(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機発光トランジスタ(OLET)、有機太陽電池(OSC)、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(OFQD)、発光電子化学電池(OLEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)から選ばれる請求項1〜8何れか1項記載の電子素子。
【技術分野】
【0001】
本出願は、アノード、カソードと、エミッター化合物および少なくとも二種の異なるマトリックス材料とを含む少なくとも一つの発光層を含む電子素子に関する。
【0002】
本出願の意味での電子素子は、機能性材料として有機半導体材料を含むいわゆる有機電子素子の意味で使用される。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)と以下に示される他の電子素子の意味で使用される。
【0003】
有機半導体材料が機能性材料として用いられるOLEDの正確な構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。一般的に、用語OLEDは、少なくとも一つの有機材料を含み、電圧の印加により発光する電子素子の意味で使用される。
【0004】
電子素子、特に、OLEDの場合、特性データ、特に、寿命と効率を改善することに多大な関心がある。完全に満足できる解決は、これらの面で、特に、青色発光OLEDの場合には、未だ見出されていない。
【0005】
これらの面でさらなる前進を達成するために、特別な関心が、発光層の組成にむけられている。
【0006】
先行技術は、OLEDの効率が、発光層での一を超える単一の化合物の使用により増加することが可能であることが開示されている。この技術的解決の場合には、エミッター化合物は、マトリックス化合物として機能する第2の化合物と組み合わせて発光層で用いられる。ここで、マトリックス化合物は、層中で支配的な割合で存在する。このような態様は、蛍光発光層に対して、特に、US4769292、US5908581、US5593788およびUS5141671に記載されてきた。
【0007】
さらに、OLEDの発光層に3種の異なる化合物を用いることも幾つかの刊行物に記載されている。これらの3種の異なる化合物は、典型的には、エミッター化合物、第1のマトリックス化合物および第2のマトリックス化合物である。
【0008】
ここで、エミッター化合物は、電子素子の駆動中に発光する化合物の意味で使用される。
【0009】
複数の化合物の混合物が発光層中に存在すると、発光化合物は、典型的には、より少ない量で、すなわち、発光層も混合物中に存在するその他の化合物より少ない量で存在する化合物である。この場合、エミッター化合物は、また、ドーパントとも称される。
【0010】
この場合にマトリックス化合物は、エミッター化合物より多い割合で混合物中に存在する化合物の意味で使用される。マトリックス化合物は、好ましくは、発光しない。複数の異なるマトリックス化合物が、発光層の混合物中に存在するとしても、それらの個々の割合は、典型的にはエミッター化合物の割合より多いか、または、複数の異なるエミッター化合物が発光層の混合物中に存在すると、それらの個々のエミッター化合物の割合より多い。用語マトリックス化合物に代えて、用語ホスト化合物も、同義語として使用される。
【0011】
先行技術において、EP1227527は、2種の化合物トリス-(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(AlQ
3)とN,N'-ジ-1-ナフチル-N,N'-ジフェニル-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(NPB)をホスト材料として、また、エミッター化合物としてルブレンを含むOLEDを開示している。
【0012】
さらに、US7504163は、ホスト材料としてアントラセン誘導体(2-tert-ブチル-9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン)、エミッター化合物としてペリレン誘導体およびさらなる成分としてNPBとを含むOLEDを開示している。発光層のさらなる成分としてNPBを含まないOLEDと比べて、増加した効率および/または寿命がそこで、達成された。
【0013】
しかしながら、高い効率と長い寿命を有するOLEDに、特に、これらの特性を有する青色蛍光発光OLEDに引き続き関心が存在する。
【0014】
驚くべきことに、少なくとも2種のホスト材料を含む上記言及した発光層中で互いに縮合する2〜4個の芳香族環から成る少なくとも一つの縮合アリール基を含む化合物から選ばれるエミッター化合物の使用が、著しく改善された性能データを達成することを可能とすることが、今回、見出された。素子の改善された効率と改善された寿命が、好ましくは、達成される。
【0015】
HOMO(M1)>HOMO(E)>HOMO(M2)
にしたがう、発光層マトリックス材料M1、エミッター化合物E1とマトリックス材料M2の成分のHOMOの相対配置に基づいて、電子素子の寿命が著しく改善されるという予期し得ない効果が達成される。素子の効率と駆動電圧は、好ましくは、さらに、改善される。
【0016】
したがって、本出願は、アノード、カソードおよび少なくとも一つの発光層を含む電子素子であって、
ここで、発光層は、少なくとも一つのエミッター化合物E、少なくとも一つのマトリックス材料M1と少なくとも一つのマトリックス材料M2とを含み、ここで、エミッター化合物Eは、互いに縮合する2〜4個の芳香族環より成る少なくとも一つの縮合アリール基もしくはヘテロアリール基を含む化合物から選ばれ、
ここで、マトリックス材料M2は、少なくとも一つのアントラセン単位を含む化合物から選ばれ、
および、ここで、化合物E、M1およびM2のHOMOには、以下が適用される:
HOMO(M1)>HOMO(E)>HOMO(M2)。
【0017】
ここで、HOMOは、一般的慣習として、最高被占分子軌道、特に、この軌道のエネルギー位置である。本出願にしたがって、HOMO値は、実施例で詳細に示されるとおりに、量子化学的測定により決定され、eV(電子ボルト)で示される。一つのHOMO値がその他のものより大であるという表現(たとえば、HOMO(M1)>HOMO(E))は、対応するHOMO値が、より大きい数であるという意味で使用される。たとえば、状態HOMO(M1)>HOMO(E)は、HOMO(M1)=−5.2eVでHOMO(E)=−5.3eVを満足する。
【0018】
エミッター化合物が、互いに縮合する2〜4個の芳香族環より成る少なくとも一つの縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含む化合物から選ばれるという定義は、縮合アリールもしくはヘテロアリール基が、正確に2個、正確に3個もしくは正確に4個の互いに縮合した芳香族または複素環式芳香族環構造を含まなければならないという意味で使用される。互いに縮合した芳香族または複素環式芳香族環構造は、少なくとも一つの芳香族結合、すなわち、互いに縮合した少なくとも2個の芳香族環原子を共有する芳香族または複素環式芳香族環構造である。それらは、2個を超える芳香族結合を互いに共有してもよい。縮合アリールもしくはヘテロアリール基は、好ましくは、10〜18個の芳香族環原子、特に、好ましくは、正確に10個、正確に14個、正確に16個もしくは正確に18個の芳香族環原子を有する。好ましくは、縮合アリール基であり、縮合ヘテロアリール基ではない。縮合アリールもしくはヘテロアリール基は、任意の所望の置換基を担持してよい。ここで、基の置換基は、環を形成してもよい。これらの環は、縮合アリールもしくはヘテロアリール基に縮合してもよい。しかしながら、互いに縮合した縮合アリール基の芳香族または複素環式芳香族環の数は、上記説明したとおり、上記定義のとおり、正確に2個、正確に3個もしくは正確に4個であることから、定義により、これらの縮合環は、芳香族または複素環式芳香族環構造であることはできない。
