【実施例】
【0058】
以下の実施例は、前述の開示内容を使用する様式をより十分に説明するのに、ならびに開示内容の様々な局面を実施するために企図される最良の形態を説明するのに役立つ。これらの実施例は本開示内容の真の範囲を限定する働きは決してせず、むしろ例示的な目的で提示されることが理解されよう。
【0059】
比較例1
図1は、限外ろ過処理を実施するのに使用される装置の主要構成要素を示す。リサイクルタンクは初期材料および保持液を含む。混合装置は、移送ラインを介して添加される初期プールと限外ろ過膜からリサイクルタンクへと戻る保持液とを均一に混合することを徹底する。供給液ポンプは、膜の上に接線流を作り出す。供給液圧力は、膜の入口で測定される。保持液圧力制御バルブは膜の下流の保持液側で使用されて、例えば膜間圧(TMP)制御下で保持液圧力を調整する。膜と保持液圧力制御バルブの間で、圧力センサーが保持液圧力を測定する。膜の透過液側では、膜を通ってろ過された液体の圧力が透過液圧力センサーによってモニターされる。
【0060】
実験室規模の限外ろ過処理ために、自動TFFシステムAKTAcrossflow(GE Healthcare, US)を使用した。Hydrosart再生セルロース膜を用い、公称分画分子量が30kDaであり、最大供給液圧力規格が4.0バールである0.02m
2 Sartoconスライスカセット(Sartorius, Germany)を使用して、限外ろ過処理を実施した。
【0061】
使用する前に、膜カセットを1mol/L水酸化ナトリウムを用いて洗浄し、精製水ですすいだ。比較可能な膜特性を確保するために、標準化された流束を決定した。処理の前に、30mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.8)を用いて膜カセットを平衡化した。限外ろ過は室温で稼働させた。
【0062】
出発原料は、ヒト化抗ヒトインターロイキン-6受容体(IL-6R)モノクローナル抗体(トシリズマブ(登録商標:ACTEMRA、RoACTEMRA)(PCT公報番号WO92/19759、米国特許第5795965号参照)の精製プールから調製した。精製プールを60mg/mLになるまで濃縮し、30mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.8)へと緩衝液交換を行った。
【0063】
緩衝液交換を行ったプール(DFプール)を、625g抗体/m
2でTFFシステムに添加した。処理全体を通じて、供給液流量を250LMH(L/m
2/時間)の一定流量に設定した。保持液圧力制御バルブが完全に開いた状態になるまで、TMPを1.0バールに制御した。限外ろ過処理は、透過液側を開放したまま稼働させた。供給液圧力が3.5バールを超えた時に、稼働を終了させた。限外ろ過処理後、一定の保持液流量(10mL/分)下で15分間、透過液側が閉じた状態で濃縮溶液を循環させ、次いで、メスシリンダー中に回収した。回収されたプールを、視覚的に均一になるまで撹拌した。
【0064】
タンパク質濃度測定のために、回収されたプールを、密度計DMA 4500(Anton Paar, Austria)によって測定された密度の値を用いて重量測定によって希釈した。UV/Vis分光光度計DU800(Beckman Coulter, US)を用いて、280nmのUV吸光度を測定した。
【0065】
図2は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表1は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
比較例2
以下の点を除いて、比較例1を繰り返した。保持液体積が100g/Lのタンパク質濃度に相当する値に達した時に、供給液流量を80LMHに低減させた。
【0068】
図3は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表2は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0069】
【表2】
【0070】
比較例3
以下の点を除いて、比較例1を繰り返した。保持液体積が200g/Lのタンパク質濃度に相当する値に達した時に、供給液流量を80LMHに低減させた。
【0071】
図4は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表3は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0072】
【表3】
【0073】
実施例4
以下の点を除いて、比較例1を繰り返した。供給液圧力が3.5バールを超えた時に、供給液流量を80LMHに低減させた。この時点での保持液体積の値は、240g/Lのタンパク質濃度に相当する。
【0074】
図5は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表4は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例5
