(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の幅を有するシート状部材を、ベルトコンベアを用いて前記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させ、前記シート状部材を裁断して平面視略矩形形状のマットとするシート状部材の裁断方法であって、
前記ベルトコンベアの上流に、前記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された切り込み部材を用いて、前記シート状部材に、前記シート状部材の移動方向に平行な直線状の切り込み部を複数本形成する切り込み工程と、
前記切り込み工程の後に、前記切り込み部材よりも下流に配置される切断部材を用いて、前記シート状部材の前記幅方向における一方の端部に最も近い前記切り込み部から他方の端部に最も近い前記切り込み部までを、前記シート状部材の移動方向に略垂直な方向に切断する切断工程と、
前記切断工程の後に、前記切り込み部を境界として、前記シート状部材を分離して、平面視略矩形形状のマットとする分離工程とを備える
ことを特徴とするシート状部材の裁断方法。
前記切り込み工程では、前記シート状部材を厚さ方向に切断する工程と、前記シート状部材を厚さ方向に切断しない又は一定の深さを有する切り込みを入れる工程とを、前記シート状部材の移動に合わせて交互に繰り返すことにより、前記シート状部材にミシン目状切り込み部を形成する請求項1に記載のシート状部材の裁断方法。
前記切り込み工程では、前記シート状部材の移動に合わせて、前記シート状部材の厚さ方向に一定の深さを有する連続した切り込みを入れる工程により、前記シート状部材に連続切り込み部を形成する請求項1に記載のシート状部材の裁断方法。
前記ベルトコンベアが真空コンベアであって、前記切り込み工程において、前記シート状部材における前記切り込み部材が接近する側の面と反対側の面を前記真空コンベアで吸着することで、前記シート状部材を前記ベルトコンベア上に固定する請求項1〜3のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記複数の切り込み部材を、前記シート状部材の幅方向に沿って移動させることで、前記切り込み部同士の距離を変更可能である請求項1〜6のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記ベルトコンベアが真空コンベアであって、前記切断工程において、前記シート状部材における前記切断部材が接近する側と反対側の面を前記真空コンベアで吸着することで、前記シート状部材を前記ベルトコンベア上に固定する請求項1〜7のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記切断部材が、板刃、回転刃、ギロチン刃、レーザー切断装置及びウォータージェット切断装置からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
前記分離工程では、前記ベルトコンベア上を移動する前記シート状部材に分離部材を接触させることにより前記シート状部材を分離する請求項10に記載のシート状部材の裁断方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明のシート状部材の裁断方法における、切り込み工程と切断工程とを模式的に示した俯瞰図である。
【
図2】
図2は、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する分離工程の一例を模式的に示した俯瞰図である。
【
図3】
図3(a)は、切り込み部が形成されたシート状部材の一例を模式的に示した上面図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるB−B線断面図である。
【
図4】
図4(a)は、切り込み部が形成されたシート状部材の別の一例を模式的に示した上面図であり、
図4(b)は、
図4(a)におけるC−C線断面図である。
【
図5】
図5(a)は、切り込み部が形成されたシート状部材のさらに別の一例を模式的に示した上面図であり、
図5(b)は、
図5(a)におけるD−D線断面図である。
【
図6】
図6(a)は、切り込み工程において用いられる切り込み部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)におけるE−E線断面図であり、
図6(c)は、切り込み工程において用いられる切り込み部材の別の一例を模式的に示した平面図であり、
図6(d)は、切り込み工程において用いられる切り込み部材のさらに別の一例を模式的に示した斜視図であり、
図6(e)は
図6(d)におけるF−F線断面図である。
【
図7】
図7(a)は、切断工程において用いられる切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)におけるG−G線断面図である。
【
図8】
