【文献】
社団法人日本電子機械工業会,改訂医用超音波機器ハンドブック,日本,コロナ社,1997年 1月20日,p.181-182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トランスデューサによって送信される超音波信号の中心周波数の1/4波長の厚さのインピーダンス整合層をさらに備える、請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
前記ピラーが円形、正方形、長方形及びランダムパターンからの図形よりなる群から選択される形状を有する前記SCC層の表面上の断面を有する、請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
前記SCC層上に音響インピーダンス整合層を形成することをさらに含み、該音響インピーダンス整合層は、前記トランスデューサによって送信された超音波信号の中心周波数の1/4波長の厚さを有する、請求項8に記載の方法。
前記超音波トランスデューサが前記細長い装置の遠位部分内に配置され、かつ、該細長い装置の本体に対して回転可能である、請求項12に記載のIVUS画像化システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記図面において、同じ参照番号を有する要素は、同一又は同様の機能及び/又は特徴を有する。
【0014】
詳細な説明
本発明の原理の理解を進める目的で、図面に示された実施形態を参照し、特定の用語を同じものを説明するために使用する。それにもかかわらず、本発明の範囲の限定を意図するものではないことが分かるであろう。説明する装置、システム及び方法の任意の変更及びさらなる改変、並びに本発明の原理のさらなる適用が完全に意図され、かつ、本発明の範囲内に含まれる。この開示が関連する当業者であれば通常思いつくと考えられるからである。特に、一実施形態に関して説明した特徴、構成要素及び/又は工程を、本発明の他の実施形態に関して説明した特徴、構成要素及び/又は工程と組み合わせることができることが完全に意図される。しかしながら、単純化のため、これらの組み合わせの多数の反復は別々には説明しない。
【0015】
本明細書で開示される実施形態は、装置及び装置の製造方法に関し、該装置は、回転IVUSカテーテルに使用される集束トランスデューサを備える。本明細書で開示されるトランスデューサは、集束ビーム伝搬を有する広帯域幅超音波信号を与える。このようなトランスデューサは、血管内超音波画像化用途において3つ次元の全て(レンジ、横方向及び上方向)で高い解像度を与える。いくつかの実施形態では、本発明のIVUSカテーテルは、回転可撓性ドライブシャフト内のトランスデューサに近接して装着される増幅器その他の能動電子機器を必要とすることなく広帯域集幅束超音波ビームを与える。本明細書で開示される実施形態に係る超音波トランスデューサは、広い帯域幅集束ビームを与える単結晶複合材料を含むことができる。単結晶複合材料は、いくつかの例では、集束ビームを与えるように設計された湾曲部を有する構成要素に成形される(例えば、超音波トランスデューサのための凹状放射面を画定する)。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るIVUS画像化システム100を示す。本発明のいくつかの実施形態では、IVUS画像化システム100は、回転IVUS画像化システムである。この点に関し、回転IVUS画像化システムの主な部品は、回転IVUSカテーテル102、患者インターフェースモジュール(PIM)104、IVUSコンソール又は処理システム106、及びIVUSコンソール106によって生成されたIVUS画像を表示するためのモニタ108である。カテーテル102は、いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサ150を備える。PIM104は、カテーテル102を支持するのに適切なインターフェース仕様を実装する。いくつかの実施形態によれば、PIM104は、一連の送信トリガ信号を生成し、超音波トランスデューサ150の動作を調節する。
【0017】
超音波トランスデューサ150は、カテーテルの長手軸に対して略垂直な超音波信号を血管の内腔及び血管壁に向かって外側に送信する。トランスデューサからの超音波放射は、PIM104から受信した対応する電気信号によって活性化される。また、超音波トランスデューサ150は、血管組織(及び他の反射物)からの超音波エコー信号をPIM104に伝達される電気信号にも変換する。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係るカテーテル102の部分破断概略斜視図である。
図2は、回転IVUSカテーテル102に関するさらなる詳細を示す。回転カテーテル102は、イメージングコア110及び外側カテーテル/シースアセンブリ112を備える。イメージングコア110は、電気的及び機械的結合をPIM104に与える回転インターフェース114によって近位端で終端する可撓性ドライブシャフトを備える(
図1参照)。イメージングコア110の可撓性ドライブシャフトの遠位端は、超音波トランスデューサ150を収容するトランスデューサハウジング116に連結されている。
【0019】
カテーテル/シースアセンブリ112は、回転インターフェース114を支持するハブ118を備え、カテーテル102の回転部材と非回転部材との間に軸受面及び流体シールを与える。いくつかの実施形態では、ハブ118は、ルアーロックフラッシュポート120を備え、これを通して生理食塩水を注入して空気をフラッシュし、カテーテルの使用時に超音波相溶性流体をシースの内腔に充填する。生理食塩水又は他の同様の流体が必要である。というのは、超音波周波数は、空気によって非常に減衰され、かつ、任意の空気固体又は空気−液体界面で強く反射されるからである。また、生理食塩水は、回転ドライブシャフトのための生体適合性潤滑剤となる。いくつかの実施形態では、ハブ118は、テレスコープ122に連結され、該テレスコープは、ネストにされた管状部材と、カテーテル/シースアセンブリ112を延長又は短縮させることを可能にする摺動流体シールとを備える。テレスコープ122は、音響的に透明な窓124内においてカテーテル/シースアセンブリ112の遠位部分でトランスデューサハウジングの軸方向の移動を容易にする。
