(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1部分と前記第2部分の前記端縁との前記垂直方向における離間を、前記第2部分の前記端縁と前記第1部分の前記一面とを前記垂直方向に相対移動させることにより行う請求項1記載の樹脂フィルムの剥離方法。
前記第1部分および第2部分の少なくとも一方の前記平行方向への移動が、前記第1部分と前記第2部分とが平面視で重なる方向への移動である請求項2記載の樹脂フィルムの剥離方法。
前記第1部分と前記第2部分の前記端縁とを前記垂直方向に離間させたときの、前記樹脂フィルムの前記第1部分との密着部分と前記第2部分の前記端縁とで緊張したときの前記樹脂フィルムと前記第1部分の前記一面とのなす角度をθとするとき、前記垂直方向への離間距離dごとに、前記平行方向にd×tan(θ/2)だけ移動させる請求項3記載の樹脂フィルムの剥離方法。
前記第1部分と前記第2部分の前記端縁との前記垂直方向における離間を、前記第2部分の端縁が前記第1部分の前記一面と一定距離だけ離間した後、前記端縁と平行で、かつ、前記第1部分と反対側に設けられる支軸の周りに前記端縁を回転させることにより、徐々に行う請求項1記載の樹脂フィルムの剥離方法。
前記支持基板がガラス板またはセラミック基板からなり、前記第1部分と第2部分とに分離の準備をする工程を前記支持基板の前記樹脂フィルムが形成された面と反対面から入れられたスクライブ線に沿って前記支持基板を割断することにより行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂フィルムの剥離方法。
前記支持基板が、金属板または半導体基板からなり、前記第1部分と前記第2部分とが着脱自在に接続され、前記分離の準備をする工程を、前記第1部分と前記第2部分とを離脱できるようにすることにより行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂フィルムの剥離方法。
前記樹脂フィルムの形成を、前記支持基板上にポリイミドからなる液状樹脂を塗布し、前記樹脂フィルムと前記支持基板との密着力が、0.1N/10mm以上であって、1N/10mm以下になるように形成することにより行う請求項8記載の電子デバイスの製造方法。
前記保持具が、前記第2部分の離間距離の増大に応じて、前記離間距離の増大分に対応する寸法だけ前記第1部分を前記平行方向に移動させる第2駆動部をさらに有する請求項11記載の樹脂フィルムの剥離装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、図面を参照しながら、本発明の樹脂フィルムの剥離方法、本発明のフレキシブル基板を有する電子デバイスおよび本発明の有機EL表示装置の製造方法が説明される。
図1には、本発明の樹脂フィルムの剥離方法の一実施形態により樹脂フィルムを剥離する工程を含む本発明の一実施形態のフレキシブル基板を有する電子デバイスの製造方法のフローチャートが示されている。また、
図2A〜2Kに、その各工程の樹脂フィルムの状態などが示されている。
【0023】
本実施形態によるフレキシブル基板を有する電子デバイスの製造方法は、
図2Aに示されるように、第1部分21と第2部分22とを有する支持基板2の一面に可撓性の樹脂フィルム11が形成される(S1)。次に、
図2Bおよび
図2Cに示されるように、樹脂フィルム11上に電子素子12が形成される(S2)。なお、本実施形態では、支持基板2は、
図2A〜2Dの工程では未だ第1部分21と第2部分22とに物理的に分離されておらず一体の状態である。従って「第1部分21」および「第2部分22」とは、この段階では、それぞれ「第1部分21」、「第2部分22」になることが予定される部分を意味している。つぎに、
図2D〜2Gに示されるように、支持基板2を第1部分21と第2部分22とに分離の準備をする(S3)。この分離の準備とは、第1部分21と第2部分22とを容易に分離し得る状態にすることを意味する。その後、
図2H〜2Kに示されるように、支持基板2の第2部分22の一面に樹脂フィルム11が密着した状態で、支持基板2の第1部分21と、第2部分22の少なくとも第1部分21側の端縁22aとを第1部分21の一面21aと垂直方向(各図において符号Veで示される方向、以下、「垂直方向Ve」または単に「垂直方向」ともいう)において離間するように相対移動させる。そして、その相対移動と共に、第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を、第1部分21の一面21aと平行な方向であって、第1部分21と第2部分22とを結ぶ方向(各図において符号Paで示される方向、以下、「平行方向Pa」または単に「平行方向」ともいう)に自由移動させるか、または強制移動させる(S4)。その結果、
図2Kに示されるように、樹脂フィルム11が支持基板2の第1部分21から完全に剥離され、樹脂フィルム11を含むフレキシブル基板を有する電子デバイス1を得ることができる。
【0024】
ここで、「自由移動させる」とは、第1部分21と第2部分22の端縁22aとを垂直方向Veにおいて離間するように相対移動させるときに、その相対移動に応じて第1部分21と第2部分22との間に生じる平行方向の力の作用で、その一方または両方が平行方向Paに移動するのを妨げずに移動させることを意味する。たとえば、第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を、平行方向Paに自由に移動し得る支持体などで支持しておき、垂直方向において離間する第1部分21と第2部分22の端縁22aとの相対移動に伴って支持体などを平行方向Paに自由に移動させることが例示される。また、「強制移動させる」とは、自由移動とは別途に平行方向に作用する外力を加えて第1部分21および第2部分22の一方または両方を移動させることを意味する。たとえば、垂直方向Veにおいて離間する第1部分21と第2部分22の端縁22aとの相対移動により平行方向に作用する力とは別に、前述の支持体などに外力を印加することにより第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を平行方向Paに移動させることが例示される。
