特許第6363219号(P6363219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363219温度測定デバイス、放射強度と相関がある温度を含む、電子線滅菌のためのデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363219
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】温度測定デバイス、放射強度と相関がある温度を含む、電子線滅菌のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/08 20060101AFI20180712BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20180712BHJP
   B65B 55/08 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   A61L2/08 108
   B65B55/04 A
   B65B55/04 B
   B65B55/08 B
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-554222(P2016-554222)
(86)(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公表番号】特表2017-507718(P2017-507718A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2015051076
(87)【国際公開番号】WO2015128117
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年12月19日
(31)【優先権主張番号】1450224-9
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】SE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸川 義信
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラー・オムラネ
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−229622(JP,A)
【文献】 特開2003−337198(JP,A)
【文献】 特開2012−017149(JP,A)
【文献】 特開2011−230832(JP,A)
【文献】 特表2009−512875(JP,A)
【文献】 特表2009−540524(JP,A)
【文献】 国際公開第02/072160(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/011079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/08
A61L 2/08
B65B 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線照射により包装容器(60)または包装材料ウェブを滅菌する電子線滅菌デバイスであって、
内部空間(14)を包囲しているハウジング(12)と、
電子線を発生させるために前記内部空間(14)内に配置されている電子線発生器(20)と
を含み、
前記ハウジング(12)は電子射出窓(30)を含み、
温度測定デバイス(50)が、前記電子線の移動経路内の温度を測定するために設けられており、前記温度は、前記電子線の、送られる電子エネルギーの尺度であり、
前記温度測定デバイス(50)は、前記電子射出窓の異なる位置に配置されている少なくとも2つの温度センサを含み、各温度センサは温度を測定するのに適合しており、
前記電子射出窓(30)は、電子伝達性の箔(38)を支持する支持構造体(32)を含み、
前記温度測定デバイス(50)は、前記支持構造体(32)の上および/または前記支持構造体(32)の内部に配置されている、電子線滅菌デバイス。
【請求項2】
電子線照射により包装容器(60)または包装材料ウェブを滅菌する電子線滅菌デバイスであって、
内部空間(14)を包囲しているハウジング(12)と、
電子線を発生させるために前記内部空間(14)内に配置されている電子線発生器(20)と
を含み、
前記ハウジング(12)は電子射出窓(30)を含み、
温度測定デバイス(50)が、前記電子線の移動経路内の温度を測定するために設けられており、前記温度は、前記電子線の、送られる電子エネルギーの尺度であり、
