(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、ステアリング補助モータ(M)のシャフト(1)のような第1可動部材(1)と、該第1可動部材(1)と分離され、ラック(2)のような第2可動部材(2)とを備え、上記第1可動部材(1)および上記第2可動部材(2)は、少なくとも上記第1部材(1)と上記第2部材(2)との間における力(C1)および運動の伝達を可能とする第1接続部(L1)を介して互いに協働する車両のステアリング機構(4)に含まれる可動ステアリング部材(1,2,3)の位置を算出するための方法であって、
上記第1部材(1)の所定の原点に関する瞬時位置(θ1)を測定する基準位置取得ステップ(a)と、
上記第1部材(1)の上記瞬時位置(θ1)から上記第2部材(2)の瞬時位置(θ2)を算出する換算ステップ(b)と、
上記第1部材(1)と上記第2部材(2)との間で上記第1接続部(L1)を介して伝達される瞬間力を表す応力値(C1)を得る応力測定ステップ(c)と、
上記第2部材(2)の位置(θ2)の算出において、上記第1部材(1)から伝達される力の影響下における上記第1接続部(L1)の弾性変形によって生じる上記第1部材(1)に対する上記第2部材(2)の位置シフト(δθL1)を考慮に入れるために、上記応力値(C1)に基づいて上記換算ステップ(b)を適用する補正ステップ(d)とを含んでおり、
上記補正ステップ(d)において、上記応力値(C1)下での上記第1接続部(L1)の弾性変形に対応する位置シフト(δθL1)を表す補正成分(δθL1)を、上記第1接続部(L1)の弾性挙動を表す所定の弾性アバカス(AL1)にしたがって、上記応力値(C1)と関連付け、
上記弾性アバカス(AL1)を、上記ステアリング機構(4)の摩耗状態に基づいて変更する
ことを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面を使用して、純粋に説明的に非制限的な目的のために提供される以下の説明を読むことでより詳細に明らかになるだろう。
【0023】
本発明は、位置、より具体的には、少なくとも、例えば補助モータMのシャフト1のような第1可動部材1と、第1可動部材1と分離された例えばラック2のような第2可動部材2とを備える車両ステアリング機構4に含まれる可動ステアリング部材1,2,3の絶対位置を算出するための方法に関しており、第1可動部材1および第2可動部材2は、第1部材1と第2部材2との間における力C1および運動の伝達を可能とする少なくとも1つの第1接続部L1を介して互いに協働する。
【0024】
ステアリング機構4は、好ましくは、ハンドル3を備えており、このハンドル3を介して運転者は、(好ましくはラックの長手方向軸に実質的に一致し、かつ好ましくは車両のステアリングと交差する、
図1においてYで示された方向に沿って)車両の車台に固定されたステアリングケースの内部のラック2を移動させるために、ラック2に係合するステアリングコラム5に作用すること、より具体的にはハンドルトルクC
Vを手動で加えることができる。
【0025】
説明の便宜上、その長手水平方向(車両の前後方向)がXで示され、横水平方向(左右方向)がYで示され、鉛直方向がZで示された方向三面体によって形成された記号は、ステアリング機構4に、より広くは車両に関連付けられている。
【0026】
ラック2の移動、すなわち(方向Yに沿った)変位は、ステアリングロッド6,7を介して、左操舵輪8および右操舵輪9のヨー方向(軸Zまわりのステアリング角度α
8,α
9)の変化を生じさせる。
【0027】
好ましくは、
図1に示すように、ステアリング機構4は、少なくとも1つの好ましくは電気式の補助モータMを備えたパワーステアリング機構を形成しており、好ましくは2つの操作方向を有し、そのことは所定の補助法則にしたがってステアリングの操縦に補助トルクを提供することを許容し、当該補助トルクは「モータトルク」C
Mと呼ばれる。
【0028】
例えば、このモータトルクC
Mは、車輪のステアリングを容易にするために、あるいは進路変更の終了時にハンドル3を中央位置に戻すのを助けるために、ハンドルトルクC
Vを増幅することが可能である。
【0029】
好ましい変形例によると、ステアリング機構4は、
図1に示すように、ダブルピニオン機構を形成している。
【0030】
そのようなダブルピニオン機構は、まず第一に、「補助セクション」を形成する運動連鎖部に、そのシャフト1が第1可動部材を構成しかつ第1ピニオン11を含む第1接続部L1を介してステアリングラック2に係合する補助モータMを備えており、ステアリングラック2はステアリングケース内においてスライド可能に取り付けられかつ第2可動部材を構成している。
【0031】
