特許第6363011号(P6363011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363011
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】汎用コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/06 20060101AFI20180712BHJP
   A01D 69/03 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   A01D69/06
   A01D69/03
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-249638(P2014-249638)
(22)【出願日】2014年12月10日
(65)【公開番号】特開2016-106599(P2016-106599A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舟木 大輔
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−081379(JP,A)
【文献】 特許第2887389(JP,B2)
【文献】 実開昭60−044539(JP,U)
【文献】 特開平06−296421(JP,A)
【文献】 特開2013−074799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D41/00−41/16
A01D67/00−69/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を備える機体に原動部と操縦部と脱穀部を設けると共に、機体の前方に掻込リール、刈刃、オーガ、及びフィーダを備えるヘッダ部を設ける汎用コンバインおいて、前記原動部の動力を静油圧式無段変装装置(走行HST)を介して走行装置に伝達すると共に、作業機クラッチを介して脱穀部とヘッダ部に分岐して伝達し、また、ヘッダ部に伝達された動力を、第1の伝動装置を介してオーガとフィーダに伝達する一方、静油圧式無段変装装置(搬送HST)を備える第2の伝動装置を介して掻込リールと刈刃に伝達するように構成することを特徴とする汎用コンバイン。
【請求項2】
前記第1の伝動装置に正逆転切換え機構を設け、この正逆転切換え機構を逆回転状態に切換えた際には、前記第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)を介してオーガとフィーダを逆回転させることを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバイン。
【請求項3】
前記第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)は、電子制御装置によって刈取り作業の際には、手動設定や車速の検出に基づいて変速制御され、また、オーガとフィーダを逆回転させる際には、所定の低回転数になるように変速制御されることを特徴とする請求項2に記載の汎用コンバイン。
【請求項4】
前記第2の伝動装置にリール・刈刃クラッチを設け、前記電子制御装置は、前記正逆転切換え機構が逆転状態に切換えられ、且つリール・刈刃クラッチが切断されたことを検出した際に、前記第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)を所定の低回転数になるように変速制御することを特徴とする請求項3に記載の汎用コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲、麦、大豆、そば等の作物を掻込リールで掻き込んで刈取る汎用コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
汎用コンバインのヘッダ部(刈取部)には、プラットホーム内に穀稈を良好に掻き込むために、常時下方を向くように保持されたタインを備える掻込リールが設けられている。また、掻込リールはヘッダ部に対して昇降可能、また、前後に位置調節可能に取り付けられ、植立穀稈の生育状況や倒伏状況に応じて最適な位置で掻き込みが行えるように構成されている。
【0003】
さらに、掻込リールの回転速度をリール変速アクチュエータによって変速するリール回転変速装置と、リールの回転速度を操作するリール回転速度手動操作手段とを備え、作業状況等に応じてリールの回転速度を変更する。或いは、車速検出手段を備え、車速検出手段により検出される車速に連動してリールの回転速度を制御するリール回転自動制御を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
一方、ヘッダ部(刈取部)を正逆転モータによって駆動すると共に、フィーダやオーガに穀稈が詰まった際に、フィーダやオーガを逆転駆動させて詰まった穀稈を排出すること、また、その際には掻込リールと刈刃の伝動系に一方向クラッチを介装し、これらを自動的に停止させることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−81379号公報
【特許文献2】特許第2887389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、汎用コンバイン或いは大豆用コンバインで大豆を刈り取る場合、頭部損失の多少は倒伏した大豆を引き起こしたり、刈り取った大豆を掻き込んだりする掻込リールの運転条件に大きく影響され、リール速度がコンバインの速度に対して遅くても、また速くても損失が多くなる。すなわち、リール速度が遅い場合には、刈り取った大豆を完全にヘッダ部内に取り込むことができずに茎のまま圃場に落下する割合が高くなり、逆に、リール速度が速すぎると、リールの衝撃力により大豆が叩かれて裂莢し、単粒の形で圃場に落下する割合が高くなる、と研究報告されている。
【0007】
