特許第6363140号(P6363140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363140自動ロックする安全針カバー及び使用と製造の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363140
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】自動ロックする安全針カバー及び使用と製造の方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20180712BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   A61M5/158 500
   A61M5/32 510R
【請求項の数】38
【外国語出願】
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-178347(P2016-178347)
(22)【出願日】2016年9月13日
(62)【分割の表示】特願2013-516583(P2013-516583)の分割
【原出願日】2011年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-6717(P2017-6717A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】12/822,106
(32)【優先日】2010年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512332105
【氏名又は名称】スタ−メッド・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ・ルビンスタイン
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・ローゼンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ティアンホン・クィヤン
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィッド・フォシー
(72)【発明者】
【氏名】セオドア・モスラー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ダブリュー・ゴッドフリー
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04911693(US,A)
【文献】 国際公開第2010/019936(WO,A1)
【文献】 特表2010−512884(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/144547(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00250104(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158− 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸および遠位先端部を備えた針と、
該針に取り付けられたハウジングであって、該ハウジングは医療用具に連結されて、該医療用具および前記針の遠位先端部が流体連通するように構成されたハウジングと、
周方向ノッチを有するフランジを備え、且つ少なくとも部分的に前記ハウジング内に受容されたスリーブであって、該スリーブは前記長手軸の周りに回転し、且つ初期位置から退避位置へと前記長手軸に沿って近位方向に並進移動するように構成されており、前記スリーブは、前記退避位置からロック位置へと前記長手軸に沿って遠位方向に並進移動するようにも構成されており、前記スリーブのより大きい長手方向長さが、前記初期位置においてよりも前記退避位置において前記ハウジング内に受容されるスリーブと、
該スリーブが前記初期位置から前記退避位置へと移動された場合に、前記スリーブのフランジ内の前記周方向ノッチを通過するように構成されたロック部材であって、前記スリーブが前記退避位置から前記ロック位置へと移動された場合に、前記ロック部材は前記スリーブのフランジと係合し、且つ前記スリーブのフランジによって径方向外向きに湾曲されるように構成されており、前記スリーブが前記ロック位置にある場合に、前記ロック部材は、前記スリーブの近位方向への移動を阻止するように構成されたロック部材と、を具備していることを特徴とする係止針カバー。
【請求項2】
前記スリーブに沿って配置された印をさらに具備し、該印は、前記スリーブの遠位端と前記針の遠位先端部との間の長手方向距離を示し、それにより前記針の遠位先端部の体内への挿入深さの表示を提供していることを特徴とする請求項1に記載の係止針カバー。
【請求項3】
前記印は、前記スリーブ上に印刷された目盛を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の係止針カバー。
【請求項4】
前記ロック部材は、径方向内向きに延びたアームを具備していることを特徴とする請求項1に記載の係止針カバー。
【請求項5】
前記初期位置において、前記スリーブの少なくともいくらかは、前記針の遠位先端部を越えて遠位方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の係止針カバー。
【請求項6】
前記スリーブが前記ロック位置にある場合に、前記スリーブの少なくともいくらかは、前記針の遠位先端部を越えて遠位方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の係止針カバー。
【請求項7】
前記ハウジングおよび前記スリーブの一方に配置された案内部材と、
前記ハウジングおよび前記スリーブの他方に配置された複数のトラックであって、該複数のトラックは、前記案内部材を受容するように構成された複数のトラックと、をさらに具備し、
前記スリーブが、前記長手軸の周りに回転して、前記初期位置から前記退避位置へと前記長手軸に沿って並進移動した場合に、前記案内部材は、前記複数のトラックの少なくとも1つに沿って移動することを特徴とする請求項1に記載の係止針カバー。
【請求項8】
前記医療用具は注射器であることを特徴とする請求項1に記載の係止針カバー。
【請求項9】
前記スリーブが、前記初期位置と前記退避位置との間に配置された中間位置を越えて近位方向に移動することを阻止するように構成されたキャップをさらに具備し、前記スリーブが前記中間位置を越えて近位方向に移動されるまで、前記ロック部材は係合されないことを特徴とする請求項1に記載の係止針カバー。
【請求項10】
医療用具と連結されるように構成されたハウジングであって、該ハウジングは、軸方向長さを有するロック部材を具備したハウジングと、
遠位先端部および近位先端部を具備した針と、
前記ハウジング内にスライド可能に受け入れ可能であり、且つ前記針上にスライド可能に移動可能なスリーブであって、該スリーブはノッチを有するフランジを具備し、前記スリーブは、前記ハウジングおよび針に対して、伸展位置から退避位置へ、ロック位置へと移動可能なスリーブと、を具備し、
前記伸展位置において、前記スリーブは前記ハウジングに対して周方向に配向され、前記フランジのノッチは、前記ロック部材と略周方向に整列され、
前記伸展位置から前記退避位置への前記スリーブの移動経路において、
前記フランジは、前記ハウジングおよび前記針に対して近位方向へと移動し、
前記ロック部材は、前記ノッチを軸方向に通過し、
前記スリーブは前記ハウジングに対して回転して、前記フランジのノッチは前記ロック部材と周方向に整列しておらず、
前記退避位置において、前記針の遠位先端部は露出されており、
前記退避位置から前記ロック位置への前記スリーブの移動経路において、
前記フランジは、前記ハウジングおよび前記針に対して遠位方向へと移動し、
前記フランジは、湾曲していない位置から湾曲位置へと前記ロック部材を湾曲させ、
前記ロック部材の軸方向長さを越えた、前記フランジの遠位方向への移動に応答して、前記ロック部材は、ほぼ前記湾曲していない位置へと弾性的に復元し、
前記ロック位置において、
前記スリーブの一部は前記針の遠位先端部の遠位側に伸びて、前記針の遠位先端部へのアクセスを抑制し、
前記ロック部材は、前記ハウジングおよび前記針に対する前記スリーブの近位方向への移動に物理的干渉を与えて、それにより前記針の遠位先端部が再露出されることを阻止していることを特徴とする自動係止針カバー。
【請求項11】
前記フランジは、前記ロック部材を径方向外向きに湾曲させることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項12】
前記ハウジングは複数のロック部材を具備し、前記スリーブのフランジは対応した複数のノッチを具備し、
前記伸展位置において、前記スリーブは前記ハウジングに対して周方向に配向され、各前記ノッチは、対応した前記ロック部材の1つと周方向に整列されていることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項13】
