(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、しゃ断かんの折損を確実に検知するのは簡単ではない。しゃ断かんは、正常であっても真っ直ぐで揺るぎの無い状態とは限らず、様々な状態を取り得るからである。例えば、強風による揺動や、車両等の接触による揺動、着氷による撓み、折損防止器の作動による曲がり、などである。このような状態ではなく、折損していることを確実に検知できる技術が望まれているが、従来の技術では実現困難であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、折損状態であることを少なくとも含むしゃ断かんの状態を判定可能とする新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
踏切しゃ断機のしゃ断かんの状態を検知する検知装置(例えば、
図1,8の本体装置24)であって、
前記しゃ断かんの先端部に設置された加速度センサ(例えば、
図1,8の加速度センサ22)の計測値に基づき、前記しゃ断かんの長手方向と、前記しゃ断かんの昇降動作方向と、前記長手方向及び前記昇降動作方向に直交する方向とのそれぞれの加速度を用いて、折損状態を少なくとも含む前記しゃ断かんの状態を判定する判定手段、
を備えた検知装置である。
【0007】
この第1の発明によれば、しゃ断かんの先端部に設置された加速度センサの計測値に基づき、折損状態を少なくとも含むしゃ断かんの状態を判定することができる。すなわち、加速度センサの計測値に基づくしゃ断かんの長手方向と、昇降動作方向と、長手方向及び昇降動作方向の直交方向とのそれぞれの加速度から、しゃ断かんの先端部の向きを推測することができ、このしゃ断かんの先端部の向きから、折損状態であるか、等のしゃ断かんの状態を判定することができる。
【0008】
第2の発明として、第1の発明の検知装置であって、
前記しゃ断かんの昇降動作状態を検出する検出手段、
を更に備え、
前記判定手段は、前記加速度と前記昇降動作状態とを用いて、前記判定を行う、
検知装置を構成しても良い。
【0009】
この第2の発明によれば、更に、しゃ断かんの昇降動作状態を用いて、しゃ断かんの状態を判定することができる。すなわち、上昇或いは下降しているのか停止しているのかといったしゃ断かんの昇降動作状態によって、しゃ断かんの姿勢が異なる。このため、昇降動作状態に応じたしゃ断かんの姿勢から予測される各方向の加速度と、加速度センサの計測値に基づく各方向の加速度とを比較することで、折損しているか否かといったしゃ断かんの状態を判定することができる。
【0010】
第3の発明として、第2の発明の検知装置であって、
前記判定手段は、前記加速度が、前記昇降動作状態にある前記しゃ断かんが平常状態であるときの平常時特徴条件を満たす場合に前記しゃ断かんが正常であると判定する、
検知装置を構成しても良い。
【0011】
この第3の発明によれば、しゃ断かんの昇降動作状態別に、しゃ断かんが平常状態であるときにしゃ断かんの各方向の加速度が取り得る値の正負や大きさ、範囲等を平常時特徴条件として定めておくことで、加速度センサの計測値に基づく加速度が平常時特徴条件を満たすかといった比較的容易な判定で、平常時特徴条件を満たせばしゃ断かんが正常であると判定することができる。
【0012】
第4の発明として、第2又は第3の発明の検知装置であって、
前記判定手段は、前記加速度が、前記昇降動作状態にある前記しゃ断かんの状態が、折損状態、強風下状態、折損防止器作動状態、着雪状態、及び、衝撃・妨害状態の何れかである非平常状態であるときの非平常時特徴条件を満たす場合に、前記しゃ断かんが前記非平常状態と判定する、
検知装置を構成しても良い。
【0013】
この第4の発明によれば、しゃ断かんの昇降動作状態別に、しゃ断かんの状態が非平常状態であるときしゃ断かんの各方向の加速度が取り得る値の正負や大きさ、範囲等を折損時特徴条件として定めておくことで、加速度センサの計測値に基づく加速度が非平常時特徴条件を満たすかといった比較的容易な判定で、しゃ断かんが非平常時状態であるか否かを判定することができる。しゃ断かんの非平常時状態としては、折損状態、強風下状態、折損防止器状態、着雪状態、及び、衝撃・妨害状態の何れかである。更に、非平常状態がこれらの状態の何れであるかによって、判定した非平常状態の具体的な状態を把握することができる。
【0014】
