(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記第一LCPは、前記第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断し、前記リードレス心臓ペースメーカーシステムを前記トラッキングモードから前記非トラッキングモードに変化させるように構成されるリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記第二LCPは、前記第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断し、前記リードレス心臓ペースメーカーシステムを前記トラッキングモードから前記非トラッキングモードに変化させるように構成されるリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記第一LCPおよび前記第二LCPの少なくとも一方は、前記第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断するように構成されるとともに、これらは一括して前記リードレス心臓ペースメーカーシステムを前記トラッキングモードから前記非トラッキングモードに変化させるように構成されるリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1、3、および4の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記第二LCPは前記トラッキングモードから前記非トラッキングモードに切り替わるように前記第一LCPに信号を通信するリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1〜5の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記トラッキングモードにおいて、前記第二LCPは前記第一LCPに感知された各心房収縮に対する事象信号を通信するリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1〜6の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記トラッキングモードにおいて、前記第一LCPは前記第二LCPから受信した各事象信号に応じて電気刺激を送達するように構成されるリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1〜7の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記非トラッキングモードにおいて、前記第一LCPは前記第二LCPから受信した信号とは独立して電気刺激を送達するように構成されるリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1〜8の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記非トラッキングモードにおいて、前記第一LCPは所定の頻度で電気刺激を送達するリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1〜9の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記非トラッキングモードにおいて、前記第二LCPは前記第一LCPに人工的な心房収縮を表す事象信号を通信するリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1〜10の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記第一LCPは所定の頻度よりも高くない頻度で電気刺激を送達可能であるリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1〜11の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断することは、前の連続する心房事象の各対の間隔の二つ以上を平均化することを含むリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1〜12の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記第一LCPおよび前記第二LCPは患者の身体を通して導電的に通信可能に接続されるように構成されるリードレス心臓ペースメーカーシステム。
請求項1〜13の何れか一項に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムにおいて、前記トラッキングモードから前記非トラッキングモードに切り替わった後、前記第一LCPは送達される電気刺激の頻度を所定の頻度まで徐々に下げるように構成されるリードレス心臓ペースメーカーシステム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願には様々な修正形態および代替形態が考えられるが、その特定の形態が例として図面に示され、以下に詳細に記載されている。しかしながら、記載された特定の例示的な実施形態に本願の態様を限定することは意図していない。むしろ、本願の意図および範囲に含まれるすべての修正形態、均等形態、および代替形態を包含することを意図している。
【0009】
以下の説明は図面を参照して読まれるべきものであり、図面においては、異なる図中の同様の要素には同様の参照符号が付されている。説明や図面は必ずしも縮尺通りとはなっていないが、例示的な実施形態を示しており、本願の範囲を限定することは意図していない。
【0010】
正常で健康な心臓は、心房および心室の収縮を調整することによって動作する。例えば、心房は通常まず収縮し、対応する心室に血液を送り出す。心室は血液が心室にポンプ輸送された後にのみ収縮し、動脈および体全体に血液を送り出す。患者におけるこのような協調した収縮は、様々な状態によって非同期となる場合がある。心臓のチャンバ間における同期した収縮は、心臓のポンプ能力を向上させることができる。いくつかの場合において、心房は非常に速く鼓動し始め、時に細動化する場合がある。これらの期間において、心室を心房と同期しないようにするとともに、心室を心房とは独立してペーシングすることが望ましい場合がある。
【0011】
一定の、または断続的な非同期収縮を生じている患者を支援するため、非協調収縮がいつ生じたかを感知するとともに、収縮を調整するように心臓の様々なチャンバに電気ペーシング治療を提供するための様々な医療装置を使用することができる。例えば、医療装置システムは、チャンバの収縮の指標である生成または実行された心臓電気信号を感知するために使用することができる。いくつかの場合において、このような医療装置システムは心臓の異なるチャンバにおいて信号を検出することにより、例えば心房および心室の収縮を区別するために使用することができる。いくつかの場合において、このようなシステムは電気刺激、例えばペーシングパルスを送達することにより、チャンバのより同期した収縮を支援することができる。
【0012】
いくつかの場合において、心室はトラッキングモードにおいて心房収縮を検出した後の所定の期間ペーシングされてもよい。しかしながら、
低すぎるか高すぎる頻度の心房収縮等の異常な心房収縮が検出された場合には、システムは非トラッキングモードにおいて心室をペーシングするように切り替わることができる。心室がトラッキングモードにおいてペーシングされ続けた場合には、心室の収縮
の頻度は危険なほど高いか、危険なほど低くなる可能性がある。
【0013】
マルチデバイスシステムは、マルチチャンバ治療を実現するための固有の課題を有し得る。マルチデバイスシステムにおいては、二つの別個の装置は異なるチャンバにおいて心臓事象を感知し、異なるチャンバに対して電気刺激を送達する役割を負う場合がある。いくつかの場合において、各装置は心臓の一つのチャンバにおいて検出、および電気刺激の送達の少なくとも一方を行うことができる場合もある。このようなシステムの複数の装置は、感知された心臓事象や他の情報を他の装置に通信することにより、様々なチャンバに対して安全かつ効果的に電気刺激を送達するように構成することができる。
【0014】
図1は本願の様々な実施例に従って使用可能な例示的な医療装置100(以降、MD100と称する)のブロック図を示す。いくつかの場合において、MD100は心臓事象を感知し、不整脈の発生を決定し、電気刺激を送達するために使用することができる。いくつかの場合において、MD100は心臓事象の感知および調節の少なくとも一方を行うため、(例えば患者の心臓に近接した)患者の体内の特定の位置に埋め込むことができる。別の実施例においては、MD100は心臓事象の感知および調節の少なくとも一方を行うため、患者の外部に配置することができる。心臓収縮は一般に、心臓によって内因的に生成された電気信号に起因する。これらの電気信号は心臓組織を通して伝達され、心臓の筋細胞を収縮させる。MD100は、MD100がこのような生成または伝達された心臓電気信号、またはこのような電気信号に起因した心臓収縮(その何れも、一般に「心臓事象」と呼ぶことができる)を感知することを可能にする特徴を含むことができる。少なくともいくつかの実施例において、MD100は追加的に、MD100が心臓の他の物理的パラメータ(例えば機械的収縮、心音、血圧、血中酸素レベル等)を感知することを可能にする特徴を含んでもよい。MD100は、感知された心臓事象または他の物理的パラメータに基づいて、心拍数および不整脈の発生の少なくとも一方を決定する機能を含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施例において、MD100は同期した収縮を確保するため、または検出された不整脈の何れかを治療するため、心臓に電気刺激を送達することができる。いくつかの例示的な不整脈は、心房および心室間の非同期の収縮、徐脈性不整脈、頻脈性不整脈、および細動を含む。例えば、MD100はペーシングパルス、除細動パルス等の電気刺激を送達するように構成されることにより、一つ以上の治療を実行することができる。このような治療のいくつかの例には、マルチチャンバ治療、例えば心臓の様々なチャンバの同期した収縮の確保、徐脈治療、ATP治療、CRT、除細動、または一つ以上の不整脈を治療するための他の電気刺激治療が含まれる。いくつかの実施例において、MD100は一つ以上の治療を提供するために一つ以上の別個の装置と連携する。
【0016】
図1は例示的な医療装置100の図である。例示的なMD100は感知モジュール102、パルス発生モジュール104、処理モジュール106、遠隔測定モジュール108、バッテリ110、およびこれらすべてを収容するハウジング120を含んでもよい。MD100はリード線112と、ハウジング120に取り付けられた電極114とをさらに含み、ハウジング120内に収容されたモジュール102、104、106、および108の一つ以上と電気的に連通していてもよい。
【0017】
リード線112はMD100のハウジング120に接続され、これから離れるように延びてもよい。いくつかの実施例において、リード線112は患者の心臓上または心臓内に埋め込まれる。リード線112はリード線112上の様々な位置に、ハウジング120から様々な距離で配置された一つ以上の電極114を含んでもよい。いくつかのリード線112が単一の電極114のみを含み得る一方、他のリード線112は複数の電極114を含んでもよい。一般に、電極114はリード線112上に配置されることにより、リード線112が患者内に埋め込まれた時に、一つ以上の電極114を患者の心臓組織に接触させることができる。従って、電極114は受信した心臓電気信号をリード線112に伝達することができる。次にリード線112は、受信した心臓電気信号をMD100の一つ以上のモジュール102、104、106、および108に伝達することができる。同様に、MD100は電気刺激を生成し、リード線112は生成された電気刺激を電極114に伝達することができる。電極114はその後、生成された電気刺激を患者の心臓組織に伝達することができる。心臓電気信号を感知し、生成された電気刺激を送達することについて述べる場合、本願はこれらのプロセスにおいてこのような伝達が暗黙的に行われていると考えることができる。
