【文献】
伊志嶺 拓人,マルチモーダル交通シミュレータを用いたデマンドバス需要予測シミュレーション,情報処理学会研究報告 平成22年度▲3▼ [CD−ROM],日本,一般社団法人情報処理学会,2010年10月15日,Vol.2010-MPS-80 No.14,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記候補それぞれについて、前記輸送手段の組み合わせ或いは経由都市を異ならせた前記各都市を結ぶ経路ごとに、前記第2の輸送サービス水準に基づく効用値を算出する効用値算出部として前記コンピュータを機能させ、
前記輸送量推測部は、前記効用値および予め定められた前記各都市の都市データを用いて、前記第2の輸送量を前記候補ごとに推測する、
請求項1に記載のプログラム。
前記輸送量推測部は、前記効用値および前記都市データを用いて、前記経路ごとの経路別予想輸送量を推測する経路別輸送量推測部を有し、当該経路別予想輸送量を、前記各都市を結ぶ前記輸送手段別に集計することで前記第2の輸送量を算出する、
請求項2に記載のプログラム。
前記抽出部は、前記輸送手段を乗り換える中継点となる都市であって、当該都市で中継する輸送量の差が所定の過大条件を満たす都市を、前記ボトルネック箇所として抽出する、
請求項1〜4の何れか一項に記載のプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、鉄道ネットワークにおいて、平常時とダイヤ乱れ時とは、運行本数や所要時間等が異なるため旅客流動が大きく異なる。また、このような旅客流動の変動は、鉄道ネットワークのみに限らず、様々な輸送手段を組み合わせた都市間輸送ネットワークにおいても同様である。また、同じ平常時であっても、都市間の輸送手段の運行本数や所要時間、運賃、乗換回数等が異なれば、都市間輸送ネットワークにおける輸送量は変動する。都市間の輸送手段の運行本数や所要時間、運賃、乗換回数等は輸送に係るサービス水準ということができるため、以下包括して「サービス水準」という。
【0005】
上記の考え方を発展させると、都市間輸送ネットワーク全体を俯瞰した最大輸送量や、円滑な輸送流動の実現には、サービス水準が肝要になると考えられる。すなわち、例えば、サービス水準を固定した状態で、ある都市へ流入又は流出する輸送量が増加した場合には、輸送手段の乗り換え箇所(乗り換え都市)や、特定の都市間の特定の輸送手段などで輸送流動を捌ききれない事態が生じ、輸送の流れが制限される、いわゆるボトルネックが発生する可能性がある。しかし、このような都市間輸送ネットワークにおける輸送流動上のボトルネック箇所を判別するための技術は、研究されていなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、都市間輸送ネットワークにおける輸送流動上のボトルネック箇所を推定するための技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、
コンピュータに、各都市および各都市間の輸送手段が定められた都市間輸送ネットワークにおける輸送流動上のボトルネック箇所を抽出させるためのプログラムであって、
前記都市間輸送ネットワークにおける輸送データとして、前記各都市を結ぶ前記輸送手段それぞれに関する第1の輸送サービス水準および第1の輸送量を記憶する記憶部、
前記第1の輸送サービス水準とは異なる第2の輸送サービス水準の候補を複数設定する設定部、
前記設定された複数の候補を評価する評価部、
前記各都市間の所与の輸送需要量を用いて、前記第2の輸送サービス水準となった場合の前記各都市を結ぶ前記輸送手段それぞれに関する第2の輸送量を、前記候補ごとに推測する輸送量推測部、
前記各都市を結ぶ前記輸送手段それぞれについて、前記第1の輸送量と、前記評価部による評価結果が所定の高評価条件を満たした候補に係る前記第2の輸送量とを比較し、所定のボトルネック条件を満たした箇所をボトルネック箇所と推定して抽出する抽出部、
として前記コンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0008】
また、他の発明として、
各都市および各都市間の輸送手段が定められた都市間輸送ネットワークにおける輸送流動上のボトルネック箇所を抽出する抽出装置であって、
前記都市間輸送ネットワークにおける輸送データとして、前記各都市を結ぶ前記輸送手段それぞれに関する第1の輸送サービス水準および第1の輸送量を記憶する記憶部と、
前記第1の輸送サービス水準とは異なる第2の輸送サービス水準の候補を複数設定する設定部と、
前記設定された複数の候補を評価する評価部、
前記各都市間の所与の輸送需要量を用いて、前記第2の輸送サービス水準となった場合の前記各都市を結ぶ前記輸送手段それぞれに関する第2の輸送量を、前記候補ごとに推測する輸送量推測部と、
前記各都市を結ぶ前記輸送手段それぞれについて、前記第1の輸送量と、前記評価部による評価結果が所定の高評価条件を満たした候補に係る前記第2の輸送量とを比較し、所定のボトルネック条件を満たした箇所をボトルネック箇所と推定して抽出する抽出部と、
を備えた抽出装置を構成しても良い。
【0009】