前記温度測定デバイス(50)は、前記電子射出窓(30)の中心位置の温度を測定するように配置された第1の温度センサと、前記第1の温度センサの位置とは異なる位置に配置された第2の温度センサを含む、電子線滅菌デバイス。
【請求項3】
前記温度測定デバイス(50)は前記電子射出窓(30)の温度を測定するのに適合していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子線滅菌デバイス。
【請求項4】
前記電子射出窓(30)は、支持構造体(32)と、電子伝達性の箔(38)とを含み、
前記温度測定デバイス(50)は、前記支持構造体(32)および/または前記箔(38)の温度を測定するのに適合していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電子線滅菌デバイス。
【請求項5】
前記電子射出窓(30)は、電子伝達性の箔(38)を支持する支持構造体(32)を含み、
前記温度測定デバイス(50)は、前記支持構造体(32)の上および/または前記支持構造体(32)の内部に配置されていることを特徴とする、請求項に記載の電子線滅菌デバイス。
【請求項6】
前記温度測定デバイス(50)は、前記電子射出窓(30)の中心位置の温度を測定するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の電子線滅菌デバイス。
【請求項7】
前記温度測定デバイス(50)は少なくとも1つの熱電対を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子線滅菌デバイス。
【請求項8】
前記温度測定デバイス(50)は、前記電子射出窓(30)の温度を測定する少なくとも1つの非接触温度センサ(52)を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の電子線滅菌デバイス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電子線滅菌デバイス(10)を用いて、電子線照射により包装容器(60)または包装材料ウェブを滅菌する方法であって、
ハウジング内で電子線を発生させるステップと、
前記電子線を電子射出窓(30)を通して前記ハウジングから退出させるステップと、
前記電子線により送られる電子エネルギーの尺度として、前記電子線の移動経路内の温度を測定するステップと、
前記電子射出窓の異なる位置に配置されている少なくとも2つの温度センサのそれぞれにおいて温度を測定するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線照射による包装容器または包装材料の滅菌のためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば食品業界では、液体および部分的に液体の食品を、例えばPETなどのポリマー材料から、あるいは紙もしくは板紙のコア層および例えばポリマー材料もしくはアルミ箔などの1つまたは複数の障壁層を含む包装積層から、製造される包装容器内に包装することが一般的である。1つの包装タイプが、前述の包装積層の包装ブランクがスリーブとして形成され、封止される、充填機内で製造される「カートンボトル」である。前記スリーブは、熱可塑性材料の最上部がスリーブ端部上に直接射出成形される一方の端部で閉じられる。包装積層のシートが包装積層のマガジンリールから切り取られてもよい。
【0003】
最上部が仕上げられた場合、包装容器は、依然として開いた底部を介して製品で満たされる準備ができており、次いで封止され、最終的に折り曲げられる。充填作業工程の前に、包装容器は処理を受ける。分配および保存が冷却温度において行われる場合、包装容器は消毒されるのに対して、分配および保存が周囲温度において行われる場合、包装容器は滅菌される必要がある。滅菌は、包装材料の表面上にまたは製品中に存在する可能性がある、例えば菌類、バクテリア、ウイルスおよび胞子などの伝播因子を含む微生物生命体を除去するかまたは殺す工程を指す用語である。(食品)包装産業では、これは、一般に、無菌包装すなわち滅菌された包装容器内に滅菌された製品を包装すること、すなわち製品および包装容器の両方を生きた細菌および微生物がいないように保つことを指し、その結果、特別な冷却要件なしに製品の鮮度が保たれ得る。すなわちその結果、包装容器は周囲温度に保存されているが、それの内部の滅菌状態が維持され得る。この場合、用語「商業的に無菌の」もまた一般的に用いられ、一般に、食品が製造中、配送中、かつ保存中に保持される可能性が高い、通常の非冷蔵条件において食品中で成長することができる微生物の不在を意味する。本願では、語「無菌の」は、少なくとも商業的に無菌である状態を指す。
