(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362998
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】運動場の排水構造
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20180712BHJP
E01C 13/00 20060101ALI20180712BHJP
E01C 13/02 20060101ALI20180712BHJP
E01C 13/08 20060101ALI20180712BHJP
E01C 11/22 20060101ALI20180712BHJP
E03F 5/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
E03F1/00 A
E01C13/00 A
E01C13/02
E01C13/08
E01C11/22 A
E03F5/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-221622(P2014-221622)
(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-89378(P2016-89378A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】桝村 進一
(72)【発明者】
【氏名】濱本 剛
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−076206(JP,A)
【文献】
特開2005−200964(JP,A)
【文献】
特開2001−059257(JP,A)
【文献】
特開2010−203210(JP,A)
【文献】
特開平08−260410(JP,A)
【文献】
特開2011−137354(JP,A)
【文献】
特開平05−247904(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0178542(US,A1)
【文献】
特開2008−291498(JP,A)
【文献】
特開2008−163637(JP,A)
【文献】
特開2002−070126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/22
E01C 7/14
E01C 13/00
E01C 13/02
E01C 13/08
E03F 1/00
E03F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝を有する運動場の排水構造であって、
透水性を有する表面層と、
少なくとも前記表面層の下に埋設される樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽、および、
前記雨水貯留浸透槽と前記側溝とを連通する連通部で構成され、
前記側溝の側壁と前記雨水貯留浸透槽の側面側の上部とは前記連通部によって連通され、
前記連通部の両端に形成された開口のうち、前記雨水貯留浸透槽側に形成された開口は、前記側溝の底面よりも高い位置に形成され、前記側溝側に形成された開口は、前記側溝の前記側壁のうち、前記側溝の前記底面から上方に間隔をあけた部分に形成されており、
雨水は前記表面層を介して前記雨水貯留浸透槽へ流入するとともに、前記側溝から前記連通部を介して前記雨水貯留浸透槽へ流入し、
前記表面層は人工芝部材と透水性の緩衝材から構成されていることを特徴とする運動場の排水構造。
【請求項2】
前記雨水貯留浸透槽は、前記表面層の全面またはその一部に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の運動場の排水構造。
【請求項3】
前記表面層は運動場の全面またはその一部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の運動場の排水構造。
【請求項4】
前記雨水貯留浸透槽は透水性シートにより覆われていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の運動場の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動場の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