【0019】
本出願にしたがう化学基の定義は、以下のとおりである。
【0020】
本発明の意味での、アリール基は、6〜60個の芳香族環原子を含み;本発明の意味でのヘテロアリール基は、5〜60個の芳香族環原子を含み、そのうちの少なくとも1つは、ヘテロ原子である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、OおよびSから選ばれる。これが、基本的な定義である。他の選好が、たとえば、存在する芳香族環原子もしくはヘテロ原子の数に関して本発明の説明において示されるならば、これらが適用される。それは、上記定義のとおり、縮合アリールもしくはヘテロアリール基にも言及される。
【0021】
ここで、アリール基もしくはヘテロアリール基は、簡単な芳香族環すなわちベンゼン、または、簡単な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジンもしくはチオフェン等、または、縮合(縮合環化)芳香族もしくは複素環式芳香族ポリ環状基、たとえば、ナフタレン、フェナントレン、キノリンもしくはカルバゾールの何れかの意味で使用される。本発明の意味での縮合(縮合環化)芳香族もしくは複素環式芳香族ポリ環状基は、互いに縮合した二以上の単純芳香族もしくは複素環式芳香族環から成る。
【0022】
アリールもしくはヘテロアリール基は、各場合に、上記言及した基により置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して、芳香族または複素環式芳香族系に連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンズアントラセン、ベンズフェナントレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナンスロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基の意味で使用される。
【0023】
本発明の定義にしたがうアリールオキシ基は、酸素を介して結合する上記記載のとおりのアリール基の意味で使用される。同様の定義が、ヘテロアリール基にあてはまる。
【0024】
本発明の意味での芳香族環構造は、環構造中に6〜60個のC原子を含む。本発明の意味での複素環式芳香族環構造は、5〜60個の芳香族環原子を含み、そのうちの少なくとも1個はヘテロ原子である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリールもしくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、加えて、複数のアリールもしくはヘテロアリール基は、たとえば、sp
3混成のC、Si、NあるいはO原子、sp
2混成のCあるいはN原子もしくはsp混成のC原子のような非芳香族単位(好ましくは、H以外の原子は、好ましくは、10%より少ない)により連結されていてもよい構造の意味で使用される。このように、たとえば9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等のような構造も、二個以上のアリール基が、たとえば、直鎖あるいは環状アルキル、アルケニルもしくはアルキニル基により、もしくはシリル基により連結される構造であるから、本発明の意味での芳香族環構造の意味で使用される。さらに、たとえば、ビフェニル、テルフェニルもしくはジフェニルトリアジン等の二個以上のアリールもしくはヘテロアリール基が、単結合を介して互いに結合する構造も、本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の意味で使用される。
【0025】
5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族または複素環式芳香族環構造は、各場合に、上記した基により置換されていてもよく、任意の所望の位置で、芳香族または複素環式芳香族系に連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンズフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、クアテルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールまたはこれらの基の組み合わせから誘導される基の意味で使用される。
【0026】
本発明の目的のために、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル基または3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基または2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基は、ここで、加えて、個々のH原子もしくはCH
2基は、基の定義の元で上記言及した基により置換されていてよく、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ネオヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルまたはオクチニルの意味で使用される。1〜40個のC原子を有するアルコキシもしくはチオアルキル基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチチオル、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオル、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオまたはオクチニルチオの意味で使用される。
【0027】
二個以上の基が、互いに環を形成してもよいという表現は、本出願の目的のために、特に、二個の基が化学結合により互いに結合することの意味で使用される。これは、以下のスキームにより図解される。
【化1】
【0028】
しかしながら、さらに、上記言及した表現は、二個の基の一つが水素である場合には、第二の基は、水素原子が結合した位置で結合して環を形成することの意味で使用される。これは、以下のスキームにより図解される。
【化2】
【0029】
本発明の好ましい1態様によれば、エミッター化合物Eは、有機低分子である。それは、好ましくは、ポリマー、デンドリマーまたはオリゴマーではない。それは、好ましくは、200〜2000g/mol、特に、好ましくは、250〜1500g/mol、非常に、特に、好ましくは、300〜1000g/molの分子量を有する。
【0030】
エミッター化合物Eは、好ましくは、互いに縮合する4個を超える芳香族環を有する縮合アルキルもしくはヘテロアリール基を含まない。
【0031】
エミッター化合物Eは、さらに好ましくは、アリールアミノ基を含まない。特に、好ましくは、アミノ基を含まない。本出願の意味で、アリールアミノ基は、少なくとも一つのアリール基もしくはヘテロアリール基が3価の窒素原子に結合する基の意味で使用される。基がさらに構築される方法またはさらなるどの基を含むかは、定義には重要ではない。