【0020】
いくつかの実施形態では、窓124は、トランスデューサと血管組織との間に超音波を最小限の減衰、反射、又は屈折で容易に伝達する材料から製造された薄肉プラスチック管から構成される。カテーテル/シースアセンブリ112の近位シャフト126は、テレスコープ122と窓124との間の部分を架橋する。いくつかの実施形態では、近位シャフト126は、滑らかな内腔及び最適な剛性をカテーテル102に与える材料又は複合材料から構成される。いくつかの実施形態では、カテーテル/シースアセンブリ12及び/又は窓124は、2012年12月28日に出願された「Intravascular Ultrasound Catheter for Minimizing Image Distortion」というタイトルの米国特許出願第61/746958号に記載された特徴を備える。参照によりその全体を援用する。
【0021】
図3は、本明細書で開示されるいくつかの実施形態に係る超音波トランスデューサ150の部分図を示す。トランスデューサ150は、重合体マトリックス330内に埋め込まれた単結晶圧電材料のピラー320を有する単結晶複合材料(SCC)301を含む。示された複合材料は、一般に、圧電材料の一次元接続(Z方向に連続し、X軸又はY方向では連続しない)及び重合体マトリックスの三次元接続(X、Y及びZ方向に連続する)を表す1−3複合材料と呼ばれる。いくつかの実施形態では、ピラー320を形成する単結晶圧電材料は、ニオブ酸鉛マグネシウム−チタン酸鉛(PMN−PT)である。いくつかの実施形態では、重合体マトリックス330は、エポキシ樹脂又は他の材料によって形成される。重合体マトリックス330における充填剤として使用されるエポキシ樹脂又は他の材料は、超音波トランスデューサ150を形成するSCC材料に柔軟性を与える。柔軟性、強度及び音響特性の観点での用途の特定の要件に応じて、好適な充填材としては、EPO−TEK301などの剛性の高いエポキシ、Mereco1650シリーズの製剤の1つなどの可撓性エポキシ、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーン、メタロセン触媒ポリジシクロペンタジエンなどの他の重合体、又はマイクロバルーンを充填した上記重合体の一つから製造されたシンタクチックフォームを挙げることができる。
【0022】
重合体マトリックス330は、PMN−PT単結晶材料又はPZTセラミックと比較してSCC301の音響インピーダンスを低下させる。SCCと周囲の媒体(生理食塩水)との間の改善された音響インピーダンス整合により、トランスデューサ150について高効率結合及び広い帯域幅が促進する。圧電結晶材料は、トランスデューサの効率をさらに改善させるその高い電気機械結合係数のために選択される。さらに、SCC301の複合構造は、振動の「ピラーモード」を支持するところ、これは、バルク圧電材料(単結晶又はセラミックのいずれか)から製造された従来のトランスデューサに見られる振動の「プレートモード」よりも効率的である。
【0023】
いくつかの実施形態では、インピーダンス整合層310が超音波トランスデューサ150に含まれる。いくつかの実施形態では、整合層310は、トランスデューサから周囲の媒体への音響結合を向上させてトランスデューサ効率を改善させ、そしてその帯域幅を増大させるためにSCC301に加えられた四分の一波長整合層であることができる。他の実施形態では、SCC301の媒体への音響整合は、加えられる整合層を必要としない程度に十分に近い。
【0024】
本明細書で開示されるいくつかの実施形態によれば、ピラー320は、断面(
図3のY軸又は図示しないX軸)で狭い幅を有する軸方向(
図3のZ軸方向)に長い構造を形成する。好ましくは、ピラーについての幅対高さのアスペクト比は、振動の効率的なピラーモードが優勢になることを確保にするために0.6以下とすべきである。IVUS画像化のための典型的な動作である40MHz中心周波数を達成するために、SCC301の厚さは、約30μmであることができ、この場合、単一のピラーの横方向寸法は、好ましくは18μm以下である。
【0025】
いくつかの実施形態では、SCC301を湾曲形状に変形させて集束トランスデューサを製造する。例えば、SCC301を球面湾曲に変形させて、所望の焦点距離、例えばトランスデューサの表面から1.5mmに湾曲の中心を有する凹状ボウル形の構造を形成することができる。0.50mmの直径を有する典型的なIVUSトランスデューサの場合、好ましい焦点距離は1mm〜2mmの範囲であろう。いくつかの実施形態では、湾曲は、円筒カテーテル/シース102によって生じる円筒形収差を補正するように設計できる。この場合には、YZ平面における湾曲は円形とすることができるが、XZ平面内における湾曲の半径とは異なる湾曲半径を有することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、SCC301は、高効率超音波の発生及び検出のために広い帯域幅が期待できるが、これはIVUS画像化用途にとって望ましい。単結晶複合材料に使用される圧電材料は、高い電気機械結合係数を有することができる。例えば、PMN−PTの所定の配合物は、従来のIVUSトランスデューサに一般的に使用されているPZT−5H組成物についてのk33=0.72に対してk33=0.90を示す。k33はピラーモード電気機械結合係数であることに留意されたい。k33=0.90を有するPMN−PTから製造された単結晶複合材料は、該複合材料について0.855のkt値をもたらす。ktはプレートモード電気機械結合係数であり、比較のために、IVUSトランスデューサに一般的に使用されるバルクPZT−5Hについての対応するkt値は約0.5であることに留意されたい。一方向エネルギー変換効率はkt2に比例し、往復エネルギー効率は、kt比の4乗に比例し、0.5から0.855までのktの増大により期待される改善はほぼ10dBであろう。参考までに、Ren,Kailiang;Yiming Liu;Xuecang Geng;Hofmann,H.F.;Zhang,Q.M.,「Single crystal PMN−PT/Epoxy 1−3 composite for energy−harvesting application」,Ultrasonics,Ferroelectrics and Frequency Control,IEEE Transactions on,第53巻,第3号,pp.631,638,2006年3月を参照されたい。これは本明細書にその全体が参照により援用される。
