特許第6363006号(P6363006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363006
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13363 20060101AFI20180712BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180712BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G02F1/13363
   G02F1/1335 510
   G02B5/30
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-235406(P2014-235406)
(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2016-99454(P2016-99454A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岩本 宜久
【審査官】 小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−238784(JP,A)
【文献】 特開平3−175417(JP,A)
【文献】 特開2010−54759(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0192300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335−1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、
対向配置される第1基板及び第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、
前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、
前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、
前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第1光学板と、
前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、
を含み、
前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、
前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、
前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re1との間で、200nm≦Re2−Re1≦320nmの関係を有する、
液晶表示装置。
【請求項2】
ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、
対向配置される第1基板及び第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、
前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、
前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、
前記第2基板と前記第2偏光板との間に配置された第1光学板と、
前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、
を含み、
前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、
前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第2偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、
前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re1との間で、200nm≦Re2−Re1≦320nmの関係を有する、
液晶表示装置。
【請求項3】
ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、
対向配置される第1基板及び第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、
前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、
前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、
前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第1光学板と、
前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、
前記第2基板と前記第2偏光板との間に配置された第3光学板と、
を含み、
前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、
前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、
前記第3光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re3が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第2偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、
前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re1及び前記Re3との間で、200nm≦Re2−(Re1+Re3)≦320nmの関係を有する、