【0032】
エミッター化合物Eは、さらに好ましくは、ピレニル基、アントラセニル基、フルオレニル基およびインデノフルオレニル基から選ばれる少なくとも一つの基を含む。ここで、フルオレニル基は、好ましくは、1、2もしくは3個の縮合ベンゼン環を含み、その結果、ベンゾフルオレニル基を形成する。ここで、ベンゼン環は、好ましくは、フルオレニル基のベンゼン環に縮合する。ここで、インデノフルオレニル基は、さらに好ましくは、1、2もしくは3個の縮合ベンゼン環を含み、その結果、ベンゾインデノフルオレニル基を形成する。ここで、ベンゼン環は、好ましくは、インデノフルオレン基のベンゼン環に縮合する。
【0033】
特に、好ましい、エミッター化合物Eは、WO 2006/108497に開示されたインデノフルオレンアミンから、WO2007/065678に開示されたアントラセン誘導体から、WO 2007/140847に開示されたジベンゾインデノフルオレンから、WO2008/006449に開示されたモノベンゾインデノフルオレンから、WO2009/127307に開示されたジインデノアントラセンから、WO2010/012328に開示された大縮合アリール基を含むベンゾインデノフルオレンから、WO2010/049050に開示された多架橋縮合芳香族化合物から、未公開出願EP12006239.3に開示されたベンゾインデノフルオレンアミンから、WO2010/012328に開示された大縮合アリール基を含むベンゾインデノフルオレンから選ばれる。
【0034】
エミッター化合物Eは、好ましくは、以下の式(I)の化合物であり;
【化3】
【0035】
ここで、
Ar
1は、互いに縮合する2〜4個の芳香族環より成る少なくとも一つの縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含む10〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、ここで、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、1以上の基R
1により置換されてよく;
Ar
2は、1以上の基R
1により置換されてよい6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
R
1は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R
2、CN、Si(R
2)
3、N(R
2)
3、P(=O)(R
2)
2、S(=O)R
2、S(=O)
2R
2、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(上記言及した基は、夫々1以上の基R
2により置換されてよく、上記言及した基中の1以上のCH
2基は、-R
2C=CR
2-、-C≡C-、Si(R
2)
2、C=O、C=S、C=NR
2、-C(=O)O-、-C(=O)NR
2-、NR
2、P(=O)(R
2)、-O-、-S-、SOもしくはSO
2で置き代えられてよく、および上記言及した基中の一以上のH原子は、D、FもしくはCNで置き代えられてよい。)または、各場合に1以上の基
2により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造または、1以上の基R
2により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であり;ここで、2個以上の基R
1は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;
R
2は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基であって、さらに、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の置換基R
2は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;および
oは、0、1、2、3または4である。
【0036】
式(I)において、oは、好ましくは、0、1または2、特に、好ましくは、0または1、非常に、特に、好ましくは、1である。
【0037】
さらに好ましくは、式(I)において、Ar
1は、以下の基から選ばれ:
【化4】
【0038】
式中、基は、全ての遊離位置で1以上の基R
1により置換されてよく、および
ここで、式Ar
1−3とAr
1−4の基は、6員環の一つに縮合する少なくとも一つの追加的縮合芳香族環を含まねばならない。
【0039】
式Ar
1−3とAr
1−4の基は、好ましくは、単一の6員環もしくは複数の異なる6員環に縮合することができる2または3個の追加的縮合芳香族環を含む。縮合芳香族環は、好ましくは、6員環である。
【0040】
上記言及した基Ar
1−1〜Ar
1−7の一つからのAr
1の選択と組み合わせて、式(I)において、oは、好ましくは、0である。
【0041】
特に、好ましくは、式(I)の化合物は、式(I−1)〜(I−31)から選ばれ、ここで、芳香族構造は、1以上の基R
1によりそれぞれ置換されてよい。
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【化5-5】
【0042】
本発明の好ましい1態様によれば、エミッター化合物Eは、蛍光化合物である。
【0043】
本出願の目的のために、蛍光は、励起一重項状態からの遷移による発光の意味で使用される。
【0044】
エミッター化合物EのHOMOは、−7.9eV〜−3.9eV、好ましくは、−6.4eV〜−4.1eV、非常に、特に、好ましくは、−6.1eV〜−5.1eVである。
【0045】
本発明の好ましい1態様によれば、マトリックス材料M1は、有機低分子である。それは、好ましくは、ポリマー、デンドリマーまたはオリゴマーではない。それは、好ましくは、200〜2000g/mol、特に、好ましくは、250〜1500g/mol、非常に、特に、好ましくは、300〜1000g/molの分子量を有する。
【0046】
マトリックス材料M1は、好ましくは、トリアリールアミノ化合物から選ばれる。本出願にしたがうトリアリールアミノ化合物は、3個のアリールもしくはヘテロアリール基が共通の窒素原子に結合する化合物の意味で使用される。共通の窒素原子に結合するアリールもしくはヘテロアリール基は、2価基または単結合により互いに結合してよい。それらは、好ましくは、互いに結合されない。トリアリールアミノ化合物は、前記構造単位に加えて、任意のさらなる基と置換基を含んでよい。
【0047】
マトリックス材料M1は、特に、好ましくは、モノトリアリールアミノ化合物から選ばれる。モノトリアリールアミノ化合物は、上記定義のとおり、正確に1個のトリアリールアミノ基を含む化合物の意味で使用される。それらは、さらなるトリアリールアミノ基を含まない。それらは、好ましくは、さらなるアミノ基を含まない。
【0048】
マトリックス材料M1は、特に、好ましくは、以下の式(II)の化合物から選ばれ;
【化6】
【0049】
ここで、
Ar
3は、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基R
3により置換されてよい5〜50個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
R
3は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R
4、CN、Si(R
4)
3、P(=O)(R
4)
2、S(=O)R
4、S(=O)
2R