【0025】
また、「相対移動させる」とは、特に記載のある場合を除き、2つの移動対象物のどちらを移動させるものでもよく、両方をそれぞれ他方と異なる方向に移動させるものでもよい。また、「支持基板2の第2部分22の一面に樹脂フィルム11が密着した状態」とは、樹脂フィルム11の幅方向の端から端まで密着していることが好ましいが、第1部分21と第2部分22とが離間したとき、樹脂フィルム11の幅方向の端から端まで、略均一な剥離力が樹脂フィルム11に加わる程度に、幅方向において第2部分22上に保持されていればよいという意味である。その場合、幅方向において樹脂フィルム11の一部に第2部分22から離れている部分があっても構わない。
【0026】
図1の工程S3および工程S4は、本発明の一実施形態の樹脂フィルムの剥離方法を示している。また、本発明の一実施形態の有機EL表示装置の製造方法では、
図1の工程S1において形成する樹脂フィルムはフレキシブル基板とし得るものであり、工程S2において、電子素子としてTFT(薄膜トランジスタ)を含む有機EL素子をマトリクス状に形成する。
【0027】
本発明の一実施形態の樹脂フィルムの剥離方法によれば、支持基板2の第1部分21と第2部分22の端縁22aとを垂直方向Veにおいて離間するように相対移動することにより、第1部分21上の樹脂フィルム11が第2部分22側に引っ張られ、
図2Hに示されるように、第1部分21の第2部分22側の縁部において、樹脂フィルム11に部分的な剥離11aが生じる。すなわち、樹脂フィルム11の端部を掴んで引っ張ったりすることなく容易に剥離部分を生じさせることができる。剥離11aのような起点が生じることで、比較的弱い力で剥離11a側から第1部分21上の樹脂フィルム11の他の部分を剥離することが可能になる。また、樹脂フィルム11の既に剥離された部分側の端部が第2部分22上に保持されているので、第2部分22の端縁22aを第1部分21の一面21aから離間させることで、樹脂フィルム11の未剥離部分に幅方向(樹脂フィルム11が剥離される方向と直角の方向であり、
図2H中、垂直方向Veおよび平行方向Paに対して垂直な、紙面の奥行方向)にわたって略均一に張力(剥離力)を加えることができる。それにより、無理に樹脂フィルム11を引っ張ってダメージを与えることなく、容易に第1部分21上の樹脂フィルム11を第1部分21から次第に剥離させていくことができる。
【0028】
また、本実施形態では、第1部分21と第2部分22の端縁22aとを垂直方向Veにおいて離間させるのに伴って、第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を、平行方向に自由移動または強制移動させるので、垂直方向Veにおける離間に伴って樹脂フィルム11や電子素子12に加わる力によるストレスをさらに軽減することができる。すなわち、本実施形態の樹脂フィルムの剥離方法によれば、光照射を行うことなく、従って電子素子の特性劣化を招くことなく、しかも、樹脂フィルム11や電子素子12にダメージを与えることなく簡単に、樹脂フィルム11を支持基板2から剥離することができる。高価な光源設備を必要としないので、樹脂フィルム11の製造コストを安くすることができ、かつ、樹脂フィルム11の製造のための初期コストおよび維持コストを格段に安くすることができる。
【0029】
また、本発明の一実施形態のフレキシブル基板を有する電子デバイスの製造方法および有機EL表示装置の製造方法は、本発明の一実施形態の樹脂フィルムの剥離方法を用いて樹脂フィルム(フレキシブル基板)を支持基板から剥離するため、光照射を用いることなく、フレキシブル基板および電子素子や有機EL素子に過度のストレスを加えることもなく樹脂フィルムを剥離することができる。以下、本発明の一実施形態の樹脂フィルムの剥離方法についてさらに詳細に説明する。
【0030】
まず、
図2B〜2Kを参照して本実施形態の樹脂フィルムの剥離方法の一例について説明する。本実施形態の樹脂フィルムの剥離方法では、支持基板2の一面に密着して形成された樹脂フィルム11が支持基板2から剥離される。
図2Bおよび
図2Cの例では、樹脂フィルム11に電子素子12が形成されている。支持基板2は、可撓性の樹脂フィルム11を、樹脂フィルム11や電子素子12の形成工程に支障がない程度に支持し得る剛性を備えた材料であれば、その材料は特に限定されない。たとえば、ガラス板、セラミック基板、金属板および半導体基板などが例示される。特に、本実施形態の樹脂フィルムの剥離方法では、光照射を用いないので、透過性は要求されない。ここで、セラミック基板は、広くは、無機物を板状に焼き固めた焼結体全般を指すが、実用的なものとして、アルミナ(Al
2O
3)やアルミナの一種であるサファイアなどからなる基板が例示される。また半導体基板には、GaNなどの窒化物半導体が含まれる。樹脂フィルム上に有機EL素子を形成する場合は、TFTなどの形成の際に500℃程度の高温プロセスを経るため、耐熱性や熱膨張率の面で支持基板2としてはガラス板やセラミック基板が好ましいが、比較的低温のプロセスで形成され得る電子素子の場合は金属板などを用いることも可能である。
【0031】