第5の発明として、第3又は第4の発明の検知装置であって、
前記判定手段は、前記検出された昇降動作状態が特定の状態にある間の前記加速度を用いて前記判定を行う、
検知装置を構成しても良い。
【0015】
この第5の発明によれば、特定の状態として、例えば、しゃ断かんが完全に上昇或いは下降して停止している状態とすると、しゃ断かんが停止している状態では重力加速度のみが作用するため、しゃ断かんの状態をより正確に判定することが可能となる。
【0016】
第6の発明として、第2〜第5の何れかの発明の検知装置であって、
前記検出手段は、複数の昇降動作状態のうちのいずれの昇降動作状態にあるかを検出し、
前記判定手段は、前記検出された異なる昇降動作状態における前記加速度を用いて、前記判定の結果を確定する、
検知装置を構成しても良い。
【0017】
この第6の発明によれば、昇降動作状態によってしゃ断かんの姿勢が異なるので、しゃ断かんの状態が同じであっても、昇降動作状態が異なれば、加速度センサの計測値に基づくしゃ断かんの各方向の加速度が異なる。このため、異なる昇降動作状態それぞれにおける加速度を用いてしゃ断かんの判定の結果を確定することで、しゃ断かんの状態の判定の精度を向上させることができる。
【0018】
第7の発明として、第1又は第2の発明の検知装置であって、
前記判定手段は、前記しゃ断かんの中間部又は根本部に設置された第2の加速度センサの計測値に基づく、前記しゃ断かんの長手方向と、前記しゃ断かんの昇降動作方向と、前記長手方向及び前記昇降動作方向に直交する方向とのそれぞれの加速度である第2の加速度を参照して、前記判定を行う、
検知装置を構成しても良い。
【0019】
この第7の発明によれば、更に、しゃ断かんの中間部又は根本部に設置された第2の加速度センサの計測値に基づく第2の加速度を参照して、しゃ断かんの状態の判定を行うことができる。
【0020】
第8の発明として、第7の発明の検知装置であって、
前記判定手段は、前記加速度センサの計測値に基づく加速度と、前記第2の加速度センサの計測値に基づく第2の加速度とを比較して、前記判定を行う、
検知装置を構成しても良い。
【0021】
この第8の発明によれば、しゃ断かんが折損或いは曲がっている場合、先端部の加速度センサの計測値に基づく各方向の加速度と、中間部又は根本部の第2の加速度センサの計測値に基づく第2の加速度とに違いが生じる。このため、これらの2種類の加速度を比較することで、折損或いは曲がりといったしゃ断かんの状態を検知することができる。
【0022】
第9の発明として、
しゃ断かんの先端部に設置された前記加速度センサと、
第1〜第8の何れかの発明の検知装置と、
を具備した踏切しゃ断機(例えば、
図1の踏切しゃ断機10)を構成しても良い。
【0023】
この第9の発明によれば、第1〜第8の何れかの発明の効果を有する、しゃ断かんの状態を検知可能な踏切しゃ断機を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[全体構成]
図1は、本実施形態のしゃ断かん状態検知装置20の適用例である。しゃ断かん状態検知装置20は、踏切しゃ断機10のしゃ断かん12の状態を検知する装置であり、加速度センサ22と、本体装置24とを備えて構成される。本体装置24がしゃ断かん状態検知装置20の処理中枢を担うため、本体装置24を検知装置ということもできる。
【0026】
加速度センサ22は、直交3軸(本実施形態ではX軸、Y軸、Z軸とする)の加速度を計測するセンサである。X軸、Y軸、Z軸の定め方は任意であるが、本実施形態では、X軸がしゃ断かん12の長手方向、
Z軸がしゃ断かん12の昇降動作方向、
Y軸がしゃ断かん12の長手方向及び昇降動作方向に直交する方向(踏切道の方向)に沿うように、加速度センサ22がしゃ断かん12の先端部に設けられている。
【0027】
しゃ断かん12は筒状に構成されているため、加速度センサ22の設置位置としてはしゃ断かん12の先端部の内部が好適であるが、先端部の外表面に設置する構成としてもよい。また、加速度センサ22は、本体装置24との間で近距離無線通信を行う通信部を有しており、随時、各軸の加速度の計測値を近距離無線通信によって本体装置24へ送信する。
【0028】
