(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363001
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】積層体の巻取方法及び巻取りロール
(51)【国際特許分類】
B65H 75/28 20060101AFI20180712BHJP
B65H 75/10 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
B65H75/28
B65H75/10
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-227945(P2014-227945)
(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-88725(P2016-88725A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】神田 敏満
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
【審査官】
冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−153514(JP,A)
【文献】
特開2007−246192(JP,A)
【文献】
特開2009−242059(JP,A)
【文献】
特開2011−184152(JP,A)
【文献】
特開2000−318930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H18/00−19/30、21/00−21/02、75/00−75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状で長尺のウェブを複数積層してなる積層体を円筒状の巻芯に巻き取る積層体の巻取方法において、
積層体を構成する複数のウェブを巻き取り時に最内周に位置するウェブから最外周に位置するウェブまで積層順に複数グループに組み分けし、
巻芯の外周面に緩衝材を巻き付け、緩衝材の外周面に積層体の各グループのウェブの端部を外周側のグループほど巻取回転方向側に位置するようにグループ毎に位置を異ならせて固定すると共に、緩衝材に各グループのウェブの端部に沿うようにグループ毎に位置を異ならせて切り込みを形成した後に、積層体の巻き取りを行うことを特徴とする積層体の巻取方法。
【請求項2】
円筒状の巻芯と、巻芯の外周面に巻き付けられる緩衝材と、緩衝材の外周面に巻き付けられる、帯状で長尺のウェブを複数積層してなる積層体とを備える巻取りロールにおいて、
積層体を構成する複数のウェブが巻き取り時に最内周に位置するウェブから最外周に位置するウェブまで積層順に複数グループに組み分けされ、
緩衝材の外周面に積層体の各グループのウェブの端部が外周側のグループほど巻取回転方向側に位置するようにグループ毎に位置を異ならせて固定されると共に、緩衝材に各グループのウェブの端部に沿うようにグループ毎に位置を異ならせて切り込みが形成されていることを特徴とする巻取りロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状で長尺のウェブを複数積層してなる積層体を円筒状の巻芯に巻き取る積層体の巻取方法、及びこの積層体が円筒状に巻き取られた巻取りロールに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムやプラスチックシート等の帯状で長尺のウェブを円筒状の巻芯に巻き取る方法が、例えば特許文献1で知られている。このものでは、巻芯の外周面に緩衝材を巻き付け、この緩衝材に設けられた溝の内部にウェブの端部を落とし込んで固定した後に、ウェブの巻き取りを行っている。
【0003】
このものでは、ウェブ端縁が溝内に位置して、緩衝材の外周面にウェブ端縁による段差が発生しなくなる。然し、溝のエッジ部分に当接するウェブの部分に巻締めによる押付力とその反力とが集中して作用し、その結果として芯痕が発生する。この芯痕は、その上に巻重ねられた2周目以降のウェブの部分にも転写される。特に光拡散フィルムのような光学系用途のウェブの場合、このような芯痕は目立ちやすく、歩留まりを向上させる上で、芯痕の発生を抑制する必要がある。また、当該緩衝材はとても柔らかい物であり、溝を特定の角度を有するように精度良く作成することは、非常に高度な技術を必要とするものである。そこで、本出願人は、先願(特願2014−226300)にて、巻芯の外周面に巻き付けた緩衝材の外周面に固定されるウェブの端部に沿って緩衝材に切り込みを形成した後に、ウェブの巻き取りを行うウェブの巻取方法を提案した。これによれば、切り込みに沿ってウェブの端部が緩衝材に沈み込むことで、ウェブの端部による段差が減少し、芯痕の発生を抑制することができる。
【0004】
