特許第6363206号(P6363206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363206
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】自動車用の超音波センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20180712BHJP
   G01S 15/93 20060101ALI20180712BHJP
   G01S 7/521 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H04R17/00 330G
   G01S15/93
   G01S7/521 A
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-542247(P2016-542247)
(86)(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公表番号】特表2017-508329(P2017-508329A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2014076559
(87)【国際公開番号】WO2015096960
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年8月17日
(31)【優先権主張番号】102013022061.0
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ビルヘルム、ベーリング
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング、ハム
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−191007(JP,A)
【文献】 特開2010−245600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/521
G01S 15/93
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の超音波センサ(20)を製造するための方法であって、
超音波センサ(20)のために、発信方向(21)において超音波信号を発信するダイヤフラム(23)とセンサハウジング(24)とが用意され、
前記ダイヤフラム(23)が前記センサハウジングの中に及び/又は前記センサハウジングに接して固定され、
前記センサハウジング(24)は、前記ダイヤフラム(23)の前記発信方向(21)を向く前側面(25)と、前記発信方向(21)と反対側の後方向(27)を向く後側面(26)とを有し、
前記前側面(25)において、前記センサハウジング(24)に前記ダイヤフラム(23)用の前側開口部(28)が形成されており、
前記センサハウジング(24)の前記前側面(25)が、箔からなるキャップ(52)に連結され、前記キャップ(52)により前記センサハウジング(24)の前記前側開口部(28)が前記発信方向(21)において覆われ、前記ダイヤフラム(23)が、前記キャップ(52)の受容部(53)に少なくとも部分的に挿入され、前記ダイヤフラム(23)の前側面(22)であって前記発信方向(21)を向く前側面(22)が、前記キャップ(52)の前記受容部(53)のベース(55)に連結され
前記ダイヤフラム(23)は、正確に適合した態様で前記受容部(53)に受容され、
前記ダイヤフラム(23)と前記センサハウジング(24)との間の中間空間(61)を、キャスティング化合物(60)で充填する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記キャップ(52)の前記センサハウジング(24)への連結前に、前記ダイヤフラム(23)は前記キャップ(52)の前記受容部(53)に挿入され、前記受容部(53)の前記ベース(55)に連結される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
最初に、前記キャップ(52)が前記センサハウジング(24)の前記前側面(25)に連結され、続いて、前記ダイヤフラム(23)が前記発信方向(21)において前記センサハウジング(24)に、前記センサハウジング(24)の前記後側面(26)において形成された後側設置開口部(29)を介して挿入され、前記ダイヤフラムが、前記センサハウジング(24)の内部空間(30)及び前記前側開口部(28)を介して、前記センサハウジング(24)の前記前側面(25)における設置位置へ載置され、前記ダイヤフラムが、前記設置位置において、前記受容部(53)の前記ベース(55)に連結される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キャップ(52)は、0.5mm未満の厚さを有する箔から製造される、