【0018】
感知モジュール102は心臓電気事象を感知するように構成されてもよい。例えば、感知モジュール102はリード線112と、リード線112を介して電極114とに接続されるとともに、電極114およびリード線112を通して伝達された心臓電気信号、例えば心臓事象を受信するように構成されてもよい。いくつかの実施例において、リード線112は加速度計、血圧センサ、心音センサ、血中酸素センサ、および心臓や患者の生理学的パラメータを測定する他のセンサ等の様々なセンサを含んでもよい。別の実施例においては、このようなセンサはリード線112ではなく感知モジュール102に直接接続されてもよい。何れの場合においても、感知モジュール102は、感知モジュール102に直接またはリード線112を介して接続された任意のセンサによって生成された信号を受信するように構成することができる。感知モジュール102は追加的に処理モジュール106に接続され、受信した信号を処理モジュール106に通信するように構成されてもよい。いくつかの実施例において、感知モジュール102はMD100が取り付けられたチャンバからの心臓電気事象のみ感知するように構成される。別の実施例においては、感知モジュール102はMD100が取り付けられたチャンバ、および心臓110の他のチャンバからの心臓電気事象を感知するように構成される。
【0019】
パルス発生モジュール104は電極114に接続されてもよい。いくつかの実施例において、パルス発生モジュール104は心臓に電気刺激を送達するため、電気刺激信号を生成するように構成されてもよい。例えば、パルス発生モジュール104はMD100内のバッテリ110に蓄積されたエネルギーを用いてこのような電気刺激信号を生成してもよい。パルス発生モジュール104は電気刺激信号を生成するように構成されることにより、いくつかの異なる治療の一つ以上を提供することができる。例えば、パルス発生モジュール104はマルチチャンバ治療、徐脈治療、頻脈治療、心臓再同期治療、および細動治療を提供するため、電気刺激信号を生成するように構成されてもよい。マルチチャンバ治療には、心臓の非同期収縮を検出し、心臓の様々なチャンバへの電気刺激信号の送達を調整することにより、同期した収縮を確保するための技術を含んでもよい。徐脈治療には、内因的に生成された電気信号よりも
高い頻度でペーシングパルスを生成および送達することにより、心拍数を増加させようとすることを含んでもよい。頻脈治療はATP治療を含んでもよい。心臓再同期治療には、心臓の両心室に電気刺激を送達することにより、より効率的に心室を収縮させることを含んでもよい。細動治療は細動パルスを送達することにより、心臓をオーバーライドして細動状態を停止させようとすることを含んでもよい。別の実施例においては、パルス発生モジュール104は一つ以上の検出された不整脈、および他の心臓状態の少なくとも一つを治療するための異なる電気刺激治療を提供するため、電気刺激信号を生成するように構成されてもよい。
【0020】
処理モジュール106はMD100の動作を制御するように構成することができる。例えば、処理モジュール106は感知モジュール102から電気信号を受信するように構成されてもよい。受信した信号に基づいて、処理モジュール106は心拍数を決定することができる。少なくともいくつかの実施例において、処理モジュール106は心拍数、受信した信号の様々な特徴、またはその両方に基づいて、不整脈の発生を決定するように構成されてもよい。決定された不整脈の何れかに基づいて、一つ以上の決定された不整脈を治療するための一つ以上の治療に従って電気刺激を生成するため、処理モジュール106はパルス発生モジュール104を制御するように構成されてもよい。処理モジュール106はさらに、遠隔測定モジュール108から情報を受信してもよい。いくつかの実施例において、処理モジュール106は不整脈が発生しているか否か、あるいは情報に応じて特定のアクションを実行するか否かを決定する際に、この受信した情報を使用してもよい。処理モジュール106は追加的に遠隔測定モジュール108を制御することにより、他の装置に情報を送信することもできる。
【0021】
いくつかの実施例において、処理モジュール106は超大規模集積回路(VLSI)チップまたは特定用途向け集積回路(ASIC)等の予めプログラムされたチップを含んでもよい。このような実施形態において、チップはMD100の動作を制御するための制御ロジックで予めプログラムされてもよい。予めプログラムされたチップを使用することにより、処理モジュール106は基本的な機能を維持しつつも他のプログラム可能な回路と比べて消費電力を少なくすることができ、MD100のバッテリ寿命を向上させることができる。他の実施例においては、処理モジュール106はプログラム可能なマイクロプロセッサを含んでもよい。このようなプログラム可能なマイクロプロセッサはユーザがMD100の制御ロジックを調整することを可能にし、予めプログラムされたチップを使用する場合と比較してMD100の柔軟性を向上させることができる。いくつかの実施例において、処理モジュール106は記憶回路をさらに含んでもよく、処理モジュール106は記憶回路に情報を記憶し、記憶回路から情報を読み取ることができる。別の実施例においては、MD100は処理モジュール106と通信する別個の記憶回路(図示略)を含んでもよく、処理モジュール106は別個の記憶回路との間で情報を読み書きすることができる。
【0022】
遠隔測定モジュール108は、MD100の外部に配置されたセンサ等の装置や他の医療装置等と通信するように構成されてもよい。このような装置は患者の身体の外部または内部の何れかに配置することができる。この位置にかかわらず、外部装置(すなわち、MD100の外部ではあるが必ずしも患者の身体の外部ではない位置に配置された装置)は、一つ以上の所望の機能を達成するため、遠隔測定モジュール108を介してMD100と通信することができる。例えば、MD100は遠隔測定モジュール108を介して外部医療装置に感知した電気信号を通信してもよい。外部医療装置は通信された電気信号を、心拍数および不整脈の発生の少なくとも一方を決定する際、またはMD100についての機能を調整する際に使用してもよい。MD100は遠隔測定モジュール108を介して外部医療装置から感知された電気信号を追加的に受信してもよく、MD100は受信した感知された電気信号を、心拍数および不整脈の発生の少なくとも一方を決定する際、またはMD100についての機能を調整する際に使用してもよい。遠隔測定モジュール108は外部装置と通信する一つ以上の方法を利用するように構成されてもよい。例えば、遠隔測定モジュール108は無線周波数(RF)信号、誘導結合、光信号、音響信号、伝導通信信号、または他の任意の通信に適切な信号を介して通信してもよい。MD100および外部装置の間の通信技術は、以下に
図3を参照しながらより詳細に説明される。
【0023】
バッテリ110はMD100にその動作のための電源を提供することができる。一実施例において、バッテリ110は再充電不可能なリチウム系バッテリとしてもよい。別の実施例においては、再充電不可能なバッテリは当該技術分野において既知の他の適切な材料で生成されてもよい。MD100が埋め込み可能な装置である実施例において、MD100へのアクセスは限定され得ることから、数日、数週間、数か月、または数年等の治療期間にわたって十分な治療を提供することができるように、バッテリは十分大きな容量を有している必要がある。別の実施例においては、バッテリ110は再充電可能なリチウム系バッテリとすることができ、MD100の使用可能な寿命の向上を促進することができる。
【0024】
いくつかの実施例において、MD100は埋め込み可能な心臓ペースメーカー(ICP)としてもよい。このような実施例において、MD100は患者の心臓上または心臓内に埋め込まれた一つ以上のリード線、例えばリード線112を有していてもよい。一つ以上のリード線112は、心臓組織および患者の心臓の血液の少なくとも一方と接触する一つ以上の電極114を含んでもよい。MD100はまた、心臓事象を感知し、例えば感知された心臓事象の解析に基づいて心拍数および一つ以上の心臓不整脈の少なくとも一方を決定するように構成されてもよい。MD100はマルチチャンバ治療、CRT、ATP治療、徐脈治療、除細動治療、および心臓内に埋め込まれたリード線112を介した他の種類の治療の少なくとも一つを提供するようにさらに構成されてもよい。少なくともいくつかの実施例において、MD100は単独で、または他の一つ以上の装置と組み合わせて、心臓の複数のチャンバに別個に治療を提供するように構成されてもよい。
【0025】
別の実施例においては、MD100はリードレス心臓ペースメーカー(LCP、
図2に関連してより具体的に説明される)であってもよい。このような実施例において、MD100はハウジング120から延出するリード線112を含まなくてもよい。また、MD100はハウジング120に対して結合された電極114を含んでもよい。これらの実施例において、MD100は患者の心臓上または心臓内の所望の位置に埋め込まれてもよい。
【0026】
図2は例示的なリードレス心臓ペースメーカー(LCP)200の図である。図示の実施例において、LCP200はリード線112を除くMD100のすべてのモジュールおよび構成要素を含んでもよい。
図2に見られるように、LCP200は、LCP200内または直接ハウジング220上に設けられたすべての構成要素を含むコンパクトな装置とすることができる。
図2に示すように、LCP200は遠隔測定モジュール202、パルス発生モジュール204、処理モジュール210、およびバッテリ212を含んでもよい。このような構成要素は、
図1のMD100に関連して説明した同様の名前のモジュールおよび構成要素と同様の機能を有していてもよい。
【0027】
いくつかの実施例において、LCP200は電気的感知モジュール206および機械的感知モジュール208を含んでもよい。電気的感知モジュール206は、MD100の感知モジュール102と同様であってもよい。例えば、電気的感知モジュール206は心臓事象を感知または受信するように構成されてもよい。電気的感知モジュール206は、心臓事象を電気的感知モジュール206に伝達可能な電極214および電極214´の少なくとも一方に電気的に接続していてもよい。機械的感知モジュール208は心臓の一つ以上の生理学的パラメータを示す一つ以上の信号を受信するように構成されてもよい。例えば、機械的感知モジュール208は加速度計、血圧センサ、心音センサ、血中酸素センサ、および患者の生理学的パラメータを測定する他のセンサ等の一つ以上のセンサを含み、またはこれと電気的に連通していてもよい。電気的感知モジュール206および機械的感知モジュール208は
図2に関連して別個の感知モジュールであるとして説明されているが、いくつかの実施例においては、単一のモジュールに統合することもできる。
【0028】
少なくとも一つの実施例において、
図2に示す各モジュール202、204、206、208、および210は、単一の集積回路チップ上に実装されてもよい。別の実施例においては、図示の構成要素は互いに電気的に連通された複数の集積回路チップに実装されてもよい。すべてのモジュール202、204、206、208、210、およびバッテリ212は、ハウジング220内に包含されてもよい。ハウジング220は一般に、人体に埋め込んでも安全であるとして知られた任意の材料を含んでもよく、LCP200が患者に埋め込まれた際、モジュール202、204、206、208、210、およびバッテリ212を流体および組織から密封することができる。