野球、サッカーあるいはラグビーなど、各種のスポーツを行う屋外の運動場では、運動場表面に雨水が長時間にわたって滞留しないように、通常、適宜の排水構造が設けられている。特許文献1、2には、その一例が記載されており、特許文献1には、運動場の表層と該表層の下に設けられた団粒構造安定化材を用いて得られた耐水性団粒構造土からなる雨水貯留槽とを有する雨水貯留施設であって、前記表層と雨水貯留層とに隣接して砕石を充填してなる透水部を設け、前記表層上の雨水および側溝からの雨水が該透水部を経て前記雨水貯留層に流入するようにしたものが記載されている。また、特許文献2には、運動場の表面層の下に透水性の暗渠を設けるとともに、周囲には排水用の側溝を設けるようにし、表面層から下方に浸透する雨水は暗渠内に流入し、時間とともに暗渠内から地盤中に排水され、表面層上を流れる雨水は側溝内に流入して、運動場外に排出するようにした排水構造が記載されている。
【0003】
一方、地中に雨水貯留浸透槽を構築する場合や、雨水貯留浸透槽を造る場所の地盤が軟弱地盤の場合に、樹脂材料を構造材とする貯水空間形成部材を多段に積み上げ、その周囲を透水シートで覆うようにした、構造物としての雨水貯留浸透槽を形成することが行われており、その一例が、特許文献3、4等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−70126号公報
【特許文献2】特開2009−102913号公報
【特許文献3】特開2010−127052号公報
【特許文献4】特開2009−24447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋外の運動場に設けられる排水構造は、過去の降雨量を基準に設計されており、降雨量が設計値の範囲内であれば適切な排水能力を示し、雨水は運動場表面に滞留することはない。しかし、近年、短時間内に過去の降雨量データを大きく上回る量の降雨を伴う、いわゆる集中豪雨が頻繁に発生するようになってきており、従来の運動場に設けた排水構造では、このような集中豪雨に対して適切に排水対処を施すことができなくなっている。特許文献1に記載のように、表面層の下に耐水性団粒構造土からなる雨水貯留槽を設ける排水構造では、雨水貯留槽それ自体の容積を大きくすることで、集中豪雨に対してある程度の対応が可能になると思われるが、耐水性団粒構造土を用いた雨水貯留槽では槽内に大きな空隙率を確保するのが困難であり、集中豪雨に適切に対処できるだけの貯水空間を持った雨水貯留槽を実際に施工することは困難である。また、特許文献2に記載の排水構造では、雨水処理能力に自ずと限度があり、側溝で処理しきれなかった雨水や暗渠内に流入できなかった雨水は、運動場の表面層上に長時間にわたって滞留した状態となって運動場の使用を妨げる。
【0006】
本発明は、ゲリラ豪雨のような集中豪雨に対しても適切に雨水の処理を行うことのできる運動場の排水構造を提供することを課題としており、より具体的には、一時的に予定を上回る量の降雨があった場合でも、その雨水が運動場の表面層上に滞留してしまうのを確実に回避できるようにした、より改良された運動場の排水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による運動場の排水構造は、側溝を有する運動場の排水構造であって、透水性を有する表面層と、少なくとも前記表面層の下に埋設される樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽、および、前記雨水貯留浸透槽と前記側溝とを連通する連通部で構成され、前記側溝の側壁と前記雨水貯留浸透槽の上部とは前記連通部によって連通され、雨水は前記表面層を介して前記雨水貯留浸透槽へ流入するとともに、前記側溝から前記連通部を介して前記雨水貯留浸透槽へ流入することを特徴とする。
【0008】
本発明による運動場の排水構造では、好ましくは、運動場の外周に側溝が配置され、運動場の側溝に雨水が流入しやすいように、中央から周囲に向かって勾配が形成されている。通常の降雨時においては、表面層上に降った雨水は、表面層を透過して表面層下の地盤および樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽内に流入するとともに、表面層上を流れて側溝内にも流入する。樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽内に流入した雨水は、時間とともに周囲の地盤に次第に浸透していく。側溝内に流入した雨水は、集水桝等を介して運動場外の排水処理部に流出する。
【0009】
集中豪雨時には、外部の排水処理部に流出できる量以上の雨水が側溝内に一時的に流入し、側溝内の水位が上昇していく。側溝内の水面が側溝の側壁に位置する前記雨水貯留浸透槽と前記側溝とを連通する連通部の流入口のレベルにまで達すると、雨水は連通部内に流入し、そこを通って雨水貯留浸透槽内に流入する。流入した雨水は一時的に該雨水貯留浸透槽内に滞留しつつ、時間とともに周囲の地盤内に浸透していく。
【0010】
