(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362994
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/427 20060101AFI20180712BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20180712BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20180712BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
B60N2/427
B60R21/207
B60N2/68
F16F15/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-215387(P2014-215387)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-78798(P2016-78798A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【復代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】福田 秀穂
(72)【発明者】
【氏名】下野 博賢
【審査官】
森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−263181(JP,A)
【文献】
特開2011−140269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/427
2/68
B60R 21/207
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのシートバックの側方に設置するサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させるインフレータと、
を備え、
前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置したことを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、シートのヘッドレスト側と着座部側に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記サイドフレームの間にも設置されていることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記バックプレートは、前記エアバッグを前記シートバックに設置した時に、前記エアバッグとの間に隙間を有するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグは、前記背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの両外側に設置され、前記背もたれ部にはダンパーを設けないことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両が側面から衝突された時(以下、側面衝突時という。)に、乗員を保護するため、車両のシートに設置するサイドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンや回転軸等から発生する振動を低減するため、例えば自動車には種々のダンパーが設置されている。そして、シートにも、シートの剛性不足等によるシートバックの振動を低減するために、ダンパーが設置されるようになってきており、このダンパーは、通常、シートバックの背もたれ部の幅方向中央に一つ設置されている(例えば特許文献1の
図6(a)参照。)。
【0003】
一方、サイドエアバッグ装置は、シートバックの窓側(以下、ニアサイドという。)に設置されるのが一般的である(例えば特許文献2の
図2参照)。具体的には、サイドエアバッグ装置は、シートバックを構成するサイドフレームに取付けられる。
【0004】
しかしながら、今後、乗員の安全性向上のため、シートバックのニアサイドだけでなく車幅方向の中心側(以下、ファーサイドという。)にも設置することが多くなってきている。この場合、ニアサイドとファーサイドのサイドフレーム間に位置する背もたれ部の幅が狭くなる等、レイアウト上の問題から、前記ダンパーの設置可能領域が狭小になって、適切なダンパー性能を確保することが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−312984号公報
【特許文献2】特開2012−76545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする問題点は、乗員の安全性向上のため、シートバックの両サイドにサイドエアバッグ設置を設置する場合、ダンパーのシートバックへの設置可能領域が狭小になって、適切なダンパー性能を確保することが難しくなるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、乗員の安全性向上のため、シートバックの両サイドにサイドエアバッグ設置を設置する場合でも、ダンパー性能を確保してシートバックの振動を効果的に抑制することを目的としている。
【0008】
すなわち、本発明は、
シートのシートバックの側方に設置するサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させるインフレータと、
を備え、
前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置したことを最も主な特徴としている。
【0009】
本発明は、エアバッグを、シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して設置しているので、インフレータを内部に設けたエアバッグが錘として働き、係止部材まで含めた構造体がダンパーとして作用する。
【0010】
本発明において、サイドフレームに設置したエアバッグの展開時に、エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設けた場合には、エアバッグの展開方向の制御性が向上する。
【0011】
エアバッグがダンパーとして作用することを阻害しないようにするためには、前記バックプレートは、エアバッグをシートバックに設置した時に、エアバッグとの間に隙間を有するように設ける必要がある。
【0012】
本発明において、乗員の安全性向上のため、背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの両外側にエアバッグを設置した場合は、背もたれ部にダンパーを設置しなくても、適切なダンパー性能を確保することができる。
【0013】