以下の点を除いて、実施例4を繰り返した。一定の供給液流量(250LMH)下で供給液圧力が3.5バールを一度超えると、供給液圧力を3.5バールに維持するよう供給液流量が自動流量制御に供された。供給液流量が80LMHまで低下した時に、稼働を終了させた。
【0077】
図6は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表5は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0078】
【表5】
【0079】
実施例6
以下の点を除いて、実施例4を繰り返した。供給液圧力が3.5バールを一度超えると、流路が循環様式に切り換えられた。循環様式では、保持液圧力制御バルブが完全に開きかつ透過液バルブが閉じた状態で保持液を膜に通して循環させた。一定の供給液流量(80LMH)下での20分間の循環の後、同じ供給液流量下で限外ろ過を再開させた。
【0080】
図7は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表6は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0081】
【表6】
【0082】
実施例7
以下の点を除いて、実施例6を繰り返した。一定の供給液流量(10LMH)下で循環を実施した。
【0083】
図8は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表7は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0084】
【表7】
【0085】
図9は、実施例1〜7において回収されたプールの濃度をまとめている。
【0086】
実施例8
ヒト化IL-6Rモノクローナル抗体の濃縮プールの粘度を、AR1000レオメーターならびに直径40mm、角度2度、およびトランケーション53マイクロメートルのコーンおよびプレート寸法を用いて測定した(TA Instruments, US)。
【0087】
図10は、15℃、25℃、および35℃の温度における濃度に対する粘度のプロットを示す。
【0088】
比較例9
スケールアップした研究のために、UF/DF処理をパイロット規模で実施した。異なるサイズのTFFシステムを用いて2段階で処理を稼働させた。1.20m
2 Sartoconカセットを使用する、より大型のTFFシステムを用いて、UF1/DF/UF2工程を処理した。0.30m
2 Sartoconカセットを使用する、より小型のTFFシステムを用いて、UF3/UF4工程を処理した。処理全体を通じて、透過液側を開放したまま室温で稼働させた。使用したSartoconカセットは30kDa(カットオフ値)のHydrosart膜(Sartorius, Germany)であった。
【0089】
使用する前に、膜カセットを1mol/L水酸化ナトリウムを用いて洗浄し、精製水ですすいだ。比較可能な膜特性を確保するために、標準化された流束を決定した。
【0090】
処理の前に、大型システムでは30mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.8)を、小型システムでは20mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH6.1)をそれぞれ用いて、膜カセットを平衡化した。処理は全体にわたって室温で実施した。
【0091】
大型システムでは、ヒト化抗ヒトIL-6Rモノクローナル抗体の精製プールを259g抗体/m
2で添加した。供給液流量を710LMHの一定流量に設定した。TMPを1.0バールに制御した。精製プールをUF1工程で20g/Lに濃縮し、次いで、7倍量のダイアフィルトレーション容量(diavolume)の30mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.8)を用いてダイアフィルトレーションを行った。ダイアフィルトレーション後、UF2工程でプールをさらに60g/Lに濃縮した。UF2プールを、5psiの低差圧下で15分間、膜に通して循環させ、次いで別の容器中に回収した。
【0092】
小型システムでは、回収されたUF2プールを990g抗体/m
2で添加した。UF3工程において、供給液流量を250LMHの一定流量に設定した。保持液体積が100g/Lのタンパク質濃度に相当する値に達した時に、UF3工程を終了させた。UF4工程において、供給液流量を80LMHの一定流量に設定した。保持液圧力制御バルブが完全に開いた状態になるまで、TMPを1.0バールに制御した。保持液体積が240g/Lのタンパク質濃度に相当する値に低下した時に、稼働を終了させた。保持液体積が目標体積に達する前に供給液圧力が上限に近づきつつあったため、80分後に供給液流量を手動で低減させたことは、かなり注目に値する。
【0093】
UF4プールを、15psiの低差圧下で15分間、膜に通して循環させ、次いで別の容器中に回収した。容器を逆さにすることによって、回収されたUF4プールをよく混合した。
【0094】
タンパク質濃度測定のために、回収されたUF4プールを、密度計Densito 30PX(Mettler Toledo, Switzerland)によって測定された密度の値を用いて重量測定によって希釈した。UV/Vis分光光度計UV-1700(Shimadzu, Japan)を用いて、280nmのUV吸光度を測定した。