なお、大豆の損傷粒は穀粒水分の影響を大きく受け、穀粒水分が20%以上の場合には、潰れ粒を主体とする損傷粒が多くなり、逆に穀粒水分が低い時でも裂傷や割れ豆などの損傷粒が増えることがある。また、20%以上の高水分時には、粒そのものが長さ方向を中心に膨らんでいるものが多いので、搬送経路でも損傷粒が発生し易くなる。したがって、損傷粒を考えた場合、穀粒水分が18%以下になってから収穫を実施することが望ましく、低水分大豆を収穫し、砕粒等の発生が多い場合には扱ぎ胴の周速度を減速する必要がある。
【0008】
そこで、特許文献1に示される汎用コンバインでは、刈取部に伝達された動力によってフィーダ、オーガ、及び刈刃を駆動すると共に、掻込リールをリール回転変速装置を介して駆動し、手動操作手段や車速に同調させる自動制御手段によってリール回転を制御して、頭部損失の発生を抑えるようにしている。しかし、この汎用コンバインでは、リール回転変速装置として割プーリ式ベルト無段変速装置を用い、この無段変速装置をリール変速アクチュエータによって変速するようにしているため、リール速度を低速にすることが困難で、別途、部品を取り替えてリール速度を減速する等の煩わしさがある。
【0009】
すなわち、割プーリ式ベルト無段変速装置は、一方の変速プーリのベルトピッチ径を変化させたとき、もう一方の変速プーリのベルトピッチ径を追従させることで変速するものであるため、プーリ径の制約から変速比幅が狭い。また、最低速に変速しても所定の低回転が常時出力されるから、完全にゼロ回転からの無段階の変速が行える訳ではなく、全ての作物や生育状況、乃至倒伏状況等を考慮して掻込リールの最高速度を高く設定した場合、最低速度がそれに伴って高くなり、必ずしも作物に応じた適正なリール速度を常に得られるものではない。
【0010】
一方、特許文献2に示されているように、刈取部を正逆転モータによって駆動すると、出力回転を正逆回転に切換えることができると共に、ゼロ回転からの無段階の変速が行え、変速比幅を広くして掻込リールの速度を作物等に応じて適正に変更することができる。しかし、このものでは、刈取部の各部を全て正逆転モータによって駆動しているから、掻込リールの速度を適正にするため正逆転モータを低速に変速した際に、フィーダやオーガが回転不足となりオーガによって作物を適正にフィーダに送り込むことができなくなったり、プラットホームに作物が滞留して詰まりを発生させる等の虞がある。
【0011】
また、特許文献2に示される汎用コンバインでは、正逆転モータを逆転させてフィーダやオーガに詰まった作物を排出するようにすると、詰まりを比較的簡単に除去することができ、除去作業時間を短縮して作業能率を向上させることができる。しかし、特許文献1では、フィーダやオーガの逆転装置を設けていないため、フィーダやオーガに詰まった作物の除去作業が大変であり、また、逆転装置を新たに設けようとするとコストが高くなると共に、無理やりフィーダやオーガを高速で逆転させると、反って詰まりを助長したりフィーダやオーガを損傷させる虞があるから、特許文献2も含めて低速で回転させるための牽制手段を別途、設けなければならない。
【0012】
そこで、本発明は、係る問題点に鑑みて、先ずフィーダやオーガの回転不足による掻き込み不良を生ずることなく、掻込リールの回転数を作物等に応じて常に適正に変更することができる汎用コンバインを提供することを課題とする。また、本発明は、フィーダやオーガの逆転装置を付加するにあたり、コストの上昇を抑えながら逆転時のフィーダやオーガの回転数を所定の低回転に簡単に規制することができる汎用コンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため第1に、走行装置を備える機体に原動部と操縦部と脱穀部を設けると共に、機体の前方に掻込リール、刈刃、オーガ、及びフィーダを備えるヘッダ部を設ける汎用コンバインおいて、前記原動部の動力を静油圧式無段変装装置(走行HST)を介して走行装置に伝達すると共に、作業機クラッチを介して脱穀部とヘッダ部に分岐して伝達し、また、ヘッダ部に伝達された動力を、第1の伝動装置を介してオーガとフィーダに伝達する一方、静油圧式無段変装装置(搬送HST)を備える第2の伝動装置を介して掻込リールと刈刃に伝達するように構成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、第2に、前記第1の伝動装置に正逆転切換え機構を設け、この正逆転切換え機構を逆転状態に切換えた際には、前記第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)を介してオーガとフィーダを逆回転させることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明は、第3に、前記第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)は、電子制御装置によって刈取り作業の際には、手動設定や車速の検出に基づいて変速制御され、また、オーガとフィーダを逆回転させる際には、所定の低回転数になるように変速制御されることを特徴とする。
【0016】
そして、本発明は、第4に、前記第2の伝動装置にリール・刈刃クラッチを設け、前記電子制御装置は、前記正逆転切換え機構が逆回転状態に切換えられ、且つリール・刈刃クラッチが切断されたことを検出した際に、前記第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)を所定の低回転数になるように変速制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の汎用コンバインによれば、原動部の動力を静油圧式無段変装装置(走行HST)を介して走行装置に伝達すると共に、作業機クラッチを介して脱穀部とヘッダ部に分岐して伝達し、また、ヘッダ部に伝達された動力を、第1の伝動装置を介してオーガとフィーダに伝達する一方、静油圧式無段変装装置(搬送HST)を備える第2の伝動装置を介して掻込リールと刈刃に伝達するように構成するから、原動部の動力を第1の伝動装置を介してオーガとフィーダに伝達して、オーガとフィーダを常に過不足のない回転数で駆動することができ、プラットホームでの作物の掃けを速やかに行って、掻き込み不良や詰まり等を防止することができる。
【0018】
