【文献】
Gordon Sze, et al.,“Fast Spin-Echo MR Imaging of the Cervical Spine:Influence of Echo Train Length and Echo Spacing on Image Contrast and Quality”,American Journal of Neuroradiology,1993年 9月,Vol.14, Issue 5,p1203-p1213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0012】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信RFコイル(以下、単に「受信コイル」と呼ぶ)4などを有している。
【0013】
マグネット2は、被検体13が収容される収容空間21を有している。またマグネット2には、超伝導コイル、勾配コイル、RFコイルなど(図示せず)が内蔵されている。超伝導コイルは静磁場を印加し、勾配コイルは勾配磁場を印加し、RFコイルはRFパルスを印加する。
【0014】
テーブル3は、クレードル3aを有している。クレードル3aは、マグネット2の収容空間21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体13はマグネット2の収容空間21に搬送される。
【0015】
受信コイル4は、被検体13の腹部から胸部に渡って取り付けられている。受信コイル4は、被検体13からの磁気共鳴信号を受信する。
【0016】
MR装置100は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7、コンピュータ8、操作部11、および表示部12などを有している。
【0017】
送信器5はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源6は勾配コイルに電流を供給する。受信器7は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。尚、マグネット2、受信コイル4、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7を合わせたものがスキャン手段に相当する。
【0018】
コンピュータ8は、表示部11に必要な情報を伝送したり、画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。コンピュータ8は、プロセッサ9および記憶部10などを有している。
【0019】
記憶部10には、プロセッサ9により実行されるプログラムなどが記憶されている。尚、記憶部10は、コンピュータで読取り可能な非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体としては、例えば、CD−ROMを用いることができる。プロセッサ9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行する。
図2に、プロセッサ9が実行する処理を示す。プロセッサ9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、スキャン時間算出手段81〜TR決定手段90などを構成する。
【0020】
スキャン時間算出手段81は、スキャン時間を算出する。
目標値設定手段82は、スキャン条件を求めるために使用されるスキャン時間の目標値を設定する。
パラメータ値設定手段83は、パラメータ値を設定する。
エコースペース算出手段84は、エコースペースを算出する。
上限値決定手段85は、エコースペースの上限値を決定する。
下限値決定手段86は、エコースペースの下限値を決定する。
ビュー数算出手段87は、k空間においてデータの収集が行われるビューの数を算出する。
繰返し回数算出手段88は、シーケンス群の繰り返し回数を算出する。
エコートレイン数算出手段89は、エコートレイン数を算出する。
TR決定手段90は、繰り返し時間を決定する。
【0021】
プロセッサ9は、スキャン時間算出手段81〜TR決定手段90を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。尚、繰返し回数算出手段88およびエコートレイン数算出手段89を合わせたものが、エコートレイン数を求める手段に相当する。