4、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(上記言及した基は、夫々1以上の基R
4により置換されてよく、上記言及した基中の1以上のCH
2基は、-R
4C=CR
4-、-C≡C-、Si(R
4)
2、C=O、C=S、C=NR
4、-C(=O)O-、-C(=O)NR
4-、P(=O)(R
4)、-O-、-S-、SOもしくはSO
2で置き代えられてよく、および上記言及した基中の一以上のH原子は、D、FもしくはCNで置き代えられてよい。)または、各場合に1以上の基
4により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造または、1以上の基R
4により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であり;ここで、2個以上の基R
3は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;
R
4は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基であって、さらに、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の置換基R
4は、たがいに結合してよく、および環を形成してよい。
【0050】
Ar
3は、好ましくは、1以上の基R
3により置換されてよい6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。Ar
3は、特に、好ましくは、フルオレン、インデノフルオレン、スピロビフルオレン、フェニル、ビフェニル、テルフェニルもしくはナフチルを含み、1基R
3により置換されるか、非置換である。
【0051】
Ar
3は、さらに好ましくは、14個を超える芳香族環原子を有する縮合アリール基を含まず、Ar
3は、特に、好ましくは、10個を超える芳香族環原子を有する縮合アリール基を含まない。
【0052】
Ar
3は、さらに好ましくは、14個を超える芳香族環原子を有する縮合ヘテロアリール基を含まず、Ar
3は、特に、好ましくは、10個を超える芳香族環原子を有する縮合ヘテロアリール基を含まない。
【0053】
マトリックス材料M1は、好ましくは、以下の式(II−1)〜(II−6)の化合物から選ばれ;
【化7-1】
【化7-2】
【0054】
ここで、
Zは、出現毎に同一であるか異なり、NまたはCR
3であり;ここで、置換基が結合する場合、Zは、Cであり;
Xは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、O、S、Se、BR
3、C(R
3)
2、Si(R
3)
2、NR
3、PR
3、C(R
3)
2-C(R
3)
2もしくはCR
3=CR
3であり、
Yは、単結合、O、S、Se、BR
3、C(R
3)
2、Si(R
3)
2、NR
3、PR
3、C(R
3)
2-C(R
3)
2もしくはCR
3=CR
3であり、
Eは、O、S、Se、BR
3、C(R
3)
2、Si(R
3)
2、NR
3、PR
3、C(R
3)
2-C(R
3)
2もしくはCR
3=CR
3であり、
Ar
3は、上記に定義されるとおりであり;
Ar
4は、1以上の基R
3により置換されてよい6〜18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
R
3は、上記に定義されるとおりであり;
iは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、全てのiの合計は、少なくとも1であり;
pは、0または1であり;
m,nは、出現毎に、0または1であり、ここで、mとnの合計は、1または2である。
【0055】
上記言及した式(II−1)〜(II−6)に対して、環中の3個を超えない基Zは、Nであることが好ましい。Zは、CR
3であることが一般的に好まれる。
【0056】
基Xは、出現毎に同一であるか異なり、好ましくは、単結合、C(R
3)
2、OおよびSから選ばれ、特に、好ましくは、単結合である。
【0057】
Yは、好ましくは、OおよびC(R
3)
2から選ばれ、特に、好ましくは、Oである。
【0058】
Eは、好ましくは、C(R
3)
2、OおよびSから選ばれ、特に、好ましくは、C(R
3)
2である。
【0059】
基Ar
3は、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基R
3により置換されてよい6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれる。Ar
3は、特に、好ましくは、1以上の基R
3により置換されてよい6〜18個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基から選ばれる。
【0060】
本発明の電子素子でマトリックス材料M1として用いられる化合物の例は、以下に示される。
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【化8-5】
【化8-6】
【化8-7】
【化8-8】
【化8-9】
【化8-10】
【化8-11】
【化8-12】
【化8-13】
【化8-14】
【化8-15】
【化8-16】
【化8-17】
【化8-18】
【化8-19】
【化8-20】
【化8-21】
【0061】
マトリックス化合物M1のHOMOは、好ましくは、−7.0eV〜−3.8eV、好ましくは、−6.0eV〜−4.0eV、特に、好ましくは、−5.5eV〜−5.0eVである。
【0062】
本発明の好ましい1態様によれば、マトリックス材料M1は、有機低分子である。それは、好ましくは、ポリマー、デンドリマーまたはオリゴマーではない。それは、好ましくは、200〜2000g/mol、特に、好ましくは、250〜1500g/mol、非常に、特に、好ましくは、300〜1000g/molの分子量を有する。
【0063】
マトリックス材料M2は、好ましくは、少なくとも一つのアントラセン単位を含む化合物である。それは、随意に1以上の基R
5により置換されてよい9,10-ジアリールアントラセン化合物である。
【0064】
マトリックス材料M2は、好ましくは、以下の式(III)の化合物であり;
【化9】
【0065】
ここで、
Ar
5は、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基R
5により置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
R
5は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R
6、CN、Si(R
6)
3、N(R
6)
2、P(=O)(R
6)
2、S(=O)R
6、S(=O)
2R
6、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(上記言及した基は、夫々1以上の基R
6により置換されてよく、上記言及した基中の1以上のCH
2基は、-R
6C=CR
6-、-C≡C-、Si(R
6)
2、C=O、C=S、C=NR
6、-C(=O)O-、-C(=O)NR
6-、NR
6-、P(=O)(R
6)、-O-、-S-、SOもしくはSO
2で置き代えられてよく、および上記言及した基中の一以上のH原子は、D、FもしくはCNで置き代えられてよい。)または、各場合に1以上の基
6により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造または、1以上の基R
