(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸湿処理が、100℃以下の温度および70%以上の相対湿度の環境下で積層体を保持した後、減圧による脱湿を行う処理であることを特徴とする請求項4に記載の積層体の処理法。
請求項1〜3のいずれかに記載の積層体のポリイミド系フィルムの表面に、電子素子および配線から選択される1以上の部材を形成した後、該積層体を吸湿処理することにより、無機基板から、前記部材を備えたポリイミド系フィルムを剥離し、その後、無機基板に接していたポリイミド系樹脂層Bの部分を切断除去することによりフレキシブルデバイスを得ることを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
請求項1〜3のいずれかに記載の積層体のポリイミド系フィルムの表面に、電子素子および配線から選択される1以上の部材を形成し、前記部材を備えたポリイミド系フィルムの所定の部位に切り込みを入れて、ポリイミド系フィルムにおける前記部材の形成領域部分と、無機基板に接しているポリイミド系樹脂層Bの部分とを分割した後、ポリイミド系フィルムにおける前記部材の形成領域部分を剥離して、フレキシブルデバイスを得るとともに、無機基板に残存しているポリイミド系樹脂層Bを吸湿処理することにより無機基板から剥離して除去することを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
吸湿処理が、100℃以下の温度および70%以上の相対湿度の環境下で積層体を保持した後、減圧による脱湿を行う処理であることを特徴とする請求項6もしくは7に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[積層体]
本発明の積層体は、無機基板上にポリイミド系フィルムからなるフレキシブル基板層を有する。ここで用いられる無機基板としては、ガラス基板、銅、アルミ等の金属基板、アルミナ等のセラミック基板等制限はないが、光透過性に優れたガラス基板が好ましく用いられる。ガラス基板としては、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス等を用いることが出来、これらのなかで、無アルカリガラス基板を好ましく用いることが出来る。
【0025】
前記無機基板の厚みとしては、0.3〜5.0mmが好ましい。厚みが0.3mmより薄いと基板のハンドリング性が低下することがある。また、厚みが5.0mmより厚いと生産性が低下することがある。これらの無機基板は、ポリイミド系フィルム層との密着性を制御するための表面処理、例えばシランカップラ処理等が施されていても良い。
【0026】
本発明の積層体100は、
図1(A)および(B)に示すように、無機基板1上にポリイミド系フィルム2が積層されている。このポリイミド系フィルム2は、ポリイミド系樹脂層A(21)とポリイミド系樹脂層B(22)を含む積層フィルムであり、ポリイミド系樹脂層A(21)の全面が前記無機基板1に接しており、かつポリイミド系樹脂層A(21)の表面に形成されたポリイミド系樹脂層B(22)の一部が前記無機基板1に接している。
図1(A)は、本発明に係る一実施態様の積層体の模式図(断面図)である。
図1(B)は、
図1(A)の積層体を、図中、上方から見たときの概略見取り図である。
【0027】
ポリイミド系樹脂層Aの全面が前記無機基板に接しているとは、
図1(A)に示すように、ポリイミド系樹脂層A(21)がその片面全体で無機基板1と接触している、という意味である。
【0028】
ポリイミド系樹脂層Bの一部が前記無機基板に接しているとは、
図1(A)および(B)に示すように、ポリイミド系樹脂層B(22)がポリイミド系樹脂層A(21)の表面全体および無機基板1の表面におけるポリイミド系樹脂層A(21)の外周領域210に形成されて、ポリイミド系樹脂層B(22)がその外縁部220(図中の斜線部)で無機基板1と直接的に接触している、という意味である。ポリイミド系樹脂層Bが形成されない場合、およびポリイミド系樹脂層Bが形成されたとしても、その一部分も無機基板に接していない場合、ポリイミド系フィルムの無機基板1に対する密着性が低下する。このため、ポリイミド系フィルムの無機基板からの剥離前にポリイミド系フィルム上に電子素子等の部材を形成するとき、ポリイミド系フィルムに剥離が生じて作業効率が低下する。ポリイミド系樹脂層Bの片面全体が無機基板に接する場合、すなわちポリイミド系樹脂層Aが形成されない場合、ポリイミド系フィルムの無機基板からの剥離性が低下する。詳しくは、表面にガスバリア層が形成されたポリイミド系フィルム上に電子素子等の部材を形成した後、ポリイミド系フィルムを無機基板から剥離するとき、当該部材直下のポリイミド系フィルム部分が十分に吸湿処理されないため、ポリイミド系フィルムの無機基板からの剥離が困難になる。
【0029】
ポリイミド系樹脂層Bの面積は、ポリイミド系フィルムの無機基板への密着性の観点から、ポリイミド系樹脂層Aの面積に対し、110%以上とすることが好ましく、120%以上とすることがより好ましく、150%以上とすることがさらに好ましい。ポリイミド系樹脂層Bの面積の上限値は、特に限定されるものではないが、材料ロス低減の観点から、ポリイミド系樹脂層Bの面積はポリイミド系樹脂層Aの面積に対し、通常は200%以下であり、好ましくは180%以下であり、より好ましくは160%以下である。ポリイミド系樹脂層Aの面積とは、無機基板1の表面におけるポリイミド系樹脂層Aの形成領域の面積のことであり、
図1(B)中、破線領域211の面積に等しい。ポリイミド系樹脂層Bの面積とは、ポリイミド系樹脂層Aの面積と、無機基板1の表面においてポリイミド系樹脂層Bが直接的に形成されるポリイミド系樹脂層A(21)の外周領域210の面積との和のことであり、
図1(B)中、ポリイミド系樹脂層Bを示す領域22の面積に等しい。
【0030】
図1(B)においてポリイミド系樹脂層A(21)およびポリイミド系樹脂層B(22)の形状はいずれも正方形状を有しているが、本発明の積層体において剥離されたポリイミド系フィルム2の用途に応じていかなる形状を有していても良い。ポリイミド系樹脂層Aおよびポリイミド系樹脂層Bは、例えば、円形状、長方形状を有していても良い。ポリイミド系フィルム2をフレキシブル基板として使用する場合、ポリイミド系樹脂層Aおよびポリイミド系樹脂層Bの形状は通常、正方形状または長方形状である。