また、原動部の動力を第2の伝動装置を介して掻込リールと刈刃に伝達し、第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)によって変速比幅を広くして、掻込リールと刈刃を駆動することができ、それにより掻込リールの回転数を作物等に応じて適正に変更して、ヘッダ部における頭部損失を抑えることができる。しかも、掻込リールを最もヘッダ部の伝動下手側において無段変速装置を介して駆動すると、無段変速装置をヘッダ部に設けることになって、その重量によりヘッダ部の重量が増加して昇降作動や強度面で不利なものとなるが、ヘッダ部に伝達された動力を、第1の伝動装置と第2の伝動装置を介してヘッダ部の伝動上手側において分岐すると、静油圧式無段変装装置(搬送HST)を機体側に設置することができ、上記不利益を被ることが無い。
【0019】
また、第1の伝動装置に正逆転切換え機構を設け、この正逆転切換え機構を逆回転状態に切換えた際には、第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)を介してオーガとフィーダを逆回転させると、フィーダやオーガに詰まった作物を排出して詰まりを除去することができる。また、フィーダやオーガの逆転装置を付加するにあたり、第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)を逆転装置に利用することができ、コストの上昇を抑えることができる。しかも、静油圧式無段変装装置(搬送HST)によってオーガとフィーダを低速で逆回転させることができるから、減速装置を設ける必要もない。
【0020】
さらに、第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)は、電子制御装置によって刈取り作業の際には、手動設定や車速の検出に基づいて変速制御され、また、オーガとフィーダを逆回転させる際には、所定の低回転数になるように変速制御されるものとすると、静油圧式無段変装装置(搬送HST)を手動で変速操作する煩わしさから開放されると共に、掻込リールの速度を精度よく適正なものに調整することができる他、オーガとフィーダを低速で確実に逆回転させることができる。
【0021】
そして、第2の伝動装置にリール・刈刃クラッチを設け、電子制御装置は、正逆転切換え機構が逆転状態に切換えられ、且つリール・刈刃クラッチが切断されたことを検出した際に、第2の伝動装置に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)を所定の低回転数になるように変速制御するものとすると、刈取り作業中に誤ってオーガとフィーダを逆回転させる虞がなくなると共に、逆回転させてフィーダやオーガに詰まった作物を排出する際に、掻込リールが排出された作物を再びプラットホームに戻したり、刈刃がこれを切断することを防止して、安全に詰まりの除去作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】汎用コンバインの側面図である。
図2】走行系の動力伝達系統図である。
図3】ヘッダ部への動力伝達系統図である。
図4】搬送ギヤケースに静油圧式無段変速装置(搬送HST)を取り付けた状態の展開断面図である。
図5】静油圧式無段変速装置(搬送HST)の油圧回路図である。
図6】操縦部の斜視図である。
図7】電子制御装置のブロック図である。
図8】パワークラッチ制御のフローチャートである。
図9】掻込リールの回転数制御のフローチャートである。
図10】掻込リールの回転速度線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように汎用コンバインは、左右のクローラ式走行装置1と、走行装置1のトラックフレーム2の上方に設ける四角枠形状の機体フレーム3によって機体を構成し、機体フレーム3に対して左右の走行装置1は、図示しない姿勢制御用の油圧シリンダによって昇降自在に取り付けている。また、機体フレーム3の進行方向左側には作物の脱穀及び選別処理を行う脱穀部4を設け、右側には操縦部5と穀粒を貯留するグレンタンク6を前後に設けている。
【0024】
さらに、脱穀部4と操縦部5の前方には作物を刈取って脱穀部4に搬送するヘッダ部(刈取部)7を設けている。なお、操縦部5の下方からグレンタンク6の前方にかけてエンジン、ラジエータ、エアクリーナ等で構成する原動部を設け、この内、原動部のエンジンは、クローラ式走行装置1、脱穀部4、グレンタンク6、ヘッダ部7等を駆動する動力源となる。
【0025】
ここで、各部の構成を詳細に説明すると、機体の前方側に設けるヘッダ部7は、フィーダハウス8とオーガーフレーム9とリールフレーム10を一体的に連結して構成する。この内、オーガーフレーム9には、鉄板を湾曲させて形成するプラットホーム11を設け、プラットホーム11上には、螺旋Sを有するドラムとドラムの外周に突出するフィンガー12aを備える左右方向に延びるオーガ12(プラットホームオーガ)を回転駆動可能に軸架している。なお、大豆を刈り取る際は、プラットホーム11の後方側を目抜き構造にして土やほこりを機外に排出できるようにしている。
【0026】
また、オーガーフレーム9の前部には、左右のデバイダ13とレシプロ式の刈刃14を設けている。さらに、箱枠状に形成したフィーダハウス8内には、駆動軸15に取り付けた後部の駆動スプロケット16と前部のドラム17間に左右の搬送チェン18を巻回すると共に、左右の搬送チェン18間に所定間隔を有して複数のスラット19を横架したフィーダFを設けている。なお、大豆を刈り取る際は、フィーダハウス8の底板を目抜き構造にして土やほこりを機外に排出できるようにしている。
【0027】
また、リールフレーム10には、掻込リールRを設けており、掻込リールRはリールフレーム10の左右先端部に回転自在に軸支した駆動軸と、この駆動軸と一体回転する側面視多角形状(実施例では6角形状)の左右の回転支持体20とを備えている。さらに、左右の回転支持体20の頂点部には、左右方向に伸延する複数のタイン取付け杆21を回転自在に架設し、各タイン取付け杆21には所定間隔毎にバネ式のタイン22を垂下状に取り付けている。
【0028】
そして、上記回転支持体20の一方の横外側には、駆動軸の軸芯とは偏倚した軸芯廻りに回転する姿勢保持用回転体23を設け、姿勢保持用回転体23の各頂点に設けた枢支体24とタイン取付け杆21の一側端とをリンクを介して連結することにより、タイン22が回転支持体20の回転にかかわらず常時下方を向くようにその姿勢を保持する。