【0004】
そのような包装容器を滅菌する1つの方法が、電子線エミッタから放出される低電圧電子線によりそれを照射することである。即時充填可能な包装容器の電子線による線形照射の例が、国際公開第2005/002973号に開示されている。包装容器の照射の他の例、これらの場合にはPETボトルが、例えば国際公開第2011/011079号および欧州特許第2371397号に記載されており、後者は回転システムを記載している。これらのシステムでは、ボトルのネック部を通過させられるのに十分に小さい直径を有するエミッタが使用されている。また、包装材料のウェブを滅菌するのに低電圧電子線が使用され得る。ウェブは、ウェブの表面に対向している、それらの電子射出窓を有する2つの対向する電子線エミッタ間で移送される。ウェブ滅菌は、例えば国際公開第2004/110868号に記載されている。
【0005】
包装容器の内部を滅菌するために包装容器内に挿入され得る、電子線滅菌デバイスまたはエミッタが既知である。さらに、包装容器の外面を滅菌する電子線滅菌デバイスがある。
【0006】
電子線エミッタの正確な動作を監視し、それにより滅菌を確実にすることができるように、線量測定検査を実施することが一般的である。これらの検査は、電子線エミッタの耐用期間を通じて定期的に、一般に毎日、行われる。一般に、線量測定検査は、線量測定手段すなわち放射線暴露に反応するパッチを付加することを含み、包装容器に対して、放射中に正確な吸収線量が得られるかどうかを測定する。同時に、電子線エミッタにおける電圧および電流の測定が行われる。フィラメント上の電流はフィラメントに供給される電流とフィラメントを離れる電流とを比較することにより測定される。このようにして、フィラメントから放射された電子量を判定することが可能である。さらに、電子射出窓とフィラメントとの間の電圧すなわち電位が測定される。電圧および電流の測定値は、次いで、包装容器の製造中の設定値として用いられる。電流および電圧は、製造中、継続的に監視され、値が設定値より小さくない限り、包装容器は正しい線量を受けていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/002973号
【特許文献2】国際公開第2011/011079号
【特許文献3】欧州特許第2371397号
【特許文献4】国際公開第2004/110868号
【特許文献5】国際公開第2013/004565号
【特許文献6】国際公開第2011/096874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電子線滅菌デバイスと、電子線滅菌デバイスの機能性のオンライン測定およびオンライン制御が改善された特に信頼性のある滅菌を可能にする、包装容器または包装材料のウェブを滅菌する方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、請求項1に記載の電子線滅菌デバイスおよび請求項12に記載の電子線滅菌のための方法を用いて、発明に基づいて解決される。好適な実施形態が、特に添付図面と併用されている、従属クレームおよび以下の説明に明示されている。
【0010】
本発明による電子線滅菌デバイスは、電子線照射により包装容器または包装材料ウェブを滅菌するようになされており、内部空間を包囲しているハウジングと、電子線を発生させるために内部空間内に配置されている電子線発生器とを含む。ハウジングは電子射出窓を含む。電子線滅菌デバイスは、電子線の移動経路内の少なくとも1つの温度を測定するかまたは検出する温度測定デバイスをさらに含む。前記温度は、電子線滅菌デバイスにより送られる電子エネルギーの尺度である。
【0011】
本発明による本方法は、電子線照射により包装容器または包装材料ウェブを滅菌する方法である。本発明は、ハウジング内で電子線を発生させるステップと、電子線を電子射出窓を通してハウジングから退出させるステップと、電子線により送られる電子エネルギーの尺度として、電子線の移動経路内の温度を測定するステップとを含む。本発明の方法は本発明の電子線滅菌デバイスにより実施され得る。
【0012】
適切な滅菌を得るために、電子線滅菌デバイスの照射線量が所定の範囲内に保たれなければならない。送られた線量が小さすぎる場合、滅菌が適切でない可能性があると考えられる。線量が高すぎる場合、包装材料が悪影響を受ける可能性があると考えられる。したがって、電子線滅菌デバイスを動作させている時に、照射線量、特に電子線滅菌デバイスの電子線の強度を判定することが一般に望ましい。