【0031】
ポリイミド系樹脂層B(22)において無機基板1と直接的に接触する外縁部220の幅W(
図1(B)参照)は、通常は2mm以上、特に2mm以上100mm以下であり、ポリイミド系フィルム2の密着性と剥離性とのより一層良好なバランスの観点から、好ましくは3mm以上80mm以下、より好ましくは4mm以上50mm以下である。
図1(A)および(B)においては、ポリイミド系樹脂層B(22)の外縁部220は、ポリイミド系樹脂層A(21)の外周領域210の全周にわたって、無機基板1と直接的に接触しているが、吸湿処理前においてポリイミド系フィルム2が所望の密着性を有する限り、外周領域210の一部において外縁部220が無機基板1と直接的に接触していなくてもよい。
【0032】
ポリイミド系樹脂層Aの無機基板との接着強度は、2N/cm以下であり、1N/cm以下とすることが好ましく、0.5N/cm以下であることがより好ましい。ポリイミド系樹脂層Aが、後述される本発明の吸湿処理の前からこのような接着強度を有することにより、ポリイミド系樹脂層Aと無機基板との良好な剥離性を確保することができる。ポリイミド系樹脂層Aの無機基板との接着強度が2N/cmを超えるとポリイミド系フィルムの無機基板からの剥離が困難になる。ポリイミド系樹脂層Aの無機基板との接着強度の下限値は特に限定されず、低ければ低い程良い。
【0033】
ポリイミド系樹脂層Bの無機基板との接着強度は、2N/cm超であり、5N/cm以上とすることが好ましく、7N/cm以上であることがより好ましい。ポリイミド系樹脂層Bが、後述される本発明の吸湿処理の前においてこのような接着強度を有することにより、ポリイミド系樹脂層Bと無機基板との良好な密着性を確保することができるので、積層一体化されているポリイミド系フィルム全体の無機基板との密着性を確保することができる。ポリイミド系樹脂層Bの無機基板との接着強度が低すぎると、ポリイミド系フィルムの無機基板からの剥離前にポリイミド系フィルム上に電子素子等の部材を形成するとき、ポリイミド系フィルムに剥離が生じて作業効率が低下する。ポリイミド系樹脂層Bの無機基板との接着強度の上限値は特に限定されないが、当該接触強度は通常20N/cm以下であり、好ましくは10N/cm以下である。
【0034】
ポリイミド系樹脂層Bは、吸湿処理で、無機基板から剥離可能となる。詳しくは、ポリイミド系樹脂層Bは、後述の吸湿処理後において、手で端部から引きはがす方法等の後述の具体的な剥離方法により剥離可能となる。ポリイミド系樹脂層Bは、吸湿処理後において、例えば以下に示すような接着強度を示すようになる。ポリイミド系樹脂層Bの無機基板との吸湿処理後の接着強度は、通常、2N/cm以下であり、1N/cm以下とすることが好ましく、0.5N/cm以下であることがより好ましい。ポリイミド系樹脂層Bは、吸湿処理により、このように低い接着強度で無機基板と接着するようになるので、ポリイミド系フィルムが無機基板から容易に剥離できるようになる。吸湿処理後においてポリイミド系樹脂層Bの無機基板との接着強度が2N/cmを超えると、ポリイミド系フィルムの無機基板からの剥離が困難になる。ポリイミド系樹脂層Bの無機基板との吸湿処理後の接着強度の下限値は特に限定されず、低ければ低い程良い。
【0035】
本発明で言う接着強度とは、ポリイミド系樹脂層と無機基板の層間の接着強度をJIS K6854−2に基づいて180°剥離試験を行うことにより測定された値を言う。
【0036】
ポリイミド系フィルムを構成するポリイミド系樹脂層Aおよびポリイミド系樹脂層Bは、ポリイミド系樹脂をフィルム化したものである。ポリイミド系樹脂は、主鎖にイミド結合を有する樹脂であり、具体例としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、主鎖にイミド結合を有する樹脂であれば如何なる樹脂も使用することができる。これらの樹脂は通常は単独で用いられるが、2種以上を混合して用いてもよい。ポリイミド系樹脂層Aおよびポリイミド系樹脂層Bを構成するポリイミド系樹脂はそれぞれ独立して選択され、いずれのポリイミド系樹脂も好ましくはポリイミドを単独で用いる。
【0037】
ポリイミドとしては、溶媒に溶解したポリアミック酸等のポリイミド前駆体を熱硬化してポリイミドとする前駆体型ポリイミドや溶媒可溶型のポリイミドを用いることができ、前駆体型ポリイミドを好ましく用いることが出来る。
【0038】
前記ポリイミド系樹脂としては、イミド結合に由来する構成単位を50モル%以上有する(但し、全構成単位を100モル%とする。)ことが好ましい。
【0039】
前記ポリイミド系樹脂としては、市販品を用いてもよい。即ち、例えば、「UイミドAR」、「UイミドAH」、「UイミドBH」、「UイミドCR」、「UイミドCH」(いずれもユニチカ社製)やUワニスA(宇部興産社製)等のポリアミック酸型ワニス、「リカコートSN−20」(新日本理化社製)や「マトリミド5218」(ハンツマン社製)等を溶媒に溶解させた溶媒可溶型ポリイミドワニス、バイロマックスHR−11NN(東洋紡社製)等のポリアミドイミドワニスを使用することができる。
【0040】
前記前駆体型ポリイミドは、原料となるテトラカルボン酸やその二無水物とジアミンの略等モルを、溶媒中で反応させて得られるポリイミド前駆体溶液であり、これを塗布して、乾燥、熱硬化(イミド化)してポリイミド層を得ることができる。
【0041】
このポリイミド前駆体溶液を製造する際の、反応温度としては、−30〜60℃が好ましく、−15〜40℃がより好ましい。またこの反応において、モノマー及び溶媒の添加順序は特に制限はなく、いかなる順序でもよい。
【0042】
ここでテトラカルボン酸もしくはその二無水物としては、例えばピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン、酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルメタンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸やこれらの二無水物等を単体もしくは混合物として使用することが出来るがこれらに限定されるものではない。