樹脂フィルム11は、たとえば、後述のように、支持基板2の一面に液状の樹脂材料を塗布および焼成することにより形成されるが、この樹脂フィルム11と支持基板2との密着強度が重要になる。すなわち、前述の第1部分21と第2部分22とが垂直方向に離間する際に、まず樹脂フィルム11が部分的に第1部分21から剥離する。この第1部分21と第2部分22とを離間させる際の力は、この樹脂フィルム11と支持基板2との密着力に依存する。密着力が大きすぎると、樹脂フィルム11の剥離のために大きな張力が必要となり、容易に剥離できなくなると共に、この力によるストレスで電子素子12が悪影響を受けるおそれがある。また、密着力が小さ過ぎると、電子素子12の形成などの製造工程中に樹脂フィルム11が支持基板2から剥離する危険性がある。
【0032】
本発明者らは、この製造工程における耐性および剥離容易性について、密着力を種々変化させながら、それぞれの密着力で100個ずつ調べた。その結果が表1に示されている。表1で、◎が非常に良好(歩留まり100%)、○が良好(歩留まり95%以上)、×(歩留まり90%未満)であることを示す。なお、製造工程における耐性の調査では、作業中に樹脂フィルム11の端縁に剥れが観測されたものを不良と判定した。また、剥離容易性の調査では、容易に剥離できなくなると電子素子に過度のストレスが加わるとの観点から、有機EL表示装置用のTFT基板の特性の良否に基づいて判定した。表1の結果から、この密着力は、JIS Z 0237の方法による90°ピール強度で、0.1N/10mm以上であって、1.0N/10mm以下、さらに好ましくは、0.15N/10mm以上であって、0.4N/10mm以下になるように調整されることが好ましいことがわかる。樹脂フィルム11の密着力の調整方法については後述する。しかし、本実施形態は、樹脂フィルム11の密着力をこれらの値に限定するものではない。また、本実施形態の樹脂フィルムの剥離方法は、別途にフィルム状に形成されて支持基板2上に貼り付けられている樹脂フィルムにも適用できる。
【0034】
樹脂フィルム11の材料としては、前述のように、樹脂フィルム11の上に形成される電子素子12がTFTなどを含む場合には、例えば500℃程度の温度に耐え得る材料であることが必要となる。また、熱膨張率ができるだけ支持基板2と近いことが好ましい。その観点からポリイミドが好ましい。ポリイミドは、焼成時の条件によって熱膨張率を調整することができるし、支持基板2との密着力を調整することができるので、支持基板2からの剥離を容易にすることができる。樹脂フィルム11の材料には、ポリイミド以外にも、例えば、透明ポリイミド、PEN、PET、COP、COC、PCなどが用いられ得る。
【0035】
電子素子12は、対象のフレキシブル基板を有する電子デバイスに応じて、適宜形成されている。電子素子12の形成方法については、有機EL素子を形成する例を中心に後述する。
【0036】
本実施形態の樹脂フィルムの剥離方法では、まず、支持基板2を第1部分21と第2部分22とに分離する準備を行う。
図2Cに示されるように、矩形の外周形状を有する支持基板2は、電子素子12が形成されていない外周部分において、外周の一辺に沿う境界B1で、電子素子12を含む主要な領域を占める第1部分21と、第1部分21以外の領域からなる第2部分22とに分離される。従って、本実施形態では、第2部分22上には電子素子12が形成されていないが、第1部分21と第2部分22との境界は
図2Cに示される位置に限定されず、後述のように、第1部分21と第2部分22とが同等の大きさであってもよく、第2部分22上に電子素子12が形成されていてもよい。
【0037】
一体に形成されたガラス板が支持基板2に用いられる場合には、第1部分21と第2部分22とに分離する準備において、支持基板(ガラス板)2を割断する。たとえば、まず、
図2Dに示されるように、第1部分21と第2部分22との境界部分に支持基板2の裏面(樹脂フィルム11が形成された面と反対面)からスクライブ線23を入れる。たとえば、超硬性の素材やダイヤモンドを含む材料からなる刃先を有するガラスカッターで、
図2Eに示されるように、溝状のスクライブ線23を入れる。ガラス板2の割断が容易になるように、高浸透性のガラスカッターなどを用いて、ガラス板2の厚さ方向になるべく深くスクライブ線23を入れるのが好ましい。たとえば、0.5mm程度の厚さのガラス板であれば、ガラス板の厚さの50%以上であって、90%以下の深さまでスクライブ線23を入れるのが好ましい。しかし、ガラスカッターなどの刃先が樹脂フィルム11内まで入り込むおそれがなければ、ガラス板2を貫通するようにスクライブ線23を入れてもよい(
図3A参照)。逆に、樹脂フィルム11に悪影響がある場合は、ガラス板の割断が可能でさえあれば、厚さ方向への浸透性がばらついても樹脂フィルム11に達しないように、ガラス板2の厚さの50%に満たない深さに入れてもよい(
図3B参照)。
【0038】
つぎに、スクライブ線23に沿ってガラス板2を割断する。たとえば、
図2Fに示されるように、第2部分22上の樹脂フィルム11が第2部分22の一面上に保持されるように把持具3で第2部分22と樹脂フィルム11とを挟持し、
図2Gに示されるように、溝状のスクライブ線23の開口が広がる方向に、第2部分22を第1部分21に対して傾ける。たとえば、第1部分21を固定した状態で把持具3をスクライブ線23の開口が広がる方向に動かしてもよく、第1部分21と第2部分22との境界部分に樹脂フィルム11側からスクライブ線23に向って押し込む方向の力を加えてもよい。それにより、支持基板2が第1部分21と第2部分22とに割断され、支持基板2を、第1部分21と第2部分22とに分離する準備が完了する。なお、第1部分21と第2部分22とに分離する準備は、樹脂フィルム11の形成後、電子素子12の形成前に行われてもよい。支持基板2として、セラミック基板や半導体基板などの比較的硬質で低靱性の材料からなる基板が用いられる場合も、
