(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クラッチ要素(40、140)は、噛み合い(22、43;122、143)を介して駆動部材(20、120)に係合し、噛み合い(32、42;132、142)を介してばね駆動アセンブリ(30、130)にさらに係合する、請求項2に記載の薬液の設定された投与量を供給するためのねじりばね駆動式薬剤供給デバイス。
第1の位置での駆動部材(20、120)の回転中にねじり要素(24、44;124)が引っ張られるように、駆動部材(20、120)とクラッチ要素(40、140)との間にねじり要素(24、44;124)が設けられた、請求項1から3の何れか一項に記載の薬液の設定された投与量を供給するためのねじりばね駆動式薬剤供給デバイス。
中間要素(160)は、一方向結合(145、162)を介して、クラッチ要素(140)に結合されて、クラッチ要素(140)に対する一方向への回転だけが可能である、請求項5に記載の薬液の設定された投与量を供給するためのねじりばね駆動式薬剤供給デバイス。
ラチェット要素(50、150、250)により、弾性要素(54)を担持し、ラチェット要素(50、150、250)は、クラッチ要素(40、140、240)に突き合わされる、請求項10に記載の薬液の設定された投与量を供給するためのねじりばね駆動式薬剤供給デバイス。
【背景技術】
【0002】
自動ねじりばね駆動式注射デバイスが広く知られており、例えば、PCT/EP2013/063249、PCT/EP2013/063250、WO2006/076921などにおいて、これまでにもあまた記載されている。
【0003】
PCT/EP2013/063249やPCT/EP2013/063250に開示されるねじりばね駆動式注射デバイスでは、ねじりばねを引っ張ることによって投与量が設定され、針被覆シールドを後方又は後退運動させることによって投与量が解放される。
これは、多くの場合、シールドトリガーと呼ばれる。
【0004】
WO2006/076921に開示されるねじりばね駆動式注射デバイスでも、投与量は、ねじりばねを引っ張ることによって設定されるが、その解放は、ユーザが注射デバイスの近位端部に位置するボタンを押すことによってなされる。
【0005】
図10に開示されるWO2006/076921の1つの実施形態では、回転可能な駆動部材は、ねじ状の外面を有するピストンロッドの非円形断面に係合する。ピストンロッドのねじ状の外面は、筐体に設けられる雌ねじにねじ込まれる。回転可能な駆動部材が回転すると、これに伴いピストンロッドが回転し、筐体の雌ねじの軸方向の前方へと螺旋運動して螺合する。回転可能な駆動部材の回転は、ねじりばねのトルクに基づいて、ねじりばねを筐体に結合するばね駆動装置を介してなされる。投与量の設定時にねじりばねが引っ張られると、ねじりばねにトルクが発生し、その後、投与中に完全に又は部分的に解放される。
【0006】
投与されない状況では、即ち、投与ボタンが作動されない場合には、回転可能な駆動部材は、筐体にロックされて、ピストンロッドは軸方向に動かないように固定される。
【0007】
類似のねじりばね駆動式注射デバイスが、US2011/0054412に開示される。この注射デバイスでは、駆動部材(driver)もまた、キー係合(keyed engagement)を介してピストンロッドに結合され、ピストンロッドは、駆動部材が回転すると遠位で回転するように、筐体にねじ込まれる。近位に配置された投与ボタンを軸方向に動かすと、これがばね駆動装置を介して駆動部材に伝えられ、駆動部材は回転する。投与ボタンの軸方向の動きは、K2結合を実行し、K1結合から離脱し、これにより投薬が可能になる。投与ボタンが作動されていなければ、駆動部材は回転しないようにロックされて、ピストンロッドは遠位にも近位にも動けない。
【0008】
投与時や温度差のために、注射デバイスのカートリッジに入った薬液に圧力が生じる。この圧力は、軸方向に移動することができないピストンロッドに作用する。潜在的には、この回避できない過度の圧力は、注射針を注射デバイスに取り付け、その際に、薬液が注射針の先端から流出し始めない限り、解放されない。
【0009】
ユーザが、注射と次の注射との間に、注射デバイスに注射針を装着したままにすると、薬液が注射針から滴って、過度の圧力が注射針を通して解放される可能性がある。また、温度差がある場合には、注射を通して、空気がカートリッジ内に吸引される可能性がある。結果として、カートリッジ内のゴム製プランジャーがピストンロッドとの突合せ状態からはずれてしまうことも多い。したがって、注射を行う前には必ず薬剤供給デバイスをプライミングして空気をカートリッジから除去し、ピストンロッドがカートリッジ内のゴム製プランジャーに突き合わされるようにすることが勧められる。この空気除去はまた、エアショット(air−shots)又はフローチェック(flow check)と呼ばれることも多い。
【0010】
プライミングは、一般に、注射デバイスを直立させた状態で、わずかな投与量を放出させることによって行われ、それによって空気が排出され、薬液が注射針の先端から流れ始める。
【0011】
初めて注射デバイスを使用する際には、初期プライミングを行うよう勧められることが多いが、その理由は、注射デバイスの組み立て時やカートリッジの充填時に伴う機械的な誤差のために、最初にユーザに渡される注射デバイスには、ピストンロッドとカートリッジのゴム製プランジャーとの間に隙間が出来てしまう可能性があるからである。ピストンロッドをゴム製プランジャーに突き合せるべく移動するために、通常のエアショットを行う場合と同一の手順に従って、初期プライミングが通例行われる。
【0012】
ゴム製プランジャーの大きな表面に注入圧力を分散させるために、通例、ピストンロッド足部(piston rod foot)が、ピストンロッドとカートリッジのゴム製プランジャーとの間に設けられる。このピストンロッド足部は、ピストンロッドに蝶着することができ、ピストンロッドに取り付けずにゆるく装着する。このピストンロッド足部はまた、ピストンロッドと一体的に成形してもよい。
【0013】