上記ダブルピニオン機構は、また、「手動セクション」を形成する運動連鎖部(上述のものとは離れかつ分離されている)にハンドル3を備えており、当該ハンドル3は第3可動部材を構成しかつ第2ピニオン12(この例では、ハンドル3を保持する端部と逆側のステアリングコラムの端部に固定されている)を含む第2接続部L2によってラック2に係合している。
【0032】
そのようにされて、本発明に係る方法は、それが同じ運動連鎖に属する他の部材の位置の情報から可動部材の位置を知る(算出する)ものであるため、他の種類のステアリング装置にも十分に適用可能である。
【0033】
よって、ステアリング機構4は、例えばウォームホイールおよびウォームスクリューを有する減速機を介して、ハンドル3とコラム5がラック2に噛み合うのを可能とするピニオン12(この場合に限る)との間にあるステアリングコラム5に直接的に係合する補助モータMを備えた簡易ピニオン機構を代替的に形成していてもよい。
【0034】
説明の簡単な便宜上、以下では、好ましいものとしてであってそれに限定する目的ではなく、上述したステアリング部材、およびより具体的にはダブルピニオン装置を参照する。
【0035】
いかなる場合でも、
図2に示すように、部材1,2,3が互いに(直列に)取り付けられることにより互いに相互作用することや接続部L1,L2,Li(iは整数を表す)の運動学的性質によって規定される別個の経路に沿って移動することを可能とする一連の可動ステアリング部材1,2,3,i+1および接続部L1,L2,Liは、ステアリング機構4の運動連鎖を形成するだろうし、最終的には車両の操舵要素(操舵輪8,9)のステアリング角度α
8,α
9の変更を可能とする。
【0036】
関連する接続部L1,L2,Liは、もちろん、入力部材が操舵輪8,9のステアリング角度を変更するために出力部材を駆動するのを可能とするのに、および/または、当該ステアリング角度を特に路面から車輪に作用する応力に抗して維持するのに十分な、入力部材(例えば接続部L1に対する第1部材1)からそれらの出力部材(例えば接続部L1に対する第2部材2)への機械的動力伝達を可能とするように設けられる。
【0037】
もちろん、接続部L1,L2,Liは、動力伝達C1,C1,Ciのための連続する2つの部材1,2,3の連結および望ましい運動変換のための任意の適当な形態をとり得る。
【0038】
接続部L1,L2,Liは、有利には双方向性であり、すなわち左方のみでなく右方へのステアリング移動を可能とする。
【0039】
特に好ましい態様では、上記接続部L1,L2,Liは可逆性であり、すなわち入力部材が出力部材を駆動することもできるし、その逆に、出力部材が入力部材を駆動することもできる。このように、上記接続部は例えばギア、コネクティングロッドアセンブリ、または可逆ボールねじによる接続部を形成していてもよい。
【0040】
好ましい変形例によると、第2部材はステアリングケースにスライド可能に取り付けられたステアリングラック2によって構成されており、当該第2部材には第1部材1がピニオン11によって噛み合う。
【0041】
本発明に係る方法にしたがってラック2の位置を計算により求めることを選択することは、ステアリング運動連鎖においてラック2が車輪8,9に特に近い(スタブ軸のヨー回転を制御するコネクティングロッド6,7のみによってラック2が車輪8,9から分離されているため)ため、操舵輪8,9のヨー角度(ステアリング角度)の特に正確で信頼できる計測を得ることを可能とすることに留意されたい。
【0042】
このステアリング角度情報α
8,α
9を使用する安全システム、特に経路制御システム(ESP)の有効度が、したがって向上されるだろう。
【0043】
本発明によると、方法は基準位置取得ステップ(a)を含んでおり、当該ステップにおいては所定の原点に関する第1部材1の瞬時位置θ1が測定される。
【0044】
より好ましくは、第1部材1はステアリング補助モータMのシャフト1によって構成されており、補助モータの当該シャフト1の瞬時角度位置θ1は、基準位置取得ステップ(a)の間に好ましくは当該モータMに組み込まれた位置センサによって測定される。
【0045】
有利には、補助モータ内に既に存在している角度位置センサを用いることは、全ての同期電動機の場合において、およびより広くは車両の車載ネットワーク(制御エリアネットワーク)において、専用の追加的なセンサを省くこと、および、モータMにおいて既に直接取得できる位置θ1の情報を本発明に係る方法にしたがった計算の目的のために直接使用することを可能とする。
【0046】
方法の実施は、したがって有利には、ステアリングシステムの容積あるいは重量の増大を全く生じさせない。
【0047】