【0013】
本発明の基本的着想が、デバイスと、照射線量もしくは電子線(出力線量/電子線エネルギー出力)の強度または電子線滅菌デバイスの電子線により送られる電子エネルギーを判定する方法とを提供することである。照射線量もしくは電子線線量は、電子線の移動経路内の温度の測定により判定される。電子線すなわち電子線発生器により放出される電子が物体にぶつかった場合、熱が生成され、各物体は加熱される。物体の温度を電子線滅菌デバイスの出力線量と関連付けることにより、温度測定デバイスは、電子線滅菌デバイスの線量センサとして使用されることが可能である。温度測定は、電子線滅菌デバイスの動作中にすなわち電子線が発生しかつ電子線が電子射出窓を通過する間に行われる。電子線経路は、特に、電子線発生器から滅菌される包装容器または包装材料ウェブに向かって、すなわち電子線発生器から電子射出窓に向かってかつそれを通って延在している経路である。
【0014】
温度は、一般に、例えば電子線発生器と電子射出窓との間など、移動経路(電子線経路)内の任意の位置で測定され得る。しかし、1つまたは複数の実施形態では、温度は電子射出窓において測定され、測定デバイスは、電子射出窓のまたはそこにおいて温度を測定するようになされている。電子射出窓の温度は、電子エネルギーまたは照射線量もしくは線強度に左右され、したがって、照射線量は、電子射出窓の温度を判定することにより判定され得る。電子線が電子射出窓を通過する場合、電子線のエネルギーは電子射出窓へ部分的に移送される。したがって、電子射出窓は、電子線滅菌デバイスが動作している時に熱くなり、電子射出窓の温度は、照射線量、特に電子流、または電子線滅菌デバイス(エミッタ)により放出される電子エネルギーに直接関連している。したがって、電子射出窓の温度の測定が、照射線量を判定する簡単な方法を実現する。したがって、温度測定デバイスは、照射線量を監視するのに使用され得る。
【0015】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、温度測定デバイスは、電子射出窓に配置されている温度センサを含む。例えば熱電対であり得る温度センサは電子射出窓に接触し、特に直接接触により、電子射出窓の少なくとも1つの特定の位置の温度を検出することが好ましい。温度測定デバイスは1つまたは複数の温度センサを含み得る。温度センサは、電子射出窓全体に亘る電子線の均一性を検出するために、電子射出窓の様々な位置に配置されてもよい。
【0016】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、温度測定デバイスは、ハウジングの内部空間内に、電子の移動経路内にすなわち電子発生器と電子射出窓との間に、置かれている。温度測定デバイスは、電子により衝突された場合に熱を生み出すようになされている媒体により少なくとも部分的に覆われている。媒体はセラミック材料であってもよい。類似した温度デバイスが、電子射出窓の外側で、依然として電子の移動経路内である、温度デバイスが電子射出窓と直接接触していない位置で使用されてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態では、電子射出窓は支持構造体と電子伝達性の箔とを含み、温度測定デバイス、特に温度センサは、支持構造体および/または箔の温度を測定するようになされている。本実施形態は、電子線滅菌デバイスまたはエミッタにより送られるエネルギーが真空窓(箔)およびその支持体の両方に部分的にかつ線形に堆積されることに基づいている。したがって、これらの物品上で温度を測定することは、電子流自体を判定する簡単な方法を実現する。支持要素は、特に、例えば銅で作製されており、電子が通過することができる複数の自由空間または穴部を有する、格子様構造体であってもよい。箔は電子透過性であり、例えばチタン箔などの金属箔であってもよい。箔の厚さは4〜12ミクロンの範囲内であってもよい。箔は支持構造体を覆っている。支持構造体および/または箔の温度の測定のために、測定デバイスの検知ヘッドまたは温度センサが、一実施形態では、支持構造体および/または箔に直接接触することができる。
【0018】
本発明の別の実施形態では、温度測定デバイス、特に温度センサは、支持構造体上にかつ/またはその内部に配置されている。支持構造体上でのかつ/またはその内部での温度センサの配置は、特に温度センサが支持構造体の自由空間に進入しない場合、非侵入的なその場の線量/温度測定を可能にする。温度センサは、電子線が支持構造体の自由空間を通過することをそれが妨げないかまたは阻止しないように配置されていることが好ましい。温度測定デバイス、特に温度センサは、支持構造体内の自由空間の遮断を回避するために、内部空間に対向している、支持構造体の表面上にまたは内部空間の反対側の表面上に配置されていることが好ましい。別の実施形態では、また、温度センサは、支持構造体の材料内に埋め込まれることが可能である。