6により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であり;ここで、2個以上の基R
5は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;
R
6は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基であって、さらに、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の置換基R
6は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;
アントラセンは、全ての遊離位置でR
5により置換されてよい。
【0066】
Ar
5は、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基R
5により置換されてよい6〜18個の芳香族環原子、好ましくは、6〜14個の芳香族環原子を有するアリール基から選ばれる。
【0067】
マトリックス材料M2は、特に、好ましくは、以下の式(III−1)の化合物であり;
【化10】
【0068】
ここで、
Ar
5は、上記定義のとおりであり、ベンズアントラセニル基は、アントラセンに、1、2、3、4、5もしくは6位で結合することができ、ベンズアントラセンとアントラセンは、全ての遊離位置でR
5により置換されてよい。
【0069】
本出願の目的のために、ベンズアントラセン骨格の次の番号付けが使用される。
【化11】
【0070】
マトリックス材料M2は、さらに、特に、好ましくは、以下の式(III−2)の化合物であり;
【化12】
【0071】
ここで、
Ar
6は、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基R
5により置換されてよい10〜18個の芳香族環原子を有する縮合アリールもしくはヘテロアリール基から選ばれ、および
アントラセン基とフェニレン基は、全ての遊離位置でR
5により置換されてよい。
【0072】
Ar
6は、好ましくは、1以上の基R
5により置換されてよいナフチル、アントラセニル、ピレニルおよびフルオレニル基から選ばれる。
【0073】
特に、好ましいマトリックス材料M2は、WO2006/097208に開示されたアンサ-アントラセン、WO2006/131192に開示されたシクロアルキルアントラセン、WO2007/065550に開示されたシリル置換アントラセン、WO2007/110129に開示されたテトラアリールアントラセン、WO2007/065678に開示されたビスアントラセン、WO2008/145239に開示されたベンズアントラセン、WO2009/100925に開示されたフェナントリルアントラセン、WO2011/054442に開示された9,10-ジアリールアントラセンおよびEP 1553154に開示された9,10-ジアリールアントラセンである。
【0074】
本発明の電子素子での使用のための好ましいマトリックス材料M2の例は、以下の表に示される。
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【化13-4】
【0075】
本発明の好ましい1態様によれば、マトリックス材料M2のHOMOは、−8.0eV〜−4.8eV、特に、好ましくは、−6.5eV〜−5.0eV、非常に、特に、好ましくは、−6.2eV〜−5.3eVである。
【0076】
本発明の好ましい1態様によれば、マトリックス材料M2のLuMOは、−4.0eV〜−2.3eV、特に、好ましくは、−3.0eV〜−2.5eV、非常に、特に、好ましくは、−2.9eV〜−2.6eVである。
【0077】
本発明にしたがうと、化合物E、M1およびM2のHOMOには、以下が適用される:
HOMO(M1)>HOMO(E)>HOMO(M2)。
【0078】
ここで、HOMO(M1)とHOMO(E)の間隔は、好ましくは、0.05eVより大、特に、好ましくは、0.08eVより大、非常に、特に、好ましくは、0.1eVより大である。
【0079】
ここで、HOMO(E)とHOMO(M2)の間隔は、好ましくは、0.05eVより大、特に、好ましくは、0.08eVより大、非常に、特に、好ましくは、0.1eVより大である。
【0080】
本発明にしたがうと、マトリックス化合物M2のLUMOは、マトリックス材料M1のLUMOとエミッター化合物EのLUMOより低い値を有することがさらに好ましい。
【0081】
本発明は、さらに、少なくとも一つの有機溶媒、少なくとも一つのエミッター化合物E、少なくとも一つのマトリックス化合物M1と少なくとも一つのマトリックス化合物M2を含む調合物に関し、ここで、エミッター化合物Eは、互いに縮合する2〜4個の芳香族環より成る少なくとも一つの縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含む化合物から選ばれ、
ここで、マトリックス材料M2は、少なくとも一つのアントラセン単位を含む化合物から選ばれ、
および、ここで、化合物E、M1およびM2のHOMOには、以下が適用される:
HOMO(M1)>HOMO(E)>HOMO(M2)。
【0082】
化合物E、M1およびM2は、好ましくは、調合物中で異なって選択される。
【0083】
調合物は、電子素子の製造のためのプロセスに使用することができる。それは、電子素子、好ましくは、OLEDの、スピンコーティングによるまたは印刷プロセスによる発光層の製造に、特別に適している。この型の溶液を調製することができる方法は、当業者に知られており、たとえば、出願WO 2002/072714、WO 2003/019694とそこに引用された文献に記載されている。
【0084】
調合物は、たとえば、溶液、分散液もしくはエマルジョンであり得る。この目的のためには、二以上の溶媒の混合物を使用することが好ましい可能性がある。適切で好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特に、3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコンヌ、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、ブチルベンゾエート、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、エチルベンゾエート、インダン、メチルベンゾエート、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリプロピレングリコールジメチルエ−テル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンもしくはこれら溶媒の混合物である。
【0085】
本発明の調合物に対して、化合物E、M1およびM2に対して上記示される好ましい態様が適用される。
【0086】
本発明の電子素子において、エミッター化合物E、マトリックス材料M1とマトリックス材料M2は、好ましくは、異なって選択される。
【0087】
本発明にしたがうと、エミッター化合物E、マトリックス材料M1とマトリックス材料M2は、好ましくは、発光層中で一緒に、好ましくは、均一な混合物で存在する。
【0088】
化合物E、M1およびM2に加えて、さらなる化合物、たとえば、さらなるエミッター化合物またはさらなるマトリックス材料が、発光層中に存在してよい。このような化合物は、好ましくは、10体積%未満、特に、好ましくは、5体積%未満、非常に、特に、好ましくは、3体積%未満の割合で存在する。好ましい1態様によれば、本発明の電子素子は、本質的に、発光層中に、唯一のエミッター化合物Eとマトリックス材料M1とマトリックス材料M2とを含む。さらなる化合物は、この場合に、多くとも、1体積%の量で、好ましくは、多くとも、0.5体積%の量で、特に、好ましくは、多くとも、0.1体積%の量で存在する。