ところで、ウェブを複数積層してなる光学用途の粘着フィルム等の積層体を円筒状の巻芯に巻き取る場合、上記先願の巻取方法を用いても、芯痕の発生を十分には抑制できないことがある。これは、先願の巻取方法では、積層体を構成する全てのウェブの端部を一箇所で緩衝材に固定するため、単層のウェブに比して厚みが増したことによる各ウェブの剛性に起因して各ウェブ端部に発生する跳ね上がり力を合計した大きな跳ね上がり力が一箇所で発生し、この跳ね上がり力がその上に巻き重ねられる2周目以降の積層体に作用することに起因するものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−242059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、積層体の端部における跳ね上がりを抑制することで、芯痕の発生を抑制することが可能で、実施するにあたり特段高度な技術を要しない積層体の巻取方法及び巻取りロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、帯状で長尺のウェブを複数積層してなる積層体を円筒状の巻芯に巻き取る本発明の積層体の巻取方法は、積層体を構成する複数のウェブを巻き取り時に最内周に位置するウェブから最外周に位置するウェブまで積層順に複数グループに組み分けし、巻芯の外周面に緩衝材を巻き付け、緩衝材の外周面に積層体の各グループのウェブの端部を外周側のグループほど巻取回転方向側に位置するようにグループ毎に位置を異ならせて固定すると共に、緩衝材に各グループのウェブの端部に沿うようにグループ毎に位置を異ならせて切り込みを形成した後に、積層体の巻き取りを行うことを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、円筒状の巻芯と、巻芯の外周面に巻き付けられる緩衝材と、緩衝材の外周面に巻き付けられる、帯状で長尺のウェブを複数積層してなる積層体とを備える本発明の巻取りロールは、積層体を構成する複数のウェブが巻き取り時に最内周に位置するウェブから最外周に位置するウェブまで積層順に複数グループに組み分けされ、緩衝材の外周面に積層体の各グループのウェブの端部が外周側のグループほど巻取回転方向側に位置するようにグループ毎に位置を異ならせて固定されると共に、緩衝材に各グループのウェブの端部に沿うようにグループ毎に位置を異ならせて切り込みが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層体を構成する複数グループの夫々のウェブの端部に沿う切り込みを緩衝材に形成するため、積層体を巻き取る際、各グループのウェブの端部が各切り込みに沿って緩衝材に沈み込み、ウェブの端部による段差が減少する。しかも、複数グループのウェブの端部をグループ毎に異なる位置で積層体に固定するため、複数グループのウェブ端部の跳ね上がり力が異なる位置で分散して発生することになり、積層体を構成する全てのウェブの端部を一箇所で緩衝材に固定する場合に発生する跳ね上がり力に比し、各グループのウェブ端部に発生する跳ね上がり力は小さくなり、芯痕の発生を抑制することができる。また、本発明を実施するにあたり、高度な加工精度や加工技術を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)〜(c)は、本発明の実施形態の積層体の巻取方法を説明する図。
【
図2】本発明の実施形態の積層体の巻取方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、積層体Lとして帯状で長尺の3つのウェブW1,W2,W3を積層してなるものを用い、この積層体Lを図外の繰出ロールから繰り出しながら円筒状の巻芯1に巻き取る場合を例に、本発明の実施形態の積層体の巻取方法について説明する。ウェブW1,W2,W3としては、プラスチックフィルム、紙、金属箔、粘着シート等を用いることができる。ウェブに用いるプラスチックフィルムとしては、後述する両面粘着テープの芯材に用いる高分子樹脂を例示でき、ウェブに用いる粘着シートとしては、当該プラスチックフィルムや紙に後述する両面粘着テープに用いる粘着剤を積層したものを例示することができる。
【0012】
先ず、
図1(a)に示すように、巻芯1の外周面に緩衝材2を巻き付ける。巻芯1は、積層体Lを巻き取る上で必要な強度を有していることが望ましく、例えば、紙(樹脂(後述)を含浸した紙を含む)、ゴム類、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂などの樹脂や、それらをガラス繊維、カーボン繊維およびアラミド繊維などの強化繊維で強化した各種強化プラスチック材料、さらには鉄、アルミニウム、銅およびステンレス類などの金属や合金、またそれらの複合体等で構成することができる。紙に含浸する樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂などを例示することができる。巻芯1の寸法は、積層体Lの長さや厚さ、巻き取り時の張力等により適宜選択され、例えば、積層体Lの幅に相当する巻芯1の長さは0.005m〜5m、内径は0.5cm〜50cm、肉厚は1mm〜50mmの範囲に設定することができる。