【0043】
ここで、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸もしくはこれらの二無水物が特に好ましく用いられる。
【0044】
ジアミンとしては例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス(アニリノ)エタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノベンゾエート、ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5−ジアミノナフタレン、ジアミノトルエン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、ジアミノアントラキノン、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)ジフェニルスルホン、1,3−ビス(アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(アニリノ)オクタフルオロブタン、1,5−ビス(アニリノ)デカフルオロペンタン、1,7−ビス(アニリノ)テトラデカフルオロヘプタン、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7―ヘプタンジアミン、1,8―オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1、10―デカンジアミン、1,12―ドデカンジアミン、cis−1,4―ジアミノシクロヘキサン、trans−1,4―ジアミノシクロヘキサン、1,4―ジアミノシクロヘキサン異性体混合物、cis−cis−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、cis−trans−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、trans−trans−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン異性体混合物、cis−1,3−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、trans−1,3−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン異性体混合物、cis−trans−4,4’−メチレンビス(2ーメチルシクロヘキシルアミン)、trans−trans−4,4’−メチレンビス(2ーメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2ーメチルシクロヘキシルアミン)異性体混合物、cis−cis−4,4’−ジアミノジシクロヘキシレンプロパン、cis−trans−4,4’−ジアミノジシクロヘキシレンプロパン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシレンプロパン等を単体もしくは混合物として使用することが出来るがこれらに限定されるものではない。
【0045】
ここで、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが特に好ましく用いられる。
【0046】
ポリイミド前駆体の固形分濃度としては1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。このポリアミック酸溶液は部分的にイミド化されていても良い。
【0047】
本発明のポリイミド前駆体溶液の25℃に於ける粘度は1〜150Pa・sが好ましく、5〜100Pa・sがより好ましい。
【0048】
ポリイミド前駆体溶液に用いられる溶媒としては、ポリイミド前駆体を溶解する溶媒であれば制限はないが、例えば、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、水溶性アルコール系溶媒が挙げられる。
【0049】
アミド系溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。
【0050】
エーテル系溶媒としては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
水溶性アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0052】
これらの溶媒は2種以上を混合して用いることができる。これらの溶媒のうち、特に好ましい例としては、単独溶媒としてはN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられ、また、混合溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミドとN−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンとメタノール、N−メチル−2−ピロリドンと2―メトキシエタノール等の組み合わせが挙げられる。
【0053】
ポリイミド系樹脂層AおよびBを、ポリイミド前駆体溶液を用いて製造する方法について説明するが、ポリイミド系樹脂として前記したポリイミド以外の他のポリマーを用いる場合についても、以下の説明を準用することにより、ポリイミド系樹脂層AおよびBを製造できることは明らかである。
【0054】
ポリイミド系樹脂層AおよびBの製造に際しては、まず、ポリイミド系樹脂層Aを製造するための「ポリイミド前駆体溶液A」およびポリイミド系樹脂層Bを製造するための「ポリイミド前駆体溶液B」(これらをそれぞれ「ポリイミド溶液A」および「ポリイミド溶液B」と略記することがある)を用意する。次いで、ポリイミド溶液Aを無機基板上に塗布し、乾燥後、乾燥塗膜および無機基板の表面上に、ポリイミド溶液Bを塗布し、乾燥する。しかる後、これらの塗膜を一括して熱硬化してイミド化する。ここでいう乾燥とは、加熱等の手段によりポリイミド前駆体溶液における溶媒量を減少させることをいう。この際、塗膜中の固形分濃度が50質量%以上、90質量%以下となるまで溶媒の除去を行うことが好ましい。このように乾燥することにより、ポリイミド系樹脂層Aとポリイミド系樹脂層Bとの界面の密着性が確保され、積層一体化することができる。乾燥には任意の装置を用いることができ、熱風乾燥機が好ましいが、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を使用してもよい。乾燥のためには50〜200℃の温度範囲が適当である。また、ここでいう熱硬化とは、ポリイミド前駆体をポリイミドに変換する工程をいう。熱硬化のためには300〜450℃の温度範囲が適当である。ポリイミド溶液Bの塗布に際しては、ポリイミド系樹脂層Aの全面を全て被覆し、かつポリイミド系樹脂層Aの面積よりもポリイミド系樹脂層Bの面積を大きくすることにより、前記した層構成とすることができる。