【0029】
図2に示すように、LCP200はハウジング220に対して固定可能であるが、LCP200を囲む組織および血液の少なくとも一方に曝される電極214を含んでもよい。このように、電極214は一般にLCP200の端部に配置することができ、モジュール202、204、206、208、および210の内の一つ以上と電気的に連通していてもよい。いくつかの実施例において、電極214は、電極214がハウジング220に対して直接固定されないように、短い接続ワイヤのみを介してハウジング220に接続されてもよい。いくつかの実施例において、LCP200は一つ以上の電極214´を追加的に含んでもよい。電極214´はLCP200の側面に配置され、LCP200が心臓電気活動の感知および電気刺激の送達の少なくとも一方を実行することのできる電極の数を増やすことができる。電極214および214´の少なくとも一つは、人体内に埋め込んでも安全であるとして知られた様々な金属や合金のような一つ以上の生体適合性のある導電性材料で生成することができる。いくつかの場合において、LCP200に接続された電極214および214´の少なくとも一つは、電極214を近接する電極、ハウジング220、および他の材料の少なくとも一つから電気的に分離する絶縁部を有していてもよい。
【0030】
LCP200を患者の体内に埋め込むため、操作者(例えば医師、臨床医等)はLCP200を患者の心臓組織に固定する必要がある場合がある。固定を容易にするため、LCP200は一つ以上のアンカー216を含んでもよい。アンカー216は、いくつかの固定または係止機構の内の何れかとすることができる。例えば、アンカー216は一つ以上のピン、ステープル、ねじ山、ねじ、螺旋、歯等を含んでもよい。いくつかの実施例において、図示はされていないが、アンカー216は、アンカー216の少なくとも一部の長さに沿って延びるねじ山をその外面上に含んでもよい。ねじ山は心臓組織内へのアンカー216の固定を支援するように、心臓組織およびアンカーの間に摩擦を生じさせることができる。別の実施例においては、アンカー216は周囲の心臓組織への係合を容易にする棘、スパイク等の他の構造を含んでもよい。
【0031】
MD100およびLCP200の設計および寸法は、
図1および2にそれぞれ示すように、様々な要因に基づいて選択することができる。例えばしばしばLCPにおいてそうであるように、医療装置が心内膜組織に埋め込むためのものである場合、医療装置は心臓内に大腿静脈を介して導入することができる。このような場合において、医療装置の寸法は、静脈の周辺組織に損傷を与えることなく静脈の曲がりくねった経路を通って滑らかに誘導することのできるような寸法とすることができる。一実施例によると、大腿静脈の平均直径は約4mm〜約8mmの間であってもよい。大腿静脈を介した心臓への誘導のため、医療装置は8mm未満の直径を有することができる。いくつかの実施例において、医療装置は円形の断面を有する円筒形状とすることができる。しかしながら、医療装置は矩形、楕円形等の他の任意の適切な形状で生成することも可能であることに留意すべきである。医療装置が皮下的に埋め込まれるように設計されている場合、ロープロファイルで平坦な矩形状の医療装置が所望される場合がある。
【0032】
前述の
図1および2において、埋め込み可能な医療装置の様々な実施例について説明した。いくつかの実施例において、医療装置システムは複数の医療装置を含んでもよい。例えば、複数の医療装置100、200は心臓不整脈および他の心臓の異常の少なくとも一つを検出および治療するため、協調して使用することができる。例えば、複数の医療装置はマルチチャンバ治療を提供するように、心臓の複数のチャンバ内に埋め込むことができる。いくつかの例示的なシステムは、
図3〜6に関連して以下に説明される。このような複数の装置のシステムにおいて、医療装置間で互いに通信すること、あるいは少なくともいくつかの装置が他の医療装置からの通信信号を受信することが望ましい場合がある。いくつかの例示的な通信技術については、
図3に関連して以下に説明される。
【0033】
図3は医療装置システムと、複数の医療装置が通信可能な通信経路との一例を示す。図示の実施例において、医療装置システム300はLCP302、304、外部医療装置306、および他のセンサ/装置310を含んでもよい。外部装置306は埋め込み可能な除細動器(ICD)、診断専用医療装置、または他の埋め込み型または外部(例えば、患者の身体の外部の)医療装置等の他の医療装置に加えて、MD100に関して前述した装置の何れであってもよい。他のセンサ/装置310もまた、MD100に関して前述した装置、ICD、診断専用装置、または他の適切な医療装置等の他の医療装置の何れであってもよい。別の実施例において、他のセンサ/装置310は加速度計、血圧センサ等のセンサを含んでもよい。さらに別の実施例において、他のセンサ/装置310は、システム300の一つ以上の装置をプログラムするために使用可能な外部プログラミング装置を含んでもよい。
【0034】
システム300の様々な装置は、通信経路308を介して通信することができる。例えば、LCP302および304の少なくとも一方は心臓事象を感知するとともに、通信経路308を介してシステム300の一つ以上の他の装置302、304、306、および310にこの信号を通信することができる。一実施例において、外部装置306はこの信号を受信するとともに、受信した信号に基づいて、心拍数および不整脈の発生の少なくとも一方を決定することができる。いくつかの場合において、外部装置306はこのような決定を、システム300の一つ以上の他の装置302、304、306、および310に通信することができる。別の実施例においては、LCP302および304は、通信された信号に基づいて心拍数または不整脈を決定するとともに、このような決定を他の通信可能に接続された装置に通信することができる。また、システム300の一つ以上の他の装置302、304、306、および310は適切な電気刺激の送達等、通信に基づいてアクションを実行することができる。
【0035】
通信経路308は、様々な通信方法の一つ以上を表すことができる。例えば、システム300の装置はRF信号、誘導結合、光信号、音響信号、または通信に適した他の任意の信号を介して互いに通信することができ、通信経路308はこのような信号を表すことができる。少なくともいくつかの実施例において、通信経路308は伝導通信信号を表すことができる。従って、システム300の装置は伝導通信を可能にする構成要素を含んでもよい。通信経路308が伝導通信信号を含む実施例において、システム300の装置は、システム300の別の装置によって患者の体内に送達された電気通信パルスを感知することにより、互いに通信することができる。患者の身体は、システム300の他の装置にこれらの電気通信パルスを伝達することができる。このような実施例において、送達された電気通信パルスは、前述の電気刺激治療の何れかの電気刺激パルスとは異なっていてもよい。例えば、システム300の装置は、このような電気通信パルスをサブスレッショルドの電圧レベルで送達することができる。すなわち、送達する電気通信パルスの電圧振幅は、心臓を捕捉しない程度に(例えば、収縮を引き起こさない程度に)十分小さくすることができる。しかしながら、いくつかの状況において一つ以上の送達された電気通信パルスは意図的または非意図的に心臓を捕捉するが、別の状況においては送達された電気刺激パルスは心臓を捕捉しない場合がある。いくつかの場合において、通信される情報を符号化するため、送達された電気通信パルスを調整し(例えば、パルス幅や振幅を調整し)、あるいは通信パルスの送達タイミングを調整することができる。これらは単に、通信パルスの様々なパラメータがどのように別の装置に情報を伝達することができるかについてのいくつかの例に過ぎない。このような伝導通信技術とともに、他の技術を利用することができる。
【0036】
前述のように、いくつかの例示的なシステムは不整脈の発生や他の心臓状態の少なくとも一つを決定するため、および電気刺激を送達するための少なくとも一方の目的のため、複数の装置を使用することができる。
図3〜6は、不整脈の発生や他の心臓状態の少なくとも一つを決定するため、および電気刺激治療を提供するための少なくとも一方の目的のため、複数の装置を使用可能な様々な例示的なシステムについて説明している。しかしながら、
図3〜6は限定的な例とみなされるべきではない。例えば、
図3〜6は、様々な不整脈や他の心臓状態の少なくとも一つを検出するため、および電気刺激治療を提供するための少なくとも一方の目的のため、様々なマルチデバイスシステムがどのように協調することができるかを説明している。しかしながら、MD100およびLCP200に関して説明されたような装置の任意の組み合わせは、不整脈や他の心臓状態の少なくとも一つを検出するため、および電気刺激治療を提供するための少なくとも一方の目的のための以下に記載する技術と連携して使用することができる。
【0037】
図4は、LCP402およびパルス発生器406を含む例示的な医療装置システム400を示す。この実施例において、パルス発生器406は埋め込み可能な心臓ペースメーカー(ICP)としてもよい。例えば、パルス発生器406はMD100に関して前述したようなICPとすることができる。パルス発生器406がICPである実施例において、電極404a、404b、および404cは一つ以上のリード線を介して心臓410の右心室および右心房の少なくとも一方の上、またはこの内に埋め込むことができる。意図される他の実施例においては、パルス発生器406は心臓410の左心室および左心房の少なくとも一方に埋め込まれた電極を含んでもよい。これらの電極は、心臓410の右心室および右心房の少なくとも一方に埋め込まれた電極の代わりとし、またはこれに追加することができる。示すように、LCP402は心臓410に埋め込むことができる。LCP402は心臓410の左心室(LV)に埋め込まれて示されているが、いくつかの場合において、LCP402は心臓410の異なるチャンバに埋め込むこともできる。例えば、LCP402は心臓410の左心房(LA)、または心臓410の右心房(RA)に埋め込むことができる。別の実施例においては、LCP502は心臓410の右心室(RV)に埋め込むことができる。
【0038】
何れにせよ、LCP402およびパルス発生器406は心臓事象を検出し、電気刺激治療を提供するために一緒に動作することができる。いくつかの実施例において、装置402および406は、心臓410の心臓事象を感知するように独立して動作することができる。例えば、LCP402は心臓410のLVにおける心臓事象を感知することができる一方で、パルス発生器406は心臓410のRAおよびRVの少なくとも一方における心臓事象を感知することができる。装置の一方または両方は必要に応じて、感知された心臓事象に基づいて収縮率や不整脈の発生を決定することができる。いくつかの実施例において、収縮率は感知された心臓事象の
頻度とすることができる。すなわち、LCP402は心臓410のLVのための収縮率を決定することができる一方で、パルス発生器406は心臓410のRAおよびRVの少なくとも一方のための収縮率を決定することができる。いくつかの実施例において、装置402および406はこれらの決定された収縮率に少なくとも部分的に基づいて、不整脈の発生を決定することができる。
【0039】