すなわち、本発明による運動場の排水構造では、集中豪雨時等に、側溝内の雨水レベルが所要の高さに達したときに、側溝内の雨水は、側溝から前記連通部を通って雨水貯留浸透槽内に流入する。そのために、側溝から雨水が溢れ出ることはなくなり、運動場の表面層上に雨水が滞留した状態となるのを回避することができる。
【0011】
さらに、本発明による運動場の排水構造では、前記連通部は、前記側溝の側壁と前記雨水貯留浸透槽の上部とを連通する位置に備えられている。そのために、側溝側での水位と雨水貯留浸透槽側での水位がともに連通部よりも下位にある場合に、すなわち、降雨がない場合あるいは通常の降雨量の場合には、前記連通部は通気孔としての機能を果たすことができる。連通部が通気孔として機能することで、樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽の上部およびその近傍の透水性の表面層の表面温度が上昇するのを抑制できるようになる。
【0012】
樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽への雨水の時間当たりの流入量と該雨水貯留浸透槽からの雨水の地盤中への時間当たりの浸透量との関係で、樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽が満水状態となってしまい、雨水が側溝から溢れ出ることが起こりうる。そのような場合には、運動場の表面層上に雨水が滞留することとなるので、そのような事態が生じるのを避ける必要がある。実際の排水構造の設計にあたっては、安全率を考慮した上で予想される集中豪雨時での最大設計降雨量を設定し、その値をベースとして、樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽の有効貯水容積および側溝の断面積等を設定する。
【0013】
本発明による運動場の排水構造では、雨水貯留浸透槽として、限定されないが例えば前記した特許文献3、4に記載されるような、樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽を採用している。樹脂材料を構造材として用いることで、所要の強度を確保しながら、雨水貯留浸透槽として高い空隙率を確保することができ、雨水貯留浸透槽としての単位容積あたりの雨水貯水量を大きくすることができる。また、雨水貯留浸透槽それ自体が構造物であり、かつ構造材として樹脂材料を用いているので、任意の容積の雨水貯留浸透槽を地盤中に容易に埋設施工することもできる。
【0014】
本発明による運動場の排水構造において、表面層および表面層の下における雨水貯留浸透槽の配置位置および側溝の配置位置に特に制限はなく、運動場としての本来の機能が阻害されない限りにおいて、任意の位置に配置することができる。好ましい一態様では、前記表面層は運動場の全面またはその一部に設けられていることを特徴とする。全面に設ける場合には、運動場のほぼすべての領域を運動場本来の目的に使用できる利点がある。また、既存の運動場に対して容易に本発明による排水構造を後施工できる利点もある。また、運動場の主要部分には、従来と同様に、適宜の暗渠を配置することもでき、その場合には、排水性は一層向上する。
【0015】
好ましい他の態様では、前記雨水貯留浸透槽は運動場の全面またはその一部に設けられていることを特徴とする。全面に設ける場合には、雨水貯留浸透槽の容積を大きくとることが可能であり、側溝から雨水が溢れ出て運動場の表面層上に滞留してしまうのを、一層確実に回避することができる。
【0016】
本発明による運動場の排水構造において、運動場の表面層が透水性の表面層であることを条件に、運動場の他の構成に制限はない。好ましい一態様では、前記表面層は人工芝部材と緩衝材から構成されていることを特徴とする。表面層が人工芝であることで、運動場のメンテナンスが容易となり、また、前記雨水貯留浸透槽と前記人工芝との間に浸透性を備えた緩衝材が配置されることで、雨水貯留浸透槽に対する上からの衝撃を緩和することができる。
【0017】
本発明による運動場の排水構造の一態様では、前記雨水貯留浸透槽は透水性シートにより覆われていることを特徴とする。この態様では、砂などが雨水貯留浸透槽内に入り込むのを防止することができ、雨水貯留浸透槽の有効容積を長期にわたり維持することができる。
【0018】