【0055】
ポリイミド前駆体溶液Aには、ポリイミド系樹脂層Aの前記接着強度を得るために、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸や、そのアミド、金属塩等の離形剤を配合することができる。これらの中で、ステアリン酸が好ましい。離形剤の配合量が多いほど、ポリイミド系樹脂層の接着強度は小さくなる。一方、離形剤の配合量が少ないほど、ポリイミド系樹脂層の接着強度は大きくなる。
【0056】
ポリイミド前駆体溶液Aにおける離形剤の配合量としては、ポリイミド系樹脂層が所定の接着強度を達成する限り特に限定されず、通常はポリイミド質量に対して0.01から2質量%添加することが好ましく、より好ましくは0.1から1質量%である。本明細書中、ポリイミド質量とは、ポリイミド前駆体溶液に含まれるポリイミド換算でのポリイミド全質量という意味である。
【0057】
ポリイミド前駆体溶液Aには、ポリイミド系樹脂層Aの前記接着強度を得るために、後述する密着性向上剤を配合することもできる。密着性向上剤の配合による接着強度への影響は、ポリイミド前駆体溶液Bにおいてと同様である。
【0058】
ポリイミド前駆体溶液Bには、前記接着強度を得るために、必要に応じ、シランカップラ等の密着性向上剤を溶液中に配合することができる。シランカップラとしては、アミン系、エポキシ系、アクリル系等その種類に制限は無いが、アミン系が好ましい。密着性向上剤の配合量が多いほど、ポリイミド系樹脂層の接着強度は大きくなる。一方、密着性向上剤の配合量が少ないほど、ポリイミド系樹脂層の接着強度は小さくなる。
【0059】
ポリイミド前駆体溶液Bにおける密着性向上剤の配合量としては、ポリイミド質量に対して0.05から0.5質量%添加することが好ましく、より好ましくは0.05から0.2質量%、さらに好ましくは0.1から0.2質量%である。
【0060】
ポリイミド前駆体溶液Bには、ポリイミド系樹脂層Bの前記接着強度を得るために、前記した離形剤を配合することもできる。離形剤の配合による接着強度への影響は、ポリイミド前駆体溶液Aにおいてと同様である。
【0061】
ポリイミド前駆体溶液AおよびBの塗布は、連続もしくは枚葉で行うことが出来る。
【0062】
連続塗布は、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等の塗工機を用いておこなうことが出来る。
【0063】
連続塗布は、バーコータ、ドクターブレードコーター、スピンコーター等の塗工機を用いて行うこともできる。
【0064】
ここで連続塗布は、無機基板が剛直であるため、困難を伴うことが多いので、工業生産の観点からは枚様での塗布が好ましい。
【0065】
ポリイミド系樹脂層Aの塗布厚みとしては、熱硬化後の厚さを、0.5から10μmとすることが好ましく、1から5μmとすることがより好ましい。
また、ポリイミド系樹脂層Bの塗布厚みとしては、熱硬化後の厚さを、5から200μmとすることが好ましく、10から100μmとすることがより好ましい。ポリイミド系樹脂層Bの厚みは、ポリイミド系樹脂層Aを含むポリイミド系フィルム全体の厚みであり、外縁部220の厚みに等しい。
【0066】
前記したように、フレキシブル基板としてポリイミド系フィルムを使用した電子デバイスでは、OLED発光層等への水蒸気等の侵入を防ぐため、ガスバリア層を設けることが一般的である。本発明の積層体においては、ポリイミド系樹脂層Bの表面のポリイミド系樹脂層Aが積層(埋包)されている部分に、このガスバリア層を設けることができる。ガスバリア層としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化炭化珪素、炭化窒化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素等の無機酸化物からなる被膜を用いることができるが、酸化珪素からなる被膜が好しい。これらの被膜を形成させる方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等公知の方法挙げられるが、スパッタ法が好ましい。ガスバリア層の厚みとしては、10から100nmとすることが好ましく、20から50nmがより好ましい。
【0067】
ガスバリア層3は、
図2(A)および(B)に示すように、ポリイミド系樹脂層Bの表面においてポリイミド系樹脂層Aの位置と垂直方向で重複する位置(領域)に設ける。ガスバリア層3は、
図2(A)および(B)に示すように、ポリイミド系樹脂層B(22)の表面における垂直方向でのポリイミド系樹脂層Aとの重複領域の全体に設けなければならないというわけではなく、当該重複領域内の一部に設けても良い。ポリイミド系樹脂層Bの表面における垂直方向でのポリイミド系樹脂層Aとの重複領域とは、
図1(B)における符号211で示される領域である。当該重複領域211を超えてガスバリア層を形成すると、当該重複領域を超えた部分のガスバリア層の直下に位置するポリイミド系樹脂層Bの外縁部220が十分に後述の吸湿処理を受けることができない。このため、ポリイミド系フィルムの無機基板からの剥離が困難になる。
図2(A)は、
図1(A)の積層体のポリイミド系樹脂層B(22)の表面にガスバリア層3を形成した本発明に係る一実施態様の積層体の模式図(断面図)である。
図2(B)は、
図2(A)の積層体を、図中、上方から見たときの概略見取り図である。
図2(A)および(B)において
図1(A)および(B)と同様の符号は、
図1においてと同様の部材、領域を示すものとする。
【0068】