【0013】
緩衝材2は、例えば、各種ゴム類のような弾性体や、不織布、フェルトおよび合成皮革などの易成型材、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリスチレン系樹脂などからなる発泡樹脂、およびそれらの複合体等で構成することができる。緩衝材2の巻き付け方法については、図示したように巻芯1の外周と同じ長さのシート状の緩衝材2で巻芯1を覆うように包む方法が一般に用いられるが、幅の狭いシート状の緩衝材2を巻芯1に螺旋状に巻き付けるようにしてもよい。緩衝材2の厚さは、例えば、0.2mm〜50mmの範囲、好ましくは0.5mm〜20mmの範囲、さらに好ましくは0.7mm〜10mmの範囲に設定することができる。緩衝材2を発泡樹脂で構成する場合、歪み25%における圧縮応力(JIS K6767に準じて測定)が10〜250kPaとなるような反発性を有することが好ましい。また、緩衝材2の巻芯1への固定には、図示省略の公知の両面粘着シート(例えば、アクリル樹脂系粘着シート)などを用いることができる。
【0014】
また、本実施形態では、積層体Lを構成する3つのウェブW1,W2,W3を巻き取り時に最内周に位置するウェブW1とその外周側に位置するウェブW2とからなる第1グループG1と最外周に位置するウェブW3からなる第2グループG2とに組み分けする。そして、
図1(a)及び(b)に示すように、緩衝材2の外周面の任意の位置に粘着シート(芯止めテープ)3を貼付し、この粘着シート3よりも積層体Lの先端を巻取回転方向側(図中矢印で示す方向)に張り出させた状態で、第1グループG1のウェブW1,W2の端部を粘着シート3を介して緩衝材2に固定する。粘着シート3としては、例えば、粘着剤面が表出した両面粘着テープを用いることができる。両面粘着テープとしては、芯材の両側に粘着剤層を設けたものや芯材の無い粘着剤層のみのものを例示することができる。粘着シート3によるウェブWの段差を低減する観点から、芯材の無いものを用いることが好ましい。必要により粘着剤層を複数積層したり、他の機能層を積層しても良い。粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系などを例示でき、これらを適宜選択して一種又は二種を混合して用いても良い。粘着層の厚みとしては特に限定されることはないが、なるべく薄い方が好ましく、具体的には0.5〜300μmが好ましく、1〜100μmがさらに好ましく、1.5〜50μmが特に好ましい。0.5μm未満であると粘着力が不足してウェブW1,W2の端部をしっかり固定できなくなったり、均一な被膜を得ることが難しい場合がある。300μmを超えると、製膜時の製造速度が遅くなることでのコスト上昇を招いたり、被膜断面からの粘着剤のはみ出しによりウェブW1,W2に粘着剤が付着するなどの不具合が生じる場合がある。芯材としては、紙類、不織布、シート状のゴム類、シート状の高分子樹脂、アルミニウムや銅等の金属箔などから適宜選択して単層あるいは積層して用いることができる。芯材に用いる高分子樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などを例示することができる。
【0015】
次に、
図1(b)に示すように、第2グループG2のウェブW3を巻取回転方向の反対側にめくり上げ、この状態で粘着シート3よりも張り出した第1グループG1のウェブW1,W2の先端部分にカッター(図示省略)の刃BをウェブW2の表面から緩衝材2に進入するように入れる。これにより、第1グループG1のウェブW1,W2の先端部分が切断されると共に、緩衝材2にウェブW1,W2の端部に沿う切り込み21が形成される。その後、ウェブW1,W2の切断部分より先方の切れ端W1o,W2oを除去する。
【0016】
次に、
図1(c)に示すように、切り込み21より巻取回転方向側の緩衝材2の外周面に粘着シート4を貼付し、粘着シート4よりも第2グループG2のウェブW3の先端が張り出すように、ウェブW3の端部を粘着シート4を介して緩衝材2に固定する。これにより、第2グループG2のウェブW3の端部が、第1グループG1のウェブW1,W2の端部よりも巻取回転方向側に位置するように固定される。そして、粘着シート4よりも張り出したウェブW3の先端部分に上記刃Bを緩衝材2に進入するように入れる。これにより、ウェブW3の先端部分が切断され、これと共に、緩衝材2の上記切り込み21と異なる位置にウェブW3の端部に沿う切り込み22が形成される。その後、ウェブWの切断部分より先方の切れ端W3oを除去する。切断・除去後のウェブW3の先端部分(粘着シート4の側縁より張り出した部分)の長さは短い方が好ましく、具体的には10mm以下が好ましく、5mm以下がさらに好ましく、3mm以下が特に好ましく、粘着シート4の側縁から張り出していないことが最も好ましい。粘着シート4の側縁から張り出した部分の長さが長いと、ウェブW3の端部が固定されていないので、2周目の積層体Lが巻かれる際に端部がめくれて折れ曲がってしまったり、ウェブW3(G2)の厚みが厚い場合にはコシがあるので端部に外周に向かう方向への反発力が発生して、芯痕が余計に発生してしまう原因となってしまうことがある。