本体装置24は、踏切しゃ断機10の筐体や近傍の踏切器具箱などに内蔵され、加速度センサ22の計測値をもとに折損の有無を少なくとも含むしゃ断かん12の状態を判定し、判定結果を報知する。報知先としては、しゃ断かん状態検知装置20の外部への報知の他、ディスプレイやLED等の表示部への表示や、音声の出力等を採用できる。外部へ報知する例として、例えば、本体装置24と、線路の保守管理事務所に設置された監視装置との間を通信ケーブルで接続し、本体装置24が判定結果を当該監視装置に出力する形態を採用することができる。
【0029】
[原理]
しゃ断かん状態検知装置20は、加速度センサ22の計測値と、しゃ断かん12の昇降動作状態とに基づいて、しゃ断かん12の状態検知を行う。しゃ断かん12の昇降動作状態は、(1)しゃ断かん12が完全に下降して停止している水平停止、(2)完全に上昇して停止している垂直停止、及び、(3)上昇動作或いは下降動作を行っている途中である昇降動作中の3種類である。しゃ断かん12が停止している状態では重力加速度のみが作用するため、昇降動作状態が水平停止或いは垂直停止であるときの加速度センサ22の計測値を用いて、しゃ断かん12の状態を判定する。しゃ断かん12の状態としては、平常状態であるか非平常状態であるかを判定するとともに、非平常状態として、本実施形態では、しゃ断かん12の折損(折損状態)、強風による揺動(強風下状態)、及び、折損防止器の作動(折損防止器作動状態)の何れかの状態であるかを判定する。なお、平常状態とは、しゃ断かん12に異常がない正常な状態であって、且つ、強風下状態や折損防止器作動状態でもない状態のことである。折損状態は異常状態といえる。よって、しゃ断かん12が平常状態であることを検出できたならば、少なくともしゃ断かん12は正常であると判断できる。
【0030】
図2〜
図7は、しゃ断かん12の状態及び昇降動作状態の様々な組み合わせに対する加速度センサ22の計測値を示す図である。
図2〜
図7では、加速度センサ22の計測値として、横軸をZ軸成分、縦軸をX軸成分として、マーカの位置でZ軸成分及びX軸成分を示し、マーカの大きさでY軸成分の大きさを示している。
【0031】
図2は、しゃ断かん12が平常状態であり、昇降動作状態が垂直停止であるときの加速度センサ22の計測値の一例である。この場合、しゃ断かん12は先端部が上方を向いて停止していることから、加速度センサ22で計測される加速度のX軸成分は正値(約1G)となり、Y軸成分及びZ軸成分はほぼゼロとなる。
【0032】
図3は、しゃ断かん12が平常状態であり、昇降動作状態が水平停止であるときの加速度センサ22の計測値の一例である。この場合、しゃ断かん12は先端部が水平となって停止していることから、加速度センサ22で計測される加速度のZ軸成分は正値(約1G)となり、Y軸成分及びZ軸成分は、ほぼゼロとなる。
【0033】
図4は、しゃ断かん12が折損状態であり、昇降動作状態が垂直停止であるときに所定時間の間に加速度センサ22によって計測された複数の計測値の例である。
図4の例では、しゃ断かん12は垂直停止であるにも関わらず先端部が下方を向いてぶら下がっている状態である。
図4の例では先端部にねじれが生じていないが、場合によっては先端部にねじれが生じる場合もある。このため、加速度センサ22で計測される加速度のX軸成分は負値の1Gに近い値を示し、Y軸成分及びZ軸成分は、ゼロに近い比較的小さい値となる。
図4中、X軸成分及びZ軸成分の取り得る値の範囲を破線で示した。
【0034】
図5は、しゃ断かん12が折損状態であり、昇降動作状態が水平停止であるときに所定時間の間に加速度センサ22によって計測された複数の計測値の例である。
図5の例では、折損してしゃ断かん12の先端部が地面に接触した状態を示している。折損によっては先端部にねじれが生じる場合もある。加速度センサ22で計測される加速度のX軸成分は正負不問の比較的小さい値となり、Y軸成分及びZ軸成分は、何れも、負値から正値までの広い範囲内の任意の値を取り得る。
図5では、X軸成分及びZ軸成分の取り得る値の範囲を破線で示した。
【0035】
図6は、しゃ断かん12が強風下状態であり、昇降動作状態が垂直停止であるときに所定時間の間に加速度センサ22によって計測された複数の計測値の例である。この場合、加速度センサ22で計測される加速度のX軸成分は、1Gよりやや小さい値となり、Y軸成分及びZ軸成分は、風向や風力に応じて比較的大きな範囲内の任意の値を取り得る。
図6では、X軸成分及びZ軸成分の取り得る値の範囲を破線で示した。
【0036】