【0095】
図11は、UF1/DF/UF2工程における供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMP、および保持液体積に関して経時的に測定された値を示す。
【0096】
図12は、UF3/UF4工程における供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。
【0097】
表8は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0098】
【表8】
【0099】
表9は、工程の収率を計算した結果を示す。
【0100】
【表9】
【0101】
実施例10
以下の点を除いて、比較例9を繰り返した。30kDaカットオフ値のHydrosart膜を用いる0.40m
2 Sartoconカセット(Sartorius, Germany)を使用してUF3/4工程を実施した。大型システムでは、精製プールを274g抗体/m
2で添加した。小型システムでは、回収されたUF2プールを804g抗体/m
2で添加した。保持液体積が220g/Lのタンパク質濃度に相当する値に達した時に、処理はUF3工程からUF4工程へと移行した。
【0102】
図13は、UF1/DF/UF2工程における供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMP、および保持液体積に関して経時的に測定された値を示す。
【0103】
図14は、UF3/UF4工程における供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMP、および保持液体積に関して経時的に測定された値を示す。
【0104】
表10は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0105】
【表10】
【0106】
表11は、工程の収率を計算した結果を示す。
【0107】
【表11】
【0108】
実施例11
以下の点を除いて、実施例10を繰り返した。生産規模のTFFシステムをGMP製造施設において使用した。35.10m
2 Sartoconカセットを使用してUF1/DF/UF2工程を実施し、30kDaカットオフ値のHydrosart膜を用いる17.55m
2 Sartoconカセット(Sartorius, Germany)を使用してUF3/4工程を実施した。大型システムでは、精製プールを243g抗体/m
2で添加した。小型システムでは、回収されたUF2プールを478g抗体/m
2で添加した。DF緩衝液を39mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.8)に交換した。UF2プールの目的タンパク質濃度を75g/Lまで上昇させた。UF2工程の最後に、供給液流量を低減させて、リサイクルタンク中で泡立ちが起こるのを防止した。回収を最大にするために、UF2プールおよびUF4プールをそれぞれ70Lおよび1Lの緩衝液置換によって回収した。回収されたUF4プールを、20mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH6.0)、30mmol/Lメチオニン、100mmol/Lアルギニン、および0.2%ポリソルベート80中、180g/Lで製剤化した(PCT公報番号WO2009/084659参照)。タンパク質濃度測定のために、UF4プールおよび回収されたUF4プールを、密度標準を用いて重量測定によって希釈した。UV/Vis分光光度計UV-2450(Shimadzu, Japan)を用いて、280nmのUV吸光度を測定した。
【0109】
図15は、UF1/DF/UF2工程における供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMP、および保持液体積に関して経時的に測定された値を示す。
【0110】
図16は、UF3/UF4工程における供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMP、および保持液体積に関して経時的に測定された値を示す。
【0111】
表12は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0112】
【表12】
【0113】
表13は、工程の収率を計算した結果を示す。
【0114】
【表13】
【0115】
HPLCシステムAlliance 2695(Waters, US)およびYMC-Pack ODSA、250×4.6mmカラム(YMC, Japan)を用いて、ヒスチジン濃度を測定した。表14は、ヒスチジン定量アッセイの結果を示す。
【0116】
【表14】
【0117】
HPLCシステムAlliance 2695(Waters, US)およびTSK G3000SW
XLカラム(Tosoh, Japan)を用いて、工程中のプールにおけるモノマー含有量を測定した。表15は、SECアッセイの結果を示す。
【0118】
【表15】
【0119】
