(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
供給される電流量に応じて作動量が大きくなるアクチュエータと、車両の車両本体と車軸との相対位置を検出する検出装置とを有し、前記アクチュエータの前記作動量に応じて前記相対位置を変更する変更装置と、
前記相対位置が目標値となるように前記アクチュエータに供給する電流を制御することで前記車両本体の高さである車高を制御する制御装置と、
を備え、
前記変更装置は、前記アクチュエータの前記作動量が予め定められた所定量以下である場合には、車高を上昇させる状態となり、前記作動量が前記所定量よりも大きい場合には車高を下降させる状態となり、
前記制御装置は、前記相対位置の目標値と前記検出装置が検出した検出値との偏差と、前記アクチュエータに供給する目標電流とを対応させたマップに基づいて前記目標電流を決定し、
前記マップは、前記相対位置の目標値から前記検出値を減算した減算値が予め定められた第1基準値以上である場合には前記目標電流が予め定められた第1所定値となるように設定され、前記減算値が前記第1基準値よりも小さな値に予め定められた第2基準値以下である場合には前記目標電流が前記第1所定値よりも大きな値に予め定められた第2所定値となるように設定されている
ことを特徴とする車高調整装置。
前記補正部は、前記相対位置の目標値から前記検出値を減算することにより前記相対位置の目標値と前記検出値との偏差を算出し、前記偏差の符号が同じである期間の積分値に基づいて前記偏差を補正する、
請求項3に記載の車高調整装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
《第1の実施形態》
図1は、第1の実施形態に係る自動二輪車1の概略構成を示す図である。
自動二輪車1は、前側の車輪である前輪2と、後前の車輪である後輪3と、自動二輪車1の骨格をなす車体フレーム11、ハンドル12、エンジン13及びシート19などを有する車両本体10と、を備えている。
【0009】
また、自動二輪車1は、前輪2と車両本体10とを連結する懸架装置の一例としてのフロントフォーク21を有している。また、自動二輪車1は、後輪3と車両本体10とを連結するリヤサスペンション22を有している。なお、フロントフォーク21,リヤサスペンション22は、車両本体10と前輪2,後輪3の車軸との相対位置を変更する変更装置の一例である。
【0010】
また、自動二輪車1は、前輪2の左側に配置されたフロントフォーク21と前輪2の右側に配置されたフロントフォーク21とを保持する2つのブラケット14と、2つのブラケット14の間に配置されたシャフト15と、を備えている。シャフト15は、車体フレーム11に回転可能に支持されている。
また、自動二輪車1は、フロントフォーク21の後述する前輪側流路切替ユニット300及びリヤサスペンション22の後述する後輪側流路切替ユニット302を制御することで自動二輪車1の車高を制御する制御装置70を備えている。
また、自動二輪車1は、前輪2の回転角度を検出する前輪回転検出センサ31と、後輪3の回転角度を検出する後輪回転検出センサ32とを備えている。
【0011】
<フロントフォーク21の構成>
次に、フロントフォーク21について詳述する。
図2は、第1の実施形態に係るフロントフォーク21の断面図である。
第1の実施形態に係るフロントフォーク21は、自動二輪車1の車両本体10と前輪2との間に配置されて前輪2を支えるとともに、後述するアウタ部材110が前輪2側にインナチューブ210が車両本体10側に配置された、所謂正立型のフロントフォークである。
【0012】
フロントフォーク21は、アウタ部材110を有して前輪2の車軸に取り付けられる車軸側ユニット100と、インナチューブ210を有して車両本体10に取り付けられる本体側ユニット200と、を備えている。また、フロントフォーク21は、車軸側ユニット100と本体側ユニット200との間に配置されて、路面の凸凹に伴い前輪2が受ける振動を吸収する前輪側スプリング500を備えている。
【0013】
アウタ部材110及びインナチューブ210は、同軸的に配置された円筒状の部材であり、この円筒の中心線の方向(軸方向)を、以下では「上下方向」と称する場合がある。かかる場合、車両本体10側が「上」側、前輪2側が「下」側である。そして、フロントフォーク21は、車軸側ユニット100と本体側ユニット200とが上下方向(軸方向)に相対的に移動することにより、前輪2を支持しながら路面の凸凹を吸収して振動を抑制する。
【0014】
[車軸側ユニット100の構成]
車軸側ユニット100は、前輪2の車軸に取り付けられるアウタ部材110と、オイルの粘性抵抗を利用した減衰力を発生する減衰力発生ユニット130と、減衰力発生ユニット130を保持するロッド150と、ロッド150の下端部を保持するロッド保持部材160とを備えている。
また、車軸側ユニット100は、ロッド保持部材160の後述する軸方向凹部161aに挿入された球状のボール166と、ボール166の移動を制限する制限部材167とを備えている。
また、車軸側ユニット100は、前輪側スプリング500の下端部を支持するスプリング支持部材170と、スプリング支持部材170を保持する支持部材保持部材180と、インナチューブ210の軸方向の移動を案内する案内部材190とを備えている。
【0015】
(アウタ部材110の構成)
アウタ部材110は、インナチューブ210が挿入される円筒状の円筒状部111と、前輪2の車軸を取り付け可能な車軸ブラケット部112とを有している。
円筒状部111は、上端部に、インナチューブ210の外周面との間をシールするオイルシール113と、インナチューブ210の外周面との摺動を円滑にするためのスライドブッシュ114とを有している。
車軸ブラケット部112には、ロッド保持部材160が挿入される軸方向の軸方向貫通孔112aと、軸方向に交差する方向に貫通して前輪2の車軸を取り付け可能な車軸取付孔112bと、が形成されている。
【0016】
(減衰力発生ユニット130の構成)
減衰力発生ユニット130は、後述するシリンダ230の内側の空間に形成された作動油室50内を区画するピストン131と、ピストン131の上端側に設けられた上端側バルブ136と、ピストン131の下端側に設けられた下端側バルブ137とを備えている。また、減衰力発生ユニット130は、ピストン131、上端側バルブ136及び下端側バルブ137などを支持するピストンボルト140と、ピストンボルト140に締め付けられてピストン131、上端側バルブ136及び下端側バルブ137などの位置を定めるナット145とを備えている。
【0017】
ピストン131は、円筒状の部材であって、外周面に、シリンダ230との間の隙間をシールするシール部材を有している。ピストン131には、軸方向の貫通孔である第1貫通孔132及び第2貫通孔133が形成されている。また、ピストン131には、上端部にて径方向に延びて形成されると共に第1貫通孔132に連通する第1径方向連通路134と、下端部にて径方向に延びて形成されると共に第2貫通孔133に連通する第2径方向連通路135とが形成される。第1貫通孔132及び第2貫通孔133は、それぞれ周方向に等間隔に複数(例えば3つ)形成されており、第1径方向連通路134,第2径方向連通路135は、それぞれ第1貫通孔132,第2貫通孔133に対応する位置に形成されている。
【0018】
上端側バルブ136は、円盤状の金属板が複数重ねられて構成される。上端側バルブ136は、それぞれの金属板の中央に貫通孔が形成され、その貫通孔にピストンボルト140の後述する軸部141が通されている。そして、上端側バルブ136は、第2貫通孔133を塞ぎ、かつ第1貫通孔132を開放する。
【0019】
下端側バルブ137は、円盤状の金属板が複数重ねられて構成される。下端側バルブ137は、それぞれの金属板の中央に貫通孔が形成され、その貫通孔にピストンボルト140の後述する軸部141が通されている。そして、下端側バルブ137は、第1貫通孔132を塞ぎ、かつ第2貫通孔133を開放する。
【0020】
ピストンボルト140は、上端側に設けられた円柱状の軸部141と、下端側に設けられるとともに軸部141の半径よりも大きな半径の円柱状の基部142とを有する。ピストンボルト140には、基部142の下端面から軸部141にかけて凹んだ凹部143が形成されている。
【0021】
軸部141の上端部には、ナット145に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじが形成されている。
凹部143における下端部の内周面には、ロッド150における上端部に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成されている。また、凹部143における上端部には、軸部141の外側と凹部143とを連通するように径方向に貫通された径方向貫通孔144が形成されている。
【0022】
ナット145には、上端部に、ピストンボルト140の雄ねじが締め付けられる雌ねじ146が形成され、雌ねじ146よりも下方には、下端面から凹むとともに雌ねじ146の谷の半径よりも大きな半径の円柱状の凹部147が形成されている。また、ナット145には、ナット145の外部と凹部147とを連通するように径方向に貫通された径方向貫通孔148が形成されている。
【0023】
以上のように構成された減衰力発生ユニット130は、ピストンボルト140の凹部143に形成された雌ねじにロッド150の上端部に形成された雄ねじが締め付けられることでロッド150に保持される。そして、ピストン131が、その外周面に設けられたシール部材を介してシリンダ230の内周面に接触し、シリンダ230内の空間を、ピストン131よりも上方の第1油室51と、ピストンよりも下方の第2油室52とに区画する。
【0024】
(ロッド150の構成)
ロッド150は、円筒状の部材であり、上端部及び下端部における外周面には雄ねじが形成されている。上端部に形成された雄ねじは、減衰力発生ユニット130のピストンボルト140に締め付けられ、下端部に形成された雄ねじは、ロッド保持部材160の上端側円柱状部161に形成された雌ねじ161dに締め付けられる。また、下端部に形成された雄ねじにロックナット155が締め付けられることでロッド保持部材160に固定される。
また、ロッド150の下端部の内周面には雌ねじが形成されている。
【0025】
(ロッド保持部材160の構成)
ロッド保持部材160は、それぞれ径が異なる複数の円柱状の部位を有する部材であり、上端部にある上端側円柱状部161と、下端部にある下端側円柱状部162と、上端側円柱状部161と下端側円柱状部162との間にある中間円柱状部163とを有している。
【0026】
上端側円柱状部161には、上端面から軸方向に凹んだ軸方向凹部161aと、外周面から径方向に全周に渡って凹んだ径方向凹部161bと、軸方向凹部161aと径方向凹部161bとを径方向に貫通する径方向貫通孔161cとが形成されている。
軸方向凹部161aには、ロッド150の下端部に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじ161dが形成されている。また、軸方向凹部161aには、内径が下方に行くに従って徐々に小さくなるように軸方向に対して傾斜した傾斜面161eが形成されている。
また、上端側円柱状部161における下端部には、支持部材保持部材180に形成された後述する雌ねじ181が締め付けられる雄ねじ161fが形成されている。
【0027】
中間円柱状部163の径は、アウタ部材110に形成された軸方向貫通孔112aの内径よりも小さく、中間円柱状部163は、アウタ部材110の軸方向貫通孔112aに嵌め込まれている。
下端側円柱状部162の外周面には雄ねじ162aが形成されている。
ロッド保持部材160は、下端側円柱状部162に形成された雄ねじ162aがアウタ部材110の軸方向貫通孔112aに挿入されたナット165に締め付けられることで、アウタ部材110に固定される。
【0028】
(制限部材167の構成)
制限部材167は、段付き円筒状の部材である。そして、制限部材167の上端部の外周面には雄ねじが形成されている。制限部材167は、この雄ねじが、ロッド150の下端部の内周面に形成された雌ねじに締め付けられることで、ロッド150に固定される。そして、制限部材167は、下端部にて、ロッド保持部材160の軸方向凹部161a内に挿入されたボール166の移動を制限する。
【0029】
(スプリング支持部材170の構成)
スプリング支持部材170は、円筒状の部材であり、支持部材保持部材180における上端部に固定される。固定方法としては、溶接や圧入であることを例示することができる。
【0030】
(支持部材保持部材180の構成)
支持部材保持部材180は、円筒状の部材であり、下端部にはロッド保持部材160に形成された雄ねじ161fが締め付けられる雌ねじ181が形成されている。支持部材保持部材180は、雌ねじ181がロッド保持部材160に形成された雄ねじ161fに締め付けられることで、ロッド保持部材160に固定される。
支持部材保持部材180には、軸方向の位置においてロッド保持部材160の径方向凹部161bに対応する位置に、内外を連通する連通孔182が形成されている。
【0031】
(案内部材190の構成)
案内部材190は、円筒状の円筒状部191と、円筒状部191における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部192とを有している。
案内部材190は、内向部192がロッド保持部材160とアウタ部材110との間に挟み込まれることによって、ロッド保持部材160とアウタ部材110との間に固定される。