【0019】
測定温度と照射線量との間の特に信頼性のあるかつ/または予測可能な関係を得るために、温度測定デバイス、特に温度センサは、電子射出窓の中心位置の温度を測定するように配置されている。特に、電子射出窓が中心部または中心点に関して実質的に対称である場合、この点における温度は電子流の信頼性のある尺度である。本発明の一実施形態では、電子射出窓は円形である。
【0020】
本発明の別の実施形態では、温度測定デバイスは、電子射出窓の少なくとも2つの異なる位置における温度を測定するようになされている。電子射出窓の2つ以上の位置における温度測定により、放出電子照射線量の判定の信頼性は高められることが可能である。温度測定デバイスは、電子射出窓において個別位置で温度を測定する2つ以上の別個の温度センサを含み得る。温度センサの場(field)が設けられている場合、また、電子線滅菌デバイスの空間放射プロファイルを判定することが可能である。
【0021】
本発明の一実施形態では、温度測定デバイスは熱電対を含む。熱電対は、本願に必要な十分な正確性と、温度を測定する信頼性のあるコスト効率の高い方法とをもたらす。
【0022】
本発明の別の実施形態では、温度測定デバイスは、電子射出窓の温度を測定する非接触温度センサを含む。例えば、熱放射を測定する温度計が使用され得る。熱放射は電子射出窓の温度を判定するために使用される。この種の既知のデバイスが高温計である。高温計は、例えば、電子線滅菌デバイスのハウジングの外側にかつ包装容器の連続的滅菌間にそれが電子線滅菌デバイスを通過するように、配置され得る。電子線滅菌デバイスは、電子射出窓における安定した温度が実現されるすなわち電子射出窓の温度が経時的に実質的に一定であるように、連続的滅菌間に動作し続けることが好ましい。
【0023】
また、電子射出窓一部分のみの温度測定に基づく電子照射線量の判定の信頼性は、電子が電子射出窓を通過することにより生成される、電子射出窓における温度プロファイルに左右される。温度プロファイルがより予想可能でありかつより均一に分配されているほど、電子照射線量の判定がより正確である。したがって、本発明によれば、予想可能なかつ/または一様な電子放出プロファイルを有する電子線発生器を使用することが好適である。
【0024】
本発明の一実施形態では、電子線滅菌デバイスは、測定温度に基づいて電子照射線量、特に電子流を計算する電子照射線量計算機を含む。電子照射線量計算機は、電子射出窓の特に特定の位置における測定温度と、電子射出窓から発する電子照射線量との間の関係を定める較正データを使用する。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態では、電子線滅菌デバイスは、測定温度を表示するかつ/または測定温度に基づいて判定される電子照射線量を表示するディスプレーを含む。ディスプレーは温度センサおよび/または電子照射線量計算機に動作可能に接続されている。
【0026】
別の実施形態が、測定温度が所定の閾値を超過したかまたは所定の閾値未満に降下した場合に警報信号をトリガするようになされている警報デバイスにより特徴付けられている。警報デバイスは、温度測定デバイスに動作可能に接続されており、音響信号および/または可視警報信号を発するようになされていてもよい。電子射出窓における最高温度が300℃から400℃までの範囲内にあり得る。あるいは、温度が選択された閾値温度未満に低下した場合、フィードバック信号が生成され、照射制御モジュールへ送信される。照射制御モジュールは、滅菌に関する種々の工程を制御するモジュールである。あるフィードバック信号が、取られる適切な手段を生成するように手配されていてもよい。
【0027】
本発明による本方法の1つまたは複数の実施形態では、電子照射線量が測定温度に基づいて判定される。電子照射線量の判定は、特に電子射出窓の特定の位置における測定温度と、電子射出窓の全電子照射線量との間の関係を示す較正データを使用することが好ましい。温度の測定は、電子線滅菌デバイスの動作中にすなわち電子線が電子射出窓を通過する間に起こる。
【0028】
以下では、本発明は添付図面に関連してさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明による電子線滅菌デバイスの実施形態の図である。
図2】包装容器の内部容積を滅菌する滅菌工程の図である。
図3】本発明による電子射出窓の別の実施形態の図である。