【0022】
操作部11は、オペレータにより操作され、種々の情報をコンピュータ8に入力する。表示部12は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0023】
図3は、本形態における撮影部位を概略的に示す図である。
本形態では、被検体の肝臓が撮影される。
図3には、SI方向の撮影範囲ARが示されている。撮影範囲AR内に、N枚のスライスSL1〜SL
N(スライス厚TH)が設定されている。
【0024】
図4は、撮影部位のデータを収集するために実行されるスキャンの一例を示す図である。
図4では、スキャンSCを複数のシーケンス群P
1〜P
mに分けて示してある。スキャンSCでは、繰り返し時間TRの間に、1つのシーケンス群が実行される。各シーケンス群は、マルチスライス法によりスライスSL
1〜SL
N(
図3参照)からデータを収集するためのシーケンスC
1〜C
Nを含んでいる。
図4では、シーケンス群P
1〜P
mのうちシーケンス群P
1における複数のシーケンスC
1〜C
Nが示されている。
【0025】
シーケンスC
1は、スライスSL
1を励起するための励起パルス(90°パルス)と、スピンの位相を再収束するための複数のリフォーカスパルス(180°パルス)とを有している。また、シーケンスC
1は、スライス選択方向SSに印加されるスライス選択勾配パルス、位相エンコード方向PEに印加される位相エンコード勾配パルス、および周波数エンコード方向FEに印加される周波数エンコード勾配パルスを有している。シーケンスC
1を実行することにより、複数のエコーE1〜EvからなるエコートレインETを収集することができる。複数のエコーE1〜Evのエコースペースは、「ESP」で表されている。尚、画像再構成に必要なk空間のデータを収集するために、シーケンスは、位相エンコード方向の勾配パルスの大きさは変化するように構成されている。
【0026】
シーケンスC
1を実行した後、スライスSL
2〜SL
Nの画像を取得するためのシーケンスC
2〜C
Nが順に実行される。シーケンスC
2〜C
Nは、90°パルスおよび180°の励起周波数を除いて、シーケンスC
1と同じシーケンスチャートで表される。したがって、シーケンスC
1〜C
Nの各々を実行するたびに、エコートレインETを収集することができる。
【0027】
シーケンス群P
1を実行した後、次のシーケンス群P
2が実行される。シーケンス群P2でも、シーケンスC
1〜C
Nが実行される。以下同様に、シーケンス群P
3〜P
mが実行される。したがって、スキャンSCでは、画像再構成用のデータを収集するために、シーケンス群がm回繰り返し実行される。
【0028】
尚、FSE法で被検体をスキャンする場合、励起パルス(90°パルス)とエコートレインETの最後に収集されるエコーEvとの間の時間(以下、「最大エコー時間」と呼ぶ)TEzが長すぎると、ブラーリングによる画像劣化が大きくなるという問題がある。また、エコートレインETのエコートレイン数ETLが大きすぎると、MT(Magnetization Transfer)効果によるコントラストの変化に起因した画像劣化が大きくなってしまうという問題もある。また、そこで、本形態では、スキャンSCを実行する前に、画像劣化ができるだけ小さくなるようなスキャン条件を求めている。以下に、画像劣化ができるだけ小さくなるようなスキャン条件を求める方法について、
図5に示すフローを参照しながら説明する。
【0029】
ステップST1では、被検体のスキャン条件が設定される。
図6に、設定されたスキャン条件A1を概略的に示す。
【0030】
図6では、パラメータとして、代表して、エコー時間TE、解像度Xres、解像度Yres、スライス枚数N、スライス厚TH、エコースペースESP、繰り返し回数m、エコートレイン数ETL、繰り返し時間TRが示されている。
【0031】
エコー時間TEは、励起パルス(90°パルス)を印加してからk空間の中央のkyビューのデータが収集されるまでのエコー時間(実効エコー時間)を表している。したがって、k空間の中央のkyビューのデータが第iエコー(i=1〜vの整数)により得られる場合、励起パルス(90°パルス)から第iエコーまでの時間が、(実効)エコー時間TEとなる。
