特許第6363123号(P6363123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363123風車並びにそのヨー制御装置及び運転制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363123
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】風車並びにそのヨー制御装置及び運転制御方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   F03D7/04 L
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-37018(P2016-37018)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-155601(P2017-155601A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】馬場 満也
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02902623(EP,A1)
【文献】 特開平03−222872(JP,A)
【文献】 Chunyan Dai, Jianhua Yuan,Study on the Prevent Cable Twisting Control Strategy of Wind Turbine Yaw Control System,2013 2nd International Symposium on Instrumentation and Measurement, Sensor Network and Automation (IMSNA),IEEE,2013年12月23日,420-424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車ロータと、
前記風車ロータを回転可能に支持するナセルと、
前記ナセルを旋回させるように構成されたヨー旋回部と、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記ナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を動作させるように構成されたヨー制御部と、を備える風車であって
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなるとともに、
前記風車の運転中における前記閾値は、前記風車の待機ステートにおける前記閾値よりも大きく設定されることを特徴とする風車。
【請求項2】
前記閾値は、前記風速パラメータの複数の範囲に対応して段階的に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の風車。
【請求項3】
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の風車。
【請求項4】
前記閾値の最大値は、前記ナセルの旋回限界であるハードウェアリミットよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の風車。
【請求項5】
風車ロータと、
前記風車ロータを回転可能に支持するナセルと、
前記ナセルを旋回させるように構成されたヨー旋回部と、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記ナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を動作させるように構成されたヨー制御部と、を備え、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなるとともに、
前記ヨー制御部は、前記ヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を制御する場合、
前記風速パラメータが風速下限閾値以下のときに、風向に追従させることなく前記ヨー角を規定角度範囲内まで変化させ
前記風速パラメータが前記風速下限閾値より大きいときに、前記ヨー角の絶対値が180度以下であり、且つ、前記風向に追従するまで前記ヨー角を変化させる
ように構成された
ことを特徴とする風車。
【請求項6】
前記風車の運転中における前記閾値は、前記風車の待機ステートにおける前記閾値よりも大きく設定されることを特徴とする請求項に記載の風車。
【請求項7】
前記風速パラメータは、風速、前記風車の出力、前記風車ロータの回転数又は前記風車ロータのトルクの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風車。
【請求項8】
前記風速パラメータは、風速、前記風車の出力、前記風車ロータの回転数又は前記風車ロータのトルクの少なくとも一つの規定期間における統計値であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風車。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の風車に用いられるヨー制御装置であって、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記風車のナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記風車のヨー旋回部を動作させるように構成され、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなることを特徴とする風車のヨー制御装置。
【請求項10】
