特許第6363041号(P6363041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6363041-扁平形電池 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363041
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】扁平形電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20180712BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20180712BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20180712BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20180712BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M10/0585
   H01M4/02 Z
   H01M4/80 C
   H01M6/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-48620(P2015-48620)
(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公開番号】特開2016-170909(P2016-170909A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄治
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−254668(JP,A)
【文献】 特開2010−092770(JP,A)
【文献】 特開2006−031940(JP,A)
【文献】 特開2000−058077(JP,A)
【文献】 特開2000−188104(JP,A)
【文献】 特開2004−006298(JP,A)
【文献】 特開平08−106917(JP,A)
【文献】 特開平10−241725(JP,A)
【文献】 特開2002−175833(JP,A)
【文献】 特開平05−290891(JP,A)
【文献】 特開昭57−185674(JP,A)
【文献】 特開昭58−041578(JP,A)
【文献】 特開昭63−124379(JP,A)
【文献】 特開昭61−232561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 4/02
H01M 4/64
H01M 4/80
H01M 6/02
H01M 10/28
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部が軸線方向に延びる有底筒状の外装缶と、
前記外装缶の開口を覆う有底筒状の封口缶と、
前記外装缶と前記封口缶との間に形成される空間内に、前記軸線方向に積層された状態で配置される正極材及び負極材と、
前記正極材と前記負極材との間に配置されるセパレータとを備え、
前記正極材及び前記負極材の少なくとも一方は、厚み方向に連続して位置する複数の開孔を有する海綿状の金属多孔質体からなる集電体と、該集電体の空孔内に充填される合剤とを有し、
前記集電体は、外周縁部の少なくとも一部に、該集電体の厚み方向に突出するバリを有し、
前記集電体を有する前記正極材及び前記負極材の少なくとも一方は、前記バリが前記セパレータとは反対側に突出するように、該セパレータに対して配置されている、扁平形電
池。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形電池において、
前記集電体を有する前記正極材及び前記負極材の少なくとも一方は、前記バリが前記外装缶及び前記封口缶のいずれか一方に接触するように、前記空間内に配置される、扁平形電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の扁平形電池において、
前記セパレータは、その厚みが前記バリの突出高さよりも薄い、扁平形電池。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の扁平形電池において、
前記集電体は、0.1mmよりも厚い、扁平形電池。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の扁平形電池において、
前記集電体は、金属多孔質体のシートを加工具によって打ち抜くことにより形成される、扁平形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン形電池等の扁平形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有底筒状の外装缶と、該外装缶の開口を覆うように配置され、外周側で該外装缶に接続される封口缶とを備えた扁平形電池が知られている。このような扁平形電池として、例えば特許文献1に開示されるように、電池ケース(外装缶)と封口板(封口缶)との間に、成形された正極合剤ペレット(正極材)及び金属リチウム(負極材)が配置された構成が知られている。特許文献1の構成では、正極材と負極材との間に短絡防止のためのセパレータが配置されている。特許文献1に開示されている正極板は、正極合剤をペレット状に形成したものであり、負極材は、金属リチウムによって構成されている。