【0029】
なお、リールフレーム10は、オーガーフレーム9の上部に回動自在に枢支した左右の揺動アーム25の先端に後部を回動自在に枢支し、フィーダハウス8に一端を取り付けた前後移動用の電動油圧シリンダ26を伸縮作動させることによって、掻込リールRを揺動アーム25を介してオーガーフレーム9に対して前後に位置調節することができる。また、リールフレーム10の中ほどとオーガーフレーム9との間には、昇降用の油圧シリンダ27を設け、この油圧シリンダ27を伸縮作動させることによって、掻込リールRをオーガーフレーム9に対して上下に高さ調節することができる。
【0030】
そして、以上のように構成するヘッダ部7は、機体フレーム3の前部に立設した脱穀部4の前部フレームにホルダを介して回動自在に支承すると共に、フィーダハウス8と機体フレーム3との間に設けた昇降用油圧シリンダ28の伸縮作動によって、ヘッダ部7の前部側を下降させた状態と上昇させた状態に姿勢変更することができる。なお、フィーダFの駆動軸15は、上記ヘッダ部7の回動中心と同芯上に設けてあり、ヘッダ部7の掻込リールR、刈刃14、オーガ12、及びフィーダFは、エンジン動力によって駆動される。
【0031】
従って、ヘッダ部7を下降させた状態として機体を走行させると、圃場の植立穀稈(作物)が左右のデバイダ13によって刈取対象と非刈取対象とに分草され、その内、刈取対象の植立穀稈が掻込リールRによってプラットホーム11内に掻き込まれながら刈刃14で刈取られる。また、プラットホーム11内に掻き込まれた穀稈は、プラットホームオーガ12によってフィーダハウス8の前方に横送りされ、さらに、フィーダハウス8の前方に横送りされた穀稈は、フィンガーFによってフィーダハウス8に掻き上げられて、搬送チェン18に取り付けたスラット19に係止されながらフィーダハウス8の下部を通過して、刈取られた穀稈の全体が脱穀部4に投入される。
【0032】
なお、ヘッダ部7には、リールフレーム10の前端に前照灯29が取り付けられていると共に、方向指示器30とバックミラー31がオーガーフレーム9から立設したステー32に取り付けられている。また、33はプラットホーム11の側方を覆うカバー、34は掻込リールRの伝動部を覆うカバーである。
【0033】
次に、脱穀部4について説明すると、脱穀部4はヒンジを介して上方に開閉自在なロータカバー35と、側方に開閉自在なロータサイドカバー36と、着脱自在な脱穀カバー(前カバー37、後カバー38)によって上方及び左側方を覆い、後方は前後に開閉自在な排塵カバー39で覆っている。また、脱穀部4はフィーダFによって搬送されてきた穀稈が投入される扱室40と、扱室40の下側に形成された選別室41とを備える。
【0034】
この内、扱室40内には機体の前後方向軸芯周りに回転する扱胴42を軸架しており、扱胴42の下方には、フィーダFによって搬送されてきた穀稈を受け入れる入口受板に引き続いて、扱胴42の下部周辺を覆うように円弧状の受網を周設している。そして、扱室40に投入された穀稈は扱胴42によって機体後方側に揉み解されながら搬送され、また、扱胴42の外周上を周回する間に受網に擦り付けられて脱粒処理が行われる。
【0035】
一方、扱室40の下側に形成した選別室41には揺動選別体43を設け、この揺動選別体43は、その前後をリンクと駆動リンク等で構成する揺動機構によって前後揺動自在に支持し、揺動選別体43が前後に揺動することで処理物を比重選別する。また、揺動選別体43の下方には、揺動選別体43に向かう選別風を発生させる唐箕ファン44とターボファン45を設け、これらのファン44、45によって生成された選別風によって処理物を揺動選別体43において風選する。そして、揺動選別体43から漏下した穀粒は一番螺旋46上に落下する。また、二番物は二番螺旋47上に落下する。
【0036】
さらに、揺動選別体43の終端まで移送された藁屑等の塵埃は、受網の後端部まで搬送された排藁等と共に、機体後部に設けた排出口48から機外に排出される。なお、一番螺旋46によって横送りされた穀粒は、図示しないバケットコンベアと上方横螺旋によってグレンタンク6内に揚送されると共に、二番螺旋47によって横送りされた二番物は、図示しないスラットコンベアと還元横螺旋によって扱室40の前部に還元して、再度脱粒処理を行うか、又は還元横螺旋筒の中途に設けた蓋を開いて、二番物を揺動選別体43上に再び落下させて、再選別処理を行うことができる。なお、グレンタンク6は、機体の後端部に設けた排出オーガ49によって軽トラック等に積載したコンテナ内に穀粒を排出することができる。
【0037】
次に、汎用コンバインの動力伝達系統について説明する。図2に示すように動力源となるエンジン50で発生した動力は、その出力プーリ50a〜50eからベルトを介して走行系と作業系とに分岐して伝達される。また、走行系動力は、静油圧式無段変速装置(走行HST)51に伝達され、静油圧式無段変速装置(走行HST)51は前後進及び無段変速を行った後、走行トランスミッションケース52に伝動する。そして、走行トランスミッションケース52には、副変速装置53、左右のサイドクラッチ54、減速ターンクラッチ・ブレーキ55、乃至駆動クラッチ56等を設け、左右のクローラ式走行装置1を駆動する。
【0038】
一方、作業系動力は、図3に示すようにベルトテンションクラッチから構成する作業機クラッチ(脱穀クラッチ)57を介してカウンター軸58に伝達し、カウンター軸58から脱穀部4とヘッダ部7に分岐して伝達する。なお、グレンタンク6の図示しない横螺旋等は出力プーリ50aからベルトを介して駆動する。また、脱穀部4の扱胴42、及び揺動選別体43等は、カウンター軸58に設けたプーリ58a〜58fの内、プーリ58b、58e、58fを介して駆動するが詳細な説明は省略し、以下、プーリ58aを介して駆動するヘッダ部7の動力伝達系統について説明する。
【0039】