風車ロータと、前記風車ロータを回転可能に支持するナセルと、前記ナセルを旋回させるように構成されたヨー旋回部とを備える風車の運転制御方法であって、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記ナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を動作させるステップを備え、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなるとともに、
前記風車の運転中における前記閾値は、前記風車の待機ステートにおける前記閾値よりも大きく設定される
ことを特徴とする風車の運転制御方法。
【請求項11】
前記閾値は、前記風速パラメータの複数の範囲に対応して段階的に設定されていることを特徴とする請求項10に記載の風車の運転制御方法。
【請求項12】
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されていることを特徴とする請求項10に記載の風車の運転制御方法。
【請求項13】
前記閾値の最大値は、前記ナセルの旋回限界であるハードウェアリミットよりも小さいことを特徴とする請求項10乃至12の何れか一項に記載の風車の運転制御方法。
【請求項14】
風車ロータと、前記風車ロータを回転可能に支持するナセルと、前記ナセルを旋回させるように構成されたヨー旋回部とを備える風車の運転制御方法であって、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記ナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を動作させるステップを備え、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなるとともに、
記ヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を制御する場合、
前記風速パラメータが風速下限閾値以下のときに、風向に追従させることなく前記ヨー角を規定角度範囲内まで変化させ
前記風速パラメータが前記風速下限閾値より大きいときに、前記ヨー角の絶対値が180度以下であり、且つ、前記風向に追従するまで前記ヨー角を変化させる
ことを特徴とする風車の運転制御方法。
【請求項15】
前記風車の運転中における前記閾値は、前記風車の待機ステートにおける前記閾値よりも大きく設定されることを特徴とする請求項10乃至14の何れか一項に記載の風車の運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風車並びにそのヨー制御装置及び運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、風車ロータを支持するナセルを風向に追従してヨー旋回させるようにした風車が知られている。
例えば、特許文献1には、風向センサで検出された風向にナセルが追従するように、ナセルを旋回させるようにした風車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−161172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、風車の運転中に風向にナセルを追従してヨー旋回させる結果、ナセルのヨー角が大きくなり、例えば、ナセルとタワーとの間にわたって延在するケーブル、配線等の構造物の捻じれが過大になってしまうことがある。このため、ナセルのヨー角を適正な範囲内に収めるために、風車を一旦停止してナセルを巻き戻し方向にヨー旋回させる必要がある。
しかし、ナセルを巻き戻し方向にヨー旋回させる間は、風車の出力を発揮することができず、不経済である。
【0005】
この点、特許文献1には、巻き戻し方向へのヨー旋回が風車の出力に与える影響を低減しながら、ナセルのヨー角を適正な範囲内に収めることについて開示されていない。
【0006】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態の目的は、巻き戻し方向へのヨー旋回が風車出力に与える影響を低減しながら、ナセルのヨー角が過大になることを防止可能な風車並びにそのヨー制御装置及び運転制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風車は、
風車ロータと、
前記風車ロータを回転可能に支持するナセルと、
前記ナセルを旋回させるように構成されたヨー旋回部と、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記ナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を動作させるように構成されたヨー制御部と、を備え、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなる。
【0008】
上記(1)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を、風速パラメータの増加とともに大きくしたので、風速が小さくて風車の高い出力を期待できない場合にヨー巻戻しモードへの遷移の頻度を増加させることができる。これにより、風車の高い出力を元々期待できない低風速時にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させることで、風車の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記閾値は、前記風速パラメータの複数の範囲に対応して段階的に設定される。
【0010】
上記(2)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの複数の範囲に対応して、風速パラメータの増加とともに大きくなるように段階的に設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定される。
【0012】
上記(3)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記閾値の最大値は、前記ナセルの旋回限界であるハードウェアリミットよりも小さい。