いくつかの実施例において、装置402および406は追加的に、心臓410により効果的に電気刺激を送達するため、通信信号の送信および受信の少なくとも一方を行うことができる。例えば、LCP402はLVで感知された心臓事象をパルス発生器406に送信し、パルス発生器406はRAおよびRVの少なくとも一方で感知された心臓事象をLCP402に送信することができる。装置402および406は追加的に、決定された収縮率を他の装置に通信することができる。いくつかの実施例において、装置402および406は必要に応じて、または追加的に、他の信号、例えば心臓410への電気刺激の送達のような様々なアクションを実行するためのコマンドを送信することができる。いくつかの実施例において、通信は一方向にのみ行うことができる。すなわち、装置402および406の一方のみが、装置402および406の他方に通信信号を送信することができる。受信装置はその後、受信した信号に基づいて収縮率の決定や不整脈の決定等の一つ以上の決定を行うことができる。あるいは、受信装置は受信した通信に基づいて、例えば電気刺激の送達のような一つ以上のアクションを実行することができる。
【0040】
図5は、LCP502およびLCP506を含む例示的な医療装置システム500を示す。LCP502およびLCP506は心臓510内に埋め込まれて示されている。LCP502および506はそれぞれ、心臓510の右心室(RV)および心臓510の右心房(RA)に埋め込まれて示されているが、別の実施例においては、LCP502および506は心臓510の異なるチャンバ内に埋め込むことができる。例えば、システム500は、心臓510の両心房内に埋め込まれたLCP502および506を含んでもよい。別の実施例においては、システム500は、心臓510の両心室内に埋め込まれたLCP502および506を含んでもよい。さらなる実施例においては、システム500は、任意の心室および心房に組み合わせて埋め込まれたLCP502および506を含んでもよい。さらに別の実施例においては、システム500は、心臓510の同じチャンバ内に埋め込まれたLCP502および506を含んでもよい。
【0041】
何れにせよ、LCP502およびLCP506は心臓事象を検出し、電気刺激治療を提供するために一緒に動作することができる。いくつかの実施例において、装置502および506は、心臓510の心臓事象を感知するように独立して動作することができる。例えば、LCP502は心臓510のRVにおける心臓事象を感知することができる一方で、LCP506は心臓510のRAにおける心臓事象を感知することができる。装置の一方または両方は必要に応じて、感知された心臓事象に基づいて収縮率や不整脈の発生を決定することができる。いくつかの実施例において、収縮率は感知された心臓事象の
頻度とすることができる。すなわち、LCP502は心臓510のRVのための収縮率を決定することができる一方で、LCP506は心臓510のRAのための収縮率を決定することができる。いくつかの実施例において、装置502および506はこれらの決定された収縮率に少なくとも部分的に基づいて、不整脈の発生を決定することができる。
【0042】
いくつかの実施例において、装置502および506は追加的に、心臓510により効果的に電気刺激を送達するため、通信信号の送信および受信の少なくとも一方を行うことができる。例えば、LCP502はRVで感知された心臓事象をLCP506に送信し、LCP506はRAで感知された心臓事象をLCP502に送信し、またはその両方を実行することができる。装置502および506は追加的に、決定された収縮率を他の装置に通信することができる。いくつかの実施例において、装置502および506は必要に応じて、または追加的に、他の信号、例えば心臓510への電気刺激の送達のような様々なアクションを実行するためのコマンドを送信することができる。いくつかの実施例において、通信は一方向にのみ行うことができる。すなわち、装置502および506の一方のみが、装置502および506の他方に通信信号を送信することができる。受信装置はその後、受信した信号に基づいて収縮率の決定や不整脈の決定等の一つ以上の決定を行うことができる。あるいは、受信装置は受信した通信に基づいて、例えば電気刺激の送達のような一つ以上のアクションを実行することができる。
【0043】
図6は、LCP602、LCP604、およびLCP606を含む三つの別個のLCPを備えた例示的な医療装置システム600を示す。システム600は、LCP602、604、および606がそれぞれLV、RV、およびRA内に埋め込まれているとして示されているが、別の実施例においては、心臓610の異なるチャンバ内に埋め込まれたLCP602、604、および606を含んでもよい。例えば、システム600は、心臓610の両心房と一心室内に埋め込まれたLCPを含んでもよい。別の実施例においては、システム600は、心臓610のLA内に埋め込まれたLCP606を含んでもよい。より一般的には、システム600は、任意の心室および心房に組み合わせて埋め込まれたLCPを含んでもよいことを意図している。いくつかの場合において、システム600においては、LCP602、604、および606の内の二つ以上が心臓610の同じチャンバ内に埋め込まれていてもよい。
【0044】
何れにせよ、LCP602、604、および606は心臓事象を検出し、電気刺激治療を提供するために一緒に動作することができる。いくつかの実施例において、装置602、604、および606は、心臓610の心臓事象を感知するように独立して動作することができる。例えば、LCP602は心臓610のLVにおける心臓事象を感知することができ、LCP604は心臓610のRVにおける心臓事象を感知することができ、LCP606は心臓610のRAにおける心臓事象を感知することができる。装置602、604、および606の何れかまたはすべては必要に応じて、感知された心臓事象に基づいて収縮率や不整脈の発生を決定することができる。いくつかの実施例において、収縮率は感知された心臓事象の
頻度とすることができる。すなわち、LCP602は心臓610のLVのための収縮率を決定することができ、LCP604は心臓610のRBのための収縮率を決定することができ、LCP606は心臓610のRAのための収縮率を決定することができる。いくつかの実施例において、装置602、604、および606はこれらの決定された収縮率に少なくとも部分的に基づいて、不整脈の発生を決定することができる。
【0045】
いくつかの実施例において、装置602、604、および606は追加的に、心臓610により効果的に電気刺激を送達するため、通信信号の送信および受信の少なくとも一方を行うことができる。例えば、LCP602はLVで感知された心臓事象をLCP604および606に送信し、LCP604はRVで感知された心臓事象をLCP602および606に送信し、LCP606はRAで感知された心臓事象をLCP602および604に送信することができる。装置602、604、および606は追加的に、決定された収縮率を他の装置に通信することができる。いくつかの実施例において、装置602、604、および606は必要に応じて、または追加的に、他の信号、例えば心臓610への電気刺激の送達のような様々なアクションを実行するためのコマンドを送信することができる。いくつかの実施例において、装置602、604、および606のいくつかが通信信号を受信するようにのみ構成可能な一方で、装置602、604、および606の内の他の装置が通信信号を送信するようにのみ構成可能である。例えば、装置602、604、および606の内の一つまたは二つが通信信号を送信するように構成されてもよい。さらにいくつかの実施例においては、装置602、604、および606の内の一つまたは二つが通信信号を受信するように構成されてもよい。少なくともいくつかの実施例において、装置602、604、および606の少なくとも一つは通信信号の送信および受信の両方を行うように構成されてもよい。受信装置はその後、受信した信号に基づいて収縮率の決定や不整脈の決定等の一つ以上の決定を行うことができる。あるいは、受信装置は受信した通信に基づいて、例えば電気刺激の送達のような一つ以上のアクションを実行することができる。
【0046】
前述のマルチデバイスシステムにおいては、開示された技術が特定のマルチデバイス構成に限定されるものとして解釈されるべきではない。一例として、システムは二つのLCP装置と、一つのICP装置とを含んでもよい。別の実施例において、いくつかのマルチデバイスシステムは三つより多いシステムを含むことができ、例えばシステムは四つのLCP装置、または三つのLCP装置と一つのICP装置とを含むことができる。
図3〜6に示すLCPやICPの電極の空間的な位置は、単なる例示である。例えば、LCPは心臓のチャンバ内に存在しない場合がある。むしろ、いくつかの実施例においては、LCPの一つ以上は心臓のチャンバに近接した心外膜表面上に存在してもよい。いくつかの実施例において、ICPの電極はその数を変更し、より少ない、またはより多いチャンバに存在することとし、またはその両方とすることができる。従って、開示された感知、治療、および本明細書に記載された通信技術を実現可能な、図示のマルチデバイスシステムについての多くの変形形態が考えられる。
【0047】
図7は、本願に従ったマルチチャンバ治療の例示的な方法を示し、感知およびペーシングされた心臓事象を示すグラフである。マルチチャンバ治療において、心室は心房の収縮に基づいてペーシングすることができる。この心房と対応する心室との間の収縮の調整は、心房および心室の非調整または非同期の収縮と比較していくつかの生理学的な利点を得ることができる。しかしながら、適切な保護手段が考慮されていない場合には、心室の収縮の心房の収縮に対するトラッキングは望ましくない心拍数を引き起こす可能性がある。
【0048】
図7は、マルチチャンバ治療を実現するマルチデバイスシステムにおける心房および心室のそれぞれについての感知およびペーシングされた心臓事象を示すタイムライン702および708を示す。このようなシステムは心室における心臓事象を感知するとともに、心室に電気刺激を送達するための第一装置を有することができる。システムはまた、少なくとも心房における心臓事象を感知するとともに、いくつかの実施例において追加的に、心房に電気刺激を送達するための第二装置を含んでもよい。ライン702は感知およびペーシングされた心房事象を示し、ライン708は感知およびペーシングされた心室事象を示す。感知された心臓事象は、内因的に生成された心臓電気信号によって生じ、第一または第二装置によって感知される収縮などの心臓事象である。ペーシングされた心臓事象は、第一または第二装置等による電気刺激の送達によって生じる心臓事象である。
図7において、白抜きのバーは感知された心臓事象、例えば感知された心房事象704を示し、黒抜きのバーはペーシングされた心臓事象、例えばペーシングされた心室事象706を示す。
【0049】
図7の実施例の領域712において、心房は安全で望ましい収縮率で鼓動することによって通常の動作をしているとして示されている。この実施例において、マルチチャンバ治療を実行するマルチデバイスシステムの第二装置506は、感知された心房事象704を心室内に配置可能な第一装置に通信することができる。感知された心房事象704の通信は、矢印710で示される。図示の実施例において、各矢印710は第二装置による第一装置への感知された心房事象704の通信を表すことができる。第二装置は第一装置に、例えば通信パルスを送信することによって感知された心房事象704を通信することができる。いくつかの実施例において、第二装置は感知された心房事象704を通信するため、通信パルスの様々な特徴を選択することができる。例えば、第二装置は感知された心房事象704を通信するため、単層、二層、パルス幅、パルス振幅、または他のパルスの形態的特徴を選択することができる。別の実施例においては、第二装置は感知された心房事象704を通信する通信パルス列を送信することができる。第一装置はペーシングパルスを送達するように構成されることにより、感知および通信された心房事象704の受信に応じて、心室を収縮させるように刺激することができる。例えば、