ガスバリア層3を、重複領域211の一部または全体に設けることにより、ポリイミド系樹脂層Bの大気に暴露している部分の面積を、ポリイミド系樹脂層Bの面積全体の10%以上とすることができる。すなわち、ポリイミド系樹脂層B表面にガスバリア層が設けられていても、ポリイミド系樹脂層Bの一部、特に外縁部220、が大気に露出しているので、吸湿処理による剥離が可能となる。ポリイミド系樹脂層Bの大気に暴露している部分の面積とは、ポリイミド系樹脂層Bの表面の面積から、ガスバリア層の表面の面積を差し引いた面積のことであり、
図2(B)中、斜線領域220の面積に等しい。ポリイミド系樹脂層Bの面積全体は、
図2(B)中、ポリイミド系樹脂層Bを示す領域22(正方形状)の面積に等しい。
【0069】
前記したように無機基板に接するポリイミド系樹脂層B(22)の単層部分(外縁部220)は、強固に無機基板と密着しているので、ポリイミド系フィルム2の無機基板との密着性が確保できる。
【0070】
[積層体の処理法]
本発明の積層体100は、以下に示す処理法(積層体の処理法1または2)により、ポリイミド系フィルム2を無機基板から容易に剥離させることができる。剥離されたポリイミド系フィルム2はフレキシブル基板として有用である。このとき、積層体100のポリイミド系フィルム2表面に、電子素子等の部材を予め形成しておくことにより、剥離されたポリイミド系フィルム2をフレキシブルデバイスとすることができる。フレキシブルデバイスの製造に際し、電子素子等の部材形成前には、ポリイミド系フィルム2の表面に前記したガスバリア層3を形成しておくことが好ましい。
【0071】
(積層体の処理法1)
まず、本発明の積層体100に対して後述の吸湿処理を行う。しかる後、ポリイミド系フィルム2を剥離する。具体的に剥離する方法としては、手で端部から引きはがす方法や、駆動ロール、ロボット等の機械装置を用いる方法を採用することができる。その後、無機基板1に接していたポリイミド系樹脂層B(22)の部分を切断除去することにより、フレキシブル基板としてのポリイミド系フィルム2を得る。無機基板1に接していたポリイミド系樹脂層B(22)の部分とは、ポリイミド系樹脂層B(22)における単層部分(外縁部220)のことである。
【0072】
本方法において、例えば
図1(A)および(B)に示す積層体100を使用する場合、まず、吸湿処理を行った後、
図3(A)に示すように、ポリイミド系フィルム2を剥離する。次いで、ポリイミド系樹脂層B(22)の単層部分(外縁部220)を余剰部分として切断除去することにより、
図3(B)に示すようなフレキシブル基板としてのポリイミド系フィルム2を得る。
図3(A)および(B)は、
図1(A)の積層体を用いて積層体の処理法1によりフレキシブル基板を製造する方法を説明するためのポリイミド系フィルムの模式図(断面図)である。
図3において
図1と同様の符号は、
図1においてと同様の部材、領域を示すものとする。
【0073】
本方法において、例えば
図2(A)および(B)に示す積層体100を使用する場合、まず、吸湿処理を行った後、
図4(A)に示すように、ガスバリア層3を有するポリイミド系フィルム2を剥離する。次いで、ポリイミド系樹脂層B(22)の単層部分(外縁部220)を余剰部分として切断除去することにより、
図4(B)に示すようなフレキシブル基板としてのガスバリア層3を有するポリイミド系フィルム2を得る。
図4(A)および(B)は、
図2(A)の積層体を用いて積層体の処理法1によりフレキシブル基板を製造する方法を説明するためのポリイミド系フィルムの模式図(断面図)である。
図4において
図2と同様の符号は、
図2においてと同様の部材、領域を示すものとする。
【0074】
本方法においては、外縁部220は吸湿処理により剥離することが好ましいが、例えば、外縁部220に、レーザ光、赤外線光、紫外線光、フラッシュ光等を照射することにより剥離を行うこともできる。また、本発明の積層体100を水に浸漬することにより剥離を行うこともできる。
【0075】
本積層体の処理法1においても、積層体100のポリイミド系フィルム2表面に、電子素子等の部材(図示せず)を予め形成しておくことにより得られたポリイミド系フィルム2はフレキシブルデバイスとして有用である。
【0076】
(積層体の処理法2)
まず、ポリイミド系フィルム2の所定の部位に切り込みを入れて、ポリイミド系フィルムにおける剥離予定領域部分と、無機基板1に接しているポリイミド系樹脂層B(22)の部分を含む部分とを分割する。切り込みを入れるポリイミド系フィルムの所定の部位とは、直下にポリイミド系樹脂層A(21)が存在する部位であり、通常は、
図5(A)および
図6(A)に示すように、ポリイミド系樹脂層A(21)の外周に沿って切り込み200を形成する。切り込み方法は無機基板1まで到達する切り込み200を形成できる限り特に限定されず、例えば、市販のカッターを用いる方法やレーザ光の照射を用いる方法が挙げられる。
図5(A)および(B)は、
図1(A)の積層体を用いて積層体の処理法2によりフレキシブル基板を製造する方法を説明するためのポリイミド系フィルムの模式図(断面図)である。
図6(A)および(B)は、
図2(A)の積層体を用いて積層体の処理法2によりフレキシブル基板を製造する方法を説明するためのポリイミド系フィルムの模式図(断面図)である。
【0077】
剥離予定領域部分とは、この後、剥離される領域部分であり、具体的には、
図5(B)および
図6(B)に示すように剥離されるポリイミド系フィルム2に対応する部分250のことであり、例えば、ポリイミド系フィルム2の表面に、電子素子等の部材(図示せず)が形成される場合は、当該部材の形成領域を含む部分である。無機基板1に接しているポリイミド系樹脂層B(22)の部分とは、本方法においても、ポリイミド系樹脂層B(22)における単層部分(外縁部220)のことである。
【0078】
本方法において切り込み200により分割を行った後は、
図5(B)および
図6(B)に示すように、剥離予定領域部分250を剥離して、フレキシブル基板を得る。剥離予定領域部分250は、ポリイミド系樹脂層A(21)のみで無機基板1と接触していたために、分割により、容易に剥離可能となる。具体的に剥離する方法としては、本方法においても、手で端部から引きはがす方法や、駆動ロール、ロボット等の機械装置を用いる方法を採用することができる。本積層体の処理法2においても、積層体100のポリイミド系フィルム2表面に、電子素子等の部材(図示せず)を予め形成しておくことにより得られたポリイミド系フィルム2(250)はフレキシブルデバイスとして有用である。