図2Dおよび
図2Eに例示される方法で分離の準備をすることができる。
【0039】
把持具3は、好ましくは、支持基板2の第2部分22と樹脂フィルム11の幅方向の全範囲にわたって、緩衝部32を介して挟み付ける挟持部31を有し、挟持部31が図示しない上下動させ得る駆動部に固定されている。この上下動は、垂直方向に沿った動きでもよいし、斜め方向の動きでもよい。すなわち、垂直方向の成分を有する動きであればよい。把持具3は、また、支軸33で挟持部31を回転させ得るように形成されている。その結果、挟持部31で挟持された第2部分22が支軸33の回りに回転し得る。
【0040】
つぎに、
図2H〜2Kに示されるように、第1部分21の一面21aから樹脂フィルム11を徐々に剥離する。本実施形態では、まず、
図2Hに示されるように、第2部分22の一面に樹脂フィルム11が密着した状態で、第1部分21と第2部分22の端縁22aとを相対移動させ、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとを一定距離だけ離間させる。
図2Hの例では、第1部分21と第2部分22の一方または両方を垂直方向Veに沿って互いに離間する方向に移動させている。それにより第2部分22との境界付近の第1部分21上の樹脂フィルム11に部分的な剥離11aが生じている。また、第2部分22は第1部分21に対してθ
0だけ傾いている。樹脂フィルム11の既に剥離した部分は第2部分22から第1部分21まで曲がったり撓んだりせずに緊張しているため、第2部分22と同様に第1部分21の一面21aとの間にθ
0の角度をなしている。
【0041】
第1部分21および第2部分22は、平行方向Paにも平面視で重なる方向に相対移動している。好ましくは、樹脂フィルム11の既に剥離した部分に伸びや撓みが生じないように、第1部分21および/または第2部分22を自由移動または強制移動させる。たとえば、樹脂フィルム11の既に剥離した部分の長さL1と、第1部分21の樹脂フィルム11が剥離して露出する部分の長さL2とが等しくなるように、第1部分21および/または第2部分22は、垂直方向Veへの相対移動の距離に応じた距離Dpだけ平行方向Paに沿って相対移動する。そのように自由移動または強制移動させることで、第1部分21および第2部分22の垂直方向Veにおける相対移動による樹脂フィルム11へのストレスが少なくなる。
【0042】
続いて、
図2I〜2Kに示されるように、第2部分22の一面に樹脂フィルム11が密着した状態で、第1部分21と第2部分22の端縁22aとが垂直方向Veにおいてさらに離間するように、第1部分21と第2部分22の端縁22aとを徐々に相対移動させる。
図2I〜2Kの例では、この相対移動を、把持具3の支軸33を回転させることにより徐々に行っている。支軸33は、第2部分22の端縁22aと平行(幅方向と平行)で、かつ、端縁22aに関して第1部分21と反対側に設けられている。支軸33を回転させることにより第2部分22の端縁22aを支軸33の周りに回転させることができ、特に各図に符号Cで示される方向に回すことにより、第2部分22の端縁22aを垂直方向Veにおいて第1部分21の一面21aから徐々に離間させることができる。それにより、第1部分21上の樹脂フィルム11が第2部分22側に引っ張られ、第1部分21の一面21aから次第に剥離し、最終的に、
図2Kに示されるように、第1部分21から完全に剥離する。
【0043】
また、第2部分22の端縁22aが回転するのに伴って、第1部分21の第1面21aに対する第2部分22の傾斜角が小さくなる。
図2I〜2Kの例では、樹脂フィルム11の第1部分21から既に剥離した部分は、第1部分21の一面21aと第2部分22との間で曲がりも撓みもせずに緊張している。そのため、樹脂フィルム11の既に剥離した部分と第1部分21の一面21aとのなす角も、
図2Hに示されるθ
0から、第2部分22の端縁22aの回転移動に伴って、
図2I〜2Kにそれぞれ示されるθ
1、θ
2、θ
3の順に徐々に小さくなっている。
【0044】
図2I〜2Kに示される工程においても、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとを垂直方向Veにおいて離間させる相対移動と共に、第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を、平行方向Paに自由移動または強制移動させる。すなわち、第2部分22の端縁22aと、樹脂フィルム11の第1部分21からの未剥離部分の端部11b(以下、単に「未剥離部分の端部11b」という)とが平面視で接近または離間する方向に自由移動させるか、または強制移動させる。この作用について
図2Iおよび
図2Jを参照して説明する。
【0045】
第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとが垂直方向Veにおいて離間すると、未剥離部分の端部11bに、樹脂フィルム11の既に剥離された部分に沿った方向に張力T(
図2J参照)が作用する。張力Tは、樹脂フィルム11の既に剥離した部分と第1部分21の一面21aとのなす角θ
2に応じて、平行方向Paに沿った平行成分Tpと垂直方向Veに沿った垂直成分Tvとに分解され得る。垂直成分Tvが主に樹脂フィルム11の剥離に寄与すると考えられる。従って、第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を、第2部分22の端縁22aと未剥離部分の端部11bとが平面視で接近する方向に移動させることにより、張力Tを弱めて樹脂フィルム11へのストレスを軽減しながら、垂直成分Tvを適度に維持させて樹脂フィルム11を剥離することができる。