図4】電子射出窓の測定温度に基づいて電子流を判定する較正曲線の図である。
図5】円形電子射出窓および矩形電子射出窓およびいくつかの温度センサの位置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
全図において、等しいまたは対応する要素が同一参照番号で示されている。異なる図に関連して記載されている特徴が、技術的に可能である限り組み合わせられることが可能である。
【0031】
図1は、包装容器60、特に薬物または食物容器の内部滅菌のための、本発明による電子線滅菌デバイス10を示す。
【0032】
電子線滅菌デバイス10は、内部空間14、特に真空空間または真空室を包囲しているハウジング12を含む。電子線発生器20が、ハウジング12内にすなわち内部空間14内に配置されている。電子透過性または電子伝達性である電子射出窓30が、ハウジング12の端面に配置されている。ハウジング12は、電子発生器20を設けられている第1の部分12aと、電子射出窓30を設けられている第2の部分12bとを有する。包装容器の内面は、電子線滅菌デバイス10と包装容器との間の相対運動を実現することにより滅菌される。したがって、第1の部分12aは第2の部分12bより大きな直径を有し、第2の部分12bは、包装容器の開口部を通して挿入されるのに十分に小さい直径を有する。
【0033】
電子線発生器20は、昇温に、特に略2000℃程度に加熱されると電子集合体を放出するフィラメント24を含む。フィラメント24は例えばタングステンで作製され得る。電子は、フィラメント24(カソード)と電子射出窓30(アノード)との間の電位により電子射出窓30に向かって電子加速区域26内で加速される。電子のエネルギーに因り、電子は目的領域に向かって電子射出窓30を通過する。目的領域は、この場合、滅菌される包装容器60の内部にある(図2参照)。電子加速区域26(図1)内での電子の加速は、電子線発生器20と電子射出窓30との間の高電圧場により達成される。高電圧場内の電位差は略75kVから150kVまで程度であり得る。フィラメント24は、コネクタ28を介して高電圧供給部に連結されている。
【0034】
図2に示されている通り、ハウジング12は、滅菌される包装容器60内に少なくとも部分的に挿入されるように略長手方向の形状を有する。電子線滅菌デバイス10は、例えば、包装容器60の開いた上端部または底端部を通して包装容器60内に挿入され得る。図2に示されている実施形態では、包装容器60は上面62と、下面64と、上面62と下面64との間の略管形状の側壁66とを有する。電子線滅菌デバイス10は、包装容器60の開いた下面64を通して包装容器60内に挿入される。あるいは、しかしまた、電子線滅菌デバイス10は、包装容器60の上面62にある開口部を通して包装容器60内に挿入される。図2に示されている通り、上面62は注ぎ口が付けられることが可能であり、充填後、例えばねじキャップにより閉鎖され得る。
【0035】
図3に最も良く示されている電子射出窓30は円形形状を有し、例えばアルミニウムまたは銅で作製されている格子様支持構造体32と、電子伝達性の金属箔38とを含む。金属箔38は支持構造体32により支持されており、略4ミクロンから12ミクロン程度までの厚さを有し得る。支持構造体32、例えば格子板または多孔板、は、複数のリブ34とリブ34間の複数の開口部36とを含む。リブ34は、電子射出窓30の径方向に少なくとも部分的に延在している。電子射出窓30は、内部空間14またはハウジング12の内部の方に向いている内面40と、使用中、滅菌される包装容器60の方に向いている外面42とを有する。
【0036】
電子射出窓30の少なくとも1つの位置において温度を測定するために、電子線滅菌デバイス10は温度測定デバイス50を含む。温度測定デバイス50は、電子射出窓30の支持構造体32に配置されている温度センサ52、例えば熱電対、を含む。図3の実施形態では、温度センサ52は、支持構造体32のリブ34の1つのところにまたはその内部に配置されており、リブ34は径方向に延在していることが好ましい。支持構造体32の開口部36を遮らないために、温度センサ52はリブ34の1つに統合され得るか、あるいはリブ34の表面上に、好ましくは電子射出窓30または支持構造体32の外面42もしくは内面40上に配置され得る。あるいは、かつ図1に示されている通り、温度センサ52は開口部36およびリブ34を部分的に通り抜けて延在していてもよい。
【0037】