図7は、しゃ断かん12が折損防止器作動状態であり、昇降動作状態が水平停止であるときに所定時間の間に加速度センサ22によって計測された複数の計測値の例である。この場合、しゃ断かん12は踏切道の道路方向に沿って斜め上方を向くことから、加速度センサ22で計測される加速度のX軸成分及びZ軸成分に1G以下の正値が計測され、Y軸成分にもある程度の大きさの値が表れる。
図7では、X軸成分及びZ軸成分の取り得る値の範囲を破線で示した。
【0037】
このように、しゃ断かん12の状態及び昇降動作状態の組み合わせによって、加速度センサ22で計測される加速度の値に特徴が出る。すなわち、昇降動作状態が垂直停止である場合に着目すると、しゃ断かん12が平常状態である場合(
図2)、折損状態である場合(
図4)、強風下状態である場合(
図6)を比較すると、加速度センサ22で計測される加速度の各軸成分の値の違いから、これらの3つの状態を区別できる。また、昇降動作状態が水平停止である場合も同様に、しゃ断かん12が平常状態である場合(
図3)、折損状態である場合(
図5)、折損防止器作動状態である場合(
図7)を比較すると、加速度の各軸成分の値の違いから、これらの3つの状態を区別できる。
【0038】
[機能構成]
図8は、しゃ断かん状態検知装置20の機能構成図である。本体装置24は、CPU(Central Processing Unit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶部であるメモリ200等を有し、メモリ200に記憶されたプログラムを実行することで、しゃ断かん12の状態を判定する。また、当該プログラムの実行により実現される機能部として、昇降動作状態検出部102と、しゃ断かん状態判定部104と、報知部106とを有する。また、図示していないが、本体装置24は、ディスプレイやLED等を有する表示部や、設定操作をするための操作部、外部との通信を担う通信部を有する。
【0039】
昇降動作状態検出部102は、踏切しゃ断機10の筐体内に設置されてしゃ断かん
12を昇降動作させるしゃ断機回路から、しゃ断かん
12の昇降動作信号及びブレーキ動作信号を入力して、しゃ断かん12の昇降動作状態が、水平停止、垂直停止、及び、昇降動作中の何れであるかを判定する。すなわち、しゃ断かん12が所定の上昇基準位置に達しており、且つ、ブレーキが作動しているならば、垂直停止と判定し、しゃ断かん12が所定の下降基準位置に達しており、且つ、ブレーキが作動しているならば、水平停止と判定する。垂直停止及び水平停止の何れとも判定してないならば、昇降動作中と判定する。なお、しゃ断機回路から信号を入力するのではなく、しゃ断かん12が上昇基準位置或いは下降基準位置に達したことを検出するカムスイッチの検出信号や、ブレーキ制御用のリレーの接点出力などを入力することによって昇降動作状態を判定することとしてもよい。
【0040】
しゃ断かん状態判定部104は、加速度センサ22の計測値と、昇降動作状態検出部102によって検出された昇降動作状態とをもとに、しゃ断かん12の状態を判定する。しゃ断かん12の状態の判定は、昇降動作状態が、垂直停止或いは水平停止である場合に行う。
【0041】
しゃ断かん12の状態判定は、加速度センサ22の計測値が、昇降動作状態(水平停止/垂直停止)に対応する平常時特徴条件を満たすかを先ず判定する。平常時特徴条件は、しゃ断かん12が平常状態にあるときに、加速度センサ22で計測される加速度の各軸成分が取り得る値の範囲を定めた条件である。例えば、昇降動作状態が垂直停止ならば、X軸成分は1G、Y軸成分及びZ軸成分はゼロをそれぞれ中心とする所定の閾値範囲として定められ(
図2参照)、昇降動作状態が水平停止ならば、Z軸成分は1G、X軸成分及びY軸成分はゼロをそれぞれ中心とする所定の閾値範囲として定められる(
図3参照)。平常時特徴条件を満たすならば、しゃ断かん12の状態は正常と判定する。
【0042】
なお、平常時特徴条件を満たさないからといって、しゃ断かん12が正常ではない(異常である)とは限らない。例えば、強風下状態であっても、しゃ断かん12自体は正常であるからである。
【0043】
そのため、しゃ断かん状態判定部104は、平常時特徴条件を満たさないため、非平常状態であると判定し、更に、加速度センサ22の計測値が、昇降動作状態に対応する非平常時特徴条件の何れを満たすかによって、具体的な状態を判定する。すなわち、昇降動作状態が垂直停止ならば、しゃ断かん12が折損状態の時に取り得る3軸それぞれの加速度範囲の閾値条件(