ことを特徴とする請求項1乃至の一項に記載の方法。
【請求項5】
前記キャップ(52)には、前記センサハウジング(24)に対面する内側面(55)において、金属からなる被覆が施されている、
ことを特徴とする請求項1乃至の一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ダイヤフラム(23)の前記前側面(22)は、前記キャップ(52)の前記受容部(53)の前記ベース(55)に、接着パッド(54)を介して連結される、
ことを特徴とする請求項1乃至の一項に記載の方法。
【請求項7】
前記キャップ(52)は、前記センサハウジング(24)の前記前側面(25)に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至の一項に記載の方法。
【請求項8】
前記キャップ(52)は、前記センサハウジング(24)に、特にはレーザ溶接装置によって溶接される、
ことを特徴とする請求項1乃至の一項に記載の方法。
【請求項9】
記ダイヤフラム(23)の内部空間を、前記キャスティング化合物(60)で充填する、
ことを特徴とする請求項1乃至の一項に記載の方法。
【請求項10】
前記キャスティング化合物(60)は、単一成分のキャスティング化合物である、
ことを特徴とする請求項1乃至9の一項に記載の方法。
【請求項11】
自動車用の超音波センサ(20)であって、
超音波信号を発信方向(21)において発信するダイヤフラム(23)と、
センサハウジング(24)と、を備え、
前記ダイヤフラム(23)は、前記センサハウジング(24)の中に及び/又は前記センサハウジング(24)に接して固定されており、
前記センサハウジング(24)は、前記ダイヤフラム(23)の前記発信方向(21)を向く前側面(25)と、前記発信方向(21)と反対側の後方向(27)を向く後側面(26)とを有し、前記前側面(25)において、前記センサハウジング(24)は前記ダイヤフラム(23)用の前側開口部(28)を有しており、
前記センサハウジング(24)の前記前側面(25)は、箔からなるキャップ(52)に連結されており、前記キャップ(52)により前記センサハウジング(24)の前記前側開口部(28)が前記発信方向(21)において覆われており、前記ダイヤフラム(23)は、前記キャップ(52)の受容部(53)に少なくとも部分的に挿入されており、前記ダイヤフラム(23)の前側面(22)であって前記発信方向(21)を向く前側面(22)が前記キャップ(52)の前記受容部(53)のベース(55)に連結されており、
前記ダイヤフラム(23)は、正確に適合した態様で前記受容部(53)に受容されており、
前記ダイヤフラム(23)と前記センサハウジング(24)との間の中間空間(61)は、キャスティング化合物(60)で充填されている、
ことを特徴とする超音波センサ(20)。
【請求項12】
請求項11に記載の超音波センサ(20)を有する自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用超音波センサの製造方法に関する。この方法において、超音波センサのために、超音波信号を発信方向に発信するダイヤフラムとセンサハウジングとが用意され、ダイヤフラムがセンサハウジングの中に及び/又はこれに接して固定される。センサハウジングは、ダイヤフラムの発信方向を向く前側面と、発信方向と反対側の後方向を向く後側面とを有している。センサハウジングに、その前側面において、ダイヤフラム用の前側開口部が形成されている。また、本発明は、自動車用の超音波センサ、及びこのタイプの超音波センサを有する自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用超音波センサは既に先行技術であり、それ自体公知の方法によって自動車の前方領域や後方領域、例えばバンパーに設置され得る。超音波センサは、運転者支援装置に配属されるものであって、自動車の周囲に関する情報、より正確には自動車とその周囲に存在する障害物との間の距離に関する情報を提供する。運転者支援装置は、この場合、例えば停車支援システム、死角監視のためのシステム、車間距離維持のためのシステム、ブレーキ支援システム等であり得る。
【0003】
このようなタイプの超音波センサを、目から隠さない、すなわち目に見える(可視的な)態様において関連するパネル部分、例えばバンパーに配設することが既に知られている。これは、これらの超音波センサが、車両の関連するパネル部分の全長に亘って延在する切欠や開口内に配設されていて、外部から見ることができるということを意味している。ここで、超音波センサのポット形状(pot-shaped)のダイヤフラム、いわゆるアルミニウムポットは、ダイヤフラムの前側面がパネル部分の外面と同一平面となるように終端するような態様で、パネル部分の通路開口に延びている。