説明の便宜上(および方法の使用の簡易化のため)、ステアリング部材1,2,3,12(…)の位置、とりわけ駆動シャフトの角度位置θ1、ラックの長手方向位置θ2、第2ピニオン12の角度位置θ12またはハンドル3の角度位置θ3を表す全ての値θ1、θ2、θ3、θ12(…)を、共通の(固有の)記号で好ましくは「等価角度位置」として表現し、当該記号は好ましくは、慣例的に、ハンドル3の物理的な回転軸(X
3X’
3)に関連付けられている。
【0048】
適切な場合には、例えば車両に関連付けられた記号X,Y,Zにおいて表現されたステアリング部材1,2,12の実際の絶対位置と、ハンドル3の軸に関連付けられた記号における同じステアリング部材1,2,12の等価角度位置との変換は、関連する部材の(物理的な)当該絶対位置に、ハンドル3の考慮される部材1,2,12を分離する接続部L1,L2,Liの接続または連続を幾何学的に特徴付ける伝達比(および特に減速比または増速比)の逆数を乗ずることによって実行され得る。
【0049】
「伝達(比)R
L1,R
L2」(または「変換比」)は、考慮される接続部L1,L2の構造に関連付けられていて、出力部材(ここでは接続部L1に対する第2部材2)の動きの運動学的特性、および特に当該動きの振幅(位置)または速度を規定し、それは入力部材(ここでは同じ接続部L1に対する第1部材1)の動きの特性(振幅、速度)に依存している。
【0050】
この伝達比R
L1,R
L2は、典型的には、ギア接続の場合の(減速または増速における)ギア比に、ボールねじ接続におけるねじ角度単位ごとの軸方向の増分ステップに、または、ピニオン12/ラック2接続の場合のピニオン12のピッチ半径に対応するレバー等に、対応している。
【0051】
よって、例えば、ラックの直線(絶対)位置、すなわちステアリングの中央位置Oに対する当該ラックの直線変位量(一般にミリメートルで表される)は、当該直線変位量に第2接続部L2のギア比(移動変換比)の逆数を、すなわち典型的にはピニオン12のピッチ半径の逆数を乗ずることによって等価角度位置θ2に変換され得る。
【0052】
特に好ましい態様では、可動部材の等価角度位置はさらに「正規化」され得、すなわち共通記号を規定するのに選択された部材(ここでは好ましくはハンドル3)の移動量のスケールに関連付けられる。
【0053】
換言すれば、各ステアリング部材のそれぞれの変位量はハンドル3の等価回転幅の形態で表現可能であって、ハンドルの回転幅は当該部材の考慮される変位量を制御するのに必要である。
【0054】
実際には、ステアリング部材の位置の正規化、およびより具体的にはステアリング部材の等価角度位置の正規化は、考慮される部材1,2,12の(測定または算出された)瞬時位置に対する当該考慮される部材の全移動量による商を求め、そしてこの商にハンドル3の対応する全角度移動量を乗ずることによって行われ得る。
【0055】
一例として、もし考えるならば、ラック2をその中央位置(操舵輪8,9が車両の長手方向軸において並ぶ)からその左方への最大ステアリング位置(操舵輪8,9が車両の左方へ最大限まで向けられる)へ動かすためには、このためにハンドル3をθ3
MAXの角度(全角度移動量)まで左方へ回すことによって当該ラックを全移動量y
2MAXmmまで並進移動させることが必要であり、左方への当該ラックのy
2mmだけの任意の変位量に対応するラック2の正規化された角度位置θ2は、“θ2=y
2/y
2MAX×θ3
MAX”により与えられる。
【0056】
そのような「正規化」モードの表現が、最終的には、(仮想的に、ステアリング機構4の表現および操作を簡易化するために)接続部L1,L2,Liが完全なものであるかどうか、および特に非常に堅いものである(と同時に遊びがない)かどうかを考慮するものであり、それらのそれぞれの伝達比R
L1,R
L2,R
Liは実際に一元的なものである(R
Li=1)ことに留意されたく、そのため、特に、第2部材2(あるいは考慮される運動連鎖における他の任意の部材)の正規化された等価角度位置θ2は第1部材1の正規化された等価角度位置θ1と等しくなる。
【0057】
さらに、全ての場合において、すなわち部材の位置を表すために用いられる表現のモード(実際の絶対位置、等価角度位置、または等価正規化角度位置)に関わらず、記号の原点は、それに対して可動部材の当該位置が定量化されるものであって、好ましくは車輪8,9がまっすぐに位置されているとき、すなわちゼロステアリング角度、すなわちα
8=α
9=0に向けられているときのステアリングの中央位置O(ニュートラル位置)(およびより具体的にはハンドル3の中央位置)に一致している。
【0058】
本発明によると、方法は、基準位置取得ステップ(a)に続いて、第1部材の瞬時位置θ1(および、適切な場合には、第1接続部L1の伝達比R
L1)から第2部材2の瞬時位置θ2を算出する換算ステップ(b)を含んでいる。