【0014】
上記(4)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値の最大値をハードウェアリミットよりも小さく設定したので、風速パラメータによらず、ヨー巻戻しモードでのソフトウェア制御がハードウェアによる保護動作よりも優先的に機能することになる。これにより、ソフトウェア制御とハードウェアによる保護動作との冗長性を維持して、ヨー角が過大になることを確実に防止できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記ヨー制御部は、前記風速パラメータが閾値以下のときに、前記ヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を制御する場合、風向に追従させることなく前記ヨー角を規定角度範囲内まで変化させるように構成される。
【0016】
上記(5)の構成によれば、風向が安定しない程度に風速が小さい場合に、風向に追従させることなく、規定角度範囲内にヨー角が収まるまでヨー巻戻しを行うことにより、ヨー巻戻しを行う間に風向が不安定になっても、ヨー巻戻しモードによるヨー旋回を安定して行うことができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記風車の運転中における前記閾値は、前記風車の待機ステートにおける前記閾値よりも大きく設定される。
【0018】
上記(6)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を風車の状態に応じて異ならせることで、ヨー巻戻しによる風車出力に与える影響の低減と、過大なヨー角の発生防止と、を両立することができる。
すなわち、既に風車が運転中の状態には、ヨー角の閾値を比較的大きく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を低下させて、風車出力を確保することができる。一方、風速が低下して風車が待機ステートにあるとき、風車の高い出力を期待できない、または、風車出力をどれほど見込めるか不明であるから、ヨー角の閾値を比較的小さく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を増加させて、将来の風車運転再開後におけるヨー巻戻しの必要性を低減することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記風速パラメータは、風速、前記風車の出力、前記風車ロータの回転数又は前記風車ロータのトルクの少なくとも一つを含む。
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記風速パラメータは、風速、前記風車の出力、前記風車ロータの回転数又は前記風車ロータのトルクの少なくとも一つの規定期間における統計値である。なお、統計値として、平均値を用いてもよい。
【0020】
上記(7)又は(8)の構成によれば、風速、風車出力、風車ロータの回転数又はトルクのような風車出力と関連性のある指標を風速パラメータとして用いることで、風車の高い出力が元々期待できない低風速時において優先的にヨー巻戻しを実施することが可能になる。これにより、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0021】
(9)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風車のヨー制御装置は、
上記(1)乃至(8)の何れかの構成の風車に用いられるヨー制御装置であって、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記風車のナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記風車のヨー旋回部を動作させるように構成され、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなる。
【0022】
上記(9)の構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を、風速パラメータの増加とともに大きくしたので、風速が小さくて風車の高い出力を期待できない場合にヨー巻戻しモードへの遷移の頻度を増加させることができる。これにより、風車の高い出力を元々期待できない低風速時にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させることで、風車の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0023】
(10)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風車の運転制御方法は、
風車ロータと、前記風車ロータを回転可能に支持するナセルと、前記ナセルを旋回させるように構成されたヨー旋回部とを備える風車の運転制御方法であって、
風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、前記ヨー角がゼロに近づく方向に前記ナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を動作させるステップを備え、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに大きくなる。
【0024】
上記(10)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を、風速パラメータの増加とともに大きくしたので、風速が小さくて風車の高い出力を期待できない場合にヨー巻戻しモードへの遷移の頻度を増加させることができる。これにより、風車の高い出力を元々期待できない低風速時にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させることで、風車の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0025】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の方法において、