図4では、k空間の中央のkyビューのデータは、第1エコーE1により得られる例が示されている。したがって、励起パルス(90°パルス)から第1エコーE1までの時間が、(実効)エコー時間TEとなる。尚、k空間の中央のkyビューのデータが、最後のエコーEvにより得られる場合、励起パルス(90°パルス)から最後のエコーEvまでの時間が、(実効)エコー時間TEとなる。
【0032】
また、解像度Xresは周波数エンコード方向FE(
図4参照)の解像度を表しており、解像度Yresは位相エンコード方向PE(
図4参照)の解像度を表している。繰り返し回数mは、スキャンSCにおいてシーケンス群が繰り返し実行される回数を表している。
【0033】
図6に示すスキャン条件A1は、説明の便宜上、TE=TE1、Xres=Xres1、Yres=Yres1、N=N1、TH=TH1、ESP=ESP1、m=m1、ETL=ETL1、TR=TR1で示してある。尚、スキャン条件A1の各パラメータ値は、オペレータが手入力してもよいし、各病院で典型的に使用されている値をそのまま使用してもよい。スキャン条件A1が設定されたら、ステップST2に進む。
【0034】
ステップST2では、スキャン時間算出手段81(
図2参照)が、スキャン条件A1で被検体をスキャンするときに掛かるスキャン時間t1を算出する。
図7に、スキャン条件A1におけるスキャン時間t1を示す。スキャン時間t1は、以下の式(1)で求められる。
t1=m×TR ・・・(1)
【0035】
スキャン条件A1では、m=m1であり、TR=TR1である。したがって、スキャン時間t1は、以下の式(2)で表すことができる。
t1=m×TR
=m1×TR1 ・・・(2)
【0036】
スキャン時間t1を計算した後、ステップST20に進む。
ステップST20では、スキャン条件A1とは別に、良好な画質の画像を得ることが可能な他のスキャン条件を求める。以下に、ステップST20において、他のスキャン条件を求める方法について、
図8を参照しながら説明する。
【0037】
図8は、ステップST20により求められた他のスキャン条件A2の一例を概略的に示す図である。以下、スキャン条件A2を求めるときの手順について説明する。尚、ステップST20は、ステップST3〜ステップST11を有しているので、ステップST3〜ステップST11について順に説明する。
【0038】
ステップST3では、目標値設定手段82(
図2参照)が、他のスキャン条件を求めるために使用されるスキャン時間の目標値Ttarを設定する。目標値Ttarは、以下の式(3)で表される。
Ttar=t1−Δt ・・・(3)
【0039】
t1は、ステップST2で計算されているので、既知の値である。また、Δtは、予め設定されている値であり、例えば、Δt=5秒である。したがって、t1およびΔtが既知であるので、スキャン時間の目標値Ttarを計算することができる。例えば、t1=25秒、Δt=5秒の場合、式(3)から、Ttar=20秒となる。スキャン時間の目標値Ttarを求めた後、ステップST4に進む。
【0040】
ステップST4では、スキャン時間の目標値Ttarで被検体をスキャンするためのパラメータ値が設定される。本形態では、スキャン時間t1と、スキャン時間の目標値Ttarと、スキャン条件A1に含まれるパラメータ値とに基づいて、スキャン時間の目標値Ttar(又は、目標値Ttarに近い値)で被検体をスキャンするのに適したパラメータ値を求める式が、記憶部10に記憶されている。パラメータ値設定手段83(
図2参照)は、この式に基づいて、スキャン時間の目標値Ttar(又は、目標値Ttarに近い値)で被検体をスキャンするのに適したパラメータ値を設定する。ここでは、説明の便宜上、パラメータ値として、解像度Xres、解像度Yres、スライス枚数N、およびスライス厚THの値が設定されるとする。
図8では、パラメータ値設定手段83により、Xres=Xres2、Yres=Yres2、N=N2、TH=TH2に設定されたとする。尚、エコー時間TEは、TE=TE1であるとする。パラメータ値を設定した後、ステップST5に進む。
【0041】
ステップST5では、エコースペース算出手段84(
図2参照)が、ステップST4で設定されたパラメータ値に基づいて、エコースペースESPを算出する。
図8では、エコースペース算出手段84により算出されたエコースペースESPが、ESP=ESP2で示されている。エコースペースESPを求めた後、ステップST6に進む。
【0042】
ステップST6では、上限値決定手段85(