図7の領域712において、感知および通信された心房事象704の後には、感知および通信された心房事象704の一定期間後に生じたペーシングされた心室事象706が続いている。このようなシステムにおいて、第一装置は第二装置からの感知された心房事象704の受信に応じたペーシングパルスの送達前の、時に房室遅延と呼ばれ、
図7においてT
AVとして表される所定の期間待機するように構成することができる。
【0050】
領域712は例えば、第二装置からの感知および受信された各心房事象704に応じてペーシングパルスを送達することによって第一装置が第二装置を「トラッキング」する「トラッキングモード」において、第一装置および第二装置がどのように動作し得るかを示している。しかしながら、感知された心房事象704の
頻度が高すぎる(または低すぎる)場合には、感知された各心房事象704のトラッキングや、感知された各心房事象704に応じて心室を収縮させるための刺激には問題が生じる可能性がある。
【0051】
領域714は、例えば心房細動事象中の
高頻度の心房の鼓動期間を示す。このような場合において、心室を同様の高い
頻度で収縮させようとすることは安全でない場合がある。従って、マルチチャンバ治療システムは、このような潜在的な危険状態を緩和するための一つ以上の保護手段を有していてもよい。第一装置によって利用可能な保護手段の一つは、最大トラッキングレート間隔(MTRI)を有することである。MTRIとは、最も直近に送達されたペーシングパルス、または第一装置が別のペーシングパルスを送達する前に第一装置によって感知された心室事象の後でなければならない所定の期間である。別の保護手段として、ポスト心室心房不能期(PVARP)を含んでもよい。PVARPは、感知またはペーシングされた心房事象の直後の所定の期間とすることができる。このPVARPの期間中、第一装置は感知および通信された心房事象704を無視するように構成することができる。すなわち、第一装置はこの期間中は、感知および通信された心房事象704に応じて電気刺激を送達しないようにすることができる。MTRIとPVARPとの間の違いの一つは、第一装置がPVARP期間の後ではあるがMTRIの前に感知および通信された心房事象704を受信した場合、第一装置はMTRIが終了するとすぐにペーシングパルスを送達することができる点である。しかしながら、第一装置がPVARP中であってPVARP後ではなく、MTRIの前でもない期間に一つ以上の感知および通信された心房事象704を受信した場合、第一装置はPVARPが終了してすぐにはペーシングパルスを送達しないようにすることができる。PVARPは第一装置がペーシングパルスを送達した後にリセットすることができる。これらの様々な特徴を
図7の領域714に示す。このように、第一装置はMTRI期間およびPVARPの少なくとも一方によって制御された
所定の頻度より高くない頻度で心室を収縮させるように構成することができる。
【0052】
図7はマルチデバイスシステムに関して説明されているが、マルチチャンバ治療について記載された実施はシングルデバイスシステムに適用することもできる。例えば、単一の装置を含むシステムは様々なPVARPおよびMTRI期間の少なくとも一方を実装することができ、単一の装置は感知された心房事象704へのアクセスと、感知された心房事象704に応じた電気刺激の送達との両方の機能を有するであろうから、装置間の感知された心房事象704の通信を排除することができる。一方、
図8〜10は、装置間の通信に基づいて心房および心室間の収縮の調整を制御するマルチデバイスシステムが実行可能なマルチチャンバ治療を表している。
【0053】
図8はマルチデバイスシステムが実行可能な別のマルチチャンバ治療を示す。このようなシステムは心室における心臓事象を感知するとともに、心室に電気刺激を送達するための第一装置を有することができる。システムはまた、少なくとも心房における心臓事象を感知するとともに、いくつかの実施例において追加的に、心房に電気刺激を送達するための第二装置を含んでもよい。
図7と同様に、タイムライン802および808はそれぞれ、感知およびペーシングされた心房事象および心室事象を示す。また、感知された心房事象804は第二装置によって感知された心房事象であり、ペーシングされた心室事象806は第一装置によって生じたペーシングされた心室事象である。矢印810は、感知および通信された心房事象804を示す。第二装置は
図7に関して前述した実施例の一つ以上と同様に、感知された心房事象804を通信するように構成することができる。この場合も、
図7と同様に、
図8の領域812は通常の心房活動の期間を示す。これらの期間中、第二装置は感知された心房事象804を第一装置に通信することができ、第一装置は「トラッキングモード」において感知および通信された心房事象804の受信から所定の期間T
AV経過後に、電気刺激、例えばペーシングパルスを送達することができる。
【0054】
図3〜6に関して前述したように、第一および第二装置の一つ以上は収縮率、例えば心房収縮率を決定することができる。少なくともいくつかの実施例において、第一装置は感知および通信された心房事象804に基づいて収縮率を決定することができる。いくつかの実施例において、第一装置は最も直近の二つの感知および通信された心房事象804に基づいて収縮率を決定することができる。別の実施例においては、第一装置は最も直近の異なる数の感知および通信された心房事象804、例えば3、5、10、または他の任意の適切な数の感知された心房事象804に基づいて収縮率を決定することができる。第一装置は追加的に、決定された収縮率を閾値と比較することができる。心房収縮率が閾値を超えたと第一装置が判断した場合、第一装置は異なるモードに切り替わってもよい。
図8の領域816は、収縮率が閾値を超えたと第一装置が判断した期間を表すことができる。追加的に、または別の実施例において、第一装置は連続する心房事象の間隔をトラッキングすることができる。第一装置はその後、その間隔を閾値と比較し、間隔が閾値時間よりも短くなった時に、第一装置は異なるモードに切り替わってもよい。このような実施例において、第一装置は2、3、5、10、または他の任意の適切な数の心房事象の間隔を監視することにより、その間隔が閾値時間を下回ったか否かを判断することができる。少なくともいくつかの実施例において、第一装置は連続する心房事象の各対の間隔を監視するとともに、その間隔の二つ以上を平均化することにより、その複合された間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断するのに先立って複合された間隔を生成するように構成することができる。別の実施例においては、第一装置は連続する心房事象の各対の間隔を監視するとともに、例えば5秒、7秒、10秒、または他の任意の適切な期間等の所定の期間内において閾値時間よりも短い間隔をカウントするように構成することができる。このような実施例において、所定の期間内の所定の合計数の間隔、例えば2、5、8、または他の任意の適切な数の間隔が閾値を超えた時に、第一装置は異なるモードに切り替わるように構成することができる。
【0055】
収縮率が閾値を超えたと判断した後、第一装置はトラッキングモードから心房頻脈(ATR)モードに切り替わってもよい。ATRモードの間、第一装置は感知された心房事象804の受信に応じた電気刺激の送達を停止することができる。むしろ、第一装置は所定の
頻度で電気刺激を送達するように切り替わってもよい。この所定の
頻度は、心臓にとって安全な収縮率とすることができる。いくつかの実施例において、この所定の
頻度は第二装置との通信中に(例えば埋め込み時、またはプログラミングセッション中に)、外部プログラミング装置のユーザによってプログラムすることができる。いくつかの実施例において、この所定の
頻度は、心室の収縮にとって安全な
最低の頻度である下限レート(LRL)に等しくてもよい。
図8の領域820は、第一装置がATRモードで動作している期間を表すことができる。必要に応じて、または追加的に、いくつかの実施例において、ATRモードへの切り替え後、所定の
頻度での電気刺激の送達を即時開始するのではなく、第一装置はゆっくり時間をかけて、例えば数秒、数分、または数時間かけて所定の
頻度まで電気刺激を送達する
頻度を下げることができる。領域818は、第一装置が電気刺激を送達する
頻度を所定の
頻度まで下げている期間を表している。
【0056】
いくつかの実施例において、第二装置は感知された心房事象804を通信し続ける。ATRモードにおいて、第一装置は電気刺激を送達するために受信した感知された心房事象804を無視することができる。しかしながら、ATRモード中であっても、第一装置は受信した感知された心房事象804から収縮率を決定するとともに、決定された収縮率を閾値と比較し続けることができる。心房収縮率が再び閾値を下回ったと第一装置が判断すると、第一装置はトラッキングモードに戻り、
図8の領域812のように第二装置から受信した感知された心房事象804に応じて電気刺激を送達し始めることができる。いくつかの実施例において、第一装置は
図8の領域824に見られるように、第一装置がトラッキングモードに戻る前に感知された心房事象804を受信している
頻度まで、電気刺激を送達する
頻度を徐々に上げることができる。
【0057】
図9はマルチデバイスシステムにおいて使用するためのマルチチャンバ治療技術の別の実施例である。前述の実施例のように、このようなシステムは心室における心臓事象を感知するとともに、心室に電気刺激を送達するための第一装置を有することができる。システムはまた、少なくとも心房における心臓事象を感知するとともに、いくつかの実施例において追加的に、心房に電気刺激を送達するための第二装置を含んでもよい。
図9のタイムライン902および908はそれぞれ、感知およびペーシングされた心房事象および心室事象を示す。また、感知された心房事象904は第二装置によって感知された心房事象であり、ペーシングされた心室事象906は第一装置によって生じたペーシングされた心室事象である。矢印910は、感知および通信された心房事象904を示す。第二装置は
図7に関して前述した実施例の一つ以上と同様に、感知された心房事象904を通信するように構成することができる。
図7および8と同様に、
図9の領域912は通常の心房活動の期間を示す。これらの期間中、第二装置は感知された心房事象904を第一装置に通信することができ、第一装置はトラッキングモードにおいて感知および通信された心房事象904の受信から所定の期間T
AV経過後に、電気刺激、例えばペーシングパルスを送達することができる。
【0058】
図9の実施例において、第二装置は例えば
図8に関して前述した実施例の一つと同様に、感知された心房事象904から収縮率を決定し、連続する心房事象の間隔を監視し、またはその両方を実行することができる。第二装置は追加的に、決定された収縮率を閾値と比較し、監視された間隔を閾値時間と比較し、またはその両方を実行することができる。例えば
図9の領域916のように、収縮率が閾値を超えたか、間隔が閾値時間よりも短くなったと第二装置が判断すると、第二装置は第一装置にモード切り替え信号930を通信することができる。モード切り替え信号930は第一装置を前述のように「トラッキングモード」からATRモードに切り替えることができる。従って、第一装置はATR治療プロトコルに従った電気刺激の送達を開始することができる。いくつかの実施例において、ATR治療プロトコルは第一医療装置に所定の
頻度で電気刺激を送達させることができる。
図9の領域920は、第一装置がATR治療プロトコルを実行するATRモードで動作している期間を表す。領域920に示すように、送達されたペーシングパルスは感知された心房事象904とは相関していない。所定の