前記伸展位置から前記退避位置への移動経路において、前記フランジは第2のロック部材と係合し、該第2のロック部材は、前記ハウジングに対する前記スリーブの略一方向の回転を容易にするように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項14】
前記ロック部材は、遠位端と近位端とを備えたアームであり、前記スリーブが前記伸展位置および前記ロック位置にある場合に、前記アームの遠位端は、前記アームの近位端の径方向内側に位置していることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項15】
前記ロック部材は、前記スリーブを軸方向にロックするための手段を具備していることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項16】
前記針の近位先端部は、前記ハウジング内に固定され且つ収容されていることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項17】
前記スリーブが伸展位置およびロック位置にある場合に、前記針は略完全に視界から覆い隠されていることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項18】
前記スリーブの遠位先端部は、患者の皮膚と接触する前記針の遠位先端部よりも先に、前記患者の皮膚と係合するように構成された刺激特徴体を具備し、それにより該刺激特徴体は、患者の圧力受容体神経を刺激することによって痛みを減少させることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項19】
前記刺激特徴体は複数の突起部を具備していることを特徴とする請求項18に記載の自動係止針カバー。
【請求項20】
前記スリーブがロック位置にある場合に、前記ハウジングは、前記ハウジングおよび前記針に対する前記スリーブの遠位方向への移動に物理的干渉を与える段部をさらに具備していることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項21】
前記スリーブの遠位先端部に加えられた近位方向への力を、前記ハウジングおよび前記針に対する前記スリーブの回転および並進移動へと変換するように構成されたカム機構をさらに具備していることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項22】
前記医療用具は注射器を含んでいることを特徴とする請求項10に記載の自動係止針カバー。
【請求項23】
ロック部材を備えたハウジングと、
軸方向軸、患者の体内に挿入するための遠位先端部、および前記ハウジング内に収容された近位先端部を備えた針と、
前記ハウジング内にスライド可能に受け入れ可能であり、且つ前記針上にスライド可能に移動可能なスリーブであって、前記スリーブは、前記ハウジングおよび針に対して、伸展位置から退避位置へ、ロック位置へと移動可能なスリーブと、を具備し、
前記スリーブおよび前記ハウジングの一方は案内部材を具備し、
前記スリーブおよび前記ハウジングの他方は、前記軸方向軸と略平行な第1および第2のトラックを具備した自動係止針カバーであって、前記第1のトラックは、
前記自動係止針カバーの組み立ての際に、前記第1のトラックに沿って前記案内部材をスライド可能に受け入れる挿入部分と、
該挿入部分の近位端部における傾斜部分であって、該傾斜部分は、前記案内部材が前記傾斜部分を上方に移動して、前記挿入部分から外れることを可能にした傾斜部分と、
ストッパー部材であって、前記案内部材が前記挿入部分から外れ、且つ前記第1のトラック内にある場合に、前記ストッパー部材は前記案内部材が前記挿入部分に再進入することを阻止するストッパー部材と、を具備し、
前記スリーブが前記ロック位置にある場合に、前記スリーブは前記ロック部材によって、遠位側に移動して前記針の遠位先端部を露出することを阻止していることを特徴とする自動係止針カバー。
【請求項24】
前記第1のトラックは、前記スリーブの遠位先端部からフランジの隣まで延びていることを特徴とする請求項23に記載の自動係止針カバー。
【請求項25】
前記ハウジングは、一体に結合された近位部分および別個の遠位部分を具備していることを特徴とする請求項23に記載の自動係止針カバー。
【請求項26】
前記ハウジングの遠位部分は、組み立ての際に、前記スリーブが前記遠位部分を通じて挿入されて、遠位側に移動されるように構成されていることを特徴とする請求項25に記載の自動係止針カバー。
【請求項27】
前記スリーブおよび前記ハウジングの他方は、前記第1および第2のトラックの間に移行トラックを具備していることを特徴とする請求項23に記載の自動係止針カバー。
【請求項28】
前記案内部材が、前記挿入部分の外に且つ前記第1のトラック内にあるように移動された後で、前記ストッパー部材は、前記案内部材の前記移行トラック内への移動を容易にしていることを特徴とする請求項27に記載の自動係止針カバー。
【請求項29】
前記伸展位置から前記退避位置への前記スリーブの移動経路において、前記案内部材は前記第1のトラック、第2のトラック、および移行トラックに沿って移動することを特徴とする請求項28に記載の自動係止針カバー。
【請求項30】
前記退避位置から前記ロック位置への移動経路において、前記案内部材は前記第2のトラック内を移動するが、前記第1のトラック内を移動せず、且つ前記移行トラック内を移動しないことを特徴とする請求項29に記載の自動係止針カバー。
【請求項31】
軸方向軸を備えた自動係止針カバーの製造方法であって、該製造方法は、
ハウジングの近位部分を獲得するステップと、
前記ハウジングの遠位部分であって、該遠位部分は遠位開口部を具備した、ハウジングの遠位部分を獲得するステップと、
フランジを具備したスリーブを獲得するステップと、を含み、
前記スリーブおよび前記ハウジングの遠位部分の一方は案内部材を具備し、前記スリーブおよび前記ハウジングの遠位部分の他方は、前記軸方向軸に略平行な第1および第2のトラックを具備し、前記第1のトラックは挿入部分および径方向傾斜部分を具備し、前記製造方法はさらに、
前記案内部材が前記第1のトラックの挿入部分に進入するように、前記スリーブを前記ハウジングの遠位部分の前記遠位開口部を通じて挿入するステップと、
前記案内部材を、前記第1のトラックの挿入部分の軸方向長さに沿ってスライドさせるステップと、
前記案内部材を、前記径方向傾斜部分の上方にスライドさせるステップと、
前記案内部材を、前記径方向傾斜部分を越えて軸方向にスライドさせ、それにより前記案内部材を前記第1のトラックの挿入部分の外に移動させるステップと、
前記案内部材が前記径方向傾斜部分の近位に、且つ前記径方向傾斜部分から軸方向に離間するような距離だけ、前記案内部材を前記第1のトラック内でスライドさせるステップと、
前記スリーブを前記ハウジングの遠位部分と係合させて、それにより当該係合が前記ハウジングの遠位部分に対する前記スリーブの遠位方向へのさらなる移動を阻止している、係合させるステップと、
前記スリーブと前記ハウジングの近位部分との間の付勢部材を圧縮して、それにより前記付勢部材を係合して、前記スリーブを付勢するステップと、を含んでいることを特徴とする製造方法。
【請求項32】
前記ハウジングの近位部分および遠位部分は、別個の部品であり、前記製造方法は、前記近位部分と前記遠位部分とを結合するするステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
針を前記ハウジングの近位部分に固定するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項31に記載の製造方法。
【請求項34】
前記近位部分を獲得するステップは、前記近位部分をモールド成型するステップを含み、前記遠位部分を獲得するステップは、前記遠位部分をモールド成型するステップを含み、前記スリーブを獲得するステップは、前記スリーブをモールド成型するステップを含んでいることを特徴とする請求項31に記載の製造方法。
【請求項35】
前記スリーブが前記ハウジングに対して近位方向に移動された場合に、
前記第1のトラックのストッパー部材が、前記案内部材の前記挿入部分への再侵入を阻止することを確認するステップと、
前記ストッパー部材が、前記スリーブおよび前記ハウジングの遠位部分の他方の移行トラック内に、前記案内部材を向かわせることを確認するステップと、をさらに含んでいることを特徴とする請求項31に記載の製造方法。
【請求項36】
前記スリーブが前記ハウジングに対してさらに近位方向に移動された場合に、前記案内部材が前記移行トラックから出て、前記第2のトラックに進入することを確認するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項35に記載の製造方法。
【請求項37】