【0059】
本発明によると、方法は、また、第1部材1と第2部材2との間で第1接続部L1を介して伝達される瞬間力C1を表す応力値C1を得る応力測定ステップ(c)と、それに続く、第1部材1から伝達される力C1の影響下における第1接続部L1の弾性変形から生じる第1部材2に対する第2部材2の位置シフトδθ
L1を第2部材2の位置θ2の算出において考慮に入れるために当該応力値C1に基づいて換算ステップ(b)を適用する補正ステップ(d)とを含んでいる。
【0060】
便宜上、ステアリング部材の位置がハンドル3の軸(X
3X’
3)に関連付けられた同じ参照記号における角度位置の形態で表されているのと同様に、それぞれが接続部L1,L2,Liを介して伝達される力C1,C1,Ciも当該参照軸(X
3X’
3)まわりの等価駆動トルクの形態で表す。
【0061】
さらに、表記の簡略化および便利のために、力を表す応力値は力C1,C2,Ciそれ自体に同化される。
【0062】
計算のために必要とされる応力値C1,C2,Ciは任意の適当な手段によって、特に、補助モータMのシャフト1やハンドル3の近くのステアリングコラム5等に配置された1つまたはそれ以上のトルクセンサによって、または車載ネットワークにおいて入手可能なデータから実行される任意の適切な計測(計算)によって取得され得る。
【0063】
有利には、本発明に係る方法は、一方で(第1)基準部材1の位置を、他方で第1部材1を第2部材2から隔てる運動連鎖中間セクションの実際の固有弾性の重要性を考慮に入れることにより、比較的シンプルな計算によって、ステアリング運動連鎖の任意の(第2)部材2の位置を高精度にリアルタイムで求めることを可能としており、弾性は、上記中間セクションの異なる要素の構成材料の性質やそれらの形状および大きさに関連していて、応力下における当該セクションの変形のために、仮に接続部が理想的なものである場合に認められるであろう考慮される部材の理論上の位置に対する追加的な撓み影響(シフト)を生じさせる。
【0064】
もちろん、本発明によって提供される計算原理は、関連する運動連鎖の全長にわたって、当該連鎖の部材および構成接続部の数に関わらず、ステップごとに、接続部ごとに、繰り返し行われてもよく、それにより非常に高精度な計算によって、その基準位置が測定によって正確にわかっている部材1から大きく離れていても、連鎖の任意の部材2,3,i+1の位置を求めることができる。
【0065】
さらに、絶対的に、基準として、すなわち計算のための開始点として、その位置が容易に測定され得る運動連鎖の任意の部材を分け隔てなく選択することが有利には可能であり、連続的に交差する異なる接続部の(運動学的および弾性的な)特性がすぐに利用可能になることや対応する応力状態を認識することは、この基準部材から最終的に位置を算出することが望まれる目的部材までステップごとに位置リセット(補正)を行うことを可能とする。
【0066】
よって、例えば、ハンドル3の角度位置、またはラック2の長手方向直線位置の測定により基準位置がわかると考えることができる。
【0067】
特に好ましい態様では、補正ステップ(d)の間において、上記応力値C1下での上記第1接続部L1の弾性変形に対応する位置シフトδθ
L1を表す補正成分δθ
L1は、所定の弾性アバカスA
L1(
図4)にしたがって当該応力値C1と関連付けられており、当該弾性アバカスは「フレキシビリティ曲線」と呼ばれてもよく、また第1接続部L1の弾性挙動を表している。
【0068】
ここでまた、表記の都合により、補正成分δθ
L1は、それが表す位置シフトと同化される。
【0069】
位置シフトδθ
L1およびしたがって対応する補正成分δθ
L1の表現モードは、好ましくは、この補正が適用される目的部材の算出位置を表現するのに使用される表現モードと同種のものであり、当該シフトは、(車両に取り付けられた目盛りにおいて)「実際の」形態で、あるいは好ましくは、(ハンドル3の軸に取り付けられた目盛りにおいて)等価角度シフトの形態で、または特に好ましい態様では、(ハンドル3の移動量のスケールでもたらされる)正規化角度シフトの形態で表現され得る。
【0070】
さらに、位置シフトの算出原理は、もちろん、必要に応じて変更を加えて、検討した運動連鎖における他の接続部の各々と交差するときに適用可能であることに留意されたい。
【0071】
よって、特に
図3に見られるように、上記第2接続部L2が伝達力C2にさらされると、応力値C2下におおける当該第2接続部L2の弾性変形に対応する(第2部材3,12と第2部材2との間における)位置シフトδθ
L2を表す補正成分δθ
L2が、第2部材2と第3ステアリング部材(例えば、第2ピニオン12またはハンドル3)との間における第2接続部L2の交差に関連付けられ得、これは、(第2の)所定の弾性アバカスA