図2参照)が、エコートレイン数の上限値etl_maxを決定する。本形態では、エコートレイン数の上限値etl_maxは、高品質な画像を得るための以下の条件を満たすように決定される。
(条件1)ブラーリングによる画質劣化ができるだけ小さい。
(条件2)MT効果によるコントラストの変化に起因した画像劣化ができるだけ小さい。
【0043】
以下に、条件1および条件2を満たすためにエコートレイン数ETLに要求される条件について説明する。
【0044】
(条件1を満たすためにエコートレイン数ETLに要求される条件について)
FSE法でエコートレインETを収集する場合、最大エコー時間TEz(
図4参照)が長すぎると、画像にブラーリングによる画像劣化が現れるという問題がある。したがって、ブラーリングが小さくなるように、最大エコー時間TEzの上限値TEz_maxを設定する必要がある。そこで、本形態では、被検体を撮影する前に、ブラーリングによる画像劣化があまり大きくならなくて済むような最大エコー時間の上限値TEz_maxを、デフォルト値として記憶部10に記憶させてある。撮影部位が腹部の場合、最大エコー時間の上限値TEz_maxは、例えば、TEz_max=160msである。
したがって、ブラーリングによる画像劣化ができるだけ大きくならなくて済むようなエコートレイン数の上限値X1は、最大エコー時間の上限値TEz_maxと、エコースペースESPとを用いて以下の式(4)で表すことができる。
X1=TEz_max/ESP ・・・(4)
【0045】
(条件2を満たすためにエコートレイン数ETLに要求される条件について)
FSE法でエコートレインETを収集する場合、エコートレイン数ETLの値が大きすぎると、MT効果によるコントラストの変化に起因した画像劣化が大きくなるという問題がある。したがって、MT効果によるコントラストの変化があまり大きくならないように、エコートレイン数の上限値を設定する必要がある。そこで、本形態では、被検体を撮影する前に、MT効果によるコントラストの変化ができるだけ大きくならなくて済むようなエコートレイン数の上限値X2を、デフォルト値として記憶部に記憶させてある。撮影部位が腹部の場合、エコートレイン数の上限値X2は、例えば、X2=24である。
【0046】
上記の説明から、エコートレイン数の上限値X1およびX2は、エコートレイン数の上限値etl_maxとして使用可能な値であることがわかる。ただし、両方の条件1および2を満たすためには、上限値X1およびX2のうち、小さい方の値を、エコートレイン数の上限値etl_maxとして採用する必要がある。したがって、エコートレイン数の上限値etl_maxは、以下の式(5)で表すことができる。
etl_max=min(X1,X2) ・・・(5)
【0047】
ここで、minは、X1およびX2のうちの小さい方を求める関数である。したがって、式(5)から、etl_maxを求めることができる。尚、式(5)に、式(4)を代入すると、以下の式が得られる。
etl_max=min(TEz_max/ESP,X2) ・・・(6)
【0048】
上記のように、TEz_maxおよびX2は、デフォルト値として設定されている。また、エコースペースESPは、ステップST5で算出されている。したがって、各値を式(6)に代入することにより、エコートレイン数の上限値etl_maxを求めることができる。例えば、X1=24、TEz_max=160(msec)、ESP=16(msec)の場合、エコートレイン数の上限値etl_maxは、以下の値となる。
etl_max=min(X1,TEz_max/ESP)
=min(24,160/16)
=10
【0049】
尚、TEz_max/ESPが整数にならない場合は、TEz_max/ESPの値を、四捨五入、切り捨て、切り下げなどにより、整数値として求めてもよい。エコートレイン数の上限値etl_maxを求めた後、ステップST7に進む。
【0050】
ステップST7では、下限値決定手段86(
図2参照)が、エコートレイン数の下限値etl_minを決定する。エコートレイン数の下限値etl_minは、以下の式(7)で表される。
etl_min=ceil(TE/ESP) ・・・(7)
【0051】
ここで、ceilは、TE/ESPの値を切り上げるための関数を表す。エコー時間TEは、TE=TE1であり、エコースペースESPは、ESP=SEP2である。したがって、式(7)から、エコートレイン数の下限値etl_minを求めることができる。エコートレイン数の下限値etl_minを求めた後、ステップST8に進む。
