(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1乃至3の何れか一項に記載の減圧処置システムにおいて、前記充填チャンバ内の第1圧力が前記供給チャンバ内の第2圧力よりも低く、前記供給チャンバ内の前記第2圧力が周囲圧力よりも低いことを特徴とする減圧処置システム。
請求項1乃至4の何れか一項に記載の減圧処置システムにおいて、前記調整弁が、ピストンと、周囲圧力に対して前記制御チャンバ内で前記ピストンを付勢するように適合された弾性部材と、を含むことを特徴とする減圧処置システム。
請求項1乃至7の何れか一項に記載の減圧治療システムにおいて、前記供給内腔及び前記フィードバック内腔が前記ドレッシングに流体的に結合されている単一チューブ内に配置されていることを特徴とする減圧治療システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
圧力の調整に関連する新規且つ有用なシステム、方法及び装置を添付の特許請求の範囲において説明する。システム、方法及び装置を作製及び使用する目的、利点及び好適な態様は以下の詳細な説明を添付の図面とともに参照することにより最良に理解され得る。本記載は請求される対象を当業者が作製及び使用することを可能にする情報を提供するが、当技術分野において既知の特定の細部を省略する可能性がある。更に、「又は」などの用語を使用した種々の代替物の記載は文脈により明確に必要とされない限りは相互排他性を必ずしも必要とするわけではない。請求される対象は、また、詳細が具体的に記載されない代替的実施形態、変形形態及び均等物を含み得る。したがって、以下の詳細な説明は例証であり、限定の意味で捉えるべきではない。
【0012】
本明細書中において、実施形態例は、また、減圧治療用途という状況で記載され得るが、その特徴及び利点の多くは他の使用環境及び産業に容易に適用可能である。種々の要素間の空間的関係、又は種々の要素の空間的配向に対する空間的関係は添付の図面に示すように記載され得る。概して、そのような関係又は配向は、減圧治療を受ける姿勢の患者に合致する又は相対的な基準系をとる。しかしながら、当業者には理解されるべきであるように、この基準系は厳格な規定というよりもむしろ単なる説明的便法である。
【0013】
図1は、本明細書による、治療的圧力を調整することができる減圧治療システム100の実施形態例の簡易機能ブロック図である。示されるように、減圧治療システム100は、減圧源104に流体的に結合されている包帯剤102を含んでもよい。調整器106などの調整器又は制御器もまた包帯剤102及び減圧源104に流体的に結合されてもよい。包帯剤102は、全般的に、ドレープ108などのドレープ及び圧力分配マニホルド110などのマニホルドを含む。減圧治療システム100は、また、包帯剤102及び減圧源104に結合されている容器112などの流体容器を含んでもよい。
【0014】
概して、減圧治療システム100の構成要素は直接的に結合されても間接的に結合されてもよい。例えば、減圧源104は調整器106に直接結合されてもよく、調整器106を介して包帯剤102に間接的に結合されもよい。構成要素は互いに流体的に結合され、構成要素間において流体(すなわち液体及び/又は気体)を移送するための経路を提供してもよい。いくつかの実施形態では、構成要素は例えばチューブと流体的に結合されてもよい。「チューブ」は、本明細書で使用する場合、2つの端部間において流体を運ぶように適合された1つ又は複数の内腔を有するチューブ、パイプ、ホース、導管又は他の構造を広く意味する。一般に、チューブは、ある程度の可撓性を有する長尺状の円筒状構造であるが、その幾何学的形状及び剛性は様々であってもよい。いくつかの実施形態では、構成要素は、付加的に又は代替的に、物理的近接によって、1つの構造に一体化されるか同じ材料片から形成されて結合されてもよい。いくつかの状況においては、結合には、また、機械的結合、熱的結合、電気的結合又は化学的結合(化学結合などの)を含んでもよい。
【0015】
動作時、圧力分配マニホルド110は、組織部位内に、組織部位上に、組織部位に、又はそうでなければ組織部位に近接して配置されてもよい。ドレープ108を圧力分配マニホルド110上に配置し、当該組織部位に近接する組織を密閉してもよい。当該組織部位に近接する組織は、多くの場合、組織部位周辺の無傷の表皮である。したがって、包帯剤102は、外部環境から実質的に隔離された、組織部位に近接する密閉された治療環境を提供することができ、減圧源104は密閉された治療環境内の圧力を低下させることができる。密閉された治療環境内において圧力分配マニホルド110を介して均一に適用される減圧は、組織部位における巨視的ひずみ及び微視的ひずみを誘発することができ、且つ滲出物及び他の流体を組織部位から除去することができる。滲出物及び他の流体は容器112内に回収され、且つ適切に廃棄され得る。
【0016】
密閉された治療環境内などの別の構成要素又は位置の圧力を低下するために減圧源を使用する流体力学は数学的に複雑となり得る。しかしながら、減圧治療に適用可能な流体力学の基本原理は概して当業者に公知であり、本明細書中において圧力低下のプロセスは、例えば減圧を「送達する(delivering)」、「分配する(distributing)」、又は「発生させる(generating)」と説明的に記載され得る。
【0017】
概して、滲出物及び他の流体はより低い圧力の方に流体路に沿って流れる。この向きは概して、本明細書中における減圧治療システムの種々の特徴及び構成要素を記載する目的のために想定される。したがって、用語「下流側」は、通常、流体路の、減圧源に相対的に近い方を意味し、対照的に、用語「上流側」は、減圧源から相対的に遠い方を意味する。同様に、そのような基準系において、特定の特徴を流体「入口」又は「出口」の観点から記載すると便利となり得る。しかしながら、いくつかの用途においては、流体路は、また、例えば、陽圧源の交換によって反転されてもよく、この説明的慣習は限定的慣習と解釈されるべきではない。
【0018】
本文脈における用語「組織部位」は、組織上又は組織内の創傷又は異常を広く意味し、これには、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱又は靭帯を含むが、これらに限定されない。創傷には、例えば、慢性創傷、急性創傷、外傷性創傷、亜急性創傷及び裂開性創傷、中間層熱傷、(糖尿病性潰瘍、圧迫潰瘍又は静脈機能不全性潰瘍などの)潰瘍、フラップ及びグラフトを含んでもよい。用語「組織部位」は、また、必ずしも創傷や異常のない組織の領域であり、代わりに更なる組織の成長を付加又は促進することが望ましい領域を意味してもよい。例えば、減圧は特定の組織領域において採取して別の組織位置に移植してもよい追加の組織を成長させるために使用してもよい。