【0046】
また、樹脂フィルム11が比較的硬い場合、第2部分22が回転することにより未剥離部分11bに第2部分22の回転方向に沿った方向に力F(
図2I参照)が作用すると考えられる。力Fは、樹脂フィルム11の既に剥離した部分の長さがまだ短く、第1部分21の一面21aとのなす角θ
1も大きい、剥離開始後間もないときほど大きいと考えられる。力Fも、平行成分Fpと垂直成分Fvとに分解され得る。従って、力Fが比較的大きいときは、第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を、第2部分22の端縁22aと未剥離部分の端部11bとが平面視で離間する方向に移動させることにより、樹脂フィルム11へのストレスを軽減できることがあると考えられる。しかし、樹脂フィルム11や電子素子12に対して過度のストレスとならない程度であれば、
図2Jの張力Tや
図2Iの力Fを強める方向に第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を移動させることにより、樹脂フィルム11の剥離を促進させてもよい。
【0047】
なお、樹脂フィルム11を第1部分21から完全に剥離させたあとは、樹脂フィルム11の第1部分21から剥離された部分を把持して、把持具3による第2部分22の挟持を解除するだけで、樹脂フィルム11を第2部分22の端縁22a側から容易に剥離することができる。第1部分21からの剥離工程を通じて、第2部分22と樹脂フィルム11との間に既に剥離が生じているからである。また、樹脂フィルム11の第2部分22上の部分が単なる余白部分である場合には、第2部分22の端縁22a付近で樹脂フィルム11を切断してもよい。
【0048】
本実施形態では、第2部分22を回転させることにより、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとを垂直方向Veにおいて徐々に離間させている。そのため、第1部分21および/または第2部分22を垂直方向Veに沿って移動させる距離は短くて済み、また、それに伴って、平行方向Paに沿った移動距離も少なくて済む。従って、樹脂フィルムの剥離装置を製作する場合、支持基板2のサイズに見合った比較的小さな寸法の装置とすることができる。
【0049】
つぎに、本実施形態の樹脂フィルムの剥離方法の他の例について、
図4A〜4Cを参照して説明する。
図4A〜4Cに示される例は、第1部分21と第2部分22の端縁22aとの垂直方向Veにおける離間を、端縁22aを回転させるのではなく、端縁22aと第1部分21の一面21aとを垂直方向Veに相対移動させることにより行う点で、前述の
図2A〜2Kに示される例と異なっている。以下の説明では、
図2A〜2Kと同様の点についての説明は省略されている。
【0050】
図4Aに示されるように、まず、
図2A〜2Hまでの工程と同様の工程を行うことにより、第1部分21上の樹脂フィルム11に部分的な剥離11aを生じさせる。第2部分22は第1部分21に対してθだけ傾いている。樹脂フィルム11は第2部分22から第1部分21まで曲がったり撓んだりせずに緊張しているため、樹脂フィルム11の第1部分21から既に剥離した部分は第1部分21の一面21aとの間に角度θをなしている。
【0051】
続いて、
図4Bに示されるように、さらに第1部分21と第2部分22とを垂直方向Veに沿って互いに離間する方向に徐々に相対移動させる。それにより、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとを垂直方向Veにおいて徐々に離間させ、
図4Cに示されるように、最終的に樹脂フィルム11を第1部分21から完全に剥離する。なお、
図4Aの工程は、
図2Iと同様の状態から、樹脂フィルム11が完全に第1部分21から剥離するまで第1部分21と第2部分22とを相対移動させる一連の操作の一部であってよい。
【0052】
図4A〜4Cに示されるように、本例では、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとを垂直方向Veにおいて離間させる相対移動と共に、第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を、平行方向Paに沿って、第1部分21と第2部分22とが平面視で重なる方向に自由移動または強制移動させている。すなわち、第2部分22の端縁22aと、樹脂フィルム11の未剥離部分の端部11bとが平面視で接近する方向に移動させている。それにより、
図2Jを参照した前述の説明と同様に、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとの離間に伴って作用する張力によるストレスを軽減することができる。
【0053】
図4A〜4Bの例では、樹脂フィルム11の第1部分21から既に剥離した部分は、第1部分21との密着部分と第2部分22の端縁22aとの間で撓んだり曲がったりせずに緊張し、第1部分21の一面21aとのなす角度はθで略一定に保たれている。角度θは、樹脂フィルム11の密着力や引張強度などに応じて張力T(
図4B参照)の垂直成分Tvや平行成分Tpが適度な大きさになるように適宜選択される。樹脂フィルム11の密着力が、前述の値に調整されると、角度θは、10°以上であって、45°以下程度、好ましくは15°以上であって、30°以下程度になる。角度θが一定に保たれるように、第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を、平行方向Paに沿って移動させるのが好ましい。具体的には、垂直方向Veへの離間距離dごとに、平行方向Paにd×tan(θ/2)だけ、第1部分21および第2部分22の少なくとも一方を移動させるのが好ましい。しかし、