【0027】
SCC301のいくつかの実施形態では、望ましくない横方向(
図3のXY平面)の振動モード、特に所望の超音波動作周波数に周波数が近いものが抑制される。0.6以下の幅対高さのアスペクト比を有する狭いピラー320についての横方向共振周波数は、所望のピラーモード共鳴の基本周波数よりも実質的に高く、また励起される任意の横方向振動は、ピラー320を取り囲む比較的軟質な重合体マトリックス330への吸収によって減衰できる。さらに、ピラーの断面形状を、単結晶複合材料に典型的に使用される単純な長方形又は正方形の断面から変更し、それによって横方向の共振モードを低減又は排除することができる。さらに、ピラーマトリクスの周期をピラー配列にわたって変化又はランダム化させて横方向の振動に対するコヒーレンスを低減させ、それによって、配列の周期性から生じる可能性のある低周波横モードを抑制することができる。
【0028】
上記のように、高い電気機械結合係数は、単結晶複合材料を使用して得ることができ、そして横モードを抑制し、ピラー320の振動のピラーモード及びSCC301の対応する厚みモード振動(
図3のZ軸)に供給される電気エネルギーの効率的な変換をもたらすことができる。また、さらに上記のように、重合体マトリックス330は、固体の単結晶材料と比較してSCC301の音響インピーダンスを低下させる。例えば、いくつかの実施形態では、SCC301は、重合体マトリックス330を容量を基準にして20%〜80%の間で含むことができる。このような複合材料は、5MRayl(圧電材料の最低のパーセントについて)程度に低い又は20MRayl(圧電材料の最高のパーセントについて)程度に高い音響インピーダンスを示すことができる。比較のために、PZTセラミックの音響インピーダンスは約34MRaylであり、PMN−PTのそれは、典型的には25MRaylである。単結晶複合材料の低音響インピーダンスは、組織の音響インピーダンス(〜1.5MRayl)によく一致するため、単結晶複合超音波トランスデューサ150のために高い効率及び広い帯域幅を促進する。
【0029】
SCC301の寸法は、求められる具体的な用途に応じて異なる。例えば、目標の超音波周波数及び帯域幅は、場合によってはSCC301の具体的な寸法を決める。いくつかの実施形態では、ピラー320は、10μmの深部切り溝を有する約20μmの直径である(
図3におけるXY平面)。SCC基材の厚さは、IVUS画像化を目的とするトランスデューサの典型的な40MHzの中心周波数について約30μmであることができる。高周波IVUSについて、SCC301においてさらに小さいピラー及び切り溝を有することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、単結晶材料は、高周波用途のためにSCC301中にあることが望ましい場合もある。というのは、単結晶は、深部反応性イオンエッチング(DRIE)を使用してさらに容易にパターニングできるからである。DRIE技術を使用して結晶基材をミクロン精度でパターニングし、SCC301材料をウェハスケールで作製することができる。
【0030】
また、SCC301における圧電体320の体積分率も用途に応じて変更できる。例えば、圧電体320の体積分率は、トランスデューサの圧電性能に影響を与え(効率及び帯域幅の点で)、媒体への音響整合に影響を与え(システム効率及び帯域幅の全体に影響を与える)、基材の柔軟性に影響を与える(集束トランスデューサを製造するために基材を球状に湾曲させる能力に影響を与える)。単結晶複合材料における圧電の体積分率の典型的な値は20%〜80%の範囲にある。約50%の体積分率が、性能、柔軟性及び製造可能性の面での良好な妥協点として一般的に選択される。
【0031】
図4は、いくつかの実施形態に係る超音波トランスデューサ150を含め、トランスデューサハウジング116の部分斜視図を示す。超音波トランスデューサ150は、SCC301及びインピーダンス整合層310を備える。超音波トランスデューサ150の他の詳細は、明確にするために、
図4では省略されている。
図4の超音波トランスデューサ150は、
図3に示すのと同一又は類似の部材を備えることができると解される。例えば、
図4の超音波トランスデューサ150は、背面電極151及び前面電極152を備えることができる。
【0032】
トランスデューサハウジング116は、本発明の実施形態に係るカテーテル102の遠位部分にある。特に、
図4は、イメージングコア110の遠位部分の側面拡大図を示す。この例示実施形態では、イメージングコア110は、ハウジング116によってその遠位端で終端する。ハウジング116は、ステンレス鋼又は他の好適な生体適合性材料から製造でき、かつ、弾丸形状又は丸みを帯びた鼻部、及び超音波ビームのための開口部128を有することができる。このように、超音波ビーム130は、開口128を介してハウジング116から出てくることができる。いくつかの実施形態では、イメージングコア110の可撓性ドライブシャフト132は、逆に巻かれたステンレス鋼線の2以上の層から構成される。可撓性ドライブシャフト132は、可撓性ドライブシャフト132の回転がハウジング116にも回転を与えるように、ハウジング116に溶接され又は他の方法で固定される。図示した実施形態では、任意のシールド136を有する電気ケーブル134がSCC301に電力を供給する。電気ケーブル134は、可撓性ドライブシャフト132の内腔を通ってイメージングコア110の近位端まで延在し、そこで、このものは回転インターフェース114(