図8は、切断工程において用いられる切断部材の別の一例を模式的に示した断面図である。
【
図9】
図9は、安全ケースを用いた切断工程の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図10】
図10(a)は、
図9において、切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したH−H線断面図であり、
図10(b)は、
図9において、切断部材がシート状部材を切断し、シート状部材から離れる瞬間の一例を模式的に示したH−H線断面図であり、
図10(c)は、
図9において、切断部材がシート状部材を切断し、安全ケース内に収納される瞬間の一例を模式的に示したH−H線断面図である。
【
図11】
図11は、本発明のシート状部材の裁断方法により得られるマットの一例を模式的に示した斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示した斜視図である。
【0037】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のシート状部材の裁断方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0038】
以下、本発明のシート状部材の裁断方法について説明する。
本発明のシート状部材の裁断方法は、所定の幅を有するシート状部材を、ベルトコンベアを用いて上記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させ、上記シート状部材を裁断して平面視略矩形形状のマットとするシート状部材の裁断方法であって、上記ベルトコンベアの上流に、上記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された切り込み部材を用いて、上記シート状部材に、上記シート状部材の移動方向に平行な直線状の切り込み部を複数本形成する切り込み工程と、上記切り込み工程の後に、上記切り込み部材よりも下流に配置される切断部材を用いて、上記シート状部材の上記幅方向における一方の端部に最も近い上記切り込み部から他方の端部に最も近い上記切り込み部までを、上記シート状部材の移動方向に略垂直な方向に切断する切断工程と、上記切断工程の後に、上記切り込み部を境界として、上記シート状部材を分離して、平面視略矩形形状のマットとする分離工程とを備えることを特徴とする。
【0039】
図1は、本発明のシート状部材の裁断方法における、切り込み工程と切断工程とを模式的に示した俯瞰図である。
図1に示すように、本発明のシート状部材の裁断方法は、所定の幅(
図1中、両矢印Wで示される長さ)を有するシート状部材100を、ベルトコンベア1を用いてシート状部材100の幅方向に垂直な方向(
図1中、矢印Aで示される方向)に移動させる。そして、複数の切り込み部材10を用いてシート状部材100に切り込み部110を形成したあと、切り込み部材10よりも下流に配置される切断部材20を用いてシート状部材100の移動方向に略垂直な方向にシート状部材100を切断する。なお、
図1には、切断工程において切断された箇所を切断部120として記載している。
【0040】
切り込み部110を形成する切り込み工程では、ベルトコンベア1の上流に、シート状部材100の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された切り込み部材10a、10b及び10cを用いて、シート状部材100に、シート状部材100の移動方向に平行な直線状の切り込み部110を複数本(110a、110b、110c)形成する。切り込み工程では、シート状部材100が完全に切断されることがないため、シート状部材100がばらけることがない。そのため、後の切断工程において正確な寸法で切断することができる。また、切り込み工程ではシート状部材を圧縮する工程を含まないため、圧縮に伴いシート状部材の構造が破壊されることがない。
【0041】
切り込み工程において用いられる切り込み部材10は、シート状部材100の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置されているが、これらの切り込み部材同士のシート状部材100の幅方向における間隔(
図1中、両矢印W
2及び両矢印W
3で示される長さ)は、調整可能であることが望ましい。切り込み部材同士のシート状部材100の幅方向における間隔を調整することで、切り込み部110が形成される位置を変更することができ、ひいては、裁断されるマットの形状を調整することができる。
【0042】