【0003】
一方、特許文献2に開示されるように、スポンジ状金属多孔体(金属多孔質体)の空間内部にペースト状混錬物を充填することにより構成された正極材も知られている。特許文献2には、帯状のスポンジ状金属多孔体の空間内部にペースト状混錬物を充填し、このスポンジ状金属多孔体を所定の寸法に切断することにより正極板を構成するとともに、切断の際に正極板の端部に発生したかえりバリを研磨処理して取り除く点が開示されている。これにより、帯状のスポンジ状金属多孔体を切断した際に発生したバリがセパレータを突き破ることを防止できる。したがって、特許文献2のように帯状のスポンジ状金属多孔体を切断することにより正極版を得る構成において、電池内部で短絡が生じるのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−58077号公報
【特許文献2】特開2000−188104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献2のように、金属多孔質体の空間内に合剤を充填する構成において、帯状の金属多孔質体を切断した際に正極板の端部に発生したバリを取り除く場合には、研磨等の作業が必要になるため、電池の製造工程が増えて、製造コストが増加する。
【0006】
しかも、金属多孔質体を切断する際に発生するバリは、微小であるため、取り除く際に、研磨工具等によってバリ以外の部分が変形を生じる可能性もある。
【0007】
本発明の目的は、正極材と負極材との間にセパレータが配置され、且つ、正極材及び負極材の少なくとも一方の電極体が金属多孔質体によって構成された扁平形電池において、電極体の外周縁部に形成されたバリによって内部短絡が生じないような構成を、簡単且つ低コストな構成によって実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る扁平形電池は、周壁部が軸線方向に延びる有底筒状の外装缶と、前記外装缶の開口を覆う有底筒状の封口缶と、前記外装缶と前記封口缶との間に形成される空間内に、前記軸線方向に積層された状態で配置される正極材及び負極材と、前記正極材と前記負極材との間に配置されるセパレータとを備える。前記正極材及び前記負極材の少なくとも一方は、金属多孔質体からなる集電体と、該集電体の空孔内に充填される合剤とを有する。前記集電体は、外周縁部の少なくとも一部に、該集電体の厚み方向に突出するバリを有する。前記集電体を有する前記正極材及び前記負極材の少なくとも一方は、前記バリが前記セパレータとは反対側に突出するように、該セパレータに対して配置されている(第1の構成)。
【0009】
以上の構成により、正極材及び負極材の少なくとも一方に含まれる集電体の外周縁部に形成されたバリがセパレータとは反対側に突出するため、正極材と負極材との間に配置されたセパレータを前記バリが突き抜けるのを防止できる。したがって、電池の内部短絡の発生を防止することができる。
【0010】
前記第1の構成において、前記集電体を有する前記正極材及び前記負極材の少なくとも一方は、前記バリが前記外装缶及び前記封口缶のいずれか一方に接触するように、前記空間内に配置される(第2の構成)。
【0011】
これにより、正極材及び負極材の少なくとも一方に含まれる集電体の外周縁部に形成されたバリを、外装缶及び封口缶のいずれか一方に接触させることができるため、バリによって集電体を外装缶及び封口缶のいずれか一方により確実に接触させることができる。したがって、電池内部での電気的な導通をより確実に確保することができる。
【0012】
前記第1または第2の構成において、前記セパレータは、その厚みが前記バリの突出高さよりも薄い(第3の構成)。このような構成では、集電体の外周縁部に形成されたバリがセパレータを突き抜ける可能性が高くなる。このような構成において、上述の第1または第2の構成を適用することにより、バリがセパレータを突き抜けて電池内部で短絡が生じるのを防止できる。
【0013】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記集電体は、0.1mmよりも厚い(第4の構成)。このような厚みを有する集電体を打ち抜き加工などによって所定の形状に形成した場合、該集電体の外周縁部にバリが形成されやすい。したがって、集電体が上述のような厚みを有する場合には、上述の第1または第2の構成を適用することにより、バリがセパレータを突き抜けて電池内部で短絡が生じるのを防止できる。
【0014】
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記集電体は、金属多孔質体のシートを加工具によって打ち抜くことにより形成される(第5の構成)。このような構成では、集電体の外周縁部に、該集電体の厚み方向に突出するバリが形成されやすいため、上述の第1または第2の構成を適用することにより、バリがセパレータを突き抜けて電池内部で短絡が生じるのを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態に係る扁平形電池では、正極材及び負極材の少なくとも一方に含まれる集電体の外周縁部に形成されたバリが、セパレータとは反対側に突出するように、該セパレータに対して正極材及び負極材を配置する。これにより、集電体の外周縁部に形成されたバリがセパレータを突き抜けるのを防止できる。