すなわち、ヘッダ部7は、プーリ58aからベルトテンションクラッチから構成する刈取クラッチ59を介してヘッダ部の7のカウンター軸60にエンジン50の動力が伝達される。また、カウンター軸60に伝達された動力は、第1の伝動装置T1を介してオーガ12とフィーダFに伝達する一方、静油圧式無段変装装置(搬送HST)61を備える第2の伝動装置T2を介して掻込リールRと刈刃14に伝達する。さらに、第1の伝動装置T1に正逆転切換え機構Gを設け、この正逆転切換え機構Gを逆転状態に切換えた際には、第2の伝動装置T2に備える静油圧式無段変装装置(搬送HST)61を介してオーガ12とフィーダFを逆回転させる。
【0040】
より具体的に説明すると、図4に示すように前記カウンター軸60の他端は、搬送ギヤケース62に支承する入力軸63の一端にジョイントJを介して連結する。また、搬送ギヤケース62には静油圧式無段変速装置(搬送HST)61を取り付け、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61のポンプ軸61aを入力軸63の他端にジョイントJを介して連結する。そして、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61のモータ軸61bは、搬送ギヤケース62に支承するカウンター軸64の一端にジョイントJを介して連結する。
【0041】
また、カウンター軸64には駆動ギヤ64aを一体に形成し、駆動ギヤ64aは搬送ギヤケース62に支承する第2出力軸65に一体に形成する従動ギヤ65aと噛み合って第2出力軸65を駆動する。さらに、第2出力軸65には駆動スプロケット66を取り付け、フィーダFの駆動軸15と二重軸とする内周側のリール・刈刃駆動軸67に取り付けた従動スプロケット68をチェン69を介して駆動する。そして、リール・刈刃駆動軸67に設けたリール・刈刃クラッチ70を介して最終的に掻込リールRと刈刃14をヘッダ部7の右側から駆動する。
【0042】
従って、説明の都合上、順序が逆になるが、前記第2の伝動装置T2は、搬送ギヤケース62の入力軸63、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61、カウンター軸64、第2出力軸65、リール・刈刃駆動軸67、及びリール・刈刃クラッチ70等を経由して掻込リールRと刈刃14を駆動する伝動系によって構成し、掻込リールRと刈刃14は、エンジン50の動力を第2の伝動装置T2に備える静油圧式無段変速装置(搬送HST)61により無段変速した動力によって駆動する。
【0043】
一方、搬送ギヤケース62に支承する第1出力軸71には、一対の従動ギヤ72、73をスリーブ74を挟んで回動自在に軸支する。また、搬送ギヤケース62に片持ち支持させたアイドル軸75にアイドルギヤ76を回転自在に軸支する。そして、一方の従動ギヤ72をアイドルギヤ76を介して入力軸63に固定した駆動ギヤ77に噛み合わせ、他方の従動ギヤ73をカウンター軸64の駆動ギヤ64aに噛み合わせ、これらによって常時噛み合い式の正逆転切換え機構Gが構成される。
【0044】
さらに、第1出力軸71には、駆動スプロケット78を取り付け、フィーダFの駆動軸15に取り付けた従動スプロケット79を、チェン80を介して駆動する。また、フィーダFの駆動軸15に取り付けた駆動スプロケット81を介してオーガ12をヘッダ部7の左側から駆動する。従って、前記第1の伝動装置T1は、搬送ギヤケース62の入力軸63、アイドルギヤ76、従動ギヤ72及びその爪72a、スリーブ74、第1出力軸71、及びフィーダFの駆動軸15等を経由してフィーダFとオーガ12を駆動する伝動系によって構成し、フィーダFとオーガ12は、エンジン50の動力が第1の伝動装置T1によって無段変速することなく正転状態で直接、伝達されて駆動される。
【0045】
そして、第1の伝動装置T1は、前述した正逆転切換え機構Gを備え、前記スリーブ74を図示しないシフタによって移動させて、従動ギヤ73の爪73aに噛み合わせると、カウンター軸64の駆動ギヤ64aを介して静油圧式無段変速装置(搬送HST)61によって無段変速した動力が第1出力軸71に伝達され、フィーダFとオーガ12は、エンジン50の動力を第2の伝動装置T2に備える静油圧式無段変速装置(搬送HST)61により無段変速した動力によって伝達されて逆転状態で駆動される。
【0046】
なお、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61は、掻込リールRと刈刃14を駆動するためのものであるため、基本的に逆回転させることは好ましくなく、寧ろ逆回転させると植立穀稈を倒伏させたり、掻込リールRが破損する虞がある。そこで、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61は、図5の油圧回路図に示すように、可変容量型油圧ポンプPと定容量型油圧モータMを接続する閉回路a、bに夫々に、通常、チャージポンプCPによってチャージオイルを補給するチェックバルブcvと高圧リリーフバルブrvを設けるが、これを逆回転側の閉回路bには設けず、代わりにチャージポンプCPによって補給するチャージオイルを直接、迂回路cを介して閉回路bに供給する。
【0047】
そのため、油圧ポンプPの斜板を誤って逆回転側に操作した際には、油圧ポンプPからの圧油が迂回路c、チェックバルブcvを介して油圧ポンプPに戻され、閉回路a、bは略同圧となって油圧モータMは停止し、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61は逆回転が規制される。従って、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61は、中立状態から正回転方向に向かって変速できたとしても、斜板を逆回転させても停止状態が維持され、実質的に中立状態が広がった状態になり、掻込リールRと刈刃14、又は正逆転切換え機構Gに伝達される回転は常に正回転となり、逆回転することはない。
【0048】
次に、操縦部5について説明すると、操縦部5は図6に示すように、ステップ82と、エンジンカバー上に取付けた座席83と、座席83の側方に立設したサイドパネル84と、座席83の前方に立設したフロントパネル85等から構成する。この内、サイドパネル84にはガイド溝から突出する走行変速レバー(主変速レバー)86、副変速レバー87、及びエンジンコントロールレバー88と、サイドパネル84に組み込んだスイッチパネル89等を設けており、走行変速レバー86のグリップには、押しボタンからなる強制掻込スイッチ90と倒伏スイッチ91を一体的に組み込んでいる。なお、走行変速レバー86は、中立位置から前方又は後方に操作することによって静油圧式無段変速装置(走行HST)51の図示しないトラニオン軸を回動させて、走行の主変速操作を行うものである。