L2(
図5)にしたがって、第2接続部L2の弾性挙動を表している。
【0072】
本発明の一般的原理が、ここでは弾性アバカスによってステアリングの運動連鎖のセクション(それが何であれ)の弾性を特徴付けることからなっていることは注目に値し、当該セクションは当該連鎖の第1ポイントとこの第1ポイントから離れた(かつ、好ましくは第1ポイントが属するステアリング部材とは別体に形成されたステアリング部材に属する)当該連鎖の第2ポイントとの間を延びており、そのため一方では第1ポイントの(測定)位置の認識から、他方では(妥当な場合)第1ポイントと第2ポイントとの間の(理想的な)運動接続部の特性の認識から、当該第2ポイントの有効位置、より具体的には角度位置を算出することが可能であり、そして最後に、関連する補正を計測するために当該セクションを特徴付ける、(架空の理想的な運動学に関する理論的な位置に対する)応力下における位置シフトに関するアバカスが存在するため、当該セクションにかけられる応力状態、より具体的にはねじりトルクが、関係するセクションの長さおよび性質に関わらず、特に当該セクションを構成する別個の部材および接続部の数に関わらず適用可能である。
【0073】
この点において、ステアリング機構4の運動連鎖を所望の数のセクションに任意に分割すること、および、この複数のセクションの各セクションをその独自の弾性アバカスによって特徴付けることが可能であることに留意されたい。
【0074】
各セクションの「長さ」、より具体的には同セクションにおいて一体的に結合された部材および接続部の数は、特に、例えば位置を算出する必要のある「重要な」部材の選択、動力伝達における弾性変形に対する当該部材または接続部の反応性のような様々な基準にしたがって、および/または、運動連鎖の挙動を特徴付けるために提供されることが望ましい(多かれ少なかれ細かい)分解能にしたがって選択され得る。
【0075】
よって、例えば、運動連鎖が(「細かいグリッド」にしたがって)短いセクションの連続に細分される場合、各セクションは接続部L1(および近接して並べられ、当該接続部を形成するために互いに係合する2つの可能部材1,2)のみを含み、各セクションの部材のそれぞれの位置は、ステップごとに、運動連鎖の任意のポイントにおいて高精度に求められ得、それによりステアリング連鎖の状態に関する非常に完成した情報を提供することが可能となる。
【0076】
逆に、同一セクション内における複数の接続部のグループ化(粗いグリッド)は、その重要な性質のために予め選択された(連鎖の全ての構成部材の中での)いくつかの部材の位置を求めることのみを可能とするが、有利にはより少ない(力)センサ、(アバカスのための)より少ない記憶資源、およびより少ない計算能力を使用する。
【0077】
使用されるグリッドの細かさに関わらず、(弾性変形による)位置シフトδθ
L1,δθ
L2,δθ
Liを当該セクションの応力状態C1,C2,Ciに対応付ける、より具体的にはねじり力(等価の)の下における(等価)角度変形を表現する弾性アバカスA
L1,A
L2,A
Liが関連するセクションに割り当てられるだろう。
【0078】
この点において、有利には、セクションの「長さ」の伸長(すなわち当該セクションを構成する部材および接続部の数および/または寸法の増大)は、当該セクションの挙動を入力部材から出力部材まで全体として有効に特徴付けるアバカスが確立され次第、実際には、当該セクションの一端部材(入力部材)の位置からの当該セクションの他端部材(出力部材)の位置の算出の精度を悪化させないことに留意されたい。
【0079】
必要なアバカスは、前もって任意の適当な手段によって、および例えば実験的に実際のステアリング機構4において実行される試験の実施によって、あるいは(有限要素計算の種類の)数値シミュレーションによって、構築されまたはモデル化されてもよい。
【0080】
上記アバカスあるいは「マップ」は、例えば曲線(散布図)の形態においてステアリング計算機の不揮発性メモリに記憶されてもよい。
【0081】
必要とされる記憶スペースを制限するために、上記の概して非線形の曲線は、特に簡略化されかつ制限された数の点(例えば10個の点)の情報に基づいていてもよく、例えば直線区分的にまたは適当な多項式関数によって適当に補間される。
【0082】
さらに、発明者は、検討される接続部L1,L2のアバカスの弾性挙動が、
図4および
図5に見られるように、概してヒステリシス現象を示すことを実験的に発見した。
【0083】
この場合、
図4および
図5に矢印で示すように、ヒステリシスサイクルの移動方向は反時計回り方向である。
【0084】