【0004】
目に見えないような態様で設置されたトランスデューサや超音波センサも知られている。つまり、パネル部分を外部から見たとき、これらは見えずにパネル部により目に入らないようにされている。このような方法で、パネル部の後方に直接的に設置された超音波センサの場合、超音波信号はパネル部の材料、通常はプラスチックを介して、発信され受信されることとなる。
【0005】
本件の関心の焦点は、特に、可視的な、すなわち隠されていない態様で設置された超音波センサであって、そのダイヤフラムが関連するパネル部の全長に亘って延在する切欠内に配設されている超音波センサにある。このようなタイプの超音波センサは、通常、パネル部に、プラスチックからなるブラケットによって固定されている。ここで、ブラケットは、パネル部に、両面接着テープにより、熱的かしめにより、又は超音波により取り付けられる。次いで、超音波センサがブラケットに挿入されて固定され得る。超音波センサをバンパーに可視的に設置するためのこのタイプのブラケットの使用は、例えば、DE 10 2007 043 400 A1号により公知である。ここで、ダイヤフラムを含むセンサハウジングは、バンパーに直接的に連結されているブラケットに、戻り止め作用(detent action)により係合される。
【0006】
超音波センサを製造するための方法は、例えば、EP 2 027 580 B1号から公知である。ポット形状のダイヤフラムのダイヤフラムベースに固定された圧電素子によって、第1アセンブリが形成される。この第1アセンブリは、次いで、第2アセンブリを形成するように、柔軟で弾性的な分離要素に挿入される。次に、このようにして形成された第2アセンブリが、第3アセンブリを形成するように、超音波センサのセンサハウジングのハウジング部に戻り止め作用によって挿入される。分離要素は、超音波センサの発信方向に反対側の設置方向において、ハウジング部に挿入される。
【0007】
別の方法が、DE 101 25 272 A1号に記載されている。この製造方法の場合、超音波センサのダイヤフラムは、最初に2部品射出成形装置に載置される。更なる加工工程において、プラスチックハウジングがダイヤフラムの周囲に射出成形される。プラスチックハウジングが硬化した後、ゴム状の分離要素が、更なる工程において、ダイヤフラムとプラスチックハウジングとの間に射出成形される。このようにして、センサハウジングに対するダイヤフラムの正確且つ永久的な位置決めが確保される。
【0008】
超音波センサの製造のための公知の方法であって、EP 2 027 580 B1号の方法に類似している方法について、図1を参照しながら以下により詳しく説明する。最初に、ポット形状のダイヤフラム1、及び超音波センサ3用の一体型センサハウジング2が用意される。まず、ダイヤフラム1に、外部から表面プロテクタが設けられる。センサハウジング2は、ダイヤフラム1の発信方向4を向くその前側面5から、ダイヤフラム1とともに分離要素6を受容できるように設計されている。この目的のために、センサハウジング2は、ダイヤフラム1及び分離要素6用の受容部を形成する前側開口部7を有している。ダイヤフラム1は、環状カラー(encircling collar)8を有している。組立前の段階において、ダイヤフラム1は、最初に、分離要素6に押し込まれる。ダイヤフラム1と分離要素6とにより形成されたユニットは、次いで、センサハウジング2又は前側面5から連続する前側開口部7に正確に位置決めされた態様で設置される。次いで、その上にシリコーンの表面が成型された追加の分離リング19が、ダイヤフラム1に押し当てて配置されるとともに、センサハウジング2にレーザ溶接によって機械的に固定して連結される。第2組立ラインで、圧電素子9が、発信方向4において、センサハウジング2の内部空間11に、センサハウジング2の後側設置開口部10を介して挿入され、そして、接着剤によって、ダイヤフラムベース13の後側面12であって内部空間11に対面している後側面12に固定される。このようなタイプの方法や好適な接着剤の選択は、DE 10 2011 120 391 A1号に記載されている。更なる工程において、第2組立ラインで、接触素子18とプラグコネクタとがセンサハウジング2に発信方向4において押し込まれる。接触素子18は、圧電素子9に至ることが意図されるとともにこれに向かって屈曲しており、ワイヤ17が溶接されている。ここで、ワイヤは、センサハウジング2に後側設置開口部10を介して挿入され、次いで圧電素子9にレーザ及びはんだによって溶接される。次いで、ポット形状のダイヤフラム1の内部空間が、後側から、したがって後側設置開口部10を介して、シール化合物で充填され、そして超音波センサはおよそ24時間かけてエージング処理を受ける。更なる組立ラインで、印刷回路板が、後側設置開口部10を介してプラグコネクタピン14に押し当てて配置される。絶縁変位技術がこの目的のために使用される。センサハウジング2に存在するキャビティすなわち内部空間11は、最終的に電子シール化合物で充填され、そして連続加熱炉にて硬化される。