この第1の発明等によれば、都市間輸送ネットワークにおける輸送流動上のボトルネック箇所を推定するための技術を実現できる。具体的には、都市間を結ぶ輸送手段に関する第2の輸送サービス水準の候補ごとに、当該第2の輸送サービス水準となった場合の第2の輸送量を推測する。また、複数の第2の輸送サービス水準の候補それぞれのを評価し、評価結果が所定の高評価条件を満たした第2の輸送サービス水準の候補に係る第2の輸送量と、記憶している第1の輸送量とを比較し、所定のボトルネック条件を満たしたボトルネック箇所を抽出する。例えば、第1の輸送サービス水準から、評価が“良い”第2の輸送サービス水準に変更した場合に輸送量の変化が最大となった箇所を、第1の輸送サービス水準でのボトルネック箇所と推定して抽出するといったことが可能となる。
【0010】
第2の発明として、第1の発明のプログラムであって、
前記候補それぞれについて、前記輸送手段の組み合わせ或いは経由都市を異ならせた前記各都市を結ぶ経路ごとに、前記第2の輸送サービス水準に基づく効用値を算出する効用値算出部として前記コンピュータを機能させ、
前記輸送量推測部は、前記効用値および予め定められた前記各都市の都市データを用いて、前記第2の輸送量を前記候補ごとに推測する、
プログラムを構成しても良い。
【0011】
この第2の発明によれば、各都市を結ぶ経路ごとに第2の輸送サービス水準の候補に基づく効用値を算出し、第2の輸送サービス水準の候補に係る第2の輸送量を、経路ごとの効用値、及び、各都市の都市データを用いて推測することができる。
【0012】
第3の発明として、第2の発明のプログラムであって、
前記輸送量推測部は、前記効用値および前記都市データを用いて、前記経路ごとの経路別予想輸送量を推測する経路別輸送量推測部を有し、当該経路別予想輸送量を、前記各都市を結ぶ前記輸送手段別に集計することで前記第2の輸送量を算出する、
プログラムを構成しても良い。
【0013】
この第3の発明によれば、第2の輸送サービス水準に係る第2の輸送量は、経路ごとの効用値及び各都市の都市データを用いて、経路ごとの経路別予想輸送量を推測し、各都市を結ぶ輸送手段ごとに経路別予想輸送量を集計することで、算出することができる。
【0014】
第4の発明として、第1〜第3の何れかの発明のプログラムであって、
前記都市間輸送ネットワークにおいて前記候補に従った輸送を行った場合の環境負荷を推測する環境負荷推測部として前記コンピュータを更に機能させ、
前記評価部は、前記第2の輸送量と前記環境負荷とを用いて、前記候補それぞれを評価する、
プログラムを構成しても良い。
【0015】
この第4の発明によれば、都市間輸送ネットワークにおいて、第2の輸送サービス水準の候補に従った輸送を行った場合の環境負荷を推測し、第2の輸送サービス水準の候補を、第2の輸送量と環境負荷とを用いて評価することができる。例えば、運行本数が異なる第2の輸送サービス水準の候補を設定した場合、運行本数が多くなると、交通手段のCO2排出量やエネルギー消費量が増加して環境負荷については“悪い”評価となるが、第2の輸送量が多くなり“良い”評価につながる。つまり、評価の良し悪しが相反する2つの評価基準によって評価することで、環境負荷に配慮したバランスの取れたより最適な第2のサービス水準の候補を選択することが可能となる。
【0016】
第5の発明として、第1〜第4の何れかの発明のプログラムであって、
前記抽出部は、前記輸送手段を乗り換える中継点となる都市であって、当該都市で中継する輸送量の差が所定の過大条件を満たす都市を、前記ボトルネック箇所として抽出する、
プログラムを構成しても良い。
【0017】
この第5の発明によれば、例えば、輸送手段を乗り換える中継点となる都市であって、中継する輸送量の差を“大きい”とみなす都市を、ボトルネック箇所として抽出することができる。
【0018】
この第6の発明として、第1〜第4の何れかの発明のプログラムであって、
前記抽出部は、各都市間の個別輸送手段のうち、輸送量の差が所定の過大条件を満たす個別輸送手段を、前記ボトルネック箇所として抽出する、
プログラムを構成しても良い。
【0019】
この第6の発明によれば、例えば、輸送量の差を“大きい”とみなす都市間の輸送手段を、ボトルネック箇所として抽出することができる。
【0020】
第7の発明として、第1〜第6の何れかの発明のプログラムであって、
前記第1の輸送サービス水準および前記第2の輸送サービス水準は、所要時間、運賃および運行本数のうちの少なくとも1つを含む、
プログラムを構成しても良い。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[概要]
本実施形態のボトルネック抽出装置は、都市間旅客交通ネットワークにおける旅客流動上のボトルネック箇所を推定して抽出する装置である。都市間旅客交通ネットワークは、輸送対象を旅客とした都市間輸送ネットワークの一例であり、ボトルネック箇所として、都市或いは都市間の輸送手段(この場合、交通機関)が抽出される。また、本実施形態では、都市間輸送ネットワークを都市間旅客交通ネットワークとするため、旅客数(交通量)が輸送量に対応する。
【0023】
図1は、都市間旅客交通ネットワーク10の一例である。現実には複雑なネットワークを構成するが、本実施形態では説明の簡明化のため、簡略した都市間旅客交通ネットワーク10を用いて説明する。
図1に示すように、都市間旅客交通ネットワーク10は、ノード12と、ノード12同士をつなぐリンク14と、から構成される。ノード12は、東京や大阪、名古屋といった都市を表す。以下、これらのノード12を識別して、ノードA,B,・・と表記する。リンク14は、鉄道や飛行機、高速バスといった各都市を結ぶ輸送手段である幹線交通の交通機関を表す。以下、これらのリンク14を識別してリンクa,b,・・と表記する。
【0024】
リンク14には、対応する交通機関に応じた輸送サービス水準である交通サービス水準(以下、LOS(level of service)という)が定められる。このリンク14に定められるLOS(以下、「リンクLOS」という)は、所要時間、運賃、及び、運行本数とする。