切り込み工程を終えたシート状部材100は、続いて、切断工程によってシート状部材100の移動方向に略垂直な方向に切断される。切断工程では、切り込み部材10よりもベルトコンベア1の下流に配置された切断部材20を用いて、シート状部材100の幅方向における一方の端部に最も近い切り込み部110aから他方の端部に最も近い切り込み部110cまでを、シート状部材100の移動方向に略垂直な方向に切断する。この切断工程によって、シート状部材100には、シート状部材100の移動方向に略垂直な方向にシート状部材100の一部を切断する切断部120が形成されることとなる。切断工程では、シート状部材100の幅方向における一方の端部105から、この端部に最も近い切り込み部110aまでと、シート状部材100の幅方向における他方の端部106から、この端部に最も近い切り込み部110cまでが、切断されていない。そのため、切断工程を終えたシート状部材100は、シート状部材100の幅方向に完全に切断されておらず、ベルトコンベア1上を移動するにあたって、ずれることがなく、任意の場所で分離工程を行うことが容易となる。
【0043】
図2は、本発明のシート状部材の裁断方法を構成する分離工程の一例を模式的に示した俯瞰図である。
図2に示すように、切断工程を終えたシート状部材100は、分離部材30を用いることで切り込み部110を境界として分離され、平面視略矩形形状のマット200となる。
また、分離工程では、切り込み部110を手で引き裂くことによりシート状部材100を分離し、平面視略矩形形状のマット200としてもよい。
図2では、分離工程をベルトコンベア1上で行っているが、本発明のシート状部材の裁断方法では、分離工程を行う場所はベルトコンベア上に限定されず、例えば、ベルトコンベア上から別の場所に設置してある水平台上にシート状部材を移動させ、例えば手によって切り込み部を引き裂くことにより分離工程を行っても良い。
【0044】
分離部材としては、切り込み部を境界としてシート状部材を分離可能であれば特に限定されないが、たとえば、カッター等の切断手段が挙げられる。カッター等の切断手段を分離部材としてベルトコンベア上に配置しておき、この切断手段によってシート状部材の切り込み部を完全に切断することによりシート状部材を分離してもよい。また、分離部材は刃等の直接的な切断手段を備えている必要はなく、例えば、略三角形状のブロックを用い、このブロックの鋭角部分が楔となってシート状部材を割るように分離してもよい。
【0045】
ベルトコンベアとしては、シート状部材を安定的に移動させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ゴムベルトコンベア、スチールベルトコンベア、金網ベルトコンベア、真空コンベア等であってよく、複数のベルトコンベアを隣接させて用いてもよい。真空コンベアを用いると、切り込み工程においてシート状部材を真空コンベア上に固定することができるため、切り込み工程における衝撃及び振動によってシート状部材がずれることを抑制することができる。そのため、切り込み工程においてシート状部材がずれにくく、裁断したマットの寸法がずれることを抑制することができる。
同様の理由から、真空コンベアを切断工程で用いることも望ましい。
【0046】
図3(a)は、切り込み部が形成されたシート状部材の一例を模式的に示した上面図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるB−B線断面図である。
切り込み工程において形成される切り込み部は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、シート状部材100が厚さ(
図3(b)中、両矢印T
1で表される長さ)方向に全く切断されていない非切断領域111と完全に切断されている切断領域112が交互に形成されたミシン目状の切り込み部110dであってもよい。
図3(a)及び
図3(b)に示す切り込み部110dは、例えば、シート状部材100を厚さ方向に切断して切断領域112を形成する工程と、厚さ方向に切断しないことで非切断領域111を形成する工程とを、シート状部材100の移動に合わせて交互に繰り返すことにより形成することができる。
【0047】
図4(a)は、切り込み部が形成されたシート状部材の別の一例を模式的に示した上面図であり、
図4(b)は、
図4(a)におけるC−C線断面図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、切り込み部は、シート状部材100が厚さ(
図4(b)中、両矢印T
2で表される長さ)方向に両矢印で示す厚さT
4だけ切断されている半切断領域113と完全に切断されている切断領域114が交互に形成されたミシン目状の切り込み部110eであってもよい。
図4(a)及び
図4(b)に示される切り込み部110eは、例えば、シート状部材100を厚さ方向に切断して切断領域114を形成する工程と、厚さ方向に一定の深さを有する切り込みを入れることで半切断領域113を形成する工程とを、シート状部材100の移動に合わせて交互に繰り返すことにより形成することができる。
【0048】
図5(a)は、切り込み部が形成されたシート状部材のさらに別の一例を模式的に示した上面図であり、
図5(b)は、
図5(a)におけるD−D線断面図である。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、切り込み部は、シート状部材100が厚さ(