【0079】
本方法においては、無機基板に残存しているポリイミド系樹脂層B(外縁部220)(
図5(B)および
図6(B)参照)を後述の吸湿処理により無機基板から剥離して除去することができる。本方法においても、外縁部220は吸湿処理により剥離することが好ましいが、例えば、外縁部220に、レーザ光、赤外線光、紫外線光、フラッシュ光等を照射することにより剥離を行うこともできる。また、水に浸漬することにより剥離を行うこともできる。外縁部220が剥離された無機基板は再利用が可能である。
【0080】
(吸湿処理)
本発明において吸湿処理は少なくとも高温高湿環境下で積層体を保持する吸湿処理工程を含む。
【0081】
吸湿条件としては、特に限定されないが、好ましくは相対湿度70%以上、より好ましくは80%以上の条件下、吸湿温度は好ましくは70℃以上、より好ましくは、80℃以上で吸湿処理工程を行う。また、100℃超の加圧水蒸気を用いることもできるが、100℃以下で吸湿処理工程を行うことが好ましい。吸湿処理時間としては、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上行う。吸湿処理時間の上限は、ポリイミド系フィルム2の剥離が達成される限り特に限定されないが、通常は20時間以下、好ましくは15時間以下、より好ましくは12時間以下で吸湿処理工程を行う。
【0082】
この吸湿処理においては、前記吸湿処理工程後、減圧による脱湿を行うことが好ましい。吸湿により体積が膨張したポリイミド系フィルムを、脱湿により急速に収縮させることができる。この吸脱湿操作により、膨張、収縮するポリイミド系フィルムに応力が発生し、吸脱湿で殆ど体積変化しない無機基板に接したポリイミド系フィルムの界面での強度を著しく低下させる。この作用により、ポリイミド系フィルムをより一層、簡単に剥離することができる。この吸脱湿は、2回以上繰り返すことにより、剥離性をさらに向上させることもできる。本発明においては通常、吸脱湿を1〜3回行うことにより、ポリイミド系フィルムを簡単に剥離することができる。
【0083】
減圧条件としては、特に限定されないが、好ましくは減圧度を100Torr以下、より好ましくは50Torr以下、さらに好ましくは10Torr以下、温度を好ましくは70℃以上、より好ましくは、80℃以上で減圧処理を行う。なお、減圧処理の際の温度は前記吸湿処理温度と同じあっても異なっていても良いが、同じであることが好ましい。減圧処理時間としては、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上行う。減圧処理時間の上限は、ポリイミド系フィルム2の剥離が促進される限り特に限定されないが、通常は20時間以下、好ましくは15時間以下、より好ましくは12時間以下で減圧処理工程を行う。
【0084】
前記の如く処理されたポリイミド積層体からポリイミド系フィルムを、具体的に剥離する方法としては、前記したような手で端部から引きはがす方法や、駆動ロール、ロボット等の機械装置を用いる方法を採用することができる。
【0085】
なお、本発明のポリイミド系フィルムは、透明であることが好ましい。透明性の指標である500nmでの光線透過率としては、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0086】
以上のべたように、本発明の積層体は、例えば、吸湿処理という簡単なプロセスでポリイミド積層体からポリイミド系フィルムを容易に得ることができるので、フレキシブルデバイスやフレキシブル配線板デバイスの製造に好適に用いることができる。
【0087】
詳しくは、本発明の積層体のポリイミド系フィルムの表面に、電子素子等の部材を形成した後、無機基板から、前記部材を備えたポリイミド系フィルムを剥離する。これにより、フレキシブルデバイスやフレキシブル配線板デバイスとして、前記部材を備えたポリイミド系フィルムを容易に得ることできる。
【0088】
電子素子等の部材の形成方法は、ポリイミド系フィルムをフレキシブル基板として用いる電子デバイスの分野で公知の方法を採用することができる。ガスバリア層の形成方法は、前記した方法と同様である。
【実施例】
【0089】
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0090】
[参考例1]
ユニチカ社製UイミドAR(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとから得られるポリアミック酸型のポリイミド前駆体溶液であり、溶媒はNMP、固形分濃度は18質量%)を準備した。この溶液(ポリイミド溶液A−1とする)を厚さ0.7mmの無アルカリガラス板の表面上に、熱硬化後のフィルムの厚さが30μmになるようにバーコータによって塗布し、130℃で10分間乾燥してポリイミド前駆体被膜を形成した。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から350℃まで2時間かけて昇温した後、350℃で2時間熱処理し、ポリイミド前駆体を熱硬化させてイミド化した。これによって、ガラス基板と厚さ30μmのポリイミドフィルム層を有する積層体L−1を得た。
【0091】
[参考例2]
ポリイミド溶液A−1に、アミン系シランカップラ(信越シリコン社製KBE903)を、ポリイミド質量に対し0.006質量%を加え、均一に混合してポリイミド溶液A−2を得た。これを用いたこと以外、参考例1と同様にして、ガラス基板と厚さ30μmのポリイミドフィルム層を有する積層体L−2を得た。
【0092】
[参考例3]
ポリイミド溶液A−1に、参考例2においてと同様のシランカップラを、ポリイミド質量に対し0.06質量%を加え、均一に混合してポリイミド溶液B−1を得た。これを用いたこと以外、参考例1と同様にして、ガラス基板と厚さ30μmのポリイミドフィルム層を有する積層体L−3を得た。
【0093】
[参考例4]