一次近似として、位置シフトの算出のために、ハーフヒステリシスの平均曲線に対応しかつサイクルの中間点を通る平均弾性挙動を考慮することがしかしながら可能であり、当該平均曲線は
図4および
図5において破線で表されている。
【0085】
実際に、試験は、
図6に見られるように、到達した精度、すなわち算出された位置の値と実際の位置の値との間において示された最大誤差は、ここではラックの位置θ2および第2ピニオン(運転者側)の位置θ12の試験台測定(当該
図6において「測定された」値と呼ばれている値)により検証され、そしてここではハンドル3の±150°の回転幅と等価である駆動シャフト1の角度変化θ1に相当する大きなステアリング振幅に対しても、1°以下であることを示している。
【0086】
指標として、これらの試験の間に実行された力は、車両ステアリングの通常の使用状況に対応するものであって、ハンドルトルクC
Vは3Nmのオーダーのものであり、補助モータによって出力されるモータトルクC
Mは4〜8Nmのオーダーのものであり、これによりラック2にかかる張力は約14kNに達し得る。
【0087】
そのように、本格的な発明を構成し得る実施の可能な変形例によると、ステアリング運動連鎖の1つまたはそれ以上のセクション、より具体的には1つまたはそれ以上の接続部L1,L2の弾性変形に関連したヒステリシス現象を考慮に入れるために、補正ステップ(d)の間に、応力値C1,C2が時間とともに増大する(すなわち、絶対値が増大する)かあるいは逆に時間とともに減少するかによって異なるであろう、応力下での弾性変形における(特に第1接続部L1の)挙動法則を考慮することが完全に可能である。
【0088】
この場合において、ここでヒステリシスは、位置シフトの大きさが、最初に等しい応力値を伴う場合に、当該応力C1,C2の「下降」局面(すなわち、応力の大きさが減少してゼロに近づくとき)におけるものの方が、当該応力C1,C2の「上昇」局面(すなわち、当該応力の大きさが増大してゼロから離れていくとき)におけるものよりも大きい(あるいは大きいままである)という結果を有している。
【0089】
そのような上昇局面(応力増大局面)と下降局面(応力低下局面)との区別は、有利には、弾性変形に関連する位置シフトの向上した推定精度、およびしたがって関連する部材2,3,12の位置の向上した計算を得ることを可能とするだろう。
【0090】
上昇または下降モデルの選択は、応力値C1,C2の進行方向の情報に基づいて行われてもよく、進行方向それ自体は一次導関数を計算することにより、すなわち時間とともに連続して(2つの異なる時点t1およびt2において)測定された2つの応力値C1(t1),C1(t2)の変化(差異)の符号により求められ得る。
【0091】
適切な場合には、ノイズが応力値C1,C2の進行方向の計測を誤らせるのを防止するために、導関数の計算の上流にローパスフィルタが設けられてもよい。
【0092】
好ましくは、
図3に示すように、換算ステップ(b)は、第1接続部L1を仮に変形しないものと考えてその理論伝達比R
L1を第1部材1の位置θ1に乗じることで第2部材2の理論位置成分θth2を算出する理論換算サブステップ(b1)と、第2部材2の有効位置θ2を得るために補正ステップ(d)から得られた補正成分δθ
L1を第2部材の理論位置成分θth2に加算するリセットサブステップ(b2)とを含んでいる。
【0093】
換言すれば、特に
図3および
図6に見られるように、計算を実行するために、好ましくは、出力部材2の有効位置θ2(好ましくは、適切であれば正規化された等価絶対角度位置として表現される)は、入力部材1を伴う接続部L1が理想的であって無限に剛性が高い場合に当該出力部材2が配置されるであろう理論位置θth2に対応する第1成分と、応力C1下での接続部L1の弾性変形によって生じる位置シフトに対応する第2成分δθ
L1との和(符号を考慮に入れた代数学的な)であると考えられる。
【0094】
もちろん、出力部材2の有効絶対位置θ2が正規化される場合、すなわち、ハンドル3のような他の可動部材に付された共通記号において等価角度位置として表現される場合、伝達比R
L1は理論位置を算出する際に無効にされ得(そのことは一元的な伝達比を考えることを意味する)、そのため出力部材2の当該理論位置は(基本的には)入力部材の測定位置と等しくなる(θth2=θ1)。
【0095】
最終的に、この簡略化されたアプローチによると、方法は、応力値C1下での接続部L1の弾性変形に関連付けられた補正成分δθ
L1(また正規化されている、すなわち共通記号における等価角度偏差として表現されている)を第1部材1の測定位置θ1にシンプルに適用する(代数学的に加算する)ことによって、第2部材2の有効位置をリアルタイムで推定する(算出する)ことを可能とする。
【0096】