【0019】
「減圧」は、概して、包帯剤102によって提供される密閉された治療環境の外部における局所環境の周囲圧力などの局所周囲圧力よりも低い圧力を意味する。多くの場合、局所周囲圧力は、また、患者の近傍の大気圧としてもよい。あるいは、この圧力は当該組織部位の組織に関連する静水圧よりも低くてもよい。特に指示のない限り、本明細書中に記載される圧力値はゲージ圧である。同様に、減圧の増加への言及は、通常、絶対圧力の減少を意味し、減圧の減少は、通常、絶対圧力の増加を意味する。
【0020】
減圧源104などの減圧源は、減圧された空気のリザーバであっても、例えば、真空ポンプ、吸引ポンプ、多くの医療施設で利用可能な壁吸気口、又はマイクロポンプなどの密閉容積内の圧力を低減されることができる手動又は電動デバイスであってもよい。減圧源は、減圧治療を更に容易にするセンサ、処理ユニット、警報表示器、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示デバイス又はユーザインターフェースなどの他の構成要素内に収容されても、それらとともに使用されてもよい。組織部位に適用される減圧の量及び性質は治療要件に応じて異なってもよいが、圧力は、通常、−5mmHg(−667Pa)〜−500mmHg(−66.7kPa)の範囲である。一般的な治療的範囲は、−75mmHg(−9.9kPa)〜−300mmHg(−39.9kPa)である。
【0021】
圧力分配マニホルド110は、概して、組織部位に接触するように適合され得る。圧力分配マニホルド110は組織部位に一部接触しても完全に接触してもよい。例えば、組織部位が創傷の場合、圧力分配マニホルド110は創傷を一部又は完全に充填しても、創傷上に配置されてもよい。圧力分配マニホルド110は多くの形態をとってもよく、且つ実施される治療の種類又は組織部位の性質及び大きさなどの種々の要因に応じ、多くのサイズ、形状又は厚さであってもよい。例えば、圧力分配マニホルド110のサイズ及び形状は深く不規則な形状の組織部位の外形に適合させてもよい。
【0022】
より一般には、マニホルドは、組織部位に減圧を分配するように適合された、又は組織部位から流体を除去するように適合された、又はその両方に適合された物質又は構造である。しかし、いくつかの実施形態では、例えば、流体路が反転されるか、二次流体路が設けられる場合、マニホルドは、また、流体の組織部位への送達を促進してもよい。マニホルドは、マニホルド周囲の組織部位に提供される、及びマニホルド周囲の組織部位から除去される流体を分配する流路又は経路を含んでもよい。1つの例証的な実施形態においては、流路又は経路は組織部位に提供される又は組織部位から除去される流体の分配を向上するため相互連結されてもよい。例えば、セル発泡体、連続気泡発泡体、多孔質組織採取物及びガーゼ又はフェルトマットなどの他の多孔質材料は流路を形成するように配置された構造部材を全般的に含む。液体、ゲル及び他の発泡体は、また、流路を含んでも、流路を含むように硬化されてもよい。
【0023】
1つの例証的な実施形態においては、圧力分配マニホルド110は、組織部位に減圧を均一に(又は準均一に)分配するように適合された相互連結気泡又は細孔を有する多孔質発泡体材料であってもよい。発泡体材料は疎水性又は親水性のいずれかであってもよい。1つの非限定的例においては、圧力分配マニホルド110は、San Antonio,Texas所在のKinetic Concepts,Inc.から入手可能なGranuFoam(登録商標)包帯剤などの連続気泡の網状ウレタンフォームであってもよい。
【0024】
圧力分配マニホルド110を親水性材料から作製してもよい実施形態などのいくつかの実施形態では、圧力分配マニホルド110は、組織部位に減圧を分配し続けながら組織部位から流体を吸い取ってもよい。圧力分配マニホルド110の吸取特性は、毛細管流又は他の吸取メカニズムにより組織部位から流体を引き出してもよい。親水性発泡体の一例は、San Antonio,Texas所在のKinetic Concepts,Inc.から入手可能なV.A.C.WhiteFoam(登録商標)包帯剤などのポリビニルアルコール連続気泡発泡体である。他の親水性発泡体には、ポリエーテルから作製されるものを含んでもよい。親水性特性を示しうる他の発泡体には、親水性を提供するように処理されるかコーティングされた疎水性発泡体を含む。
【0025】
密閉された治療環境内の圧力が減少すると、圧力分配マニホルド110は、組織部位の肉芽形成を更に促進してもよい。例えば、圧力分配マニホルド110の表面の一部又は全部は、圧力分配マニホルド110を介して減圧が提供された場合に組織部位の微視的ひずみ及び応カを引き起こしうる、平坦でない、粗い又はぎざぎざの外形を有してもよい。
【0026】
一実施形態例においては、圧力分配マニホルド110は生吸収性材料で構成されてもよい。好適な生吸収性材料は、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)との高分子ブレンドを含んでもよいが、これに限定されない。高分子ブレンドは、また、ポリカーボネート、ポリフマレート及びカプララクトンを含んでもよいが、これらに限定されない。圧力分配マニホルド110は、更に、新しい細胞成長のための足場として機能させてもよく、そうでなければ、細胞成長を促進するため足場材料を圧力分配マニホルド110とともに使用してもよい。概して、足場材料は、細胞の成長又は組織の形成を強化又は促進するために使用される、細胞成長のための鋳型を提供する3次元多孔質構造などの物質又は構造であってもよい。足場材料の例示としては、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、珊瑚由来の水酸化アパタイト、炭酸塩又は加工同種移植片材料が挙げられる。
【0027】
ドレープ108は密封部材の一例である。密封部材は、治療環境と、局所外部環境との間などの2つの環境又は構成要素間に流体シールを提供することができる材料で構成してもよい。密封部材は、例えば、所与の減圧源に対し、組織部位の減圧を維持するのに適切なシールを提供できる不透過性又は半透過性のエラストマー材料であってもよい。半透過性の材料については、透過性は概して所望の減圧が維持され得るよう十分に低くすべきである。無傷の表皮、ガスケット又は別の密封部材などの取付表面に密封部材を取り付けるために取付デバイスを使用してもよい。取付デバイスは多くの形態をとってもよい。例えば、取付デバイスは、密封部材の周囲、一部又は全体に及ぶ医療的に許容可能な感圧接着剤であってもよい。取付デバイスの他の実施形態例には、両面テープ、糊、ハイドロコロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲル、オルガノゲル又はアクリル系接着剤を含んでもよい。