図2に、リンク14に定められるLOSの一例を示す。
図2では、
図1に示した都市間旅客交通ネットワーク10における各リンク14のLOSを示している。
【0025】
図3は、本実施形態における都市間旅客交通ネットワーク10に対するボトルネック箇所の抽出の概要図である。先ず、抽出対象の都市間旅客交通ネットワーク10における輸送データとして、第1の輸送サービス水準である基準LOSを設定する。この基準LOSは、例えば、実際のLOSとすることができる。次いで、この基準LOSを都市間旅客交通ネットワーク10に適用した場合の、各ノード間の一般化費用C及びOD交通量T(以下、包括して「ノード間属性」という)を算出する、続いて、この「ノード間属性」を用いて、都市間旅客交通ネットワーク10における各リンクの通過旅客数Q、及び、各ノードの乗換旅客数QE(以下、包括して「リンク・ノード別旅客数」という)を算出する。この基準LOSに対応するリンク・ノード別旅客数が、第1の輸送量に対応する。なお、この基準LOSに対応するノード間属性及びリンク・ノード別旅客数は、算出するのではなく、例えば実際の値として予め設定・記憶しておいても良い。
【0026】
また、第2の輸送サービス水準である、基準LOSとは異なる複数のLOS候補を設定する。このLOS候補は、例えば、基準LOSを変更することで生成することができる。本実施形態では、基準LOSの運行本数を変更してLOS候補を生成することとする。次いで、LOS候補それぞれについて、都市間旅客交通ネットワーク10に当該LOS候補を適用した、ノード間属性を算出する。
【0027】
続いて、これらのLOS候補それぞれを、対応するノード間属性を用いて評価し、所定の高評価条件を満たす1つのLOS候補を最適LOSとして選択する。そして、最適LOSに対応するノード間属性を用いて、都市間旅客交通ネットワーク10におけるリンク・ノード別旅客数を算出する。この最適LOSに対応するリンク・ノード別旅客数が、第2の輸送量に対応する。その後、基準LOSに対応するリンク・ノード別旅客数と、最適LOSに対応するリンク・ノード別旅客数とを比較し、所定のボトルネック条件を満たす都市や都市間の交通機関を、ボトルネック箇所として抽出する。
【0028】
具体的に説明する。先ず、都市間旅客交通ネットワーク10におけるノード間属性の算出を説明する。処理としては、先ず、各ノード間の経路を探索する。具体的には、ある2つのノード間について、当該ノード間で取り得る全ての経路のうちから、例えば所要時間が短い順といった所定条件に従って、所定数(例えば、3つ)の経路を選択する。このように、都市間旅客交通ネットワーク10を構成する2つのノードの組み合わせ全てについて,当該ノード間の複数の経路を探索する。
【0029】
次いで、探索した経路それぞれについて、当該経路のLOS(以下、「経路LOS」という)を算出する。経路LOSは、所要時間、運賃、運行本数、及び、乗換回数である。この経路LOSのうち、所要時間、及び、運賃は、当該経路が経由する全てのリンクそれぞれのリンクLOSである所要時間、及び、運賃の合計値であり、運行本数は、当該経路が経由する全てのリンクそれぞれのリンクLOSである運行本数のうちの最小値であり、乗換回数は、当該経路が経由するノードのうち、その前後のリンクの交通機関が異なるノードの数である。
【0030】
そして、探索した経路それぞれについて、当該経路の経路LOSから効用値Vを算出する。効用値Vは、経路LOSである所要時間、運賃、運行本数、及び、乗換回数から算出される。具体的には、所要時間、運賃、運行本数、及び、乗換回数を変数とし、所要時間が長いほど、運賃が高いほど、運行本数が少ないほど、乗換回数が多いほど、効用値Vが小さくなるような関数を定めて効用値Vを算出することができる。
【0031】
図4に、経路の効用値Vの一例を示す。
図4では、
図1に示した都市間旅客交通ネットワーク10における各経路のLOS及び効用値Vを示している。
図4(a)は、ノードA〜B間の各経路の効用値Vを示し、
図4(b)は、ノードB〜C間の各経路の効用値Vを示し、
図4(c)は、ノードA〜C間の各経路の効用値Vを示している。
図4において、各経路の効用値Vは、
図2に示したリンクLOSに基づいた値となっている。
【0032】
続いて、経路それぞれの効用値Vを用いて、2ノード間のOD交通量Tを算出する。
図5は、2ノード間のOD交通量Tの算出の説明図である。
図5では、ノードA〜B間のOD交通量T
ABの算出について示している。OD交通量Tは、2つのノードそれぞれに対応する都市の都市データと、当該2ノード間のアクセシビリティと、から算出される。都市データは、当該都市の人口、及び、GRP(Gross Regional Product)とする。アクセシビリティは、2ノード間の一般化費用Cから算出される。一般化費用Cは、2ノード間の各経路の効用値Vから算出される。つまり、OD交通量Tは、2つのノードに対応する都市それぞれの都市データ(人口、GRP)と、2ノード間の各経路の効用値Vと、から算出されるといえる。
【0033】
具体的には、当該ノード間の各経路の効用値Vを変数とし、効用値Vが大きいほど、一般化費用Cが小さくなる関数を定めて一般化費用Cを算出することができる。また、一般化費用Cを変数とし、一般化費用Cが小さいほど、アクセシビリティが大きくなる関数を定めてアクセシビリティを算出することができる。また、当該ノードそれぞれの人口、GRP、及び、アクセシビリティを変数とし、人口が多いほど、GRPが大きいほど、アクセシビリティが大きいほど、当該ノード間のOD交通量Tが大きくなる関数を定めてOD交通量Tを算出することができる。したがって、OD交通量Tの算出対象となっているノード間において、当該ノードの人口が多いほど、GRPが大きいほど、当該ノード間の各経路の効用値Vが大きいほど、OD交通量Tは大きくなる。
