位置し、油圧バルブ13が連通位置13Xに位置するとき、油圧源10から油圧アクチュエータ20の第1油圧室22に油が供給され、第2油圧室23の油がリザーバ11に排出される。これにともない、図2の白抜き矢印により示されるように、ピストンロッド30が第2移動方向W2に移動する。これにより、スポイラ120は上方に移動する。そして、図2の二点鎖線により示されるように、ピストン31が抵抗ピストン40の第1ストッパ41に接触するとき、ピストンロッド30の第2移動方向W2への移動が規制される。
【0034】
一方、図1に示されるように、スポイラ駆動機構1において制御バルブ12が第2連通位置12Yに位置し、油圧バルブ13が連通位置13Xに位置するとき、油圧源10から第2油圧室23に油が供給され、第1油圧室22の油がリザーバ11に排出される。これにともない、図2の太線矢印に示されるように、ピストンロッド30が第1移動方向W1に移動する。これにより、スポイラ120は下方に移動する。
【0035】
ここで、ピストンロッド30が中立位置PNから第1油圧室22が収縮するピストンロッド30の移動領域によるスポイラ120の駆動範囲DSは、図5のスポイラ120の重複領域Rである。スポイラ駆動機構1は、この重複領域R内においてスポイラ120を駆動可能にする、いわゆるドループ機能を備えている。
【0036】
図3に示されるように、ピストンロッド30が中立位置PNから第1移動方向W1に移動するとき、すなわち、スポイラ120が重複領域R内において翼100とフラップ110との隙間Gを埋めるように移動するとき(図5参照)、ピストンロッド30は、ロッドストッパ33により第2ストッパ42を第1移動方向W1に押す。これにともない、抵抗ピストン40は第2油圧室23の油圧に抗してピストンロッド30と一体的に第1移動方向W1に移動する。
【0037】
一方、ピストンロッド30が第2移動方向W2に移動してピストン31が中立位置PNに復帰するとき、ピストンロッド30の移動とともに抵抗ピストン40が第2移動方向W2に移動して第1ストッパ41がハウジング21の挿入孔21Cの周縁に接触する。
【0038】
本実施形態の油圧アクチュエータ20の作用について説明する。
例えば電源喪失にともないスポイラ駆動機構1が停止したとき、制御バルブ12および油圧バルブ13に電力が供給されない。このため、制御バルブ12は第2連通位置12Yとなり、油圧バルブ13は遮断位置13Yとなる。これにより、第1油圧室22の油が流出しやすく、第2油圧室23の油が流出しにくいため、スポイラ120は、下方に移動しやすく、上方に移動しにくい状態となる。そして、例えばスポイラ120の自重によりスポイラ120が下方に移動するとき、スポイラ120は重複領域R内を移動する場合がある。
【0039】
一方、油圧アクチュエータ20は、ピストンロッド30が中立位置PNよりも第2移動方向W2に移動するとき、ロッドストッパ33が抵抗ピストン40の第2ストッパ42に接触しているため、抵抗ピストン40がロッドストッパ33の第2移動方向W2への移動の抗力となる。すなわち、抵抗ピストン40を第2移動方向W2へ移動させるためには、抵抗ピストン40の第1ストッパ41に加えられる第2油圧室23の油圧に基づく力よりも大きい力をロッドストッパ33が第2ストッパ42に与えなければならない。このため、ピストンロッド30の第2移動方向W2に移動する力は、ロッドストッパ33が第2ストッパ42に接触する前の状態のピストンロッド30の第2移動方向W2に移動する力よりも小さくなる。すなわち重複領域Rにおける油圧アクチュエータ20の駆動出力(第1駆動出力)が重複領域R以外のスポイラ120の駆動範囲DSにおける油圧アクチュエータ20の駆動出力(第2駆動出力)よりも小さくなる。
【0040】
本実施形態の油圧アクチュエータ20は、以下の効果を奏する。
(1)油圧アクチュエータ20は、出力抑制手段として、重複領域Rにおいて抵抗ピストン40とピストンロッド30のロッドストッパ33とが接触する構成を備えている。このため、重複領域Rにおいてスポイラ120がフラップ110に接触するときにスポイラ120がフラップ110を押す力が低減されるため、スポイラ120がフラップ110を過度に押し付けることを抑制することができる。そして、このような図5のスポイラ駆動機構のように放出弁が不要となるため、スポイラ駆動機構1の大型化を抑制することができる。
【0041】