図2参照)の電気コネクタ部に終端される。SCC301は、成形バッキング148に取り付けられる。成形バッキング148は、エポキシなどの重合体材料から形成でき、かつ、ハウジング116内を伝播する音響反響を吸収するための音響バッキング材料として機能できる。成形バッキング148は、いくつかの例では電極151及び152へのはんだ付けの箇所に電気ケーブル134のための機械強度を与える。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、成形バッキング148は、凹状上面で形成されるため、超音波トランスデューサ150が凹状上面に設置され、所定位置に付着した場合には、SCC301の可撓性により、超音波トランスデューサ150がバッキング148の湾曲に合致し、そして対応する湾曲形状を保持することが可能になる。超音波トランスデューサ150の凸形状は、超音波ビーム方向BDの軸に沿って湾曲部の中心を有することができる。
図4は、カテーテル102の長手方向軸に対して略垂直なビーム方向BDを示す。当業者であれば、ビーム方向とカテーテルの長手方向との角度が、カテーテルの所望の特徴に応じて、90°よりも小さい又は90°よりも大きい値を有することができることが分かるであろう。この点に関し、いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサ150は、超音波ビーム130がカテーテルの長手方向軸に対して斜めの角度で伝搬するように取り付けられる。超音波ビーム方向BDについてのこのような傾斜角は、カテーテルの窓124からの超音波の残響を低減させるため又は2013年5月10日に出願された「Device and System for Imaging and Blood Flow Velocity Measurement」というタイトルの米国特許出願第13/892108に記載されたドップラーColorFlo画像化を促進させるために有利な場合がある。この文献を、本明細書においてその全体について参照により援用する。
【0034】
ここで開示された実施形態に係る超音波トランスデューサ150によって採用される湾曲は、本明細書中にビーム130のための焦点を与える。いくつかの実施形態では、トランスデューサは、f:3の相対開口に相当する焦点長さ(湾曲部の半径)が約1.5mmで約500μmの直径とすることができる。このf:3相対開口は、IVUS画像化のための合理的な視野の深さを提供し、かつ、直径1mmを有する、典型的なカテーテル窓124の外側約1mmに超音波ビーム130の幾何学的焦点を配置する。球状集束トランスデューサについて、ボウル形湾曲の深さは、f:数の8倍で割ったトランスデューサ径として近似でき、又はここで与えた例示については約20μmである。
【0035】
いくつかの実施形態では、音響レンズを使用してビーム130に焦点を与えることができる。音響レンズを製造するために、いくつかの実施形態は、シリコーン又は周囲の媒体(生理食塩水)の音響速度に対して低い音響速度を示す他の重合体を使用することができる。音響レンズを形成するのに適したシリコーン材料は、約1.5mm/μ秒の生理食塩水又は血液中での音響速度と比較して、1.0mm/μ秒の範囲内の音響速度で利用可能である。低速シリコーン材料から形成され、かつ、約60μmの中心厚さを有する球状に湾曲した音響レンズは、20μmの深さのボウル状湾曲部を有する上記湾曲トランスデューサと同様のf:3集束力を与える。球状に湾曲したレンズは、円形トランスデューサの表面に制御量の液体を塗布し、そして表面張力により液体を球状に引き寄せてから液体を硬化させて固体/ゴム状レンズを形成させることにより形成できる。あるいは、シリコーン材料を所望の形状に成形することにより球面レンズを形成することができる。湾曲トランスデューサアプローチに対するレンズ系焦点の潜在的な欠点の一つは、レンズが、画質を劣化させる場合のある反射、残響、減衰及び他のアーチファクトを生じさせる可能性があることである。
【0036】
図5Aは、いくつかの実施形態に係る電気リード134−1及び134−2を備えるトランスデューサハウジングの部分断面図を示す。
図5Aは、
図4を線A−A’に沿って切り取り図を得ることにより得られる。電気リード線134−1及び134−2をまとめてリード134ということがある(
図4参照)。リード134は、ボンディングパッド506(リード134−1)及びボンディングパッド507(リード134−2)に連結できる。ボンディングパッド506及び507は、超音波トランスデューサ150内において電極151及び152のいずれかとの電気的接触を有することができる。いくつかの例では、電気リード134−1及び134−2は、電極151及び152を介してSCC301に接続された電気励起信号の逆極性を与える。いくつかの実施形態では、リード134−1は背面電極151に接続され、リード134−2は前面電極152に接続される。さらに、いくつかの実施形態によれば、リード134−1及び134−2は、互いに電気的に隔離された背面電極151の別個の部分に接続される。このような構成では、前面電極152は、任意の外部電位に対する直接の電気的接続を持たない浮遊電極であり、この場合には、背面電極151の隔離された部分にリード134−1、134−2によって供給される電圧間に中間電位を担うことができる。浮遊電極152を有する実施形態は、ハウジング116内部で使用される電気的接続を単純化することができる。
【0037】
図5Bは、いくつかの実施形態に係る超音波トランスデューサ150を含めたトランスデューサハウジング116の部分断面図を示す。
図5Bは、
図4を線B−B’に沿って切り取り図を得ることにより得られる。
図5Bは、超音波ビーム130を血管組織に及びそれから伝搬させるために超音波トランスデューサ150の上に形成されたハウジング116内の開口部128を示す。また、
図5Bは窓124も示すが、これは、超音波ビーム130に対して透明である(
図2参照)。
【0038】
図6A、6B及び6Cは、本明細書に開示される実施形態に係る、それぞれ単結晶複合体601A、601B及び601Cの部分平面図を示す。一般性を失うことなく、
図6A、6B及び
図6CにおけるSCC601A、SCC601B及びSCC601Cは、