液晶表示装置。
【請求項4】
ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、
対向配置される第1基板及び第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、
前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、
前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、
前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第1光学板と、
前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、
前記第2基板と前記第2偏光板との間に配置された第3光学板と、
を含み、
前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、
前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、
前記第3光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re3が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第2偏光板の吸収軸に対して略直交に配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、
前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re3との間で、200nm≦Re2−Re3≦320nmの関係を有する、
液晶表示装置。
【請求項5】
ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、
対向配置される第1基板及び第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、
前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、
前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、
前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第1光学板と、
前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、
前記第2基板と前記第2偏光板との間に配置された第3光学板と、
を含み、
前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、
前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略直交に配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、
前記第3光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re3が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第2偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、
前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re1との間で、200nm≦Re2−Re1≦320nmの関係を有する、
液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直配向型の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直配向型の液晶表示装置は、基本的構成として、対向配置される2つの基板と、それら基板間に設けられる垂直配向の液晶層と、基板外側にそれぞれ配置される2つの偏光板を備えている。この垂直配向型の液晶表示装置において、2つの偏光板の吸収軸を互いに直交した配置(クロスニコル配置)とし、かつ基板と偏光板の間に視角補償板を配置することにより、正面観察時および斜め方向からの観察時において非常に良好な暗表示が得られるようになり、優れたノーマリーブラック表示を実現することができる。
【0003】
このような垂直配向型の液晶表示装置において、さらに一方基板の裏面側の偏光板よりも外側に反射板を設けることでバックライト不要の反射型の液晶表示装置を得ることができる。また、さらに一方基板の裏面側の偏光板よりも外側に半透過板を設け、かつバックライトを設けることで半透過型の液晶表示装置を得ることができる。しかし、ノーマリーブラック表示の液晶表示装置では背景表示部(非表示部)が暗表示となるため、反射による表示を観察すると観察者には非常に暗く感じる。特に、表示部において文字や図柄を用いるセグメント表示型の液晶表示装置においてはその傾向が強い。このため、反射型や半透過型の液晶表示装置においては、ノーマリーホワイト表示が広く用いられる。上記のような垂直配向型の液晶表示装置に関する従来技術は、例えば特開2002−40428号公報(特許文献1)や特開2013−238784号公報(特許文献2)に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示される液晶表示装置は、ランダムまたは面内で連続的な配向変化をする液晶層を有している場合に、上基板と下基板のそれぞれの外側に円偏光板を配置することにより、液晶層の配向不均一を不可視化して透過率を上昇させている。この液晶表示装置の原理については、上記した2つの円偏光板の円偏向回転方向が同じである場合に、液晶層のリタデーションをΔとすると、出力光強度Ioutがcos(Δ/2)に相関することが示されている。すなわち、液晶層の基板面内での配向方向は出力光強度に対して無関係であることが示されている。