そして、内向部192における下端部には面取りが形成されており、この面取りとロッド保持部材160との間に形成された空間にOリング195が嵌め込まれる。Oリング195は、案内部材190、ロッド保持部材160及びアウタ部材110間の隙間をシールする。これにより、アウタ部材110の円筒状部111の内部空間が液密に保持される。
【0032】
以上のように構成された車軸側ユニット100においては、アウタ部材110の内周面と、ロッド150や支持部材保持部材180の外周面との間には、フロントフォーク21内に密封されたオイルを貯留する貯留室の一例としてのリザーバ室40が形成される。
【0033】
[本体側ユニット200の構成]
本体側ユニット200は、両端が開口した円筒状のインナチューブ210と、インナチューブ210における上端部に取り付けられたキャップ220と、を備えている。
また、本体側ユニット200は、円筒状のシリンダ230と、シリンダ230における下端部に取り付けられてシリンダ230内の空間を密封する密封部材240とを備えている。
また、本体側ユニット200は、前輪側スプリング500の上端部を支持するとともに前輪側スプリング500の長さを調整(変更)する調整部の一例としての前輪側スプリング長変更ユニット250と、シリンダ230における上端部に取り付けられて液体の一例としてのオイルの流路を切り替える前輪側流路切替ユニット300とを備えている。
また、本体側ユニット200は、前輪側スプリング長変更ユニット250の後述するベース部材260に対する上端部支持部材270の相対位置を検出する検出装置の一例としての前輪側相対位置検出部281(
図11参照)を有している。
【0034】
(インナチューブ210の構成)
インナチューブ210は、円筒状の部材である。
インナチューブ210は、下端部に、アウタ部材110の円筒状部111の内周面との摺動を円滑にするための円筒状のスライドブッシュ211と、スプリング支持部材170やアウタ部材110の車軸ブラケット部112に突き当たることにより軸方向の移動を抑制する円筒状の移動抑制部材212とを備えている。
インナチューブ210における上端部には、キャップ220に形成された後述する雄ねじが締め付けられる雌ねじ213が形成されている。
【0035】
(キャップ220の構成)
キャップ220は略円筒状の部材である。キャップ220の外周面には、インナチューブ210に形成された雌ねじ213に締め付けられる雄ねじ221が形成され、内周面には、前輪側スプリング長変更ユニット250や前輪側流路切替ユニット300に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成されている。そして、キャップ220は、インナチューブ210に取り付けられるとともに、前輪側スプリング長変更ユニット250や前輪側流路切替ユニット300を保持する。
また、キャップ220は、インナチューブ210の内部空間を液密に保つためのOリング222を有している。
【0036】
(シリンダ230の構成)
シリンダ230は円筒状の部材である。シリンダ230における上端部の外周面には、前輪側流路切替ユニット300に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成され、下端部の内周面には、密封部材240に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成されている。
【0037】
(密封部材240の構成)
密封部材240は円筒状の部材である。密封部材240の外周面には、シリンダ230の下端部の内周面に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじが形成されている。密封部材240は、雄ねじがシリンダ230の下端部の内周面に形成された雌ねじに締め付けられることでシリンダ230に保持される。
【0038】
密封部材240は、内周側に、ロッド150の外周面との摺動を円滑にするためのスライドブッシュ245を有している。また、密封部材240は、シリンダ230の内部空間を液密に保つために、ロッド150の外周面との間に配置されたOリング246とシリンダ230の内周面との間に配置されたOリング247とを有している。
また、密封部材240の上端部には、減衰力発生ユニット130との接触の際の衝撃を緩和する衝撃緩和部材248が取り付けられている。衝撃緩和部材248は、樹脂やゴムなどの弾性部材であることを例示することができる。
【0039】
(前輪側スプリング長変更ユニット250の構成)
前輪側スプリング長変更ユニット250は、キャップ220に固定されたベース部材260と、前輪側スプリング500の上端部を支持するとともにベース部材260に対して軸方向に相対移動することで前輪側スプリング500の長さを変更する上端部支持部材270とを備えている。
【0040】
ベース部材260は、略円筒状の部材である。ベース部材260における上端部の外周面には、キャップ220に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじ260aが形成されている。この雄ねじ260aがキャップ220に形成された雌ねじに締め付けられることで、ベース部材260は、キャップ220に固定される。
ただし、ベース部材260の上端部は、周方向の一部が径方向に突出した突出部260bが形成されており、突出部260bの内側と、後述する支持部材400の下端部における外周面との間に、シリンダ230内のオイルをリザーバ室40へ排出する排出流路41を形成する。
【0041】
ベース部材260は、下端部に、外周に嵌め込まれて、上端部支持部材270の内周面との摺動を円滑にする円筒状のスライドブッシュ261と、スライドブッシュ261の内側に設けられたOリング262とを有している。ベース部材260の内周面とシリンダ230の外周面との間には、環状の環状流路61が形成される。
【0042】
上端部支持部材270は、円筒状の円筒状部271と、円筒状部271における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部272とを有している。上端部支持部材270は、シリンダ230の外周面及びベース部材260の下端部との間の空間に、ベース部材260に対する上端部支持部材270の位置を変更するオイルを収容するジャッキ室60を形成する。
【0043】
円筒状部271の内径は、ベース部材260に嵌め込まれたスライドブッシュ261の外径以下に設定されている。円筒状部271には、この円筒状部271の内外を連通するように径方向に貫通した径方向貫通孔273が形成されている。この径方向貫通孔273を介してオイルがジャッキ室60からリザーバ室40へ排出されることにより、ベース部材260に対する上端部支持部材270の移動量が制限される。
【0044】
内向部272は、内周側に、シリンダ230の外周面との間の隙間をシールすることによりジャッキ室60を液密に保つOリング274を有している。
ジャッキ室60へは、ベース部材260の内周面とシリンダ230の外周面との間に形成された環状流路61を介してシリンダ230内のオイルが供給される。その詳細については後で詳述する。
【0045】
(前輪側相対位置検出部281の構成)
前輪側相対位置検出部281は、ベース部材260に対する上端部支持部材270の上下方向への移動量、言い換えれば車体フレーム11に対する上端部支持部材270の上下方向への移動量を検出する物であることを例示することができる。例えば、ベース部材260の外周面にコイルを巻くとともに、上端部支持部材270を磁性体とし、ベース部材260に対する上端部支持部材270の上下方向への移動に応じて変化するコイルのインピーダンスに基づいて上端部支持部材270の移動量を検出する物であることを例示することができる。
【0046】
(前輪側流路切替ユニット300の構成)
図3は、
図2のIII部の拡大図である。
図4は、
図3のIV部の拡大図である。
前輪側流路切替ユニット300は、後述するポンプ600にて吐出されたオイルをリザーバ室40へ供給するか、ポンプ600にて吐出されたオイルをジャッキ室60へ供給するか、ジャッキ室60に収容されたオイルをリザーバ室40へ供給するかを切り替える装置である。
【0047】
前輪側流路切替ユニット300は、前輪側ソレノイド310と、球状の弁体321と、弁体321を押す棒状のプッシュロッド322と、弁体321の座面を有する弁体シート部材330と、コイルスプリング340と、コイルスプリング340のバネ力を受けて弁体321を座面に押し付ける押付部材350とを備えている。
【0048】
また、前輪側流路切替ユニット300は、球状のボール360と、ボール360に対して軸方向の付勢力を与えるコイルスプリング361と、ボール360とコイルスプリング361との間に介在する円板362と、を備えている。また、前輪側流路切替ユニット300は、ボール360の座面を有するボールシート部材365と、コイルスプリング361及び円板362を収容する収容部材370とを備えている。
また、前輪側流路切替ユニット300は、弁体321や弁体シート部材330などを収容するバルブ収容内側部材380と、バルブ収容内側部材380の外側に配置されてボール360やボールシート部材365などを収容するバルブ収容外側部材390と、バルブ収容内側部材380及びバルブ収容外側部材390を支持する支持部材400とを備えている。
また、前輪側流路切替ユニット300は、前輪側ソレノイド310の後述する作動ロッド314の下端部に装着され、前輪側ソレノイド310の推力をプッシュロッド322に伝達する伝達部材410と、伝達部材410に対して軸方向の付勢力を与えるコイルスプリング415とを備えている。
【0049】
<前輪側ソレノイド310の構成>
前輪側ソレノイド310は、コイル311と、コイル311の内側に配置されたコア312と、コア312に案内されるプランジャ313と、プランジャ313に連結された作動ロッド314とを備えた、比例ソレノイドである。
また、前輪側ソレノイド310は、コイル311、コア312及びプランジャ313などを収容するケース315と、ケース315の開口部を覆うカバー316とを備えている。
【0050】
ケース315は、円筒状の円筒状部315aと、円筒状部315aにおける下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部315bとを有している。内向部315bには、作動ロッド314を通す貫通孔が形成されているとともに作動ロッド314の移動をガイドするガイドブッシュ315cが嵌め込まれている。
【0051】
作動ロッド314は、中空であり、上端部はケース315の内部に収容され、下端部はケース315から突出している。そして、作動ロッド314におけるケース315から突出した部位には、バルブ収容内側部材380に形成された後述する流路を開閉する円板状のバルブ317が取り付けられている。また、バルブ317とケース315との間における作動ロッド314の周囲には、バルブ317に対して軸方向の付勢力を与えるコイルスプリング318が取り付けられている。
【0052】
以上のように構成された前輪側ソレノイド310は、キャップ220に装着されたコネクタ、リード線を介してコイル311に通電されることにより、通電電流に応じてプランジャ313に軸方向の推力が発生する。そして、プランジャ313の推力によってプランジャ313に連結された作動ロッド314が軸方向に移動する。第1の実施形態に係る前輪側ソレノイド310は、コイル311への通電電流が大きくなるほど作動ロッド314のケース315からの突出量が大きくなるようにプランジャ313に軸方向の推力が発生する。
なお、コイル311への通電量は制御装置70にて制御される。
【0053】
<プッシュロッド322の構成>
プッシュロッド322は、
図3に示すように、上端部側に位置する円柱状の第1軸部322aと、下端部側に位置する円柱状の第2軸部322bと、第1軸部322aと第2軸部322bとの間に位置する円柱状の第3軸部322cと、を備えている。
第3軸部322cの半径は、第1軸部322a及び第2軸部322bの半径よりも大きい。つまり、第3軸部322cにおける軸方向に垂直な断面積は、第1軸部322aにおける軸方向に垂直な断面積及び第2軸部322bにおける軸方向に垂直な断面積よりも大きい。
なお、弁体321とプッシュロッド322とは一体であってもよい。
【0054】
<弁体シート部材330の構成>
弁体シート部材330は、外径が下方に行くに従って徐々に大きくなるように軸方向に対して傾斜した傾斜面331を有する円錐状の円錐状部332と、円柱状の円柱状部333とを有する。
【0055】
円錐状部332の内部には、上端面から凹んだ上端側凹部334が形成されている。また、円柱状部333の内部には、下端面から凹んだ下端側凹部335と、この下端側凹部335と上端側凹部334とを連通する連通孔336が形成されている。
上端側凹部334の内径は第3軸部322cの半径よりも大きく、連通孔336の内径は第2軸部322bの半径よりも大きい。連通孔336,上端側凹部334に、プッシュロッド322の第2軸部322b,第3軸部322cが挿入されている。そして、第2軸部322bの外周面と連通孔336の内周面との間の隙間及び第3軸部322cの外周面と上端側凹部334の内周面との間の隙間が、後述する第3連通路R3及び第4連通路R4の一部として機能する。
【0056】
下端側凹部335は、半径が下方に行くに従って徐々に大きくなるように軸方向に対して傾斜した傾斜面335aを有する円錐状の円錐状凹部335bと、円柱状の円柱状凹部335cとを有する。円錐状凹部335bの半径は、下方に行くに従って、弁体321の半径よりも小さい値から、弁体321の半径よりも大きな値まで変化する。そして、円錐状凹部335bの内部に弁体321が収容されるとともに、弁体321が傾斜面335aに接触することで弁体321と円錐状凹部335bとの間の隙間がシールされる。下端側凹部335の円柱状凹部335cの半径は、押付部材350の後述する第1円柱状部351の半径よりも大きく、下端側凹部335の内部に押付部材350の第1円柱状部351が収容される。