【0034】
次いで、リンク・ノード別旅客数の算出について説明する。先ず、2ノード間の各経路の選択確率Pを算出する。経路iの選択確率Piは、当該経路iの効用値V
i、及び、経路重複率CF
iをもとに、次式(1)に従って算出される。
【数1】
なお、2ノード間の各経路iの選択確率Piの総和は「1.0」になる。
【0035】
図6は、経路重複率CFの説明図である。
図6は、ノードA〜B間にノードY,Zが存在し、各ノード間に破線で示すような5つのリンクv〜zが存在する場合の例を示しており、ノードA〜B間の経路としては、太実線で示す3つの経路AB5〜AB7が設定された場合を示している。
【0036】
経路iの重複率CF
iは、当該経路の距離L
iと、他の経路jの距離L
jとを用いて、次式(2)に従って算出される。
【数2】
上式(2)において、α,βは定数である。経路の距離Lとは、当該経路が経由する各リンクの距離lの合計である。リンクの距離lとは、対応する交通機関を利用したときの移動距離である。つまり、経由するリンクが完全に一致しないため、経路毎に距離Lは異なる。
【0037】
例えば、
図6では、経路AB5,AB6は、経由するリンクの一部であるリンクw,xが互いに重複しているとともに他の経路とは重複していないため、それぞれの重複率CF
5,CF
6は等しくなる。経路AB7は、他の経路AB5,AB6の何れとも重複していないため、重複率CF
7は「0」である。
【0038】
そして、各経路について、対応する2ノード間のOD交通量Tに、当該経路の選択確率Pを乗じて、当該経路に沿って移動する旅客の人数である経路別交通量Qを算出する。
【0039】
続いて、各経路の経路別交通量Qから、各経路において経路別交通量Qの旅客が同時に移動したときの、各リンクの通過旅客数QE、及び、各ノードの乗換旅客数QV、を算出する。
図7は、リンクの通過旅客数QEの算出の説明図である。
図7に示すように、リンクの通過旅客数QEは、当該リンクを含む全ての経路それぞれの経路別交通量Qの総和となる。
図7において、経路を太実線で示している。例えば、
図7では、リンクaの通過旅客数QE
aは次のように求められる。すなわち、リンクaは、A〜B間の経路AB3と,B〜C間の経路BC2及びBC3と,A〜C間の経路AC1それぞれに含まれるため、リンクaの通過旅客数QE
aは、これらの経路AB3,BC2,BC3,AC1それぞれの経路別交通量Q
AB3,Q
BC2,Q
BC3,Q
AC1の総和となる。
【0040】
図8は、ノードの乗換旅客数QVの算出の説明図である。経路を太実線で示しているのは
図8も同様である。
図8に示すように、ノードの乗換旅客数QVは、当該ノードを繋ぐ2つのリンクの組み合わせ毎に算出される。例えば、
図8では、ノードAは3本のリンクa,b,dと繋がれている。従って、ノードAの乗換旅客数QVとして、リンクa,b間の乗換旅客数QV
Aab、リンクb,dの乗換旅客数QV
Abd、及び、リンクa,dの乗換旅客数QV
Aadを算出する。
【0041】
図8に示すように、ノードの乗換旅客数QVは、当該ノードを乗換ノードとして含む全ての経路それぞれの経路別交通量Qの総和となる。例えば、ノードAは、B〜C間の経路BC2,BC3の乗換ノードであり、ノードAで乗り換えるリンクとしては、リンクa,b間、リンクa,d間、リンクb、d間とが存在する。リンクa,b間の乗換旅客数QV
Aabは経路BC2の経路別交通量Q
BC2となる。リンクa,d間の乗換旅客数QV
Aadは経路BC3の経路別交通量Q
BC3となる。リンクb,d間の乗換旅客数QV
Abdは経路が存在しないため「0」となる。
【0042】
続いて、LOS候補の評価について説明する。本実施形態では、LOS候補の評価指標として、利便性及び環境負荷の2つを用いる。
【0043】
具体的には、利便性の評価指標値としてUB(User Benefits)値を算出する。UB値は、次式(3)に従って算出される。
【数3】
上式(3)において、「T
OD1」は、基準LOS候補についての2都市間ODのOD交通量TOD、「C
OD1」は、基準LOS候補についての2都市間ODの一般化費用、である。また、「T
OD2」は、評価対象のLOS候補についての2都市間の組み合わせODのOD交通量TOD、「C
OD2」は、評価対象のLOS候補についての2都市間ODの一般化費用、である。
【0044】
また、環境負荷の評価指標値として、都市間旅客交通ネットワーク全体のCO2排出量を算出する。CO2排出量は、各リンクのCO2排出量の総和であり、次式(4)に従って算出される。
【数4】
上式(4)において、「Dj」はリンクjの運行本数、「lj」はリンクjの距離、「Gj」はリンクjに対応する交通機関の単位距離当たりのCO2排出量、である。リンクjの距離ljは、対応する交通機関による移動距離である。つまり、各リンクのLOSの一つである運行本数に着目すると、運行本数が多いほど、ネットワーク全体のCO2排出量が多くなる。
【0045】