【0005】
ここで、垂直配向した液晶層の電圧無印加時におけるリタデーションはほぼゼロとなるため出力光強度Ioutは最大になり、液晶層に閾値電圧以上の電圧が印加されると配向変化によってリタデーションが増加することから出力光強度Ioutは最小へ向かって変化する。すなわち、ノーマリーホワイト表示を実現することができる。この文献において、円偏光板は直線偏光板と1/4波長板を組み合わせて構成されており、直線偏光板の配置については任意でよいことが示されている。また、この文献では、基板面内の一方向に配向処理が施された液晶層を有するモノドメイン垂直配向型の液晶表示装置に関する実施例も示されている。この実施例ではノーマリーブラック表示とした場合が示されているが、2つの円偏光板の組み合わせを変更すればノーマリーホワイト表示とすることもできる。さらにこの文献では、上下各基板と各円偏光板の間に負の一軸光学異方性を有する位相差板を配置することによって視角特性が改善されることも示されている。
【0006】
特許文献2に開示される液晶表示装置は、2つの基板と、それら基板間に設けられる垂直配向の液晶層と、基板外側にそれぞれ配置される2つの偏光板(直線偏光板)を備え、さらに、各基板と各偏光板の間の少なくとも一方に位相差板を配置したことを特徴としている。この液晶表示装置における位相差板は、面内遅相軸が各偏光板の吸収軸に対して45°の角度をなして配置され、かつこの面内遅相軸が液晶層の電圧印加時における液晶層の層厚方向の中央における配向方向に対して直交するように配置されている。また、位相差板については、その面内位相差値の合計が200〜320nmであることが好ましく、正の一軸光学異方性または負の二軸光学異方性を示す光学特性を有することが好ましい、とされている。
【0007】
ところで、上記した特許文献1に開示される公知技術に基づいて透過型かつノーマリーホワイト表示のモノドメイン垂直配向型の液晶表示装置を作製し、電圧無印加時における背景視角特性を観察したところ、視認方位を液晶表示装置の左右方位(3時方位、9時方位)へ変化させて深い極角角度から外観観察すると背景の色が黄色から茶色に変化する現象(カラーシフト)が生じて表示品位が低下することが分かった。これについては、特許文献1に開示があるように、上下各基板と各円偏光板の間に負の一軸光学異方性を有する位相差板を配置することによってカラーシフトが抑制される。
【0008】
他方、上記した特許文献2に開示される公知技術に基づいて、上下基板のうち一方の基板と偏光板との間に面内位相差が略1/2波長である位相差板を配置し、他方の基板と偏光板との間には位相差板を設けない構成としてノーマリーホワイト表示のモノドメイン垂直配向型の液晶表示装置を作製して外観を観察したところ、上記した特許文献1に基づいて作製した液晶表示装置の場合と同様のカラーシフトが観察された。
【0009】
上記した公知技術に基づくノーマリーホワイト表示のモノドメイン垂直配向型の液晶表示装置に対して負の一軸光学異方性または負の二軸光学異方性を有する視角補償板を追加する場合、その構成と考えられるのは、特許文献1の公知技術に基づく液晶表示装置において液晶層に近接する位置に視角補償板を配置することである。しかし、上記のような視角補償板を付加することはコストアップにつながるという点で不利になると考えられる。
【0010】
なお本出願において、位相差板の面内屈折率をnx、ny、厚さ方向屈折率をnzとし、nx方向を面内遅相軸と定義するとき、正の一軸光学異方性はnx>ny=nz、正の二軸光学異方性はnx>ny<nz、負の一軸光学異方性はnx=ny>nz、負の二軸光学異方性はnx>ny>nzで定義される。なお、nx>ny=nzを有する光学フィルムは正のAプレートと呼ばれ、nx=nz>nyを有する光学フィルムは負のAプレートと呼ばれ、nx=ny<nzを有する光学フィルムは負のCプレートと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−40428号公報
【特許文献2】特開2013−238784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明に係る具体的態様は、ノーマリーホワイト表示の垂直配向型の液晶表示装置における左右方向観察時のカラーシフトを低コストに抑制することが可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る一態様の液晶表示装置は、ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、(a)対向配置される第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、(c)前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、(d)前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、(e)前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第1光学板と、(f)前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、を含み、(g)前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、(h)前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、(i)前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re1との間で、200nm≦Re2−Re1≦320nmの関係を有する、液晶表示装置である。
【0014】