図1〜5Bに示されたデカルト座標軸と一致する平面XYに示されている。当業者であれば、SCC601A、601B及び601Cのいずれかから製造された超音波トランスデューサは、3次元空間において任意の配向を有することができることが分かるであろう。特に、上述したように、SCC601A、SCC601B及びSCC601Cから形成された超音波トランスデューサは、
図4に示すように、対称軸BDを有する皿形状を形成する3次元湾曲を有することができる。SCC601A、SCC601B及びSCC601C(まとめてSCC601という)は、それぞれピラー620A、620B及び620C(まとめてピラー620という)を備える。SCC601におけるピラー620は、重合体マトリックス630に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、重合体マトリックス630は、上記
図3を参照して詳細に説明された重合体マトリックス330と同じであってよい。また、
図6A、
図6B及び
図6Cには、XY平面にある切欠経路650が示されている。切欠経路650は、重合体マトリックス630を含むSCC601の部分にレーザビームにより形成できる。この点に関して、ピラー620のマトリックスは、特に、重合体マトリックス630と比較してレーザーで切除することが困難になる可能性があるピラー620による閉塞のない切欠経路650を残すように設計できる。
【0039】
図6Aに示すように、SCC601Aは、XY平面内に円形断面を有するピラー620Aを備える。
図6Bに示すように、SCC601Bは、XY平面内に正方形の断面を有するピラー620Bを備える。
図6Cに示すように、SCC601Cは、XY平面内にパズルピース断面を有するピラー620Cを備える。当業者であれば、XY平面におけるSCC601のピラーの特定の形状は限定されないことが分かるであろう。いくつかの実施形態は、ドッグボーン形、擬似ランダム形状又は六角形形状のXY平面における断面を有するピラーを備えることができる。
【0040】
SCC601A、601B、601C又は類似の非伝統的な形状などの実施形態は、XY平面内での充填効率の改善、重合体マトリックス630に対する密着性の向上、より高い柔軟性及び望ましくない横モードの良好な抑制(XY面において)を与える。さらに、SCC601は、ウェハ薄化プロセス中に機械的完全性の改善を与える。また、切欠経路650を有する完成トランスデューサをパターニングするとことも価値のある利点である。いくつかの実施形態では、切欠経路650は、円形又は楕円形トランスデューサ形状を形成することができる。円形又は楕円形を有する超音波トランスデューサは、長方形又は正方形を有する切欠経路と比較して、サイドローブレベルの点で優れた性能を発揮する。
【0041】
図6に示すピラー620の幾何学的形状は、パターン620A、620B又は620Cに限定されない。当業者であれば、多くの構成が可能であることが分かるであろう。いくつかの実施形態では、SCC601によって形成された開口部を、この開口部の端部付近(切欠経路650に近い)にあるピラー620の密度を変化させることによってアポダイズして、サイドローブのレベルをさらに低減することができる。いくつかの実施形態は、XY平面において基材の規則的、準規則的、又は非周期的テッセレーションを与えるように選択された断面を有するピラー620を含む。いくつかの実施形態では、オッド形状であるが、ただし均一なピラー620が使用される。
【0042】
図7Aは、本明細書で開示されるいくつかの実施形態に係る超音波トランスデューサ750の部分側面図を示す。分割背面電極トランスデューサ750の実施形態は、2つの等しい電極半部751−1及び751−2に分割された背面電極を含む。いくつかの実施形態では、電極半部751−1及び751−2はD字形状を有し、その際、トランスデューサは、円形又は楕円形の輪郭を有する。電極半部751−1及び751−2は、互いに電気的に隔離されていると共に、前面電極は、場合によってはトランスデューサの前面全体にわたって連続的である。超音波トランスデューサ750において、電気ケーブル734−1及び734−2への電極の接続は、背面側から設けられる。このように、超音波トランスデューサ750における背面電極は、ケーブル734−1に電気的に接続された背面部751−1及びケーブル734−2に電気的に接続された背面部751−2を備える。いくつかの実施形態によれば、前面電極752は、接地などの外部電圧源に直接接触しておらず電気的に浮遊することができるが、トランスデューサ基材による容量結合により、前面電極は、背面電極半部751−1及び751−2上に存在する2つの電位間において中間電位を担う傾向がある。超音波トランスデューサ750は、上で詳細に説明したようにSCC301及びSCC601に類似する重合体中に埋め込まれた単結晶ピラーを備えることができるSCC701を備えることができる(
図1、
図6A、6B及び
図6C参照)。
【0043】
図7Aのように分割背面電極構成を有する超音波トランスデューサ750のいくつかの実施形態は、反対方向に分極しているがZ軸には平行な2個の半部701−1及び701−2を有するSCC701を備える。例えば、電極751−1に接続した第1半部SCC701−1は、Z軸に平行な第1方向761に分極でき、電極751−2に接続された第2半部SCC701−2は、第1方向とは反対であるがZ軸には平行な第2方向762に分極できる。SCCは、複合材料を含む圧電結晶材料と重合体マトリックスとの著しく異なる電気特性により生じる複合材料の異方性の電気特性のため、有意なアーチファクトなしに分割偏光を支持することができる。いくつかの実施形態によれば、ケーブル734−1は、電極751−1を第1信号に接続することができるのに対し、ケーブル734−2は、電極751−2を該第1信号と比較して同じ大きさであるが異なる極性の第2信号に接続することができる。2個の背面電極が同じ大きさであるがただし反対の極性信号で励起される場合には、前面電極は、2つの信号間で中間電位を保持する傾向があるが、これは中立又は仮想接地電位であり、2つのトランスデューサ半部701−1及び701−2は、同じ及び反対の電気励起を受ける。反対方向分極化と組み合わされた、2個のトランスデューサ半部701−1及び701−2の逆極性電気的励起により、両方のトランスデューサ701−1及び701−2は、互いに位相で伸縮して、トランスデューサ表面全体にわたって超音波励起の同じ極性を与える。したがって、いくつかの実施形態では、トランスデューサ半部701−1及び701−2は、互いに位相で振動し、全開口超音波ビームを与えるが、必要とされるトランスデューサ750の前面への外部電気的接続を要しない。