注射デバイスに装填した薬液の無駄を減らし、デバイスの使い勝手をよくするために、注射と次の注射との間のエアショットと初期プライミングの両方を低減又は回避することが望まれる。
【発明の概要】
【0014】
注射と次の注射との間のエアショット及び初期プライミングを、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、回避することができる機構を提供することが本発明の目的である。
【0015】
カートリッジ内で発生した過度の圧力をカートリッジの薬剤により自動的に解放することができる機構を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0016】
このような圧力は、例えば、温度変化が原因で発生し、又は注射デバイスが、注射終了時にカートリッジから注射針を引き抜く種類である場合に発生し、それにより、カートリッジ内の圧力設定が妨げられる可能性がある。
【0017】
本発明は請求項1に基づいて定められる。
【0018】
したがって、本発明の1つの態様では、薬液の設定された種々の投与量を供給するためのねじりばね駆動式薬剤供給デバイスが提供される。
【0019】
ねじりばね注射デバイスは、薬液の入ったカートリッジを含む機械的要素をカプセル化する筐体を備える。なお、カートリッジは、筐体に取り付けられるカートリッジホルダーに設けてもよい。筐体はまた、設定された投与量を放出するために必要なトルクを発生するねじりばねをカプセル化する。さらに、ねじ状の外面及び非円形の断面を有するピストンロッド、ピストンロッドの非円形断面に噛合する(又はピストンロッドの外ねじと噛合する内ねじを有する)回転可能な駆動部材、筐体に回転不能に係合し、ピストンロッドの外ねじに噛合する内ねじを有する(又はピストンロッドの非円形の断面に噛合する)ナット部材を備える。このピストンロッドは、駆動部材がナット部材に対して回転すると、筐体内の軸方向前方に移動する。回転的又は直線的のどちらかであり得るピストンロッドの前方への動作中に、カートリッジ内のゴム製プランジャーは、薬剤をカートリッジから放出するために強制的に前進する。さらに、ねじりばねによって回転して、回転可能な駆動部材を回転させてピストンロッドを筐体内において前進させるばね駆動装置を備える。
【0020】
回転可能な駆動部材は、第1の位置と第2の位置との間で軸方向に移動することができるクラッチ要素によって、ばね駆動装置にしっかり留められ又は結合される。
i) 第1の位置は、回転可能な駆動部材がばね駆動アセンブリから分離した位置であり、この位置では、駆動部材がばね駆動アセンブリとは無関係に回転する。
ii) 第2の位置は、回転可能な駆動部材がばね駆動アセンブリに連結される位置であり、この位置では、駆動部材とばね駆動アセンブリが共転する。
【0021】
駆動部材は回転し、ピストンロッドとキー係合又はスプライン係合することができ、この場合、ピストンロッドは、ナット部材にねじ込まれる。若しくは駆動部材は、ピストンロッドとねじ係合することができ、この場合、ピストンロッドは、筐体にキー結合又はスプライン結合される。第1の実施例では、ピストンロッドは、駆動部材が回転するときには前方に回転する。後の実施例では、ピストンロッドは、駆動部材が回転すると、回転せずに前方に直進する。駆動部材は、好ましくは、単一の部材であるが、代替的には、アセンブリの一部としてもよい。
【0022】
第1の部分では、注射が実行されていないと、駆動部材は、ばね駆動アセンブリから分離され、ピストンロッドが軸方向に移動するにつれ、回転することができる。ピストンロッドがナット部材にねじ込まれる場合、ピストンロッドは、軸方向に移動すると回転し、駆動部材は、ピストンロッドと回転する。ピストンロッドがナット部材にキー結合される第2の実施例では、駆動部材は、ピストンロッドにねじ込まれ、軸方向にロックされると回転するが、ピストンロッドは、回転せずに軸方向に移動する。
【0023】
第2の位置では、注射が実行されていると、ねじりばねのトルクが駆動部材を回転させ、次に先述の方法のうちの1つで、ピストンロッドを前方に移動するように、駆動部材は、ばね駆動アセンブリに連結される。
【0024】
ナット部材は、筐体と一体的に成形することができ、又は筐体にロックされる、即ち、筐体に対して回転することができない別個の部分とすることができる。
【0025】
ピストンロッドが注射と次の注射との間で軸方向に移動する際に、駆動部材は自由に回転することができるので、カートリッジの薬液に派生した圧力を解放することができる。
圧力がカートリッジ内で発生している場合、カートリッジのゴム製プランジャーは、強制的に近位方向に移動し、したがって、ピストンロッド足部も移動し、最終的にピストンロッドは近位方向に移動することになる。駆動部材は第1の位置で自由に回転することができることから、それに伴い、ピストンロッドは近位に移動して、カートリッジ内での圧力の発生は回避される。
【0026】
投与中に、例えばシールドトリガーなどの場合に、駆動部材は、すぐにその回転位置でばね駆動アセンブリにロックされ、ばね駆動アセンブリは解放されて、ねじりばねの解放されたトルクが駆動部材の回転に変換され、さらにはピストンロッドの遠位移動に変換される。
【0027】
第1の位置のクラッチ要素がナット部材に回転不能に係合し、これによりクラッチ要素の筐体に対する回転が防止され、駆動部材との係合が解除され、さらにばね駆動アセンブリとの係合が解除され、したがって駆動部材がばね駆動アセンブリとは無関係に回転できるように、駆動部材のばね駆動アセンブリへの結合が、クラッチを介して行われる。
ピストンロッドをこの第1の位置で軸方向に両方向に移動すると、駆動部材は、筐体に対して、並びにナット部材及びこの位置でナット部材に係合するクラッチに対して、回転する。
【0028】
クラッチ要素とナット部材との間の係合は、噛み合いを介して行われるが、他の多くの方法でも想定できるだろう。
【0029】
投与中の第2の位置では、ばね駆動アセンブリがクラッチ要素及び駆動部材の両方を回転させ、放出を実行するために、クラッチ要素は、ナット部材との係合を解除し、さらに、駆動部材及びばね駆動アセンブリに結合する。第2の位置において、ねじりばねのトルクが解放されると、トルクは、ばね駆動アセンブリを回転させ、それと共に駆動部材は、ピストンロッドを前進させる。