前記スリーブを前記ハウジングの遠位部分と係合させるステップは、前記スリーブを前記ハウジングの遠位部と当接させるステップを含んでいることを特徴とする請求項31に記載の製造方法。
【請求項38】
前記案内部材は、前記第2のトラックに対して移動することを特徴とする請求項31に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示されているいくつかの実施形態は、注射器などの医療デバイス用の針カバー(needle covers)及び針カバーアセンブリに関するものであり、特に、針の少なくとも一部を見えないように目立たなくし、流体の移動を助けることに関係する。
【背景技術】
【0002】
注射器は、さまざまな流体及び溶液を人体内に注入し、人体から回収するために医療産業全体にわたって使用されている。体液、特に血液の取り扱い及び操作に関連する潜在的な危険が多いため、さまざまな種類の注射器及び注射針内にしばしば組み込まれる安全性に関する特徴体が多数知られている。例えば、多くの注射針は、カバーが適所にある間、一般的に針刺しを防ぐ取り外し可能なキャップを備える。キャップが取り外されると、針が露出する。これらのキャップは注射及び/又は吸引操作の前に取り外され、注射及び/又は吸引操作の後、針を廃棄する前に元に戻される。とりわけ、この取り外し及び元に戻す操作は、うっかり針刺しをする危険を生み出す。
【0003】
注射器及び注射針は、少なくともそれらの針が使い捨てとして構成されることがしばしばである、つまり、1回だけ使用され、その後廃棄されることが意図されている。この操作は、血液又は組織に由来する疾病がある患者から別の患者へと移る確率を低減する。この目的のために、多くの注射針が、適切に構成された注射器本体部から素早く、容易に脱着できるように構成されている。このように、注射器本体部は、再利用可能であり、金属などの比較的耐久性のある材料から作ることができ、その一方で、使い捨ての針アセンブリは、プラスチック又は他の類似の比較的安価な材料から作ることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
針カバーのいくつかの変更形態及び組み合わせが開示されている。いくつかの実施形態では、使い捨て針カバーは、注射器に結合し、少なくとも部分的に(又は完全に)針を収納するか、又は針が見えないよう遮蔽するように構成された、案内部材、第1のロック部材、及び第2のロック部材を備えるハウジング、ハウジングに関して伸展位置と退避位置との間で移動もしくは望遠鏡のように伸縮するように構成されたスリーブであって、伸展位置は一般的に針の遠位先端部を覆い、退避位置は針の遠位先端部の少なくとも一部を露出し、伸展位置へ付勢されるスリーブを備える。いくつかの実施形態では、伸展位置から退避位置にスリーブが移動するか、もしくは望遠鏡のように縮むと、スリーブはハウジングに関して回転し、案内部材はスリーブに備えられている第1のトラックから第2のトラックに移送され、第1のロック部材との係合が生じ、退避位置から伸展位置にスリーブが移動するか、もしくは望遠鏡のように伸びると第2のロック部材との係合が生じ、第1及び第2のロック部材は、再利用を防ぐためカバーの移動又は伸縮を阻止する。いくつかの配置構成において、第1のロック部材は、ハウジング上にリブを備える。いくつかの実施形態では、第2のロック部材は、ハウジング上に径方向内向きに延在するアームを備える。いくつかの実施形態では、スリーブは、第1及び第2のロック部材と係合するフランジをさらに備える。いくつかの配置構成において、第1のロック部材は、ハウジング上にリブを備え、第2のロック部材は、ハウジング上に径方向内向きに延在するアームを備え、スリーブは、第1及び第2のロック部材と係合するフランジをさらに備える。いくつかの実施形態では、スリーブは、第1及び第2のトラックと交差する第3のトラックを備える。第3のトラックは、第3のトラックと第2のトラックの交差点の近くで第1のトラックと交差し得る。
【0005】
いくつかの配置構成によれば、使い捨て針カバーは、少なくとも部分的に針を収納し、注射器に結合するように構成された、軸線と案内部材とを備えるハウジング、針の遠位先端部を受け入れ、第1の位置と第2の位置との間で並進するように構成されたスリーブであって、スリーブは並進の少なくとも一部の間にハウジングに関して回転し、スリーブは案内部材を受け入れるように構成された複数のトラックを備え、スリーブの並進により針カバーの再利用を阻止するように構成された第1のロック部材が係合する、スリーブを備える。いくつかの実施形態では、第1の位置は針の遠位先端部を覆い、第2の位置は針の遠位先端部を露出する。カバーでは、第1のロック部材は、スリーブの並進を阻止することによって針カバーの再利用を阻止することができる。スリーブの並進により針カバーの再利用を阻止するように構成された第2のロック部材も係合することができる。第2のロック部材は、スリーブの回転を阻止することによって針カバーの再利用を阻止することができる。いくつかの実施形態では、第1のロック部材は、ハウジングに結合されたアームであり、第2のロック部材は、ハウジングに結合されたリブである。バネが、スリーブを第1の位置へ付勢することができる。いくつかの実施形態では、スリーブは、実質的に邪魔されることなく第1の位置から第2の位置に並進し得る。スリーブは、第1のロック部材と係合するように構成されたフランジを備えることができる。フランジは、第2のロック部材と係合するようにさらに構成され得る。第1のロック部材は、スリーブが第1の位置から第2の位置へ並進するときに係合され得る。第2のロック部材は、スリーブが第2の位置から第1の位置へ並進するときに係合され得る。
【0006】
いくつかの実施形態によれば、使い捨て針カバーを製造する方法は、ハウジングを形成するステップであって、ハウジングは少なくとも部分的に針を収納し、注射器に結合するように構成され、ハウジングは軸線と案内部材とを備える、ステップと、スリーブを形成するステップであって、スリーブは針の遠位先端部を受け入れ、第1の位置と第2の位置との間で並進するように構成され、スリーブは並進の少なくとも一部の間にハウジングに関して回転し、スリーブは案内部材を受け入れるように構成された複数のトラックを備え、スリーブの並進によって針カバーの再利用を阻止するように構成された第1のロック部材が係合する、ステップと、を含む。いくつかの方法では、第1の位置は針の遠位先端部を覆うことができ、第2の位置は針の遠位先端部を露出することができる。第1のロック部材は、スリーブの並進を阻止することによって針カバーの再利用を阻止することができる。スリーブの並進により針カバーの再利用を阻止するように構成された第2のロック部材も係合することができる。第2のロック部材は、スリーブの回転を阻止することによって針カバーの再利用を阻止することができる。
【0007】
いくつかの配置構成において、針カバーで意図しない針刺しから保護する方法は、ハウジングを形成するステップであって、ハウジングは少なくとも部分的に針を収納し、注射器に結合するように構成され、ハウジングは軸線と案内部材とを備える、ステップと、スリーブを形成するステップであって、スリーブは案内部材を受け入れるように構成された複数のトラックを備え、スリーブは針の遠位先端部を受け入れ、第1の位置と第2の位置との間で移動するように構成され、第1の位置は針の遠位先端部を覆い、第2の位置は針の遠位先端部を露出し、スリーブは移動の少なくとも一部の間にハウジングに関して回転し、スリーブの移動はスリーブのさらなる移動を阻止するように構成された第1のロック部材と係合する、ステップとを含む。いくつかの実施形態では、第1のロック部材は、スリーブの回転を阻止することによって針カバーの再利用を阻止する。いくつかの実施形態では、第1のロック部材は、スリーブの軸線方向移動によって針カバーの再利用を阻止する。スリーブの移動により針カバーの再利用を阻止するように構成された第2のロック部材がさらに係合することができる。いくつかの実施形態では、第2のロック部材は、スリーブの軸線方向移動を阻止することによって針カバーの再利用を阻止する。いくつかの実施形態では、第2のロック部材は、スリーブの回転を阻止することによって針カバーの再利用を阻止する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】針カバーの一実施形態の斜視図である。
図1A】完全に伸展され、ロック解除された第1の位置で使える状態にある直線1A−1Aにそって切り取った図1の実施形態の断面図である。
図1B】直線1B−1Bにそって切り取った断面図である。
図1C】取り外し可能なキャップが閉じた位置にある図1の実施形態の斜視図である。
図1D】取り外し可能なキャップが開いた位置にある図1の実施形態の斜視図である。
図2】部分的に引っ込められた第2の位置にある図1の実施形態の斜視図である。
図2A】直線2A−2Aにそって切り取った断面図である。
図2B】直線2B−2Bにそって切り取った断面図である。
図3】フランジが回転ロック部材と係合している部分的に引っ込められた第3の位置にある図1の実施形態の斜視図である。
図3A】直線3A−3Aにそって切り取った断面図である。