本発明に係る他の態様の液晶表示装置は、ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、(a)対向配置される第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、(c)前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、(d)前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、(e)前記第2基板と前記第2偏光板との間に配置された第1光学板と、(f)前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、を含み、(g)前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、(h)前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第2偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、(i)前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re1との間で、200nm≦Re2−Re1≦320nmの関係を有する、液晶表示装置である。
【0015】
本発明に係る他の態様の液晶表示装置は、ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、(a)対向配置される第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、(c)前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、(d)前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、(e)前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第1光学板と、(f)前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、(g)前記第2基板と前記第2偏光板との間に配置された第3光学板と、を含み、(h)前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、(i)前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、(j)前記第3光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re3が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第2偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、(k)前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re1及び前記Re3との間で、200nm≦Re2−(Re1+Re3)≦320nmの関係を有する、液晶表示装置である。
【0016】
本発明に係る他の態様の液晶表示装置は、ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、(a)対向配置される第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、(c)前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、(d)前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、(e)前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第1光学板と、(f)前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、(g)前記第2基板と前記第2偏光板との間に配置された第3光学板と、を含み、(h)前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、(i)前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、(j)前記第3光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re3が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第2偏光板の吸収軸に対して略直交に配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、(k)前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re3との間で、200nm≦Re2−Re3≦320nmの関係を有する、液晶表示装置である。
【0017】
本発明に係る他の態様の液晶表示装置は、ノーマリーホワイト表示の液晶表示装置であって、(a)対向配置される第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板と前記第2基板の間に配置された垂直配向又は略垂直配向の液晶層と、(c)前記第1基板の外側に配置された第1偏光板と、(d)前記第2基板の外側に配置された第2偏光板と、(e)前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第1光学板と、(f)前記第1基板と前記第1偏光板との間に配置された第2光学板と、(g)前記第2基板と前記第2偏光板との間に配置された第3光学板と、を含み、(h)前記第1偏光板と前記第2偏光板の各吸収軸は互いに略直交して配置され、かつ当該各吸収軸は電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、(i)前記第1光