【0028】
容器112は、容器、キャニスタ、パウチ、又は組織部位から取り除かれた滲出物及び他の流体を処理するために使用され得る他の貯蔵構成要素の代表例である。多くの環境においては、流体の採取、貯蔵及び廃棄のために剛性容器が好適又は必要とされてもよい。他の環境においては、流体は剛性容器による貯蔵なしで適切に廃棄されてもよく、再使用可能容器は減圧治療関連の廃棄物及びコストを低減することができる。
【0029】
概して、減圧治療はあらゆる重症度の創傷に有益となり得るが、減圧治療システムのコスト及び複雑さから、多くの場合、急性又は慢性治療を受けている患者の、非常に滲出性の大きな創傷、及び減圧の適用なしではすぐに治癒しにくい他の重傷への減圧治療の適用は制限される。例えば、従来の減圧治療システムの複雑さは、専門知識がほとんどない者が減圧治療を施す能力を制限する可能性がある。また、多くの減圧治療システムのサイズにより可動性が損なわれる可能性がある。また、多くの減圧治療システムは毎回の治療後に念入りな洗浄が必要であり、且つ治療のための減圧の供給に電気的構成要素又は他の動力式デバイスが必要となる場合がある。いくつかの減圧治療システムでは圧力を低下するための純粋に機械的な方法を備えるが、このようなシステムは減圧レベルの適切な制御を提供することができていない。
【0030】
減圧治療システム100は治療的圧力の機械的調整を提供することによりこれら欠点及びその他を克服することができる。1つの実施形態例においては、減圧治療システム100は圧力を低下させるために手動作動式ハンドポンプを含んでもよい。バルブにより、圧力を機械的に事前決定された目標圧力まで調整することができ、且つこの圧力を、組織部位に近接する密閉された治療環境に供給内腔を介して供給することができる。フィードバック内腔はポンプ内のバルブに流体的に連結され得る。フィードバック内腔によって伝送される圧力は、組織部位に送達される圧力を制御するバルブの動作を制御することができる。したがって、このような減圧治療システム100の一実施形態は、包帯剤又は貯蔵システム内において発生する可能性のある閉塞を供給圧力の更なる低減により相殺することを含め、密閉された治療環境内の圧力を正確に制御することができる。
【0031】
図2A〜2Bは、調整器106などの、圧力を調整するための装置の実施形態例の簡易概略断面図である。この実施形態例においては、調整器106は、充填チャンバ202と、供給チャンバ204と、制御チャンバ206と、を有するハウジング200を含みうる。充填チャンバ202は、導管、通路、又は充填ポート205などのポートを介して供給チャンバ206に流体的に結合されてもよい。ポート208は制御チャンバ206と周囲圧力源との間に流体連通を提供することができる。充填チャンバ202は、また、減圧源104などの減圧源に流体的に結合され得るポート210などのポートを含んでもよい。充填チャンバ202は、手動で作動され得るか、あるいは、電気的又は他の手段によって動力が供給され得るデバイスから減圧を受容するように適合してもよい。
【0032】
供給ポート212は供給チャンバ204を
図1の包帯剤102などの包帯剤に流体的に連結してもよく、制御ポート214は制御チャンバ206を包帯剤に流体的に結合してもよい。例えば、一実施形態においては、供給内腔216aなどの第1内腔が供給ポート212及び供給チャンバ204を包帯剤に流体的に連結してもよく、フィードバック内腔216bなどの第2内腔が制御ポート214及び制御チャンバ206を包帯剤に流体的に結合してもよい。いくつかの実施形態では、第1内腔及び第2内腔はチューブ218などの1つの多内腔チューブ内に配置されてもよい。他の実施形態においては、包帯剤を供給ポート212及び制御ポート214に結合するために1つより多いチューブを使用してもよい。
【0033】
調整弁220を充填ポート205と作動的に組み合わせ、充填チャンバ202と供給チャンバ204との間の流体連通を調整することができる。いくつかの実施形態では、調整弁220はピストン、弁体及び弾性部材を含んでもよい。ピストンは、例えば
図2A〜2Bにピストン222として示される可撓性又は可動バリアとされうる。弁体は、例えば、ピストンに結合されているか、隣接しているか、当接しているか、そうでなければ係合しており、ピストンとともに動くことができる第1端部を有する略剛構造とされうる。弁体の第2端部は、全般的に、充填ポート205に係合する及び/又は密閉するようなサイズ及び形状に作製され得る。
図2A〜2Bの弁体はステム224として示される。示されるように、ステム224は隔壁を貫通して供給チャンバ204内に進入してもよい。
図2A〜2Bに調整ばね226として示される弾性部材は、例えば、ばね、ゴム又は他の弾性構造とすることができ、これらは概してピストン222と充填ポート205との間に配置されている。
図2A〜2Bでは、例えば、調整ばね226は制御チャンバ206内に配置され得るが、他の実施形態では供給チャンバ204内に配置されてもよい。この実施形態の調整ばね226はコイルばねとすることができ、例えばステム224と同軸である。この調整ばね226は制御チャンバ206内の周囲圧力228に抗してピストン222を付勢する。
【0034】
いくつかの実施形態では、ハウジング200は2つの構成要素から形成してもよい。例えば、ハウジング200は
図2A〜2Bに示されるように下部ハウジング200aと上部ハウジング200bとから形成してもよい。この例における下部ハウジング200a及び上部ハウジング200bはそれぞれ、端部壁と、端部壁に隣接する側壁と、端部壁に対向する開端部と、を含む。一方を他方に挿入して実質的に閉じた内部を提供する構造を形成できるように、下部ハウジング200a又は上部ハウジング200bのいずれかは他方の内寸よりも小さい外寸を有してもよい。いくつかの実施形態では、下部ハウジング200aと上部ハウジング200bとを係合し、それらの間に相対運動を可能としてもよい。更に特定の実施形態においては、下部ハウジング200a及び上部ハウジング200bはそれぞれ円筒状の側壁及び丸みのある端部壁を有してもよい。
【0035】
充填チャンバ202は、ハウジング200の端部壁、ハウジング200の側壁(単数)又は側壁(複数)、及びチャンバ壁207aなどのハウジング200内の隔壁などの、ハウジング200の隣接する壁によって全般的に画定されてもよい。供給チャンバ204は、また、ハウジング200内の隣接する壁によって全般的に画定されてもよい。例えば、