温度測定デバイス50は、特に電圧値を温度値に変換するために、温度センサ52を信号変換器に接続するケーブル54をさらに含む。ケーブル54は、例えば、ケーブル54が破線で示されている図1に示されている通り、ハウジング12の側壁16に沿って経路を定められている。図1に認められる通り、側壁16は内壁17と外壁18とから成り、ケーブル54は、内壁17と外壁18との間の内部空間を通って経路が定められている。しかし、他の配置もまた可能である。
【0038】
図3は、温度測定デバイス50の温度センサ52が支持構造体32のところにまたはその内部に延在している実施形態を示す。それは、電子射出窓30の中心位置44と支持構造体32の外側支持リング33との間に径方向に延在している。温度センサ52は、当該技術分野において一般に既知の、2つの異なる金属を含む熱電対である。熱電対の直径が、15ミクロンから35ミクロンまで、特に20ミクロンから30ミクロンまでの範囲内であり得る。熱電対の測定点は電子射出窓30の中心領域(中心位置44)内に配置されており、支持構造体32および/または箔38に接触している。電子射出窓30において一様な温度プロファイルを生成するために、支持構造体32のリブ34は、支持構造体32の中心位置44と支持構造体32の径方向外側部分との間に可変厚さを有していてもよい。
【0039】
図4は、温度測定デバイス50を較正する較正曲線を示す。x座標に電子流Iが示されており(mA)、y座標に温度が示されている(℃)。温度と電子流(照射線量)との間に直線関係が存在する。箔の温度は一般に支持構造体の温度より高いことが分かる。この較正曲線により、電子流および/または照射線量は測定温度に基づいて判定され得る。
【0040】
電子照射線量計算機70が、測定温度に基づいて照射線量または線強度を計算するために設けられている。測定温度および/または照射線量はディスプレー72に表示され得る。警報デバイス74が、測定温度が所定の閾値温度を超過したかまたは所定の閾値温度未満に降下した場合、警報信号を供給するために配置されている。
【0041】
本発明は、特に製薬業界または食品業界で使用するための、包装容器を滅菌するために使用される電子線エミッタの電子流を判定する効果的な方法を提供する。デバイスは頑丈であり、低コストで製造され得る。必要に応じて細い熱電対が使用され、温度変化に対する感受性を高めることができる。測定温度は、温度が照射線量の直接的尺度であるように、電子流に直接関連している。照射線量を判定するために、簡単な較正が使用され得る。したがって、温度測定デバイスは、線量センサおよび/または警報監視装置として使用され得る。
【0042】
例示的温度測定デバイス50は、電子線の均一性および任意の均一性の異常もまた検出することができるように、電子射出窓全体に亘って分配されているいくつかの温度センサ52を含み得る。図5の上図は、円形電子射出窓30を非常に概略的に示している。温度測定デバイス50は、電子射出窓内にまたはそこに配置されておりかつ窓の8つの異なる位置で温度を測定することができる8つの温度センサ52を含む。温度センサは、電子射出窓の外周に沿って等しく分配されてかつ電子射出窓30の中心に向かう方向に向いて配置されている。それらは遥々中心まで到達せず、中心から距離がある。これは、環形状である電子線、すなわち電子線の中心の強度が電子線の外周付近より小さい場合に適した1つの例示的配置である。図5の下図は、矩形電子射出窓30と、窓の長さ全体に亘って実質的に等しく分配されているいくつかの温度センサ52の位置とを示す。
【0043】
温度測定デバイスは、包装容器の内面を滅菌する電子線滅菌デバイス内に設けられてもよいことが記載されている。本発明の温度測定デバイスはまた、包装材料ウェブまたは包装容器の外面の滅菌に使用される電子線滅菌デバイスに適していることを理解すべきである。そのような滅菌は、例えば国際公開第2004/110868号に記載されている。ウェブ滅菌および包装容器の外面の滅菌に適している電子線エミッタの一例が、国際公開第2013/004565号に示されている。1つまたは複数の温度測定デバイスが支持構造体内に嵌合されている。支持構造体は、国際公開第2011/096874号に記載されている種類のものであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 電子線滅菌デバイス
12 ハウジング
14 内部空間
16 側壁
17 内壁
18 外壁
20 電子線発生器
24 フィラメント
26 電子加速区域
28 コネクタ
30 電子射出窓
32 支持構造体
33 支持リング
34 リブ
36 開口部
38 箔
40 内面
42 外面
44 中心位置
50 温度測定デバイス
52 温度センサ
54 ケーブル
60 包装容器
62 上面
64 下面
66 側壁
68 開口部
70 電子照射線量計算機
72 ディスプレー
74 警報デバイス
図1
図3
図4
図5