円錐状部332の外周面には、全周に渡って凹んだ溝332aが形成されている。溝332aに、バルブ収容内側部材380との間の隙間をシールするOリング337が嵌め込まれている。
【0057】
<押付部材350の構成>
押付部材350は、径が互いに異なる2つの円柱状の第1円柱状部351と第2円柱状部352とを有する。
第1円柱状部351における上端面には、弁体321の下端部の形状に沿う凹部が形成されている。第1円柱状部351の半径は、弁体321の半径及びコイルスプリング340の中心径の半分よりも大きい。そして、第1円柱状部351は、上端面で弁体321の下端部を支持し、下端面でコイルスプリング340の上端部を支持する。
第2円柱状部352の半径は、コイルスプリング340の内径の半分よりも小さく、第2円柱状部352は、コイルスプリング340の内部に進入している。また、第2円柱状部352は、収容部材370に形成された後述する軸方向貫通孔376に嵌め込まれている。第2円柱状部352の径は、収容部材370に形成された軸方向貫通孔376の孔径と略同じか、又は第2円柱状部352の径が軸方向貫通孔376の孔径よりもわずかに小さく設定されている。これらにより、押付部材350は、収容部材370により、軸方向に移動可能に支持されている。
【0058】
<ボールシート部材365の構成>
ボールシート部材365は、上端部にフランジが形成された円筒状の部材である。ボールシート部材365における上端側の開口には、ボール360の下端部の形状に沿う凹部が形成されている。ボールシート部材365の外周面には、全周に渡って溝366が形成されており、この溝366に、バルブ収容外側部材390との間の隙間をシールするOリング367が嵌め込まれている。
【0059】
<収容部材370の構成>
収容部材370は、概略、円柱状の部材である。収容部材370には、上端面から凹んだ円柱状の上端側凹部371と、下端面から凹んだ円柱状の下端側凹部372とが形成されている。上端側凹部371には、コイルスプリング340の下端部が収容され、下端側凹部372には、コイルスプリング361及び円板362が収容される。また、下端側凹部372の開口部の大きさは、ボール360の上端部の大きさよりも大きく、下端側凹部372は、ボール360の上端部を収容する。
収容部材370は、バルブ収容内側部材380の下端部に嵌め込まれる。収容部材370の外周面には、全周に渡って溝373が形成されており、この溝373に、バルブ収容内側部材380との間の隙間をシールするOリング374が嵌め込まれている。
また、収容部材370におけるバルブ収容内側部材380から露出した部位には、下端側凹部372内と、収容部材370の外側とを連通するように径方向に貫通された径方向貫通孔375が形成されている。
また、収容部材370には、上端側凹部371と下端側凹部372とを連通する軸方向の軸方向貫通孔376が形成されている。軸方向貫通孔376には、押付部材350の第2円柱状部352が嵌め込まれている。これにより、収容部材370は、バルブ収容内側部材380における開口部に配置され、押付部材350の第2円柱状部352を移動可能に支持する支持部材として機能する。
【0060】
<バルブ収容内側部材380の構成>
バルブ収容内側部材380は、概略、上端部にフランジ部が形成された円柱状の部材である。バルブ収容内側部材380には、上端面から凹んだ上端側凹部381と、下端面から凹んだ下端側凹部382と、上端側凹部381と下端側凹部382とを連通する連通孔383とが形成されている。また、バルブ収容内側部材380の外周面には、全周に渡って径方向に凹んだ第1径方向凹部384と第2径方向凹部385とが形成されている。
【0061】
上端側凹部381は、伝達部材410及びコイルスプリング415を収容するように、円柱状に形成されている。
下端側凹部382は、円柱状で径が互いに異なる第1円柱状凹部382a及び第2円柱状凹部382bと、第1円柱状凹部382aと第2円柱状凹部382bとの間に形成され半径が下方に行くに従って徐々に大きくなるように軸方向に対して傾斜した傾斜面を有する円錐状の円錐状凹部382cとを有する。
【0062】
第1円柱状凹部382a、円錐状凹部382c及び第2円柱状凹部382bは、弁体シート部材330を収容するように形成されている。つまり、円錐状凹部382cの傾斜面は、弁体シート部材330の円錐状部332の傾斜面331の形状に沿うように形成され、第2円柱状凹部382bの半径は弁体シート部材330の円柱状部333の半径よりも小さい。
また、下端側凹部382の開口部、つまり第2円柱状凹部382bの下端部には、収容部材370の上端部が嵌め込まれている。収容部材370に嵌め込まれたOリング374が、収容部材370とバルブ収容内側部材380との間の隙間をシールする。
第2径方向凹部385には、バルブ収容外側部材390との間の隙間をシールするOリング386が嵌め込まれている。
【0063】
また、バルブ収容内側部材380には、下端側凹部382の第1円柱状凹部382aと第1径方向凹部384とを連通する径方向の貫通孔である第1径方向連通孔387が形成されている。第1径方向連通孔387は、周方向に等間隔に複数形成されている。
また、バルブ収容内側部材380には、第2円柱状凹部382bとバルブ収容内側部材380の外側とを連通する径方向の貫通孔である第2径方向連通孔388が形成されている。第2径方向連通孔388は、周方向に等間隔に複数形成されている。
【0064】
また、バルブ収容内側部材380には、上端面と第1径方向凹部384とを連通する軸方向の貫通孔である内側軸方向連通孔389aが形成されている。内側軸方向連通孔389aは、周方向に等間隔に複数形成されている。
また、バルブ収容内側部材380のフランジには、このフランジを軸方向に貫通する貫通孔である外側軸方向連通孔389bが形成されている。外側軸方向連通孔389bは、周方向に等間隔に複数形成されている。
【0065】
<バルブ収容外側部材390の構成>
バルブ収容外側部材390は、円筒状でそれぞれ外径が互いに異なる第1円筒状部391及び第2円筒状部392と、第1円筒状部391における上端部から半径方向に外側に向かうフランジ部とを有している。第1円筒状部391の外径は第2円筒状部392の外径よりも大きい。
バルブ収容外側部材390には、上端面から凹んだ上端面側凹部393が形成されている。
第1円筒状部391には、第1円筒状部391の下方であって第2円筒状部392の外周面とシリンダ230の内周面との間に形成された空間と、上端面側凹部393とを連通する軸方向の貫通孔である軸方向連通孔394が形成されている。軸方向連通孔394は、周方向に等間隔に複数形成されている。
【0066】
第1円筒状部391の外周面には、全周に渡って径方向に凹んだ第1径方向凹部395及び第2径方向凹部396と、シリンダ230の上端部に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじ390aが形成されている。
第1径方向凹部395には、前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260との間の隙間をシールするOリング395aが嵌め込まれている。
第2径方向凹部396には、シリンダ230との間の隙間をシールするOリング396aが嵌め込まれている。
【0067】
また、第1円筒状部391には、内部と外部とを連通する径方向の貫通孔である第1径方向連通孔397及び第2径方向連通孔398が形成されている。第1径方向連通孔397及び第2径方向連通孔398は、周方向に等間隔に、軸方向連通孔394が形成されていない部位に複数形成されている。軸方向の位置としては、第1径方向連通孔397は、第1径方向凹部395よりも上方に形成され、第2径方向連通孔398は、第1径方向凹部395と第2径方向凹部396との間に形成されている。
【0068】
第2円筒状部392は、内周面から内側に突出した凸部399を有している。凸部399の上端面に、ボールシート部材365のフランジが載せられるとともに、凸部399の内周面とボールシート部材365の外周面との間の隙間がボールシート部材365に嵌め込まれたOリング367によってシールされる。
【0069】
バルブ収容外側部材390は、第1円筒状部391の外周面に形成された雄ねじ390aがシリンダ230の内周面に形成された雌ねじに締め付けられることで、シリンダ230を保持する。
【0070】
<支持部材400の構成>
支持部材400は、
図3に示すように、円筒状の円筒状部401と、円筒状部401における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部402とを有している。
円筒状部401における上端部の外周面にはキャップ220に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじ403が形成されている。支持部材400は、円筒状部401の外周面に形成された雄ねじ403がキャップ220に形成された雌ねじに締め付けられることでキャップ220に保持される。また、支持部材400は、内向部402と前輪側ソレノイド310との間に、バルブ収容内側部材380のフランジ部とバルブ収容外側部材390のフランジ部とを挟み込むことで、バルブ収容内側部材380及びバルブ収容外側部材390を保持する。
【0071】
<伝達部材410の構成>
伝達部材410は、円柱状で径が互いに異なる第1円柱状部411及び第2円柱状部412を有している。
第2円柱状部412の外径は、コイルスプリング415の内径よりも小さく、第2円柱状部412は、コイルスプリング415の内部に挿入される。
第1円柱状部411の外径は、コイルスプリング415の内径よりも大きい。第1円柱状部411の外周面には、コイルスプリング415の上端部が嵌り込む溝が形成されている。
伝達部材410及びコイルスプリング415は、バルブ収容内側部材380の上端側凹部381に収容される。
【0072】
バルブ317及びコイルスプリング318は、前輪側ソレノイド310の下端面に形成された凹部319に収容されている。バルブ317には、バルブ収容内側部材380の上端側凹部381に対向する位置に軸方向の貫通孔317aが形成されている。コイルスプリング318は、バルブ317に対してバルブ収容内側部材380の上端面の方へ向かう軸方向の付勢力を与える。
【0073】
以上のように構成された前輪側流路切替ユニット300においては、前輪側ソレノイド310のコイル311への通電が停止しているか又は予め定められた第1基準電流未満の電流が供給されている場合には、ケース315から突出した作動ロッド314の突出量が予め定められた第1基準量未満となる。作動ロッド314の突出量が第1基準量未満である場合には、作動ロッド314に取り付けられたバルブ317がバルブ収容内側部材380の上端面に着座せずに、バルブ収容内側部材380に形成された内側軸方向連通孔389aの上端側の開口を開放する。
【0074】
他方、前輪側ソレノイド310のコイル311へ第1基準電流以上の電流が供給されている場合には、作動ロッド314が下方に移動し、作動ロッド314のケース315からの突出量が第1基準量以上となる。作動ロッド314の突出量が第1基準量以上である場合には、作動ロッド314に取り付けられたバルブ317がバルブ収容内側部材380の上端面に着座して内側軸方向連通孔389aの上端側の開口を閉じる。言い換えれば、作動ロッド314は、ケース315からの突出量が第1基準量以上である場合にバルブ317がバルブ収容内側部材380の上端面に着座する位置まで突出する。
【0075】
そして、前輪側ソレノイド310のコイル311へ、第1基準電流よりも大きい値に予め定められた第2基準電流以上の電流が供給されている場合には、作動ロッド314がさらに下方に移動し、作動ロッド314のケース315からの突出量が第1基準量よりも大きい値に予め定められた第2基準量以上となる。作動ロッド314の突出量が第2基準量以上である場合には、伝達部材410とプッシュロッド322とが接触すると共にプッシュロッド322と弁体321とが接触する。言い換えれば、プッシュロッド322は、伝達部材410と弁体321とで挟まれた状態となる。
【0076】
そして、前輪側ソレノイド310のコイル311へ第2基準電流よりも大きな電流が供給され、作動ロッド314のケース315からの突出量が第2基準量よりも大きくなると、伝達部材410を介してプッシュロッド322を下方へ押す。プッシュロッド322が下方へ移動すると、弁体321がプッシュロッド322から押されて弁体シート部材330の下端側凹部335の傾斜面335aから離れる。言い換えれば、プッシュロッド322は、ケース315からの作動ロッド314の突出量が第2基準量よりも大きい場合に作動ロッド314により押されて、傾斜面335aから弁体321が離れるよう弁体321を押す。
【0077】
以下では、コイル311への通電が停止しているか又は第1基準電流未満の電流が供給されている場合に、作動ロッド314に取り付けられたバルブ317がバルブ収容内側部材380に形成された内側軸方向連通孔389aを開放するとともに弁体321が弁体シート部材330の下端側凹部335の傾斜面335aに着座している状態を第1切替状態と称す。
【0078】
また、コイル311へ第1基準電流以上の電流が供給され、作動ロッド314に取り付けられたバルブ317がバルブ収容内側部材380に形成された内側軸方向連通孔389aを閉じるとともに弁体321が弁体シート部材330の下端側凹部335の傾斜面335aに着座している状態を第2切替状態と称す。
【0079】
また、コイル311へ第2基準電流よりも大きな電流が供給され、作動ロッド314に取り付けられたバルブ317がバルブ収容内側部材380に形成された内側軸方向連通孔389aを閉じるとともに弁体321が弁体シート部材330の下端側凹部335の傾斜面335aから離れている状態を第3切替状態と称す。