本発明において、エアバッグは、シートのヘッドレスト側と着座部側に設けた係止部材だけで保持しても良いが、さらに、エアバッグとサイドフレームの間や、バックプレートを設置している場合は、エアバッグとバックプレートの間に係止部材を設置しても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、シートバックを構成する背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介してエアバッグを設置している。従って、インフレータを内部に設けたエアバッグが錘として働き、係止部材まで含めた構造体をダンパーとして作用させることができ、エアバッグ部においてもシートバックの振動を低減することができる。
【0015】
また、エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設けた場合には、エアバッグの展開方向の制御性を向上することができる。
【0016】
本発明において、乗員の安全性向上のため、背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの両外側にエアバッグを設置した場合は、背もたれ部のダンパーを省略しても、シートバックの振動を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】シートバックに設置した状態の本発明のサイドエアバッグ装置の第1の例を示した図で、(a)はシートの正面方向から見た図、(b)は斜視図、(c)は(b)のエアバッグ設置部分の拡大図、(d)はシートの側面方向から見た図である。
【
図2】(a)はシートバックに設置した状態の本発明のサイドエアバッグ装置の第2の例を示した、シートの側面方向から見た図、(b)は(a)の他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
乗員の安全性向上のため、シートバックの両サイドにサイドエアバッグ設置を設置する場合、シートバックへのダンパーの設置可能領域が狭小になって、適切なダンパー性能を確保することが難しくなる。
【0019】
本発明は、シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介してエアバッグを設置している。従って、インフレータを内部に設けたエアバッグが錘として働き、係止部材まで含めた構造体がダンパーとして作用して前記の課題を解決するものである。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本発明のサイドエアバッグ装置の第1の例を説明する図である。
【0021】
1はサイドエアバッグ装置であり、エアバッグ2と、センサーからの出力信号を受信して側面に設けた噴出孔からガスを噴出するインフレータ3を備えている。このうち、エアバッグ2は、例えば2枚の基布の周囲を縫製して袋状に形成した構成であり、当該エアバッグ2の内部に前記インフレータ3を配置している。
【0022】
前記エアバッグ2は、シートバック4の背もたれ部4aの車幅方向の両側に配置されたサイドフレーム4bの、例えば両外側に設置され、側面衝突時、車両の前方向にエアバッグ2を展開して乗員を保護する。
【0023】
本発明は、インフレータ3の側面から突き出したスタッドボルトを用いて前記サイドフレーム4bの外側にエアバッグ2を設置するのではなく、係止部材5を介してサイドフレーム4bの外側に設置することが特徴である。
【0024】
その際、インフレータ3を内部に設けたエアバッグ2を含む構造体がダンパーの働きをするように、前記係止部材5には、弾性変形が可能なゴム或いはコイルスプリングなどを使用する。
【0025】
図1に示す第1の例では、前記サイドフレーム4bの外側にブラケット6を取付け、このブラケット6のヘッドレスト側部と着座部側部に前記係止部材5を設置してエアバッグ2を保持している。なお、
図1中の7はシートのヘッドレスト、8はシートの着座部をそれぞれ示す。
【0026】
上記構成の本発明のサイドエアバッグ装置1は、比較的重量を有するインフレータ3を内部に設けて、折り畳んだ状態で長さも有するエアバッグ2を錘として、係止部材5まで含めた構造体をダンパーとして使用するものである。
【0027】
すなわち、インフレータ3を内部に設けたエアバッグ2と、弾性変形が可能な係止部材5により構成される振動系の作動によって、シートバック4に発生する振動を抑制するのである。
【0028】
従って、乗員の安全性向上のため、サイドフレーム4bの両外側にエアバッグ2を設置した場合は、シートバック4にダンパーを設置しなくても、ダンパーを設置した場合と同等の振動抑制効果を得ることができる。
【0029】
次に、
図2に示す本発明のサイドエアバッグ装置の第2の例について説明する。
【0030】
図2に示す本発明のサイドエアバッグ装置1は、サイドフレーム4bに設置したエアバッグ2の展開時に、エアバッグ2の展開方向と反対側、すなわち、車両の後側を支持するバックプレート9を更に設けたものである。
【0031】
図2では、前記バックプレート9を、エアバッグ2をシートバック4に設置した時に、エアバッグ2との間に隙間を有するように、サイドフレーム4bに設置したものを示している。
【0032】
このようなバックプレート9を更に設けた場合には、インフレータ3を内部に備えたエアバッグ2を含む構造体がダンパーとして作用するのを阻害することなく、エアバッグ2の展開時、エアバッグ2が展開方向と反対の方向に展開するのを阻止することができる。
【0033】
バックプレート9は、前記作用を奏するものであれば、
図2(a)に示すように、設置状態のエアバッグ2の全長に亘る長さを有するものであっても、
図2(b)に示す様に、設置状態のエアバッグ2の全長方向に分割したものであってもよい。
【0034】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0035】
すなわち、以上で述べたサイドエアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0036】
例えば、
図1、
図2に示した例では、ヘッドレスト側と着座部側に係止部材5を設置してエアバッグ2を保持しているが、さらに、エアバッグ2とサイドフレーム4bの間に係止部材5を設置しても良い。
【0037】
また、
図2に示した第2の例のように、バックプレート9を設置している場合は、エアバッグ2とバックプレート9の間に係止部材5を設置しても良い。
【0038】
これら、エアバッグ2とサイドフレーム4bの間や、エアバッグ2とバックプレート9の間に設置する係止部材5は、エアバッグ2をシートバック4に設置した状態では、必ずしもエアバッグ2に当接していなくても良い。
【0039】
また、
図1、
図2に示した例では、サイドフレーム4bの両外側にエアバッグ2を設置しているが、ニアサイド或いはファーサイドのどちらか一方のみにエアバッグ2を設置したものでも良い。但し、この場合はシートバック4の背もたれ部4aにダンパーを設置することが望ましい。
【0040】
また、
図2に示した例では、バックプレート9はサイドフレーム4bに設置したものを示しているが、ブラケット6に一体に形成しても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 サイドエアバッグ装置
2 エアバッグ
3 インフレータ
4 シートバック
4a 背もたれ部
4b サイドフレーム
5 係止部材
6 ブラケット
7 ヘッドレスト
8 着座部
9 バックプレート