そして、LOS候補それぞれについて、利便性の評価指標値であるUB値に第1の係数を乗算し、環境負荷の評価指標値であるCO2排出量に第2の係数を乗算したそれぞれの値を加算して得られる合成指標値を算出する。第1の係数と第2の係数は、合成指標値を算出するにあたり、UB値とCO2排出量との相対関係を決定する値として設定することができる。そして、合成指標値が所定の高評価条件を満たしたLOS候補を最適LOSとする。本実施形態では、所定の高評価条件を、最大の合成指標値とする。
【0046】
続いて、この最適LOSに対応するリンク・ノード別旅客数と、基準LOSに対応するリンク・ノード別旅客数とを比較し、所定のボトルネック条件を満たす都市や都市間の交通機関を、ボトルネック箇所として推定し、抽出する。
【0047】
図9は、ボトルネック箇所の抽出の説明図である。
図9に示すように、ノードそれぞれについて、基準LOSに対応する乗換旅客数QV
1と、最適LOSに対応する乗換旅客数QV
2との差ΔQV(=QV
2−QV
1)を算出する。そして、全てのノードのうち、乗換旅客数の差ΔQVが、第1の過大条件を満たすノードをボトルネック箇所として抽出する。第1の過大条件は、閾値とする所定人数を定めた、所定人数以上とする。また、リンクそれぞれについて基準LOSに対応する通過旅客数QE
1と、最適LOSに対応する通過旅客数QE
2との差ΔQE(=QE
2−QE
1)を算出する。そして、全てのリンクのうち、通過旅客数の差ΔQEが、第2の過大条件を満たすリンクをボトルネック箇所と推定して、全てのボトルネック箇所を抽出する。第2の過大条件は、閾値とする所定人数を定めた、所定人数以上とすることができ、第1の過大条件と同じ条件とすることもできる。また、最終的に抽出するボトルネック箇所としては、推定したボトルネック箇所のうち、ΔQVが最大の箇所や、ΔQEが最大の箇所のみを抽出することとしてもよい。
【0048】
[機能構成]
図10は、ボトルネック抽出装置1の機能構成図である。
図10によれば、ボトルネック抽出装置1は、操作部102と、表示部104と、音出力部106と、通信部108と、処理部200と、記憶部300と、を備えて構成される。
【0049】
操作部102は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等で実現される入力装置であり、操作入力に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えばLCD等で実現される表示装置であり、処理部200からの表示信号に応じた表示を行う。
【0050】
音出力部106は、例えばスピーカ等で実現される音出力装置であり、処理部200からの音信号に応じた音出力を行う。通信部108は、例えば無線通信モジュールやルータ、モデム、TA、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で実現される有線或いは無線の通信装置であり、外部装置との間で通信を行う。
【0051】
処理部200は、例えばCPU等で実現される演算装置であり、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ、操作部102からの操作信号等に基づいて、ボトルネック抽出装置1を構成する各部への指示やデータ転送を行い、ボトルネック抽出装置1の全体制御を行う。また、処理部200は、LOS候補生成部202と、経路探索部204と、効用値算出部206と、ノード間属性算出部208と、候補評価部210と、最適LOS選択部212と、リンク・ノード別旅客算出部214と、ボトルネック抽出部216とを有し、ボトルネック抽出プログラム302に従ったボトルネック抽出処理(
図23参照)を行って、対象の都市間旅客交通ネットワークにおける旅客流動上のボトルネック箇所となる都市や都市間の交通機関を抽出する。
【0052】
ここで、対象となる都市間旅客交通ネットワークを構成するノードやリンクの接続関係や、ノードと都市との対応関係、リンクと交通機関との対応関係といった構成については、ネットワーク構成データ304として記憶されている。
【0053】
また、この都市間旅客交通ネットワークを構成する各リンクの基準LOSは、基準LOSデータ312として記憶されている。
【0054】
図11は、基準LOSデータ312のデータ構成の一例を示す図である。
図11によれば、基準LOSデータ312は、都市間旅客交通ネットワークを構成するリンク312aそれぞれに、所要時間312bと、運賃312cと、運行本数312dとを対応付けて格納している。
【0055】
LOS候補生成部202は、複数のLOS候補を生成する。具体的には、基準LOSにおいて、運行本数を変更することで生成する。生成したLOS候補は、LOS候補データ328として記憶される。
【0056】
図12は、LOS候補データ328のデータ構成の一例を示す図である。
図12によれば、LOS候補データ328は、LOS候補それぞれについて生成され、都市間旅客交通ネットワークを構成するリンク320aそれぞれに、所要時間320bと、運賃320cと、運行本数320dとを対応付けて格納している。
【0057】
経路探索部204は、処理部200に処理対象として指定された基準LOS或いは何れかのLOS候補(以下、「指定LOS」という)に基づいて、対象の都市間旅客交通ネットワーク10における全ての2ノードの組み合わせについて、2ノード間の経路を探索する。探索した経路は、指定LOSが基準LOSである場合には、基準LOS用算出データ314の探索経路データ316として記憶され(
図21参照)、指定LOSがLOS候補である場合には、当該LOSに対応するLOS候補用算出データ330の探索経路データ332として記憶される(
図22参照)。
【0058】