【0049】
また、フロントパネル85にはマルチステアリングレバー92と、エンジン回転数・燃料計・車速・負荷状態等を表示するモニタ93と、刈高さ設定ダイヤル94等を設けており、マルチステアリングレバー92のグリップの前面側にはトリガースイッチ95を、また、グリップの背面側にはリール昇降スイッチ92aとリール前後スイッチ92bを一体的に組み込んでいる。なお、マルチステアリングレバー92は、その前後揺動によって昇降用油圧シリンダ28を伸縮作動させてヘッダ部7の昇降を行い、また、その左右揺動によって走行トランスミッションケース52内に設けた左右のサイドクラッチ54、減速ターンクラッチ・ブレーキ55、乃至駆動クラッチ56等を作動させて機体の操向・旋回操作を行うものである。
【0050】
さらに、サイドパネル84に組み込んだスイッチパネル89には、走行装置1の旋回モードを減速ターンやブレーキターン等に切り替える旋回切替ダイヤル96、選別風の風量を調節するためフィンの開度を調節する選別ダイヤル97、機体フレーム3に対してヘッダ部7が予め定めた所定高さ以上に上昇した場合に、刈取クラッチ59や作業機クラッチ57を切断する制御を選択するリフトシャットスイッチ98、作業機クラッチ57及び刈取クラッチ59の断続状態を表示するパワークラッチインジケータ99、作業機クラッチ57及び刈取クラッチ59を断続するパワークラッチスイッチ100、掻込リールRの回転速度を設定するリール回転ダイヤル101、並びにリール回転ダイヤル101と一体に設けたリール回転自動スイッチ102等を設けている。
【0051】
そして、操縦部5に設けた各スイッチ、ダイヤル等の指令手段に基づく各部の作動制御は、主にマイクロコンピュータ等からなる電子制御装置(Electronic Control Unit)によって行う。この内、図7に示すブロック図は、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59、及び掻込リールRの制御に係わる電子制御装置ECUに対する入出力関係を示すものであり、電子制御装置ECUの入力側には、パワークラッチスイッチ100、正逆転切換え機構Gを逆回転状態に切り換えた際にオンとなる逆転スイッチ103、リール・刈刃クラッチ70を切断して掻込リールRと刈刃14を停止させた際にオンとなるリールクラッチスイッチ104、強制掻込スイッチ90、リール回転自動スイッチ102、パワークラッチポテンショメータ105、走行変速レバー86の操作位置を検出する変速レバーポテンショメータ106、走行速度を検出するミッション回転センサ107、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61のモータ軸61bの回転数を検出する搬送回転センサ108、並びにリール回転ダイヤル(可変抵抗器)101を接続している。
【0052】
また、電子制御装置ECUの出力側には、パワークラッチインジケータ99の刈取ランプ109、作業機ランプ110、切りランプ111、電子ブザー112、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59を断続するパワークラッチモータ113及びそのリレー114、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61のトラニオン軸を操作する搬送HST駆動モータ115及びそのリレー116を接続している。
【0053】
次に、電子制御装置ECUが行う制御内容を説明すると、電子制御装置ECUは作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の断続を制御するパワークラッチ制御と、掻込リールRの回転速度を制御するリール回転制御とを行う。先ず、パワークラッチ制御は、図8のフローチャートに示すように、ステップ1においてパワークラッチスイッチ100の切りスイッチが押されてオンとなる立ち上がりを検出すると、刈取フラグをリセットする(ステップ2)。
【0054】
また、刈取クラッチ59が入り(接続)となっているかをパワークラッチポテンショメータ105によって判断し(ステップ3)、入りとなっていれば、パワークラッチモータ113を作動させて、刈取クラッチ59を切り(切断)にして作業機クラッチ57のみが入りとなるように制御する(ステップ4)。なお、作業機クラッチ57が入りに制御されると作業機ランプ110は点灯する。さらに、切となっていれば、パワークラッチモータ113を作動させて、作業機クラッチ57を切り(切断)にして作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を切りとなるように制御する(ステップ5)。なお、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を切りに制御すると、切りランプ111が点灯する。
【0055】
そして、ステップ1においてパワークラッチスイッチ100の切りスイッチが押されていない場合は、入りスイッチが押されてオンとなる立ち上がりを検出し(ステップ6)、これを検出すると作業機クラッチ57が入りとなっているかをパワークラッチポテンショメータ105によって判断し(ステップ7)、作業機クラッチ57が入りとなっていれば、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられているかを逆転スイッチ103によって検出し(ステップ8)、逆回転状態でなければ、刈取フラグをセットする(ステップ9)。
【0056】
なお、ステップ7で作業機クラッチ57が切りとなっていれば、パワークラッチモータ113を作動させて、作業機クラッチ57を入りに制御する(ステップ5)。また、ステップ8で逆回転状態であれば、リール・刈刃クラッチ70の状態をリールクラッチスイッチ104によって判断し(ステップ10)、リール・刈刃クラッチ70が切りとなっていれば、刈取フラグをセットする(ステップ9)。
【0057】