本発明による運動場の排水構造において、「運動場」の語は、不特定あるいは特定の者によって運動が行われる領域を指す言葉として用いている。例として、野球場、サッカー場、ラグビー場等の球技場や、陸上競技場、サイクルスポーツ場などが含まれる。また、学校の校庭なども含まれる。すなわち、野球場でいえば、フェアグラウンドだけでなくファウルグラウンドを含み、サッカー場でいえば、インフィールドだけでなくアウトフィールドを含む概念である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、集中豪雨のように、短時間で大量の降水量を伴う集中豪雨があった場合でも、運動場の表面から雨水を迅速に排除することができ、運動場表面に雨水が長時間にわたって滞留するのを確実に回避することができるようにした、より改良された運動場の排水構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による運動場の排水構造の一実施の形態を説明するための模式的平面図。
【
図3】樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明による運動場の排水構造の一実施の形態を説明するための模式的な平面図である。この例で、運動場1は、サッカーあるいはラグビー用の運動場であり、平面視で矩形状をなしている。運動場1の例えば幅2m程度の外周領域2内には、排水のためのU字型側溝3と樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4とが設けられている。この例において、U字型側溝3は運動場1の全周にわたって形成され、U字型側溝3より内側には、所要の間隔をおいて樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4の適数個が埋設されている。前記雨水貯留浸透槽4の上面域を含む運動場1の表面には、この例では人工芝部材6が敷き詰められており、透水性の表面層5を形成している。
【0022】
図2は、
図1のA−A線による断面図である。運動場1の主要部は、地盤7の上に砕石8等による均平化処理が施され、その上に、必要に応じて透水性のアスファルト層(不図示)が設けられ、その上に、人工芝部材6が配置されている。人工芝部材6は従来知られたものを適宜用いることができる。
図4は、人工芝部材6を用いた運動場の一例を示しており、ここでは、芝糸101を基布102に植設し、この基布102の裏面にバッキング材103を塗布して芝糸101を固定し、前記植設された芝糸101間に粒状体を充填して粒状体層105を設けた人工芝部材6としている。この人工芝部材6を表面層として透水性のアスファルト層などである基礎層106上に敷設することで運動場としている。この形態の人工芝部材6においては、前記粒状体層105が、弾性粒状体と硬質粒状体とが配合された混合物からなる中層111の上と下とにそれぞれ弾性粒状体のみからなる上層112と下層113とを備えた3層で形成されることにより、前記中層111の硬質粒状体の一部が粒状体層105の中を移動した場合においても、前記硬質粒状体が下層113の弾性粒状体層に取り込まれるので、硬質粒状体のみの層が形成されることがない。なお、この形態の人工芝製運動場は、特許第5341401号公報に記載されている。
【0023】
前記したように、運動場1の外周領域2の外縁には全周にわたってコンクリート製のU字型側溝3が設けられており、U字型側溝3は透水性の蓋31を備えるとともに、側壁32には適所に貫通孔33が形成されている。もちろん、蓋31には雨水が流入するための貫通孔が形成されていてもよく、格子状に孔が形成されていてもよい。また、U字型側溝3は透水性のコンクリート製であってもよい。
【0024】
U字型側溝3の内側の側壁32に接するようにして、前記した樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4の適数個が地盤7中に埋設された状態で配置されている。
図3は、樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4の一例を示している。
図3において、40は、樹脂材料製(例えば、ポリプロピレン系樹脂製)の構造材である貯水空間形成部材であり、多数枚の縦方向構造体41が断面ハ字状にかつ山形をなすようにして連続した形状をなしている。貯水空間形成部材40は、全体としての上面と下面は実質的に平行をなしており、隣接する縦方向構造体41の上端縁同士は、長手方向に凹部42と凸部43を有する上端面44で接続し、下端縁同士は、上端面44に形成された凸部43の領域が入り込むことのできる開口を有する下端面45で連続している。同じ形態の貯水空間形成部材40が、図示のように、90度向きを変えながら多段に積み上げられることで雨水貯留浸透槽4とされ、該雨水貯留浸透槽4における各縦方向構造体41の間に存在する空間が、貯水のための空間46として利用される。また、図示の例において、雨水貯留浸透槽4を構成する多段に積み上げた貯水空間形成部材40における最上段の貯水空間形成部材40aの上面には蓋部材47が配置されており、雨水貯留浸透槽4の上面を平坦面にしている。
【0025】