探索経路データ316,332は同一構成である。代表して、
図13に、探索経路データ316のデータ構成の一例を示す。
図13によれば、探索経路データ316は、経路316aそれぞれに、所要時間316bと、運賃316cと、運行本数316dと、乗換回数316eと、効用値316fと、を対応付けて格納している。経路LOSである所要時間316b、運賃316c、運行本数316d、及び、乗換回数316eと、効用値316fとは、効用値算出部206によって算出される。
【0059】
効用値算出部206は、経路探索部204によって探索された各経路の効用値Vを算出する。具体的には、経路それぞれについて、指定LOSにて定められる当該経路を構成する各リンクのLOSから、経路LOSである所要時間、運賃、運行本数、乗換回数を算出し、この経路LOSから効用値Vを算出する(
図4参照)。
【0060】
ノード間属性算出部208は、指定LOSを対象の都市間旅客交通ネットワークに適用した場合の、各ノード間の一般化費用C及びOD交通量Tを算出する。具体的には、2ノード間の各経路の効用値Vから当該2ノード間の一般化費用Cを算出し、この一般化費用Cから当該2ノード間のアクセシビリティを算出する。次いで、2つのノードそれぞれに対応する都市それぞれの人口及びGRPと、2ノード間のアクセシビリティとから、2ノード間のOD交通量Tを算出する。
【0061】
ここで、各都市の人口及びGRPは、都市データ306として記憶されている。
図14は、都市データ306のデータ構成の一例を示す図である。
図14によれば、都市データ306は、対象の都市間旅客交通ネットワーク10を構成するノードに相当する都市306aそれぞれに、人口306bと、GRP306cとを対応付けて格納している。
【0062】
また、算出した一般化費用C及びOD交通量Tは、対指定LOSが基準LOSである場合には、基準LOS用算出データ314のノード間属性データ318として記憶され(
図2参照)、指定LOSがLOS候補である場合には、当該LOSに対応するLOS候補用算出データ330のノード間属性データ334として記憶される(
図22参照)。
【0063】
ノード間属性データ318,334は同一構成である。代表して、
図15に、ノード間属性データ318のデータ構成の一例を示す。
図15によれば、ノード間属性データ318は、ノード間318aそれぞれに、一般化費用318bと、アクセシビリティ318cと、OD交通量318dとを対応付けて格納している。
【0064】
候補評価部210は、LOS候補生成部202によって生成されたLOS候補それぞれを評価する。具体的には、利便性の評価指標値としてUB値を、2ノード間の一般化費用C、及び、OD交通量Tを用いて、式(3)に従って算出する。また、環境負荷の評価指標値として都市間旅客交通ネットワーク全体のCO2排出量を、各リンクの運行本数D、距離l、及び、対応する交通機関の単位距離当たりのCO2排出量Gを用いて、式(4)に従って算出する。
【0065】
ここで、交通機関の単位距離当たりのCO2排出量Gは、交通機関データ310として記憶されている。
図16は、交通機関データ310のデータ構成の一例を示す図である。
図16によれば、交通機関データ310は、交通機関310aそれぞれに、単位距離当たりのCO2排出量310bを対応付けて格納している。
【0066】
また、リンクの距離lは、対応する都市間の対応する交通機関による移動距離であり、ノード間距離データ308として記憶されている。
図17は、ノード間距離データ308のデータ構成の一例を示す図である。
図17によれば、ノード間距離データ308は、ノード間308aそれぞれに、各交通機関を利用した場合の移動距離308b、を対応付けて格納している。
【0067】
算出した評価指標値は、対応するLOS候補のLOS候補用算出データ330の評価データ336として記憶される。
図18は、評価データ336のデータ構成の一例を示す図である。
図18によれば、評価データ336は、評価指標336aそれぞれに、評価指標値336bを対応付けて格納している。
【0068】
最適LOS選択部212は、LOS候補生成部202によって生成されたLOS候補のうちから、候補評価部210による評価指標値が所定の高評価条件を満たす1つのLOS候補を最適LOSとして選択する。例えば、LOS候補それぞれについて、旅客流動の評価指標値であるUB値、及び、環境負荷の評価指標値であるCO2排出量それぞれを所定の重み付け加算して得られる合成指標値を算出し、高評価条件として、この合成指標値が最大となるLOS候補を、最適LOSとする。最適LOSに係るデータは、最適LOSデータ338として記憶される(
図10参照)。
【0069】
リンク・ノード別旅客数算出部214は、指定LOSを適用した場合の、対象の都市間旅客交通ネットワークにおける各リンクの通過旅客数QE、及び、各ノードの乗換旅客数QVを算出する。
【0070】
具体的には、先ず、2ノード間の各経路の選択確率Pを、指定LOSを用いて算出された当該経路の効用値V及び重複率CFから、式(1)に従って算出する。ここで、経路の重複率CFは、該当するノード間の移動距離及び他の経路との重複距離を用いて算出する(
図6参照)。ノード間の移動距離は、交通機関を利用したときの移動距離であり、ノード間距離データ308として記憶されている。
【0071】
そして、2ノード間の各経路の経路別交通量Qを、指定LOSを用いて算出された当該2ノード間のOD交通量Tに当該経路の選択確率Pを乗じてから算出する(
図5参照)。全ての2ノード間について各経路の経路別交通量Qを算出すると、各リンクの通過旅客数QEを、当該リンクを含む全ての経路それぞれの経路別交通量Qの総和として算出する(