なお、第1基準電流、第2基準電流は、それぞれ0.4A、0.6Aであることを例示することができる。
【0080】
また、コイル311へ第2基準電流よりも大きな電流が供給され、作動ロッド314に取り付けられたバルブ317がバルブ収容内側部材380に形成された内側軸方向連通孔389aを閉じるとともに、弁体シート部材330の円錐状部332の傾斜面331がバルブ収容内側部材380の円錐状凹部382cに形成された傾斜面から離れている状態を第4切替状態と称す。なお、この第4切替状態においては、弁体321は弁体シート部材330の下端側凹部335の傾斜面335aに着座している。
【0081】
<フロントフォーク21の作用>
以上のように構成されたフロントフォーク21は、前輪側スプリング500が自動二輪車1の車重を支えて衝撃を吸収し、減衰力発生ユニット130が前輪側スプリング500の振動を減衰する。
図5は、フロントフォーク21の圧縮行程時の作用を説明するための図である。
フロントフォーク21の圧縮行程においては、減衰力発生ユニット130のピストン131が、白抜き矢印のようにシリンダ230に対して上方へ移動し、ピストン131の移動で第1油室51内のオイルは押されて圧力が上昇する。その結果、第1貫通孔132を塞ぐ下端側バルブ137が開き、オイルは第1貫通孔132を通って第2油室52に流入する(矢印C1参照)。この第1油室51から第2油室52へのオイルの流れは、第1貫通孔132及び下端側バルブ137で絞られ、圧縮行程時における減衰力を得る。
【0082】
また、圧縮行程時にシリンダ230内部へロッド150が進入したことに起因して、ロッド進入体積分のオイルが、前輪側流路切替ユニット300の切替状態に応じて、ジャッキ室60又はリザーバ室40へ供給される(矢印C2参照)。前輪側流路切替ユニット300の切替状態に応じて、ジャッキ室60、リザーバ室40のいずれへ供給されるかについては後述する。なお、減衰力発生ユニット130、ロッド150及びシリンダ230などは、シリンダ230内のオイルをジャッキ室60又はリザーバ室40へ供給するポンプとして機能する。以下では、このポンプを「ポンプ600」と称す場合もある。
【0083】
図6は、フロントフォーク21の伸張行程時の作用を説明するための図である。
フロントフォーク21の伸張行程においては、減衰力発生ユニット130のピストン131が、白抜き矢印のようにシリンダ230に対して下方へ移動し、ピストン131の移動で第2油室52内のオイルは押されて圧力が上昇する。その結果、第2貫通孔133を塞ぐ上端側バルブ136が開き、オイルは第2貫通孔133を通って第1油室51に流入する(矢印T1参照)。この第2油室52から第1油室51へのオイルの流れは、第2貫通孔133及び上端側バルブ136で絞られ、伸張行程時における減衰力を得る。
【0084】
また、伸張行程時にシリンダ230内部からロッド150が退出したことに起因して、ロッド退出体積分のオイルが、リザーバ室40から第1油室51へ供給される。つまり、ピストン131が下方へ移動したことに起因して低圧となった第1油室51へ、リザーバ室40のオイルが進入する。つまり、リザーバ室40のオイルは、支持部材保持部材180の連通孔182、ロッド保持部材160の径方向貫通孔161cを通ってロッド保持部材160の軸方向凹部161aに進入した後にボール166を上方へ移動させてロッド150内部へ進入する(矢印T2参照)。そして、ロッド150内部へ進入したオイルは、ピストンボルト140の凹部143,径方向貫通孔144、ナット145の径方向貫通孔148を通って第1油室51へ至る(矢印T3参照)。
【0085】
このように、支持部材保持部材180の連通孔182、ロッド保持部材160の径方向貫通孔161c、ロッド保持部材160の軸方向凹部161a、ロッド150内部、ピストンボルト140の凹部143,径方向貫通孔144、ナット145の径方向貫通孔148は、リザーバ室40からシリンダ230内(第1油室51)へオイルを吸入する吸入路として機能する。また、ボール166及びロッド保持部材160の軸方向凹部161aに形成された傾斜面161eは、リザーバ室40からロッド150内部へのオイルの流入を許容するとともにロッド150内部からリザーバ室40へのオイルの排出を抑制するチェック弁として機能する。以下では、ボール166及び傾斜面161eを、「吸入側チェック弁Vc」と称す。
【0086】
<前輪側流路切替ユニット300の切替状態に応じたオイルの流通状態>
図7は、前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
フロントフォーク21の圧縮行程時に前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合、減衰力発生ユニット130、ロッド150及びシリンダ230などにより構成されるポンプ600から吐出されたオイルは、
図7に示した矢印P1のように、バルブ収容外側部材390に形成された軸方向連通孔394を通って上方へ向かう。そして、バルブ収容外側部材390に形成された軸方向連通孔394を通って上方へ向かったオイルは、バルブ収容内側部材380の外側軸方向連通孔389bを通って上方へ向かい、開放された内側軸方向連通孔389aを通って下方へ向かう。その後、オイルは、バルブ収容外側部材390に形成された第1径方向連通孔397、ベース部材260の突出部260bと支持部材400の下端部との間に形成された排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
【0087】
このように、バルブ収容外側部材390の軸方向連通孔394、バルブ収容内側部材380の外側軸方向連通孔389b及び内側軸方向連通孔389a、バルブ収容外側部材390の第1径方向連通孔397、排出流路41は、シリンダ230内とリザーバ室40とを連通する第1連通路R1(
図11参照)として機能する。また、作動ロッド314に取り付けられたバルブ317、コイルスプリング318及びバルブ収容内側部材380の上端面が、この第1連通路R1を開閉する第1連通路開閉弁V1(
図11参照)として機能する。
【0088】
図8は、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
フロントフォーク21の圧縮行程時に前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合、作動ロッド314に取り付けられたバルブ317がバルブ収容内側部材380に形成された内側軸方向連通孔389aを閉じているので、ポンプ600から吐出されたオイルは、
図8に示した矢印P2のように、ジャッキ室60へ向かう。つまり、ポンプ600から吐出されたオイルは、コイルスプリング361の付勢力に抗してボール360を押し上げ、バルブ収容内側部材380の外周面及び収容部材370の外周面と、バルブ収容外側部材390の内周面との間の隙間を通って上方へ向かい、バルブ収容外側部材390の第2径方向連通孔398を通ってバルブ収容外側部材390の外側に向かう。第2径方向連通孔398を通ったオイルは、その後、シリンダ230の外周面と前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260の内周面との間に形成された環状流路61を通ってジャッキ室60に向かう。
【0089】
このように、バルブ収容内側部材380の外周面及び収容部材370の外周面と、バルブ収容外側部材390の内周面との間の隙間、バルブ収容外側部材390の第2径方向連通孔398及び環状流路61は、シリンダ230内とジャッキ室60とを連通する第2連通路R2(
図11参照)として機能する。また、ボール360、コイルスプリング361、円板362及びボールシート部材365が、この第2連通路R2を開閉する第2連通路開閉弁V2(
図11参照)として機能する。第2連通路開閉弁V2は、シリンダ230内からジャッキ室60へのオイルの流れを許容するとともにジャッキ室60からシリンダ230内へのオイルの流れを妨げるチェック弁でもある。
【0090】
図9は、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
フロントフォーク21の圧縮行程時に前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合、
図9に示した矢印P3のように、ジャッキ室60内のオイルは、リザーバ室40に向かう。つまり、ジャッキ室60内のオイルは、シリンダ230の外周面と前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260の内周面との間に形成された環状流路61、バルブ収容外側部材390の第2径方向連通孔398及びバルブ収容内側部材380の第2径方向連通孔388を通ってバルブ収容内側部材380の下端側凹部382に進入する。バルブ収容内側部材380の下端側凹部382に進入したオイルは、バルブ収容内側部材380と弁体シート部材330の円柱状部333の外周面との間の隙間を通って下方へ向かい、弁体シート部材330の下端側凹部335に進入する。弁体シート部材330の下端側凹部335に進入したオイルは、押付部材350、弁体321及びプッシュロッド322と弁体シート部材330との間の隙間を通って上方へ向かい、バルブ収容内側部材380の第1径方向連通孔387を通る。バルブ収容内側部材380の第1径方向連通孔387を通ったオイルは、バルブ収容外側部材390に形成された第1径方向連通孔397及びベース部材260の突出部260bと支持部材400の下端部との間に形成された排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
【0091】
このように、環状流路61、バルブ収容外側部材390の第2径方向連通孔398、バルブ収容内側部材380の第2径方向連通孔388、バルブ収容内側部材380と弁体シート部材330の円柱状部333の外周面との間の隙間、押付部材350、弁体321及びプッシュロッド322と弁体シート部材330との間の隙間、バルブ収容内側部材380の第1径方向連通孔387、バルブ収容外側部材390の第1径方向連通孔397、排出流路41が、ジャッキ室60とリザーバ室40とを連通する第3連通路R3(
図11参照)として機能する。また、弁体321、弁体シート部材330の下端側凹部335の傾斜面335aが、この第3連通路R3を開閉する第3連通路開閉弁V3(
図11参照)として機能する。
【0092】
図10は、前輪側流路切替ユニット300が第4切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
フロントフォーク21の圧縮行程時に前輪側流路切替ユニット300が第4切替状態である場合、
図10に示した矢印P4のように、ジャッキ室60内のオイルは、リザーバ室40に向かう。つまり、ジャッキ室60内のオイルは、環状流路61、バルブ収容外側部材390の第2径方向連通孔398及びバルブ収容内側部材380の第2径方向連通孔388を通ってバルブ収容内側部材380の下端側凹部382に進入する。バルブ収容内側部材380の下端側凹部382に進入したオイルは、弁体シート部材330の円錐状部332の傾斜面331及びOリング337とバルブ収容内側部材380の円錐状凹部382cに形成された傾斜面との間の隙間を通って上方へ向かい、バルブ収容内側部材380の第1径方向連通孔387を通る。バルブ収容内側部材380の第1径方向連通孔387を通ったオイルは、バルブ収容外側部材390に形成された第1径方向連通孔397及びベース部材260の突出部260bと支持部材400の下端部との間に形成された排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
【0093】
このように、環状流路61、バルブ収容外側部材390の第2径方向連通孔398、バルブ収容内側部材380の第2径方向連通孔388、弁体シート部材330の傾斜面331及びOリング337とバルブ収容内側部材380の円錐状凹部382cに形成された傾斜面との間の隙間、バルブ収容内側部材380の第1径方向連通孔387、バルブ収容外側部材390の第1径方向連通孔397、排出流路41が、ジャッキ室60とリザーバ室40とを連通する第4連通路R4(不図示)として機能する。また、弁体シート部材330の円錐状部332の傾斜面331及びOリング337、バルブ収容内側部材380の円錐状凹部382cに形成された傾斜面が、この第4連通路R4を開閉する第4連通路開閉弁V4(不図示)として機能する。
【0094】
(前輪側流路切替ユニット300の第3切替状態から第4切替状態への変遷)
前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合に
図9に示した矢印P3のようにジャッキ室60内のオイルがリザーバ室40に向かうと、ジャッキ室60内のオイルが減って前輪側スプリング500の長さが短くなり、ジャッキ室60内の圧力が低下する。その結果、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合における弁体シート部材330と収容部材370との間に形成される背圧室の圧力は、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合における背圧室の圧力よりも低下する。これにより、弁体シート部材330が下方に移動し始める。
プッシュロッド322により弁体321が第3切替状態よりもさらに下方へ移動させられると、弁体321と弁体シート部材330の下端側凹部335の傾斜面335aとの間の隙間が大きくなる。その結果、ジャッキ室60内の圧力がさらに低下して、背圧室の圧力がさらに低下する。これにより、弁体シート部材330が下方に移動し、弁体シート部材330の円錐状部332の傾斜面331がバルブ収容内側部材380の円錐状凹部382cに形成された傾斜面から離れて第4切替状態となる。