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re1が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略直交に配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略45°の角度をなして配置されており、(j)前記第3光学板は、負の二軸光学異方性を有し、面内位相差Re3が40nm〜70nmであり、面内遅相軸が前記第2偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略平行に配置されており、(k)前記第2光学板は、正の一軸光学異方性を有し、面内遅相軸が前記第1偏光板の吸収軸に対して略45°の角度をなして配置され、かつ電界印加時における前記液晶層の層厚方向の略中央での配向方向に対して略直交に配置されており、面内位相差Re2が前記Re1との間で、200nm≦Re2−Re1≦320nmの関係を有する、液晶表示装置である。
【0018】
上記いずれかの構成によれば、ノーマリーホワイト表示の垂直配向型の液晶表示装置における左右方向観察時のカラーシフトを低コストに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。
図2図2は、液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。
図3図3は、第2実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。
図4図4は、第2実施形態における液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。
図5図5は、第3実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。
図6図6は、第3実施形態における液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。
図7図7は、第4実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。
図8図8は、第4実施形態における液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。
図9図9は、第5実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。
図10図10は、第5実施形態における液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。
図11図11は、比較例の分光スペクトル計算結果を示す図である。
図12図12(A)は、実施例1の分光スペクトル計算結果を示す図である。図12(B)は、実施例2の分光スペクトル計算結果を示す図である。
図13図13(A)は、実施例3の分光スペクトル計算結果を示す図である。図13(B)は、実施例4の分光スペクトル計算結果を示す図である。
図14図14(A)は、実施例5の分光スペクトル計算結果を示す図である。図14(B)は、実施例6の分光スペクトル計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、第1実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。この液晶表示装置は、対向配置された第1基板1および第2基板2と、第1基板1に設けられた第1電極11と、第2基板2に設けられた第2電極12と、第1基板1と第2基板2の間に配置された液晶層7を基本構成として備える。
【0022】
第1実施形態の液晶表示装置は、例えば、電極同士の重なり合う領域が表示したい文字や図案を形作るように構成され、基本的に予め定めた文字等のみを表示可能であり、概ね、有効表示領域内における面積比で50%以下程度の領域が文字等の表示に寄与するものであるセグメント表示型の液晶表示装置である。なお、液晶表示装置は、複数の画素がマトリクス状に配列されたドットマトリクス表示型であってもよいし、セグメント表示型とドットマトリクス型が混合したものであってもよい。
【0023】
第1基板1および第2基板2は、それぞれ例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。図示のように、第1基板1と第2基板2は、所定の間隙(例えば4μm程度)を設けて貼り合わされている。
【0024】
第1電極11は、第1基板1の一面側に設けられている。同様に、第2電極12は、第2基板2の一面側に設けられている。第1電極11および第2電極12は、それぞれ例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。
【0025】
第1配向膜3は、第1基板1の一面側に第1電極11を覆うようにして設けられている。第2配向膜4は、第2基板2の一面側に第2電極12を覆うようにして設けられている。これらの第1配向膜3、第2配向膜4としては、液晶層7の配向状態を略垂直配向に規制する垂直配向膜が用いられている。本実施形態では、各配向膜3、4にはラビング処理等の一軸配向処理が施されている。これにより、液晶層7には、88.5°〜89.9°程度の高いプレティルト角が与えられる。
【0026】
液晶層7は、第1基板1と第2基板2の間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負の液晶材料を用いて液晶層7が構成される。液晶層7に図示された太線は、液晶層7における液晶分子の配向方向を模式的に示したものである。ここで、液晶層7の層厚方向の略中央における液晶分子の電圧印加時の配向方向13は、第1基板1の側から見た平面視における液晶分子の倒れる方向として規定される。この配向方向13は、各配向膜3、4への一軸配向処理によって定まるものであり、本実施形態においては、配向方向13と一軸配向処理の方向とが略平行である。
【0027】