【0017】
尚、切り込み21,22の深さは、巻芯1まで達していてもよく、後述する積層体Lの巻取時にウェブの端部が沈み込むことができる深さであれば巻芯1に達していなくてもよい。この場合、切り込み21よりも切り込み22の深さを浅くすることができる。具体的には、切り込み21の深さは、ウェブW1,W2と粘着シート3の厚みを足した合計の厚み(以下「厚みT1」という)未満であっても、ウェブW1,W2端部が沈み込む深さであればよいが、厚みT1以上の深さであることが好ましく、厚みT1の1.1倍、1.3倍、1.5倍等の深さであることが好ましい。同様に、切り込み22の深さは、ウェブW3と粘着シート4の厚みを足した合計の厚み(以下「厚みT2」という)以上の深さであることが好ましく、厚みT2の1.1倍、1.3倍、1.5倍等の深さであることが好ましい。尚、ウェブW1,W2,W3の端縁に沿って緩衝材2に刃Bを入れることにより、ウェブW1,W2,W3を切断することなく、切り込み21,22を形成してもよい。また、粘着シート4は、上記粘着シート3と同様のものを用いることができる。
【0018】
次に、
図2に示すように、積層体Lを所定の速度、張力で巻き取る。巻き取り速度は、例えば1m/min〜500m/minの範囲に設定することができ、張力は、例えば1〜1000N/m(幅1m当たり)の範囲に設定することができる。積層体Lの巻き取り時、
図3に拡大して示すように、2周目、3周目と積層体Lが巻き取られることにより、巻取ロールRの内側方向(つまり巻芯1に向かう方向)に発生する内部応力により、第1グループG1のウェブW1,W2の端部が切り込み21に沿って緩衝材2に沈み込む。これと共に、第2グループG2のウェブW3の端部が切り込み22に沿って緩衝材2に沈み込む。このため、得られた巻取ロールRにおいて、ウェブW1,W2,W3の端部による段差が減少される。
【0019】
さらに、第1グループG1のウェブW1,W2の端部と第2グループG2のウェブW3の端部とを異なる位置で緩衝材2に固定するため、第1と第2の両グループG1,G2のウェブ端部の跳ね上がり力が異なる位置で分散して発生することになる。そのため、積層体Lを構成する全てのウェブW1〜W3の端部を一箇所で緩衝材2に固定する場合に発生する跳ね上がり力に比し、第1と第2の各グループG1,G2のウェブ端部に発生する跳ね上がり力は小さくなる。しかも、巻締めによる押付力やその反力が集中して作用する溝のエッジ部分も存在しない。従って、芯痕の発生を抑制することができる。
【0020】
次に、本発明の効果を確認するため、次の実験を行った。本実験では、積層体Lとして、剥離フィルムであるウェブW1と、芯材無しの粘着剤層であるウェブW2と、剥離フィルムであるウェブW3とをこの順で積層したもの(リンテック社製「Opteria(登録商標)」MO−T015)を用いた。この積層体Lを構成するウェブW1及びW2をグループG1に、ウェブW3をグループG2に組み分けした。巻芯1として内径6インチ、肉厚8mmのアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)製のものを用い、この巻芯1の外周面に緩衝材2として厚さ1mm(5mm圧縮品)の発泡ウレタンシート(セキスイウレタン加工製「発泡ウレタン33H圧縮品」)を巻き付けた。緩衝材2の巻芯1の全幅に亘って、長さ300mm、厚さ5μmで幅10mmの芯材無しのアクリル系粘着シート3を貼付した。積層体Lの先端部分が粘着シート3の側縁よりも100mm程度張り出すように貼り付けて固定し、グループG2であるウェブW3をウェブW2より剥がして巻取回転方向と逆側にめくり上げ、粘着シート3の側縁より約2mm張り出した箇所をウェブW2の表面から緩衝材2に刃先が進入し、巻芯1の外周面に到達するようにカッターの刃Bを入れ、ウェブW1,W2の先端部分を切断すると同時に緩衝材2に切り込み21を形成した。ウェブW1,W2の切断された切れ端W1o,W2oを除去することで、ウェブWの端部に沿って緩衝材2に切り込み21が形成された。さらに、切り込み21よりも巻取回転方向側の緩衝材2の外周面に、上記粘着シート3と同様の粘着シート4を貼付した。ウェブW3の先端部分が粘着シート4の側縁よりも50mm程度張り出すように貼り付けて固定し、粘着シート4の側縁より約2mm張り出した箇所をウェブW3の表面から緩衝材2に刃先が進入し、巻芯1の外周面に到達するようにカッターの刃Bを入れ、ウェブW3の先端部分を切断すると同時に緩衝材2に切り込み22を形成した。ウェブW3の切断された切れ端W3oを除去することで、ウェブW3の端部に沿って緩衝材2に切り込み22が形成された。そして、張力200N/m、速度5m/minで積層体Lを50m分巻き取った。このようにして得た巻取ロールを「実施例1」とする。