【0095】
<前輪側流路切替ユニット300の切替状態に応じた連通路の開閉状態>
図11(a)は、前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合の、第1連通路R1、第2連通路R2及び第3連通路R3の開閉状態を模式的に示す図である。
図11(b)は、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合の、第1連通路R1、第2連通路R2及び第3連通路R3の開閉状態を模式的に示す図である。
図11(c)は、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態又は第4切替状態である場合の、第1連通路R1、第2連通路R2及び第3連通路R3の開閉状態を模式的に示す図である。
【0096】
図11(a)に示すように、前輪側ソレノイド310のコイル311への通電が第1基準電流未満である場合には、前輪側流路切替ユニット300は第1切替状態、つまり第1連通路開閉弁V1は開き、第3連通路開閉弁V3は閉じているので、ポンプ600から吐出されたオイルは、第1連通路R1を介してリザーバ室40に至る。かかる場合、ポンプ600から吐出されたオイルは第2連通路開閉弁V2を開くほど高圧ではないので、オイルは第2連通路R2を流通しない。言い換えれば、第1連通路開閉弁V1が開いているので、第2連通路開閉弁V2は閉じている。この第1切替状態においては、ジャッキ室60内のオイルは増減しない。
【0097】
図11(b)に示すように、前輪側ソレノイド310のコイル311への通電が第1基準電流以上であり前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態、つまり第1連通路開閉弁V1及び第3連通路開閉弁V3が閉じている場合には、ポンプ600から吐出されたオイルは、第2連通路開閉弁V2を開いて第2連通路R2を介してジャッキ室60に至る。この第2切替状態においては、ジャッキ室60内のオイルの量が増える。
【0098】
図11(c)に示すように、前輪側ソレノイド310のコイル311への通電が第2基準電流よりも大きく前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態、つまり第1連通路開閉弁V1は閉じており、第3連通路開閉弁V3は開いている場合には、ジャッキ室60のオイルは、第3連通路R3を介してリザーバ室40に至る。この第3切替状態においては、ジャッキ室60内のオイルの量が減る。
【0099】
前輪側ソレノイド310のコイル311への通電が第2基準電流よりも大きく前輪側流路切替ユニット300が第4切替状態、つまり第1連通路開閉弁V1は閉じており、第4連通路開閉弁V4は開いている場合には、ジャッキ室60のオイルは、第4連通路R4を介してリザーバ室40に至る。
この第4切替状態における弁体シート部材330の円錐状部332の傾斜面331及びOリング337とバルブ収容内側部材380に形成された傾斜面との間の隙間で作られた流路は、第3切替状態におけるバルブ収容内側部材380と弁体シート部材330の円柱状部333の外周面との間の隙間で作られた流路よりも広い。
また、第3切替状態における弁体321と弁体シート部材330に形成された傾斜面335aとの間の隙間で作られた流路は、第3切替状態におけるバルブ収容内側部材380と弁体シート部材330の円柱状部333の外周面との間の隙間で作られた流路よりも狭い。それゆえ、この第4切替状態においては、第3切替状態よりも、ジャッキ室60内のオイルの量が高速で減る。
【0100】
<車高の昇降について>
以上述べたように作用するフロントフォーク21において、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合、圧縮行程時に、ポンプ600から吐出されたオイルがジャッキ室60に流入し、ジャッキ室60内のオイル量が増す。そして、ジャッキ室60内のオイル量が増すことによって前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260に対して上端部支持部材270が下方へ移動する。上端部支持部材270がベース部材260に対して下方へ移動することで前輪側スプリング500のバネ長が短くなると、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動する前と比べて前輪側スプリング500が上端部支持部材270を押すバネ力が大きくなる。その結果、車体フレーム11から前輪2側へ力が作用したとしても両者の相対位置を変化させない初期セット荷重(プリロード)が大きくなる。かかる場合、車体フレーム11(シート19)側から軸方向に同じ力が作用した場合には、フロントフォーク21の沈み込み量が小さくなる。それゆえ、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動することで前輪側スプリング500のバネ長が短くなると、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動する前と比べて、シート19の高さが上昇する(車高が高くなる)。
【0101】
他方、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態や第4切替状態である場合、ジャッキ室60内のオイル量が減少することによって前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260に対して上端部支持部材270が上方へ移動する。上端部支持部材270がベース部材260に対して上方に移動することで前輪側スプリング500のバネ長が長くなると、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動する前と比べて前輪側スプリング500が上端部支持部材270を押すバネ力が小さくなる。かかる場合、初期セット荷重(プリロード)が小さくなり、車体フレーム11(シート19)側から軸方向に同じ力が作用した場合のフロントフォーク21の沈み込み量が大きくなる。それゆえ、上端部支持部材270がベース部材260に対して上方に移動することで前輪側スプリング500のバネ長が長くなると、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動する前と比べて、シート19の高さが下降する(車高が低くなる)。なお、前輪側流路切替ユニット300が第4切替状態である場合には、第3切替状態である場合よりもジャッキ室60内のオイルの量が高速で減るので、第3切替状態である場合よりも高速で車高が低くなる。
【0102】
なお、前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合、圧縮行程時にポンプ600から吐出されたオイルはリザーバ室40に流入するので、ジャッキ室60内のオイル量は増減しない。それゆえ、シート19の高さが維持される(車高が維持される)。
上述したように、第1の実施形態に係る前輪側流路切替ユニット300は、電流が供給されることにより駆動し、車両の車両本体と車軸との相対位置、ひいては車高を変更するアクチュエータの一例として機能する。
【0103】
<第3連通路開閉弁V3の開弁容易性について>
上述したように、弁体321及び弁体シート部材330の傾斜面335aが、第3連通路R3を開閉する第3連通路開閉弁V3として機能し、弁体321が傾斜面335aに接触することで第3連通路R3を閉じる。そして、第3連通路R3を閉じている状態において、弁体321における傾斜面335aとの接触部の軸方向に垂直な断面積Svが、弁体321に対して上方に(プッシュロッド322が押す方向とは反対方向に)作用する力を受ける受圧面積となる。弁体321に対して上方に作用する力は、コイルスプリング340のバネ力+弁体シート部材330の下端側凹部335内の圧力(ジャッキ室60内の圧力)×断面積Svである。
【0104】
他方、プッシュロッド322の第3軸部322cにおける軸方向に垂直な断面積Spが、バルブ収容内側部材380の上端側凹部381内の圧力(以下、「プッシュロッド背圧」と称す。)を受ける受圧面積となる。言い換えれば、断面積Spが、ポンプ600からオイルが吐出されることに起因してプッシュロッド322が弁体321を押す方向にプッシュロッド322に対して作用する力を受ける受圧面積となる。
そして、第1の実施形態においては、弁体321における傾斜面335aとの接触部の断面積Svと、プッシュロッド322の第3軸部322cの断面積Spとを、略同じか、又は断面積Svを断面積Spよりもわずかに大きく設定している。
【0105】
ここで、自動二輪車1に積載した荷物が想定よりも重い過積載の場合には、前輪側スプリング500の長さが短くなり、前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260に対する上端部支持部材270の位置が同じであるとしてもジャッキ室60内のオイルの圧力が高くなる。その結果、弁体321が収容された弁体シート部材330の下端側凹部335内の圧力が高くなり、第3連通路開閉弁V3の開弁が困難になる可能性がある。そして、第3連通路開閉弁V3の開弁が困難になると、前輪側流路切替ユニット300の前輪側ソレノイド310のコイル311へ第2基準電流より大きな電流が供給されたとしても第3連通路開閉弁V3が開弁せずに車高が下降しないおそれがある。
【0106】
第1の実施形態においては、バルブ317におけるバルブ収容内側部材380の上端側凹部381に対向する位置には貫通孔317aが形成されているため、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合においても、フロントフォーク21の伸縮に合わせて、プッシュロッド背圧が、ジャッキ室60内の圧力よりも低圧〜ジャッキ室60内の圧力よりも高圧の範囲で脈動する。そして、弁体321の断面積Svとプッシュロッド322の断面積Spとを略同じか、又は断面積Svを断面積Spよりもわずかに大きく設定しているので、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合においても、プッシュロッド背圧がジャッキ室60内の圧力よりも高圧となった場合には、プッシュロッド322が弁体321を押し下げようとする。そのため、第2切替状態から第3切替状態へ移行させる過程で、第2切替状態である場合の前輪側ソレノイド310の推力よりも少しだけ大きな推力が発生することで、プッシュロッド322が弁体321を押し下げる。つまり、第2切替状態である場合の前輪側ソレノイド310の推力よりも少しだけ大きな推力を発生させることで、第3連通路開閉弁V3を開弁させることができる。
【0107】
このように、第1の実施形態の構成によれば、過積載や長時間放置による弁体321の張り付き事象など、不意の要因によって第3連通路開閉弁V3の開弁荷重が高くなった場合においても、ポンプ600からの吐出圧を利用することで容易に第3連通路開閉弁V3を開弁させることができる。
なお、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合であってプッシュロッド背圧がジャッキ室60内の圧力よりも高圧になった場合に、プッシュロッド322が弁体321を押し下げないようにする分、弁体321の断面積Svをプッシュロッド322の断面積Spよりもわずかに大きく設定してもよい。
【0108】
<第3連通路開閉弁V3の閉弁容易性について>
また、第1の実施形態においては、押付部材350の第2円柱状部352における軸方向に垂直な断面積Scは、弁体321における傾斜面335aとの接触部の断面積Svよりも大きく設定されている。
前輪側流路切替ユニット300を、第3切替状態から第2切替状態又は第1切替状態に移行させるべく、前輪側ソレノイド310のコイル311へ供給する電流を第2基準電流未満に低下させて、ケース315からの作動ロッド314の突出量を第2基準量未満に変更した場合、押付部材350に作用する弁体321を押す方向の力が、プッシュロッド背圧×(プッシュロッド322の断面積Sp)よりも大きくなると第3連通路開閉弁V3が閉じる。
【0109】
第1の実施形態においては、収容部材370に、下端側凹部372内と収容部材370の外側とを連通するように径方向に貫通された径方向貫通孔375が形成されているため、軸方向貫通孔376はジャッキ室60と連通している。そのため、押付部材350の第2円柱状部352における弁体321とは反対側の端部である下端部はジャッキ室60内の圧力を受ける。それゆえ、押付部材350に作用する弁体321を押す方向の力は、コイルスプリング340のバネ力に、ジャッキ室60の圧力×断面積Scを加算した値となる。つまり、第1の実施形態における押付部材350に作用する弁体321を押す方向の力は、押付部材350の第2円柱状部352の下端部がジャッキ室60の圧力を受けない構成、又は第2円柱状部352の下端部がジャッキ室60の圧力よりも小さな圧力(例えば弁体シート部材330の下端側凹部335内の圧力)を受ける構成よりも大きい。その結果、第1の実施形態の構成によれば、第1の実施形態の構成を採用しない場合よりも迅速に第3連通路開閉弁V3を閉じることができる。
【0110】
ここで、上述したように、バルブ317におけるバルブ収容内側部材380の上端側凹部381に対向する位置には貫通孔317aが形成されているため、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態及び第4切替状態である場合においても、フロントフォーク21の伸縮に合わせて、プッシュロッド背圧が、ジャッキ室60内の圧力よりも低圧〜ジャッキ室60内の圧力よりも高圧の範囲で脈動する。