第1偏光板5は、第1基板1の外側に配置されている。同様に、第2偏光板6は、第2基板2の外側に配置されている。第1偏光板5と第2偏光板6は、各々の吸収軸が互いに略直交するように配置されている。
【0028】
第1光学板21は、第1偏光板5と第1基板1の間であって第1偏光板5に近い側に配置されている。この第1光学板21は、負の二軸光学異方性を有する光学板である。第2光学板22は、第1偏光板5と第1基板1の間であって第1基板に近い側に配置されている。この第2光学板22は、正の一軸光学異方性を有する光学板である。なお、第1光学板21と第2光学板22の配置順は逆でもよい。すなわち、第1光学板21が第1基板1に近い側に配置され、第2光学板22が第1偏光板5に近い側に配置されてもよい。
【0029】
第1光学板21の面内位相差Re1は40nm〜70nmに設定される。これに対して、第2光学板22の面内位相差Re2は、上記の面内位相差Re1との間で、200nm≦Re2−Re1≦320nmの関係を満たすように設定される。
【0030】
図2は、液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。いずれも、第1基板1の側から平面視した場合の光学軸が示されている。図示のように、電界印加時の液晶層の配向方向13が6時方位(270°方向)であるとすると、第1偏光板5の吸収軸は電界印加時の液晶層の配向方向13に対して45°の角度をなす方向に配置され、第2偏光板6の吸収軸は電界印加時の液晶層の配向方向13に対して45°の角度をなす方向に配置されている。また、上記のように第1偏光板5と第2偏光板6の吸収軸同士は略直交する方向に配置される。
【0031】
第1光学板21の面内遅相軸は、この第1光学板21と近接する第1偏光板5の吸収軸に対して45°の角度をなす方向に配置される。図示の例では6時−12時方位(90°−270°)に配置されている。また、この面内遅相軸は、電界印加時の液晶層の配向方向13と略平行に配置されている。
【0032】
第2光学板22の面内遅相軸は、この第2光学板22と近接する第1偏光板5の吸収軸に対して45°の角度をなす方向に配置される。図示の例では3時−9時方位(0°−180°)に配置されている。また、この面内遅相軸は、電界印加時の液晶層の配向方向13と略直交に配置されている。別言すれば、第1光学板21の面内遅相軸と第2光学板22の面内遅相軸とは互いに直交して配置される。
【0033】
図3は、第2実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。また、図4は、この第2実施形態における液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。上記した図1図2に示した第1実施形態との違いは、第1光学板21が第2基板2と第2偏光板6の間に配置されている点であり、それ以外は上記実施形態と同様である。
【0034】
第2実施形態における第1光学板21は、第1実施形態と同様に負の二軸光学異方性を有する光学板であり、図4に示すようにその面内遅相軸が近接する第2偏光板6の吸収軸と略45°の角度をなす方向に配置されている。図示の例では6時−12時方位(90°−270°)に配置されている。また、この面内遅相軸は、電界印加時の液晶層の配向方向13と略平行に配置されており、第2光学板22の面内遅相軸とは互いに直交して配置される。なお、第1光学板21と第2光学板22の配置を入れ替えてもよい。
【0035】
第2実施形態においても、第1光学板21の面内位相差Re1は40nm〜70nmに設定され、第2光学板22の面内位相差Re2は、上記の面内位相差Re1との間で、200nm≦Re2−Re1≦320nmの関係を満たすように設定される。
【0036】
図5は、第3実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。また、図6は、この第3実施形態における液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。上記した図1図2に示した第1実施形態との違いは、第2基板2と第2偏光板6の間に第3光学板23が追加して配置されている点であり、それ以外は上記の第1実施形態と同様である。
【0037】
第3光学板23は、第1光学板21と同様に負の二軸光学異方性を有する光学板であり、図6に示すようにその面内遅相軸が近接する第2偏光板6の吸収軸と略45°の角度をなす方向であって電界印加時の液晶層の配向方向13と略平行に配置されている。図示の例では6時−12時方位(90°−270°)に配置されている。また、この第3光学板の面内遅相軸は、第1光学板21の面内遅相軸とは互いに平行に配置され、第2光学板22の面内遅相軸とは互いに直交して配置される。なお、第1光学板21と第2光学板22の配置を入れ替えてもよい。
【0038】
第3実施形態においては、第1光学板21の面内位相差Re1は40nm〜70nmに設定され、第3光学板の面内位相差Re3も40nm〜70nmに設定される。また、第2光学板22の面内位相差Re2は、上記の面内位相差Re1、Re3との間で、200nm≦Re2−(Re1+Re3)≦320nmの関係を満たすように設定される。
【0039】
図7は、第4実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。また、図8は、この第4実施形態における液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。この第4実施形態の液晶表示装置は、上記した図5図6に示した第3実施形態における第3光学板23を第3光学板23aに置き換えた点であり、それ以外は上記実施形態と同様である。
【0040】
第3光学板23aは、第1光学板21と同様に負の二軸光学異方性を有する光学板であり、図8に示すようにその面内遅相軸が近接する第2偏光板6の吸収軸と略直交する方向に配置されている。図示の例では135°−315°方向に配置されている。また、この第3光学板の面内遅相軸は、第1光学板21の面内遅相軸、第2光学板22の面内遅相軸とはそれぞれ45°の角度をなす方向に配置されている。なお、第1光学板21と第2光学板22の配置を入れ替えてもよい。