【0044】
本明細書に開示される単結晶複合材料は、分割背面電極構成に特に適している。エポキシ充填材の誘電率(比誘電率についての典型的な値は5である)と比較したPMN−PTピラーの高い誘電率(比誘電率についての典型的な値は3000である)のため、電場は、この高誘電体ピラーに大きな制約を受け、かつ、Z方向にそれ自体が整列させられる。したがって、分割電極751−1と751−2との間及びトランスデューサ半部701−1と701−2との間の境界にあるフリンジフィールドが最小化されるため、この構成に関連する非効率性はほとんど存在しない。この同じメカニズムは、分割電極751−1と751−2との間及びトランスデューサ半部701−1と701−2との間の境界付近における最小のフリンジフィールドで分極化動作の間に電界を拘束して、主としてZ方向に整列したままにし、それによって分極化がトランスデューサの2個の半部間の境界付近でZ軸に対して平行な明確に定義された配向を維持することを確保する。
【0045】
分割電極を備える超音波トランスデューサ750を使用するいくつかの実施形態は、低い容量(高いインピーダンス)の装置をもたらすことができる。実際には、電極751−1と752との間及び電極751−2と752との間で形成された2個のコンデンサのそれぞれは、同じSCC701基材の適用された従来の前面/背面電極構成の面積の半分及び静電容量の半分を有する。さらに、分割電極構成では、電極751−1と752との間及び電極751−2と752との間で形成された2個のコンデンサは直列に接続され、それによって、単一の背面電極を有する従来の構成と比較してSCC701の正味静電容量が2の別の因子によって減少する。したがって、分割背面電極を有するSCC701の実施形態は、従来の電極構造と比較して同一の超音波出力を達成するために2倍の励起電圧及び半分の励磁電流を必要として4倍低い容量及び4倍高いインピーダンスを有することができる。
図7Aに示す分割電極構成と一致する実施形態は、望ましい製造機能を提供する。というのは、前面電極752は浮遊しており、外部電圧源又は地面への直接接続を必要としないからである。これは、超音波トランスデューサ750及び先端ハウジング116の構成及び製造を簡素化する。というのは、トランスデューサ750への電気的接続の全ては、トランスデューサ750が成形バッキング148に配置されかつ接着されたときにハウジングアセンブリに一体化された機能を介して行うことができるからである。
【0046】
また、分割背面電極トランスデューサ750は、整合層310を含む実施形態においても望ましい。分割背面電極を使用すると、整合層310を、トランスデューサ750のウェハレベル製造で形成させることが可能になる。例えば、層310などのインピーダンス整合層(
図3参照)は、前面電極752へのリード取り付けのためのアクセスを与えるために整合層を中断する必要なしに、前面電極752の頂部に連続層として形成できる。したがって、いくつかの実施形態に係る製造方法は、前面電極接触用の整合層310において孔を開けることを回避することができる。
【0047】
図7Bは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に係る超音波トランスデューサ750で使用するための成形バッキングアセンブリの部分平面図を示す。いくつかの構成では、成形バッキング748に一体化された中間導電性部材を設けるのではなく、リード134−1及び134−2を電極751−1及び751−2に直接取り付ける必要性を回避して、リード134−1及び134−2を電極751−1及び751−2に間接的に接続することが好ましい。
図7Bは、超音波トランスデューサ750が最終的に配置されかつ接着されることになる凹状のくぼみにある成形バッキング748上に形成された導電性接合接点754−1及び754−2を示す。接合接点754−1及び754−2は、導電性経路766−1及び766−2によってそれぞれ成形バッキング748上にも形成されたリード取付パッド764−1及び764−2に接続される。いくつかの実施形態では、接合接点754−1及び754−2は、超音波トランスデューサが成形バッキング748上に配置されかつ接着されたときに分割背面電極751−1及び751−2との電気的接触を容易にするために、金めっきダイヤモンドグリットを備えることができる。リード取付パッド764−1及び764−2は、ケーブル134−1及び134−2(
図5A参照)などの電気ケーブル用の終端点となる。リード取付パッド764−1及び764−2、導電経路766−1及び766−2及び接合接点754−1及び754−2は、金又は銀などの任意の導電性材料から形成できる。当業者であれば、ボンドパッド761−1及び761−2を形成する特定の材料は制限されず、任意の導電性材料又は合金を制限なく使用することができることが分かるであろう。
【0048】
金めっきダイヤモンドグリットを使用する実施形態では、SCC701が押圧され、成形バッキング148上に接着される。このようにして、ダイヤモンドグリットにおける突出部がSCC701で形成されたシートの背面にある電極めっきに突出し、SCC701と成形バッキング748との間にある限定領域に適用することが困難な場合があるはんだ付け、溶接、導電性接着剤又は他の接続方法を必要とすることなく低抵抗電気的接続を与える。いくつかの実施形態は、分割電極751−1と751−2との間で短絡を生じさせることなくSCC701への確実な電気的接続を与えるために、異方性導電性接着剤を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、金又は銀めっき球体で満たされた絶縁性エポキシ様材料が異方性導電接着剤を与える。このような実施形態では、めっき球体の密度は、バルク材料が非導電性である程度に十分に低いが、この接着剤が2つの導電面間で圧縮されて薄膜になる場合には、このめっき球体は、導体間で押しつぶされ、狭い間隙を埋めて圧縮方向に沿って低抵抗接続を形成する。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、電極752、751−1及び751−2を備えるトランスデューサ750は、成形バッキング748に押圧され、そして所定の位置で接着され、それによって集束ビーム130(