図4参照)である折損状態時特徴条件、及び、強風化状態の時に取り得る3軸それぞれの加速度範囲の閾値条件(
図6参照)である強風下状態時特徴条件の何れかを満たすかを判定する。昇降動作状態が水平停止ならば、しゃ断かん12の折損状態の時に取り得る3軸それぞれの加速度範囲の閾値条件(
図5参照)である折損状態時特徴条件、及び、折損防止器作動状態の時に取り得る3軸それぞれの加速度範囲の閾値条件(
図7参照)である折損防止器作動状態時特徴条件、の何れかを満たすかを判定する。そして、満たすと判定した特徴条件に対応する状態が、しゃ断かん12の状態であると判定する。なお、何れの非平常時特徴条件も満たさないならば、状態不明と判定する。これらの特徴条件は、特徴条件データ202〜212としてメモリ200に記憶されている。
【0044】
報知部106は、しゃ断かん状態判定部104によって判定されたしゃ断かん12の状態を、外部に向けて報知する。すなわち、判定結果を、無線通信或いは有線通信によって既設の監視装置等の外部装置へ送信したり、ディスプレイやLED等の表示部に表示させたりする。なお、この報知は、非平常状態と判定された場合にのみ行うこととしても良いし、折損状態と判定された場合にのみ行うこととしても良い。折損状態の場合には、至急の対策が必要であるからである。また、非平常状態と判定された場合には、更に、折損状態、強風下状態、折損防止器作動状態といった具体的な状態を併せて報知することとしても良い。予防保全の観点から、強風下状態や折損防止器作動状態の場合にも、その状態(要因)を報知すると好適である。
【0045】
[処理の流れ]
図9は、しゃ断かん状態検知装置20における検知処理の流れを説明するフローチャートである。
【0046】
先ず、昇降動作状態検出部102が、しゃ断かん12の昇降動作状態の検出を行う(ステップS1)。そして、検出した昇降動作状態が垂直停止或いは水平停止ならば(ステップS3:YES)、しゃ断かん状態判定部104が、しゃ断かん12の状態の判定を行う。すなわち、しゃ断かん状態判定部104は、加速度センサ22の計測値が昇降動作状態に対応する平常時特徴条件を満たすかを判定する(ステップS5)。平常時特徴条件を満たす場合には(ステップS5:YES)、しゃ断かん12は無条件で正常であると判定する(ステップS9)。
【0047】
平常時特徴条件を満たさないならば(ステップS7:NO)、加速度センサ22の計測値が、昇降動作状態に対応する非平常時特徴条件の何れかを満たすかを判定する(ステップS11)。何れかの非平常時特徴条件を満たすならば(ステップS13:YES)、その満たした非平常時特徴条件に対応する状態であると判定する(ステップS15)。何れの非平常時特徴条件も満たさない場合には(ステップS13:NO)、状態不明と判定する(ステップS17)。
【0048】
しゃ断かん12の状態を判定すると、報知部106が、判定結果を外部へ向けて報知する(ステップS19)。以上の処理を行うと、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。したがって、もし仮に状態不明と判定されたとしても、正常状態であるならば、暫く時間が経過した後に、ステップS5で平常時特徴条件を満たすと判定されて、正常状態と判定される。
【0049】
[作用効果]
このように、本実施形態のしゃ断かん状態検知装置20によれば、しゃ断かん12の先端部に設置した加速度センサ22の計測値と、しゃ断かん12の昇降動作状態とに基づいて、折損状態を含むしゃ断かん12の状態を判定することができる。加速度センサ22で計測される各検出軸方向(X軸方向,Y軸方向,Z軸方向)の加速度は、折損状態、強風下状態、折損防止器作動状態といった様々なしゃ断かんの状態と、昇降動作状態との組み合わせによって、取り得る値の正負や大きさ等に特徴が出る。このため、加速度センサ22の計測値の特徴から、折損状態を含む様々なしゃ断かん12の状態を判定することができる。
【0050】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0051】
(A)非平常状態
しゃ断かんの非平常状態として、例えば、着氷によるしゃ断かんの撓み(着雪状態)や、車両等の接触・衝突によるしゃ断かんの撓み(衝撃・妨害状態)といった他の状態を判定するようにしても良い。
【0052】