【0009】
現今では、多くの超音波センサが上述の原理によって製造されている。この製造方法は、非常に信頼性が高いと判明しているが、特に製造コストを削減することを目的として超音波センサの製造方法を更に簡略化するという課題が存在している。特に、ここで、第1にダイヤフラムの分離要素に対する固定及びこのユニットのセンサハウジングへの設置、そして第2に追加の分離リングの取付け及びセンサハウジングに対する溶接加工が比較的煩雑であるとわかっている。今日、超音波センサは、例えば小型車両等の低価格帯の車両においても使用されるものであるから、製造工程の改良を求める同様の要請がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、冒頭に記載した一般的な方法において、従来技術に比較して超音波センサの製造費用が削減されるが、超音波センサそれ自体の特性には影響を与えない方法を特定する、及び/又はよりコスト効率の高いセンサを提供することである。
【0011】
この目的は、各独立請求項に記載の特徴を有する本発明による方法、超音波センサ、及び自動車によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項、発明の詳細な説明、及び図面において特定される。
【0012】
本発明による方法は、自動車用の超音波センサの製造に資する。超音波センサは、特に自動車のパネル部の全長に亘って延在する切欠に可視的に配置されるように設計されている。超音波センサのために、超音波信号を発信方向において発信するダイヤフラムと、センサハウジングとが用意される。ダイヤフラムは、センサハウジングの中に及び/又はセンサハウジングに接して固定されている。センサハウジングによって、超音波センサは、例えば戻り止め作用によって、自動車のパネル部に連結されたブラケットに係合して設置され得る。センサハウジングは、超音波センサの部品を収容するのに役立つ。センサハウジングは、ダイヤフラムの発信方向を向く前側面と、発信方向に反対側の後方向を向く後側面と、を有している。センサハウジングは、その前側面において、ダイヤフラム用の前側開口部が形成される。本発明によれば、センサハウジングの前側面は、箔からなるキャップに連結され、このキャップによってセンサハウジングの前側開口部は発信方向において覆われる。ダイヤフラムは少なくとも部分的にキャップの受容部に挿入され、ここで、ダイヤフラムの前側面であって発信方向を向く前側面は、キャップの受容部のベースに連結される。
【0013】
本発明によれば、箔からなるキャップすなわち箔からなる帽子状構造体、したがってカバーが設けられ、これによりセンサハウジングの前側開口部がダイヤフラムの送信方向において覆われる。カバーは、センサハウジングの内部空間に対面する受容部を有している。この受容部に、発信方向を向くダイヤフラムの前側面が受容又は導入されている。超音波信号はダイヤフラムの前側面を介して送信される。キャップにより覆われたダイヤフラムにより、追加のシールを不要とすることができ、且つ従来技術のダイヤフラムをセンサハウジングに設置するための別々の分離要素を省略することが可能となり得る。具体的には、ダイヤフラムは本質的に剛性の箔からなるキャップによってセンサハウジングに固定され、これによりダイヤフラムはキャップによって外部からの影響に対して確実に保護されている。したがって、キャップは、センサハウジングのダイヤフラムとセンサハウジングとの間の接触面におけるシールに関する追加手段であって設置費用及びコストに関する関連デメリットを有する追加手段が無用となるという利点を有している。また、超音波センサの動作中の氷生成に関しても一切問題が生じない。したがって、全体として、製造費用が従来技術に比較して削減される。なぜならば、ダイヤフラムをキャップの受容部に固定し、キャップをセンサハウジングに固定する必要しかないからである。
【0014】
キャップすなわち箔からなるポットは、好適には、製造ラインにおいて平坦な箔ストリップから打抜かれ、次いでツール内で熱作用の下で深絞りされる。したがって、収納コストや梱包コストを負担することなく、単一の長い箔ストリップを購入することが可能である。有利には、箔ストリップは、その片面において、金属により、特には銅により被覆されることが可能である。この被覆面が、キャップを形成するための変形後に、センサハウジングの内部空間に対面する。
【0015】
ここで、ダイヤフラムの環状カラーを省略することも可能であり、これによりダイヤフラムはカラーのないポット形状を有する。具体的には、ダイヤフラムの固定のためのカラーはもはや必要ない。
【0016】
組立順序や関連する設置方向に関して、2つの別の実施形態が提供可能である。
【0017】