図2A〜2Bの供給チャンバ204はチャンバ壁207a、ハウジング200の側壁(単数)又は側壁(複数)、及びチャンバ壁207bなどの別の隔壁によって全般的に画定され得る。制御チャンバ206は同様に、例えば、チャンバ壁207b、ハウジング200の側壁(単数)又は側壁(複数)、及びハウジング200の別の端部壁によって画定されるチャンバとして記載され得る。したがって、この実施形態例においては、充填チャンバ202と供給チャンバ204は共通の壁(すなわちチャンバ壁207a)を有してもよく、供給チャンバ204と制御チャンバ206は共通の壁(すなわちチャンバ壁207b)を有してもよく、充填チャンバ202と供給チャンバ204は充填ポート205以外において互いに流体的に分離され得る。充填チャンバ202及び供給チャンバ204は周囲環境から流体的に分離され得る。また、制御チャンバ206は充填チャンバ202及び供給チャンバ204から流体的に分離され得る。
【0036】
この例の調整弁220は、ピストン222の周縁が制御チャンバ206の側壁(単数)又は側壁(複数)に当接又は係合した状態で一部制御チャンバ206内に、及び一部供給チャンバ204内に配置され得る。ピストン222と制御チャンバ206の壁との間の境界面もまた流体シールを提供してもよく、制御チャンバ206を周囲圧力228の領域と制御圧力230の領域とに分割する。しかしながら、調整弁220は、また、流体シールを維持しながら制御チャンバ206内を往復運動してもよい。例えば、調整弁220は、更に、ピストン222と制御チャンバ206の側壁との間に配置された可撓性Oリングを含んでもよく、Oリングは調整弁220が制御チャンバ206内を往復運動できるように潤滑されてもよい。
【0037】
動作時、供給チャンバ204内の圧力は離れたチャンバ、環境又は他の位置に供給ポート212を介して分配され得る。例えば、供給チャンバ204内の圧力は、減圧治療システム100に関連する密閉された治療環境などの被制御環境に分配されてもよい。制御チャンバ206内の制御圧力230は制御ポート214を介して離れた位置の圧力と均一にされ得る。減圧治療用途においては、制御圧力230は周囲圧力228よりも低くすべきであり、結果的に調整弁220に圧力差が生じる。更なる記載を簡略化するため、ピストン222の両側の圧力差から生じる、調整弁220にかかる力は「差力」と呼ばれ得る。調整ばね226は、また、全般的に、調整弁220に力を作用する。予想動作範囲内において、調整ばね226の力は、調整ばね226のばね定数と調整ばね226の端部の変位量X(すなわち平衡状態からの変位量)とに正比例する。したがって、制御圧力230が周囲圧力228よりも低ければ、ピストン222にかかる差力が調整ばね226を圧縮する傾向にあり、結果的に、調整ばね226の力が差力に抗する。差力と調整ばね226の力とを合計して調整弁220に作用する正味の力を求めることができる。正味の力は制御チャンバ206内において調整弁220を例えば充填ポート205と整列した中心軸線231に沿って往復動的に動かすことができる。
【0038】
正味の力が充填ポート205を閉じる位置に調整弁220を動かし得る前に制御圧力230を(目標圧力などの)閾値未満に低下しなければならないため、調整ばね226を選択、調節、変更、調整又はそうでなければ較正してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、ピストン222がハウジング200内において回転し、調整ばね226の圧縮を調節してもよい。
図2A〜2Bに示される実施形態においては、ピストン222は上部ハウジング200bのスリーブ234強固に嵌合され得るボス232を含み、ステム224はねじ状であっても、ボス232に係合するねじ状部分を有してもよい。ステム224はキー状の特徴によりハウジング200と半径方向に係止されてもよい。このような実施形態においては、ピストン222と上部ハウジング234は全般的に半径方向に係止され、調整ばね226の圧縮は上部ハウジング200bを回転することによって調節されてもよく、これにより、ピストン222をステム224に対して回転させることができる。調整ばね226の圧縮の変化により、調整弁220に作用する調整ばね226の力の変化、故に、調整弁220を作動するのに必要な制御圧力230の閾値の変化を生じさせる。多くの用途において、この制御圧力230の閾値は、概して、減圧治療のために定められた目標圧力に相関すべきであり、本明細書中においては「治療圧力」又は「治療的圧力」と呼ばれ得る。したがって、いくつかの実施形態では、治療圧力は上部ハウジング200bを回転することによって調節されてもよい。また更に特定の実施形態においては、上部ハウジング200bは治療圧力の種々のレベルを示すように較正されてもよい。
【0039】
したがって、充填チャンバ202は充填されてもよく、治療環境内の圧力は治療圧力と制御圧力230との間の差に基づき、調整ばね226の力と差力(すなわち、ピストン222の片側の制御圧力230に対するピストン222の逆側の周囲圧力228)とを平衡させることにより制御されてもよい。減圧治療用途においては、充填チャンバ202は治療圧力よりも低い圧力まで充填されてもよい。一実施形態においては、例えば、所望の治療圧力は約−125mmHgであってもよく、充填チャンバ202内の圧力は約−150mmHgの圧力まで低下させてもよい。
【0040】
調整弁220が特定の治療圧力に較正され、制御圧力230が治療圧力よりも高い場合、調整ばね226の力は差力を超えるべきであり、正味の力で調整弁220を作動し、調整弁220を開位置(
図2Bを参照)に移動させるべきである。開位置では、ステム224が充填ポート205から係脱する(すなわち開く)。充填チャンバ202と供給チャンバ204との間の圧力は開いた充填ポート205を介して均一化し得る。充填チャンバ202内の圧力と供給チャンバ204内の圧力が均一化し続けるため、供給チャンバ204内の圧力は低下し続ける。供給チャンバ204と治療環境との間の流体路内に完全な閉塞がない限りは、治療環境内の圧力もまた低下し、供給内腔216aを介して供給チャンバ204内の圧力と均一化する。また、治療環境と制御チャンバ206との間の流体路内に完全な閉塞がない限りは、制御圧力230もまた低下し、フィードバック内腔216bを介して治療環境内の圧力と均一化する。制御圧力230が低下して治療圧力に近づくにつれて、差力はそれが調整ばね226の力を超えてステム224を充填ポート205に係合させる(すなわち閉じる)まで増加する。これにより、
図2Aに示されるように、充填チャンバ202と供給チャンバ204との間の、充填ポート205を介した流体連通を実質的に低減又は防止することができる。しかし、制御圧力230が治療圧力よりも低くなるか実質的に等しくなるまで充填ポート205は概して開いたままである。有利には、特に供給チャンバ204と被制御環境との間の流体路内の圧力降下及び部分的閉塞を補償するため、調整弁220は充填ポート205を開いたままにすることができる。これは被制御環境内の圧力がフィードバック内腔216bによって直接測定され得るからである。