前記閾値は、前記風速パラメータの複数の範囲に対応して段階的に設定されている。
【0026】
上記(11)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの複数の範囲に対応して、風速パラメータの増加とともに大きくなるように段階的に設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0027】
(12)幾つかの実施形態では、上記(10)の方法において、
前記閾値は、前記風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されている。
【0028】
上記(12)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0029】
(13)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(12)の何れかの方法において、
前記閾値の最大値は、前記ナセルの旋回限界であるハードウェアリミットよりも小さい。
【0030】
上記(13)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値の最大値をハードウェアリミットよりも小さく設定したので、風速パラメータによらず、ヨー巻戻しモードでのソフトウェア制御がハードウェアによる保護動作よりも優先的に機能することになる。これにより、ソフトウェア制御とハードウェアによる保護動作との冗長性を維持して、ヨー角が過大になることを確実に防止できる。
【0031】
(14)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(13)の何れかの方法において、
前記風速パラメータが閾値以下のときに、前記ヨー巻戻しモードにて前記ヨー旋回部を制御する場合、風向に追従させることなく前記ヨー角を規定角度範囲内まで変化させる。
【0032】
上記(14)の方法によれば、風向が安定しない程度に風速が小さい場合に、風向に追従させることなく、規定角度範囲内にヨー角が収まるまでヨー巻戻しを行うことにより、ヨー巻戻しを行う間に風向が不安定になっても、ヨー巻戻しモードによるヨー旋回を安定して行うことができる。
【0033】
(15)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(14)の何れかの方法において、
前記風車の運転中における前記閾値は、前記風車の待機ステートにおける前記閾値よりも大きく設定される。
【0034】
上記(15)の方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を風車の状態に応じて異ならせることで、ヨー巻戻しによる風車出力に与える影響の低減と、過大なヨー角の発生防止と、を両立することができる。
すなわち、既に風車が運転中の状態には、ヨー角の閾値を比較的大きく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を低下させて、風車出力を確保することができる。一方、風速が低下して風車が待機ステートにあるとき、風車の高い出力を期待できない、または、風車出力をどれほど見込めるか不明であるから、ヨー角の閾値を比較的小さく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を増加させて、将来の風車運転再開後におけるヨー巻戻しの必要性を低減することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、風車の高い出力を元々期待できない低風速時にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させることで、風車の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】一実施形態に係る風車の概略的な全体構成図である。
図2】ヨー角を説明するための図である。
図3】一実施形態における風速パラメータとヨー角の閾値との関係を示すグラフである。
図4】他の実施形態における風速パラメータとヨー角の閾値との関係を示すグラフである。
図5】ソフトウェアリミット及びハードウェアリミットを概念的に示す図である。
図6】一実施形態に係る風車のヨー制御(ヨー巻戻しモード)を説明するための図である。
図7】一実施形態に係る風車の運転制御方法(運転ステート)を説明するための図である。
図8】一実施形態に係る風車の運転制御方法(待機ステート)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0038】
最初に、図1を例示しながら、幾つかの実施形態に係る風車1について説明する。なお、図1は、一実施形態に係る風車1の概略的な全体構成図である。
幾つかの実施形態において、風車1は、風車ロータ2と、風車ロータ2を回転可能に支持するナセル8と、ナセル8を旋回させるように構成されたヨー旋回部10と、を備える。
【0039】
風車1には、ナセル8(風車ロータ2)のヨー角を検出するためのヨー角センサ11が設けられている。例えば、ヨー角センサ11は、ヨー旋回部10のヨー駆動用モータの回転数及び回転方向に基づいて風車ロータ2のヨー角を検出するものであってもよい。
なお、ここで言うヨー角とは、ナセル8とタワー9間の初期のヨー旋回方向の角度(一般に初期はケーブルなどの捻じれがない状態)をゼロ(基準)とし、このゼロ角度から回転した累計のヨー旋回の回転角度を言う(図2参照)。これを計測するセンサをヨー角センサ11と言う。
さらに、風車1には、風向を測定するための風向計12、風速を測定するための風速計13、メインシャフト5の回転数を測定するための回転数センサ14、メインシャフト5のトルクを測定するためのトルクセンサ15、または、風車1の出力を測定するための出力センサ16のうち少なくとも何れかのセンサが設けられていてもよい。