図3B】直線3B−3Bにそって切り取った断面図である。
図4】回転ロック部材がロックされている部分的に引っ込められた第4の位置にある図1の実施形態の斜視図である。
図4A】直線4A−4Aにそって切り取った断面図である。
図4B】直線4B−4Bにそって切り取った断面図である。
図5】完全に引っ込められた第5の位置にある図1の実施形態の斜視図である。
図5A】直線5A−5Aにそって切り取った断面図である。
図6】フランジが軸線方向ロック部材と係合している部分的に伸展された第6の位置にある図1の実施形態の斜視図である。
図6A】直線6A−6Aにそって切り取った断面図である。
図7】フランジが少なくとも1つの軸線方向ロック部材とさらに係合している部分的に伸展された第7の位置にある図1の実施形態の斜視図である。
図7A】直線7A−7Aにそって切り取った断面図である。
図8】完全に伸展された再利用防止された第8の位置にある図1の実施形態の斜視図である。
図8A】直線8A−8Aにそって切り取った断面図である。
図9】針カバーの別の実施形態の斜視図である。
図9A】完全に伸展され、ロック解除された位置で使える状態にある直線9A−9Aにそって切り取った断面図である。
図9B】直線9B−9Bにそって切り取った断面図である。
図10】部分的に引っ込められた位置にある図9の実施形態の斜視図である。
図10A】直線10A−10Aにそって切り取った断面図である。
図10B】直線10B−10Bにそって切り取った断面図である。
図11】完全に引っ込められた第2の位置にある図9の実施形態の斜視図である。
図11A】直線11A−11Aにそって切り取った断面図である。
図11B】直線11B−11Bにそって切り取った断面図である。
図12】第1の部分的に伸展された位置にある図9の実施形態の斜視図である。
図12A】直線12A−12Aにそって切り取った断面図である。
図12B】直線12B−12Bにそって切り取った断面図である。
図13】第2の部分的に伸展された位置にある図9の実施形態の斜視図である。
図13A】直線13A−13Aにそって切り取った断面図である。
図13B】直線13B−13Bにそって切り取った断面図である。
図14】完全に伸展された再利用防止された位置にある図9の実施形態の斜視図である。
図14A】直線14A−14Aにそって切り取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
針カバーのさまざまな例について以下で説明し、所望の改善を達成するために使用できるさまざまな例を示す。これらの例は、例示することのみを目的としており、いかなる形でも、提示されている一般的な発明ならびにこれらの発明のさまざまな態様及び特徴を制限することを意図していない。例えば、本明細書では医療分野の実施形態及び例を取りあげているけれども、発明は、医療分野にのみ限定されているわけではなく、いくつかの実施形態は、他の分野でも使用できる。さらに、本明細書で使用される語法及び術語は、説明を目的としたものであり、制限するものとしてみなされるべきではない。本明細書で開示されているいかなる特徴体、構造、又はステップも本質的でなく、また不可欠でもない。
【0010】
図1は、標準構成の、又は専用構成の注射器(図示せず)に取り外し可能に結合され得る針カバー10を示している。カバー10は、注射及び/又は吸引の操作前、操作中、及び/又は操作後に針16の少なくとも一部(又は実質的に全部)を見えないように全体的に目立たなくするか、保護するか、又は隠し、それにより、針16を見たときに特定の患者又は他の個人が他の何らかの形で感じるであろう少なくともある程度の不安又は恐れを低減もしくは軽減する、以下で詳しく説明する特徴体及びコンポーネントを備える。いくつかの実施形態では、針の全部又はほぼ全部は、カバー10によって目立たなくされるか、隠されるか、又は保護される。カバー10は、さらなる使用を自動的に防止することはせずに注射及び/又は吸引の操作前に体液移行操作を実行することを可能にするが、カバー10及び関連する針16が注射及び/又は吸引の操作を実行するために複数回使用されることを自動的に防止する特徴体及びコンポーネントも備えることができる。本明細書で使用されているように、「自動的に」、「自動的」、及び類似の言い回しは、分野における通常の意味を有することが意図されている。いくつかの実施形態では、文脈が反映するように、これらの言い回しは、製品の通常の使用において行われる、又は所望の結果を達成するために使用者による追加のステップ又は操作を必要とすることなく、使用者が別のプロセスを実行している間に行われる機構もしくはプロセスを指す。例示されているカバー10は、注射器に結合され、注射器から取り外されるように構成されているけれども、カバー10は、その代わりに、注射器と一体形成されるか、又は別の医療用具に、取り外し可能に、又は恒久的に、連結され得る。いずれの場合でも、注射器は、一般的に、カバー10を使った流体もしくは他の溶液の取り出しならびに注射及び/又は吸引に適した、知られている種類のものである。カバー10のロックシステム及び/又は再利用阻止特徴体は、多くの異なる種類の医療製品及び非医療製品とともに使用することも可能である。
【0011】
図1及び1Aの例示されている構造において、カバー10は、針16が位置決めされる軸線18を備える全体的に円筒形のハウジング14を備える。ハウジング14の遠位端は、軸線18にそって移動し、軸線18を中心として少なくとも部分的に回転するように構成されたスリーブ12に結合する。本明細書で使用されているように、「近位」又はその派生形は、医療デバイス、例えば、注射器に連結するカバー10の端部に向かう方向を指し、「遠位」又はその派生形は、針16が貫通する表面、例えば、患者の皮膚に接触するカバー10の端部に向かう方向を指す。流路26及び開口28は、針16を中に通せるようにスリーブ12内に含まれる。
【0012】
いくつかの実施形態では、ハウジング14の近位端34は、取り外し可能に、又は恒久的に注射器に取り付けられるように構成され得る、又は注射器と一体形成され得るハブ20を備えることができる。例えば、ハブ20は、雌ねじ又は雄ねじ又はタブ、スロット、突出部、圧力/スナップ式嵌合、及び同様のものなどの他の好適な結合、ラッチ、もしくはロック特徴体を備えることができ、これは注射器に結合するためのハブ20のさまざまな部分上にさまざまな組み合わせで設けられ得る。結合特徴体は、カバー10を注射器に取り外し可能に結合するため注射器上に設けられた対応する特徴体と係合することができる。いくつかの実施形態では、ハブ20は、恒久的に固定されるか(例えば、音波溶接、接着剤、圧力/スナップ式嵌合、又は同様の手段により)、又は注射器と一体形成され得る。いくつかの実施形態では、ハウジング14は、ハブ20から軸線方向に延在し、針16を支持する全体的に円筒形の縮小された針支持部分30を備える。図示されているように、ハウジング14及び/又はハブ20は、針16と流体的に連通し、これにより、流体を注射器と針16との間に通すことができる。
【0013】
ハウジング14の内面22は、中央室36を備えることができる。ハウジング14の遠位端38は、室36と連通する開口部42を備える径方向内向きに延在する段部40を備えることができる。開口部42はスリーブ12を摺動可能に受け入れ、次いで、スリーブ12は針16を受け入れ、少なくとも部分的に針16を覆うが、これについては以下でさらに詳しく説明する。案内部材44は、段部40から径方向内向きに延在し、スリーブ12内に形成された1つ又は複数のトラックと係合するように構成されている。ハウジング14の外面24は、カバー10を掴みやすいようにテクスチャ加工されるか、ギザギザを付けられるか、又は同様の処置を施した外側部分46を備えることができる。
【0014】
図1及び1Aに示されているように、ハウジング14は、少なくとも1つの軸線方向ロック部材50を備えることができる。いくつかの実施形態では、軸線方向ロック部材50は、ハウジング14に備えられている開口部48内に少なくとも部分的に位置決めされる。図示されているように、軸線方向ロック部材50の第1の端部52は、ハウジング14に結合され得るが、軸線方向ロック部材50の第2の端部54は、内面22と比較して径方向内向きに配設され得る。いくつかの実施形態では、軸線方向ロック部材50は、一般的に弾力性があり、そのため、径方向内向きに配設された第2の端部54は、端部54が径方向外向きに湾曲した後も屈曲し、次いで元の位置に戻ることができる。いくつかの実施形態では、第1の端部52は、第2の端部54より大きく、例えば、軸線方向ロック部材50は、第1の端部50から第2の端部54へ先細りになっているものとしてよい。いくつかの実施形態では、軸線方向ロック部材50は、フック、留め金、戻り止め、歯止め、又は他の構造などのラッチ部材を備える。
【0015】
例示されている配置構成において、ハウジング14は、一体構造である。これは、カバー10を形成するために組み立てられるコンポーネントの総数を減らせるという点で有利である。いくつかの実施形態では、ハウジング14は、複数のコンポーネントから形成される。例えば、ハウジング14の近位部分及び遠位部分は、限定はしないが音波溶接、接着剤、スナップ式又は圧力嵌合、又は同様の接合手段などの技術を使用して連結される個別のコンポーネントとすることができる。