図7参照)。また、各ノードの乗換旅客数QVを、当該ノードを繋ぐ2つのリンクの組み合わせ毎に、当該ノードを乗換ノードとして含む全ての経路それぞれの経路別交通量Qの総和として算出する(
図8参照)。
【0072】
算出した通過旅客数QE、及び、乗換旅客数QVは、指定LOSが基準LOSである場合には、基準LOS旅客数データ320として記憶され、指定LOSが最適LOSである場合には、最適LOS旅客数データ340として記憶される(
図10参照)。
【0073】
図19は、基準LOS旅客数データ320のデータ構成の一例を示す図である。
図19によれば、基準LOS旅客数データ320は、経路別交通量データ322と、リンク通過旅客数データ324と、ノード乗換旅客数データ326とを含む。経路別交通量データ322は、経路322aそれぞれに、選択確率322bと、経路別交通量322cとを対応付けて格納している。リンク通過旅客数データ324は、対象の都市間旅客交通ネットワークを構成するリンク324aそれぞれに、通過旅客数324bを対応付けて格納している。ノード乗換旅客数データ326は、対象の都市間旅客交通ネットワークを構成するノード326aそれぞれに、乗換旅客数326bを対応付けて格納している。
【0074】
図20は、最適LOS旅客数データ340のデータ構成の一例を示す図である。
図20に示すように、最適LOS旅客数データ340は、基準LOS旅客数データ320と同一構成であり、経路別交通量データ342と、リンク通過旅客数データ344と、ノード乗換旅客数データ346とを含む。
【0075】
ボトルネック抽出部216は、基準LOSに対応するリンク・ノード別旅客数と、最適LOSに対応するリンク・ノード別旅客数とを比較して、対象の都市間旅客交通ネットワークにおける、旅客流動上のボトルネック箇所を推定して抽出する。具体的には、ノードそれぞれについて、基準LOSに対応する乗換旅客数QV
1と、最適LOSに対応する乗換旅客数QV
2との差ΔQV(=QV
2−QV
1)を算出する。そして、全てのノードのうち、乗換旅客数の差ΔQVが、第1の過大条件である「所定人数以上である」を満たすノードをボトルネック箇所と推定して抽出する。また、リンクそれぞれについて、基準LOSに対応する通過旅客数QE
1と、最適LOSに対応する通過旅客数QE
2とを差ΔQE(=QE
2−QE
1)を算出する。そして、全てのリンクのうち、通過旅客数の差ΔQEが、第2の過大条件である「所定人数以上である」を満たすリンクをボトルネック箇所と推定して抽出する(
図9参照)。ボトルネック箇所として抽出したリンク及びノードは、ボトルネック箇所データ348として記憶される。
【0076】
記憶部300は、例えばハードディスクやROM、RAM等で実現される記憶装置であり、処理部200がボトルネック抽出装置1を統合的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や、操作部102からの操作データ等が一時的に格納される。記憶部300には、ボトルネック抽出プログラム302と、ネットワーク構成データ304と、都市データ306と、ノード間距離データ308と、交通機関データ310と、基準LOSデータ312と、基準LOS用算出データ314と、基準LOS旅客数データ320と、LOS候補データ328と、LOS候補用算出データ330と、最適LOSデータ338と、最適LOS旅客数データ340と、ボトルネック箇所データ348と、が記憶される。
【0077】
基準LOS用算出データ314は、基準LOSについてのノード間属性を算出するまでの過程において算出されるデータである。
図21は、基準LOS用算出データ314のデータ構成の一例を示す図である。
図21によれば、基準LOS用算出データ314は、探索経路データ316と、ノード間属性データ318とを格納している。
【0078】
LOS候補用算出データ330は、LOS候補それぞれを評価するまでの過程において算出されるデータである。
図22は、LOS候補用算出データ330のデータ構成の一例を示す図である。
図22によれば、LOS候補用算出データ330は、LOS候補それぞれについて生成され、LOS候補の識別番号である候補NO.330aと対応付けて、探索経路データ332と、ノード間属性データ334と、評価データ336とを格納している。
【0079】
[処理の流れ]
図23は、ボトルネック抽出処理の流れを説明するフローチャートである。この処理は、処理部200がボトルネック抽出プログラム302を実行することで実現される。
【0080】
先ず、LOS候補生成部202が、基準LOSを変更する等によって、複数のLOS候補を生成・設定する(ステップS1)。なお、LOS候補を予め複数設定・記憶させておくこととしてもよい。
【0081】
次いで、これらのLOS候補それぞれを対象としたループAの処理を行う。ループAでは、先ず、経路探索部204が、全ての2都市間それぞれについて、複数の経路を探索する(ステップS3)。次いで、効用値算出部206が、対象のLOS候補を用いて、探索された各経路の効用値Vを算出する(ステップS5)。
【0082】
続いて、OD交通量算出部208が、各ノード間について、当該ノード間の各経路の効用値Vからアクセシビリティを算出し、このアクセシビリティと、当該2ノードそれぞれに対応する都市データ(本実施形態では人口及びGRP)とから、対象の2ノード間のOD交通量Tを算出する(ステップS7)。次いで、候補評価部210が、対象のLOS候補についての評価指標値として、UB値、及び、ネットワーク全体のCO2排出量を算出する(ステップS9)。ループAはこのように行われる。