【0041】
第4実施形態においては、第1光学板21の面内位相差Re1は40nm〜70nmに設定され、第3光学板23aの面内位相差Re3も40nm〜70nmに設定される。また、第2光学板22の面内位相差Re2は、上記の面内位相差Re1との間で、200nm≦Re2−Re1≦320nmの関係を満たすように設定される。
【0042】
図9は、第5実施形態の液晶表示装置の基本構造を示す断面図である。また、図10は、この第5実施形態における液晶層の電界印加時の配向方向と各偏光板、各光学板の光学軸の配置関係を示す図である。この第5実施形態の液晶表示装置は、上記した図5図6に示した第3実施形態における第1光学板21を第1光学板21aに置き換えた点であり、それ以外は上記実施形態と同様である。
【0043】
第1光学板21aは、第3光学板23と同様に負の二軸光学異方性を有する光学板であり、図10に示すようにその面内遅相軸が近接する第1偏光板5の吸収軸と略直交する方向に配置されている。図示の例では45°−225°方向に配置されている。また、この第1光学板21aの面内遅相軸は、第2光学板22の面内遅相軸、第3光学板23の面内遅相軸とはそれぞれ45°の角度をなす方向に配置されている。なお、第1光学板21aと第2光学板22の配置を入れ替えてもよい。
【0044】
第5実施形態においては、第1光学板21aの面内位相差Re1は40nm〜70nmに設定され、第3光学板の面内位相差Re3も40nm〜70nmに設定される。また、第2光学板22の面内位相差Re2は、上記の面内位相差Re3との間で、200nm≦Re2−Re3≦320nmの関係を満たすように設定される。
【0045】
次に、上記した実施形態の液晶表示装置における電圧無印加時の背景表示部(非表示部)の色調をシミュレーション解析によって評価した結果について、比較例と合わせて説明する。シミュレーション解析の条件は以下の通りである。これらの条件とした液晶表示装置における、3時方位、9時方位(0°方向、180°方向)における法線から50°傾けた(極角50°)ときの電圧無印加時の分光スペクトルを計算した。
【0046】
<シミュレーション時の共通条件>
・液晶層厚:4μm
・液晶材料:Δn=0.0914、Δε=−5.1、カイラル材の添加なし
・プレティルト角:89.5°(第1基板、第2基板ともに)
・電圧印加時の液晶層の層厚方向の中央における配向方向:6時方位(270°方向)
・光源:標準光源D65
・シミュレータ:シンテック製液晶表示器シミュレータLCDMASTER
【0047】
<比較例>
・液晶表示装置の構造:特許文献2に開示される構造
・位相差板:面内位相差275nmの正の一軸光学異方性を有する光学板
【0048】
図11は、比較例の分光スペクトル計算結果を示す図である。なお、図中においてPolaは0が正面観察時、50が極角50°観察時を示している(以下において同様)。図示のように、正面観察時にはほぼニュートラルなスペクトルが得られているのに対して極角50°観察時には短波長側の透過率に大きな低下がみられる。すなわち、背景色が黄色または茶色に変化しており、表示品位が低下している。この比較例について実際に同条件の液晶表示装置を作製し、背景表示部の外観観察を行ったところ、上記したシミュレーション解析結果と同様の結果が得られた。すなわち、比較例の液晶表示装置では左右方位における視角特性を観察したとき、観察角度が深くなるにしたがって背景表示部の色調が黄色から茶色へとカラーシフトして表示品位が低下することが確認された。
【0049】
<実施例1>
・液晶表示装置の構造:第1実施形態の構造(図1、2参照)
・第1光学板:面内位相差55nm、厚さ方向位相差220nmの負の二軸光学異方性を有する光学板
・第2光学板:面内位相差330nmの正の一軸光学異方性を有する光学板
【0050】
図12(A)は、実施例1の分光スペクトル計算結果を示す図である。図示のように、実施例1の液晶表示装置では、正面観察時と極角50°観察時を比べると、上記した比較例の場合に比べて短波長側の透過率変化は小さく、長波長側の透過率変化が大きいという傾向が見られた。ただし、分光スペクトル同士の透過率の差は大きく出ているが外観上の色調変化としては黄色や茶色へ変化する傾向ではなく、3時方位に視角を傾けたときにわずかに青色気味に色調が変化する程度であり、外観上の違和感は小さいと考えられる。すなわち、背景表示部の左右方位におけるカラーシフトが抑制された表示状態を実現できると考えられる。この実施例1についても実際に同条件の液晶表示装置を作製し、背景表示部の外観観察を行ったところ、上記したシミュレーション解析結果と同様の結果が得られた。
【0051】
<実施例2>
・液晶表示装置の構造:第2実施形態の構造(図3、4参照)
・第1光学板:面内位相差55nm、厚さ方向位相差220nmの負の二軸光学異方性を有する光学板
・第2光学板:面内位相差330nmの正の一軸光学異方性を有する光学板
【0052】
図12(B)は、実施例2の分光スペクトル計算結果を示す図である。図示のように、実施例2の液晶表示装置においても上記した実施例1の場合と同等な分光スペクトルが得られていることから、視角変化に対する色調変化は比較例に比べて抑制されると考えられる。
【0053】
<実施例3>
・液晶表示装置の構造:第2実施形態の構造(図3、4参照)
・第1光学板:面内位相差55nm、厚さ方向位相差220nmの負の二軸光学異方性を有する光学板
・第2光学板:面内位相差255nmの正の一軸光学異方性を有する光学板
【0054】
<実施例4>
・液晶表示装置の構造:第2実施形態の構造(図3、4参照)
・第1光学板:面内位相差55nm、厚さ方向位相差220nmの負の二軸光学異方性を有する光学板
・第2光学板:面内位相差375nmの正の一軸光学異方性を有する光学板
【0055】