もちろん、より一般的に、各接続部i(運動連鎖の各セクションの各々)に対して応力値Ciの測定、および弾性変形によって生じる対応する位置シフトδθ
L1の(好ましくは弾性アバカスA
Liにしたがった)算出を繰り返すことにより、基準となる第1部材の測定位置θ1にシフトの代数和を加算することによって、遠隔部材i+1の位置を正確にかつあらゆる瞬間において求めることが可能である(θ
i+1=θ1+Σ
ij=1δθ
Lj)。
【0097】
この点において、説明の便宜上、
図3では、これらの代数学的な和算を示すために、角度位置および考慮されるシフトの固有の(正または負の)符号に関わらず、記号「+」のみを使用していることに留意されたい。
【0098】
もちろん、実際には、特に接続部の構成部材に加わる応力の符号によると、またこれらの応力によって生じる変形の方向に従うと、「代数和」は角度位置の値に対して補正成分の値を減ずることか逆に加えることのいずれかに相当し得る。
【0099】
例えば、ステアリングシステムの従来の使用では、ハンドル3(したがって第2ピニオン12)および補助モータM(およびしたがって駆動シャフト1)はラック2を(能動的に)駆動しかつ概して当該ラックに対して「先行して」いる。
【0100】
換言すれば、そのような場合、対応する接続部の弾性変形は、被操縦部材2が、操縦部材1,12が当該被操縦部材2を到達させようとする理論位置から遅れたままになることをもたらす。
【0101】
よって、
図6に示すように、駆動シャフト1とラック2との間の接続部L1の弾性はシャフト1の(モータ)移動に対してラック2の(導かれる)移動を「遅れさせる」効果を有しており、ラック2の移動の大きさ、およびしたがってラック2の位置θ2は、駆動シャフト1の対応する移動の大きさよりも補正δθ
L1の(絶対)値だけ小さい。
【0102】
この例によると、およそ+152°(ハンドル3の基準座標系において正規化されて表現されている)の駆動シャフト1の位置θ1に対して、ラックは約+146°「にしか」達しておらず、代数学的な補正δθ
L1は約−6°の負の値であることが特に確認され得る。
【0103】
逆に、第2ピニオン12を考慮すると、この第2ピニオン12はラック2およびハンドル3の共通の動きにさらされ、かつ補助モータ1と同じ方向にステアリングを操縦しようとするハンドルトルクC
Vを受けており、ラック2と当該第2ピニオン12との間の接続部L2の弾性は、当該第2ピニオン12が、駆動シャフトの位置θ1によって与えられる理想的な理論位置に対する第2ピニオン12の「遅れ」の一部を「取り戻す」ことを可能とする。
【0104】
実際に、第2ピニオン12の位置θ12を得るためにラックの位置θ2になされるべき補正δθ
L2は、ここで正に算定されるだろう。
【0105】
同等の態様において、このことは、ラック2が当該ラック2を操縦する第2ピニオン12に対して「遅れて」いると考えることに相当する。
【0106】
ここで、上述した例において、第2ピニオン12の位置は(ラックの+146°と比較して)約+150°であるだろう。
【0107】
いかなる場合でも、既に上述したように、本発明に係る方法が、
図6における考慮される部材の「算出された」位置の曲線と(試験台での同時検証により確認された)「測定された」有効位置の曲線との間の近接から立証されるように、1つの基準部材(この例では、駆動シャフト1)の有効位置の情報から異なる部材(この例では、ラック2および第2ピニオン12)の瞬時位置の非常に精確で比較的正確な計測を得ることを可能とすることに留意されたい。
【0108】
この場合において、本発明に係る算出位置と各部材2,12の実際の位置との間の最大絶対誤差、すなわち、「算出された」曲線と「測定された」曲線との間の最大偏差は、1.5°あるいは1°以下であることに留意されたい。
【0109】
ここで、ステアリング機構4の運動連鎖の全体にわたって、基準部材(ここでは駆動シャフト1)の位置を求めるために使用される角度センサの精度レベルと実質的に等しい精度レベルが存在している。
【0110】
そして、ステアリング機構4の部材のそれぞれの位置を求めるための計算において弾性変形を考慮に入れることにより、本発明が有利には従来まで当該計算に悪影響を与えていた誤差を効果的に補償することを可能としていることに留意されたい。
【0111】
好ましい変形例によると、第1部材1はステアリング補助モータMのシャフトにより構成され、応力測定ステップ(c)の間において、モータによって出力される補助トルク(またはモータトルク)C
Mを表す応力値C1が得られる。
【0112】
好ましくは、当該応力値C1は、例えば磁歪式のトルクセンサによって補助モータMのシャフト1によって出力されるトルクを測定することによって、あるいは当該モータMに適用される補助設定値を測定することによって得られる。