したがって、集電体の外周縁部に形成されたバリによって電池の内部短絡が生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る扁平形電池の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、正極集電体を加工具によって切断する様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である扁平形電池1の概略構成を示す断面図である。この扁平形電池1は、有底円筒状の正極缶10(外装缶)と、該正極缶10の開口を覆う負極缶20(封口缶)と、正極缶10の外周側と負極缶20の外周側との間に配置されるガスケット30と、正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間S内に収納される発電要素40とを備える。扁平形電池1は、正極缶10と負極缶20とを組み合わせることによって、全体が扁平なコイン状に形成される。なお、正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間S内には、発電要素40以外に、非水電解液(図示省略、以下、電解液という)も封入されている。
【0019】
なお、本実施形態の扁平形電池1は、例えば、集音器や補聴器などのような小型の機器の電池として用いられる。
【0020】
正極缶10は、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。図1に示すように、正極缶10は、円形状の底部11と、その外周に該底部11と連続して形成される円筒状の周壁部12とを備える。周壁部12は、縦断面視で、底部11に対して垂直に延びるように設けられている。正極缶10は、後述するように、負極缶20との間にガスケット30を挟んだ状態で、周壁部12の開口端側が内側に折り曲げられて、該負極缶20の外周部に対してかしめられている。図1における符号Pは、扁平形電池1の軸線である。周壁部12は、扁平形電池1の軸線方向に延びている。
【0021】
負極缶20も、正極缶10と同様、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。負極缶20は、円形状の平面部21と、その外周に該平面部21と連続して形成される円筒状の周壁部22とを備える。この周壁部22も、正極缶10と同様、縦断面視で、平面部21に対して垂直に延びるように設けられている。すなわち、周壁部22も、扁平形電池1の軸線方向に延びている。
【0022】
周壁部22は、該周壁部22の基端部22aに対して径が段状に大きくなる拡径部22bを有する。すなわち、周壁部22には、基端部22aと拡径部22bとの間に段部22cが形成されている。図1に示すように、この段部22cに対して、正極缶10の周壁部12の開口端側が折り曲げられてかしめられている。これにより、正極缶10と負極缶20とが、それらの外周側で接続されている。
【0023】
ガスケット30は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を主成分としており、PPSにオレフィン系エラストマーを含有した樹脂組成物からなる。ガスケット30は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれるように配置されている。また、ガスケット30は、負極缶20の周壁部22の開口端と正極缶10の底部11との間に挟み込まれるように配置されている。具体的には、ガスケット30は、リング状のベース部31と、該ベース部31の外周縁から突出する外筒壁32と、該ベース部31の内周縁から該外筒壁32と同じ方向に伸びる内筒壁33とを備える。本実施形態では、ガスケット30は、ベース部31、外筒壁32及び内筒壁33が一体で形成されている。
【0024】
また、ガスケット30は、負極缶20の拡径部22bを覆うように配置されている。すなわち、ガスケット30は、負極缶20の拡径部22bが、ガスケット30の外筒壁32と内筒壁33との間に位置づけられるように、負極缶20の拡径部22bに配置されている。これにより、ガスケット30の外筒壁32は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれる。ガスケット30のベース部31及び外筒壁32は、正極缶10と負極缶20との間に挟みこまれた状態で、該正極缶10と負極缶20との隙間をシール可能な厚みを有する。
【0025】
このように、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間にガスケット30を配置することにより、該正極缶10と負極缶20とをそれらの外周側で絶縁することができる。また、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間にガスケット30を挟みこんだ状態で、該正極缶10の周壁部12を折り曲げて負極缶20の周壁部22にかしめることにより、該ガスケット30によって正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間を封止することができる。すなわち、ガスケット30は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の段部22cとの間に挟みこまれる外筒壁32、及び、負極缶20の周壁部22の開口端と正極缶10の底部11との間に挟みこまれるベース部31が、それぞれ、シールとして機能する。
【0026】