実施例12
以下の点を除いて、実施例11を繰り返した。大型システムでは、精製プールを246g抗体/m
2で添加した。小型システムでは、回収されたUF2プールを482g抗体/m
2で添加した。
【0120】
図17は、UF1/DF/UF2工程における供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMP、および保持液体積に関して経時的に測定された値を示す。
【0121】
図18は、UF3/UF4工程における供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。
【0122】
表16は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0123】
【表16】
【0124】
表17は、工程の収率を計算した結果を示す。
【0125】
【表17】
【0126】
HPLCシステムAlliance 2695(Waters, US)およびYMC-Pack ODSA、250×4.6mmカラム(YMC, Japan)を用いて、ヒスチジン濃度を測定した。表18は、ヒスチジン定量アッセイの結果を示す。
【0127】
【表18】
【0128】
HPLCシステムAlliance 2695(Waters, US)およびTSK G3000SW
XLカラム(Tosoh, Japan)を用いて、工程中のプールにおけるモノマー含有量を測定した。表19は、SECアッセイの結果を示す。
【0129】
【表19】
【0130】
比較例13
実験室規模の自動TFFシステムAKTAcrossflow(GE Healthcare, US)を限外ろ過処理のために使用した。Ultracel再生セルロース膜を用い、公称分画分子量が30kDaである2つの88cm
2 Pellicon3カセット(Merck Millipore, Germany)を使用して、限外ろ過処理を実施した。
【0131】
使用する前に、膜カセットを0.5mol/L水酸化ナトリウムを用いて洗浄し、精製水ですすいだ。比較可能な膜特性を確保するために、標準化された流束を決定した。処理の前に、20mmol/L tris、150mmol/Lアルギニン緩衝液(pH7.0)を用いて膜カセットを平衡化した。限外ろ過は室温で稼働させた。
【0132】
抗体クラスIgG2に属するモノクローナル抗NR10ヒト化抗体(WO2009/072604の実施例12で示された方法に従って調製した、完全にヒト化されたNS22抗体)の精製プールから出発原料を調製した。これは、pIが5.6まで低くなるようにアミノ酸配列が改変された抗体である。精製プールを20mg/mLになるまで濃縮し、20mmol/L tris、150mmol/Lアルギニン緩衝液(pH7.0)へと緩衝液交換を行った。
【0133】
緩衝液交換を行ったプール(DFプール)を、625g抗体/m
2で添加した。供給液流量は、250LMH(L/m
2/時間)の一定流量で稼働させ、次いで、保持液体積が60g/Lのタンパク質濃度に相当する値に達した時に、80LMHに低減させた。保持液圧力制御バルブが完全に開いた状態になるまで、TMPを1.0バールに制御した。限外ろ過処理は、透過液側を開放したまま稼働させた。供給液圧力が3.5バールを超えた時に、稼働を終了させた。限外ろ過処理後、一定の供給液流量(10mL/分)下で15分間、透過液側が閉じた状態で濃縮溶液を循環させ、次いで、メスシリンダー中に回収した。回収されたプールを、視覚的に均一になるまで撹拌した。
【0134】
タンパク質濃度測定のために、回収されたプールを密度計DMA 4500(Anton Paar, Austria)によって測定された密度の値を用いて重量測定によって希釈した。UV/Vis分光光度計DU800(Beckman Coulter, US)を用いて、280nmのUV吸光度を測定した。
【0135】
図19は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表20は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0136】
【表20】
【0137】
実施例14
以下の点を除いて、比較例13を繰り返した。供給液圧力が3.5バールを超えた時に、供給液流量を80LMHに低減させた。この時点での保持液体積の値は、145g/Lのタンパク質濃度に相当する。
【0138】
図20は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表21は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0139】
【表21】
【0140】
実施例15
以下の点を除いて、実施例14を繰り返した。一定の供給液流量(250LMH)下で供給液圧力が3.5バールを一度超えると、供給液圧力を3.5バールに維持するよう供給液流量が自動流量制御に供された。供給液流量が80LMHまで低下した時に、稼働を終了させた。
【0141】
図21は、供給液流量、供給液圧力、保持液圧力、TMPに関して経時的に測定された値を示す。表22は、タンパク質濃度測定の結果を示す。
【0142】
【表22】