図4A〜4Cの例のように、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとを垂直方向Veに相対移動させる場合でも、樹脂フィルム11の剥離部分と第1部分21の一面21aとのなす角度を変化させてもよい。
【0054】
図4A〜4Cに示される本実施形態の他の例では、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとの垂直方向における離間を、第2部分22を回転させる前述の本実施形態の一例と異なり、
図2Hに示される工程と同様の動作である第1部分21と第2部分22との垂直方向への相対移動により行う。このため、樹脂フィルム11の剥離装置を製作する場合にシンプルな構造で装置を構成することができる。
【0055】
前述の本実施形態の一例および他の例では、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとの垂直方向における離間を第2部分22の端縁22aの回転移動または垂直方向への直線移動により行っているが、本実施形態では、垂直方向の成分を持つ移動であれば、これらに限定されない。たとえば、斜め方向への移動であってもよい。また、前述のように、第1部分21側が垂直方向に移動してもよく、たとえば、第1部分21に対して第2部分22が上方に位置している場合に、第1部分21を自重により降下させてもよい。
【0056】
本実施形態では、樹脂フィルム11の第2部分22側の部分が、第1部分21と第2部分22との境界線に沿う方向の幅W(
図2C参照)全体にわたって第2部分22に保持されている。そのため、
図2Hや
図4Aに示される工程において、樹脂フィルム11の幅W全体にわたって略均等に、樹脂フィルム11を剥離する力を作用させることができ、幅W全体にわたって部分的な剥離11aを生じさせることができる。さらに、そのように樹脂フィルム11が第2部分22に保持され、幅W全体にわたる部分的な剥離11aが生じることで、
図2I〜2Kや
図4B〜4Cに示される工程においても、樹脂フィルム11の幅W全体にわたって略均等に剥離方向の力を作用させることができる。部分的に保持されていない部分がある場合、その部分は一度剥離しても樹脂フィルム11が持つ形態の復元性により第1部分21上に再度付着しようとして剥離の妨げとなるが、そのようなこともない。また、樹脂フィルム11の幅W方向の一部にストレスが集中することも防止し得る。従って、樹脂フィルム11を少ないストレスで容易に剥離することができる。この観点から、
図2H〜2Kおよび
図4A〜4Cに示される工程では、第2部分22の端縁22aと、樹脂フィルム11の未剥離部分の端部11bとを略平行な状態に維持しながら、第1部分21および/または第2部分22を移動させることが好ましい。
【0057】
前述の例では、樹脂フィルム11は支持基板2の一面全面に形成されているが、これに限定されず、支持基板2の外周部分に樹脂フィルム11が形成されていない余白部分があってもよい。そうすることで、樹脂フィルム11の形成後、その剥離までの間にハンドリングなどにより意図せずに樹脂フィルム11の端部が捲り上げられることが防止される。そのような場合、樹脂フィルム11を剥離するときに、従来技術によって端部から機械的に剥離するのは益々困難となるが、本実施形態では、支持基板2の第1部分21と第2部分22との境界部分を起点として剥離するため、容易に剥離することができる。
【0058】
また、前述の例では、1つの領域に電子素子12が形成されているが、
図5に示されるように、樹脂フィルム11上の複数の領域に電子素子12が形成されていてもよい。複数の領域に電子素子12が形成される場合、第1部分21と第2部分22を、電子素子12が形成されている領域間の境界B2、B3で分離してもよい。その場合、樹脂フィルム11の剥離後、第1部分21および第2部分22の両方が、再度支持基板として利用し得る大きさを有し得る。そのため、第1部分21および第2部分22を、それらに分離する前の支持基板2の状態に再生する工程を経ることなくそのまま再利用できることがある。特に、支持基板2の中央で第1部分21と第2部分22に分離する場合は、有機EL表示装置などの生産ラインにおいて、支持基板2の半分のサイズの支持基板が流動するラインで第1部分21および第2部分22の両方をそのまま再利用できることがある。本実施形態の樹脂フィルムの照射方法では、レーザー光を照射しないことから再利用の容易な材料を支持基板2に用い易いので、特に有益である。
【0059】
前述の説明では、支持基板2がガラス板である場合を例に、スクライブ線23を入れて第1部分21と第2部分22とに分離する準備工程について説明したが、支持基板2は、個別に形成された第1部分21と第2部分22とが、何らかの脱着機構、たとえば、留め金具やマグネットなどにより着脱自在に接続された構成であってもよい。
図6Aには、第1部分21と第2部分22とがマグネット24により接続されている例が示されている(
図6A、6B、7Aおよび7Bでは、把持具は省略されている)。本実施形態では、光照射を用いないので、支持基板2に光を透過しない金属なども用い得るため、このような構成にすることもできる。この場合も、適度な磁性のマグネットを選択することで、
図2Gを参照して説明された方法と同様に、第1部分21と第2部分22とを離脱できる状態にする、すなわち、分離の準備をすることができる(