【0030】
クラッチ要素は、第1の噛み合いを介して駆動部材に係合し、さらに、第2の噛み合いを介してばね駆動部材に係合するが、他の種類の係合も想定できるだろう。
【0031】
駆動部材が回転するにつれ、ねじり要素、例えば、弾性アーム又はねじりばねなどが引っ張られるように、ねじり要素は駆動部材に連結される(若しくは駆動部材と一体的に成形される)。第1の位置で駆動部材の回転中にねじり要素が引っ張られるように、ねじり要素は、好ましくは、駆動部材とクラッチ要素との間に設けられる。しかしながら、ねじり要素は、代替的には、駆動部材と筐体、ナット部材、又は実際には、駆動部材が第1の位置でそれに対して回転するような任意の要素との間に設けることもできるだろう。
【0032】
ピストンロッドが第1の解放された位置で軸方向に移動するときにはいつでも、例えば、圧力がカートリッジ内の薬液の中で増大すると、トルクはねじり要素で増大する。このトルクは、したがって、薬液の圧力が解放されると、常に駆動部材を返すだろう。例えば、圧力が薬剤の中で増大する場合、ピストンロッドは、この圧力によって近位に移動するだろう。何らかの理由で圧力が減少する場合、駆動部材は、ねじり要素の影響下で、その初期位置に向かって後方に回転し、ゆえにピストンロッドを前進させる。
【0033】
この方法において、ピストンロッドは、例えば、ピストンロッド足部を介して、常にカートリッジのプランジャーと突き合わされるだろう。トルクをねじり要素に初めに適用することによって、ピストンロッドがこの初期トルクにより常に遠位に移動するだろうから、初期プライミングを回避することができる。
【0034】
さらに駆動部材が複数回完全に回転できるように、駆動部材とクラッチ要素との間に中間要素を設けることができる。中間要素は、好ましくは、中間要素が一方向に複数回にわたって回転できるが、反対方向への回転を妨げる、一方向結合によってクラッチ要素に結合される。中間要素は、好ましくは、可能な回転方向が、ピストンロッドが無制限に近位方向に回転できる方向となるように、駆動部材に結合される。
【0035】
中間要素は、好ましくは、駆動部材が回転するとトルクがねじり要素に蓄えられるように、ねじり要素、例えば、板ばねを介して、駆動部材に結合される。このトルクは、ピストンロッド、及び例えばピストンロッド足部が、カートリッジ内のプランジャーとの突き合わせ部分に自動的に遠位で移動するように、駆動部材を反対方向に回転させるために使用される例である。
【0036】
したがって、中間要素によって、ピストンロッドが、圧力増加中に無制限に近位方向に移動ことができる一方で、圧力低下中の駆動部材の遠位移動は、多くの場合、駆動部材の1回の完全な回転に満たない、ねじり要素に蓄えられるトルクに限定される。これは、カートリッジ内の圧力が、減少より増加する傾向にあるからである。多くの場合、圧力が、温度変化に起因して減少するだけであるのに対し、投与量を注射する間に発生するいくつかの物理的パラメーター(及び温度)は、圧力増加に影響を与える。
【0037】
さらなる実施形態では、ねじり要素は、ピストンロッドをプランジャーに直接しっかりと留めることにより、回避することができる。これは、好ましくは、ピストンロッド足部とピストンロッドとの間の回転を可能にするが、それらの間での軸方向の移動を妨げる方法で、プランジャーに永続的に取り付けられ、さらにはピストンロッドに取り付けられるピストンロッド足部を適用することによって、実行される。
【0038】
ピストンロッド足部は、例えば、プランジャーに接着又は犬くぎで打ちつけることができ、又はプランジャーと一体的に製造することができるのに対し、ピストンロッド足部とピストンロッドとの間の結合は、従来のクリック結合(click coupling)とすることができる。このクリック結合は、好ましくは、ピストンロッドとピストンロッド足部との間での自由な動きが不可能であることを意味する、軸方向への自己引き締め式となるように、設計される。これは、例えば、共にクリックされると、結合が全く動かずに自動的に自身を引き締めるように、結合において可撓性を有することによって実行される。代替的には、ピストンロッド及びピストンロッド足部は、1つの一体的要素として成形することができるが、これにより、ピストンロッドが投与量放出中に回転しない場合にのみ好まれる解決策となる、ピストンロッドとピストンロッド足部との間の回転が妨げられるだろう。
【0039】
重要なのは、軸方向へのプランジャーの任意の移動が、すぐにピストンロッドの軸方向への移動、さらには駆動部材の回転移動に変換されるように、ピストンロッドがプランジャーに永続的に結合されることである。したがって、ピストンロッドがプランジャーの任意の軸方向の移動に続くので、駆動部材を圧力低下方向に駆動させるためにねじり要素を有することは不要である。この解決方法において、ピストンロッドは、無制限に両方向に移動することができる。
【0040】
注射デバイスが何も作動しないと、駆動部材が自由に回転できるように、弾性要素は、クラッチ要素を第1の位置に促す。1つの実施例では、クラッチ要素は、弾性要素が設けられるラチェット要素と突き合わされる。弾性要素は、例えば、ラチェット要素と共に成形されるプラスチックばねを含む任意の種類のばね手段とすることができる。ラチェット要素は、次に、クラッチ要素を遠位に第1の結合されていない位置に押し込む。注射中に、クラッチ要素は、弾性要素の付勢に対する第2の結合された位置に移動する。クラッチの移動は、好ましくは軸方向であり、好ましくは近位であり、注射ボタンを作動させるユーザ又はシールドトリガー機構のどちらかによって解放することができる注射機構の解放に従う。シールドトリガー構成において、クラッチの軸方向の移動はまた、駆動部材の結合及びトルクの解放が同時に行われるように、ばね駆動アセンブリのトルクを解放する。
【0041】
定義
「注射ペン」は、一般的に、書くための万年筆のような縦長の又は細長い形状を有する注射器具である。このようなペンは通常、管状の断面を有するが、三角形、長方形又は正方形、若しくはこれらの形状に近い任意の変形などの異なる断面を容易に有することができる。
【0042】