(2)油圧アクチュエータ20内の油圧により抵抗ピストン40を押してピストンロッド30の第2移動方向W2への移動を抑制するため、油圧アクチュエータ20の外部の油圧回路から抵抗ピストン40を押すための油圧を供給すると仮定した構成と比較して、油路を短くすることができる。したがって、出力抑制手段を小型化することができる。
【0042】
特に、油圧アクチュエータ20の第2油圧室23の油圧により抵抗ピストン40を押してピストンロッド30の第2移動方向W2への移動を抑制するため、出力抑制手段としての専用の油圧回路が不要となる。したがって、油圧アクチュエータ20を小型化することができる。
【0043】
(変形例)
本油圧アクチュエータが取り得る具体的な形態は、上記実施形態に例示された形態に限定されない。本油圧アクチュエータは、上記実施形態とは異なる各種の形態を取り得る。以下に示される上記実施形態の変形例は、本油圧アクチュエータが取り得る各種の形態の一例である。なお、以下に示される上記実施形態の変形例は、技術的に可能な範囲において互いに組み合わせることができる。
【0044】
(変形例1)
上記実施形態において、出力抑制手段を抵抗ピストン40およびロッドストッパ33に代えて、例えば以下の(a)〜(f)のようにしてもよい。
【0045】
(a)出力抑制手段として、ハウジング21とピストンロッド30のロッドストッパ33との間に弾性部材または空気ばねを配置する。弾性部材の一例は、コイルばねである。
(b)出力抑制手段として、ハウジング21とピストンロッド30のロッドストッパ33との間に油圧シリンダからなるショックアブソーバを配置する。ショックアブソーバのピストンに固定されたロッドは、ロッドストッパ33に接続される。
【0046】
(c)出力抑制手段として、ピストンロッド30のロッドストッパ33付近に挿入孔21Cを構成する内周面とピストンロッド30との間の摩擦力が高くなる摩擦構造を設ける。摩擦構造の一例として、ピストンロッド30にラバーシートを巻き付ける。
【0047】
(d)出力抑制手段として、ピストンロッド30のロッドストッパ33に取り付けられた第1磁石と、ハウジング21においてロッドストッパ33に対向する位置に取り付けられた第2磁石とを備える。第1磁石の対向面と第2磁石の対向面との磁極は同極である。
【0048】
(e)出力抑制手段として、ハウジング21において中立位置PNよりも第1移動方向W1側の部分のピストン31との摩擦力を、ハウジング21において中立位置PNよりも第2移動方向W2側の部分のピストン31との摩擦力よりも大きくなる摩擦構造を設ける。摩擦構造の一例として、ハウジング21において中立位置PNよりも第1移動方向W1側の部分にラバーシートを取り付ける。
【0049】
(f)出力抑制手段として、第1油圧室22内に弾性部材を配置する。弾性部材の一例はコイルばねである。コイルばねは、ピストンロッド30と同軸状に配置され、ハウジング21の第1移動方向W1側の端部に固定される。ピストンロッド30が中立位置PNとなるとき、ピストン31とコイルばねとが接触し、ピストンロッド30が中立位置PNよりも第2移動方向W2に移動するとき、ピストン31がコイルばねから離れる。ピストンロッド30が中立位置PNから第1移動方向W1に移動するとき、ピストン31がコイルばねを圧縮する。
【0050】
(変形例2)
上記実施形態では、ピストンロッド30とロッドストッパ33とが単一部材として形成されているが、ピストンロッド30とロッドストッパ33とは個別に形成されてもよい(図4参照)。この場合、ピストンロッド30においてロッドストッパ33がねじ込まれる。これにより、ピストンロッド30に対するロッドストッパ33の位置を調節することができる。このため、ピストンロッド30のピストン31の中立位置PNを調節することができる。なお、抵抗ピストン40の第1ストッパ41を同様に個別に形成し、抵抗ピストン40に第1ストッパ41にねじ込むことによりピストン31の中立位置PNを調整する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
20 …油圧アクチュエータ
22 …第1油圧室
23 …第2油圧室
30 …ピストンロッド
31 …ピストン
33 …ロッドストッパ(ストッパ、出力抑制手段)
40 …抵抗ピストン(出力抑制手段)
100…翼
110…フラップ
120…スポイラ
G …隙間
R …重複領域
DF …フラップの駆動範囲
DS …スポイラの駆動範囲
図1
図2
図3
図4
図5