【0041】
図3A〜3Bを参照すると、ピストン駆動式ポンプ300の実施形態例の断面図が示される。ピストン駆動式ポンプ300は、例えば、充填チャンバ202などのチャンバのために減圧を生成してもよい。ピストン駆動式ポンプ300は、概して、ピストン302と、ピストンばね304と、ハウジング306と、を含む。ピストン302は、シリンダ308などの、ハウジング306のキャビティ内に配置され得る。真空室310などの、シリンダ308の密閉部分はピストン302とシリンダ308の対向端部との間に配置されてもよい。示されるように、真空室310をシリンダ308の残り部分から流体的に密閉するため、シール312をシリンダ308内に配置してもよい。ハウジング306内のポート314は流体が真空室310から流出することを可能にしてもよい。例えば、流体が真空室310と充填チャンバ202との間を流れることを可能にするため、ポート314はポート210に流体的に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ポート314とポート210は同じポートであってもよい。
【0042】
真空室310からの一方向の流出を可能にするため逆止弁を使用してもよい。例えば、Oリングによりピストン302をシリンダ308の側壁に対して密閉してもよく、ピストン302内のボール逆止弁により流体がピストン302内のポートを通じて真空室310から流出することを可能にしてもよい。
図3A〜3Bに示される実施形態などの他の実施形態においては、真空室310を流体的に密閉するため可撓性シール312をシリンダ308内に配置してもよい。圧縮行程における圧力により圧力差が形成される。この圧力差はシール312を曲げることができ、且つ流体が真空室310からシリンダ308の壁に沿って流出することを可能にする。膨張行程において、又は圧縮行程において圧力が解放されるとシール312は曲がって密閉位置に戻る。
【0043】
ピストン302はシリンダ308内を、圧縮位置(
図3Aに示されるような)と膨張位置(
図3Bに示されるような)との間において往復運動できる。ピストンばね304などの弾性部材をピストン302と作動的に組み合わせ、ピストン302を膨張位置に向かって付勢することができる。例えば、ピストンばね304の第1端部はシリンダ308の第1端部に当接しても、そうでなければ係合してもよく、ピストンばね304の第2端部は、直接的に又はシール312を介して間接的(
図3A〜3Bに示されるように)にピストンばね304に当接しても、そうでなければ係合してもよい。
【0044】
動作時、ポート314は充填チャンバ202などの充填チャンバに流体的に結合してもよい。充填チャンバ内の圧力を低下させるため、ピストン302は圧縮位置に移動することができ、これにより真空室310の容積を減少させる。シール312は圧縮行程中に真空室310内の流体が出ることを可能にする。ピストン302を圧縮位置に移動したのち、ピストンばね304はシール312に力をかける。この力はピストン302を膨張位置に戻そうとするものであり、これにより真空室310の容積が増加する。真空室310の容積が増加するにつれて、シール312は流体が真空室310に入ることを妨げ、これにより真空室310内の圧力は低下する。真空室310と充填チャンバとの間の圧力はポート314を通じて均一化することができ、これにより充填チャンバ内の減圧が生じる。ピストン302が膨張位置に移動したのち、充填チャンバの再充填のためピストン302を圧縮位置に再度移動してもよい。
【0045】
ピストン駆動式ポンプ300は手動で作動しても、例えば、電気式、油圧式又は空気式アクチュエータにより作動してもよい。本明細書中に記載される充填チャンバの全てにおいては、圧力は手動式又は電動式手段によって低下させてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、充填チャンバ202は、電気モータにより駆動する減圧ポンプ又は真空ポンプによって、選択した減圧まで初期充填されても再充填されてもよい。別の例証的実施形態においては、充填チャンバ202内の圧力を選択した圧力まで低下させるため壁吸引ユニット(病院及び他の医療施設において一般的に利用可能なものなど)を使用してもよい。
【0046】
図4Aは、減圧治療システム100の例証的実施形態の斜視図である。この実施形態例においては、減圧源は、手動で動作してもよい真空ポンプ402である。包帯剤102が組織部位404に配置されてもよく、組織部位404の周囲を密閉するのに適応させたドレープ108を含む。包帯剤102はチューブ406を介して真空ポンプ402に流体的に結合してもよい。チューブ406は多内腔チューブであってもよい。チューブ406は、示されるようなアダプタ408又は包帯剤102の1つ又は複数のアパーチャを介して包帯剤102と流体的に連通してもよい。
【0047】
図4Bは、線4−4に沿って切った
図4Aの減圧治療システム100の実施形態例の部分断面図であり、特定実施形態に関連し得る更なる詳細を示す。このような実施形態においては、包帯剤102は圧力分配マニホルド110とシーラント410とを含んでもよい。動作時、圧力分配マニホルド110は組織部位404内に、組織部位404上に、組織部位404に、又はそうでなければ組織部位404に近接して配置してもよく、シーラント410はドレープ108又は組織部位404を取り囲む表皮に適用してもよく、ドレープ108は圧力分配マニホルド110上に配置してもよい。ドレープ108と組織部位404を取り囲む表皮(好ましくは無傷の表皮)との間に密閉層を提供するためシーラント410を作動しても係合してもよい。したがって、ドレープ108は、圧力分配マニホルド110及び組織部位404を、圧力が制御されてもよい密閉された治療環境内に密封する。
【0048】
図5は、いくつかの実施形態に関連し得る更なる詳細を示す真空ポンプ402の斜視図である。
図6は、
図5に示される真空ポンプ402の実施形態の正面図である。これら例証的な実施形態においては、真空ポンプ402は、概して、第1バレル515及び第2バレル519を含む。第1バレル515及び第2バレル519は実質的に円筒状の形状を有するものとして示されるが、バレルはデバイスの動作を可能にする他の形状とすることもできる。第1バレル515は外部バレルであってもよく、外部バレルは、内部バレルであってもよい第2バレル519の外寸よりも大きな内寸を有する。
【0049】