第1の実施形態においては、押付部材350の第2円柱状部352の断面積Scは、弁体321の断面積Svよりも大きく設定されている(断面積Sc>断面積Sv)。つまり、弁体321の断面積Svは、上述したように、プッシュロッド322の第3軸部322cの断面積Spと略同じか、断面積Spよりもわずかに大きいことから、押付部材350の第2円柱状部352の断面積Scは、プッシュロッド322の第3軸部322cの断面積Spよりも大きい(断面積Sc>断面積Sp)。それゆえ、第1の実施形態の構成によれば、押付部材350の断面積Scが弁体321の断面積Sv以下である構成よりも押付部材350に作用する弁体321を押す方向の力が大きくなるのでより迅速に第3連通路開閉弁V3を閉じることができる。したがって、第1の実施形態の構成によれば、上述したように第1切替状態又は第2切替状態から第3切替状態へ移行させる際に第3連通路開閉弁V3をより迅速に開弁し易くしつつ、第3切替状態から第1切替状態又は第2切替状態へ移行させる際に第3連通路開閉弁V3をより迅速に閉弁し易くすることができる。
【0111】
また、前輪側流路切替ユニット300を、第4切替状態から第1切替状態又は第2切替状態に移行させるべく、前輪側ソレノイド310のコイル311へ供給する電流を第2基準電流未満に低下させて、ケース315からの作動ロッド314の突出量を第2基準量未満に変更した場合も、第1の実施形態の構成によれば、より迅速に第4連通路開閉弁V4を閉じることができる。
弁体シート部材330が押付部材350に押された弁体321に押されることにより上方に移動することで第4連通路開閉弁V4が閉じる。そして、第1の実施形態における押付部材350に作用する弁体321(弁体シート部材330)を押す方向の力は、押付部材350の第2円柱状部352の下端部がジャッキ室60の圧力を受けない構成又は第2円柱状部352の下端部がジャッキ室60の圧力よりも小さな圧力を受ける構成よりも大きい。それゆえ、第1の実施形態の構成によれば、第1の実施形態の構成を採用しない場合よりも迅速に第4連通路開閉弁V4を閉じることができる。したがって、第1の実施形態の構成によれば、第4切替状態から第1切替状態又は第2切替状態へ移行させる際に第4連通路開閉弁V4をより迅速に閉弁し易くすることができる。
【0112】
<リヤサスペンション22の構成>
リヤサスペンション22は、自動二輪車1の車両本体10と後輪3との間に配置されて後輪3を支える。リヤサスペンション22は、後輪3の車軸に取り付けられる車軸側ユニットと、車両本体10に取り付けられる本体側ユニットと、車軸側ユニットと本体側ユニットとの間に配置されて、路面の凸凹に伴い後輪3が受ける振動を吸収する後輪側スプリング502(
図1参照)とを備えている。後輪側スプリング502は、上端部が本体側ユニットに支持され、下端部が車軸側ユニット側に支持されている。
【0113】
車軸側ユニットは、オイルの粘性抵抗を利用した減衰力を発生する減衰力発生ユニットと、減衰力発生ユニットを保持するロッド152(
図1参照)と、後輪側スプリング502の下端部を支持するスプリング下端部支持部材153(
図1参照)とを備えている。
本体側ユニットは、減衰力発生ユニットが挿入されるシリンダ232(
図1参照)と、後輪側スプリング502の上端部を支持するとともに後輪側スプリング502の長さを調整(変更)する後輪側スプリング長変更ユニット252(
図1参照)と、シリンダ232の外部に取り付けられてオイルの流路を切り替える後輪側流路切替ユニット302(
図1参照)とを備えている。
また、リヤサスペンション22は、オイルを貯留するリザーバ室(貯留室)と、シリンダ232を有し、車両本体10と後輪3との間の相対距離が大きくなった場合にはリザーバ室に溜められたオイルをシリンダ232内に吸引し、車両本体10と後輪3との間の相対距離が小さくなった場合にはシリンダ232内のオイルを吐出するポンプとを備える。
【0114】
後輪側スプリング長変更ユニット252は、フロントフォーク21が有する前輪側スプリング長変更ユニット250と同様に、車体フレーム11側に固定されたベース部材253と、後輪側スプリング502の上端部を支持するとともにベース部材253に対して軸方向に相対移動することで後輪側スプリング502の長さを変更する上端部支持部材254とを備えている。そして、後輪側スプリング長変更ユニット252は、オイルを収容するジャッキ室(収容室)を有して、上端部支持部材254が後輪側スプリング502における上端部を支持し、ジャッキ室内のオイルの量に応じて後輪側スプリング502の長さを調整する。
【0115】
また、リヤサスペンション22は、車体フレーム11に対する後輪側スプリング502における上端部を支持する部材の相対位置を検出する後輪側相対位置検出部282(相対位置検出装置)(
図12参照)を有している。後輪側相対位置検出部282は、ベース部材253に対する上端部支持部材254の軸方向への移動量、言い換えれば車体フレーム11に対する上端部支持部材254の軸方向への移動量を検出する物であることを例示することができる。例えば、ベース部材253の外周面にコイルを巻くとともに、上端部支持部材254を磁性体とし、ベース部材253に対する上端部支持部材254の上下方向への移動に応じて変化するコイルのインピーダンスに基づいて上端部支持部材254の移動量を検出する物であることを例示することができる。
【0116】
<後輪側流路切替ユニット302の連通路の開閉状態と切替状態>
後輪側流路切替ユニット302は、フロントフォーク21が有する前輪側流路切替ユニット300と同様の構成であり、同様に作用する。すなわち、後輪側流路切替ユニット302は、シリンダ232内とリザーバ室とを連通する第1連通路R1と、シリンダ232内とジャッキ室とを連通する第2連通路R2と、ジャッキ室とリザーバ室とを連通する第3連通路R3とを備えている。また、後輪側流路切替ユニット302は、第1連通路R1を開閉する第1連通路開閉弁V1と、第2連通路R2を開閉する第2連通路開閉弁V2と、第3連通路R3を開閉する第3連通路開閉弁V3とを備えている。
【0117】
そして、後輪側流路切替ユニット302は、供給される電流が予め定められた第1基準電流未満であり後輪側流路切替ユニット302の作動ロッドのケースからの突出量が第1基準量未満である場合には第1切替状態となる。つまり、後輪側流路切替ユニット302は、第1連通路R1を開くとともに第3連通路R3を閉じるので、ポンプから吐出されたオイルは、第1連通路R1を介してリザーバ室に至る。かかる場合、ポンプから吐出されたオイルは第2連通路開閉弁V2を開くほど高圧ではないので、オイルは第2連通路R2を流通しない。言い換えれば、第1連通路開閉弁V1が開いているので、第2連通路開閉弁V2は閉じている。この第1切替状態においては、ジャッキ室内のオイルは増減しないため、車高が維持される。
【0118】
後輪側流路切替ユニット302は、供給される電流が第1基準電流以上であり作動ロッドのケースからの突出量が第1基準量以上である場合には第1連通路R1を閉じる。このとき、作動ロッドのケースからの突出量が第2基準量未満である場合には第3連通路R3は閉じられた第2切替状態となる。つまり第1連通路開閉弁V1及び第3連通路開閉弁V3は閉じているので、ポンプから吐出されたオイルは、第2連通路開閉弁V2を開いてジャッキ室に至る。この第2切替状態においては、ジャッキ室内のオイルの量が増え、車高が高くなる。
【0119】
他方、後輪側流路切替ユニット302は、供給される電流が第2基準電流よりも大きく作動ロッドのケースからの突出量が第2基準量よりも大きい場合には第3連通路R3が開いた第3切替状態となる。つまり第1連通路開閉弁V1は閉じ、第3連通路開閉弁V3は開いているので、ジャッキ室のオイルは、第3連通路R3を介してリザーバ室に至る。この第3切替状態においては、ジャッキ室内のオイルの量が減り、車高が低くなる。
【0120】
また、後輪側流路切替ユニット302は、供給される電流が第2基準電流よりも大きく作動ロッドのケースからの突出量が第3基準量よりも大きい場合には第4連通路R4が開いた第4切替状態となる。つまり第1連通路開閉弁V1は閉じ、第4連通路開閉弁V4は開いているので、ジャッキ室のオイルは、第4連通路R4を介してリザーバ室に至る。この第4切替状態においては、第3切替状態よりも、ジャッキ室内のオイルの量が高速で減り、車高が高速で低くなる。
【0121】
<制御装置70の構成>
次に、制御装置70について説明する。
図12は、制御装置70のブロック図である。
制御装置70は、CPUと、CPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMと、を備えている。制御装置70には、上述した前輪回転検出センサ31、後輪回転検出センサ32、前輪側相対位置検出部281及び後輪側相対位置検出部282などからの出力信号が入力される。
【0122】
制御装置70は、前輪回転検出センサ31からの出力信号を基に前輪2の回転速度を演算する前輪回転速度演算部71と、後輪回転検出センサ32からの出力信号を基に後輪3の回転速度を演算する後輪回転速度演算部72と、を備えている。これら前輪回転速度演算部71、後輪回転速度演算部72は、それぞれ、センサからの出力信号であるパルス信号を基に回転角度を把握し、それを経過時間で微分することで回転速度を演算する。
【0123】
制御装置70は、前輪側相対位置検出部281からの出力信号を基に前輪側スプリング長変更ユニット250の上端部支持部材270のベース部材260に対する移動量である前輪側移動量Lfを把握する前輪側移動量把握部73を備えている。また、制御装置70は、後輪側相対位置検出部282からの出力信号を基に後輪側スプリング長変更ユニット252の上端部支持部材254のベース部材253に対する移動量である後輪側移動量Lrを把握する後輪側移動量把握部74を備えている。前輪側移動量把握部73,後輪側移動量把握部74は、予めROMに記憶された、コイルのインピーダンスと、前輪側移動量Lf,後輪側移動量Lrとの相関関係に基づいて、前輪側移動量Lf,後輪側移動量Lrを把握する。
【0124】
また、制御装置70は、前輪回転速度演算部71が演算した前輪2の回転速度及び/又は後輪回転速度演算部72が演算した後輪3の回転速度を基に自動二輪車1の移動速度である車速Vvを把握する車速把握部76を備えている。車速把握部76は、前輪回転速度Rf又は後輪回転速度Rrを用いて前輪2又は後輪3の移動速度を演算することにより車速Vvを把握する。前輪2の移動速度は、前輪回転速度Rfと前輪2のタイヤの外径とを用いて演算することができ、後輪3の移動速度は、後輪回転速度Rrと後輪3のタイヤの外径とを用いて演算することができる。そして、自動二輪車1が通常の状態で走行している場合には、車速Vvは、前輪2の移動速度及び/又は後輪3の移動速度と等しいと解することができる。また、車速把握部76は、前輪回転速度Rfと後輪回転速度Rrとの平均値を用いて前輪2と後輪3の平均の移動速度を演算することにより車速Vvを把握してもよい。
【0125】
また、制御装置70は、車速把握部76が把握した車速Vvに基づいて、前輪側流路切替ユニット300の切替状態及び後輪側流路切替ユニット302の切替状態を制御する流路切替ユニット制御部77を有している。この流路切替ユニット制御部77については、後で詳述する。
これら前輪回転速度演算部71、後輪回転速度演算部72、前輪側移動量把握部73、後輪側移動量把握部74、車速把握部76及び流路切替ユニット制御部77は、CPUがROMなどの記憶領域に記憶されたソフトウェアを実行することにより実現される。
【0126】
次に、制御装置70の流路切替ユニット制御部77について詳しく説明する。
図13は、流路切替ユニット制御部77のブロック図である。
流路切替ユニット制御部77は、前輪側移動量Lfの目標移動量である前輪側目標移動量Lftを決定する前輪側目標移動量決定部771と、後輪側移動量Lrの目標移動量である後輪側目標移動量Lrtを決定する後輪側目標移動量決定部772と、を有する目標移動量決定部770を有している。また、流路切替ユニット制御部77は、前輪側流路切替ユニット300の前輪側ソレノイド310及び後輪側流路切替ユニット302の後輪側ソレノイド(不図示)に供給する目標電流を決定する目標電流決定部710と、目標電流決定部710が決定した目標電流に基づいてフィードバック制御などを行う制御部720とを有している。
【0127】
目標移動量決定部770は、車速把握部76が把握した車速Vv及び自動二輪車1に設けられた車高調整スイッチ(不図示)がどの位置に操作されているかに基づいて目標移動量を決定する。車高調整スイッチは、所謂ダイヤル式のスイッチであり、運転者がつまみを回転させることにより、「低」と、「中」と、「高」とを選択できるように構成されている。そして、車高調整スイッチは、例えばスピードメータの近傍に設けられている。
【0128】
目標移動量決定部770は、自動二輪車1が走行開始後、車速把握部76が把握した車速Vvが予め定められた上昇車速Vuよりも小さいときには目標移動量を零に決定し、車速Vvが上昇車速Vuより小さい状態から上昇車速Vu以上となった場合には、目標移動量を、車高調整スイッチの操作位置に応じて予め定められた値に決定する。より具体的には、前輪側目標移動量決定部771は、車速Vvが上昇車速Vuより小さい状態から上昇車速Vu以上となった場合には、前輪側目標移動量Lftを、車高調整スイッチの操作位置に応じて予め定められた所定前輪側目標移動量Lf0に決定する。他方、後輪側目標移動量決定部772は、車速Vvが上昇車速Vuより小さい状態から上昇車速Vu以上となった場合には、後輪側目標移動量Lrtを、車高調整スイッチの操作位置に応じて予め定められた所定後輪側目標移動量Lr0に決定する。以降、車速把握部76が把握した車速Vvが上昇車速Vu以上である間は、前輪側目標移動量決定部771,後輪側目標移動量決定部772は、前輪側目標移動量Lft,後輪側目標移動量Lrtを、所定前輪側目標移動量Lf0,所定後輪側目標移動量Lr0に決定する。車高調整スイッチの操作位置と、この操作位置に応じた所定前輪側目標移動量Lf0,所定後輪側目標移動量Lr0との関係は、予めROMに記憶しておく。前輪側移動量Lfと後輪側移動量Lrとに応じて自動二輪車1の車高が定まることから、車高調整スイッチの操作位置に応じて自動二輪車1の車高の目標値である目標車高を定め、この目標車高に応じた所定前輪側目標移動量Lf0,所定後輪側目標移動量Lr0を予め定め、ROMに記憶しておくことを例示することができる。