ポリイミド溶液A−1に、参考例2においてと同様のシランカップラを、ポリイミド質量に対し0.1質量%を加え、均一に混合してポリイミド溶液B−2を得た。これを用いたこと以外、参考例1と同様にして、ガラス基板と厚さ30μmのポリイミドフィルム層を有する積層体L−4を得た。
【0094】
[参考例5]
ユニチカ社製UイミドCR(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルとから得られるポリアミック酸型のポリイミド前駆体溶液であり、溶媒はNMP、固形分濃度は18質量%)を準備した。この溶液(ポリイミド溶液B−3とする)を厚さ0.7mmの無アルカリガラス板の表面上に、熱硬化後のフィルムの厚さが30μmになるようにバーコータによって塗布し、130℃で10分間乾燥してポリイミド前駆体被膜を形成した。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から350℃まで2時間かけて昇温した後、350℃で2時間熱処理し、ポリイミド前駆体を熱硬化させてイミド化した。これによって、ガラス基板と厚さ30μmのポリイミドフィルム層を有する積層体L−5を得た。
【0095】
[参考例6]
ポリイミド溶液B−1に、ステアリン酸を、ポリイミド質量に対し0.8質量%を加え、均一に混合してポリイミド溶液A−3を得た。これを用いたこと以外、参考例5と同様にして、ガラス基板と厚さ30μmのポリイミドフィルム層を有する積層体L−6を得た。
【0096】
<密着性(吸湿処理前)の評価>
前記積層体L−1〜L〜6のガラス基板とポリイミド系フィルム層との層間の接着強度をJIS K6854に基づいて180°剥離試験により測定した。また、積層体のポリイミドフィルム端部に切り込みをいれ、そこから手で引っ張って容易にガラス板から剥離することができない場合、界面での密着性が「良好」、容易に剥離できる場合を密着性が「不良」と判定した。その結果を表1に示す。なお、表1において、接着強度が0.1N/cm以下の場合は正確な接着強度を特定することが困難なので、「0.1以下」と表記した。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示す様に、積層体L−3、L−4、L−5は、密着性が良好であった。これに対し、積層体L−1、L−2、L−6は、密着性が不良、すなわち、剥離性が良好であった。
【0099】
<剥離性(吸湿処理後)の評価−1>
密着性が良好であった積層体L−3、L−4、L−5を、相対湿度95%、温度90℃の条件で10時間処理し、ポリイミド系フィルムを吸湿させた。その後、同温度で、5Torrの減圧下で10時間の減圧処理を行い、吸湿していたポリイミドを脱湿した。得られた積層体の層間の接着強度をJIS K6854に基づいて180°剥離試験により測定した。また、切り込みをいれたポリイミドフィルム端部から手で引っ張って容易にガラス板から剥離することができる場合、界面での剥離性が「良好」、容易に剥離できない場合を剥離性が「不良」と判定した。その結果を表2に示す。なお、表2において、接着強度が0.1N/cm以下の場合は正確な接着強度を特定することが困難なので、「0.1以下」と表記した。
【0100】
【表2】
【0101】
<剥離性(吸湿処理後)の評価−2>
密着性が良好であった積層体L−3、L−4、L−5を、相対湿度80%、温度50℃の条件で3時間処理し、ポリイミド系フィルムを吸湿させた。その後、同温度で、5Torrの減圧下で10時間の減圧処理を行い、吸湿していたポリイミドを脱湿した。得られた積層体の層間の接着強度をJIS K6854に基づいて180°剥離試験により測定した。また、切り込みをいれたポリイミドフィルム端部から手で引っ張って容易にガラス板から剥離することができる場合、界面での剥離性が「良好」、容易に剥離できない場合を剥離性が「不良」と判定した。その結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
表2および表3に示す様に、吸湿処理前は、密着性が良好であった積層体L−3、L−4、L−5は吸湿処理を行うことにより、剥離性が良好な積層体とすることができる。
【0104】
[実施例1]
図1(A)および(B)に示すように、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板1の表面上に、ポリイミド層A(21)形成用溶液としてポリイミド溶液A−1を、熱硬化後のフィルムの厚さが3μmになるようにバーコータによって塗布し、130℃で10分間乾燥してポリイミド前駆体被膜を形成した。ここで塗布面の面積は約400cm
2(20cm×20cm)とした。この被膜の表面に、ポリイミド層B(22)形成用溶液としてポリイミド溶液B−1を熱硬化後のフィルム全体の厚さが30μmになるようにバーコータによって塗布し、130℃で10分間乾燥してポリイミド前駆体被膜を形成した。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から360℃まで2時間かけて昇温した後、360℃で2時間熱処理し、ポリイミド前駆体を熱硬化させてイミド化することにより、ポリイミド層を積層一体化した。ここでポリイミド層B(22)の塗布面の面積は約576cm
2(24cm×24cm)であり、ガラス板表面におけるポリイミド層A(21)の外周領域210において、ポリイミド層B(22)の外縁部220が単層として幅(W)2cm分で、ガラス基板1に直接接していた。次いで、
図2(A)および(B)に示すように、得られたポリイミド積層フィルム2の表面の一部(面積約400cm
2)にスパッタ法処理で、厚み30nmの酸化珪素被膜からなるガスバリア層3を形成して、積層体M−1を得た。ガスバリア層3の形成領域は、ポリイミド層B(22)の表面における垂直方向でのポリイミド層A(21)との重複領域211(
図1(B)参照)の全体であった。
【0105】
[実施例2]
ポリイミド溶液A−1をポリイミド溶液A−2としたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体M−2を得た。
【0106】
[実施例3]
ポリイミド溶液A−1をポリイミド溶液A−3としたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体M−3を得た。
【0107】
[実施例4]