【0016】
図1Aに関して、例示されているスリーブ12は、室36内に位置決めされた近位端60及び針16の遠位先端部96を全体的に覆う遠位端62を備える。近位端60は、遠位端38の段部40に当たる径方向外向きに延在するフランジ64を備える。図示されているように、近位端60は、バネ70の形態で付勢部材を配置する実質的に環状の、軸線方向に延在する配置部分66も備えることができる。いくつかの実施形態では、ハウジング14の近位端34の内面22は、バネ70を配置するための類似の部分68を備える。スリーブ12は、折り畳める部分を備えることができる。
【0017】
例示されている実施形態において、バネ70は、スリーブ12の近位端60とハウジング14の近位端34との間に係合し延在する。バネ70は、スリーブ12のフランジ64がハウジングの遠位端38の段部40と係合するように付勢される伸展位置に向けてスリーブ12を付勢し、スリーブ12は、針16の遠位先端部96を完全に覆う。限定はしないが、螺旋コイルバネ、円錐形バネ、波形バネ、皿バネ、又は同様のものなどの多くの種類のバネを使用することができる。いくつかの実施形態では、バネ70は、バネのたわみの線形部分を通して約25mmの自由長及び約0.12N/mmのバネ定数を有する螺旋コイルバネである。他の構造は、用途に応じてより柔らかい、又は堅いバネを備え、適した材料であれば実質的にどのような材料からも製作することができる。いくつかの実施形態では、バネ70は、使用者が注射器及び/又はカバー10に遠位圧力を片手だけで印加することによってスリーブ12の引き込みをしやすくするように構成される。可変長の漸進的なバネ及び/又は複数のバネを、完全伸展位置と完全退避位置との間のスリーブ12の移動時に可変実効バネ定数を与えるように使用することもできる。
【0018】
流路26は、スリーブ12内を貫通し、近位部分90、先細り部分92、及び遠位部分94を備えることができる。近位部分90は、スリーブ12が引っ込められるときにハウジング14の針支持部分30を受け入れるように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、針支持部分30は、少なくとも約0.5mm及び/又は約5mm以下の直径、ならびに少なくとも約2mm及び/又は約2.5mm以下の軸線方向長さを有し、流路26の近位部分90は、少なくとも約0.6 mm及び/又は約6 mm以下の直径、ならびに少なくとも約2.5mm及び/又は約26mm以下の軸線方向長さを有する。いくつかの実施形態では、近位部分90の直径は、遠位部分92の直径より大きい。図示されている配置構成では、先細り部分92は、近位流路部分90と遠位流路部分94との間で遷移する。先細り部分92は、針16を遠位流路94内に案内することができる。図示されている実施形態では、流路26の遠位部分94は、例えば、針16を支持するために、針16の外径とほぼ同じである直径を有する。
【0019】
次に図1Bを参照すると、例示されているフランジ64は、弾性部材などの阻止部材102が、例えば、外周上、径方向、軸線方向、これらの組み合わせ、又は同様の方向に延在する外向きに延在する部分100を備える。図示されている阻止部材102の端部104は、傾斜した面106及び全体的に平坦な面108を有する径方向外向きに延在するくさびの形状として(阻止部材102の径方向幅が端部104へ進むにつれ大きくなるように)形成される。同様に、全体的にくさび形状の回転ロック部材110、例えば、軸線方向リブは、ハウジング14の内面22から径方向内向きに延在し、傾斜した面112と全体的に平坦な面114を備える。図示されている変更形態では、傾斜した面112は、傾斜した面106と反対方向となるように構成される。図示されている端部104及び回転ロック部材110は、全体的にくさび形状であるけれども、限定はしないが一般的に半球、円錐台形、波形、又は同様の形状などの、多くの形状を使用することができる。いくつかの実施形態では、回転ロック部材110の軸線方向長さは、阻止部材102及び/又はフランジ64の軸線方向長さより大きい。いくつかの実施形態では、阻止部材102の少なくとも一部は、回転ロック部材110の少なくとも一部の中に嵌合するように、又はその逆となるように構成される。例えば、阻止部材102は、回転ロック部材110内に備えられているスロット内に嵌合するように構成されたタブを具備することができる。いくつかの実施形態では、阻止部材102の少なくとも一部は、ハウジング14の開口部中に嵌合するように構成される。ノッチ116は、外向きに延在する部分100と端部104とを分離する。ノッチ116は、以下でさらに詳しく説明するように、軸線方向ロック部材50の軸線方向断面と少なくとも同じくらいの大きさとなるように構成され得る。
【0020】
再び図1を参照すると、スリーブ12は、例えば、移動時にスリーブ12の向き付けを行うことを補助する複数のトラック80〜84を備える。多くの配置構成において、トラックは、ハウジング14の案内部材44を摺動可能に受け入れるように構成される。したがって、トラック80〜84は、案内部材44と同様の断面形状、例えば、全体的に矩形、全体的にT字形、全体的に円形のセクタ、又は同様のものを有するように構成され得る。例えば、例示されている案内部材44及びトラック80〜84は、全体的に台形の断面を有する。第1のトラック80及び第2のトラック82は、全体的に軸線18に平行であり、近位端60から遠位端62までスリーブ12にそって延在する。分離部材85は、その長さの少なくとも一部、又は大部分全体を通してトラック80、82を分離する。分離移行トラック84は、スリーブの長さにそって、軸線18に関して角度をなして(例えば、軸線に対して非平行で)真ん中の又は中間の領域に位置決めされ、分離部材85を遮り、第1の及び第2のトラック80、82と交差する。移行トラック84は、したがって、案内部材44が第1の及び第2のトラック80、82との間でシフトすることができるように第1の及び第2のトラック80、82を連結することができるが、これについては以下でさらに詳しく説明する。移行トラック84は、移行トラック84にそって滑らかに進行できるように全体的にまっすぐであり、また曲線を成さないものとしてよい。図示されている例では、移行トラック84の交差点は、スリーブ12のおおよそ真ん中に位置決めされ、移行トラック84と第1のトラック80との交差点は、移行トラック84と第2のトラック82との交差点の近位にある。いくつかの実施形態では、移行トラック84の長さは、一般的に、スリーブ12の断面幅(例えば、直径)とほぼ同じサイズであり、スリーブ12の長さより実質的に小さくてよい。例示されている実施形態では、移行トラック84は、第1又は第2のトラック80、82のいずれかの一部、又はそのいずれかの連続部分を成さず、むしろ、移行トラック84は、トラック80、82の始まりと終わりとの間に間隔をあけて並ぶそれぞれのトラック80、82上のある点(例えば、トラック80、82の中間の、又は真ん中の領域)のところで両方の他のトラック80、82から離れる方向に延在する。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1のトラック80は、移行トラック84の遠位に挿入部分86を備える。挿入部分86は、近位方向に傾斜し、第1のトラック80と移行トラック84との間の交差点のところの全体的に平坦な面88で終端するように構成され得る。いくつかの実施形態では、挿入部分86は、カバー10の組み立てを円滑にする働きをする。例えば、一配置構成の組み立て時に、スリーブ12はハウジング14の近位端34に挿入して通され、遠位に移動される。スリーブ12の遠位端62は、案内部材44が第1のトラック80の挿入部分86と全体的に揃えられるように位置決めされる。スリーブが遠位に移動されると、案内部材44は、全体的に平坦な面88に到達するまで挿入部分86の傾斜を上へ移動するか、又は上り、その地点で案内部材44は第1のトラック80の底部にスナップ式に嵌まるものとしてよい。この後、平坦な面88は、挿入部分86にそって遠位に移動する案内部材44に障壁を設けることによってカバー10の分解を阻止又は防止することができる。さらに、平坦な面88は、スリーブ12の引き込み時に案内部材44を第1のトラック80から移行トラック84に導くことができる。
【0022】
カバー10は、針のさまざまなサイズならびに挿入及び/又は引き抜き操作の種類に対応できるように、多くの異なるサイズを有することができる。例えば、カバー10は、医療(歯科を含む)及び獣医学的操作で使用される針に対応できるように構成され得る。いくつかの実施形態では、カバー10は、全長が少なくとも約10mm及び/又は約100mm以下、ハウジング14の直径が少なくとも約6mm及び/又は約20mm以下、スリーブ12の直径が少なくとも約3mm及び/又は約18mm以下であるものとしてよい。いくつかの実施形態では、スリーブ12は、ハウジング14より長く、いくつかの実施形態では、ハウジング14は、スリーブ12より長い。カバー10のいくつかの例は、少なくとも約5mm及び/又は約50mm以下の長さを有するハウジング14及び少なくとも約5mm及び/又は約50mm以下の長さを持つスリーブを備える。他の配置構成は、少なくとも約15mm及び/又は約30mm以下の長さを持つハウジング14及び少なくとも約10mm及び/又は約40mm以下の長さを持つスリーブを有する。カバーのいくつかの実施形態は、少なくとも約7ゲージ及び/又は約34ゲージ以下の針16とともに使用するように構成される。