着雪状態は、降雪時に生じる状態であり、昇降動作状態が水平停止にあるしゃ断かんが、着氷や着雪といった異物の付着によって撓んでいる状態である。この状態では、しゃ断かんは、付着した異物(雪や氷)の重みによって下方に撓むが、ねじれが生じることは殆ど無いため、加速度センサで計測される加速度のX軸成分は負値、Z軸成分は正値、Y軸方向成分はほぼゼロとなる。また、衝撃・妨害状態は、昇降動作状態が水平停止であるしゃ断かんに、踏切内に進入してきた車両等が接触・衝突することで、しゃ断かんが撓んだ(曲がった)状態である。この状態では、しゃ断かんは、水平方向に撓む(曲がる)が、接触・衝突の状況によっては上下方向にも撓む(曲がる)ことがある。また、接触・衝突が行った後は減衰振動が生じるため、加速度センサで計測される加速度のY軸成分は、負値から正値までの比較的広い範囲の任意の値を取り、X軸成分及びY軸成分は、衝突・衝撃度合いに応じた負値から正値までの範囲の任意の値を取る。
【0053】
(B)仮判定と確定判定
しゃ断かん12の状態の判定として、異なる昇降動作状態での加速度センサ22の計測値に基づく仮判定を複数回行い、これらの仮判定の結果から、しゃ断かん12の状態の判定を確定することとしても良い。具体的には、昇降動作状態が水平停止であるときと、その次の垂直停止であるときとのそれぞれにおける仮判定の結果が一致した場合に、当該一致した仮判定の結果を、しゃ断かん12の状態として確定する。これにより、しゃ断かん12の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0054】
或いは、昇降動作状態が同じであるが異なるタイミングで複数回のしゃ断かん12の状態の仮判定を行い、所定割合以上の仮判定結果が一致したときに、当該仮判定結果を確定することとしても良い。
【0055】
(C)複数のしゃ断かん12への対応
しゃ断かん状態検知装置20は、異なるしゃ断かん12それぞれに設置された加速度センサ22と、1つの本体装置24と、を備えて構成されることとしても良い。そして、1つの本体装置24が、しゃ断かん12別に、対応する加速度センサ22の計測値に基づいて、当該しゃ断かん12の状態を判定することとしても良い。
【0056】
(D)1つのしゃ断かんに複数の加速度センサを設置
図10に示すように、しゃ断かん12の根本部又は中間部に第2の加速度センサ23を設置し、加速度センサ22、及び、第2の加速度センサ23の2つの加速度センサによる計測値を用いて、しゃ断かん12の状態を判定することとしても良い。第2の加速度センサ23は、しゃ断かん12の先端部に設置された加速度センサ22と検出軸(X軸,Y軸,Z軸)が一致するように設置される。従って、しゃ断かん12が平常状態である場合、2つの加速度センサそれぞれで計測される加速度の各軸方向成分は一致するはずである。また、しゃ断かん12に折損が生じたとしても、根本部は平常状態であることが多い。このため、第2の加速度センサ23で計測される加速度をしゃ断かん12の平常状態であるときの値とみなし、加速度センサ22で計測される加速度と一致するか否かによって、しゃ断かん12の状態が正常であるか否かを判定することができる。すなわち、第2の加速度センサ23で計測された加速度の計測値を参照値とし、加速度センサ22で計測された計測値との差異に基づいて、しゃ断かん12が正常状態であるか否かを判定する。また、2つの加速度センサで計測される加速度が所定の同等条件を満たさないほどに異なる場合には、各軸方向の加速度成分の正負や大きさの違いから、しゃ断かん12の根本部に対する先端部の相対的な姿勢を求めて、しゃ断かん12の状態を推測することができる。
【0057】
勿論、第2の加速度センサ23を、しゃ断かん12の根元部又は中間部に設置するのではなく、両方に設置することとしてもよい。その場合には、一方が第2の加速度センサ23となり、他方が第3の加速度センサとなる。
【0058】
(E)加速度センサ22の検出軸
加速度センサ22の直交3軸の検出軸を、(1)しゃ断かん12の長手方向、(2)昇降動作方向、(3)長手方向及び昇降動作方向の垂直方向に沿う方向として説明したが、必ずしもこれらの各方向に一致していなくとも良い。すなわち、しゃ断かん12に対する加速度センサ22の相対設置向きが既知であれば、加速度センサ22の各検出軸の計測値から、所定の座標変換演算を行うことで、上記(1)〜(3)の各方向の加速度を算出することができるからである。