【0040】
風車ロータ2は、少なくとも一枚のブレード3と、ブレード3が取り付けられるハブ4とを含む。風車ロータ2は、主軸受を介してナセル8に支持される。
ナセル8は、タワー9の上端においてヨー方向に旋回可能に支持され、ヨー旋回部10によって所望の方向に向けられるようになっている。タワー9は、陸上に設置されてもよいし、洋上又は湖上等の水上に設置されてもよい。
なお、図示されるように風車1が風力発電装置である場合、風車ロータ2と共にメインシャフト5が回転し、これらの回転がドライブトレイン6を介して発電機7に入力される。これにより発電機7が駆動されるようになっている。ドライブトレイン6には、例えば風車ロータ2を発電機7に直結したダイレクトドライブ、油圧ポンプ及び油圧モータを備えた油圧トランスミッション、あるいはギヤ式増速機などが用いられる。
【0041】
ヨー旋回部10は、ナセル8をヨー方向に旋回させるように構成される。すなわち、ヨー旋回部10によって、ナセル8と共に風車ロータ2もヨー方向に向きが変化する。典型的な風車1では、通常運転時(負荷運転時)におけるヨー旋回部10は、風向きに応じて風車ロータ2のヨー方向における向きが調整されるように、後述するヨー制御部20によってヨー角の風向追従制御が行われるようになっている。
【0042】
また、上記風車1は、ヨー旋回部10を制御するためのヨー制御部20をさらに備える。
ヨー制御部20は、ヨー角の絶対値が閾値を超えたとき、ヨー角がゼロに近づく方向にナセル8を旋回させるヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させるように構成される。
前記閾値は、風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変であり、風速パラメータの増加とともに大きくなる。
【0043】
ここで風速パラメータとは、風速の大きさを示す指標である。風速パラメータは、風速計13で測定された風速そのものであってもよいし、風速に相関のある計測値であってもよい。風速パラメータとして用いることができる計測値としては、例えば、回転数センサ14で計測された風車ロータ2(メインシャフト5)の回転数、トルクセンサ15で計測された風車ロータ2(メインシャフト5)のトルク、または、出力センサ16で計測された出力のうち、何れかであってもよい。あるいは、風速パラメータは、風速、風車1の出力、風車ロータ2の回転数又は風車ロータ2のトルクの少なくとも一つの規定期間における統計値(例えば平均値)であってもよい。
これによれば、風速、風車出力、風車ロータ2の回転数又はトルクのような風車出力と関連性のある指標を風速パラメータとして用いることで、風車1の高い出力が元々期待できない低風速時において優先的にヨー巻戻しを実施することが可能になる。これにより、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0044】
図2に示すようにヨー角θとは、ヨー旋回方向において基準方向を0degとしたときの風車ロータ2の角度である。なお、基準方向0degに対して一方の回転方向(図では時計回り)を正とし、他方の回転方向(図では反時計回り)を負とする。
典型的な風車1では、通常、ケーブル旋回が小さくなるように、各風車サイトの主風向を基準方向0deg(ヨー角センサ11=0deg)として設定される。
【0045】
上記構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を、風速パラメータの増加とともに大きくしたので、風速が小さくて風車1の高い出力を期待できない場合にヨー巻戻しモードへの遷移の頻度を増加させることができる。これにより、風車1の高い出力を元々期待できない場合にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部10を動作させることで、風車1の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0046】
図3は、一実施形態における風速パラメータとヨー角の閾値との関係を示すグラフである。
一実施形態では、上述した閾値は、風速パラメータの複数の範囲に対応して段階的に設定されてもよい。図3に示す例では、風速パラメータは値が小さい方から順に第1範囲〜第3範囲まで範囲が設定されており、これらの範囲にはそれぞれ閾値が対応づけられている。第1範囲に付与された第1閾値(TA1)が一番小さく、第2範囲に付与された第2閾値(TA2)、第3範囲に付与された第3閾値(TA3)と値が大きくなるにつれて大きい閾値が与えられる。
上記構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの複数の範囲に対応して、風速パラメータの増加とともに大きくなるように段階的に設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0047】
図4は、他の実施形態における風速パラメータとヨー角の閾値との関係を示すグラフである。
他の実施形態では、上述した閾値は、風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されてもよい。なお、図4に示す例において閾値は、風速パラメータの増加に対応して比例的に増加しているが、閾値と風速パラメータとの関係は一次関数に限定されない。すなわち、閾値が風速パラメータの増加とともに単調増加する関係のみを満たしていればよい。また、図4に示す閾値と風速パラメータとの関係において、閾値が一定の領域を含んでいてもよい。
上記構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0048】
図5は、ソフトウェアリミット及びハードウェアリミットを概念的に示す図である。
同図に示す例では、ソフトウェアリミットには、待機ステート用の第1ソフトウェアリミットと、運転ステート用の第2ソフトウェアリミットがある。