本明細書の中において使用されるように、「薬剤」という用語は、液体、溶液、ジェル、又は微細懸濁液などの制御された方法で、管状針などの供給手段を通じて運ぶことができる、任意の薬剤を含んだ流動性を有する薬を包含することが意味される。代表的な薬剤は、ペプチド、タンパク質(例えば、インシュリン、インシュリン類似体、及びCペプチド)、及びホルモン、生物学的な由来の又は生物学的に活性な化学物質、ホルモン剤、及び遺伝子に基づく化学物質、栄養フォーミュラ、並びに固体(投薬される)又は液体の両方の形態をとる他の物質などの薬剤を含む。
【0043】
「ニードルカニューレ」という用語は、注射の間に皮膚を貫通する実際の導管を説明するために使用される。ニードルカニューレは、通常、例えば、ステンレス鋼などの金属材料から作られ、「ニードルアセンブリ」と呼ばれることも多い完全な注射針を形成するために、ハブに連結される。しかし、ニードルカニューレは、ポリマー材料又はガラス材料からも作ることができるだろう。ハブはまた、ニードルアセンブリを注射器具に連結するための連結手段を持ち、通常、適切な熱可塑性材料から成形される。「連結手段」は、例として、ルアー結合、バイオネット結合、ねじ接合、又はそれらの任意の組み合わせ、例えばEP1,536,854の中で説明されている組み合わせなどである。
【0044】
「ニードルユニット」という用語は、容器の中で運ばれる単一のニードルアセンブリを説明するために使用される。そのような容器は、通常、取り外し可能なシールによって密封される、閉じた遠位端及び開いた近接端を有する。そのような容器の内部は、通常、ニードルアセンブリがすぐに使用できるように消毒されている。特にペン注射システム用に設計されたニードルユニットは、ISO規格番号11608、パート2の中で定義され、しばしば「ペンニードル」と呼ばれる。ペンニードルは、ユーザの組織に貫通する前部、及び薬剤を含むカートリッジに貫通する後部を有する。
【0045】
「カートリッジ」は、薬剤を含む容器を説明するために使用される用語である。カートリッジは、通常、ガラスで作られるが、任意の適切なポリマーから成形されることもありうる。カートリッジ又はアンプルは、好ましくは、例えば、患者と対向する側のニードルカニューレの端部により貫通され得る「隔壁」と呼ばれる貫通可能な膜によって、一端で密封される。対向する端部は、一般的に、ゴム又は適切なポリマーから作られるプランジャー又はピストンによって閉じられる。プランジャー又はピストンは、カートリッジ内部でスライド可能に動くことができる。貫通可能な膜と可動プランジャーとの間の空間は、プランジャーが薬剤を保持する空間の体積を小さくする際に押し出される薬剤を保持する。しかし、任意の種類の容器は、硬性であろうが可撓性であろうが、薬剤を内包するために使用することができる。
【0046】
注射デバイスと併用される「自動」という用語の使用は、注射デバイスのユーザが薬剤の放出に必要な力を供給せずに、自動で注射を行うことができることを意味する。力は、通常、電気モーターにより、又は本明細書中で説明されるようにばねにより、供給される。ばねは、通常、投与量設定中にユーザによって引っ張られる。しかしながら、そのようなばねは、通常、非常に少ない投与量を供給する問題を回避するために、予め引っ張られる。代替的には、ばねは、多くの投与量を通して薬剤カートリッジを空にするのに十分な前負荷を使用して、製造業者により、完全に事前に負荷をかけることができる。通常、ユーザは、注射を実行する際に、ばねに蓄積された力を解放するために、例えば、注射デバイスのボタン形状などのラッチ機構を作動させる。解放機構はまた、近位に位置する注射ボタンに結合することもできる。
【0047】
本明細書で引用される公報、特許出願及び特許を含む全てを参照することは、それら全体を参照することにより、かつ各参照が個々に、具体的に参照することにより組み込まれることが示され、その全体が本明細書に記載されたのと同程度まで、援用される。
【0048】
全ての項目及び副項目は、本明細書の中において便宜上使用されているだけであり、本発明を任意の方法で限定するものとして構成されるべきではない。
【0049】
任意の及び全ての実施例の使用、又は本明細書中で提供される例示的な文言(例えば「など(such as)」)の使用は、単に発明の理解を容易にすることを企図するものであり、特許請求の範囲で主張されない限り、発明の範囲に限定を課するものではない。本明細書中のいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を本発明の実施に対する本質的なものとして解釈すべきではない。本明細書中の特許文献の引用及び援用は、便宜上行われるにすぎず、そのような特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使可能性のいかなる見解をも反映するものでもない。
【0050】
本発明は、適用法によって認められるように、本明細書に添付された特許請求の範囲の中で列挙される対象の全ての変形及び同等のものを含む。
【0051】
発明は、好適な実施形態に関連づけ、図面を参照しながら、以下でより完全に説明されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図面は、明確にするために概略的かつ単純化されており、本発明の理解に本質的な詳細部分だけが示され、他の詳細部分は省略される。全体を通して、同一の参照番号は、一致又は対応する部分に対して使用される。
【0054】
以下において、「上」及び「下」、「右」及び「左」、「水平」及び「垂直」、「時計回り」及び「反時計回り」、若しくは類似の関連する表現が使用される場合、それらは添付図面に対してのみ言及され、実際の使用状況に対して言及されるものではない。示される図面は、種々の構造の構成及びそれらの相対的寸法が、例示目的のみの役割を果たすと意図される理由から、概略的表示である。
【0055】
以下の説明の文脈において、便宜上、添付図面における「遠位端」という用語が、通常、注射針を担持する注射デバイスの端部を指すことを意味するのに対し、「近位端」という用語は、注射針から離れた方を指し、
図1に示されるように投与ダイヤルボタン4を担持する対向する端部を指すことを意味すると定義される。
【0056】