図5〜9を参照すると、第1バレル515は、閉端部と、隣接する側壁と、閉端部の逆側の開端部と、を含んでもよい。シリンダ523などのキャビティは全般的に側壁によって画定されてもよい。シリンダ523は第2バレル519を第1バレル515の開端部から摺動的に受容してもよく、第2バレル519は伸張位置と圧縮位置との間において可動され得る。真空ポンプ402は、更に、バレルリング529と、ピストン531と呼ばれる2つのピストンと、シール535と、を含んでもよい。バレルリング529は第1バレル515の開端部に配置し第2バレル519に外接させてもよい。バレルリング529は、第1バレル515の開端部にある、第1バレル515と第2バレル519との間の大きな間隙を取り除くことができる。ピストン531及びシール535は第1バレル515のシリンダ523内に摺動的に受容されてもよい。両ピストン531及びシール535は第2バレル519と、第1バレル515の閉端部との間にあるシリンダ523内に配置され得る。シール535は第2バレル519とピストン531との間に配置されている。
【0050】
特に
図9を参照すると、第1バレル515は、第1バレル515の閉端部から第1バレル515の開端部に向かって延びる突出部539を含んでもよい。充填ばね543などの弾性部材が第1バレル515内に配置され得る。突出部539は充填ばね543の一端を受容することができ、これによりシリンダ523内における充填ばね543の横移動を低減することができる。充填ばね543の反対端はピストン531に接して受容され得る。充填ばね543はピストン531、シール535及び第2バレル519を膨張位置に向かって付勢することができる。
【0051】
再度
図7〜9を参照し、また
図10及び
図11も参照すると、この実施形態例のピストン531は、全般的に、外床553によって結合された外壁547及び内壁551を含む。円環部555を外壁547と内壁551との間に配置してもよく、複数の半径方向支持体559を円環部555内の外壁547と内壁551との間に配置することができる。半径方向支持体559はピストン531に追加の剛性を提供することができる一方で、円環部を含まない単壁ピストンと比較してピストン531の重量を低減する。しかしながら、単壁ピストン、二重壁ピストン又は他の変形形態は種々の用途に好適であってもよい。
【0052】
複数のガイド563をピストン531に配置することができ、一実施形態においては、ガイド563の1つを各半径方向支持体559に配置してもよい。ガイド563は、ピストン531を、シール535及び第2バレル519に対して揃えることができる。ガイド563は、更に、ピストン531を第2バレル519に摩擦嵌合により固定するよう機能しうる。
【0053】
示される実施形態においては、ピストン531は、内壁551と、隔壁569と、内床571と、によって画定される下部ボウル567を更に含む。ピストン531は、また、内壁551と隔壁569とによって全般的に画定される上部ボウル568を含んでもよい。下部ボウル567と上部ボウル568は隔壁569の逆側に配置されている。一実施形態においては、内床571は2層であっても多層であってもよいが、その代わり、内床571は単層及び/又は実質的に平坦であってもよい。内床571は、また、内床571下方に、充填ばね543の端部(
図9及び
図11を参照)を受容するための凹部573が画定されるように配置されてもよい。充填ポート575は内床571を通過してもよい。弁座579の、弁体との選択的係合によって、充填ポート575を介した流体連通を選択的に制御できるように、下部ボウル567内の、充填ポート575近辺に弁座579を配置してもよい。
【0054】
ピストン531の円環部555にウェル583も配置してもよく、チャネル587はウェル583と下部ボウル567とを流体的に連結することができる。チャネル587はウェル583と下部ボウル567との間の流体連通を可能にすることができる。
【0055】
再度
図7〜9を参照し、また、
図12及び
図13も参照すると、シール535は、スカート部分595により範囲を定められた中心部分591を含んでもよい。真空ポンプ402が組み立てられる際にピストン531のガイド563を受容するための複数の案内アパーチャ599を中心部分591に配置することができる。連通アパーチャ601などの多チャネルアパーチャを同様に中心部分591に配置してもよく、一実施形態においては、連通アパーチャ601は、シール535の中心から、中心から案内アパーチャ599の距離に等しい距離に位置し得る。連通アパーチャ601はシール535の中心部分591による流体連通を可能とし得る。
【0056】
シール535のスカート部分595は中心部分591の縁端から軸方向に延在する。
図9に示されるように、スカート部分595は第1バレル515の内部表面605と係合してシール535を越えた一方向の流体連通を可能にすることができる。換言すると、流体の流れがシール535の、ピストン531が配置された側からシール535の逆側に向かって誘導される場合、シール535のスカート部分595は流体がスカート部分595を越えて流れることを可能にできる。スカート部分595は、しかしながら、反対方向の流体の流れを実質的に妨げる。シール535のスカート部分595はスカート部分595を越える流体連通を効果的に制御するが、この機能を実施するため、例えば逆止弁などのバルブ部材又は他のバルブを代わりに使用することができる。
【0057】
より詳細には
図9及び
図13に示されるように、弁体603はシール535の中心部分591に結合されても、当接しても、そうでなければ係合してもよい。多くの種類、形状及びサイズの弁体を使用してもよいが、この例証的実施形態の弁体603は略円錐形とすることができ、その頂点609はピストン531の弁座579に密閉的に係合するように適合されている。この例では弁体603はシール535の一体部品として示されるが、別法として、弁体603は、弁座579に係合するように設けられた、シール535とは別個の構成要素であってもよい。
【0058】
一実施形態においては、シール535及び弁体603の双方は例えば医療グレードシリコーンなどのエラストマー材料から作製され得る。シール535及び弁体603を構成する、形成する又はそうでなければ作製するために多くの様々な材料を使用してもよいが、可撓性材料はスカート部分595の、内部表面605との密閉特性、及び弁体603の、弁座579との密閉特性を向上することができる。
【0059】
特に
図9を参照すると、弁体603を充填ポート575から離れる方に付勢するための調整ばね607がシール535と充填ポート575との間に配置され得る。例えば、調整ばね607の一端をピストン531の下部ボウル567内の弁座579の周囲に同心円状に配置してもよく、その一方で、調整ばね607の別の端部は弁体603の肩部と係合してもよい。調整ばね607は全般的に調整弁604を開位置に向かって付勢する。この開位置では、充填ポート575を通じた流体連通を可能にするため弁体603はポート575及び弁座579から係脱されてもよい。一実施形態例においては、シール535(