発電要素40は、金属多孔質体の空孔内に正極合剤が充填された正極材41と、金属多孔質体の空孔内に負極合剤が充填された負極材42と、正極材41と負極材42とを絶縁するためのセパレータ43とを備えている。
【0027】
図1に示すように、正極材41及び負極材42は、正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間S内に扁平形電池1の軸線方向に積層されるように配置されている。すなわち、正極材41及び負極材42は、それらの厚み方向に積層されている。また、正極材41は、正極缶10の内方に位置付けられている一方、負極材42は、負極缶20の内方に位置付けられている。正極材41と負極材42との間にはセパレータ43が配置されている。
【0028】
正極材41は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の金属多孔質体からなる正極集電体41a(集電体)と、該正極集電体41aの空孔内に充填された正極合剤41b(合剤)とを有する。正極材41は、粉末状の正極合剤41bを水、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどの溶剤に分散させることにより得られたペーストを、金属多孔質体からなる正極集電体41aに含浸させた後、焼成することにより得られる。
【0029】
正極集電体41aを構成する金属多孔質体は、連続した開孔を有する海綿状の多孔質体が好ましい。これにより、充放電サイクルを繰り返しても導電性ネットワークが維持されるため、内部抵抗の増大を防止できるとともに、電極の膨張も抑制できる。金属多孔質体の開孔径は、金属多孔質体に対する前記ペーストの浸潤性の観点から、例えば20μmから1mmが好ましい。特に、金属多孔質体の開孔径は、0.5mmが好ましい。
【0030】
金属多孔質体の開孔率は、60%よりも大きく99%以下が好ましい。開孔率が60%以下では、金属多孔質体に対する前記ペーストの浸潤率が低い。開孔率が95%の場合には、特に、金属多孔質体に対する前記ペーストの浸潤性が高い。
【0031】
正極合剤41bは、正極活物質と、導電助剤と、バインダとを混合して形成されている。正極活物質として、マンガン酸リチウム、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、酸化バナジウム、または酸化モリブデン等を用いることができる。導電助剤として、黒鉛、カーボンブラック、またはアセチレンブラック等を用いることができる。バインダとして、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を、単独または混合して用いることができる。
【0032】
正極集電体41aは、シート状の金属多孔質体を、例えば円形状に切断することにより得られる。具体的には、正極集電体41aは、図2に示すように、ピナクル(登録商標)型などの加工具50を用いて所定の形状(本実施形態では円形状)に打ち抜くことにより得られる。そのため、正極集電体41aの外周縁部の少なくとも一部には、加工具によって打ち抜く際に、正極集電体41aの厚み方向に突出するようにバリ41cが形成される。すなわち、このバリ41cは、打ち抜きバリである。
【0033】
負極材42は、銅または銅合金の金属多孔質体からなる負極集電体42a(集電体)と、該負極集電体42aの空孔内に充填された負極合剤42b(合剤)とを有する。負極材42は、粉末状の負極合剤42bを水、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどの溶剤に分散させることにより得られたペーストを、金属多孔質体からなる負極集電体42aに含浸させた後、焼成することにより得られる。
【0034】
負極集電体42aを構成する金属多孔質体は、正極集電体41aを構成する金属多孔質体と同様の構成なので、詳しい説明を省略する。
【0035】
負極合剤42bは、負極活物質と、バインダとを混合して形成されている。負極活物質として、天然黒鉛、メソフェーズカーボン、または非晶質カーボン等を用いることができる。バインダとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のセルロース、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルゴム等のゴムバインダ、PTFE、ならびにPVDF等を、単独または混合して用いることができる。
【0036】
負極集電体42aは、正極集電体41aと同様、シート状の金属多孔質体を、例えば円形状に切断することにより得られる。具体的には、負極集電体42aも、正極集電体41aと同様、ピナクル型などの加工具を用いて所定の形状(本実施形態では円形状)に打ち抜くことにより得られる。そのため、負極集電体42aの外周縁部の少なくとも一部にも、正極集電体41aと同様、加工具によって打ち抜く際に、正極集電体41aの厚み方向に突出するようにバリ42cが形成される。すなわち、このバリ42cは、打ち抜きバリである。
【0037】
図1に示すように、正極材41及び負極材42は、正極集電体41a及び負極集電体42aのそれぞれに設けられたバリ41c,42cが、セパレータ43とは反対側に位置するように、セパレータ43に対して積層されている。より詳しくは、正極材41及び負極材42は、正極集電体41aのバリ41cが正極缶10側に向かって突出するとともに、負極集電体42aのバリ42cが負極缶20側に向かって突出するように、積層されている。
【0038】