図5(b)中、両矢印T
3で表される長さ)方向に両矢印で示す厚さT
5だけ切断された半切断領域115のみからなる溝状の連続切り込み部110fであってもよい。
図5(a)及び
図5(b)に示される切り込み部110fは、例えば、シート状部材100の厚さ方向に一定の深さを有する切り込みを入れることで半切断領域115を形成する工程を連続して行うことにより形成することができる。
【0049】
上記切り込み部における切断領域、非切断領域及び半切断領域の割合や、半切断領域の厚さ方向の切断距離は、分離工程において分離可能であれば特に限定されないが、例えば、ミシン目状の切り込み部110dにおいては、切断領域112の長さ(
図3(a)中、両矢印L
2で示される長さ)と非切断領域111の長さ(
図3(a)中、両矢印L
1で示される長さ)の割合は、6:4〜8:2であることが望ましい。
また、ミシン目状の切り込み部110eにおいては、切断領域114の長さ(
図4(b)中、両矢印L
4で示される長さ)と、半切断領域113の長さ(
図4(b)中、両矢印L
3で示される長さ)との割合は、半切断領域113の厚さ方向の切断距離(
図4(b)中、両矢印T
4で示される長さ)にもよるが、例えば、半切断領域113の厚さ方向の切断距離がシート状部材100の厚さの30〜80%であって、切断領域114の長さと半切断領域113の長さの割合が、4:6〜8:2であることが望ましい。
さらに、切り込み部が半切断領域115のみからなる溝状の連続切り込み部110fである場合には、半切断領域115の厚さ方向の切断距離(
図5(b)中、両矢印T
5で示される長さ)は、シート状部材100の厚さの50〜80%であることが望ましい。
なお、
図3(b)及び
図4(b)における切断領域112及び114の長さは、シート状部材100の移動方向に平行な方向における切断部120の間隔(
図1に示される120a及び120bのA方向における間隔)よりも短い。切断領域112及び114の長さが、シート状部材100の移動方向に平行な方向における切断部の間隔以上であると、切断工程において形成される複数の切断部同士を上記切断領域112又は114が接続することで、シート状部材100が完全に切断されてしまうことがある。そのため、切断したシート状部材100がばらけたり、ずれたりすることがある。
【0050】
切り込み工程によって、シート状部材100には、シート状部材100の移動方向に沿った方向に、直線状の切り込み部110が形成される。切り込み部110は、シート状部材100を完全に切断していないため、シート状部材100がずれることがなく、続く切断工程において、寸法のずれ等を防止することができる。
【0051】
図6(a)は、切り込み工程において用いられる切り込み部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)におけるE−E線断面図であり、
図6(c)は、切り込み工程において用いられる切り込み部材の別の一例を模式的に示した平面図であり、
図6(d)は、切り込み工程において用いられる切り込み部材のさらに別の一例を模式的に示した斜視図であり、
図6(e)は
図6(d)におけるF−F線断面図である。
切り込み部材10は、シート状部材100に切り込み部110を形成することができれば特に限定されないが、例えば、
図6(a)に示す円盤部12とその周部分に形成された刃部13を有する回転刃11や、
図6(d)に示すようなギロチン刃17を用いることができる。回転刃としては、
図6(c)に示すような、刃先が凸状部16と凹状部15から構成されたミシン目状となっている回転ミシン刃14を特に好適に用いることができる。
【0052】
回転刃11を用いて切り込み部110dを形成する場合について、
図3(b)を参照して説明する。回転刃11を用いて切り込み部110dを形成する場合、例えば、回転刃11をシート状部材100に対して上下に移動させながら、シート状部材100を移動させる方法が挙げられる。上記方法によってシート状部材100を厚さ方向に完全に切断する切断領域112を形成する工程と、回転刃11をシート状部材100に接触させずに非切断領域111を形成する工程とが交互に繰り返されることとなり、切り込み部110dを形成することができる。
次に、回転刃11を用いて切り込み部110eを形成する場合について、
図4(b)を参照して説明する。回転刃11を用いて切り込み部110eを形成する場合、例えば、回転刃11をシート状部材100に対して上下に移動させながら、シート状部材100を移動させる方法が挙げられる。切り込み部110dを形成する場合との違いは、回転刃11の上下方向における移動領域を、シート状部材100を完全に切断し切断領域114を形成できる位置から、シート状部材100を一部切断して半切断領域113を形成できる位置までに設定する点にある。上記方法によって、シート状部材100に切断領域114を形成する工程と半切断領域113を形成する工程とが交互に繰り返されることとなり、切り込み部110eを形成することができる。