さまざまな構成要素のうちのいくつかは、本発明の単一の実施形態に関連して開示されるのだけであるが、さらなる説明がなくとも他の実施形態に含まれることを意味する。
【0057】
図1には、ピストンロッド駆動部材20が、ばね駆動アセンブリ30から分離されている、投与量設定位置(「第1の位置」)の注射デバイスが開示される。
【0058】
注射デバイスの基本要素は:
様々な構成要素を包含する筐体1
筐体1の窓3を通して、ユーザに投与量を視覚的に知らせるスケールドラム2
である。
スケールドラム2は、好ましくは、駆動チューブ31と共に回転し、螺旋形移動を実行するように、筐体1にねじ込まれ、駆動チューブ31にスプラインされる。
筐体1の近位端に回転可能に装着される投与量設定ボタン4であって、それによってユーザが注射すべき投与量を設定することができる投与量設定ボタン4。
設定された投与量を放出するために、プランジャーを前方の薬液を含むカートリッジ内に移動するためのピストンロッド15。ピストンロッド15は、その外面上にねじ込まれ16、さらに長手方向に延びるトラック又は類似の非円形の外側断面17と共に設けられる。好ましくは、ピストンロッド足部が、ピストンロッドからプランジャーまで印加される力を分散するために、ピストンロッド15とプランジャーとの間に設けられる。ピストンロッド足部は、例えば、
図16の「110」で示される。
放出すべき薬剤を含むカートリッジであって、カートリッジは、筐体1、又は任意の注射デバイスにおけるピストンロッド15に遠位な筐体1に連結されるカートリッジホルダーに装着される。カートリッジは、
図22において「214」で示される。
【0059】
ばね駆動アセンブリ30は、駆動チューブ31、及び駆動チューブ31とばねベース35との間に位置決めされたねじりばね34を備える。ばねベース35は、非可動式方法で筐体1にしっかりと連結されるが、代替的には、筐体1の一部として成形することもできるだろう。駆動チューブ31が筐体及びばねベース35に対して回転すると、ねじりばね34が引っ張られるように、ねじりばね34は、駆動チューブ31に遠位に連結される。
【0060】
図2は、
図1の線A−Aに沿った図であり、開示された実施形態において、筐体1の一部として成形され、ナット要素5に対して回転されると、ピストンロッド15が軸方向に移動するように、ピストンロッド15の外ねじ16にねじ込み係合する雌ねじ9を有するナット要素5を開示する。ナット要素5には、外側に複数の外歯6が設けられる。
【0061】
図3は、後に説明される、ピストンロッド駆動部材20とクラッチ要素40との間の係合の図を提供する
図1の線B−Bに沿った図である。
【0062】
図1において、クラッチ要素40の近位面41は、ラチェット要素50の遠位面51と突き合わされる(
図5及び
図7参照)。クラッチ要素40及びラチェット要素50は、いかなる相互接合もなく互いに突き合わされるだけである−クラッチ要素40の近位面41は、単にラチェット要素50の遠位面51に突き合わされるだけである。
【0063】
図9から
図11に開示されるピストンロッド駆動部材20は、ピストンロッド駆動部材20が回転するときにはいつでも、ピストンロッド15が回転するように、ピストンロッド15の非円形の断面17と噛合する中央開口21を有する。
【0064】
クラッチ40が、さらに
図4及び
図5に示される。クラッチ40には、外側に複数の外歯42が、内側に複数の内歯43が設けられるが、それらの機能は後ほど説明する。
【0065】
図6から
図8に開示されるラチェット要素50には、ばねベース35で内側歯部36に係合するラチェットアーム52が近位に設けられる。ラチェット要素50が投与量設定ボタン4と回転するように、ラチェット要素50には、投与量設定ボタン4(
図1参照)の内側に設けられるトラック7を介して投与量設定ボタン4にスプラインされる内側リッジ53がさらに設けられる。
【0066】
万が一ラチェット要素50の回転が妨げられた場合に、例えば、それ以上の薬剤がカートリッジ内で利用できない場合などに、投与量設定ボタン4が回転し続けられるように、図示されないトルクリミッタを、投与量設定ボタン4とラチェット要素50との間に設けることができる。あるトルクが適用されると、投与量設定ボタン4の一部又はラチェット要素50の一部のどちらかが係合から放射状に移動するように、例えば、トルクリミッタを設けることができる。そのようなトルクリミッタの実施例が、US5,921,966(例えば、
図6)で提供される。
【0067】
投与量を第1の位置(
図1)で設定すると、ユーザは、順次ラチェット要素50をトラック7及びリッジ53を介して回転させる投与量設定ボタン4を回転させ、その一方で、ラチェットアーム52は、ばねベース35の歯部36上でクリックする(clicks)。駆動チューブ31が、ねじりばね34を引っ張るためにラチェット要素50と共に回転するように、ラチェット要素50には、遠位に、駆動チューブ31内で類似の歯32に係合する一組の外歯55が設けられる。
【0068】
ラチェット要素50は、ばねベース35の歯部36に対して一方向にのみ回転することができるが、投与量設定ボタン4が反対方向に回転すると、投与量設定ボタン4の内側の要素が作動し、ラチェットアーム52をばねベース35の歯部36から解放することによって、ねじりばね31が、ラチェットアーム52を回転させ歯部36の以前の歯まで戻すことができるように、ラチェットアーム52と歯部36との間の係合は設計される。
この「ダイヤルダウン」機構は、ヨーロッパ特許出願EP 2012 170139においてさらに説明される。
【0069】
ラチェット要素50には、後に説明されるように、近位に移動するとばねアーム54が突き合わされる投与量設定ボタン4に対して遠位方向にラチェット要素50を促すばねアーム54がさらに設けられる。ばねアーム54は、別個のばねによって置換されることもできるだろう。
【0070】
図1及び
図2に開示されたような投与量設定位置において、ラチェット要素50は、遠位方向に促され、したがって、クラッチ要素40を遠位方向に押すことにもなる。この位置で、クラッチ要素40内部の内歯43は、ナット部材5の外歯6に係合し、これによりクラッチ要素40の回転が妨げられる。ユーザが投与量を選択するために投与量設定ボタン4を回転させると、ラチェット要素50の遠位面51は、クラッチ要素40の近位面41に対して回転する。