頻度は、心臓にとって安全な収縮率とすることができる。いくつかの実施例において、この所定の
頻度は第一装置および第二装置の少なくとも一方との通信中に(例えば埋め込み時、またはプログラミングセッション中に)、外部プログラミング装置のユーザによってプログラムすることができる。いくつかの実施例において、この所定の
頻度は、心室の収縮にとって安全な望ましい
最低の頻度となり得る下限レート(LRL)に等しくてもよい。必要に応じて、または追加的に、いくつかの実施例において、ATRモードへの切り替え後、所定の
頻度での電気刺激の送達を即時開始するのではなく、第一装置はゆっくり時間をかけて、例えば数秒、数分、または数時間かけて所定の
頻度まで電気刺激を送達する
頻度を下げることができる。この遷移は、
図9の領域918に示されている。
【0059】
いくつかの実施例において、第二装置は感知された心房事象904に基づいて収縮率を決定し続ける。しかしながら、
図8に記載された技術とは異なり、第一装置をトラッキングモードからATRモードに切り替えるためのモード切り替え信号930の通信後、第二装置は感知された心房事象904の第一装置への通信を停止することができる。これは
図9の領域918、920、および922において、矢印910が存在しないことに見ることができる。収縮率が再び閾値を下回ったと第二装置が判断すると、第二装置は別のモード切り替え信号930を第一装置に通信することができる。この第二の通信されたモード切り替え信号930は、第一装置をATRモードからトラッキングモードに切り替えることができる。第二のモード切り替え信号930の第一装置への通信後、トラッキングモードにおいて第一装置が受信した感知された心房事象904に応じて電気刺激を送達することができるように、第二装置は感知された心房事象904の通信を再開することができる。いくつかの実施例において、第一装置は、受信した感知された心房事象904に基づいた電気刺激の送達を開始する前に第一装置が感知された心房事象804を受信している
頻度まで、電気刺激を送達する
頻度を徐々に上げることができる。この
頻度の時間をかけた増加は、ペーシングパルスを送達する
頻度がまだ受信した感知された心房事象904からは切断されているが、増加中である
図9の領域924に見ることができる。このような実施例において、ペーシングパルスを送達する
頻度が心拍数に対して一定の値に増加すると、第一装置はその後、領域912に見られるように、受信した感知された心房事象904に基づいてペーシングパルスの送達を開始することができる。
【0060】
図10はマルチデバイスシステムにおいて使用するためのマルチチャンバ治療技術のさらに別の実施例である。前述の実施例のように、このようなシステムは心室における心臓事象を感知するとともに、心室に電気刺激を送達するための第一装置を有することができる。システムはまた、少なくとも心房における心臓事象を感知するとともに、いくつかの実施例において追加的に、心房に電気刺激を送達するための第二装置を含んでもよい。
図10のタイムライン1002および1008はそれぞれ、感知およびペーシングされた心房事象および心室事象を示す。また、感知された心房事象1004は第二装置によって感知された心房事象であり、ペーシングされた心室事象1006は第一装置によって生じたペーシングされた心室事象である。矢印1010は、感知および通信された心房事象1004を示す。第二装置は
図7に関して前述した実施例の一つ以上と同様に、感知された心房事象1004を通信するように構成することができる。
図7〜9と同様に、
図10の領域1012は通常の心房活動の期間を示す。これらの期間中、第二装置は感知された心房事象1004を第一装置に通信することができ、第一装置は感知および通信された心房事象1004の受信から所定の期間T
AV経過後に、電気刺激、例えばペーシングパルスを送達することができる。
【0061】
図10の実施例において、第二装置は例えば
図8に関して前述した実施例の一つと同様に、感知された心房事象1004から収縮率を決定し、連続する心房事象の間隔を監視し、またはその両方を実行することができる。第二装置は追加的に、決定された収縮率を閾値と比較し、監視された間隔を閾値時間と比較し、またはその両方を実行することができる。例えば
図10の領域1016のように、心拍数が閾値を超えたか、監視された間隔が閾値時間よりも短くなったと第二装置が判断すると、第二装置はATRモードに入ることができる。このモードの間、第二装置は第一装置に知された心房事象1004を通信する代わりに、人工的な感知された事象1040で示される人工的な感知された事象を通信することができる。少なくともいくつかの実施例において、第二装置は追加的に、第二装置がATRモードに入ったこと、例えば、トラッキングモードからATRモードに切り替わったことを示す信号を第一装置に通信することができる。
【0062】
ATRモードにおいて、第二装置は心臓にとって安全な収縮率であり得る所定の
頻度で人工的な感知された事象1040を通信することができる。これは
図10の領域1018、1020、1022、および1024において矢印1010が存在せず、通信された人工的な感知された事象1040が追加的に示されていることに見ることができる。いくつかの実施例において、所定の
頻度は心室の収縮にとって安全な望ましい
最低の頻度である下限レート(LRL)に等しくてもよい。必要に応じて、または追加的に、いくつかの実施例において、ATRモードへの切り替え後、所定の
頻度での人工的な感知およびペーシングされた事象の通信を即時開始するのではなく、第二装置は人工的な感知およびペーシングされた事象1040を所定の
頻度まで
頻度を継続的に下げながら通信することができる。この特徴は、通信された人工的な感知された事象1040の
頻度が所定の
頻度まで徐々に低下する領域1018に見ることができ、
図10の領域1020の間は所定の
頻度で維持されている。
【0063】
いくつかの実施例において、第二装置は感知された心房事象1004、または人工的な感知された事象1040のような最後の感知および通信された事象から第一の所定の期間をトラッキングすることができる。第二装置は、第一の所定の期間中に感知された心房事象1004を通信しないように構成することができる。第二装置が第一の所定の期間に続く第二の所定の期間中に心房事象を感知した場合、第二装置は感知された心房事象1004を通信するとともに、第一の所定の期間をトラッキングするためのタイマーをリセットすることができる。しかしながら、第二装置が第二の所定の期間中に心房事象を感知しなかった場合、第二装置はその後、第二の所定の期間の終了時に人工的な感知された心房事象1040を通信することができる。
【0064】
いくつかの実施例において、第二装置は第一および第二の所定の期間の少なくとも一方においても、感知された心房事象1004に基づいて収縮率を決定し続ける。
図10の領域1022のように、収縮率が再び閾値を下回ったと第二装置が判断すると、第二装置はATRモードからトラッキングモードに切り替わることができる。ATRモードから切り替わった後、第二装置は再び感知された心房事象の通信を再開することができる。いくつかの実施例において、第二装置は例えば依然としていくつかの人工的な感知された事象1040を通信することによって、感知された心房事象1004を通信する
頻度を、感知された心房事象1004の実際の
頻度まで徐々に上げることができる。この特徴は、第二装置が増加中の
頻度で人工的な感知された事象1040を通信する
図10の領域1024に見ることができる。人工的な感知された事象1040を通信する
頻度が収縮率に対して一定の値に増加すると、第二装置はその後、
図10の領域1012のように、感知された心房事象1004のみの通信を開始することができる。これは同様に、第一装置が電気刺激を送達する
頻度における収縮率をゆっくり増加させ得る。
【0065】
図11は、本願に従ったマルチチャンバ治療の別の例示的な方法を示す心臓事象のグラフである。前述の実施例のように、このようなシステムは心室における心臓事象を感知するとともに、心室に電気刺激を送達するための第一装置を有することができる。システムはまた、少なくとも心房における心臓事象を感知するとともに、いくつかの実施例において追加的に、心房に電気刺激を送達するための第二装置を含んでもよい。
図11のタイムライン1102および1108はそれぞれ、感知およびペーシングされた心房事象および心室事象を示す。また、感知された心房事象1104は第二装置によって感知された心房事象であり、ペーシングされた心室事象1106は第一装置によって生じたペーシングされた心室事象である。矢印1110は、感知および通信された心房事象1104を示す。第二装置は
図7に関して前述した実施例の一つ以上と同様に、感知された心房事象1104を通信するように構成することができる。
図7〜10と同様に、
図11の領域1112は通常の心房活動の期間を示す。これらの期間中、第二装置は感知された心房事象1104を第一装置に通信することができ、第一装置はトラッキングモードにおける感知および通信された心房事象1104の受信から所定の期間T
AV経過後に、電気刺激、例えばペーシングパルスを送達することができる。
【0066】
図11の実施例において、第二装置は例えば
図8に関して前述した実施例の一つと同様に、感知された心房事象1104から収縮率を決定し、連続する心房事象の間隔を監視し、またはその両方を実行することができる。第二装置は追加的に、決定された収縮率を閾値と比較し、監視された間隔を閾値時間と比較し、またはその両方を実行することができる。例えば
図11の領域1116のように、収縮率が閾値を超えたか、間隔が閾値時間よりも短くなったと第二装置が判断すると、第二装置はATRモードに入り、選択的に感知された心房事象1104のみを通信することができる。
【0067】
ATRモードにおいて、第二装置は感知および通信された各心房事象1104に続く、
図11においてT
1と符号付けされたブランキング期間を使用することができる。このブランキング期間において、第二装置は感知された心房事象1104を通信しないことができる。第二装置はその後、ブランキング期間の後に生じた最初の感知された心房事象1104を通信することができる。これは、
図11の領域1120における二つの最初に感知された心房事象1104に見ることができる。領域1120の最初の感知された心房事象1104は、期間T
1の終了前に生じている。従って、第二装置はその感知された心房事象1104を通信しない。しかしながら、領域1120の第二の心房事象1104は期間T
1の後に生じている。従って、第二装置はその感知された心房事象1104を通信し、第一装置はその感知および通信された心房事象1104の受信に応じてペーシングパルスを送達する。このように感知された心房事象1104を選択的に通信することによって、第二装置は第一装置が安全でない収縮率で電気刺激を送達することを防止することができる。
【0068】
少なくともいくつかの実施例において、第一装置は第二の所定の期間をトラッキングする。第一装置はペーシングされた各心室事象1106から第二の所定の期間をトラッキングすることができる。第一装置は第二の所定の期間の経過後にペーシングパルスを送達するように構成することができる。
図11の領域1120に見られるように、この期間は下限レート間隔(LRLI)と呼ぶことができる。領域1120の第二のペーシングされた心室事象1106の後、T
1の外側かつLRLIの前に感知された心房事象1104は存在しない。従って、完全なLRLI期間が最後のペーシングされた心室事象1106まで続くため、第一装置はペーシングされた心室事象1106、すなわち領域1120の第三のペーシングされた心室事象1106をトリガとしてペーシングパルスを送達する。いくつかの実施例において、第二装置は、第一装置が感知および通信された心房事象1104に応じてではなく電気刺激を送達した時を感知することができる。このような実施例において、第二装置がこのような送達された電気刺激を感知した時、第二装置はブランキング期間T