一方の実施形態において、キャップのセンサハウジングに対する連結の前に、ダイヤフラムはキャップの受容部に挿入されて、受容部のベースに連結され得る。これにより、キャップとダイヤフラムとからなるユニットをセンサハウジングの前側面に連結し、センサハウジングに固定することが可能となる。特に、より高い寸法精度とより小さい公差において固定することが可能となる。従来技術に比較して多大な費用を要することなく、ダイヤフラムをセンサハウジングにキャップを介して、弾性的な又は柔軟で弾性的な分離要素を操作してハウジングに溶接することを必要とせずに設置することができる。更に、超音波センサの外側寸法をこのようにして正確に設定できる。
【0018】
他方で、以下の実施形態も想定され得る。最初にキャップをセンサハウジングの前側面に連結し、続いてダイヤフラムを発信方向においてセンサハウジングに、センサハウジングの後側面に形成された後側設置開口部を介して挿入する。そして、ダイヤフラムを、センサハウジングの内部空間と前側開口部を介して、センサハウジングの前側面における設置位置、したがってキャップの受容部へと載置する。この設置位置において、ダイヤフラムを受容部のベースに連結する。この実施形態において、ダイヤフラムはセンサハウジングの前側面からではなく後側面から、したがってダイヤフラムの発信方向すなわち送信方向において設置される。ダイヤフラム及び超音波センサの更なる部品の設置が、後側設置開口部を介して、単一の設置側から、具体的には後側のみから実施される。したがって、製造費用が削減される。なぜならばセンサハウジングの内部に前側から挿入すべき部品は皆無だからである。これにより、製造費用のみならず製造コストも削減される。
【0019】
好適には、ダイヤフラムは、正確に適合した態様でキャップの受容部に受容される。特に、これは、キャップの受容部の径がダイヤフラムの外径に略一致しており、したがって、ダイヤフラムの少なくとも前側部がその寸法とその形状に関してキャップの受容部に適合している、ということを意味する。したがって、キャップとダイヤフラムとの間の形状の適合した連結が生じる。このため、キャップのベースは、基本的にダイヤフラムの前側面とともに振動するため、ダイヤフラムの振動特性に影響を与えることも超音波信号の伝播を妨げることもない。更に、ダイヤフラムは動作中に極めて安定して保持され得る。
【0020】
キャップは、好適には、0.5mm未満の厚さ、特には0.2又は0.25又は0.3mmの厚さを有する箔から製造される。このようなタイプの非常に薄いフィルムは、超音波信号が妨げられることなく伝播することを同様に可能とするとともに、ダイヤフラムの動作に影響を与えることがない。
【0021】
一実施形態において、キャップは、特にセンサハウジングに対面する内側面において、金属、特には銅からなる被覆を施されている。このようなタイプの金属被覆は、キャップが導電性形状部であり、且つ特に良好なEMC(電磁共存性)シールドを形成するという点において有利である。
【0022】
一実施形態において、キャップは、特には車両の色と同色のペンキ及び/又は顧客の嗜好に従う色のペンキの被覆によって覆われ得る。特に、キャップを形成するための箔は、カラーペンキの被覆を既に施された箔であり得る。すなわち、キャップは、その外面においてカラーペンキを施され得る。これにより、所望の色の超音波センサが組立工程中に組み立てられるため、その後の色付けが不要とできる。したがって、自動車のパネル部の高品質な全体的外観を実現できる。このため、カラーペンキの被覆によって統一的で連続したカラーデザインが可能となる。
【0023】
ダイヤフラムの前側面は、好適には、接着パッドによってキャップの受容部のベースに連結される。したがって、ダイヤフラムの前側面は、接着パッドを介してキャップのベースの内側面に当接する。接着パッドは、例えば、0.05mmの厚さを有する両面接着パッドであり得る。接着パッドの使用は、特に、液体接着剤の計量や熱作用の下での硬化が必要なくなり、必要とされる製造時間が削減されるという点において有利である。
【0024】
一実施形態において、キャップはセンサハウジングの前側面に取り付けられている。このため、多大な費用を要することなく、設置が実施され得る。
【0025】
また、キャップがセンサハウジングに、特にレーザ溶接装置を用いて溶接されるという形態も想定され得る。溶接加工により、自動車の動作中の比較的強い力にも耐え得る非常に強力な連結及び/又はシール連結が実現される。更に、既存のレーザ装置を使用することもできる。
【0026】
ダイヤフラムとセンサハウジングとの間の中間空間及び/又はダイヤフラムの内部空間がシール化合物で、特に単一成分のシール化合物で充填される形態も想定され得る。例えば、シリコーンからなるシール化合物、特には単一成分のシリコーンシール化合物、及び/又は絶縁フォーム、特に単一成分フォーム、例えばPUフォームが使用され得る。したがって、超音波装置と車両のパネル部との間の外部分離リングが省略可能となる。単一成分のシリコーンシール化合物の使用は、適用が簡単であるということと、また実際にシール化合物は発泡しないという点において有利である。