図13(A)は、実施例3の分光スペクトル計算結果を示す図であり、図13(B)は、実施例4の分光スペクトル計算結果を示す図である。なお、ここでは第2光学板の面内位相差を変化させた場合について検討した。具体的には、上記した実施例2がRe2=330nm、Re2−Re1=275nmの場合であり、実施例3がRe2=255nm、Re2−Re1=200nmの場合であり、実施例4がRe2=375nm、Re2−Re1=320nmの場合である。
【0056】
図12(B)に示した実施例2の結果と比較すると、正面観察時のスペクトルは(Re2−Re1)に依存する傾向がみられ、具体的には(Re2−Re1)の値が小さい場合には色調が青色系、値が大きい場合には黄色系の色調に変化する傾向がみられた。図12(B)、図13(A)、図13(B)の3つに示される分光スペクトルであれば外観上は許容可能な範囲であると考えられる。それらに対し、極角50°観察時の分光スペクトルについては、図13(A)に示す場合には広い波長域でほぼ等しい割合で透過率が低下しているのみであり、これは輝度変化としては観察されるが色調の変化としては大きくないことが分かる。図13(B)に示す場合は、図12(B)の場合と同様に短波長側の透過率変化が小さく、長波長側の変化が大きい傾向にあることから、視角を深くするにしたがって青色系に色調が変化する傾向が観察される。しかし、大きな変化としては観察されないと考えられる。これらの実施例についても実際に同条件の液晶表示装置を作製し、背景表示部の外観観察を行ったところ、上記したシミュレーション解析結果と同様の結果が得られた。
【0057】
以上の観察結果から、第1光学板と第2光学板の面内位相差の関係は200nm≦Re2−Re1≦320nmが好ましいといえる。上記各実施例では第1光学板の面内位相差を55nmに固定していたが、ノーマリーブラック表示の垂直配向型液晶表示装置に適用される負の二軸光学異方性を有する光学板の面内位相差Reは40nm〜70nmが適切であり、実際に市販される負の二軸光学異方性を有する光学板としてもその値範囲をもつものの流通量が多い。負の二軸光学異方性を有する光学板の厚さ方向位相差Rthについては、材質として環状オレフィンポリマーを用いた場合には最大で500nm程度を実現できるが、面内の均一性を重視した場合は440nm程度までが好ましい。この条件下においてノーマリーブラック表示の垂直配向型液晶表示装置に適用する場合、厚さ方向位相差Rthが小さくなるにしたがって面内位相差Reを大きくすることが好ましいといえる。我々は市販される光学板において、面内位相差Re、厚さ方向位相差Rthの組み合わせとしては、「Re=45nm、Rth=440nm」、「Re=55nm、Rth=220nm」、「Re=60nm、Rth=120nm」等が存在することを確認している。
【0058】
<実施例5>
・液晶表示装置の構造:第3実施形態の構造(図5、6参照)
・第1光学板:面内位相差55nm、厚さ方向位相差220nmの負の二軸光学異方性を有する光学板
・第2光学板:面内位相差385nmの正の一軸光学異方性を有する光学板
・第3光学板:面内位相差55nm、厚さ方向位相差220nmの負の二軸光学異方性を有する光学板
・Re2−(Re1+Re3)=275nm
【0059】
図14(A)は、実施例5の分光スペクトル計算結果を示す図である。図示のように、実施例5の液晶表示装置では、正面観察時および極角50°観察時を比較すると、短波長側での透過率変化が小さく、長波長側での透過率変化が大きい傾向があり、視角が深くなるにしたがって青色系に色調が変化すると考えられる。外観観察上は正面観察時との色調変化は小さく、少なくとも比較例よりは色調変化が抑制されると考えられる。
【0060】
<実施例6>
・液晶表示装置の構造:第4実施形態の構造(図7、8参照)
・第1光学板:面内位相差55nm、厚さ方向位相差220nmの負の二軸光学異方性を有する光学板
・第2光学板:面内位相差330nmの正の一軸光学異方性を有する光学板
・第3光学板:面内位相差55nm、厚さ方向位相差220nmの負の二軸光学異方性を有する光学板
・Re2−(Re1+Re3)=275nm
【0061】
図14(B)は、実施例6の分光スペクトル計算結果を示す図である。図示のように、実施例6の液晶表示装置では、正面観察時および極角50°観察時を比較すると、短波長側での透過率変化が小さく、長波長側での透過率変化が大きい傾向があり、視角が深くなるにしたがって青色系に色調が変化すると考えられる。外観観察上は正面観察時との色調変化は小さく、少なくとも比較例よりは色調変化が抑制されると考えられる。
【0062】
なお、図示を省略するが第5実施形態の構造に対応する実施例についても上記と同様にシミュレーション解析したところ、実施例6と同等の計算結果が得られた。
【0063】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記において光学板(二軸フィルム)の面内位相差は55nmに固定されていたが、適切な面内位相差の範囲は40〜70nm程度である。一方で、厚さ方向位相差は、液晶層厚dと液晶材料の福屈折率Δnの積であるΔndに応じて調整する必要がある。
【0064】
また、上記した実施形態等では、ラビング処理等の配向処理によって液晶層を一方位に配向されたモノドメイン配向型の液晶表示装置を例示していたが、互いに異なる配向方位を有する2種類のドメインを有するデュアルドメイン配向型の液晶表示装置においても本発明を適用することができる。この場合には、液晶層への電界印加時に配向制御要素(突起や開口など)によって制御される液晶層の層厚方向の中央における配向方向との関係において偏光板や各波長板の配置を設定すればよい。
【符号の説明】
【0065】
1:第1基板
2:第2基板
3:第1配向膜
4:第2配向膜
5:第1偏光板
6:第2偏光板
7:液晶層
11:第1電極
12:第2電極
13:液晶層の層厚方向の中央における配向方向
21、21a:第1光学板
22:第2光学板
23、23a:第3光学板
図1
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