さらに、ステップ11では、刈取フラグの状態を判断し、フラグがセットされていれば、変速レバーポテンショメータ106によって走行変速レバー86が前進側に操作されているかを判断し(ステップ12)、前進側に操作されていれば、パワークラッチモータ113を作動させて、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を入りとなるように制御する(ステップ13)。また、前進側に操作されていなければ、強制掻込スイッチ90が押されているかを判断する(ステップ14)。ここで、強制掻込スイッチ90が押されていれば、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を入りとなるように制御する(ステップ13)。しかし、強制掻込スイッチ90が押されていなければ、作業機クラッチ57のみが入りとなるように保持する(ステップ15)。なお、刈取フラグがセットされていれば、刈取ランプ109が点灯する。
【0058】
一方、ステップ11で刈取フラグがセットされていなければ、作業機クラッチ57が入りとなっているかを判断し(ステップ16)、作業機クラッチ57が入りとなっていれば、作業機クラッチ57のみが入りとなるように保持する(ステップ17)。また、作業機クラッチ57が切りとなっていれば、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を切りとなるように保持する(ステップ18)。
【0059】
従って、パワークラッチ制御では、パワークラッチスイッチ100が押されるたびに作業機クラッチ57:入り、刈取クラッチ59:入り、或いは刈取クラッチ59:切り、作業機クラッチ57:切りとなるが、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられている場合は、リール・刈刃クラッチ70が切られていなければ、刈取クラッチ59が入りとなることはない。また、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられていない場合でも、機体が前進走行中でなければ刈取クラッチ59が入りとなることはない。しかし、機体が停止又は後進中に強制掻込スイッチ90が押されれば、その間のみ刈取クラッチ59を入りにすることができる。
【0060】
要するに、パワークラッチスイッチ100をクラッチ入り側に押して作業機クラッチ57を入りとするモードになっている時に、機体が前進中であるか、または機体が停止、又は後進中でも強制掻込みスイッチ90が押された間だけ刈取クラッチ59を実質的に入りにすることができ、それ以外は刈取クラッチ59が入りになることはない。
【0061】
なお、上述のフローチャートでは、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられていて、リール・刈刃クラッチ70が切られている際に、機体を前進させると刈取クラッチ59が入りとなり、フィーダFとオーガ12は逆回転することになるが、正逆転切換え機構Gを逆回転状態に切り換えて詰まりの除去作業を行うときは、機体を停止させた状態で行うから、実際には上記状態は発生しない。しかし、上記状態を確実に防ぐために機体が前進中であっても正逆転切換え機構Gが逆回転状態であれば刈取クラッチ59を入りとしない等の牽制をかけてもよい。
【0062】
次に、掻込リールRの回転速度を制御するリール回転制御について説明すると、リール回転制御は、図9のフローチャートに示すように、刈取クラッチ59が入り(接続)となっているかをパワークラッチポテンショメータ105によって判断し(ステップ1)、入りとなっていれば、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられているかを逆転スイッチ103によって判断する(ステップ2)。そして、逆回転状態であれば、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61の目標回転数を予め定めた所定の低回転数に設定する(ステップ3)。
【0063】
また、逆回転状態でなければ、リール回転自動スイッチ102によって自動(車速同調)が選択されているかを判断し(ステップ4)、自動が選択されている場合は、目標回転数を車速に同調する回転数に設定する(ステップ5)。また、自動が選択されていない場合は、目標回転数をリール回転ダイヤル101によって指示される回転数に設定する(ステップ6)。なお、ステップ1で刈取クラッチ59が切り(切断)となっていれば、目標回転数をニュートラル、即ち、ゼロに設定する(ステップ7)。
【0064】
そして、目標回転数が設定されたら、この目標回転数と静油圧式無段変速装置(搬送HST)61の現在の回転数を搬送回転センサ108から取得して比較する(ステップ8)。ここで、目標回転数の方が上回る場合は、搬送HST駆動モータ115を増速側に回転させて、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61の出力回転数を上げる制御を行う(ステップ9)。また、目標回転数と等しい場合は、搬送HST駆動モータ115を停止させて、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61の現在の出力回転数を維持する(ステップ10)。さらに、目標回転数が下回る場合は、搬送HST駆動モータ115を減速側に回転させて、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61の出力回転数を下げる制御を行う(ステップ11)。
【0065】
なお、上記ステップ5における車速に同調する回転数については、図10の速度線図に示すように、例えば、走行トランスミッションケース52の何れかの出力軸に取り付けたミッション回転センサ107から得られる回転数に基づいて車速を算出する。また、作物の種類、或いは作物の状況に応じて掻込リールRの回転速度の増減を任意に調整するリール回転ダイヤル101の指示に従い、車速が速くなるほど掻込リールRの回転速度を速くする同調関係に基づいて、掻込リールRの回転数を決定する。
【0066】