【0052】
ステップST8では、ステップST4において設定された解像度Yres=Yres2に基づいて、k空間のky方向に並ぶ複数のkyビューのうち、実際にデータの収集が行われるビューの数ypointが求められる。例えば、Yres2=256の場合、ypoint=256となる。
図9に、ypoint=256における各スライスのk空間を概略的に示す。ypoint=256の場合、各スライスから、ky=−127〜128のビューのデータ収集が行われる。
【0053】
尚、スキャン条件に、スキャン時間を短縮するための時間短縮パラメータの値が含まれている場合は、解像度Yresに加えて、時間短縮パラメータの値も考慮して、ypointの値を求める。時間短縮パラメータとしては、例えば、パラレルイメージング法を用いたシーケンスを実行する場合に設定されるアクセレレーションファクタ(acceleration factor)がある。アクセレレーションファクタFaccは、シーケンスの位相エンコード数PNを、PN=Yresから、PN=(1/Facc)Yresに削減することを表すファクタである。Yresの他に、アクセレレーションファクタFaccを考慮してypointを設定する場合、ビュー数算出手段87(
図2参照)は、以下の式(8)を用いて、データの収集が行われるビューの数ypointを算出する。
ypoint=Yres/Facc ・・・(8)
【0054】
アクセレレーションファクタFaccは、例えば、1、2、3、4のうちのいずれかの値に設定することができる。例えば、パラレルイメージング法を行わないシーケンスを実行する場合、Facc=1に設定される。Facc=1の場合、ypointは、以下の式(9)で表すことができる。
ypoint=Yres/Facc
=Yres ・・・(9)
【0055】
したがって、パラレルイメージングを実行しない(Facc=1)の場合、ypointは、Yresのままに保持される。
【0056】
しかし、パラレルイメージング法を行う場合、Faccは、Facc=2,3、又は4のいずれかの値に設定される。Facc=2の場合、ypointは、以下の式(10)で表すことができる。
ypoint=Yres/Facc
=Yres/2 ・・・(10)
【0057】
したがって、Facc=2の場合、ypointは、Yresの半分に設定される。したがって、Facc=2は、Facc=1よりも、シーケンスの位相エンコード数を半分にすることができるので、実際にデータの収集が行われるビューの数を半分に削減することができる。例えば、Yres=256、Facc=2の場合、ypoint=128となる。
図10に、ypoint=128の場合のk空間の一例を概略的に示す。
図10では、偶数番のkyビューはデータの収集が行われ、奇数番のkyビューはデータの収集が行われない場合のk空間を概略的に示してある。データの収集が行われる偶数番のkyビューは実線で示してあり、データの収集が行われない奇数番のkyビューは破線で示してある。したがって、
図10は、
図9と比較すると、実際にデータの収集が行われるビューの数が半分に減っていることがわかる。
【0058】
また、Facc=3に設定した場合、ypointは、以下の式(11)で表すことができる。
ypoint=Yres/Facc
=Yres/3 ・・・(11)
【0059】
Facc=3の場合、ypointは、Yresの1/3に設定される。したがって、Facc=3は、Facc=1よりも、シーケンスの位相エンコード数が1/3になる。
【0060】
更に、Facc=4に設定した場合、ypointは、以下の式(12)で表すことができる。
ypoint=Yres/Facc
=Yres/4 ・・・(12)
【0061】
Facc=4の場合、ypointは、Yresの1/4に設定される。したがって、Facc=4は、Facc=1よりも、シーケンスの位相エンコード数が1/4になる。
【0062】
上記のように、時間短縮パラメータの値が設定されている場合は、解像度Yresだけでなく、時間短縮パラメータを考慮して、ypointが算出される。ypointを算出した後、ステップST9に進む。
【0063】
ステップST9では、繰返し回数算出手段88(