【0089】
好ましい1態様によれば、エミッター化合物Eは、発光層中に0.5〜10体積%、特に、好ましくは、1〜8体積%、非常に、特に、好ましくは、2〜6体積%の割合で存在する。
【0090】
好ましい1態様によれば、マトリックス材料M1は、発光層中に1〜90体積%、特に、好ましくは、3〜60体積%、非常に、特に、好ましくは、5〜20体積%の割合で存在する。
【0091】
本発明のさらに好ましい1態様によれば、マトリックス材料M1は、発光層中に7〜16体積%、特に、好ましくは、8〜14体積%、非常に、特に、好ましくは、9〜12体積%の割合で存在する。この態様は、電子素子の性能データ、特に、寿命と効率が、マトリックス材料M1のより少ない量の使用と比べて、それにより改善されるという利点を有する。
【0092】
本発明の電子素子の発光層は、430〜480nm、好ましくは、435〜470nm、特に、好ましくは、440〜460nmの最大発光波長を有する光を、さらに、好ましくは、放つ。
【0093】
本発明の電子素子の発光層は、CIE座標x<0.25およびy<0.35、好ましくは、x<0.2よびy<0.3を有する光を、さらに、好ましくは、放つ。さらに、好ましくは、x>0.1およびy>0である。
【0094】
本発明の電子素子は、さらに、好ましくは、有機発光トランジスタ(OLET)、有機太陽電池(OSC)、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(OFQD)、発光電子化学電池(OLEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)から選ばれる。特に、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)から選ばれる。
【0095】
本発明の好ましい1態様によれば、電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子から選ばれ、本発明にしたがって、化合物E、M1およびM2を含む発光層に加えて、少なくとも一つのさらなる発光層を有する。
【0096】
本発明の好ましい1態様によれば、電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子から選ばれ、発光層に直接接触してカソード側に配置された少なくとも一つの正孔ブロック層を有する。正孔ブロック層は、発光層とカソードとの間に位置し、正孔ブロック特性を有する電子伝導層の意味で使用される。それは、好ましくは、低いHOMOを有する。それは、好ましくは、追加的に、低いLUMOを有する。
【0097】
本発明の好ましい1態様によれば、電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子から選ばれ、発光層に直接接触してアノード側に配置された少なくとも一つの電子ブロック層を有する。電子ブロック層は、発光層とアノードとの間に位置し、電子ブロック特性を有する正孔伝導層の意味で使用される。それは、好ましくは、高いHOMOを有する。それは、好ましくは、追加的に、高いLUMOを有する。
【0098】
カソード、アノードおよび発光層とは別に、本発明の電子素子は、さらなる層を含んでよい。これらは、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロック層、励起子ブロック層、中間層、電荷生成層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)および/または有機あるいは無機p/n接合を含んでもよい。しかしながら、これら層の夫々は、必ずしも存在する必要はないことが指摘されねばならない。
【0099】
有機エレクトロルミッセンス素子の層配列は、好ましくは、以下である:
アノード/正孔注入層/正孔輸送層/随意に、追加的正孔輸送層、好ましくは、1、2または3個のさらなる正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/カソード。
【0100】
ここで、前記層の全てが必ずしも存在する必要がないことおよび/またはさらなる層が追加的に存在してもよいことを、再度指摘する必要がある。好ましい1態様によれば、正確に2個の追加的な正孔輸送層が、上記言及した構造中に存在する。さらに、好ましい1態様によれば、一以上の正孔輸送層は、p-ドーパントを含む。この場合に用いられるp-ドーパントは、正孔輸送層の一以上のその他の化合物を酸化することができる化合物である。p-ドーパントは、好ましくは、有機電子受容性化合物である。
【0101】
p-ドーパントの特に、好ましい態様は、WO2011/073149、EP1968131、EP2276085、EP2213662、EP1722602、EP2045848、DE102007031220、US8044390、US8057712、WO2009/003455、WO2010/094378、WO2011/120709、US2010/0096600およびWO2012/095143に開示された化合物である。
【0102】
本発明の電子素子は、化合物E、M1およびM2を含む発光層が青色発光さえするならば、青もしくは白色光または別の色の発光をすることができる。これは、さらなる発光層および/または発光色を変換する層により達成することができる。
【0103】
本発明の電子素子は、一以上のさらなる発光層を含んでもよい。この場合に、発光層は、特に、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光もしくは燐光を発し、青色もしくは黄色、オレンジ色もしくは赤色発光することができる種々の発光化合物を、発光層に使用することができる。好ましいものは、3層構造であり、すなわち、3個の発光層を有する構造であり、ここで、その3層は青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈し、または2層構造であり、その2層は青色およびオレンジ色を呈する(基本構造については、たとえば、WO 2005/011013参照。)。ここで、好ましい1態様によれば、青色発光層は蛍光層であり、赤、オレンジ色、緑色もしくは黄色発光層は燐光層である。
【0104】
本出願の目的のために、蛍光発光は、励起一重項からの遷移による発光の意味で使用される。燐光発光は、スピン禁制遷移、たとえば、励起三重項状態またはより高いスピン量子数を有する状態、たとえば、五重項状態からの遷移による発光の意味で使用される。
【0105】
ここで、蛍光層は蛍光エミッターを含む層の意味で使用される。対応して、燐光層は燐光エミッターを含む層の意味で使用される。
【0106】
適切な燐光発光エミッターは、特に、適切な励起により、好ましくは、可視域で発光する化合物であり、加えて、20より大きい原子番号、好ましくは、38〜84の原子番号、特に、好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子を含む。使用される燐光発光ドーパントは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウム、白金または銅を含む化合物である。
【0107】