図4参照)を提供するためにボウル形トランスデューサを形成する。
図7Cは、いくつかの実施形態に係るトランスデューサ750の上面及び底面図を示す。いくつかの実施形態では、トランスデューサ750は、整列タブ770を備え、該タブは、成形バッキング748内の整列ノッチ774と嵌合する。この整列機能は、所定の位置に押圧されかつ成形バッキング748に接着されるときにトランスデューサが適切に配向されることを確実にする。
【0050】
図8A−Fは、いくつかの実施形態に係る超音波トランスデューサ150を製造するのに適した単結晶複合基材の製造段階の部分図を示す。
図8Aは、単結晶材料のウェハ802から形成され、フォトリソグラフィ及びDRIE(又は他の適切なエッチング/材料除去プロセス)を使用してパターニングされてウェハ802の表面に溝825のパターンが形成された基材801Aを示し、該溝は、ウェハの一方の面上にピラーの配列を画定する。ウェハ802は、任意の圧電材料とすることができるが、単結晶圧電材料が、その優れた圧電特性及び広範囲のウェハ処理技術を使用してエッチングするためのその適合性のために好ましい。例えば、いくつかの実施形態は、ニオブ酸鉛マグネシウム−チタン酸鉛(PMN−PT)の単結晶を使用することができる。
【0051】
図8Bは、エッチングされたウェハ802の溝に重合体830を充填して基材801Bを形成することを示す。重合体830は、圧電材料のピラー820を支持し、そして最終的に単結晶複合材料の重合体マトリックス330を与えるのに役立つ。いくつかの実施形態では、溝のパターンを、DRIEを使用して圧電基材にエッチングして、典型的には1μmの分解能を有する垂直壁(Z方向)及び正確な断面形状(XY平面)を生成する。エッチング後、溝にエポキシ又はシリコーンなどの重合体830を充填し、過剰の重合体がピラー820を完全に覆って基材801Bを形成することができる。
【0052】
図8Cは、いくつかの実施形態に係る基材801Cの形成を示す。重合体830は、基材801Bの前面を完全に覆うことができる。いくつかの実施形態では、基材801Bは、ピラー820の頂部表面が基材801Cの表面に露出し、重合体830の堀によって互いに隔離されるような厚さに研磨、磨砕又はエッチングできる。好ましくは、基材801Cの表面は平坦であり、ピラー820及び重合体830の露出表面が互いに同一平面上にある。
【0053】
図8Dは、前面電極852を含めた基材801Dの形成を示す。基材801Dの形成は、堆積及び前部電極852の任意のパターニングを含むことができる。前面電極852の形成に加えて、基材801Dは、基材801Cを単結晶複合材料の所望の厚さにまで薄くすることによって完了する。この薄化操作は、基材801Cの背面を基材801Dの所望の厚さに到達するまで研削、研磨及び/又はエッチングすることによって達成される。好ましくは、基材801Dの背面は平坦であり、ピラー820及び重合体830の露出表面が互いに同一平面上にある。基材801Dがその最終的な厚さまで薄くされると、このものは、隔離されたピラー820を支持する柔軟な重合体830のマトリックスのため柔軟な材料となる。典型的には、電極は、基材801Dの柔軟性にはそれほど影響を与えないように非常に薄い(<1μm)。前面電極852は、蒸着、スパッタリング、電気めっき、印刷又は他の方法により導電性材料の基材801Dの頂部表面上に堆積させることによって形成される。
【0054】
図8Eは、基材801E上における背面電極851の形成を示す。背面電極851及び前面電極852は、上で詳細に説明した電極151及び152と同じものとすることができる(
図3参照)。背面電極851は、前面電極852と同様に堆積及び任意のパターニングにより形成できる(
図8D参照)。
【0055】
図8Fは、基材801Eの頂部上に音響インピーダンス整合層810を付着させることによって形成された単結晶複合材料801の完成基材を示す。音響整合層810は、血管組織の音響インピーダンスによく一致するようにSCC801のいくつかの実施形態に含まれる。したがって、音響整合層810は、SCC801を使用して超音波トランスデューサの効率をさらに改善し又はその周波数応答をさらに拡大することができる。
【0056】
当業者であれば、
図8A−Fに関連して概説した製造工程の順序を、完成品に実質的に影響を与えることなく、製造プロセスを最適化するために変更できることが分かるであろう。
【0057】
図8E又は
図8Fに示すようにSCC801の基材が完成すると、個々のトランスデューサ素子は、重合体マトリックスを部材の周囲の所望の輪郭に切断し又は除去して材料のシートから除去できる。いくつかの実施形態では、個々の構成要素を取り囲む重合体マトリックスを切断/除去することを、レーザーを使用して実行して材料を切断することができる。個々のトランスデューサ素子が単結晶複合材料のシートから除去されたら、このものを超音波トランスデューサ150としてトランスデューサハウジング116の内側にある成形バッキング148に装着することができる。
【0058】
図8A−Fに示した製造方法の実施形態によれば、超音波トランスデューサの寸法は、ウェハレベルで規定できる。したがって、完成した超音波トランスデューサの寸法は、基材801A(例えば、フォトリソグラフィ工程)及び基材801B(例えば、DRIE工程)の形成中に決定できる。DRIEの柔軟性は、障害物のないレーザアブレーション輪郭、要素の端部付近における可変ピラー密度等の特定の機能を備えた個々のトランスデューサ素子を画定するように、任意の断面形状のピラー820を形成し、そしてピラーを任意の所望の形状に配置することを可能にする。さらに、電極851及び852は、下にあるピラーパターンに整合させてパターン化でき、それによって、個々のトランスデューサ素子は、トランスデューサ輪郭のレーザーアブレーション(又は他の方法)によって基材から除去されたときに、所望の電極パターンを備える(おそらく、分割電極パターンを備える)ことになる。