【0071】
クラッチ要素40の外歯42は、同時に駆動チューブ31との係合が解除され、これによって、クラッチ要素40に対する駆動チューブ31の回転が可能になる。
【0072】
クラッチ要素40の内歯43は、ナット部材5に係合すると、ピストンロッド駆動部材20との係合が解除され、これにより、この第1の位置のピストンロッド駆動部材20の回転移動を制限するものが何もないので、ピストンロッド駆動部材20は、回転することができる。
【0073】
ピストンロッド駆動部材20(
図9及び
図10)は、内側に、ピストンロッド15の非円形の断面17に噛合するように構成された開口21を、外側に歯付きリング22を有する。さらに、ピストンロッド駆動部材20には、内側に、ナット部材5において外側に設けられる対応する円形リッジ8に係合するスナップアーム23が設けられる。これによって、ピストンロッド駆動部材20はナット部材5に対して回転することができ、したがって、ピストンロッド駆動部材20の軸方向への移動を防止できる。
【0074】
第1の位置において、ピストンロッド駆動部材20の回転を妨げるものは何もないので、ピストンロッド駆動部材20は、ピストンロッド15が軸方向に、例えば、カートリッジ内の圧力によって移動するときにはいつでも、回転することができる。
これは、圧力解放と呼ばれる。
【0075】
ピストンロッド駆動部材20には、その外面に、
図3に示されるようなクラッチ要素40の内面44に突き合わされるばねアーム24が設けられる。ピストンロッド駆動部材20が回転すると、ばねアーム24が徐々に注射デバイス1の中心線Xの方に促されるように、この内面44は非対称である(
図3及び
図5を参照)。
【0076】
この結果、カートリッジ内の圧力が増加する場合、ピストンロッド15は、近位方向に軸方向に移動し、これによって、ピストンロッド駆動部材20に回転がかけられるだろう。しかしながら、カートリッジ内の圧力が減少すると、ばねアーム24とクラッチ40との非対称の内面44との突き合わせによって、ピストンロッド駆動部材20は、反対方向に回転させられ、したがって、ピストンロッド15は遠位に前進する。要するに、ばねアーム24と非対称面44との間の係合が、回転中にばねアーム24にねじり力をかけるねじり機構として作用する。
【0077】
代替的には、ばねアーム24及び非対称面44は、ピストンロッド駆動部材20がクラッチ40に対して回転すると、トルクが構築されるねじりばねによって置換することができる。このことは、第2の実施形態に関連付けて後ほど説明する。さらに、ピストンロッドが、プランジャーの軸方向の移動に従うために軸方向に前後に移動するように、単にピストンロッドをカートリッジ内のプランジャーに連結することによって、ばねアーム24又はねじりばねを完全に回避することができる。このことについては、後の実施形態においても説明される。
【0078】
ユーザが設定された投与量を注入すると、クラッチ40は、近位方向に、
図12に示される位置まで移動する。クラッチ要素40の軸方向の移動は、多くの異なる方法で実行することができ、その1つが、ヨーロッパ特許出願EP 2012 174289で開示されるシールドトリガー機構によるものである。
【0079】
この注射位置(
図12の第2の位置)において、クラッチ40は、ばねアーム54の付勢に対して近位方向に軸方向に、ラチェット要素50をそれ自体と共に移動する。この位置で、クラッチ要素40の内歯43は、クラッチ要素40をナット部材5に対して回転可能にするナット部材5の外歯6から解放される。同時に、ピストンロッド駆動部材20が回転の際にはクラッチ要素40と共に回転するように、クラッチ要素40の内歯43は、ピストンロッド駆動部材20の外側歯付きリング22に係合する。
【0080】
クラッチ要素40の内歯43は、各歯43の上端に向かって先細る形状を有する。このことは、
図2で最もよくわかる。この方法では、(歯43の)多少幅広いロッドが、本実施例において個々の歯6を担持する24ナット部材5の歯部6に係合することができるのに対し、幅の狭い上端は、本実施例において、個々の歯22も担持する36ピストンロッド駆動部材20の歯付きリング22に係合することができる。
【0081】
クラッチ要素40の外歯42は、クラッチ要素40が第2の位置で駆動チューブ31と共に回転するように、駆動チューブ31上で内側に設けられた類似の歯32と係合する。同時に、ラチェット要素50の外歯55は、駆動チューブ31との係合から解放され移動し、これによって、ねじりばね34は、駆動チューブ31をクラッチ要素40及びピストンロッド駆動部材20と共に回転させることができる。
【0082】
代替的には、歯32は、2つの独立した歯の円として設けることができ、1つの円は、駆動チューブ31の近位に設けられ、第1の位置のラチェット要素50の歯55と係合し、もう1つの円は、駆動チューブ31の遠位に設けられ、第2の位置のクラッチ要素40の歯42と係合する。
【0083】
最終的に、第1の位置で投与量を設定するために、ユーザは、順次ラチェット50及び駆動チューブ31を回転させる投与量設定ボタン4を回転させる。投与量設定中に、ねじりばね34のトルクは、ラチェットアーム52によって保持される。投与量設定中に、クラッチ要素40は、ピストンロッド駆動部材20が独立して回転可能な遠位位置にあるが、クラッチ要素40それ自体は、ナット部材5、さらには筐体1にロックされる。
【0084】
設定された投与量を解除したいときには、ユーザは、クラッチ要素40を軸方向に近位に移動し、これにより、クラッチ要素40は、同時にラチェット要素50から解放され、ねじりばね34のトルクの影響下で自由に回転する駆動チューブ31に結合される。ラチェットアーム52によって回転が妨げられるために、駆動チューブ31、クラッチ要素40及びラチェット要素50が回転しないと、クリックアーム56は、駆動チューブ31の内側に設けられる内歯部33に対してクリック音を生成するが、クリック音は放出している投与量に対応している。クラッチ要素40の回転中に、クラッチ要素40は、ピストンロッド駆動部材20にロックされ、次にピストンロッド15が回転し、前方に軸方向にねじで締められる。