本発明の目的のためには、すべてのルミネッセントイリジウム、白金または銅錯体が、燐光化合物とみなされる。上記記載された燐光発光エミッターの例は、出願WO 2000/70655、WO 2001/41512、WO 202/02714、WO 2002/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 05/033244、WO 2005/019373およびUS2005/0258742により明らかにされている。
【0108】
蛍光エミッターの例は、エミッター化合物Eの好ましい態様として上記示される化合物である。
【0109】
本発明の電子素子の正孔注入、正孔輸送層もしくは電子ブロック層中で、または電子輸送層中で使用することができる適切な電荷輸送材料は、たとえば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010に開示された化合物または先行技術によりこれらの層に使用される他の材料である。
【0110】
電子輸送層のために使用することのできる材料は、電子輸送層中で電子輸送材料として先行技術にしたがって使用されるとおりのすべての材料である。特に適切なものは、アルミニウム錯体、たとえば、Alq
3、ジルコニウム錯体、たとえば、Zrq
4、ベンズイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、芳香族ケトン、ラクタム、ボラーン、ジアザホスホール誘導体およびホスフィンオキシド誘導体である。さらに、適切である材料は、JP2000/053957、WO2003/060956、WO 2004/028217、WO 2004/080975およびWO 2010/072300に開示されたとおりの上記言及した化合物の誘導体である。
【0111】
本発明のエレクトロルミッセンス素子の正孔輸送もしくは正孔注入もしくは電子ブロック層中で使用することができる好ましい正孔輸送材料は、インデノフルオレンアミン誘導体(たとえば、WO 06/122630もしくはWO06/100896)にしたがう)、EP1661888に開示されたアミン誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体(たとえば、WO 01/049806にしたがう)、縮合芳香族環を持つアミン誘導体(たとえば、US5,061,569にしたがう)、WO95/09147に開示されたアミン誘導体、モノベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO08/006449にしたがう)、ジベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO 07/140847)にしたがう)、スピロビフルオレンアミン(たとえば、WO2012/034627もしくはWO2013/120577にしたがう)、フルオレンアミン(たとえば、未公開EP12005369.9、EP12005370.7およびEP12005371.5にしたがう)、スピロジベンゾピランアミン(たとえば、WO2013/083216にしたがう)およびジヒドロアクリジン誘導体(たとえば、WO 2012/150001にしたがう)である。
【0112】
有機エレクトロルミッセンス素子のカソードは、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、種々の金属を含む金属合金もしくは多層構造、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属あるいはランタノイド金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)を含む。また、適切なのは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含む合金と銀、たとえば、マグネシウムと銀とを含む合金である。多層構造の場合、たとえば、AgあるいはAlのような比較的高い仕事関数を有するさらなる金属を前記金属に加えて使用することもでき、その場合、たとえば、Ca/Ag、Mg/AgもしくはAg/Agのような金属の組み合わせが一般的に使用される。高い誘電定数を有する材料の薄い中間層を金属カソードと有機半導体との間に挿入することも好ましい可能性がある。この目的のために適切なものは、たとえば、アルカリ金属フッ化物もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく対応する酸化物もしくは炭酸塩である(たとえば、LiF、Li
2O、BaF
2、MgO、NaF、CsF、Cs
2CO
3等)。さらに、リチウムキノリナート(LiQ)をこの目的のために使用することができる。この層の層厚は、好ましくは、0.5〜5nmである。
【0113】
アノードは、好ましくは、高い仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eVより高い仕事関数を有する。この目的に適切なものは、一方で、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高い還元電位を有する金属である。他方で、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO
x、Al/PtO
x)も好ましい可能性がある。いくつかの用途のためには、少なくとも一つの電極は、有機材料の照射(有機太陽電池)もしくは光のアウトカップリング(OLED、O−laser)の何れかを可能とするために、透明または部分的に透明でなければならない。ここで、好ましいアノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に、好ましいものは、インジウム錫酸化物(ITO)もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいものは、伝導性のドープされた有機材料、特に、伝導性のドープされたポリマーである。さらに、アノードは、複数の層、たとえば、ITOの内部層と金属酸化物、好ましくは、タングステン酸化物、モリブデン酸化物またはバナジウム酸化物の外部層から成ってもよい。
【0114】
電子素子は(用途に応じて)適切に構造化され、接点を供され、本発明による素子の寿命が水および/または空気の存在で短くなることから、最後に封止される。
【0115】
好ましい一態様では、本発明の電子素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10
−5mbar未満、好ましくは、10
−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10
−7mbar未満でも可能である。
【0116】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10
−5mbar〜1barの圧力で適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、そしてそれにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0117】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷、ノズル印刷あるいはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、あるいはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。特に、本発明の素子の発光層は、好ましくは、溶液から適用される。この目的のために好ましいのは、上記記載のとおりの化合物E、M1およびM2を含む調合物の使用である。