なお、上記構成の雨水貯留浸透槽4は前記特許文献3に記載されている。本発明において、樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4はこれに限ることなく、例えば、前記特許文献4に記載される形態のものなど、従来知られた樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽を適宜選択して用いることができる。
【0026】
施工に当たっては、最初に運動場1の表面に対して砕石8等による均平化処理を行う。次に、周辺領域2の例えば幅約2mの範囲を、U字型側溝3および樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4を埋め込むために掘削する。掘削底面に対して砕石等による均平化処理を行った後、掘削領域の外側部分に、U字型側溝3を埋め込む。その際に、U字型側溝3に蓋31をした状態で、蓋31の上面と運動場1の表面層5の上面とがほぼ一致するようする。
図4に示した形態の人工芝部材6を用いる場合には、配置する人工芝部材6の前記粒状体層105の上面のレベルと蓋31の上面とがほぼ一致するようにする。
【0027】
次に、前記掘削面に不織布のような透水性シート9を配置し、その上に、前記した貯水空間形成部材40を多段に配置して雨水貯留浸透槽4を形成し、その周囲を前記した透水性シート9で覆う。そして、省略可能であるが、最上位の貯水空間形成部材40aの上に前記した蓋部材47を配置する。なお、設置にあたっては、U字型側溝3の内側の側壁32と雨水貯留浸透槽4の側面とが密接した状態となるように施工する。
【0028】
貯水空間形成部材40の数と段数を変えることにより、所要の貯水容積を持つ樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4を容易に形成することができる。雨水貯留浸透槽4の横幅は、掘削溝の幅からU字型側溝3の幅を差し引いた幅とほぼ同じであることが望ましく、高さは、掘削溝内に設置したときに、その上面が、前記したU字型側溝3の側壁32の上位部に形成した貫通孔33の位置よりも少し上に位置する高さであることが好ましい。
【0029】
次に、埋め込んだ樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4の上面に、透水性の緩衝材10を配置する。配置する透水性の緩衝材10の厚みは、配置後の緩衝材40の上面のレベルと運動場1の前記した均平化処理後の砕石8の層の上面のレベルとがほぼ一致する厚みとする。なお、緩衝材10を配置した後に、雨水貯留浸透槽4と緩衝材10との全体を前記した透水性シート9で覆うようにしてもよい。最後に、前記U字型側溝3を除いた運動場1の表面に、前記した人工芝部材6を敷き詰めることで、本発明による運動場の排水構造は完成する。
【0030】
なお、側溝3の貫通孔33は、雨水貯留浸透槽4の最上位の位置に対応するように設けられる。すなわち、蓋部材47を配置する場合には、蓋部材47の上面の位置を基準として貫通孔33が位置するようにされている。
【0031】
上記の運動場の排水構造において、U字型側溝3の側壁32に形成した貫通孔33は、樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4の側面に直接接した状態となっている。そのために、もし貫通孔33から雨水貯留浸透槽4に向けて水を送り込むと、水は、貫通孔33から直接的に雨水貯留浸透槽4内に流入する。したがって、上記の運動場の排水構造では、前記「貫通孔33」が、本発明でいう「雨水貯留浸透と前記側溝とを連通する連通部」をも構成していることとなる。
【0032】
もし、「貫通孔33」のみでは、漏れが生じて雨水の雨水貯留浸透槽4への移動が円滑に進まない場合には、あるいは、U字型側溝3の貫通孔33を形成した側壁32の面と雨水貯留浸透槽4の側面との間に隙間がある場合には、「貫通孔33」の出側と雨水貯留浸透槽4の内部とを連通する適宜の導水部材を別途配置する。この場合には、別途配置する「導水部材」が本発明でいう「連通部」を構成する。
【0033】
なお、前記した透水性の緩衝材10は従来知られたものを適宜用いることができる。一例として、特開2004−232365号公報に記載される、ゴム等の軟質チップをポリアミド繊維入り結着剤で相互に結着してなる透水性の緩衝材、特開平5−247904号公報に記載される、加硫ゴム粉砕物および加硫ゴムスポンジ粉砕物のうちの少なくとも該加硫ゴムスポンジ粉砕物からなり、かつ該粉砕物を互いに接着させてなる透水性クッション材層と、該クッション材層の両表面のうちの少なくとも一方の面上に接着される透水性シート層と、からなることを特徴とする弾性舗装材などを挙げることができる。もちろん、上述した透水性のアスファルト層と基礎層106との積層部材などであってもよい。
【0034】