【0023】
スリーブ12及びハウジング14の多くの実施形態は、さまざまな潜在的な挿入深さ(針16による最大貫通距離)を備えるように構成される。これは、例えば、さまざまな操作、例えば、筋肉内対皮下注射の間の異なる所望の挿入深さを扱う際の補助となり得る。いくつかの実施形態では、潜在的な挿入深さは、スリーブ12が完全に伸展された位置(図1)から完全に引っ込んだ位置(図5)まで進行するときの距離によって決定される。いくつかの実施形態では、潜在的な挿入深さは、少なくとも1mm及び/又は約30mm以下である。他の構造では、潜在的な挿入深さは、少なくとも3mm及び/又は約70mm以下である。いくつかの実施形態では、潜在的な挿入深さを決定し、設定し、及び/又は変化させるための機構がある。例えば、いくつかの実施形態は、ハウジング14の内面22から径方向内向きに延在し、軸線方向に移動可能な歯止めに結合されたストッパー部材(図示せず)を備え、スリーブ12の近位端60は、挿入深さの所望のレベルに達したときにストッパー部材に当接する。いくつかの実施形態では、カバー10は、針16の挿入深さを示す、印、例えば、スリーブ12上に印刷された目盛りを備える。
【0024】
カバー10、及びそのコンポーネントは、コンポーネントの所望の形状をもたらすのに十分な多くの製造プロセスを使用して形成され得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のコンポーネントは、限定はしないが、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、トランスファー成形、又は類似のものなどの、成形プロセスによって形成される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のコンポーネントは、鍛造、機械加工、鋳込成形、型押し、押し出し成形、これらの組み合わせ、又は同様の方法によって形成される。
【0025】
多くの実施形態において、カバー10は、生体適合性材料から構成される。いくつかの配置構成において、カバー10の1つ又は複数のコンポーネントはプラスチック(例えば、ポリエーテルエーテルケトン)又は金属(例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、又は同様のもの)製である。いくつかの実施形態では、ハウジング14及び/又はスリーブ12は、半透明、不透明、又は他の何らかの形で光学的に歪みのある材料から製作され、針16の一部分(先端部など)又は全部が注射及び/又は吸引それ自体を実施前、実施中、及び/又は実施後に一般的に典型的な注射及び/又は吸引操作において患者からは見えない。さらに、軸線方向ロック部材50に対するハウジング14内の流路26及び開口部48を別にして、ハウジング14及びスリーブ12のいくつかの例は、一般的に、又は全体として封じ込められ、例えばスロット、開口部、又は針16が見えないように患者を阻止する他の開口を欠いている。したがって、注射及び/又は吸引操作時に、流路26を貫通しない針16の一部は、ハウジング14及びスリーブ12によって視認することができないようにされ、流路26を貫通する針16の一部分は、バイアルの内側、又は患者体内にあるため視認することができない。もちろん、いくつかの場合において、とりわけ、スリーブ12の遠位端62の特定の形状、及び針16がバイアル及び/又は患者の皮膚もしくは組織に挿入される角度に応じて、針16全体を、注射及び/又は吸引操作全体を通して完全に目立たなくしなくてもよい場合がある。多くの人々は、単純に針を見て不安になるので、上述の特徴体は、患者及び/又は注射及び/又は吸引を施す人(自己注射の場合には患者であることもある)の不安もしくは恐れを著しく低減し、治療の体験全体をより快適なものとすることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、スリーブ12の遠位端62は、圧力受容体刺激特徴体を備える。注射及び/又は吸引の領域内の圧力受容体神経の刺激は、疼痛受容体神経の刺激と競合もしくは干渉することが知られている。多くの患者において、このような圧力受容体神経の刺激は、針16の挿入時の疼痛の知覚を低下させる。したがって、いくつかの構造では、遠位端62は、遠位端62から延在し、流路26から離れる、複数の軸線方向及び/又は径方向に延在するリブもしくは突出部130を備える。例えば、いくつかの実施形態では、リブ又は突出部は、一般的に、開口28の周りにアスタリスクの形状で配置構成される。使用中、突出部130は、針16の先端部46が患者の皮膚もしくは組織と接触する直前に患者の皮膚もしくは組織と係合するように構成され得る。このようにして、突出部130は、針16の挿入の前又はほぼ同時に患者の圧力受容体神経を刺激する圧力を皮膚又は組織に印加する。いくつかの実施形態では、遠位端62は、患者の皮膚又は組織と係合し、針16の挿入前に患者の圧力受容体を刺激するための突出、錐体、リング、又は同様のものなどの、1つ又は一連の陥凹部又は突起部を備える。いくつかの配置構成では、スリーブ12の遠位端62は、実質的に平坦であるか、勾配が付けられているか、又は同様の形状である。遠位端62の特定の構成は、一般的に、とりわけカバー10の意図された使用分野によって、異なる。
【0027】
カバー10のいくつかの配置構成は、遠位端62に位置する治療剤を備える。例えば、いくつかの実施形態では、遠位端62は、局所麻酔剤を備える。いくつかの実施形態では、遠位端62は、ヨード又は消毒用アルコールなどの消毒剤、及び/又は抗生剤もしくは抗ウイルス薬を備える。いくつかの実施形態では、治療剤は、カバー10が使用されるまでキャップを施されるか、又は保護される。
【0028】
いくつかの実施形態では、バネ70の付勢とは別に、スリーブ12は、実質的に邪魔されることなく引っ込められる。カバー10では、一方の手で注射器に圧力をかけ、及び/又は注射器上のプランジャを操作し、もう一方の手で別の特徴体(例えば、留め金)を操作しなくてよい。いくつかの実施形態では、スリーブ12を移動すると、自動的に、ロック部材50、110のうちの1つ又は複数と係合する。いくつかの実施形態では、ほぼ完全に引っ込められた位置からほぼ完全に伸展した位置にスリーブ12が移動することで、カバー10の再利用が防止又は阻止される。カバー10は、スリーブ12(露出針16)を片手で引っ込める操作、注射器の片手操作、スリーブ12(針16の覆い)を片手で引っ込める操作、及び/又はカバー10の再利用を阻止するために特徴体の片手での係合を円滑にするように構成され得る。スリーブ12を引っ込め、及び/又は伸展するステップとは別に、カバー10は自動的にロックすることができ、軸線方向ロック部材50及び/又は回転ロック部材110と係合するために外部入力(例えば、使用者の指の手動操作からの)を必要としなくて済む。
【0029】
いくつかの実施形態では、カバー10は、針支持部分30、遠位開口部42、及び案内部材44とともにハウジング14を形成することによって製造される。ハウジング14が複数の構成要素を備える実施形態では、製造プロセスは、ハウジング14を組み立てるステップを含み得る。トラック80〜84を有するスリーブが形成される。案内部材44は、第1のトラック80の挿入部分86と位置合わせされる。スリーブ12は、遠位開口部42を通して摺動可能に移動される。いくつかの変更形態において、案内部材44は、挿入部分86内の斜面を上り、平坦な面88のあたりで第1のトラック80にスナップ式に係合し、それにより、案内部材44は挿入部分86に戻ることが防止される。針16は、ハウジング14の針支持部分30と結合される。バネ70は、ハウジング14の中央室36内に挿入され、スリーブ12を付勢するように位置決めされる。
【0030】