なお、車速が極めて低速の場合は掻込リールRの回転速度を一定速度として、掻込リールRの回転を安定させる。また、掻込リールRの回転速度に上限を設けて、回転速度がそれを上回る場合には上限で規制し、作物の損傷や掻込リールR自体の損傷を防止する。さらに、詰まりの除去作業時には掻込リールRを回転させないが、その際に静油圧式無段変速装置(搬送HST)61に与える目標の回転数を掻込リールRの回転速度に換算すると、逆回転時の低速度になる。
【0067】
そして、以上のように構成する汎用コンバインを用いて刈取り作業を行う場合、パワークラッチスイッチ100を押すと、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59のタイトプーリをパワークラッチモータ113によって接続することができ(パワークラッチ制御)、刈取りを開始するため走行変速レバー86を前進側に操作すると、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59が入りとなって、ヘッダ部7と脱穀部4は駆動されて作物の収穫を行うことができる。
【0068】
なお、この際、ヘッダ部7は、正逆転切換え機構Gが正回転状態に切り換えられていると共にリール・刈刃クラッチ70が接続されているから、掻込リールRと刈刃14は、第2の伝動装置T2の静油圧式無段変速装置(搬送HST)61によって変速比幅を広くして駆動することができ、それにより、掻込リールRの回転数を作物等に応じた適切なリール回転制御に基づいて、適正に変更してヘッダ部7における頭部損失を抑えることができる。また、オーガ12とフィーダFは第1の伝動装置T1により、例えば、最高回転で常に駆動されるから、低速刈り時も詰まりの心配がない。
【0069】
そして、畦際に達して機体を停止した際や、1行程の刈取りを終えて機体の旋回を行うために後進する際に、ヘッダ部7に作物が残っているとヘッダ部7からこぼれる虞がある。そこで、この場合には、強制掻込スイッチ90を押して刈取クラッチ59を入りにすると、ヘッダ部7は駆動されて、残らず脱穀部4に作物を搬送することができるから、こぼれを防止することができる。なお、この場合の掻込リールRと刈刃14の駆動速度は、図9のフローチャート等に示していないが、比較的高速とすることでこぼれを少なくすることができる。
【0070】
また、仮にヘッダ部7に詰まりを生じた際には、機体を速やかに停止して詰まった作物を取り除く必要がある。そこで、機体を停止させて正逆転切換え機構Gを逆回転状態に切り換えると共に、リール・刈刃クラッチ70を切断する。そして、パワークラッチスイッチ100を押して作業機クラッチ57と刈取クラッチ59を共に入りとするモードにする。さらに、強制掻込スイッチ90を押すと、刈取クラッチ59が入りとなってフィーダFとオーガ12は所定の低速回転数で駆動される。
【0071】
従って、強制掻込スイッチ90の押し操作加減で様子をみながら駆動と停止を繰り返すと、フィーダFやオーガ12に詰まった作物を、詰まりを助長させることなくプラットホーム11上、或いは機外に排出することができ、詰まりを比較的簡単に除去することができる。なお、この場合、掻込リールRと刈刃14の駆動は断たれているから、掻込リールRが排出された作物を再びプラットホーム11に戻したり、刈刃14がこれを切断することを防止することができ、その後の排出された作物の回収作業も安全に行うことができる。
【0072】
なお、前述した第1の伝動装置T1と第2の伝動装置T2の搬送ギヤケース62と静油圧式無段変速装置(搬送HST)61は、ヘッダ部7を支承する機体フレーム3の前部に立設した脱穀部4の前部フレームに取り付けているので、これらの重量がヘッダ部7に付加されることはなく、ヘッダ部7の昇降作動や強度面での不利益を及ぼすことを防止できる。また、オーガ12をヘッダ部7の左側から駆動するので、オーガ12の駆動部品をヘッダ部を支承する機体の左側と同じ側に設けることができ、ヘッダ部7の捩じり変形を幾分でも改善することができる。
【0073】
さらに、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61を、フィーダFとオーガ12を逆回転で駆動する際も掻込リールRと刈刃14を駆動する場合と同じ回転方向で回転させるため、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61の停止状態を、その油圧回路によって容易に得ることができ、確実に静油圧式無段変速装置(搬送HST)61を停止させることができる。また、それにより、静油圧式無段変速装置(搬送HST)61の低速側の変速領域が拡大して安定した作動制御を行うことができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、図10に示す車速に同調させて掻込リールRの回転速度を直線状に増加させる場合もあるが、二次曲線によって増加させる、或いは、大豆等のように掻込リールRの速度が車速に対して遅くても、また速くても損失が多くなる場合は、低速時に掻込リールRの速度を意図的に上げるようにしてもよい。なお、大豆の刈取りで砕粒等の発生が多い場合には、扱ぎ胴の周速度を減速するためエンジンコントロールレバー88を操作してエンジン回転数を下げる。さらに、正逆転切換え機構Gを常時噛み合い式としたが、入力軸63に固定した駆動ギヤ77とカウンター軸64の駆動ギヤ64aの何れかに選択的に噛み合うスライドギヤを設けて、選択摺動式の正逆転切換え機構Gとしてもよく、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、各部の構成を種々変形することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 クローラ式走行装置
4 脱穀部
7 ヘッダ部
12 オーガ
14 刈刃
51 静油圧式無段変装装置(走行HST)
57 作業機クラッチ
59 刈取クラッチ
61 静油圧式無段変装装置(搬送HST)
70 リール・刈刃クラッチ
90 強制掻込スイッチ
F フィーダ
G 正逆転切換え機構
R 掻込リール
T1 第1の伝動装置
T2 第2の伝動装置
ECU 電子制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10