幾つかの実施形態では、前記閾値の最大値は、ハードウェアリミットよりも小さい。なお、ハードウェアリミットは、ハードウェアによる物理的な結線で命令(例えば非常停止)を実行するためのリミット値であり、ソフトウェアリミットとは独立して設定されている。例えば、ヨー角センサ11で検出されたヨー角がハードウェアリミットに達した場合、ヨー制御部20に異常が発生している可能性がある。そのため、ヨー旋回(ヨー巻戻しを含む)を行わず、風車1を非常停止する。
【0049】
上記構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値の最大値をハードウェアリミットよりも小さく設定したので、風速パラメータによらず、ヨー巻戻しモードでのソフトウェア制御がハードウェアによる保護動作よりも優先的に機能することになる。これにより、ソフトウェア制御とハードウェアによる保護動作との冗長性を維持して、ヨー角が過大になることを確実に防止できる。
なお、図5に示すように、ソフトウェアリミットは複数段階設定されていてもよい。あるいは、ソフトウェアリミットは、風車1のステートに応じて選択されるように、複数設定されていてもよい。例えば、第1ソフトウェアリミット(例えば閾値TB1、TB2、TB3)は、風車1が待機ステートである場合に適用され、第2ソフトウェアリミット(例えば閾値TA1、TA2、TA3)は、風車1が運転ステートである場合に適用される。
【0050】
一実施形態において、ヨー制御部20は、風速パラメータが閾値(以下、下限閾値と称する)以下のときに、ヨー巻戻しモードにてヨー旋回部10を制御する場合、風向に追従させることなくヨー角を規定角度範囲内まで変化させるように構成される。
これによれば、風向が安定しない程度に風速が小さい場合に、風向に追従させることなく、規定角度範囲内にヨー角が収まるまでヨー巻戻しを行うことにより、ヨー巻戻しを行う間に風向が不安定になっても、ヨー巻戻しモードによるヨー旋回を安定して行うことができる。
【0051】
他の実施形態では、ヨー制御部20は、風速パラメータが下限閾値よりも大きい場合、ヨー巻戻しモードにてヨー旋回部10を制御する際に、ヨー巻戻しの間に適切な風向となったら、風車1を風向に追従させる。例えば、図6に示すように、風車1がソフトウェアリミットの450°までヨー旋回した後、さらに風向が450°以上の方向まで変化した場合、通常運転でヨー旋回するとソフトウェアリミットである450°を超えるので、負側へのヨー巻戻しモードに切り替わる。ヨー巻戻しモードではヨー角ゼロまで戻さず、風向に応じた角度で停止し、その位置から再度運転を開始する。
【0052】
また、風車1の運転中における閾値は、風車1の待機ステートにおける閾値よりも大きく設定されてもよい。
上記構成によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を風車1の状態に応じて異ならせることで、ヨー巻戻しによる風車出力に与える影響の低減と、過大なヨー角の発生防止と、を両立することができる。
すなわち、図5で示したように既に風車1が運転中の状態には、第2ソフトウェアリミットを適用してヨー角の閾値を比較的大きく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を低下させて、風車出力を確保することができる。一方、風速が低下して風車が待機ステートにあるとき、風車の高い出力を期待できない、または、風車出力をどれほど見込めるか不明であるから、第1ソフトウェアリミットを適用し、ヨー角の閾値を比較的小さく設定することでヨー巻戻しの頻度を増加させて、将来の風車運転再開後におけるヨー巻戻しの必要性を低減することができる。なお、上記構成において第1ソフトウェアリミットおよび第2ソフトウェアリミットは風速パラメータによって可変であるが、第1ソフトウェアリミットと第2ソフトウェアリミットとの相対的な関係は変わらない。すなわち、風速パラメータが変化しても第1ソフトウェアリミットは第2ソフトウェアリミットよりも小さい。さらに、第2ソフトウェアリミットは、ハードウェアリミットよりも小さい。
【0053】
次に、図7及び図8を参照しながら、幾つかの実施形態に係る風車1の運転制御方法について説明する。なお、以下の説明では、図1で示した符号を適宜用いている。
【0054】
幾つかの実施形態に係る風車1の運転制御方法は、風速の大きさを示す風速パラメータに応じて可変である閾値をヨー角の絶対値が超えたとき、ヨー角がゼロに近づく方向にナセルを旋回させるヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させるステップを備える。
また、前記閾値は、風速パラメータの増加とともに大きくなる。
【0055】
上記方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を、風速パラメータの増加とともに大きくしたので、風速が小さくて風車の高い出力を期待できない場合にヨー巻戻しモードへの遷移の頻度を増加させることができる。これにより、風車1の高い出力を元々期待できない場合にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を動作させることで、風車1の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0056】
上記方法において、前記閾値は、風速パラメータの複数の範囲に対応して段階的に設定されていてもよいし、前記閾値は、風速パラメータの増加とともに単調増加するように設定されていてもよい。
この方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値が、風速パラメータの複数の範囲に対応して、風速パラメータの増加とともに大きくなるように段階的に設定されているため、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0057】
前記閾値の最大値は、前記ナセルの旋回限界であるハードウェアリミットよりも小さい。