【0113】
実際には、モータに適用される補助設定値の測定は、(パワーステアリングを制御する計算機によって管理されるデータを)読み込むこと、あるいは考慮される瞬間に当該モータMに印加される電流の強度を測定することから構成されていてもよく、この強度は当該モータによって出力されるモータトルクC
Mを確かに表している。
【0114】
上述したように、この応力値C1,C
Mは、好ましくは、第1接続部L1の弾性変形に対応する角度位置偏差δθ
L1を計測することを可能とする。
【0115】
有利には、モータトルクC
Mに関する情報は概して既にステアリングを制御する車載ネットワークにおいて利用可能であり、そのため本発明の目的のための当該情報の使用はステアリングの特別な設計を全く必要としないことに留意されたい。
【0116】
好ましい実施形態によると、上述しかつ
図1に示したように、ステアリング機構4は、そのシャフト1が、第1可動部材を構成していて、第1ピニオン11を含む第1接続部L1によって、ステアリングケースにスライド可能に取り付けられかつ第2可動部材を構成するステアリングラック2に係合する補助モータMと、第2ピニオン12を含む第2接続部L2によってラック2に係合する第3可動部材を構成するハンドル3とを備えるダブルピニオン機構である。
【0117】
この変形例によると、基準位置取得ステップ(a)において、補助モータのシャフト1の瞬時角度位置θ1が測定され得、また応力測定ステップ(c)において、一方では補助モータによって提供される補助トルク(モータトルク)C
Mが、他方では運転者によってハンドル3に手動で加えられるハンドルトルクC
Vがそれぞれ測定され得る。そして、
図3に示すように、モータトルクC
Mの影響下における第1接続部L1の変形δθ
L1を考慮に入れて補助モータのシャフト1の角度位置θ1からラックの位置θ2を計算し、続いて、補助トルクC
MとハンドルトルクC
Vの組み合わせ影響下における(すなわち、この例では代数和C2=C
M+C
Vに対応する応力値C2の影響下における)第2接続部L2の変形δθ
L2(第2アバカスA
L2から取得される)を考慮に入れてラックの位置θ2に対する第2ピニオンの位置θ12およびハンドルの角度位置θ3を連続的に計算することにより、ハンドル3の角度位置θ3および/または第2ピニオン12の角度位置θ12を求めることができる。
【0118】
ここで、良い段階的な位置計算例が存在し、その間においては、部材と、位置を知りたい目的部材(ここでは第3部材3,12)から基準部材(第1部材1)を分離する中間接続部とによって構成される運動連鎖の異なる接続部の各々によるシフトへの寄与が連続的に計算される。
【0119】
方法の実施形態の好ましい変形例によると、アバカスA
L1,A
L2はステアリング機構4の摩耗状態にしたがって、例えば車両の走行距離に基づいて変更される。
【0120】
例えば車両の定期点検の間に行われるそのような更新は、特に摩耗の影響を考慮に入れることを可能とし、当該摩耗の間には遊びが段階的に出現しかつ接続部における摩擦が低減し、それらは弾性挙動、より具体的には考慮される接続部(または運動連鎖の考慮されるセクション)の剛性、およびしたがって適当なアバカスのグラフを変更する。
【0121】
本発明は、もちろん本質的に、計算機および/または計算機によって読み取り可能なデータ媒体に関しており、それは本発明に係る方法の実装を可能とするコンピュータプログラムのコード要素を含んでいる。
【0122】
このように、本発明は、既に路上に出ている車両にも、それらのパワーステアリング計算機を簡易的に再プログラミング(アバカスの記憶を含む)することにより、後から実装できることに留意されたい。
【0123】
最後に、本発明は、車両、より具体的には特に人を運ぶための駆動輪および操舵輪を備えた車両に関しており、当該車両は本発明に係る計算機を有し、および/または本発明に係る位置測定方法により制御されるパワーステアリング機構4を備えている。
【0124】
もちろん、本発明は単一の記載された変形例に限定されるものでは決してなく、当業者であれば特に上述した特徴を分離するかもしくは組み合わせ、または等価物に置換することができる。
【0125】
特に、ステアリング機構が1つのピニオン12を有し、その補助モータMがハンドル3と当該ピニオン12との間においてステアリングコラム5に係合している場合、ハンドルの位置θ3またはモータシャフトの位置θ1の情報からピニオン12および/またはラック2の位置を方法によって算出することが完全に可能である
そのような場合、アバカスは、特に、モータトルクC
MまたはモータトルクC
MとハンドルトルクC
Vとの組み合わせに基づいて、ピニオン12を介したモータMとラック2との間の(唯一の)接続部L2の変形を表し得る。