【0085】
第1の位置が
図13に示され、第2の位置が
図14に示される。矢印Aは、クラッチ40の移動を示す。第1の位置(
図14)において、ピストンロッド駆動部材20は、ピストンロッド15の軸方向の移動の影響下で自由に移動することができ、第2の位置(
図15)において、ピストンロッド駆動部材20は、クラッチ要素40にロックされ、クラッチが近位の移動し、よってピストンロッド15をねじ込まれた9ナット部材5の前方に回転させ及び移動すると、ナット要素5から解放されるクラッチ要素40と共に回転する。
【0086】
わずかに異なる実施形態が
図15に示されるが、この実施形態において、注射デバイスのエンジンともよく言われる投与量設定及び注射機構の分解図が開示される。
【0087】
参照番号の初めに「1」が付されているが、様々な要素が、第1の実施形態(
図1から
図14)と同一の参照番号で示されている。第2の実施形態の主要な要素は、
図15の左から右へ:
ナット部材:105
ピストンロッド:115
回転可能な駆動部材:120
ねじり要素:124
クラッチ要素:140
スケールドラム:102
筐体:101
ばね駆動アセンブリ130であって、
駆動チューブ:131
ねじりばね:134
ばねベース:135
ラチェット:150
投与量設定ボタン:104
を備える、ばね駆動アセンブリ130である。
【0088】
さらに、ねじり要素124とクラッチ要素140との間には、中間要素160が設けられるが、これは本実施形態における差別化できる特徴(differentiating feature)である。
【0089】
第1の位置における機構の断面図が
図16に示され、解放機構の関連部分が
図17の分解図にさらに示される。第1の位置におけるクラッチ要素140が筐体101に対して回転不可能に(inrotatable)維持されるように、クラッチ要素140には、ナット要素5上に設けられた類似の歯106に係合する歯143が遠位に設けられる。ナット部材105は、開示された実施例では、筐体101に回転不能に結合されている(ナット部材105及び筐体101は、クリック手段を介して適合する)が、代替的には、一体的構成要素として成形することもできるだろう。歯142が駆動チューブ131の歯132との係合を解除されると、近位で、クラッチ要素140は、駆動チューブ131からの結合が離脱される。
【0090】
図17及び
図20に示される切欠き146のため、
図16の断面図ではクラッチ要素140が見えないことに留意されたい。
【0091】
さらに、第1の位置では、ピストンロッド115が軸方向に移動するときにはいつでも、駆動部材120が回転できるように、駆動部材120は、クラッチ要素140から結合解除される。駆動部材120は、ピストンロッド115の非円形の断面117に噛合するその中心開口121を介して、ピストンロッド115に結合される。第1の実施形態では、駆動部材120は、可撓性アーム123によってナット部材105に軸方向にロックされ、ピストンロッド115には、ナット部材105の雌ねじ109に噛合する雄ねじ116が設けられる。
【0092】
第2の位置(図示されず)では、クラッチ要素140が近位方向に軸方向に移動するので、歯143は、ナット部材105の歯106の係合を解除し、駆動部材120の歯122に係合し、歯142は、駆動チューブ131の内側に設けられる歯132と係合し、したがって、第2の位置の駆動部材120が駆動チューブ131の回転に続く。第2の位置において、駆動チューブ131は、ねじりばね134のトルクの影響下で回転する。
【0093】
中間要素160は、駆動部材120とクラッチ要素140との間に設けられる。さらに
図18に示される中間要素160は、駆動部材120の一部を受け入れるための中心開口161を有する。中間要素160には、クラッチ要素140の内側で歯付き面145に係合する1又は複数のラチェットアーム162が近位に設けられる。この係合によって、中間要素160の、クラッチ要素140のみに関連する1つの方向への回転が制限される。
図17の矢印「B」によって示されるように、遠位端から見ると、許可される方向は、反時計回りである。歯付き面145の個々の歯は、中間要素160の時計回りの回転を防止する急勾配の前部を有する。
【0094】
この第2の実施形態において、第1の端部125及び第2の端部126を有する別個の板ばねとして実施されるねじり要素124は、駆動部材120と中間要素160との間に包含される。この目的のため、中間要素160には、ねじり要素124の第2の端部126を保持するための遠位ポインティングアーム(distally pointing arm)163が設けられる。
【0095】
図19に示される駆動部材120は、ねじり要素124の第1の端部125を保持するための類似のアーム127を有する。駆動部材120及び中間要素160が、ねじり要素124によって結合され、さらに駆動部材120上に設けられる小さな可撓性アーム128によって結合されると、3つのすべての要素120、124、160は、軸方向に移動する(all three element 120, 124, 160 moves axially in unisome)。これを促進するために、歯付き面145の弧の軸方向の長さは、ラチェットアーム162とあらゆる面で係合する十分な長さを有する。
【0096】
圧力解放機構の作動を、
図17を参照してさらに説明する。カートリッジ内の薬剤が膨張し、カートリッジ内で増加した圧力のためにプランジャーがピストンロッド足部110と近位に移動すると、駆動部材120は、矢印「C」によって示される反時計回りに回転する。これは、ピストンロッド115の非円形の断面117と駆動部材120の開口121の形状との係合によるものである。
【0097】
駆動部材120が反時計回りに回転すると、ねじり要素124の第1の端部125もまた、矢印「D」によって示されるように、反時計回りに回転し、これによりねじり要素124が締められる。中間要素160のラチェットアーム162は、クラッチ要素140の歯付き面145の次の歯に移動することなく、ねじり要素124に適用されるトルクに耐えるのに十分な外側への屈曲を有している。しかしながら、第1の端部125がねじり要素125の第2の端部126に突き合わされ、ピストンロッド115が近位に移動し続けると、トルクは閾値を超え、ラチェットアーム162は、歯付き面145の次の後続の歯に移り、トルクがラチェットアーム162と歯付きリング145との間の係合によって形成される閾値を再び超えるまで、その位置でとどまる。