【0021】
また、発泡ウレタン33Hの厚さを2mm(10mm圧縮品),3mm(15mm圧縮品)とした点を除き、上記実施例1と同様の方法で得た巻取ロールを「実施例2」、「実施例3」とした。緩衝材2として、発泡ウレタンシートであるイノアック社製「PORON(登録商標)MS−40P」、イノアック社製「PORON(登録商標)SR−S−40P」を用いた点を除き、上記実施例1と同様の方法で得た巻取ロールを夫々「実施例4」、「実施例5」とした。
【0022】
これらの実施例1〜5に対する比較のため、次の比較実験を行った。比較実験では、緩衝材2を巻き付けずに巻芯1に直接積層体Lを上記実施例1と同様の巻取条件で巻き取った巻取ロールを「比較例1」とした。また、緩衝材2に積層体Lを構成するウェブをグループ分けせず、ウェブW1,W2,W3をひとまとめにした端部に沿う切り込みを1つだけ形成した点を除き、上記実施例3,4,5と同様の方法で得た巻取ロールを夫々「比較例2」,「比較例3」,「比較例4」とした。
【0023】
次に、これらの実施例1〜5及び比較例1〜4の巻取ロールの評価を行った。評価方法は、巻取ロールを得た直後に、張力30N/m、速度5m/minで巻き返し、芯痕の有無を目視で確認し、積層体Lの端部から芯痕が確認された位置までの最大距離を「NGm数」とし、表1に示す。表1によれば、緩衝材2に2箇所の切り込み21,22を形成することにより、切り込みを形成しない場合や積層体Lの端部に沿う1箇所の切り込みを形成する場合に比べてNGm数を短くできること、即ち、芯痕の発生を抑制できることが判った。
【0025】
尚、本実験では、上記実施例1〜5及び比較例1〜4の「NGm数」を比較し易いように、巻き取り時の張力を200N/mに設定したが、本実施形態と併せて張力を適宜設定することにより、芯痕の発生をさらに抑制することも可能である。
【0026】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、3層のウェブW1,W2,W3で構成される積層体Lを巻き取る場合を例に説明したが、少なくとも2層(4層以上の場合を含む)のウェブで構成される積層体を巻き取る場合に本発明を適用可能である。
【0027】
また、上記実施形態では、緩衝材2に切り込み21を形成する際、粘着シート3よりも張り出したウェブW1,W2の先端部分を切断しているが、粘着シート3の幅内に接着されているウェブW1,W2の部分を切断することも可能である。同様に、粘着シート4の幅内に接着されているウェブW3の部分を切断することも可能である。但し、この場合には、ウェブW3の切れ端W3oを剥離した緩衝材2の周面部分に粘着剤が残存し、この粘着剤の上に巻き重ねられる積層体Lの部分に粘着剤が付着して使用不能になるため、上記実施形態の方が有利である。しかしながら、ウェブW3の切れ端W3oを剥離する際に同時に切断された粘着シート4も緩衝材2から剥離できるものを用いることで、粘着剤が残存するという不具合も解消することができる。
【0028】
また、上記実施形態では、ウェブW1,W2の端部を緩衝材2に固定した後に、ウェブW1,W2の端部に沿って緩衝材2に切り込み21を形成しているが、緩衝材2に切り込み21を形成した後に、この切り込み21に沿ってウェブW1,W2の端部を固定してもよい。但し、この場合には、切り込み21に対するウェブW1,W2の端部の位置合わせという作業者にとって面倒な作業が必要になる。一方、上記実施形態によれば、このような位置合わせが不要となり、作業性が向上する。
【0029】
また、上記実施形態では、ウェブW1,W2をグループG1、ウェブW3をグループG2に組み分けする場合を例に説明したが、ウェブW1,W2を別グループに組み分けしてもよい。この場合、ウェブW1の端部に沿う切り込み21よりも巻取回転方向側にずれた位置にウェブW2の端部に沿う切り込みが形成され、さらに巻取回転方向側にずれた位置にウェブW3の端部に沿う切り込みが形成される。これによれば、ウェブW1の端部の跳ね上がり力とウェブW2の端部の跳ね上がり力を分散させることができる。また、本発明における「ウェブ(W1,W2,W3)の端部に沿って」とは、ウェブ端縁と同一の位置のみならず、ウェブ端縁よりわずかに離れた位置をも含むものとする。この「わずか」とは、およそ1〜3mmのことを言う。
【符号の説明】
【0030】
L…積層体、W1,W2,W3…ウェブ、G1…第1グループ、G2…第2グループ,1…巻芯、2…緩衝材、21,22…切り込み。