【0118】
電子素子の製造のために、一以上の層を溶液からまた一以上の層を昇華プロセスにより適用することが、さらに、好ましい。
【0119】
好ましい態様によれば、本発明の電子素子は、照明用途の光源として、医療用および/または美容用(たとえば、光治療)の光源として、表示装置において使用することができる。
【0120】
実施例
以下の実施例は、本発明を説明する役目を担う。これらを限定として解釈すべきではない。
【0121】
A) 発光層で使用するための化合物についてのHOMOおよびLUMO値の測定
材料のHOMOおよびLUMO位置と三重項レベルを、量子化学計算によって決定する。この目的のために、「ガウシアン03W」ソフトウエアパッケージ(Gaussian Inc.)を使用する。金属を含まない有機物質を計算するために、「基底状態/準実験的/デフォルトスピン/AM1/電荷0/一重項スピン」法を使用して、第1に幾何学的な最適化を実行する。続いて幾何学的な最適化を基準にしてエネルギー計算を実行する。ここでは、「6−31G(d)」ベースセット(電荷0/一重項スピン)を用いる「TD−SCF/DFT/デフォルトスピン/B3PW91」法を使用する。有機金属化合物に対しては、ジオメトリーは、「基底状態/ハートリー-フォック/デフォルトスピン/LanL2MB/電荷0/一重項スピン」法を介して最適化される。
【0122】
エネルギー計算は「LanL2DZ」ベースセットが金属原子のために使用され、「6−31G(d)」ベースセットがリガンドのために使用されるという相違の他は、前述したように有機物質と同じように実行される。エネルギー計算は、ハートリー単位でHOMO HEhまたはLUMO LEhを与える。サイクリックボルタンメトリ測定を参照して較正されるHOMOおよびLUMO値を、以下のように、これらから電子ボルトにおいて決定する。
【0123】
HOMO(eV)=((HEh
*27.212)−0.9899)/1.1206
LUMO(eV)=((LEh
*27.212)−2.0041)/1.385
本願の目的においては、これらの値は、夫々、材料のHOMOまたはLUMOとみなされる。たとえば、−0.19767ハートリーのHOMOと、−0.04783ハートリーのLUMOが計算から得られ、これは−5.68346eVの較正されたHOMOと、−2.38675eVの較正されたLUMOに対応する。
【0124】
以下の表は、発光層において本発明による化合物で使用される化合物について決定されたHOMOおよびLUMO値を示している。化合物の構造を表4に示す。化合物はそれ自体、OLEDでの使用で知られており、それらの合成についてのプロセスは先行技術で説明されている。
【表1】
【0125】
B) OLEDの製造
種々のOLEDに対する結果を、以下の例V1〜V5とE1〜E3で提示する(素子の構造についての表2と、素子で得られた測定データについての表3とを参照)。文字「E」とその後に番号が付された例は、本発明による例を示し、文字「V」とその後に番号が付された例は、比較例を示している。
【0126】
厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板は、湿式法で洗浄される(皿洗い機、Merck Extran洗浄剤)。最初に、これらのガラス板は、UVオゾンプラズマで処理され、改善された加工のために、20nmのPEDOT:PSS層(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)で水性溶液からのスピンコートにより適用、Heraeus Clevios 独からCLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083として購入)で適用される。ガラス板はOLEDが適用される基板を形成する。
【0127】
OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/HTL層構成/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/電子注入層(EIL)および最後にカソード。HTL層構成は140nmのSpA1と、5nmのHATCNと、20nmのMA1とからなる。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。
【0128】
OLEDの正確な構造を、表2に示す。OLEDの製造のために必要とされる材料を、表4に示す。
【0129】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、少なくとも一種のマトリックス材料(ホスト材料)と、共蒸発により一定の体積割合で一種のまたは複数のマトリックス材料と予備混合される発光ドーパント(エミッタ)とから成る。ここで、M1:NPB:TPB(93%:5%:2%)等の表現は、材料M1が93体積%の割合で層中に存在し、NPBが5体積%の割合で層中に存在し、TPBが2体積%の割合で層中に在在することを意味する。
【0130】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、ランベルト発光特性を仮定して、電流効率(cd/Aで測定)、パワー効率(Im/Wで測定)および電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての外部量子効率(EQE、パーセントで測定)ならびに寿命が測定される。エレクトロルミネセンススペクトルは、輝度1000cd/m
2で測定され、CIE1931xおよびy色座標はそこから計算される。表3での表現U1000は、輝度1000cd/m
2に対して必要とされる電圧を示す。CE1000とPE1000は、1000cd/m
2で達成される電流およびパワー効率をそれぞれ示す。最後に、EQE1000は、駆動輝度1000cd/m
2での外部量子効率を示す。寿命LTは、一定電流での駆動で、輝度が、初期輝度L0から一定の割合L1に低下した後の時間として定義される。表3における表現L0=6000cd/m
2およびL1=70%は、列LTに示される寿命が、初期輝度が6000cd/m
2から4200cd/m
2に低下した後の時間に対応することを意味する。
【0131】
種々のOLEDについてのデータを、表3に要約する。ここで素子V1〜V5は比較素子を表し、ここで素子E1〜E3は本発明による電子素子を表している。
【0132】
得られたデータは、電圧について、しかし特に効率および寿命においても、HOMO位置が二種のマトリックス材料のHOMO位置の間にあるエミッタ化合物(化合物D1)で、この特性を持たない比較素子の場合と比べて、非常により良好な値が得られることを示している。
【0133】
たとえば、エミッタ化合物が二種のマトリックス材料のHOMOの間にあるHOMOを有する素子E1は、エミッタのHOMOが二種のマトリックスのHOMOよりも高い素子V3よりも、効率と寿命について非常により良好な値を示す。比較測定結果と同様の状態が、素子V4と比べて、本発明によるE2に存在する。
【0134】
さらに、例は、非常により良好な性能データ(特に量子効率と寿命)が、エミッタとして、互いに縮合した4個を超える芳香族環を有する化合物(TBP)よりも、エミッタとして、互いに縮合した2〜4個の芳香族環を有する化合物を含む本発明による素子で達成されることを示している。
【0135】
このことは、本発明による素子E1〜E3と比較素子V1、V2、V5についてのデータの比較により示される。
【表2】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】