セパレータ43は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはポリフェニルサルフィド(PPS)等の、多孔性フィルムによって形成されている。
【0039】
セパレータ43の厚みは、正極集電体41aに形成されたバリ41c及び負極集電体42aに形成されたバリ42cのそれぞれの突出高さよりも薄い。例えば、正極集電体41a及び負極集電体42aの厚みがそれぞれ1mmの場合、バリ41c、42cの突出高さは約0.1mmである。これに対し、セパレータ43の厚みは、例えば10μmである。
【0040】
このように、セパレータ43の厚みが正極集電体41a及び負極集電体42aのバリ41c,42cの突出高さよりも薄い場合には、バリ41c,42cがセパレータ43に接触するように正極材41及び負極材42をセパレータ43に対して配置すると、バリ41c,42cがセパレータ43を突き抜ける可能性が高い。
【0041】
これに対し、上述のように、正極集電体41a及び負極集電体42aのバリ41c,42cがセパレータ43とは反対側に位置するように、正極材41及び負極材42をセパレータ43に対して配置することにより、バリ41c,42cがセパレータ43を突き抜けるのを防止できる。
【0042】
なお、電解液は、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた溶液である。有機溶媒として、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、またはγ‐ブチロラクトン等を、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。リチウム塩として、LiPF、LiBF、またはLiN(CFSO等を用いることができる。
【0043】
(実施形態の効果)
以上の構成では、正極材41及び負極材42を、正極集電体41aのバリ41c及び負極集電体42aのバリ42cがセパレータ43とは反対側に突出するように、セパレータ43に対して配置する。これにより、正極材41の正極集電体41a及び負極材42の負極集電体42aのそれぞれのバリ41c,42cが、セパレータ43を突き抜けるのを防止できる。したがって、扁平形電池1の内部で短絡が生じるのを防止できる。
【0044】
しかも、正極集電体41aのバリ41cが正極缶10側に突出するとともに負極集電体42aのバリ42cが負極缶20側に突出するように、正極材41及び負極材42を積層することにより、バリ41c,42cを介して正極材41及び負極材42をそれぞれ正極缶10及び負極缶20により確実に接触させることができる。これにより、正極集電体41aのバリ41c及び負極集電体42aのバリ42cによって、正極材41及び負極材42をそれぞれ正極缶10及び負極缶20に対してより確実に電気的に接続することができる。
【0045】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0046】
前記実施形態では、金属多孔質体からなる集電体の空孔内に合剤を充填することにより、正極材41及び負極材42を構成している。しかしながら、正極材及び負極材の一方の構成は、金属箔上に合剤を固化させたもの、合剤のみを固化して形成されたもの、金属材料からなるものなど、前記実施形態とは異なる構成であってもよい。
【0047】
前記実施形態では、正極集電体41aは、アルミニウムまたはアルミニウム合金の金属多孔質材料によって構成されており、負極集電体42aは、銅または銅合金の金属多孔質材料によって構成されている。しかしながら、正極集電体41aは、アルミニウムまたはアルミニウム合金以外の金属多孔質材料によって構成されていてもよいし、負極集電体42aは、銅または銅合金以外の金属多孔質材料によって構成されていてもよい。
【0048】
前記実施形態では、正極集電体41a及び負極集電体42aをそれぞれシート状の金属多孔質材料から打ち抜く加工具としてピナクル型を用いている。しかしながら、刃を有する加工具であれば、ピナクル型以外の加工具であってもよい。
【0049】
前記実施形態では、正極缶10を外装缶としていて、負極缶20を封口缶としているが、逆に正極缶が封口缶で、負極缶が外装缶であってもよい。
【0050】
前記実施形態では、扁平形電池1はコイン状である。しかしながら、扁平形電池1は、四角柱など、他の形状であってもよい。
【0051】
前記実施形態では、扁平形電池1は、リチウムイオン電池として構成されているが、この限りではなく、他の種類の二次電池であってもよい。また、二次電池ではなく、一次電池であってもよい。
【0052】
前記実施形態では、正極集電体41aはアルミニウムまたはアルミニウム合金の金属多孔質体によって構成され、負極集電体42aは銅または銅合金の金属多孔質体によって構成されている。しかしながら、電池として機能可能であれば、正極集電体及び負極集電体を、Ni−Cr、SUS等の他の金属材料の多孔質体によって構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による扁平形電池は、金属多孔質体によって集電体が構成された薄型の電池に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 扁平形電池
10 正極缶(外装缶)
20 負極缶(封口缶)
41 正極材
41a 正極集電体(集電体)
41b 正極合剤(合剤)
41c バリ
42 負極材
42a 負極集電体(集電体)
42b 負極合剤(合剤)
42c バリ
43 セパレータ
50 加工具
図1
図2