1をリセットすることができる。別の実施例において、第二装置は最後に感知された心房事象1104からの時間を測定する代わりに、第一装置によって送達された電気刺激を感知した後、T
1のトラッキング時間を開始することができる。例えば、第二装置は感知および通信された各心房事象1104からではなく、ペーシングされた各心室事象1106からのブランキング期間T
1を測定することができる。
【0069】
選択的に感知された心房事象1104のみを通信する場合でも、第二装置は収縮率を決定することができる。
図11の領域1122のように、収縮率が閾値を超えたと第二装置が判断すると、第二装置はトラッキングモードに戻り、領域1112のように感知された各心房事象1104を通信することができる。
【0070】
主に
図7に関して記載されているが、
図8〜11に記載された様々な実施例の何れかまたはすべては追加的に、または必要に応じて、
図7に記載されたPVARPおよびMTRI期間を使用することができる。例えば、使用される場合、前述の実施例の何れかにおける第一または第二装置の何れかは、PVARPの間に感知または通信された心房事象を無視することができる。また、使用される場合、前述の実施例の何れかにおける第一または第二装置の何れかは、
MTRIによって制限された頻度よりも高い頻度において感知された心房事象が通信されないこと、または心室ペーシングパルスが送達されないことを保証するためにMTRIを使用することができる。
【0071】
また、前述の実施例の何れかは追加的に、または必要に応じて、
図11に関して説明されたLRLIを実装することができる。例えば、前述の実施例の何れかにおける第一装置は、最後に感知された心室事象またはペーシングされた心室事象から測定されたLRLI期間の経過後にペーシングパルスを送達するように構成することができる。このような特徴は心臓が収縮する最低レートを設定するように機能することにより、患者の安全性を確保するのに役立つ。例えば、このような特徴は、
図7〜11に関して前述したような第二装置が第一装置の動作を制御するシステムにおいて有益となり得る。記載された実施例のいくつかにおいて、第一装置は第二装置から通信された信号に応じてペーシングパルスを送達することができる。しかしながら、二つの装置間の通信が失敗した状況においても、第一装置は実装されたLRLI期間に基づいて安全な
頻度でペーシングパルスを送達することができる。
【0072】
図12は、
図1および2に関して記載された装置の何れかを含む
図3〜6の何れかに示すような埋め込み可能な医療装置システムによって実行可能な例示的な方法のフロー図である。
図12の方法は
図5の医療装置システムに関連して説明されているが、
図12の方法は任意の適切な医療装置システムによって実行することができる。
【0073】
いくつかの実施例において、LCP506は二つ以上の心房事象を感知することができる(1202)。例えば、LCP506は心臓510の心房に埋め込まれ、心房事象を感知するように構成することができる。LCP506は追加的に、
連続する心房事象の間隔を決定するように構成することができる(1204)。例えば、LCP506は連続する心房事象の間の時間を監視するように構成することができる。いくつかの実施例において、LCP506は二つの連続する心房事象の間の時間を監視するように構成することができる。別の実施例においては、LCP506は3、5、10、または任意の適切な数の心房事象の間の時間を監視するように構成することができる。LCP506は例えば監視された時間を平均化することにより、監視された時間に基づいて
単一の心房事象の間隔を決定するように構成することができる。LCP506はさらに、
心房事象の間隔が閾値を超える心房収縮率を示すか否かを決定するように構成することができる(1206)。例えば、LCP506は決定された
心房事象の間隔を閾値と比較するように構成することができる。いくつかの実施例において、LCP506は決定された
心房事象の間隔に基づいて心房収縮率を決定することができる。このような実施例において、LCP506は決定された心房収縮率を閾値と比較することができる。
【0074】
心房収縮率が閾値を下回ったとLCP506が判断した場合、LCP506はLCP502に感知された心房事象を通信することができ、LCP502はトラッキングモードにおいて通信された事象に応じて心室をペーシングするように構成されている(1208)。トラッキングモードにおいて、心臓510の心室内または心室上に埋め込まれたLCP502は、受信した感知された各心房事象に応じて心臓510の心室にペーシングパルスを送達するように構成することができる。しかしながら、心房収縮率が閾値を超えたとLCP506が判断した場合、LCP506はLCP502に非トラッキングモードにおいて心室をペーシングするコマンドを通信することができる(1210)。非トラッキングモードにおいて、LCP502は、例えばATRモード、および他の任意の適切な望ましいモードの少なくとも一つのような
図7〜11に関して前述された非トラッキングモードの何れかに従って、心臓510の心室にペーシングパルスを送達するように構成することができる。
【0075】
図13は、
図1および2に関して記載された装置の何れかを含む
図3〜6の何れかに示すような埋め込み可能な医療装置システムによって実行可能な例示的な方法のフロー図である。
図13の方法は
図5の医療装置システムに関連して説明されているが、
図13の方法は任意の適切な医療装置システムによって実行することができる。
【0076】
いくつかの実施例において、LCP506は複数の心房事象を感知することができる(1302)。例えば、LCP506は心臓510の心房に埋め込まれ、心房事象を感知するように構成することができる。LCP506は追加的に、複数の感知された心房事象の一つ以上についての指示をLCP502に通信するように構成することができる(1304)。例えば、LCP502およびLCP506は通信可能に接続することができる。従って、LCP506は通信経路を介して感知された心房事象をLCP502に通信することができる。LCP502およびLCP506の一方または両方は追加的に、
連続する感知された心房事象の間隔を決定するように構成することができる(1306)。例えば、LCP502およびLCP506の少なくとも一方は、連続する心房事象の間の時間を監視するように構成することができる。LCP506が連続する感知された心房事象の間の時間を監視する一方で、LCP502は連続する感知および通信された心房事象の間の時間を監視することができる。いくつかの実施例において、LCP502およびLCP506の少なくとも一方は、二つの連続する心房事象の間の時間を監視するように構成することができる。別の実施例においては、LCP502およびLCP506の少なくとも一方は、3、5、10、または任意の適切な数の心房事象の間の時間を監視するように構成することができる。LCP502およびLCP506の少なくとも一方は、例えば監視された時間を平均化することにより、監視された時間に基づいて
単一の心房事象の間隔を決定するように構成することができる。LCP502およびLCP506の少なくとも一方は追加的に、
心房事象の間隔が閾値を超える心房収縮率を示すか否かを決定するように構成することができる(1308)。例えば、LCP502およびLCP506の少なくとも一方は、決定された
心房事象の間隔を閾値と比較するように構成することができる。いくつかの実施例において、LCP502およびLCP506の少なくとも一方は、決定された
心房事象の間隔に基づいて心房収縮率を決定することができる。このような実施例において、LCP502およびLCP506の少なくとも一方は、決定された心房収縮率を閾値と比較することができる。
【0077】
心房収縮率が閾値を下回った場合、LCP502は第一治療プロトコルに従って心臓510の心室に一つ以上のペーシングパルスを送達するように構成することができる(1310)。いくつかの実施例において、第一治療プロトコルはトラッキングモードに対応していてもよい。トラッキングモードにおいて、LCP502はLCP506から受信した感知された各心房事象に対して一つ以上のペーシングパルスを送達するように構成することができる。心房収縮率が閾値を超えた場合、LCP502は第二治療プロトコルに従って心臓510の心室に一つ以上のペーシングパルスを送達するように構成することができる(1312)。例えば、第二治療プロトコルは、
図7〜11に関して前述した非トラッキングモード、例えばATRモード、および他の任意の適切な望ましい非トラッキングモードの何れかに対応していてもよい。
【0078】
本願が本明細書において記載および意図された特定の実施形態以外の様々な形態で示され得ることを、当業者は認識するであろう。一例として、本明細書に記載されたように、様々な実施例は様々な機能を実行するように記載された一つ以上のモジュールを含む。しかしながら、別の実施例は、記載された機能を本明細書に記載されたよりも多くのモジュールに分割する追加のモジュールを含んでもよい。また、別の実施例においては、記載された機能をより少ないモジュールに統合することもできる。従って、添付の特許請求の範囲に記載された本願の範囲および意図から逸脱することなく、形態や詳細についての変更を行うことができる。
【0079】
追加の実施例
実施例1では、リードレス心臓ペースメーカーシステムは心室部位に埋め込み可能な第一リードレス心臓ペースメーカー(LCP)と、心房部位に埋め込み可能な第二リードレス心臓ペースメーカー(LCP)とを含み、第二LCPは心房収縮を感知するように構成され、第一LCPおよび第二LCPは、第一LCPおよび第二LCPがトラッキングモードにおいて心室部位にペーシング治療を提供可能なように通信可能に接続されるように構成され、第一LCPおよび第二LCPの少なくとも一方は、第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなった場合に、非トラッキングモードにおいて心室部位にペーシング治療を提供するように構成される。
【0080】
実施例2では、実施例1に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第一LCPが、第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断し、リードレス心臓ペースメーカーシステムをトラッキングモードから非トラッキングモードに変化させるように構成されることをさらに含んでもよい。
【0081】
実施例3では、実施例1または2に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第二LCPが、第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断し、リードレス心臓ペースメーカーシステムをトラッキングモードから非トラッキングモードに変化させるように構成されることをさらに含んでもよい。
【0082】
実施例4では、実施例1〜3の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第一LCPおよび第二LCPの少なくとも一方が、第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断するように構成されるとともに、これらが一括してリードレス心臓ペースメーカーシステムをトラッキングモードから非トラッキングモードに変化させるように構成されることをさらに含んでもよい。
【0083】
実施例5では、患者の心臓にペーシングパルスを送達する方法は、第一の埋め込み可能な医療装置によって二つ以上の心房事象を感知する工程と、第一の埋め込み可能な医療装置によって