さらに、回転刃11を用いて切り込み部110fを形成する場合について、
図5(b)を参照して説明する。回転刃11を用いて切り込み部110fを形成する場合、例えば、回転刃11を、シート状部材100を一部切断して半切断領域115を形成できる位置に固定しながら、シート状部材100を移動させる方法が挙げられる。上記方法によって、シート状部材100に半切断領域115を形成する工程が連続的に行われることとなり、切り込み部110fを形成することができる。
【0053】
次に、回転ミシン刃14を用いて切り込み部を形成する場合について、
図3(b)及び
図4(b)を参照して説明する。
回転ミシン刃14を用いて切り込み部110dを形成する場合、回転ミシン刃14とシート状部材100とが接触する面における回転ミシン刃14の凸状部16とシート状部材100との移動速度とが一致するようにベルトコンベアの移動速度及び回転ミシン刃14の回転速度を調整することで、回転ミシン刃14の凸状部16に対応する箇所には切断領域112が形成され、凹状部15に対応する箇所には非切断領域111が形成される。
また、回転ミシン刃14の凹状部15がシート状部材100を深さ方向に一部切断可能に構成されている場合、凸状部16に対応する箇所には切断領域114が形成され、凹状部15に対応する箇所には半切断領域113が形成されることとなるので、切り込み部110eを形成することができる。
【0054】
次に、ギロチン刃17を用いて切り込み部を形成する場合について、
図3(b)を参照して説明する。
ギロチン刃17を用いて切り込み部110dを形成する場合、ギロチン刃17をシート状部材100に対して上下に移動させながら、シート状部材100を移動させる方法が挙げられる。ギロチン刃17をシート状部材100に対して上下に移動させながらシート状部材を移動させることによって、ギロチン刃17によってシート状部材100を厚さ方向に完全に切断する切断領域112を形成する工程と、ギロチン刃17をシート状部材100に接触させずに非切断領域111を形成する工程とが交互に繰り返されることとなり、切り込み部110dを形成することができる。
【0055】
図6(b)に示すように、回転刃11は、円盤部12から所定の切り込み角度(
図3(b)中、θ
1及びθ
2で表される角度)で切り込まれることにより刃部13が形成されている。θ
1及びθ
2の角度差は、10°以内が望ましく、より望ましくは5°以内、さらに望ましくは0°である。θ
1及びθ
2の角度差が10°を超える場合、回転刃11をシート状部材に押圧したときに、刃部13が切り込み角度の小さい側に折れ曲がり、回転刃11の耐久性が低下することや、シート状部材に形成される切り込み部の位置や寸法がずれることがある。
【0056】
θ
1及びθ
2はそれぞれ10〜30°であることが望ましく、15〜25°であることがより望ましく、17〜22°であることがさらに望ましい。
θ
1又はθ
2の角度が10°未満の場合には刃部13の強度が不足して刃部13が刃こぼ
れを起こすことがあり、θ
1又はθ
2の角度が30°を超える場合には、切り込み部を形成するのに要する圧力が大きくなるため、回転刃11の耐久性が低下することがある。
θ
1及びθ
2はそれぞれ異なっていてもよく、同一であってもよいが、シート状部材に切り込み部を形成する際の抵抗を低減する観点から、θ
1とθ
2とが同一(θ
1とθ
2との角度差が0°)であることが望ましい。
【0057】
また、回転刃11は両刃であることが望ましい。回転刃11が両刃であるとは、θ
1及びθ
2がいずれも0°を超えている状態を指す。回転刃11が両刃であると、シート状部材に切り込み部を形成する際の抵抗を低減することができる。
【0058】
回転刃11を構成する金属材料としては、炭素鋼、ステンレス鋼、モリブデン鋼、特殊鋼(合金鋼)等の鋼類、コバルト合金(ステライト)、チタン合金等の合金類、ジルコニア、アルミナ等のファインセラミックス類が挙げられる。これらの中で、焼入れ処理により硬度を上昇させることができる鋼類が好ましく使用できる。さらに、硬度、耐久性が比較的高く、入手が容易であり、また、炭素の含有量を変化させることにより目的に応じ機械的特性を容易に変化させることができる炭素鋼がより好ましく使用される。炭素鋼は、炭素(C)含有量が2%以下の鉄と炭素の合金であり、通常、微量のケイ素、マンガン、リン、硫黄を含有する。炭素鋼は、炭素の含有量により、0.12%以下:極軟鋼、0.12〜0.2%:低炭素鋼(軟鋼)、0.2〜0.45%:中炭素鋼(半軟鋼、半硬鋼)、0.45〜0.8%:高炭素鋼(硬鋼)、0.8〜1.7%:最硬鋼(至硬鋼)に分けられる。炭素の含有量が多いほど焼き入れ硬化処理を施した際、硬さが上昇する。逆に、炭素の含有量が少ないほど防錆性が向上する。炭素鋼中の炭素の量は切断するシート状部材の材質、目的等に応じ適宜設定される。また、複数の金属材料が接合されるグラット材として使用しても良い。例えば、刃部13を硬くするために先端部に炭素含有量の高い炭素鋼を使用しても良い。また、表面の防錆性を向上させるために炭素含有量の低い炭素鋼を両面に積層させる三層構造の複層構造として構成してもよい。シート状部材としてアルミナファイバを使用する場合、炭素含有率の高い炭素鋼を使用することが望ましい。