この方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値の最大値をハードウェアリミットよりも小さく設定したので、風速パラメータによらず、ヨー巻戻しモードでのソフトウェア制御がハードウェアによる保護動作よりも優先的に機能することになる。これにより、ソフトウェア制御とハードウェアによる保護動作との冗長性を維持して、ヨー角が過大になることを確実に防止できる。
【0058】
また、風速パラメータが閾値以下のときに、ヨー巻戻しモードにてヨー旋回部を制御する場合、風向に追従させることなくヨー角を規定角度範囲内まで変化させてもよい。
これにより、風向が安定しない程度に風速が小さい場合に、風向に追従させることなく、規定角度範囲内にヨー角が収まるまでヨー巻戻しを行うことにより、ヨー巻戻しを行う間に風向が不安定になっても、ヨー巻戻しモードによるヨー旋回を安定して行うことができる。
【0059】
風車1の運転中における閾値は、風車1の待機ステートにおける閾値よりも大きく設定される。
この方法によれば、ヨー巻戻しモードへの遷移の可否を判断する基準であるヨー角の閾値を風車の状態に応じて異ならせることで、ヨー巻戻しによる風車出力に与える影響の低減と、過大なヨー角の発生防止と、を両立することができる。
すなわち、図5で示したように既に風車1が運転中の状態には、第2ソフトウェアリミットを適用してヨー角の閾値を比較的大きく設定することで、ヨー巻戻しの頻度を低下させて、風車出力を確保することができる。一方、風速が低下して風車が待機ステートにあるとき、風車の高い出力を期待できない、または、風車出力をどれほど見込めるか不明であるから、第1ソフトウェアリミットを適用し、ヨー角の閾値を比較的小さく設定することでヨー巻戻しの頻度を増加させて、将来の風車運転再開後におけるヨー巻戻しの必要性を低減することができる。
【0060】
図7及び図8に示す風車1の運転制御方法について具体的に説明する。
図7は、一実施形態に係る風車1の運転制御方法を説明するための図であり、運転ステートの場合を例示している。
同図において、ヨー制御部20には風速パラメータが与えられ、ヨー制御部20において風速パラメータが第1範囲か否かを判断する(S1)。風速パラメータが第1範囲内である場合、風速パラメータの第1範囲に対応した閾値TA1と、ヨー角センサ11から取得されたヨー角の絶対値とを比較する(S2)。ヨー角の絶対値が閾値TA1より大きい場合には、風車1を停止する(S7)。
【0061】
また、風速パラメータが第2範囲内である場合(S3)には、風速パラメータの第2範囲に対応した閾値TA2と、ヨー角センサ11から取得されたヨー角の絶対値とを比較する(S4)。ヨー角の絶対値が閾値TA2より大きい場合には、風車1を停止する(S7)。
さらに、風速パラメータが第1範囲内でも第2範囲内でもないとき、すなわち第3範囲内である場合(S5)には、風速パラメータの第3範囲に対応した閾値TA3と、ヨー角センサ11から取得されたヨー角の絶対値とを比較する(S6)。ヨー角の絶対値が閾値TA3より大きい場合には、風車1を停止する(S7)。
【0062】
風車1を停止した後、ヨー巻戻しを行う(S8)。ヨー巻戻しがゼロまで到達しなくても、適切な風向となったら風向追従を開始し(S9)、風車1を起動させる(S10)。
【0063】
図8は、一実施形態に係る風車1の運転制御方法を説明するための図であり、待機ステートの場合を例示している。
同図において、ヨー制御部20には風速パラメータが与えられ、ヨー制御部20において風速パラメータが第1範囲か否かを判断する(S11)。風速パラメータが第1範囲内である場合、風速パラメータの第1範囲に対応した閾値TB1と、ヨー角センサ11から取得されたヨー角の絶対値とを比較し(S12)、ヨー角の絶対値が閾値TB1より大きい場合には、風車1を停止する(S17)。
【0064】
また、風速パラメータが第2範囲内である場合(S13)には、風速パラメータの第2範囲に対応した閾値TB2と、ヨー角の絶対値とを比較し(S14)、ヨー角の絶対値が閾値TA2より大きい場合には、風車1を停止する(S17)。
さらに、風速パラメータが第3範囲内である場合(S15)には、風速パラメータの第3範囲に対応した閾値TB3と、ヨー角の絶対値とを比較し(S16)、ヨー角の絶対値が閾値TB3より大きい場合には、風車1を停止する(S17)。
【0065】
風車1を停止した後、風速パラメータが下限閾値よりも小さいか否かを判定する(S18)。風速パラメータが下限閾値よりも小さい場合、ヨー角がゼロに戻るまでヨー巻戻しを行う(S19)。一方、風速パラメータが下限閾値以上である場合、ヨー角の絶対値が180deg以下となり、且つ、風向追従するまで、ヨー巻戻しを行う(S20)。すなわち、風速パラメータが下限閾値以上である場合には、ヨー角の絶対値が180deg以下になるとともに風向追従したら、ヨー巻戻しを終了する。
【0066】
上述したように、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、風車1の高い出力を元々期待できない場合にヨー巻戻しモードにてヨー旋回部10を動作させることで、風車の高い出力を期待できるような高風速時にヨー巻戻しを行う必要性を低減できる。よって、風車出力に与える影響を低減しながら、ヨー角が過大になることを防止できる。
【0067】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0068】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0069】
1 風車
2 風車ロータ
3 ブレード
4 ハブ
5 メインシャフト
6 ドライブトレイン
7 発電機
8 ナセル
9 タワー
10 ヨー旋回部
11 ヨー角センサ
12 風向計
13 風速計
14 回転数センサ
15 トルクセンサ
16 出力センサ
20 ヨー制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8