連続する心房事象の間隔を決定する工程と、第一の埋め込み可能な医療装置によって
心房事象の間隔が閾値を超える心房収縮率を示すか否かを判断する工程と、心房収縮率が閾値を下回った場合、感知された心房事象を第一の埋め込み可能な医療装置から第二の埋め込み可能な医療装置に通信する工程とを含み、第二の埋め込み可能な医療装置がトラッキングモードにおいて通信された事象に応じて心室をペーシングするように構成されることと、心房収縮率が閾値を超えた場合、非トラッキングモードにおいて心室をペーシングするコマンドを第一の埋め込み可能な医療装置から第二の埋め込み可能な医療装置に通信する工程とを含む。
【0084】
実施例6では、実施例5に記載の方法は、心房収縮率が閾値を下回った場合、第二の埋め込み可能な医療装置がトラッキングモードにおいて感知および通信された各事象に応じて心室をペーシングするように構成されることをさらに含んでもよい。
【0085】
実施例7では、実施例5または6に記載の方法は、心房収縮率が閾値を超えた場合、第二の埋め込み可能な医療装置が非トラッキングモードにおいて所定の
頻度で心室をペーシングするように構成されることをさらに含んでもよい。
【0086】
実施例8では、実施例5〜7の何れかに記載の方法は、心房収縮率が閾値を超えたが、その後、閾値を下回った場合、第二の埋め込み可能な医療装置がトラッキングモードにおいて感知および通信された各事象に応じて心室をペーシングするように構成されることをさらに含んでもよい。
【0087】
実施例9では、患者の心臓にペーシングパルスを送達する方法は、第一の埋め込み可能な医療装置によって複数の心房事象を感知する工程と、第一の埋め込み可能な医療装置によって第二の埋め込み可能な医療装置に、複数の感知された心房事象の一つ以上についての指示を通信する工程と、連続する感知された
心房事象の間隔を決定する工程と、
心房事象の間隔が閾値を超える心房収縮率を示すか否かを判断する工程と、心房収縮率が閾値を下回った場合、第一治療プロトコルに従って第二の埋め込み可能な医療装置によって患者の心室に一つ以上のペーシングパルスを送達する工程と、心房収縮率が閾値を超えた場合、第二治療プロトコルに従って第二の埋め込み可能な医療装置によって患者の心室に一つ以上のペーシングパルスを送達する工程とを含む。
【0088】
実施例10では、実施例9に記載の方法は、第一治療プロトコルがトラッキングモードにおいて感知された各心房事象に応じて患者の心室にペーシングパルスを送達することを含むことをさらに含む。
【0089】
実施例11では、実施例9または10に記載の方法は、第二治療プロトコルが非トラッキングモードにおいて所定の
頻度で患者の心臓に一つ以上のペーシングパルスを送達することを含むことをさらに含む。
【0090】
実施例12では、実施例9〜11の何れかに記載の方法は、
心房事象の間隔が閾値を超える心房収縮率を示すか否かを第一の埋め込み可能な医療装置が判断することと、心房収縮率が閾値を超えたと第一の埋め込み可能な医療装置が判断した場合、第二治療プロトコルに従った一つ以上のペーシングパルスの送達を開始する第一コマンドを第一の埋め込み可能な医療装置から第二の埋め込み可能な医療装置に通信し、感知された心房事象を第一の埋め込み可能な医療装置から第二の埋め込み可能な医療装置に通信しない工程と、その後、心房収縮率が閾値を下回ったと第一の埋め込み可能な医療装置が判断した場合、第二の埋め込み可能な医療装置が第二治療プロトコルに従った一つ以上のペーシングパルスの送達を停止し、第一医療プロトコルに戻る第二コマンドを第一の埋め込み可能な医療装置から第二の埋め込み可能な医療装置に通信する工程とを含む。
【0091】
実施例13では、実施例9〜12の何れかに記載の方法は、心房収縮率が閾値を超えたか否かを判断することが、前の
連続する心房事象の各対の間隔の二つ以上を平均化することを含むことをさらに含む。
【0092】
実施例14では、実施例9〜13の何れかに記載の方法は、第一の埋め込み可能な医療装置が患者の心房内に、または患者の心房に近接して配置されたリードレス心臓ペースメーカー(LCP)であることをさらに含む。
【0093】
実施例15では、実施例9〜14の何れかに記載の方法は、第二の埋め込み可能な医療装置が患者の心室内に、または患者の心室に近接して配置されたリードレス心臓ペースメーカー(LCP)であることをさらに含む。
【0094】
実施例16では、実施例9〜15の何れかに記載の方法は、第一の医療装置によって第二の埋め込み可能な医療装置に、感知された複数の心房事象の一つ以上についての指示を通信することが、患者の組織を通した伝導通信を含むことをさらに含む。
【0095】
実施例17では、患者の心臓にペーシングパルスを送達する医療装置システムは第二の埋め込み可能な医療装置に通信可能に接続された第一の埋め込み可能な医療装置を含み、第一の埋め込み可能な医療装置は心房事象を感知し、感知された心房事象に基づいて心房収縮率を決定し、心房収縮率が閾値を超えたか否かを判断し、心房収縮率が閾値を下回った場合、感知された各心房事象を第二の埋め込み可能な医療装置に通信し、心房収縮率が閾値を超えた場合、第一所定期間ごとに一つの感知された心房事象を第二の埋め込み可能な医療装置に通信するように構成され、第二の埋め込み可能な医療装置は感知された心房事象の受信に応じてペーシングパルスを送達するように構成される。
【0096】
実施例18では、実施例17に記載の医療装置システムは、第一所定期間ごとに一つの感知された心房事象を第二の埋め込み可能な医療装置に通信することが、前の感知された心房事象に続くブランキング期間の後に感知された心房事象を通信することを含むことをさらに含む。
【0097】
実施例19では、実施例17または18に記載の医療装置システムは、第一所定期間ごとに一つの感知された心房事象を第二の埋め込み可能な医療装置に通信することが、第一所定期間ごとに一回、人工的な感知された心房事象を第二の埋め込み可能な医療装置に通信することを含むことをさらに含む。
【0098】
実施例20では、実施例17〜19の何れかに記載の医療装置システムは、第一の埋め込み可能な医療装置がブランキング期間に続く第二所定期間内に心房事象を感知しなかった場合、第一の埋め込み可能な医療装置が人工的な感知された心房事象を第二の埋め込み可能な医療装置に通信するようにさらに構成されることをさらに含む。
【0099】
実施例21では、リードレス心臓ペースメーカーシステムは心室部位に埋め込み可能な第一リードレス心臓ペースメーカー(LCP)と、心房部位に埋め込み可能な第二リードレス心臓ペースメーカー(LCP)とを含み、第二LCPは心房収縮を感知するように構成され、第一LCPおよび第二LCPは、第一LCPおよび第二LCPがトラッキングモードにおいて心室部位にペーシング治療を提供可能なように通信可能に接続されるように構成され、第一LCPおよび第二LCPの少なくとも一方は、第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなった場合に、非トラッキングモードにおいて心室部位にペーシング治療を提供するように構成される。
【0100】
実施例22では、実施例21に記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを第一LCPが判断し、リードレス心臓ペースメーカーシステムをトラッキングモードから非トラッキングモードに変化させるように構成されることをさらに含む。
【0101】
実施例23では、実施例21および22の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを第二LCPが判断し、リードレス心臓ペースメーカーシステムをトラッキングモードから非トラッキングモードに変化させるように構成されることをさらに含む。
【0102】
実施例24では、実施例21〜23の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第一LCPおよび第二LCPの少なくとも一方が、第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断するように構成されるとともに、これらが一括してリードレス心臓ペースメーカーシステムをトラッキングモードから非トラッキングモードに変化させるように構成されることをさらに含む。
【0103】
実施例25では、実施例21、23、および24の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第二LCPがトラッキングモードから非トラッキングモードに切り替わるように第一LCPに信号を通信することをさらに含む。
【0104】
実施例26では、実施例21〜25の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、トラッキングモードにおいて、第二LCPが第一LCPに感知された各心房収縮に対する事象信号を通信することをさらに含む。
【0105】
実施例27では、実施例21〜26の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、トラッキングモードにおいて、第一LCPが第二LCPから受信した各事象信号に応じて電気刺激を送達するように構成されることをさらに含む。
【0106】
実施例28では、実施例21〜27の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、非トラッキングモードにおいて、第一LCPが第二LCPから受信した信号とは独立して電気刺激を送達するように構成されることをさらに含む。
【0107】
実施例29では、実施例21〜28の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、非トラッキングモードにおいて、第一LCPが所定の
頻度で電気刺激を送達することをさらに含む。
【0108】
実施例30では、実施例21〜29の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、非トラッキングモードにおいて、第二LCPが第一LCPに感知された各心房収縮に対する事象信号を通信しないことをさらに含む。
【0109】
実施例31では、実施例21〜30の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、非トラッキングモードにおいて、第二LCPが第一LCPに人工的な心房収縮を表す事象信号を通信することをさらに含む。
【0110】
実施例32では、実施例21〜31の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第一LCPが
所定の頻度よりも高くない頻度で電気刺激を送達可能であることをさらに含む。
【0111】
実施例33では、実施例21〜32の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第二LCPによって感知された心房収縮の間隔が閾値時間よりも短くなったか否かを判断することが、前の
連続する心房事象の各対の間隔の二つ以上を平均化することを含むことをさらに含む。
【0112】
実施例34では、実施例21〜33の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、第一LCPおよび第二LCPが患者の身体を通して導電的に通信可能に接続されるように構成されることをさらに含む。
【0113】
実施例35では、実施例21〜34の何れかに記載のリードレス心臓ペースメーカーシステムは、トラッキングモードから非トラッキングモードに切り替わった後、第一LCPが電気刺激を送達する
頻度を所定の
頻度まで徐々に下げるように構成されることをさらに含む。