図6B参照)。留め金具などを用いる場合は、留め金具を外すことが分離の準備をすることとなる。着脱自在に接合された支持基板2の場合、第1部分21および第2部分22をそのまま再利用できることがある。
【0060】
また、
図2Hを参照して説明した例では、第2部分22を第1部分21に対して傾いた状態で第1部分21と相対移動させていたが、
図7Bに示されるように、第1部分21と第2部分22とを平行な状態で垂直方向Veに沿って相対移動させてもよい。樹脂フィルムの剥離装置を準備する場合に、回転動作させる部分が少なくなり、シンプルな構造で実現できる。樹脂フィルム11が形成されている第1部分21と第2部分22とを平行な状態のまま垂直方向Veに相対移動させるには、第1部分21と第2部分22とに分離の準備の工程の終了時点で、
図7Aに示されるように、両者の間に支持基板2の厚さ程度の隙間が必要になる。たとえば、前述の
図6Aのように、マグネット24を介して第1部分21と第2部分22とを接続して支持基板2を構成し、分離の準備においてマグネット24を樹脂フィルム11側と反対側に単に抜き去ることでこのような隙間を生じさせることができる。
【0061】
つぎに、本発明の一実施形態のフレキシブル基板を有する電子デバイスの製造方法および有機EL表示装置の製造方法の剥離工程以外の工程について、さらに説明する。
【0062】
まず、
図2Aに示されるように、第1部分21および第2部分22を有する支持基板2の一面に、フレキシブル基板とする可撓性の樹脂フィルム11を形成する。たとえば、樹脂フィルム11は、支持基板2に樹脂材料を塗布し、焼成することにより形成される。この樹脂材料の塗布は、膜厚制御が可能な方法であればどのようなものでもよいが、たとえば
図8に示されるように、スリットコートの方法を用いて塗布され得る。すなわち、スロットダイ6に、たとえば、ポリイミドの前駆体であるワニス(樹脂材料)11cを供給し、スロットダイ6から吐出することによりワニス11cが塗布される。ワニス11cの塗布は、スリットコート以外の方法でもよく、たとえばスピンコート法も、使用効率は低下するが、支持基板2のサイズが小さい場合は、密着性や、樹脂フィルム11の平坦性の面で有効である。
【0063】
続いて、塗布されたワニス11cなどの樹脂材料を、加熱炉内での全体的な加熱や、支持基板2の裏面側からの加熱により焼成する。たとえば、ポリイミドを用いる場合、400℃以上であって、500℃以下程度の温度で焼成する。前述のように、本実施形態で重要となる樹脂フィルム11の密着力の調整方法の1つとして、この焼成(プリベークおよび本焼成)条件による調整が挙げられる。本焼成時の温度を高くすると、密着力が大きくなり、また、本焼成時の時間を短くすると、密着力が小さくなる。また、焼成温度は、熱膨張率にも影響し、たとえば、500℃近くまで温度を上昇させて10分以上であって、60分以下ぐらい放置すると、熱膨張率は小さくなり、450℃程度で焼成した後に、さらに30分以上その温度を維持することによっても小さくなり得る。逆に、昇温ステップを大きくし、その温度の維持時間を長くすると、熱膨張率を大きくすることができる。これらの観点から、樹脂フィルム11の焼成は、5〜120分ごとに10℃以上であって、200℃以下の温度で段階的に上昇させながら、焼成温度まで上昇させることが好ましい。この範囲は、目的とする樹脂フィルムの特性、樹脂材料などによりさらに特定され得る。
【0064】
樹脂フィルム11の密着力の調整方法の他の手段として、ワニス11cを塗布する前に、支持基板2の塗布面自体の状態を変化させる方法、および、シランカップリング剤などのいわゆる界面活性剤を塗布して密着性を変更する方法が例示される。具体的には、塗布面自体の状態を変化させる方法としては、ワニス11cの塗布前の支持基板2の洗浄条件および種類を変更することにより実現できる。その中でも、密着力を定量的、かつ再現性良く制御する方法としては、支持基板2の洗浄の最後に、塗布面に対して波長254nmのUV照射をパワーおよび時間を制御して行うことが好ましい。その際の、照射エネルギーとしては、1000mJ/cm
2以上であって、5000mJ/cm
2以下が適切である。また、シランカップリング剤などの界面活性剤を用いれば、一般的に密着力を大きくする方向に働き、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系コート剤等を表面に塗布することにより密着力を小さくすることができる。なお、本実施形態において意図されるものではないが、光照射を併用して密着力が調整されてもよい。樹脂フィルム11の密着力は、これら以外の方法で調整されてもよいが、好ましくは、前述のように、JIS Z 0237の方法による90°ピール強度で、0.1N/10mm以上であって、1.0N/10mm以下、さらに好ましくは、0.15N/10mm以上であって、0.4N/10mm以下になるように調整される
【0065】
つぎに、
図2Bに示されるように、電子素子12が形成される。この電子素子12は、
図2Bでは簡略化して描かれているが、例えば電子デバイスが有機EL表示装置である場合には、TFTや、各サブ画素でそれぞれRGBの発光をするように異なる有機層が積層された積層膜が形成される。また、各画素を駆動するための配線などが形成される。また、電子デバイスがタッチパネルであれば、2つの電極間でコンデンサが形成されるように対向した電極およびその配線層が形成される。さらに、液晶ディスプレイであれば、2枚のガラス基板の一方にTFTと共に電極が形成され、他方に電極およびカラーフィルタが形成される。そして、それぞれの対向面に配向膜を積層したうえで一定の間隔で対向して配置され、その間に液晶材料が注入され、さらに両面に偏光板が積層されることなどにより形成される。本実施形態の製造方法による電子デバイスは、これらの他に、太陽電池などの、フレキシブル基板を有する種々の電子デバイスであってよい。以下に、電子デバイスが電子素子12として有機EL素子を有する有機EL表示装置の場合の電子素子12の形成工程について説明する。なお、本実施形態の製造方法により形成される有機EL素子自体は従来の有機EL素子と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0066】