【0027】
また、本発明は、自動車用の超音波センサであって、超音波信号を発信方向において発信するダイヤフラムと、センサハウジングと、を備え、ダイヤフラムは、センサハウジングの中に及び/又はセンサハウジングに接して固定されており、センサハウジングは、ダイヤフラムの発信方向を向く前側面と、発信方向と反対側の後方向を向く後側面とを有し、前側面において、センサハウジングはダイヤフラム用の前側開口部を有している、自動車用の超音波センサに関する。センサハウジングの前側面は、箔からなるキャップに連結されており、キャップによりセンサハウジングの前側開口部が発信方向において覆われており、ダイヤフラムは、キャップの受容部に少なくとも部分的に挿入されており、ダイヤフラムの前側面であって発信方向を向く前側面がキャップの受容部のベースに連結されている。
【0028】
本発明による自動車は、本発明による超音波センサを備えている。
【0029】
本発明による方法に関して呈示された好適な実施形態及びその利点は、本発明による超音波センサ及び本発明による自動車に対しても同様に適用される。
【0030】
本発明の更なる特徴は、請求項から、図面から、そして図面の説明から明らかになるであろう。上記の全ての特徴及びその組み合わせ、並びに図面の説明及び/又は図面のみにおいて示される以下の特徴及びその組み合わせは、特定された各組合せにおいてだけでなく、他の組合せにおいて、又は単独で利用され得る。
【0031】
本発明を、いくつかの好適な実施形態に基づいて添付図面を参照しつつ以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】従来技術による超音波センサの断面を概略的に示す図。
図2】本発明の第1実施形態による超音波センサの断面を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図2は、本発明の実施形態による超音波センサ20を示す。超音波センサ20は、自動車のパネル部に、例えばバンパーに設置するために提供される。ここで、超音波センサ20は、特にパネル部において可視的なしたがって隠されていない設置用に設けられる。これにより、パネル部への設置後、キャップ52の前側面62であってダイヤフラム23の発信方向21を向く前側面62が自動車の外部から見えるとともに、この前側面62は例えばパネル部の外面と同一平面となるようにして終端している。しかしながら、超音波センサは隠された態様で設置され得ることも理解されたい。したがって、パネル部を外側からみたとき、超音波センサは見えないようパネル部によって隠されている。この場合、超音波センサはパネル部の後方に直接的に設置されるであろう。また、超音波信号は、パネル部の素材、通常はプラスチックを介して、発信され受信されるであろう。
【0034】
超音波センサ20は、センサハウジング24を備えており、この内部に超音波センサ20の部品が保護された態様で収容されている。センサハウジング24により、超音波センサ20はパネル部に固定され得る。ここで、センサハウジング24は、例えばブラケットに連結されて、このブラケットを介してパネル部に固定される。例えば、センサハウジング24は、戻り止め作用によってブラケットに係合される。センサハウジング24は、例えばプラスチックから一体形成されている。
【0035】
センサハウジング24は、ダイヤフラム23の発信方向21すなわち送信方向を向く前側面25と、反対方向27を向く後側面26と、を有している。前側面25において、センサハウジングに、通路開口である前側開口部28が形成されている。同様に、後側設置開口部29が後側面26に形成されている。設置されていない状態において、センサハウジング24の内部空間30は、プラスチック材料によって、径方向においてのみ画成されている、つまり発信方向21に直交している。
【0036】
センサハウジング24はプラグコネクタ32を更に有しており、このプラグコネクタ32によって超音波センサ20は自動車の制御装置に電気的に結合され得る。
【0037】
ダイヤフラム23は、全体としてポット形状であり、例えばアルミニウムから構成されている。ダイヤフラム23は、発信方向2を向く前側面22を有しており、この前側面22を介して超音波信号が発信される。また、前側面22を有するダイヤフラム23は、ダイヤフラムベース33と円筒形環状シェル34とを有している。前側面22の反対側に配置された後側面35において、ダイヤフラム23は開放しており開口部36を有している。ダイヤフラム23は、環状カラーを有することなく形成されている。つまりカラーを有していない。
【0038】
ダイヤフラムベース33の後側面38であって内部空間30に対面する後側面38において、ダイヤフラム23を励起するように設計された圧電素子39が配設されている。圧電素子39は、ワイヤ40と電気的接触素子41と接触ピン42とを介して給電される。
【0039】