【0059】
超音波トランスデューサのレイアウト及びパターン設計に自由度を持たせることにより、ここで開示するSCC層の製造方法は、トランスデューサへの単純な電気的接続を使用して集束超音波ビームを与える。
【0060】
図9は、本明細書に開示された実施形態に係る超音波トランスデューサを形成する方法900のフローチャートを示す。方法900を、
図8A−Fに示したステップ及び構造に関連して以下に説明する。
図8A−Fのステップ及び構造に対する参照は、例示の目的のみで使用され、
図9に表された一般概念と一致する方法900の実施形態を限定するものではない。当業者であれば、以下に説明する全体的な技術思想を維持しつつ、ステップの順序の変更を含めて方法900に対する自明な変形例を与えることができることが分かるであろう。
【0061】
ステップ910は、基材801A(
図8A参照)のように、フォトリソグラフィ法により形成されたパターンに従って単結晶をエッチングすることを含む。いくつかの実施形態では、ステップ910はDRIE手順を含む。ステップ920は、エッチングされた単結晶上に重合体層を配置して基材801B(
図8B参照)などの基材を形成することを含む。いくつかの実施形態では、ステップ920は、エッチングステップ910により得られるピラーパターンに、エポキシ樹脂であることができる重合体を充填することを含む。ステップ930は、重合体層を、基材801C(
図8C参照)のように所定の厚さに成形することを含む。ステップ930は、ウェハの表面を包み、過剰のエポキシを除去し、平坦面を創り出し、そしてピラーを露出させることを含む。ステップ940において、電極852をSCCの前面に配置する。
【0062】
ステップ950は、基材801D(
図8D参照)のように、SCC層を所定の厚さに成形することを含む。いくつかの実施形態では、ステップ950は、ウェハから複合構造を分離させるために基材801Dを含むウェハの背面部分を研削及び研磨することを含む。ステップ960は、背面電極851を配置して、基材801E(
図8E参照)などの基材を形成させることを含む。いくつかの実施形態によれば、ステップ960は、電極を付着させるためにステップ940と同様の手順を含むことができる。いくつかの実施形態では、基材801Eは、単一の基材上に複数のトランスデューサ素子を形成させるように構成されたピラー構造及び電極を組み込むように形成される。
【0063】
ステップ970は、一方の電極上にインピーダンス整合層810を配置することを含む。ステップ970は、整合層を所望の厚さに研削することを含むことができる。音響整合層は、エポキシ(又は他の重合体)、粒子充填エポキシ複合材料、グラファイト又は媒体(生理食塩水)及び単結晶複合材料の音響インピーダンスに基づいて既知の方法に従って選択される中程度の音響インピーダンスの他の材料から構成できる。インピーダンス整合層810は、いくつかの実施形態では、複数の層から構成できる。単一の整合層又は多層整合構造の単一層についての公称厚さは、トランスデューサの中心周波数を基準にして整合層材料において1/4波長である。例えば、粒子充填エポキシ複合材料は、5.0MRaylの音響インピーダンス及び1.8mm/μ秒の音響速度を示すように製造でき、また、IVUS画像化に典型的な40MHz中心周波数についての対応する四分の一波長整合層の厚さは11μmであろう。整合層の厚さ及び音響インピーダンスをそれらの公称値から変更して、周波数応答、帯域幅などのトランスデューサ性能の特定の態様を最適化することができる。
【0064】
ステップ980は、基材801E又は801Fからそれぞれのトランスデューサを切断することを含むことができる。切断工程を、レーザーを使用して実行して、単一のトランスデューサを画定するピラー820の隔離された群を取り囲むエポキシ充填材830を除去することができる。したがって、トランスデューサ構造体は、ピラー820中における圧電材料又は電極851及び852に損傷を与えることなくレーザー切断プロセスによって基材から分離できる。
【0065】
ステップ990は、このようにして成形バッキング148又は748などの成形バッキング上に形成されたそれぞれのトランスデューサを配置することを含む。個々のトランスデューサが基材801E又は801Eから分離されたら、このものを、回転IVUSカテーテルにおいて可撓性ドライブシャフトの先端になるマイクロ成型ハウジングに圧入することができる。この成形ハウジングは、所望の開口部のたわみを形成するために皿状くぼみを含むことができる。いくつかの実施形態では、前面及び背面電極が所定の位置に配置されると(ステップ940及び960)ステップ980を実行する。また、この態様では、成形バッキング748は、ドライブシャフト(例えば、シールドツイストペア)内部の電気リード線とトランスデューサの分割背面電極とのギャップを埋めるための導電素子を備えることもできる。このような導電素子は、接合接点754−1及び754−2(
図7B参照)を参照して上で詳細に説明されている。いくつかの実施形態では、製造プロセスは、成形バッキング上にトランスデューサを形成するための「Cast−In−Can」法を含むことができる。いくつかの実施形態では、トランスデューサをマイクロ成形先端サブアセンブリに圧入する。いくつかの実施形態では、トランスデューサは、音響ビーム130がカテーテルの長手方向の軸に対して略垂直な平面(
図2のXY平面)に形成されるように成形先端部に配置される。いくつかの実施形態によれば、トランスデューサは、音響ビーム130がカテーテルの長手方向軸(Z軸)に対して斜めの角度で延在するように成形先端部に配置される。
【0066】
上記本発明の実施形態は単なる例示である。当業者であれば、具体的に開示されたものから様々な別の実施形態を認識することができる。これらの別の実施形態も本発明の範囲内にあるものとする。したがって、請求の範囲は広くかつ本開示と一致する態様で解釈すべきことが適当である。