本実施形態の製造方法で製造される有機EL表示装置の一部の断面図が
図9に示されている。樹脂フィルム11(
図2A参照)からなるフレキシブル基板上に、サブ画素ごとに図示しないTFTなどのスイッチ素子およびその配線が形成され、そのスイッチ素子に接続された第1電極(例えば陽極)52が、平坦化膜51上に、Agなどの金属膜と、ITO膜との組み合わせにより形成されている。サブ画素間には、SiO
2などからなる絶縁バンク53が形成されている。この絶縁バンク53で囲まれた領域に、図示しない蒸着マスクを用いて有機層55が蒸着される。この蒸着工程は、必要に応じて、サブ画素ごとに、または一斉に行われる。
【0067】
図9では、有機層55が1層で示されているが、実際には、有機層55は、異なる材料からなる複数層の積層膜で形成される。たとえば、正孔注入層および正孔輸送層がアミン系材料などにより形成され、その上にRGBに応じた発光層が、有機蛍光材料をドーピングされたAlq
3やDSA系の有機材料により形成される。さらに、発光層の上には電子輸送層がAlq
3などにより形成され、LiFやLiqなどにより電子注入層が適宜形成される。
【0068】
図示しない蒸着マスクを除去したうえで、第2電極(例えば陰極)56が、たとえばMgおよびAgを全面に共蒸着することにより形成される。Alなどが第2電極56に用いられてもよい。第2電極56の表面には、例えばSi
3N
4などからなる保護膜57が形成される。この全体は、図示しない樹脂フィルムなどからなるシール層により封止され、有機層55や第2電極56が水分や酸素などを吸収しないように構成される。また、有機層をできるだけ共通化し、その表面側にカラーフィルタを設ける構造にすることもできる。以上により、樹脂フィルム11上に有機EL素子(電子素子12)を形成することができる。
【0069】
そして、前述の一実施形態の樹脂フィルムの剥離方法によって樹脂フィルムを剥離することにより、フレキシブル基板を有する電子装置、特に有機EL表示装置を得ることができる。本発明の樹脂フィルムの剥離方法、フレキシブル基板を有する電子デバイスの製造方法および有機EL表示装置の製造方法は、各図面を参照して説明された工程以外の工程が追加されてもよく、各工程に支障のない範囲でその順序が入れ替えられてもよい。
【0070】
つぎに、本発明の一実施形態の樹脂フィルムの剥離装置について、図面を参照して説明する。
図10に概要が示されるように、一実施形態の樹脂フィルムの剥離装置70は、一面に樹脂フィルム11が密着した第1部分21と第2部分22とを有する支持基板2の第2部分22を幅方向の全体に亘って挟み付ける第2部分の把持具73と、第1部分21を保持し、第1部分21の一面21aと垂直方向への移動は制限され、第1部分21の一面21aと平行方向で、かつ、第1部分21と第2部分22とを結ぶ方向には移動し得る第1部分の保持具74とを有し、さらに、第2部分の把持具73と、第1部分の保持具74とを第2部分22の第1部分21側の端縁22aと第1部分21との平行性を維持しながら垂直方向において離間させる第1駆動部75を備えている。第2部分の把持具73は、前述の一実施形態の樹脂フィルムの剥離方法の一例で説明された把持具3(
図2F参照)と同様に構成され、支持基板2の第2部分22に樹脂フィルム11を密着させた状態で、第1駆動部75の動作により第2部分22を移動させる。第1部分の保持具74は、たとえば真空吸着により第1部分21を保持し、第1部分21の垂直方向への移動を制限する。第1駆動部75は、所謂ボールネジの構造を有し、モーターなどからなる駆動源751が駆動することにより第1駆動軸752が回転し、それにより第2部分の把持具73が垂直方向に移動する。それにより、第1部分21の一面21aと第2部分22の端縁22aとを垂直方向に相対移動させ、両者を垂直方向において離間させる。
【0071】
フィルムの剥離装置70には、さらに、第2部分の把持具73が、第2部分22の端縁22aと平行で、かつ、端縁22aに関して第1部分21と反対側に設けられる支軸731の周りに第2部分22を回転させる回転駆動部76が設けられている。回転駆動部76はモーター761などの駆動により支軸731を、少なくとも
図10中に符号Cで示される方向に回転させる。それにより第2部分22の端縁22aを第1部分21の一面21aと離間する方向に回転移動させ、端縁22aと第1部分21の一面21aとを垂直方向において離間させる。
【0072】
図10の例では、第1部分の保持具74が、第2部分22の第1部分21の一面21aからの離間距離の増大に応じて、その増大分に対応する寸法だけ第1部分21を平行方向に移動させる第2駆動部77を有している。第2駆動部77は、第1駆動部75と同様に、モーターなどからなる駆動源771が駆動することにより第2駆動軸772を回転させ、第1部分の保持具74を平行方向に移動させる。それにより第1部分21の一面21aと第2部分22の端面22aとの垂直方向における離間に応じて生じ得る樹脂フィルム11へのストレスを軽減させる。
【0073】
図10は、本発明の一実施形態の樹脂フィルムの剥離装置70の構成を概念的に示しているに過ぎず、本発明の樹脂フィルムの剥離装置の具体的な構造は、
図10に示される構造に全く限定されない。