図18を参照)の可撓性のためシール535の中心部分591のみが動く。別の実施形態においては、調整ばね607はシール535全体を動かしてもよい。
【0060】
再度
図7〜9を参照し、また、
図14及び
図15を参照すると、第2バレル519の実施形態例は、第1ハウジング部分611及び第2ハウジング部分615を含む。第1ハウジング部分611はアパーチャ623を有する外部ケーシング619を含みうる。アパーチャ623は例えば第1ハウジング部分611の開端部近辺に配置されてもよい。床627は、第1ハウジング部分611の、開端部と逆側の端部において外部ケーシング619と一体的に形成されても、そうでなければ連結されてもよい。アパーチャ631は床627の中心に配置してもよい。ボス633は第1ハウジング部分611と一体とすることも連結させることもできる。ボス633は供給ポート527を含んでもよく、アパーチャ623を通じてチューブが供給ポート527と流体的に連結することを可能にするため供給ポート527はアパーチャ623と物理的に揃えることができる。ボス633の一実施形態は、供給ポート527を第1ハウジング部分611内に配置された流体チャネル635に結合することができ、且つ制御ポート528を流体チャネル636に結合することができる90度の流体取付具である。流体チャネル635及び流体チャネル636は、例えば、外部ケーシング619の材料と同じ又は類似の材料から形成された剛性導管であってもよく、代替的実施形態においては、流体チャネル635及び流体チャネル636は可撓性多内腔導管内の内腔であってもよい。
【0061】
特に
図15を参照すると、第1ハウジング部分611の床627に複数の案内アパーチャ637が配置され得る。例えば床627を通じた流体連通を可能にするため、連通アパーチャ638などの多チャネルアパーチャも第1ハウジング部分611に配置されてもよい。例えば、連通アパーチャ638を連通アパーチャ601と揃えるため、案内アパーチャ637はピストン531のガイド563を受容することができる。1つの例証的な実施形態においては、連通アパーチャ638の第1チャネルもまた流体チャネル635と揃えられてもよく、第2チャネルは例えば流体チャネル636と揃えられてもよい。ガイド563と案内アパーチャ637との間の摩擦嵌合もまた、ピストン531と第2バレル519の相対的位置の固定を補助することができる。しかしながら、ピストン531と第2バレル519とが別の手段によって固定されてもよいことは直ちに明らかとなろう。
【0062】
第2ハウジング部分615は、ガイド643と一体化されるか、そうでなければ連結されたエンドキャップ639を含んでもよい。共に、エンドキャップ639とガイド643は第1ハウジング部分611の外部ケーシング619に摺動的に係合し、(種々のアパーチャ及び通路以外は)実質的に閉じた第2バレル519を形成してもよい。第2バレル519はより少数の構成要素で構成してもよいが、第1ハウジング部分611と第2ハウジング部分615があることにより、第2バレル519内におけるより簡単なアクセス及び真空ポンプ402のより簡単な組み立てを可能にすることができる。
【0063】
特定の実施形態例においては、エンドキャップ639からシャフト647が延在してもよく、且つエンドキャップ639の逆側に係合端部649を含み得る。第2バレル519が組み立てられると、シャフト647は第2バレル519の長手方向の軸線と実質的に同軸であってもよく、且つ第1ハウジング部分611の床627にあるアパーチャ631内に延在してもよい。ばね651などの弾性部材を、ばね651の一端が第1ハウジング部分611の床627に支持され、ばね651の別の端部がシャフト647又は第2ハウジング部分615の別の部分に支持されるように第2バレル519内に配置してもよい。ばね651はシャフト647及び第2ハウジング部分615の他の部分を係脱位置(
図9のシャフト647の位置を参照)に向かって付勢することができる。係脱位置では、シャフト647の係合端部649はシール535又は弁体603に支持されない。第1ハウジング部分611と第2ハウジング部分615との間の摺動関係及び係合により、(ばね651の付勢力に抗して)第2ハウジング部分615に力を作用し、第2ハウジング部分615を係合位置に移動させることが可能になる。係合位置では、シャフト647の係合端部649は弁体603(
図16を参照)上方のシール535に支持され得る。これにより弁体603を弁座579に押し付け、それによって、充填ポート575を通じた流体連通を実質的に低減するか妨げる。
【0064】
例えば、真空ポンプ402が
図9に示されるように組み立てられる場合、充填チャンバ655は、ピストン531と第1バレル515の閉端部との間にある、シリンダ523の密閉部分によって全般的に画定され得る。供給チャンバ659はピストン531の下部ボウル567内の、隔壁569下方に全般的に画定されてもよい。制御チャンバ661はピストン531の上部ボウル568と、第1ハウジング611の床627との間に全般的に画定され得る。シール535は少なくとも部分的に制御チャンバ661内に配置され、制御チャンバ661を制御圧力662の領域と周囲圧力663の領域とに分割することができる。充填ポート575などのポートは充填チャンバ655と供給チャンバ659との間の流体連通を弁体603の位置に応じて可能にすることができる。供給チャンバ659は流体チャネル587を通じてピストン531のウェル583と流体的に連通することができ、制御チャンバ661はチャネル589を通じて流体チャネル636と流体的に連通してもよい。ウェル583はシール535の連通アパーチャ601及び第1ハウジング部分611の連通アパーチャ638と揃えられ得る。これにより、ウェル583と、流体チャネル635と、第2バレル519の供給ポート527との間の流体連通を可能にすることができる。
【0065】
この例では充填ポート575はピストン531内に配置されるものとして示されるが、その代わりに、充填ポート575は第1バレル515の壁内に経路を定められ得る。充填ポート575はチャンバ間の流体連通を可能にするのに好適な任意の導管又は通路とされ得る。
【0066】
動作時、真空ポンプ402は減圧処置システム100の構成要素に類似する減圧処置システムの他の構成要素とともに使用され得る。真空ポンプ402の供給ポート527は、組織部位に流体的に連結されてもよい、例えば、送達チューブ又は他の導管に連結されるように適合され得る。流体容器は真空ポンプ402に組み込むことができるが、いくつかの実施形態では、真空ポンプ402は内部チャンバ内に創傷滲出物又は他の流体を採取することを目的としなくてもよい。特定の実施形態においては、真空ポンプ402は、低滲出性の創傷に使用してもよく、流体を採取するために外部キャニスタ又は吸収性包帯剤などの別の採取システムを使用してもよい。