【0098】
回転数に制限がなければ、ピストンロッド115が無制限に近位方向に移動できるような方法で、中間要素160は、クラッチ140に関連付けて実行することができる。
【0099】
カートリッジ内の圧力が低下し、プランジャーがカートリッジ内の遠位方向に移動する場合、ねじり要素124のトルクは、ピストンロッド115がピストンロッド足部110を介してプランジャーと突き合わされるように、時計回りの方向(矢印「B」「C」「D」の反対)に駆動部材120を自動的に回転させるだろう。この時計回りの方向において、ラチェットアーム162の歯付き面145との係合のために、中間要素160の回転が妨げられる。ピストンロッド115の遠位方向への移動は、したがって、実際にはねじり要素124の第1の端部125と第2の端部との間隙に制限される、ねじり要素124に蓄えられるトルクによって実行される駆動部材120の可能な回転に制限される。ねじり要素124がその初期の構成をいったん回復してしまえば、圧力解放機構には、トルクはもはや存在しない。
【0100】
第3の実施形態が、
図22から
図23に開示される。この第3の実施形態では、参照番号の初めに「2」が付されているが、様々な要素が、第1の実施形態(
図1から
図14)と同一の参照番号で示されている。
【0101】
主要な構成要素は、
ナット部材:205
ピストンロッド:215
回転可能な駆動部材:220
クラッチ要素:240
スケールドラム:202
筐体:201
ばね駆動アセンブリ230であって、
駆動チューブ:231
ねじりばね:234
を備える、ばね駆動アセンブリ230である。
【0102】
ばねベース及び投与量設定ボタンは、
図22には開示されないが、先ほどの実施形態と同一である。
【0103】
さらに、
図22にはまた、ピストンロッド215により前方に移動されると、カートリッジ210から薬剤を放出するプランジャー212を有するカートリッジ211が開示される。ピストンロッド足部又はワッシャー210は、ピストンロッド215とプランジャー212との間に設けられる。
【0104】
図22にはさらに、クラッチ要素240が、クラッチ要素240の歯243がナット部材205の歯206と係合し、クラッチ要素240の歯242の駆動チューブ231の歯232との係合が解除される第1の位置であることを開示する。
【0105】
作動原理は、先ほどの実施形態と同一である。クラッチ要素240がいったん
図22の第1の位置から第2の位置まで近位に移動すると、クラッチ要素240の歯243は、ナット部材205の歯206との係合が解除され、駆動部材220の歯222に係合する。同時に、ねじりばね234のトルクが、クラッチ要素240の回転移動に移動し、その結果、次に遠位方向に軸方向にピストンロッド215を移動する駆動部材220に移動するように、クラッチ要素240の歯242は、ばね駆動アセンブリ230の駆動チューブ231の歯232に係合する。
【0106】
ピストンロッド215は、1対1で、第1の位置のプランジャー212の任意の軸方向の移動に続くように、プランジャー212に永続的に固定される。この係合のため、カートリッジ211内の圧力が低下すると、ピストンロッド215がここで自動的に遠位方向にプランジャー212に続くので、クラッチ要素240と駆動部材220との間のねじり要素を回避することができる。従って、クラッチ要素240の内歯部245は、
図22の対応部分には係合しない。
【0107】
実施例において、プランジャー212は、プランジャー212に挿入される犬くぎ213を有するピストンロッド足部210にしっかりと固定される。
【0108】
これについては、さらに
図23に開示され、ピストンロッド足部210には、遠位に犬くぎ213が、近位に多くの可撓性アーム214が設けられる。スパイク213は、通常、ゴム材料から作られるプランジャー212にしっかりと挿入される。しかしながら、ピストンロッド足部210及びプランジャー212は、多くの様々な方法、例えば、プランジャー212とピストンロッド足部210とを接着する又は溶接するなどによって、永続的に連結することもできるだろう。代替的には、ピストンロッド足部210及びプランジャー212は、2つの構成要素成形技術を使用することによって、成形することもできるだろう。
【0109】
先ほどの実施形態においては、ピストンロッド215には、雄ねじ216及び長手方向のトラック217が設けられる。さらに、ピストンロッド215及びピストンロッド足部210が軸方向にロックされるが、互いに対して回転できるように、可撓性アーム214と留まる(snap)トラック218が、遠位端に設けられる。反対に、トラック218及びピストンロッド215には、ピストンロッド215とピストンロッド足部210が連結されて、2つの部分210と215との間の任意の動きを低減する、又は好ましくは除去すると、ピストンロッド足部210を押圧する傾斜した遠位面219を提供することができる。
【0110】
駆動部材220がピストンロッド215にスプラインし、ピストンロッド215がナット部材205にねじ込まれる実施例では、ピストンロッド215は、軸方向に移動すると回転する。したがって、本実施例では、ピストンロッド215が、ピストンロッド足部210に回転可能に装着されることが好ましい。駆動部材220がピストンロッド215にねじ込まれ、ピストンロッド215がナット部材205にスプラインされる他の実施例では、後者の実施例において、ピストンロッド215が放出中には回転しないので、ピストンロッド215及びピストンロッド足部210は、一体で成形できるだろう。
【0111】
いくつかの好ましい実施形態が上記に示されたが、発明はこれらに限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲において定義される主題の範囲内で、他の方法においても具現化されうるということが、強調されるべきである。