図1C及び1Dに示されているように、カバー10は、ハウジング14に取り外し可能に結合されたキャップ32を備えることができる。キャップ32の遠位端は、ちょうつがい33を使って開放位置(図1C)と閉鎖位置(図1D)との間を移動することができる。閉鎖位置では、キャップ32は、例えば、カバー10の輸送及び保管時に、ハウジング14のスリーブ12及び遠位端38の汚染を低減又は防止する。キャップ32は、一般的に、注射及び/又は吸引操作の直前になるまで閉鎖位置に保持され、操作時に、キャップ32は開放位置に移動され、及び/又はハウジング14から取り外される。いくつかの実施形態では、図1及び1Aに示されているようにスリーブ12が針16を覆っているので、注射及び/又は吸引操作前にキャップ32を開くか、又は取り外しても、針16は露出しない。さらに、キャップ32が取り外された場合、注射及び/又は吸引操作が完了した後、スリーブ12は針16も覆っているので、即座に廃棄することができる。キャップ32は、例えば、キャップ32を開閉しやすいように構成された開放部分37を備えることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、キャップは、バイアルから薬剤1回分を適切にくみ出すのを補助する移動可能な、又は取り外し可能な部分を備えることができる。例えば、キャップ32は、案内部材44が第2のトラック82又は移行トラック84内に入る十分な距離だけスリーブ12がハウジング14内に引っ込められるのを防ぐようにサイズが決められ、構成され得る。いくつかの実施形態では、キャップ32は、スリーブ12が軸線方向ロック部材50及び/又は回転ロック部材110と係合する十分遠くまでハウジング14内に引っ込むのを防ぐように構成され、これはそうしなければデバイスのさらなる使用を防ぐことができる。いくつかの実施形態では、キャップ32は、案内部材44が第1のトラック80内に摺動可能に受け入れられたままとなるようにスリーブ12の引き込みを制限する。
【0032】
不安、特に子供の不安を軽減するために、キャップ32、ハウジング14、及び/又はスリーブ12は、虹、風船、アニメキャラクター、又は子供にとって楽しく、慰めとなると一般的に思われる他のイラストなどのさまざまな美的なデザインを備えることができる。この方法では、子供の患者は、注射及び/又は吸引操作の前にさまざまな異なるカバー10のうちのから選択することが可能になる。キャップ32は、色づけするか、又は印を付けることに加えて、又はそれの代替えとして、注射及び/又は吸引操作の前にハウジング14から取り外した後、注射及び/又は吸引操作時にキャップ32を子供の患者に見せて注意を逸らせることができるようにさまざまな異なるアニメキャラクター又は他のオブジェクトに似るように加工することができる。アニメキャラクター又は他のオブジェクトに似るように加工された場合、キャップ32のサイズ及び全体的に円筒形の形状により、指人形として子供が使用するのに特に適したものとなる。これらの特徴体のそれぞれは、注射及び/又は吸引の操作前、操作中、及び操作後に多くの子供が経験する不安又は恐れを軽減する機会を与える。
【0033】
図1〜8Aは、図1に示されている初期又は使える状態にある伸展構成から、中間位置又は図5に示されている完全に引っ込められた位置に、そして図8Aに示されている最終的な、もしくは再利用防止された伸展構成に進む動作サイクルにおけるさまざまな位置のカバー10を示している。以下は、例示的な実施形態を示し、制限することを意図していないことは理解されるであろう。また、この実施形態では針16が患者の皮膚を貫通するために使用されていることを説明しているけれども、カバー10はそのような使用に限定されないこともさらに理解されるであろう。
【0034】
図1〜1Cは、初期の使える状態にある構成のカバー10を示している。上で説明されているように、カバー10は、注射器もしくは他の医療デバイスに結合され、これにより、注射器は針16と流体的に連通する。キャップ32(使用されている場合)を取り外し、表面準備ステップ(該当する場合、例えば、表面を消毒する)を実行した後、カバー10の遠位端62を患者の皮膚の所望の貫通部位にあてがうことができる。
【0035】
次に図2を参照すると、カバー10が第1の部分的に引っ込められた構成で示されている。スリーブ12の引き込みは、一般的に、使用者がカバー10及び/又は注射器に圧力を遠位方向に加えることによって開始され、これにより、スリーブ12はバネ70の付勢に抵抗して近位に向けられる。次いで、スリーブ12がこのように引っ込められることで、針16の遠位先端部96が露出し、針16による患者の皮膚内への貫通が開始する。第1のトラック80内に位置決めされているハウジング14の案内部材44は、スリーブ12を第1及び移行トラック80、84の交差点あたりまで軸線方向に移動させる。第1及び移行トラック80、84の交差点に到達した後、案内部材44は、平坦な面88に当たり、これにより案内部材が移行トラック84内に導かれる。この動作段階で、プロセスを逆転することができる。遠位圧力が取り除かれると、カバー10は、図1に示されている元の使える状態の構成に戻ることができる。図2A及び2Bに示されているように、スリーブ12のフランジ64が近位方向に移動すると、軸線方向ロック部材50は、フランジ64内のノッチ116を通過する。
【0036】
図3の例示されている構成では、スリーブ12はさらに近位に移動しており、針16はさらに露出されている。この時点で、スリーブ12は、流路26の近位部分90が針支持部分30の受け入れを開始するように十分近位に移動しており、軸線方向ロック部材50は、フランジ64(図3A)内のノッチ116を通過しており、案内部材44は、移行トラック84内に位置決めされている。スリーブ12が近位に移動すると、案内部材44は、移行トラック84を通過し、これにより、スリーブ12が軸線18の周りにほぼその度数だけ、例えば、少なくとも5°及び/又は約90°以下の角度だけ回転し、第1の及び第2のトラック80、82を分離する。次いで、スリーブ12が回転すると、阻止部材102を含めて、フランジ64が回転する。図3Bに示されているように、阻止部材102の傾斜した面106は、回転ロック部材110の傾斜した面112の方へ回転する。スリーブ12のフランジ64の阻止部材102の継続的回転により傾斜した面106、112の摺動可能な係合がなされ、これにより、阻止部材102が径方向内向きに湾曲し、わずかな、しかし顕著な抵抗が生じる。いくつかの実施形態では、例示されているように、阻止部材102の長さは、一般的に、移行トラック84の長さとほぼ同じであるか、又は短いものとしてよい。
【0037】
図4及び4Aの図を参照すると、スリーブ12はハウジング14内に引き込まれ続けており、これはさらに針16を露出している。案内部材44は、移行トラック84から第2のトラック82にシフトしており、したがって、ハウジング14に関してスリーブ12がさらに回転する。針支持部分30は、流路26の近位部分90によってさらに受け入れられている。図4Bに示されているように、阻止部材102の傾斜した面106が回転ロック部材110の傾斜した面112の天頂を超えて回転した後、阻止部材102は、径方向外向きに湾曲し、それにより図2Bに示されている径方向位置のあたりに戻る。この構成では、全体的に平坦な面108、114は、物理的ストッパーを構成し、これにより、スリーブ12の逆回転が阻止される。これは、次いで、以下で説明するように、案内部材44が移行トラック84内に戻るのを防ぐ。いくつかの実施形態では、阻止部材102の外向きの湾曲により、感触でわかる振動及び/又は耳に聞こえる音、例えば、「カチリ」という音が発生し、回転ロック部材110がロックされ、逆回転が防がれていることを確認できる。
【0038】
カバー10の完全に引っ込められた構成は、図5に例示されている。針16は、露出のその頂点にあり、最も長い露出した針長をもたらす。スリーブ12の遠位端62は、一般的に、ハウジング14の遠位端38と同一平面にある。流路26の近位部分90は、針支持部分30をほぼ完全に受け入れている。バネ70は、一般的にその完全に圧縮された構成になるまで圧縮される。いくつかの実施形態では、これは、注射器の内容物が、ハブ20及び針16を介して、患者体内に注射される構成である。
【0039】
図6及び6Aを参照すると、針16の引き抜きの初期段階が示されている。引き抜きは一般的に、使用者が注射器を患者から引き離すときに、又は使用者が弱い遠位圧力をカバー10及び/又は注射器に加えたときに開始し、これにより、バネ70の付勢でスリーブ12が遠位に伸展され得る。スリーブ12が遠位に伸展すると、これは、流路26内に針16を受け入れ、これにより、針16の少なくとも一部(遠位端など)が覆われる。スリーブ12が遠位に移動した場合も案内部材44は第2のトラック82にそって摺動する。全体的に平坦な面108、114の係合により、スリーブ12の逆回転が阻止されるか、又は防止され、次いで、案内部材44が第2のトラック82と移行トラック84との間の交差点で移行トラック84内にシフトすることが防止される。
【0040】
図7及び7Aは、スリーブ12がさらに進展されており、また針16もさらに覆われているカバー10の構成を示している。動作のこの段階において、スリーブ12が遠位に移動すると、フランジ64の外向きに延在する部分100は軸線方向ロック部材50と摺動するように係合する。フランジ64の外向きに延在する部分100は、軸線方向ロック部材50を径方向外向きに押しやり、わずかな、しかし顕著な抵抗を発生する。
【0041】