図示しないが、運動場1のU字型側溝3および雨水貯留浸透槽4を配置した領域以外の領域に、従来の運動場で行われていると同様に、適数本の透水性の暗渠を設けることもできる。その場合、暗渠は、外部の排水処理部に接続するようにしてもよい。また、運動場1の表面には、U字型側溝3に向けてわずかな傾斜が設けられる。
【0035】
次に、上記運動場の排水構造の平常時および集中豪雨時での挙動を説明する。降雨がないときには、U字型側溝3および樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4には雨水の滞留はなく、空の状態である。このときは、雨水貯留浸透槽4の内部空間46、すなわち雨水貯留空間として機能する内部空間46は、U字型側溝3の側壁32に形成した貫通孔33を介して外気と連通した状態となっており、その通気により運動場1の表面層5である人工芝部材6の表面温度の上昇を抑制することができる。もちろん、雨水が雨水貯留浸透槽4内に滞留していても同様の効果を有する。
【0036】
通常レベルの降雨があるときには、運動場1の表面である人工芝部材6に降りそそぐ雨は、一部は、人工芝部材6を透過し、砕石8の層を透過し、地盤7中に浸透する。一部は、人工芝部材6を透過し、透水性の緩衝材10を透過し、雨水貯留浸透槽4内に流下して、雨水貯留浸透槽4内に一時的に滞留する。その後、透水性シート9を通って、地盤7中に浸透していく。さらに雨水の一部は、人工芝部材6の表面をU字型側溝3に向けて流れていき、U字型側溝3内に流入する。流入した雨水は、図示しない外部の雨水処理施設に入り込み、河川等に排水される。通常の降雨量では、U字型側溝3内に流入した雨水のレベルが、U字型側溝3の側壁32に形成した貫通孔33のレベルに達することはなく、貫通孔33を介しての雨水貯留浸透槽4と外気との連通は維持される。
【0037】
集中豪雨時のように、大量の降雨があったときにも、一部の雨水は人工芝部材6を透過して砕石8の層を透過し、地盤7中に浸透する。また、一部は人工芝部材6を透過し透水性の緩衝材10を透過して雨水貯留浸透槽4内に流入する。残りの雨水は、人工芝部材6の表面をU字型側溝3に向けて流れU字型側溝3内に流入する。降雨量が膨大である場合に、U字型側溝3内に流入する雨水の量が、外部の雨水処理施設への流出量を超えてしまうことが起こる。
【0038】
その状態となると、U字型側溝3内の水位レベルは次第に上昇していき、当該U字型側溝3の側壁32に形成した貫通孔33のレベルにまで達する。それ以降は、雨水は前記した連通部として機能する前記貫通孔33を通って雨水貯留浸透槽4内に流入していく。それにより、雨水がU字型側溝3から溢れ出るのを回避することができる。前記貫通孔33を通って雨水貯留浸透槽4内に流入した雨水は、一時的に雨水貯留浸透槽4内に滞留しつつ、透水性シート9を透過して時間とともに周囲の地盤7内に浸透していく。
【0039】
上記のように、本発明による運動場の排水構造では、一時的に大量の降雨がある場合でも、降雨の一部を樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4内に貯留しかつ地盤中に浸透させることで、雨水がU字型側溝3から溢れ出る事態となるのを回避することができる。それにより、運動場の表面に雨水の滞留が生じるのを阻止できるとともに、運動場の外が洪水状態となるのも阻止することができる。
【0040】
図示しないが、樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽4を運動場1の外周領域2の全周にわたって配置することもできる。また、運動場1の実質的な全表面領域に配置することもできる。このようにすることで、雨水貯留浸透槽4の高さを大きくすることなく、有効雨水貯留溶量を大きくすることが可能となり、施工が容易でありながら、集中豪雨に対するさらに高い安全性を確保することができる。また、雨水貯留浸透槽4は、前記した樹脂材料製の構造材である貯水空間形成部材40を90度に向きを変えながら積層することで構成されるものであり、その施工が容易であるとともに、任意の容積を持つ雨水貯留浸透槽4を容易に構築することができる。さらに、既存の運動場に対しても容易に後施工することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…運動場、
2…運動場の外周領域、
3…排水のためのU字型側溝、
31…U字型側溝の蓋、
32…U字型側溝の側壁、
33…側壁に形成した貫通孔(雨水貯留浸透槽と側溝とを連通する連通部)、
4…樹脂材料を構造材とする雨水貯留浸透槽、
40…樹脂材料製の構造材である貯水空間形成部材、
46…雨水を貯水するための空間、
47…蓋部材、
5…運動場の表面層、
6…人工芝部材、
7…地盤、
8…砕石、
9…透水性シート、
10…透水性の緩衝材。