図2参照)が、シーケンス群を最低限何回繰り返せば、ステップST8で求めたビューの数ypointのデータを収集することができるかを求める。ビューの数ypointのデータを収集するために最低限必要となるシーケンス群の繰り返し回数を「m」とすると、繰り返し回数mは、ビューの数ypointと、エコートレイン数の上限値etl_maxとを用いて、以下の式(13)で表される。
m=ceil(ypoint/etl_max) ・・・(13)
【0064】
ここで、ceilは、ypoint/etl_maxの値を切り上げるための関数を表す。したがって、式(13)から、繰り返し回数mを求めることができる。例えば、ypoint=256、etl_max=23の場合、繰り返し回数mは、以下の値となる。
m=ceil(ypoint/etl_max)
=ceil(256/24)
=11
【0065】
尚、
図8では、繰返し回数算出手段88により算出された繰り返し回数mを、「m2」で示してある。
繰り返し回数mを求めた後、ステップST10に進む。
【0066】
ステップST10では、エコートレイン数算出手段89(
図2参照)が、ステップST9で算出した繰り返し回数mによりypointのデータを収集するために必要なエコートレイン数ETLを算出する。エコートレイン数ETLは以下の式(14)で計算することができる。
ETL=ceil(ypoint/m) ・・・(14)
【0067】
式(14)により、繰り返し回数mでypointのデータを収集するために必要なエコートレイン数の最小値を求めることができる。例えば、ypoint=256、m=11の場合、エコートレイン数ETLは、以下の値となる。
ETL=ceil(ypoint/m)
=ceil(256/11)
=24
【0068】
図8では、エコートレイン数算出手段89により算出されたエコートレイン数ETLを、「ETL2」で示してある。尚、式(14)により求めたETLが、ステップST7で求めたエコートレイン数の下限値etl_minよりも小さい場合、エコートレイン数ETLは、下限値etl_minに設定すればよい。エコートレイン数ETLを求めたら、ステップST11に進む。
【0069】
ステップST11では、TR決定手段90(
図2参照)が、スキャン時間が短くなるように、繰り返し時間TR2の値を決定する。
図8では、TR決定手段90が決定されたTRを、「TR2」で示してある。TRを決定したら、フローを終了する。
【0070】
本形態では、条件1および条件2を満たすように、エコートレイン数の上限値etl_maxを設定する(ステップST6)。そして、データの収集が行われるビューの数ypointを算出し(ステップST8)、エコートレイン数の上限値etl_maxに基づいて、繰り返し回数mを算出し(ステップST9)、ビュー数ypointおよび繰り返し回数mに基づいて、エコートレイン数ETLを算出する(ステップST10)。したがって、MT効果によるコントラストの変化やブラーリングによる画像劣化の小さい画像を取得するのに適したエコートレイン数を自動的に計算することができるので、オペレータは、エコートレイン数を手動で変更するなどの煩わしい作業をする必要がなく、オペレータの作業負担を軽減することができる。
【0071】
また、本形態によれば、スキャン条件A1において設定されているエコートレイン数ETL1が、エコートレイン数の上限値を超えている場合であっても、ステップST20を実行することにより、エコートレイン数が上限値etlを超えないようなスキャン条件A2を求めることができる。
【0072】
本形態では、ステップST3において、スキャン時間t1よりもΔtだけ短い時間t1−Δtを、スキャン時間の目標値Tscanとして求めている。したがって、スキャン時間t1よりも短いスキャン時間で条件1および条件2を満たすように被検体をスキャンすることが可能なスキャン条件A2を得ることができる。
【0073】
尚、スキャン条件A2を求めた後、表示部が、スキャン条件A1およびA2の各々をオペレータに提示するための画面を表示してもよい(
図11参照)。
図11は、スキャン条件A1およびA2の各々をオペレータに提示するための表示部の画面の一例を概略的に示す図である。
【0074】
表示部には、2つの選択ボタン11_1および11_2が示されている。
選択ボタン11_1は、スキャン条件A1をオペレータに提示するためのボタンであり、選択ボタン11_2は、スキャン条件A2をオペレータに提示するためのボタンである。
【0075】