【0129】
他方、目標移動量決定部770は、自動二輪車1が上昇車速Vu以上で走行している状態から予め定められた下降車速Vd以下となった場合には目標移動量を零に決定する。つまり、前輪側目標移動量決定部771,後輪側目標移動量決定部772は、前輪側目標移動量Lft,後輪側目標移動量Lrtを零に決定する。なお、上昇車速Vuは10km/h、下降車速Vdは8km/hであることを例示することができる。
【0130】
目標電流決定部710は、前輪側目標移動量決定部771が決定した前輪側目標移動量に基づいて前輪側流路切替ユニット300の前輪側ソレノイド310の目標電流である前輪側目標電流Itfを決定する前輪側目標電流決定部711と、後輪側目標移動量決定部772が決定した後輪側目標移動量Lrtに基づいて後輪側流路切替ユニット302の後輪側ソレノイドの目標電流である後輪側目標電流Itrを決定する後輪側目標電流決定部712と、を有している。前輪側目標電流決定部711及び後輪側目標電流決定部712については後で詳述する。
【0131】
制御部720は、前輪側流路切替ユニット300の前輪側ソレノイド310を駆動させる前輪側ソレノイド駆動部733と、前輪側ソレノイド駆動部733の作動を制御する前輪側作動制御部730と、前輪側ソレノイド310に流れる電流を検出する前輪側電流検出部734とを有している。また、制御部720は、後輪側ソレノイドを駆動させる後輪側ソレノイド駆動部743と、後輪側ソレノイド駆動部743の作動を制御する後輪側作動制御部740と、後輪側ソレノイドに流れる電流を検出する後輪側電流検出部744とを有している。
【0132】
前輪側作動制御部730は、前輪側目標電流決定部711が決定した前輪側目標電流Itfと、前輪側電流検出部734が検出した電流(前輪側検出電流)との偏差に基づいてフィードバック制御を行う前輪側フィードバック(F/B)制御部731と、前輪側ソレノイド310をPWM制御する前輪側PWM制御部732とを有している。
後輪側作動制御部740は、後輪側目標電流決定部712が決定した後輪側目標電流Itrと、後輪側電流検出部744が検出した電流(後輪側検出電流)との偏差に基づいてフィードバック制御を行う後輪側フィードバック(F/B)制御部741と、後輪側ソレノイドをPWM制御する後輪側PWM制御部742とを有している。
【0133】
前輪側フィードバック制御部731は、前輪側目標電流Itfと、前輪側電流検出部734が検出した前輪側検出電流との偏差を求め、その偏差がゼロとなるようにフィードバック処理を行う。後輪側フィードバック制御部741は、後輪側目標電流Itrと、後輪側電流検出部744が検出した後輪側検出電流との偏差を求め、その偏差がゼロとなるようにフィードバック処理を行う。前輪側フィードバック制御部731,後輪側フィードバック制御部741は、例えば、前輪側目標電流Itfと前輪側検出電流との偏差,後輪側目標電流Itrと後輪側検出電流との偏差に対して、比例要素で比例処理し、積分要素で積分処理し、加算演算部でこれらの値を加算するものであることを例示することができる。あるいは、前輪側フィードバック制御部731,後輪側フィードバック制御部741は、例えば、目標電流と検出電流との偏差に対して、比例要素で比例処理し、積分要素で積分処理し、微分要素で微分処理し、加算演算部でこれらの値を加算するものであることを例示することができる。
【0134】
前輪側PWM制御部732は、一定周期(T)のパルス幅(t)のデューティ比(=t/T×100(%))を変え、前輪側ソレノイド310の開度(前輪側ソレノイド310のコイル311に印加される電圧)をPWM制御する。PWM制御が行われると、前輪側ソレノイド310のコイル311に印加される電圧が、デューティ比に応じたパルス状に印加される。このとき、前輪側ソレノイド310のコイル311に流れる電流は、コイル311のインピーダンスにより、パルス状に印加される電圧に追従して変化することができずになまって出力され、前輪側ソレノイド310のコイル311を流れる電流は、デューティ比に比例して増減される。そして、前輪側PWM制御部732は、例えば、前輪側目標電流Itfが零である場合にはデューティ比を零に設定し、前輪側目標電流Itfが後述する第3基準電流である場合にはデューティ比を80%に設定することを例示することができる。
【0135】
同様に、後輪側PWM制御部742は、デューティ比を変え、後輪側ソレノイドの開度(後輪側ソレノイドのコイルに印加される電圧)をPWM制御する。PWM制御が行われると、後輪側ソレノイドのコイルに印加される電圧がデューティ比に応じたパルス状に印加され、後輪側ソレノイドのコイルを流れる電流がデューティ比に比例して増減する。そして、後輪側PWM制御部742は、例えば、後輪側目標電流Itrが零である場合にはデューティ比を零に設定し、後輪側目標電流Itrが後述する第3基準電流である場合にはデューティ比を80%に設定することを例示することができる。
【0136】
前輪側ソレノイド駆動部733は、例えば、電源の正極側ラインと前輪側ソレノイド310のコイル311との間に接続された、スイッチング素子としてのトランジスタ(FET)を備えている。そして、このトランジスタのゲートを駆動してこのトランジスタをスイッチング動作させることにより、前輪側ソレノイド310の駆動を制御する。後輪側ソレノイド駆動部743は、例えば、電源の正極側ラインと後輪側ソレノイドのコイルとの間に接続されたトランジスタを備えている。そして、このトランジスタのゲートを駆動してこのトランジスタをスイッチング動作させることにより、後輪側ソレノイドの駆動を制御する。
【0137】
前輪側電流検出部734は、前輪側ソレノイド駆動部733に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から前輪側ソレノイド310に流れる電流の値を検出する。後輪側電流検出部744は、後輪側ソレノイド駆動部743に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から後輪側ソレノイドに流れる電流の値を検出する。
【0138】
次に、前輪側目標電流決定部711及び後輪側目標電流決定部712について説明する。なお、後輪側目標電流決定部712が後輪側目標電流Itrを決定する処理は、前輪側目標電流決定部711が前輪側目標電流Itfを決定する処理と同じであるため、以下には、前輪側目標電流決定部711が前輪側目標電流Itfを決定する処理を代表して説明する。
【0139】
<前輪側目標電流決定部711>
図14は、第1の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップの概略図である。
第1の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711は、前輪側目標移動量決定部771が決定した前輪側目標移動量Lftから前輪側移動量把握部73が把握した前輪側移動量Lfである前輪側実移動量Lfaを減算した前輪側移動量偏差ΔLf(=Lft−Lfa)と、前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップに基づいて前輪側目標電流Itfを算出する。前輪側目標電流決定部711は、例えば、前輪側目標移動量決定部771が決定した前輪側目標移動量Lftから前輪側移動量把握部73が把握した前輪側実移動量Lfaを減算することにより前輪側移動量偏差ΔLf(=Lft−Lfa)を算出する。そして、前輪側目標電流決定部711は、予め作成しROMに記憶しておいた、
図14に例示した第1の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップに、算出した前輪側移動量偏差ΔLfを代入することにより前輪側目標電流Itfを算出する。
【0140】
図14に例示した第1の実施形態に係る制御マップにおいては、前輪側目標移動量Lftが前輪側実移動量Lfaよりも大きく前輪側移動量偏差ΔLfが正(プラス)となる領域においては、前輪側移動量偏差ΔLfが予め定められた前輪側第1基準偏差ΔLf1(正の値)以下である場合には、前輪側目標電流Itfが零となるように設定されている。また、前輪側移動量偏差ΔLfが正の領域においては、前輪側移動量偏差ΔLfが予め定められた前輪側第2基準偏差ΔLf2(正の値)以上である場合には、前輪側目標電流Itfが前輪側移動量Lfを増加させる値に予め定められた増加電流となるように設定されている。また、前輪側移動量偏差ΔLfが正の領域においては、前輪側移動量偏差ΔLfが前輪側第1基準偏差ΔLf1から前輪側第2基準偏差ΔLf2まで大きくなるに従って、前輪側目標電流Itfが零から増加電流まで徐々に大きくなるように設定されている。なお、増加電流は、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態となる値であり、例えば、第1基準電流以上であって第2基準電流以下であることを例示することができる。より具体的には、増加電流は、0.5Aであることを例示することができる。また、以下の説明において、前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態となる第1基準電流未満の電流を、前輪側移動量Lfを維持させる維持電流と称する場合がある。
【0141】
他方、
図14に例示した第1の実施形態に係る制御マップにおいては、前輪側目標移動量Lftが前輪側実移動量Lfaよりも小さく前輪側移動量偏差ΔLfが負(マイナス)となる領域においては、前輪側移動量偏差ΔLfが予め定められた前輪側第3基準偏差ΔLf3(負の値)以上である場合には、前輪側目標電流Itfが零となるように設定されている。また、前輪側移動量偏差ΔLfが負の領域においては、前輪側移動量偏差ΔLfが予め定められた前輪側第4基準偏差ΔLf4(負の値)以下である場合には、前輪側目標電流Itfが前輪側移動量Lfを低下させる値に予め定められた低下電流となるように設定されている。また、前輪側移動量偏差ΔLfが負の領域においては、前輪側移動量偏差ΔLfが前輪側第4基準偏差ΔLf4から前輪側第3基準偏差ΔLf3まで大きくなるに従って、前輪側目標電流Itfが低下電流から増加電流まで徐々に小さくなるように設定されている。なお、低下電流は、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態又は第4切替状態となる値であり、例えば、後述する第3基準電流であることを例示することができる。
なお、
図14に例示した第1の実施形態に係る制御マップにおいては、前輪側移動量偏差ΔLfが負となる領域において、前輪側移動量偏差ΔLfが前輪側第3基準偏差ΔLf3である場合に、前輪側目標電流Itfを零から増加電流まで急変させているが特にかかる態様に限定されない。例えば、前輪側移動量偏差ΔLfが負となる領域において、前輪側移動量偏差ΔLfが前輪側第3基準偏差ΔLf3から大きくなるに従って、前輪側目標電流Itfが増加電流から零まで徐々に小さくなるように設定してもよい。
【0142】
以上説明したように、第1の実施形態に係るフロントフォーク21は、供給される電流量に応じて作動ロッド314のケース315からの突出量(作動量)が変化する前輪側流路切替ユニット300と、車両本体10と前輪2の車軸との相対位置を検出する前輪側相対位置検出部281とを有する。制御装置70は、車両本体10と前輪2の車軸との相対位置が目標値となるように前輪側流路切替ユニット300に供給する電流を制御する。そして、フロントフォーク21は、前輪側流路切替ユニット300の作動ロッド314の突出量(作動量)が第2基準量以下である場合には、車高を上昇させる状態(前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態)となり、作動ロッド314の突出量が第2基準量よりも大きい場合には車高を下降させる状態(前輪側流路切替ユニット300が第3又は第4切替状態)となる。つまり、フロントフォーク21は、前輪側流路切替ユニット300の作動ロッド314の突出量が第2基準量以下であるのか第2基準量より大きいのかを境にして、車高を上昇させる状態と下降させる状態とに切り替わる。そして、制御装置70の前輪側目標電流決定部711は、相対位置の目標値である前輪側目標移動量Lftと前輪側相対位置検出部281が検出した検出値である前輪側実移動量Lfaとの偏差と、前輪側流路切替ユニット300に供給する目標電流である前輪側目標電流Itfとを対応させた
図14に例示した第1の実施形態に係る制御マップに基づいて前輪側目標電流Itfを決定する。これにより、第1の実施形態に係る制御装置70は、前輪側流路切替ユニット300の作動ロッド314の突出量が第2基準量になるのを境にして車高を上昇させる状態と下降させる状態とに切り替わる場合においても、車高を目標車高にすることができる。