ポリイミド溶液B−1をポリイミド溶液B−2としたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体M−4を得た。
【0108】
[実施例5]
ポリイミド溶液B−1をポリイミド溶液B−3としたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体M−5を得た。
【0109】
[実施例6]
ポリイミド溶液A−1をポリイミド溶液A−2とし、ポリイミド溶液B−1をポリイミド溶液B−3としたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体M−6を得た。
【0110】
[実施例7]
ポリイミド溶液A−1をポリイミド溶液A−3とし、ポリイミド溶液B−1をポリイミド溶液B−3としたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体M−7を得た。
【0111】
[実施例8]
ポリイミド溶液A−1をポリイミド溶液A−2とし、ポリイミド溶液B−1をポリイミド溶液B−2としたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体M−8を得た。
【0112】
[実施例9]
ポリイミド層B塗布面の面積を約484cm
2(22cm×22cm)とし、ポリイミド層Bの外縁部220が単層として幅(W)1cm分で、ガラス基板に直接接するようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体M−9を得た。
【0113】
[実施例10]
ポリイミド層B塗布面の面積を約441cm
2(21cm×21cm)とし、ポリイミド層Bの外縁部220が単層として幅(W)0.5cm分で、ガラス基板に直接接するようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体M−10を得た。
【0114】
[比較例1]
厚さ0.7mmの無アルカリガラス板の表面上に、ポリイミド溶液A−1を、熱硬化後のフィルムの厚さが30μmになるようにバーコータによって塗布し、130℃で10分間乾燥してポリイミド前駆体被膜を形成した。ここで塗布面の面積は約400cm
2(20cm×20cm)とした。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から360℃まで2時間かけて昇温した後、360℃で2時間熱処理し、ポリイミド前駆体を熱硬化させてイミド化することにより、ポリイミド層Aを形成した。得られたポリイミド層Aの表面全面(面積約400cm
2)にスパッタ法処理で、厚み30nmの酸化珪素被膜からなるガスバリア層を形成して、積層体N−1を得た。
【0115】
[比較例2]
ポリイミド溶液A−1の代わりにポリイミド溶液B−1を用いてポリイミド層Bを形成したこと、およびガスバリア層を当該ポリイミド層Bの表面全面に形成したこと以外は、比較例1と同様にして、積層体N−2を得た。
【0116】
[比較例3]
ポリイミド溶液A−1の代わりにポリイミド溶液B−3を用いてポリイミド層Bを形成したこと、およびガスバリア層を当該ポリイミド層Bの表面全面に形成したこと以外は、比較例1と同様にして、積層体N−3を得た。
【0117】
[比較例4]
ポリイミド層B塗布面の面積を約400cm
2(20cm×20cm)とし、ポリイミド層Bとポリイミド層Aとがほぼ重なるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体N−4を得た。
【0118】
<密着性、剥離性の評価>
前記した実施例、比較例で得られた積層体について、吸湿処理前の密着性、吸湿処理後の剥離性を前記したような方法で評価した。特に吸湿処理後の剥離性の評価は「剥離性(吸湿処理後)の評価−1」の方法に従った。その結果を表4に示す。
【0119】
【表4】
【0120】
表4に示す様に、実施例で得られた積層体は、いずれも、吸湿処理前の密着性、吸湿処理後の剥離性共に良好であった。これに対し、比較例で得られた積層体は、吸湿処理前の密着性、吸湿処理後の剥離性のどちらかが不良であった。
【0121】
[実施例11]
実施例1で得られた積層体M−1においてガスバリア層3の形成領域の周囲四方に切り込み200を入れ(
図2(A)および(B)および
図6(A)参照)、ガラス基板1に直接接しているポリイミド層B(22)の外縁部220とガスバリア層3の形成領域の部分とを分割した。分割されたガスバリア層3の形成領域の部分の端部を手で引っ張った所、ガスバリア層3の形成領域の部分はガラス基板1から容易に剥離することができた。しかる後、ポリイミド層B(22)の外縁部220が残ったガラス基板(
図6(B)参照)を、相対湿度95%、温度90℃の条件で10時間処理することにより、ポリイミド層Bを吸湿させた。その後、同温度で、5Torrの減圧下で10時間の減圧処理を行い、吸湿していたポリイミドを脱湿したところ、ポリイミド層Bは手で容易に剥離できた。ポリイミド層Bが剥離されたガラス基板を用い、実施例1と同様の操作を行った所、実施例1と同様の積層体を得ることができた。
【0122】
[実施例12]
ガスバリア層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に行い、積層体M−12を得た。この積層体の重複領域211(
図1(B)参照)の四方に切り込み200を入れ(
図1(A)および(B)および
図5(A)参照)、ガラス基板1に直接接しているポリイミド層B(22)の外縁部220と重複領域211の部分とを分割した。分割された重複領域211の部分の端部を手で引っ張った所、重複領域211の部分はガラス基板から容易に剥離することができた。しかる後、ポリイミド層B(22)の外縁部220が残ったガラス基板(
図5(B)参照)を、相対湿度85%、温度80℃の条件で8時間処理することにより、ポリイミド層Bを吸湿させた。その後、常圧下、100℃で2時間乾燥を行い、吸湿していたポリイミドを脱湿したところ、ポリイミド層Bは手で容易に剥離できた。
【0123】
[実施例13]
実施例12で得られたポリイミド層B(22)の外縁部220が残ったガラス基板(
図5(B)参照)を、30℃の温水に10時間浸漬した。その後、常圧下、100℃で2時間乾燥を行ったところ、ポリイミド層Bは手で容易に剥離できた。