【0083】
全てのLOS候補を対象としたループAの処理を終了すると、最適LOS選択部212が、LOS候補のうちから、評価指標値が所定の高評価条件を満たす1つのLOS候補を、最適LOSとして選択する(ステップS11)。続いて、リンク・ノード別旅客算出部214が、2ノード間それぞれについて、当該2ノード間の各経路の選択確率Pを算出し、最適LOSに基づく当該2ノード間のOD交通量Tにこの選択確率Pを乗じて、当該経路の経路別交通量Qを算出する(ステップS13)。そして、各リンクの通過旅客数QVを、当該リンクを含む全ての経路それぞれの経路別交通量Qの総和として算出する。また、各ノードの乗換旅客数QEを、当該ノードを繋ぐ2つのリンクの組み合わせ毎に、当該ノードを乗換ノードとして含む全ての経路それぞれの経路別交通量Qの総和として算出する(ステップS15)。
【0084】
また、リンク・ノード別旅客算出部214は、基準LOSについても同様に、各経路の経路別交通量Qを算出し(ステップS17)、各リンクの通過旅客数QV、及び、各ノードの乗換旅客数QEを算出する(ステップS19)。
【0085】
続いて、ボトルネック抽出部216が、最適LOSに対応するリンク・ノード別旅客数と、基準LOSに対応するリンク・ノード別旅客数とを比較して、所定のボトルネック条件を満たすノード(都市)、及び、リンク(都市間の交通手段)を、ボトルネック箇所として推定して抽出する(ステップS21)。その後、ボトルネック箇所として抽出したノード(都市)やリンク(都市化の交通手段)を表示部114に表示出力する等して出力すると、ボトルネック抽出処理を終了する。
【0086】
[作用効果]
このように、本実施形態のボトルネック抽出装置1によれば、都市間旅客交通ネットワークにおける旅客流動上のボトルネック箇所となり得る都市や都市間の輸送手段を抽出することができる。具体的には、予め記憶している基準LOSとは異なる複数のLOS候補を生成し、これらのLOS候補それぞれを、当該LOS候補を都市間旅客交通ネットワークに適用した場合の各ノード間(各都市間)の一般化費用C及びOD交通量Tを用いて評価し、評価結果が所定の高評価条件を満たした最適LOSを選択する。そして、この最適LOSを都市間旅客交通ネットワークに適用した場合の各ノードの乗換旅客数QV、及び、各リンクの通過旅客数QEと、基準LOSを都市間旅客交通ネットワークに適用した場合の各ノードの乗換旅客数QV、及び、各リンクの通過旅客数QEとを比較し、乗換旅客数が所定人数以上であるノード(都市)、及び、通過旅客数が所定人数以上であるリンク(都市間の交通機関)を、ボトルネック箇所と推定して抽出する。
【0087】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0088】
(A)環境負荷の指標値
上述の実施形態では、環境負荷の指標値として、都市間旅客交通ネットワーク全体のCO2排出量を用いることにしたが、これを、都市間旅客交通ネットワーク全体のエネルギー消費量としても良い。都市間旅客交通ネットワーク全体のエネルギー消費量は、各リンクのエネルギー消費量の総和であり、あるリンクjのエネルギー消費量は、当該リンクjの運行本数と、距離Ljと、対応する交通機関の単位距離当たりのエネルギー消費量との積で求められる。つまり、例えば、各リンクのLOSの一つである運行本数が多いほど、都市間旅客交通ネットワーク全体エネルギー消費量が多くなる。
【0089】
(B)LOS候補の生成
上述の実施形態では、運行本数を変更することでLOS候補を生成することにしたが、所要時間や運賃といった他の要素を変更することでLOS候補を生成することとしても良い。また、予め複数のLOS候補を設定・記憶しておき、これを利用することとしてもよい。
【0090】
(C)
上述の実施形態では、都市間旅客交通ネットワークの構造そのものは固定としたが、変更することにしても良い。例えば、新たなリンクを追加し、この追加したリンクのLOSを様々に設定することでLOS候補を生成することで、交通機関の新設によるボトルネック箇所の推定・抽出を行うことができる。
【0091】
(D)LOS
上述の実施形態では、LOSの要素として、所要時間、運賃、運行本数、及び、乗換回数を用いるとしたが、これ以外としても良い。例えば、輸送中の快適性を示す指標値や、輸送遅延が生じる可能性を示す指標値などを含むとしてもよい。
【0092】
(E)評価指標
上述の実施形態では、LOS候補の評価指標として利便性(UB値)及び環境負荷(都市間旅客交通ネットワーク全体のCO2排出量)の2つを用いることとしたが、これ以外でも良い。但し、LOS候補の生成の際に変更するLOSによって、評価値の良し悪しが変化する評価指標を採用する必要がある。また、2つの指標値の線形和による合成指標値によって評価することとしたが、合成指標値の算出方法はこれ以外でも良いし、合成指標値を算出せず、1つ1つを評価することとしても良い。
【0093】
(F)都市間輸送ネットワーク
上述の実施形態では、輸送対象を旅客とした都市間旅客交通ネットワークに本発明を適用した実施形態を説明したが、輸送対象を貨物としたネットワークにも同様に本発明を適用可能である。また、輸送手段としては、鉄道、飛行機、高速バスの他、船舶を含めても良い。また、ネットワークの規模としても、国全体の他、一地方としてもよいし、複数国にまたがるネットワーク(例えばアジア圏や北米大陸、ヨーロッパ、地球全体など)として本発明を適用することも可能である。