【0067】
図9及び
図16を参照すると、真空ポンプ402の膨張位置(
図9を参照)及び圧縮位置(
図16を参照)が示される。初期状態においては、真空ポンプ402は膨張位置にあり、減圧が「充填されて」いなくてもよい。真空ポンプ402を充填するため、真空ポンプ402が圧縮位置に配置されるように第2バレル519を第1バレル515内に手動で押し込むことができる。第2バレル519が第1バレル515内に押し込まれ、第1バレル515の閉端部に向かって移動するにつれて、第2バレル519に作用する力はシール535及びピストン531に全般的に伝達され得る。第2バレル519、シール535及びピストン531の、圧縮位置への動きにより充填チャンバ655の容積が減少する。充填チャンバ655の容積が減少するにつれて充填チャンバ655内の圧力が増加してシール535が曲がり、充填チャンバ655内の空気及び他の気体がスカート部分695を越えて出ることが可能となる。
【0068】
第2バレル519に作用する圧縮力が除去された場合、充填ばね543によってピストン531に作用される付勢力が、ピストン531、シール535及び第2バレル519を、膨張位置に向かって移動させる。この動きが生じると充填チャンバ655の容積は増加する。シール535のスカート部分595は一方向の流れのみを可能にするため、空気及び他の気体がスカート部分595を越えて充填チャンバ655に入ることは可能とされない。容積が増加するにつれて充填チャンバ655内に圧力の低下(すなわち減圧の発生)が生じる。充填チャンバ655内の減圧は、概して、充填チャンバ655の大きさ、ピストン531の可動域、充填ばね543の特性、及びシール535の完全性に依存する。したがって、これらパラメータを調整することによって充填チャンバ655の圧力限界を制御してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、ピストン531の可動域は、全行程(すなわち圧縮及び膨張)により充填チャンバ655内の圧力が所定の治療圧力未満に低下するように較正してもよい。例えば、所定の治療圧力が−125mmHgの場合、充填チャンバ655内の圧力を−150mmHgに低下するような範囲を選択してもよい。
【0069】
真空ポンプ402の実施形態例においては、調整弁604は、シール535と、弁体603と、調整ばね607と、を含む。調整弁604の動作は主としてシール535に作用する2つの力によって制御され得る。この力の1つは制御圧力662と周囲圧力663との間の圧力差により生じるものである。圧力差から生じる力は、再度、「差力」と呼ばれ得る。調整ばね607は、また、全般的に、調整弁604に別の力を作用する。予想動作範囲内において、調整ばね607の力は、調整ばね607のばね定数と、調整ばね607の端部の、平衡状態からの変位量とに正比例する。調整ばね607によって作用される力は、全般的に、変位の方向と正反対である。したがって、制御圧力662が周囲圧力663よりも低ければ、差力は調整ばね607を圧縮する傾向にあり、圧縮位置にある調整ばね607の力は差力に抗する。差力と調整ばね607の力とを合計して調整弁604に作用する正味の力を求めることができる。
【0070】
調整弁604は差力及び調整ばね607の力を用いて、供給ポート527及び組織部位に適用される包帯剤に送達され得る治療圧力を調整することができる。いくつかの実施形態では、調整ばね607は所定の治療に基づき調整してもよい。例えば、ばね定数を所定の治療圧力に基づき選択してもよく、調整ばね607の圧縮を所定の治療圧力に基づき調整してもよい。1つの例証的実施形態においては、例えば、第2バレル519が回転して調整ばね607の圧縮を変化することができるように、第1バレル515及び第2バレル519はねじ状であってもよい。調整ばね607の圧縮の変化により弁体603に作用する調整ばね607の力が変化するため、調整弁607を駆動するのに必要な圧力差もまた変化し得る。
【0071】
したがって、調整ばね607が特定の治療圧力に較正され、制御チャンバ661内の制御圧力662が治療圧力よりも高い場合、調整ばね607の力は差力を超えるべきであり、調整弁604を開位置(
図18を参照)に移動すべきである。開位置では、弁体603が弁座579から係脱する。弁体603が弁座579から係脱する場合、充填チャンバ655と供給チャンバ659との間の圧力は充填ポート575を介して均一化し得る。充填チャンバ655内の圧力と供給チャンバ659内の圧力が均一化し続けるため、供給チャンバ659内の圧力は低下し続ける。供給チャンバ659と包帯剤との間の流体路内に完全な閉塞がない限りは、供給チャンバ659内の圧力と包帯剤内の圧力が供給ポート527を介して均一化するにつれて包帯剤内の圧力も低下する。同様に、差力の増加を生じさせる、包帯剤と制御チャンバ661との間の流体路内における完全な閉塞がない限りは、制御ポート528を介して制御圧力662が包帯剤内の圧力と均一化するにつれて制御圧力662も低下する。したがって、制御圧力662が治療圧力未満まで低下する場合、弁体603が弁座579に係合し、充填ポート575を閉じるように、差力は調整ばね607の力を超えて、調整弁604を閉位置(
図17を参照)に移動する。
【0072】
初めに真空ポンプ402が治療のため送達チューブ及び組織部位に連結される際、第2バレル519を第1バレル515内に1回を超えて押し込む必要がある場合がある。各圧縮行程が完了すると、チューブ内及び組織部位の圧力が所望の治療圧力に接近し始めるまで空気及び他の気体を送達チューブ及び組織部位から抜いてもよい。
【0073】
第2バレル519が第1バレル515内に押し込まれる場合、シャフト647が弁体603に力(この力は弁体603を閉位置に保持し、(充填チャンバ655からの気体などの)能動的に加圧された気体が供給チャンバ659に入ることを防ぐ)を作用するように、第2ハウジング部分615を第1ハウジング部分611に対して動かすことができる。真空ポンプ402の全充填行程の間シャフト647は係合したままであるため、充填チャンバ655内の空気を、シール535を越えて排出することができ、且つ供給チャンバ659内に入れることはない。
【0074】
真空ポンプ402のいくつかの実施形態では、第1バレル515、第2バレル519、ピストン531、シール535及び他の構成要素は円筒状であってもよいが、構成要素の大きさ及び/又は形状は変更してもよい。加えて、弁体603が弁座579の下に配置されるように弁座579と弁体603の相対的位置を反転してもよい。
【0075】
顕著な利点を有するシステム、方法及び装置を記載したことは前述から明らかであろう。いくつかの形態のみにおいて示したが、示したシステム、方法及び装置に対し、以下の特許請求の範囲内に包含される種々の変化、変更及び使用の適用が可能である。