【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風車は、
風車ロータと、
前記風車ロータを回転可能に支持するナセルと、
前記ナセルを旋回させるように構成されたヨー旋回部と、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記ナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を動作させるように構成されたヨー制御部と、を備え、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなる。
【0008】
上記(1)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を、風速パラメータの増加とともに大きくしたので、風速が小さくて風車の高い出力を期待できない場合にヨー巻戻しモードへの遷移の頻度を増加させることができる。これにより、風車の高い出力を元々期待できない低風速時にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させることで、風車の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記閾値は、前記風速パラメータの複数の範囲に対応して段階的に設定される。
【0010】
上記(2)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの複数の範囲に対応して、風速パラメータの増加とともに大きくなるように段階的に設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定される。
【0012】
上記(3)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記閾値の最大値は、前記ナセルの旋回限界であるハードウェアリミットよりも小さい。
【0014】
上記(4)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値の最大値をハードウェアリミットよりも小さく設定したので、風速パラメータによらず、ヨー巻戻しモードでのソフトウェア制御がハードウェアによる保護動作よりも優先的に機能することになる。これにより、ソフトウェア制御とハードウェアによる保護動作との冗長性を維持して、ヨー角が過大になることを確実に防止できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記ヨー制御部は、前記風速パラメータが閾値以下のときに、前記ヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を制御する場合、風向に追従させることなく前記ヨー角を規定角度範囲内まで変化させるように構成される。
【0016】
上記(5)の構成によれば、風向が安定しない程度に風速が小さい場合に、風向に追従させることなく、規定角度範囲内にヨー角が収まるまでヨー巻戻しを行うことにより、ヨー巻戻しを行う間に風向が不安定になっても、ヨー巻戻しモードによるヨー旋回を安定して行うことができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記風車の運転中における前記閾値は、前記風車の待機ステートにおける前記閾値よりも大きく設定される。
【0018】
上記(6)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を風車の状態に応じて異ならせることで、ヨー巻戻しによる風車出力に与える影響の低減と、過大なヨー角の発生防止と、を両立することができる。
すなわち、既に風車が運転中の状態には、ヨー角の閾値を比較的大きく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を低下させて、風車出力を確保することができる。一方、風速が低下して風車が待機ステートにあるとき、風車の高い出力を期待できない、または、風車出力をどれほど見込めるか不明であるから、ヨー角の閾値を比較的小さく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を増加させて、将来の風車運転再開後におけるヨー巻戻しの必要性を低減することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記風速パラメータは、風速、前記風車の出力、前記風車ロータの回転数又は前記風車ロータのトルクの少なくとも一つを含む。
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記風速パラメータは、風速、前記風車の出力、前記風車ロータの回転数又は前記風車ロータのトルクの少なくとも一つの規定期間における統計値である。なお、統計値として、平均値を用いてもよい。
【0020】
上記(7)又は(8)の構成によれば、風速、風車出力、風車ロータの回転数又はトルクのような風車出力と関連性のある指標を風速パラメータとして用いることで、風車の高い出力が元々期待できない低風速時において優先的にヨー巻戻しを実施することが可能になる。これにより、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0021】
(9)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風車のヨー制御装置は、
上記(1)乃至(8)の何れかの構成の風車に用いられるヨー制御装置であって、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記風車のナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記風車のヨー旋回部を動作させるように構成され、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなる。
【0022】
上記(9)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を、風速パラメータの増加とともに大きくしたので、風速が小さくて風車の高い出力を期待できない場合にヨー巻戻しモードへの遷移の頻度を増加させることができる。これにより、風車の高い出力を元々期待できない低風速時にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させることで、風車の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0023】
(10)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風車の運転制御方法は、
風車ロータと、前記風車ロータを回転可能に支持するナセルと、前記ナセルを旋回させるように構成されたヨー旋回部とを備える風車の運転制御方法であって、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記ナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を動作させるステップを備え、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなる。
【0024】
上記(10)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を、風速パラメータの増加とともに大きくしたので、風速が小さくて風車の高い出力を期待できない場合にヨー巻戻しモードへの遷移の頻度を増加させることができる。これにより、風車の高い出力を元々期待できない低風速時にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させることで、風車の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0025】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の方法において、
前記閾値は、前記風速パラメータの複数の範囲に対応して段階的に設定されている。
【0026】
上記(11)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの複数の範囲に対応して、風速パラメータの増加とともに大きくなるように段階的に設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0027】
(12)幾つかの実施形態では、上記(10)の方法において、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されている。
【0028】
上記(12)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0029】
(13)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(12)の何れかの方法において、
前記閾値の最大値は、前記ナセルの旋回限界であるハードウェアリミットよりも小さい。
【0030】
上記(13)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値の最大値をハードウェアリミットよりも小さく設定したので、風速パラメータによらず、ヨー巻戻しモードでのソフトウェア制御がハードウェアによる保護動作よりも優先的に機能することになる。これにより、ソフトウェア制御とハードウェアによる保護動作との冗長性を維持して、ヨー角が過大になることを確実に防止できる。
【0031】
(14)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(13)の何れかの方法において、
前記風速パラメータが閾値以下のときに、前記ヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を制御する場合、風向に追従させることなく前記ヨー角を規定角度範囲内まで変化させる。
【0032】
上記(14)の方法によれば、風向が安定しない程度に風速が小さい場合に、風向に追従させることなく、規定角度範囲内にヨー角が収まるまでヨー巻戻しを行うことにより、ヨー巻戻しを行う間に風向が不安定になっても、ヨー巻戻しモードによるヨー旋回を安定して行うことができる。
【0033】
(15)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(14)の何れかの方法において、
前記風車の運転中における前記閾値は、前記風車の待機ステートにおける前記閾値よりも大きく設定される。
【0034】
上記(15)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を風車の状態に応じて異ならせることで、ヨー巻戻しによる風車出力に与える影響の低減と、過大なヨー角の発生防止と、を両立することができる。
すなわち、既に風車が運転中の状態には、ヨー角の閾値を比較的大きく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を低下させて、風車出力を確保することができる。一方、風速が低下して風車が待機ステートにあるとき、風車の高い出力を期待できない、または、風車出力をどれほど見込めるか不明であるから、ヨー角の閾値を比較的小さく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を増加させて、将来の風車運転再開後におけるヨー巻戻しの必要性を低減することができる。