オペレータが選択ボタンをクリックすると、選択ボタンに対応したスキャン条件の具体的なパラメータの値などが表示される。したがって、オペレータは、スキャン時間が異なる2つのスキャン条件を確認し、2つのスキャン条件の中から、最適なスキャン条件を選択することができる。
【0076】
尚、スキャン条件A2に基づいてスキャン時間Tscanを計算し、スキャン時間Tscanと目標値Ttarとの時間差が、所定値よりも大きい場合は、再度ステップST20を実行し、新たなスキャン条件を求めてもよい。また、繰り返し時間TR=TR2の値が、繰り返し時間TRの許容範囲BR(例えば、BR=2500msec〜5000msec)に含まれていない場合は、再度ステップST20を実行し、新たなスキャン条件を求めてもよい。
【0077】
また、スキャン時間Tscanが目標値Ttarよりも長すぎる場合や、繰り返し時間TRが、繰り返し時間TRの許容範囲BRの上限値(例えば、5000msec)を超えてしまった場合は、複数のスライスのデータを複数回のスキャンに分けて収集するように、スキャン条件を設定してもよい(
図12参照)。
【0078】
図12は、データの収集を複数回に分けるときの説明図である。
図12では、複数のスライスのデータを2回のスキャンSC1およびSC2に分けて収集する例が示されている。このように、スライスのデータを複数回のスキャンに分けて収集することにより、各スキャンのスキャン時間を短くしたり、繰り返し時間TRを短くすることができる。したがって、息止めスキャンを実行する場合において、被検体が、息止めを長時間することが困難なときは、スキャンを複数回に分けることによって、MT効果によるコントラストの変化やブラーリングによる画像劣化の小さい画像を取得するのに適したエコートレイン数で被検体をスキャンすることが可能となる。尚、本発明は、息止めスキャンに限定されることはなく、自由呼吸下で被検体を撮影するためのスキャンにも適用することができる。
【0079】
本形態では、スキャン時間t1よりもΔtだけ短い時間を、スキャン時間の目標値Tscanとして設定しているが、スキャン時間t1よりもΔtだけ長い時間を、スキャン時間の目標値Tscanとして設定してもよい。この場合、スキャン条件A2の解像度Yres2を、スキャン条件A1の解像度Yres1よりも、大きい値に設定することが可能になるので、より高品質な画像を取得するのに適したスキャン条件A2を得ることが可能となる。また、スキャン時間の目標値として、スキャン時間t1よりも小さい値と、スキャン時間t1よりも大きい値との両方を決定し、スキャン時間の各目標値に対応したスキャン条件を求め、表示部が、これらのスキャン条件をオペレータに提示するための画面を表示するようにしてもよい(
図13参照)。
図13は、その画面の一例を概略的に示した図である。
【0080】
表示部には、5つの選択ボタン11_1〜11_5が示されている。
選択ボタン11_1は、スキャン条件A1(スキャン時間t1)をオペレータに提示するためのボタンである。
選択ボタン11_2は、スキャン時間t1−Δtで被検体をスキャンするためのスキャン条件A2をオペレータに提示するためのボタンである。
選択ボタン11_3は、スキャン時間t1−2Δtで被検体をスキャンするためのスキャン条件A3をオペレータに提示するためのボタンである。
選択ボタン11_4は、スキャン時間t1+Δtで被検体をスキャンするためのスキャン条件A4をオペレータに提示するためのボタンである。
選択ボタン11_5は、スキャン時間t1+2Δtで被検体をスキャンするためのスキャン条件A5をオペレータに提示するためのボタンである。
【0081】
オペレータが選択ボタンをクリックすると、選択ボタンに対応したスキャン条件の具体的なパラメータの値などが表示される。したがって、オペレータは、スキャン時間が異なる5つのスキャン条件を確認し、5つのスキャン条件の中から、最適なスキャン条件を選択することができる。
【0082】
本形態では、エコートレイン数の上限値として使用可能な2つの値X1およびX2のうち、小さい方の値を、エコートレイン数の上限値etl_maxとして決定している。しかし、MT効果によるコントラストの変化がそれほど大きくない場合は、エコートレイン数の上限値として使用可能な値X1を、エコートレイン数の上限値etl_maxとして採用してもよい。
【0083】
尚、本形態では、高速スピンエコー法について説明したが、本発明は、エコートレインを取得する撮影法に適用することが可能である。