すなわち、第1の実施形態に係るフロントフォーク21のように、前輪側流路切替ユニット300に供給する電流量を大きくし続けても、作動ロッド314の突出量が第2基準量になるのを境にして車高を上昇させる状態と下降させる状態とに切り替わる構成においては、制御装置70が、前輪側目標移動量Lftと前輪側実移動量Lfaとの偏差に比例した電流量を前輪側目標電流Itfとするのでは車高を目標車高にすることが困難である。これに対して、第1の実施形態に係る制御装置70の前輪側目標電流決定部711は、前輪側目標移動量Lftと前輪側実移動量Lfaとの偏差(前輪側移動量偏差ΔLf)と、前輪側目標電流Itfとを対応させた
図14に例示した第1の実施形態に係る制御マップに基づいて前輪側目標電流Itfを決定するので、車高を目標車高にすることができる。
【0143】
《第2の実施形態》
第2の実施形態に係る自動二輪車1は、第1の実施形態に係る自動二輪車1に対して前輪側目標電流決定部711が異なる。
第2の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップは、
図14に例示した第1の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップと同じである。言い換えれば、
図14に例示した前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップは、第2の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップでもある。
以下では、第1の実施形態に係る自動二輪車1に対して異なる点を中心に説明する。
【0144】
図15は、第2の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711のブロック図である。
第2の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711は、前輪側目標移動量決定部771が決定した前輪側目標移動量Lftから前輪側移動量把握部73が把握した前輪側移動量Lfである前輪側実移動量Lfaを減算した前輪側移動量偏差ΔLf(=Lft−Lfa)を補正する補正部711aを有する。また、第2の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711は、補正部711aが補正した補正後の前輪側移動量偏差ΔLfである補正後前輪側移動量偏差ΔLf´に基づいて前輪側目標電流Itfを決定する最終決定部711bを有している。
【0145】
補正部711aは、前輪側移動量偏差ΔLfを積分する積分処理部711aaと、積分処理部711aaが積分した値に対してリミット処理を行うリミット処理部711abと、を備えている。また、補正部711aは、リミット処理部711abにてリミット処理が施された値に予め定められたゲインを乗算する乗算部711acと、乗算部711acから出力された値と前輪側移動量偏差ΔLfとを加算する加算部711adと、を備えている。
【0146】
積分処理部711aaは、前輪側移動量偏差ΔLfを積分し、積分した値をリミット処理部711abに出力する。積分処理部711aaは、前輪側移動量偏差ΔLfの符号が同じである期間の前輪側移動量偏差ΔLfを積分してその値を出力し、前輪側移動量偏差ΔLfの符号が変わったら前輪側移動量偏差ΔLfの積分値をクリアして零を出力する。また、積分処理部711aaは、前輪側移動量偏差ΔLfが
図14に例示した第2の実施形態に係る制御マップにおいて前輪側目標電流Itfを零に設定する値である前輪側第3基準偏差ΔLf3以上前輪側第1基準偏差ΔLf1以下となったら積分値をクリアして零を出力する。
【0147】
リミット処理部711abは、積分処理部711aaにて積分された積分値が予め定められた上限値(正の値)よりも大きい場合には、上限値をリミット処理後積分値として出力し、積分処理部711aaにて積分された積分値が予め定められた下限値(負の値)よりも小さい場合には、下限値をリミット処理後積分値として出力する。他方、リミット処理部711abは、積分処理部711aaにて積分された積分値が、下限値以上、上限値以下である場合には、積分処理部711aaにて積分された積分値をそのままリミット処理後積分値として出力する。
【0148】
乗算部711acは、リミット処理部711abから出力されたリミット処理後積分値に予め定められたI項ゲインを乗算し、乗算後の値(リミット処理後積分値×I項ゲイン)を加算部711adに出力する。
加算部711adは、前輪側移動量偏差ΔLfと、乗算部711acから出力された乗算後の値(リミット処理後積分値×I項ゲイン)とを加算することにより補正後前輪側移動量偏差ΔLf´を算出し、算出した補正後前輪側移動量偏差ΔLf´を最終決定部711bに出力する。
【0149】
図16は、第2の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711が決定する前輪側目標電流Itfと前輪側移動量偏差ΔLfとの関係を示す概略図である。
第2の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711の最終決定部711bは、例えば、予め作成しROMに記憶しておいた、
図14に例示した第2の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップに、前輪側移動量偏差ΔLfとして補正部711aが補正した補正後前輪側移動量偏差ΔLf´を代入することにより前輪側目標電流Itfを算出する。
つまり、第2の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711の最終決定部711bは、補正後前輪側移動量偏差ΔLf´の値が例えば(ΔLf+α)である場合には、
図14に例示した第2の実施形態に係る制御マップに、前輪側移動量偏差ΔLfの代わりに(ΔLf+α)を代入することにより前輪側目標電流Itfを算出する。かかる場合、補正部711aは、
図16に示すように、
図14に例示した第2の実施形態に係る制御マップを横軸(x軸)方向にαだけスライドするように補正する。
【0150】
以上のように構成された第2の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711は、補正部711aが前輪側移動量偏差ΔLfを補正後前輪側移動量偏差ΔLf´に補正するので、前輪側目標移動量Lftと前輪側実移動量Lfaとの間に偏差のある状態が長い時間続けば、前輪側移動量偏差ΔLfを補正しない場合と比べて前輪側目標電流Itfが大きくなるよう決定する。つまり、前輪側目標電流決定部711は、前輪側目標移動量Lftと前輪側実移動量Lfaとの間に偏差のある状態が長い時間続けば、
図14に例示した第2の実施形態に係る制御マップに代入する前輪側移動量偏差ΔLfの絶対値が大きくなるように補正するので、前輪側移動量偏差ΔLfを補正しない場合と比べて前輪側目標電流Itfが大きくなるよう決定する。その結果、前輪側実移動量Lfaが前輪側目標移動量Lftに早期に近づくので、車高が目標車高に早期に近づくこととなる。
【0151】
《第3の実施形態》
第3の実施形態に係る自動二輪車1は、第1の実施形態に係る自動二輪車1に対して、前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップが異なる。以下では、第1の実施形態に係る自動二輪車1に対して異なる点を中心に説明する。
図17は、第3の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップの概略図である。
図17に例示した第3の実施形態に係る制御マップにおいては、前輪側移動量偏差ΔLfが正(プラス)となる領域においては、前輪側移動量偏差ΔLfが前輪側第1基準偏差ΔLf1(正の値)以下である場合には、前輪側目標電流Itfが零となり、前輪側移動量偏差ΔLfが前輪側第1基準偏差ΔLf1より大きい場合には、前輪側目標電流Itfが増加電流となるように設定されている。他方、前輪側移動量偏差ΔLfが負(マイナス)となる領域においては、前輪側移動量偏差ΔLfが前輪側第3基準偏差ΔLf3(負の値)以上である場合には、前輪側目標電流Itfが零となり、前輪側移動量偏差ΔLfが前輪側第3基準偏差ΔLf3より小さい場合には、前輪側目標電流Itfが低下電流となるように設定されている。
【0152】
第3の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711は、予め作成しROMに記憶しておいた、
図17に例示した第3の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップに、算出した前輪側移動量偏差ΔLfを代入することにより前輪側目標電流Itfを算出する。第3の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711が第3の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとを対応させた
図17に例示した制御マップに基づいて前輪側目標電流Itfを決定することで、前輪側流路切替ユニット300に供給する電流量を大きくし続けても車高を上昇させる状態と下降させる状態とに切り替わる構成においても、制御装置70は車高を目標車高にすることができる。
【0153】
《第4の実施形態》
第4の実施形態に係る自動二輪車1は、第2の実施形態に係る自動二輪車1に対して、前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップが異なる。言い換えれば、第4の実施形態に係る自動二輪車1は、第3の実施形態に係る自動二輪車1に対して、前輪側目標電流決定部711が異なる。
第4の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップは、
図17に例示した第3の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップと同じである。言い換えれば、
図17に例示した前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップは、第4の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップでもある。
以下では、第2の実施形態に係る自動二輪車1に対して異なる点を中心に説明する。
【0154】
第4の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711の最終決定部711bは、例えば、予め作成しROMに記憶しておいた、
図17に例示した第4の実施形態に係る前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとの対応を示す制御マップに、前輪側移動量偏差ΔLfとして補正部711aが補正した補正後前輪側移動量偏差ΔLf´を代入することにより前輪側目標電流Itfを算出する。つまり、第4の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711の最終決定部711bは、補正後前輪側移動量偏差ΔLf´の値が例えば(ΔLf+α)である場合には、
図17に例示した第4の実施形態に係る制御マップに、前輪側移動量偏差ΔLfの代わりに(ΔLf+α)を代入することにより前輪側目標電流Itfを算出する。かかる場合、第4の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711の補正部711aは、
図17に例示した第4の実施形態に係る制御マップを横軸(x軸)方向にαだけスライドするように補正する。
【0155】
第4の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711は、前輪側目標移動量Lftと前輪側実移動量Lfaとの間に偏差のある状態が長い時間続けば、
図17に例示した第4の実施形態に係る制御マップに代入する前輪側移動量偏差ΔLfの絶対値が大きくなるように補正するので、前輪側移動量偏差ΔLfを補正しない場合と比べて前輪側目標電流Itfが大きくなるよう決定する。その結果、前輪側実移動量Lfaが前輪側目標移動量Lftに早期に近づくので、制御装置70は車高を目標車高に早期に近づけることができる。
【0156】
なお、第1の実施形態〜第4の実施形態においては、前輪側目標電流決定部711が例えば
図14又は
図17に例示した制御マップに基づいて前輪側目標電流Itfを決定することを、コイル311への通電電流が大きくなるのに応じて作動ロッド314のケース315からの突出量が大きくなるようにプランジャ313に軸方向の推力が発生する前輪側流路切替ユニット300に対して適用しているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、前輪側目標電流決定部711が例えば
図14又は
図17に例示した制御マップに基づいて前輪側目標電流Itfを決定することを、コイル311への通電電流が大きくなるのに応じて作動ロッド314のケース315からの突出量が小さくなるようにプランジャ313に軸方向の推力が発生する前輪側流路切替ユニット300に対して適用してもよい。このように構成された前輪側流路切替ユニット300おいても、供給される電流量に応じて大きくなる作動ロッド314の作動量がある値になるのを境にして車高を上昇させる状態と下降させる状態とに切り替わるため、前輪側目標移動量Lftと前輪側実移動量Lfaとの偏差に比例した電流量を前輪側目標電流Itfとするのでは車高を目標車高にすることが困難である。これに対して、第1の実施形態〜第4の実施形態に係る前輪側目標電流決定部711は、前輪側移動量偏差ΔLfと前輪側目標電流Itfとを対応させた制御マップに基づいて前輪側目標電流Itfを決定することで、車高を目標車高にすることができる。