センサハウジング24には、その前側面25において、キャップ52用の環状台座(encircling seat)51が形成されている。センサハウジング24の前側開口部28とダイヤフラム23は、キャップ52によって見えないようにされている。この場合、キャップ52は、箔から、特にはプラスチック箔から形成されている。キャップは箔からなるカップ形状又は箔からなる帽子状構造体の形状をしており、ダイヤフラム23が正確に適合して挿入される受容部53を有している。この場合、ダイヤフラム23の前側面22は、接着パッド54によって、キャップ52の内側面であって内部空間30に対面する内側面に、したがってキャップ52のベース55に粘着接合されている。ここで、受容部53の内径がダイヤフラム23の外径に略一致するように、受容部53の形状はダイヤフラム23の形状に適合している。
【0040】
キャップ52は、センサハウジング24の環状台座51に前面において軸方向に取り付けられ、レーザによってセンサハウジング24に溶接されている。
【0041】
キャップ52は、例えば0.2又は0.25mmの厚さを有している。
【0042】
以下に、超音波センサ20の製造及び組立に関する2つの選択可能な方法をより詳細に述べる。
【0043】
いずれの方法においても、センサハウジング24、ダイヤフラム23、及びキャップ52が最初に互いに別々に用意される。ここで、キャップ52は、製造ラインで薄箔からなるストリップから打抜かれ、次いでツール内で高温で深絞りされ得る。この箔ストリップは、その片面に銅被覆を施されており、この銅被覆面は、キャップ52を形成するための変形後、受容部53に位置して内側面に当接するとともに、接着パッド54に接触して配置される。
【0044】
ダイヤフラム23は、相対回転を防止するカラーを有することなく製造され、また被覆の必要がない。したがって、ダイヤフラム23に対する追加の表面プロテクタが省略され得る。なぜならば、ダイヤフラムはキャップ52によって保護されるからである。
【0045】
第1の方法において、ダイヤフラム23は、正確に位置決めされた態様で、キャップ52の受容部53に接着パッド54を介して、特には熱硬化工程を実施することなく粘着接合される。次いで、キャップ52は、ダイヤフラム23とともにセンサハウジング24の環状台座51に押し当てて配置され、これにレーザ溶接装置を用いて連結される。
【0046】
第2の方法において、最初にキャップ52が、センサハウジング24又はセンサハウジング24に挿入された別の保持要素に連結される。次いで、ダイヤフラム23が、後側設置開口部29を介して内部空間30に挿入され、前側面25において設置位置へ載置されるとともに、キャップ52の受容部53に受容される。これを可能とすべく、内部空間30が径方向において少なくともダイヤフラム23の外径と同じ大きさを有するように接触ピン42が径方向に更に外側に移され、こうして、ダイヤフラムが、障害なく内部空間30に挿入されて設置位置に載置されることが可能とされる。
【0047】
いずれの方法においても、更なるステップにおいて、圧電素子39が設置される。ここで、圧電素子39は、内部空間30に、後側面26から後側設置開口部29を介して挿入され、ダイヤフラムベース33の後側面38に対して位置決めされ押し当てて配置されて粘着接合される。ここで、例えば液体接着剤が使用され得る。また任意ではあるが、DE 10 2011 120 391 A1号に記載のような低温で硬化し好適には空気がなくても硬化する接着剤も使用され得る。これに代えて、接着パッドも使用され得る。
【0048】
こうして、接触素子41がセンサハウジング24から屈曲可能となり、ワイヤ40が圧電素子39に溶接されて連結される。
【0049】
いずれの方法においても、更なる方法工程において、ダイヤフラム23とセンサハウジング24との間の中間空間61と、任意ではあるがダイヤフラム23の内部空間と、任意ではあるがセンサハウジング24の内部空間30の隣接領域とが、シール化合物60で充填される。ここで、好適には、単一成分のシール化合物、例えば特には単一成分のフォーム及び/又は単一成分のシリコーンシール化合物が使用される。
【0050】
更なる組立工程において、印刷回路基板50が接触ピン42、43に取付けられる又は押し当てて配置される。
【0051】
次いで、印刷回路基板50は、接触ピン42、43に取付けられる。続いて、印刷回路基板50と設置開口部29との間の空間が、シール化合物で、例えば単一成分のフォーム及び/又は単一成分のシリコーンシール化合物で同様に充填され得る。シール化合物に加えて又はこれに代えて、特にはプラスチック箔の形態にあるプラスチックカバー49が、後側設置開口部29を覆うように使用され得る。このプラスチックカバー49は、例えばセンサハウジング24に超音波によって溶接され得る。任意ではあるが、カバー49又は箔の内側面に、特に銅からなる金属層を設けることも可能である。その後、金属層は追加のEMCシールドとして機能する。
図1
図2