図8及び8Aを次に参照すると、カバー10の伸展された、再利用防止構成が示されている。スリーブ12は、完全に伸展されており、針16を完全に覆う。バネ70は、フランジ64が段部40に当たるまでスリーブ12を遠位に移動している。フランジ64の外向きに延在する部分100が軸線方向ロック部材50の第2の端部54を遠位に移動すると、軸線方向ロック部材50はフランジ64の外向きに延在する部分100に関して径方向内向きにスナップ式に嵌合する。そこで、軸線方向ロック部材50は、スリーブ12が再び近位に引っ込むのを阻止する物理的ストッパーを備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの軸線方向ロック部材50の内向きの湾曲により、感触でわかる振動及び/又は耳に聞こえる音、例えば、「カチリ」という音が発生し、軸線方向ロック部材50が係合したことを確認できる。
【0042】
図9〜14Aは、カバー10の別の実施形態を示している。カバー10aのいくつかの特徴体及びコンポーネントは、カバー10に関して上で説明されているものと形態及び機能が類似しており、類似の番号が振られている。カバー10aのコンポーネントが上で説明されているカバー10のものとわずかに異なる範囲で、いくつかのこれらの違いについて以下に記述し説明する。開示されている実施形態の特徴体及び/又はコンポーネントは、組み合わせるか、又は入れ替えて使用することができる。
【0043】
図9〜9Bに例示されている実施形態において、カバー10aは、針16aが位置決めされる軸線18aを備える全体的に円筒形のハウジング14aを備える。ハウジング14aの遠位端は、軸線18aにそって並進し、軸線18aを中心として少なくとも部分的に回転するように構成されたスリーブ12aに結合する。スリーブ12aの近位端60aは、径方向外向きに延在するフランジ64aに結合する。ハウジング14aの近位端34aは、ハブ20aを備えるか、又はハブ20a結合される。ハウジング14aの内面22aは、中央室36aを備える。1つ又は複数のリブ110aは、内面22aから径方向内向きに延在する。ハウジング14aの遠位端38aは、室36aと連通する開口部42aを備える径方向内向きに延在する段部40aを備えることができる。開口部42aは、スリーブ12aを摺動的に受け入れ、これは次いで、針16aを受け入れ、覆う。案内部材44aは、段部40aから径方向内向きに延在し、スリーブ12a内に形成された1つ又は複数のトラックと係合するように構成されている。
【0044】
図9〜9Bの図を引き続き参照すると、ハウジング14aは、少なくとも1つの軸線方向ロック部材50aを備える。軸線方向ロック部材50aは、ハウジング14aの近位端34aの内面22aからハウジング14aの遠位端38aの内面22aの近くまで軸線18aに全体的に平行に延在し得る。軸線方向ロック部材50aの一部は、軸線18aにおおよそ平行に延在し、スリーブ12aが軸線方向に移動するときにスリーブ12aのフランジ64aとの干渉を回避するように構成される。軸線方向ロック部材50aの第2の端部54aは、径方向内向きにある角度を持つ。図9Bに示されているように、いくつかの配置構成では、軸線方向ロック部材50aの第2の端部54aは、フランジ64a内のノッチ116aと位置を合わされ、これにより、第2の端部54aはノッチ116aを通過することができる。
【0045】
図10〜10Bを参照すると、カバー10aが部分的に引っ込められた構成で示されている。上で説明されているように、案内部材44aは、スリーブ12aの引き込み時に第1のトラック80aにそってある距離だけ近位に進行する。案内部材44aは、第1のトラック80aと交差する移行トラック84a内に導かれ、次いで、第2のトラック82a内に導かれ、これにより、ハウジング14aに関してスリーブ12aが少なくとも部分的に回転することができる。移行トラック84aは、傾斜を付けることができ、したがって、移行トラック84aと第2のトラック82aとの間に高さの差が存在し得る。移行トラック84aにおける傾斜は、わずかであるが、顕著な抵抗を発生し得る。案内部材44aは、高さの差にわたって導かれ、第2のトラック82a内に入り、これにより耳に聞こえる音による、又は感触でわかるアラートを発生することができる。高さの差は、案内部材44aが移行トラック84a内に戻るのを阻止又は防止し、次いで、スリーブ12の回転を阻止することができる。図示されている配置構成では、スリーブ12aが回転すると、フランジ64aの外向きに延在する部分100aは、回転して第2の端部54aと径方向に干渉する。
【0046】
図11及び11Aは、スリーブ12aが完全に引っ込められた状態の構成のカバー10aを示している。案内部材44aは、第2のトラック82a内に導かれ、第2のトラック82aにそってある距離だけ進行している。図示されているように、スリーブ12aの遠位端62aは、ハウジング14aの遠位端38aと一般的に同一平面にある。
【0047】
スリーブ12aが漸進的に伸展された位置にあるカバー10aの構成は、図12〜14Aに示されている。バネ70aの付勢によりスリーブ12aが遠位に押しやられると、第2のトラック82a内の案内部材44aは、ハウジング14aに関するスリーブ12aの回転を防止又は阻止する。上述のように、第2のトラック82aと移行トラック84aとの高さの差により、案内部材44aが第2のトラック82aから移行トラック84aに移動することが防止又は阻止され得る。フランジ64aがハウジングの遠位端38aに近づくにつれ、外向きに延在する部分100aは、軸線方向ロック部材50aを径方向外向きに押しやり、これにより、わずかな、しかし顕著な抵抗を発生する。フランジ64aが軸線方向ロック部材50aの第2の端部54aの遠位に移動した後、ロック部材50aは径方向内向きにその位置に戻ってからフランジ64aと係合する。いくつかの実施形態では、軸線方向ロック部材50aのこのような移動により感触でわかる、又は耳に聞こえる音によるアラートが発生する。図14Aに示されているように、少なくとも1つの軸線方向ロック部材50aの第2の端部54aは、フランジ64aの外向きに延在する部分100aが近位に移動するのを防ぐ。したがって、カバー10aの再利用は阻止又は防止される。
【0048】
針カバーは特定の好ましい実施形態及び例の文脈で開示されてきたが、針カバーは具体的に開示された実施形態を超えて、その他の代替的実施形態及び/又は発明の用途、ならびにその明らかな修正形態及び等価物に拡大することが、当業者によって理解されるであろう。例えば、ロック及び/又は再利用阻止特徴体をさまざまな医療及び非医療分野で使用することも可能であろう。例えば、上で説明されているスリーブ及びハウジングの実施形態は、全体的に軸線方向断面形状が円形であるけれども、スリーブ及びハウジングの他の実施形態は、正方形、楕円形、六角形、八角形、又は同様の形状などのさまざまな他の形状を採用する。開示された実施形態のさまざまな特徴及び態様が、針カバーのさまざまな形態を形成するために、互いに組み合わされ、又は代わりに用いられることができることは理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、複数のトラックがハウジングの内面上に位置決めされ、スリーブから外向きに延在する案内部材を受け入れるように構成される。そこで、本明細書に開示された針カバーの範囲は、上記に説明した特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図され、以下の請求項を公平に読むことによってのみ決定されるべきである。
【符号の説明】
【0049】
10 カバー
10a カバー
12 スリーブ
12a スリーブ
14 ハウジング
14a 全体的に円筒形のハウジング
16 針
16a 針
18 軸線
18a 軸線
20 ハブ
20a ハブ
22 内面
22a 内面
24 外面
26 流路
28 開口
30 針支持部分
32 キャップ
33 ちょうつがい
34 近位端
34a 近位端
36 中央室
36a 中央室
37 開放部分
38 遠位端
38a 遠位端
40 段部
40a 段部
42 開口部
42a 開口部
44 案内部材
44a 案内部材
46 外側部分
48 開口部
50 軸線方向ロック部材
50a 軸線方向ロック部材
52 第1の端部
54 第2の端部
54a 第2の端部
60 近位端
60a 近位端
62 遠位端
62a 遠位端
64 フランジ
64a フランジ
66 配置部分
68 類似の部分
70 バネ
70a バネ
80 トラック
80a 第1のトラック
82 トラック
82a 第2のトラック
84 移行トラック
84a 移行トラック
85 分離部材
86 挿入部分
88 全体的に平坦な面
90 近位部分
92 先細り部分
94 遠位部分
96 遠位先端部
100 外向きに延在する部分
100a 外向きに延在する部分
102 阻止部材
104 端部
106 傾斜した面
108 全体的に平坦な面
110 全体的にくさび形状の回転ロック部材
110a リブ
112 傾斜した面
114 全体的に平坦な面
116 ノッチ
116a ノッチ
130 突出部
図1
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図2A
図2B
図3
図3A
図3B
図4
図4A
図4B
図5
図5A
図6
図6A
図7
図7A
図8
図8A
図9
図9A
図9B
図10
図10A
図10B
図11
図11A
図11B
図12
図12A
図12B
図13
図13A
図13B
図14
図14A