【0059】
回転刃11の表面には、低摩擦処理が施されていることが望ましい。低摩擦処理としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂によるコーティング等が挙げられる。加えて、ナノオーダーの酸化アルミニウム砥粒などの、非常に粒子径が小さい砥粒を用いて回転刃11の表面を研磨することにより低摩擦化する方法も有効である。
回転刃11の表面に低摩擦処理が施されていると、切り込み部を形成する際に、シート状部材と回転刃11とが滑りやすく、切り込み工程におけるシート状部材へのダメージを最小限に抑えることができる。
【0060】
図6(c)に示すように、切り込み部材としては、回転ミシン刃14を用いることが望ましい。回転ミシン刃14は、回転刃における刃部がミシン目状に形成されているものである。回転ミシン刃14を構成する材料、低摩擦処理、切り込み角度等の好ましい範囲は、回転刃11と同様であり、回転刃11と同様の低摩擦処理が施されることも好ましい。また、凸状部16及び凹状部15の長さは、形成したい切り込み部の形状に応じて適宜設定することができる。
【0061】
図6(d)に示すように、切り込み部材としては、ギロチン刃17を用いることもできる。ギロチン刃17を構成する材料、刃の厚さ(
図6(e)中、両矢印N
2で示される)及び切り込み角度(
図6(e)中、θ
3及びθ
4で示される)等の好ましい範囲は、回転刃11と同様であり、回転刃11と同様の低摩擦処理が施されることも好ましい。
【0062】
図7(a)は、切断工程において用いられる切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)におけるG−G線断面図である。
図7(a)に示すように、切断部材20としては、胴体部21と刃部22とを有する板状金属を所望の形状に折り曲げた板刃を用いることができる。
【0063】
切断部材20の長さ(
図7(b)中、両矢印L
5で示される長さ)は、特に限定されないが、切断するシート状部材の厚さよりも長いことが望ましい。
【0064】
切断部材20を構成する胴体部21の厚さ(
図7(b)中、両矢印Mで示される長さ)は特に限定されないが、0.5〜1.5mmであることが望ましく、0.8〜1.2mmであることがより望ましく、0.95〜1.05mmであることが特に望ましい。胴体部21の厚さが0.5mmよりも薄いと切断部材20の強度が低下しやすく、1.5mmよりも厚いと折り曲げ加工が困難になるとともに、切断するシート状部材の形状に影響を与えることがある。
【0065】
図7(b)に示すように、切断部材20は、胴体部21から所定の切り込み角度(
図7(b)中、θ
5及びθ
6で表される角度)で切り込まれることにより刃部22が形成されている。θ
5及びθ
6の角度差は、10°以内が望ましく、より望ましくは5°以内、さらに望ましくは0°である。θ
5及びθ
6の角度差が10°を超える場合、切断部材20をシート状部材に押圧したときに、刃部22が切り込み角度の小さい側に折れ曲がり、切断部材20の耐久性が低下することや、切断するシート状部材の寸法がずれることがある。
【0066】
θ
5及びθ
6はそれぞれ10〜30°であることが望ましく、15〜25°であることがより望ましく、17〜22°であることがさらに望ましい。
θ
5又はθ
6の角度が10°未満の場合には刃部22の強度が不足して刃部22が刃こぼ
れを起こすことがあり、θ
5又はθ
6の角度が30°を超える場合には、切断に要する圧力が大きくなるため、切断部材20の耐久性が低下することがある。
θ
5及びθ
6はそれぞれ異なっていてもよく、同一であってもよいが、シート状部材を切断する際の抵抗を低減する観点から、θ
5とθ
6とが同一(θ
5とθ
6との角度差が0°)であることが望ましい。
【0067】
また、切断部材20は両刃であることが望ましい。切断部材20が両刃であるとは、θ
5及びθ
6がいずれも0°を超えている状態を指す。切断部材20が両刃であると、シート状部材を切断する際の抵抗を低減することができる。
【0068】
切断部材20を構成する金属材料としては、回転刃11に用いたものと同様のものを好ましく用いることができる。また、折り曲げ加工性を向上させるために屈曲部においては炭素含有量の低い炭素鋼を使用してもよい。
【0069】
切断部材20の表面には、低摩擦処理が施されていることが望ましい。低摩擦処理としては、特に限定されないが、回転刃11に施されるものと同様のものを好ましく用いることができる。
【0070】
図8は、切断工程において用いられる切断部材の別の一例を模式的に示した断面図である。
図8に示すように、切断部材25は、胴体部26の厚さが刃部27から遠ざかるにつれて順次厚くなっていてもよい。胴体部26の厚さが刃部27から遠ざかるに連れて順次厚くなっていると、切断部材25の強度を向上させることができ、さらに、シート状部材を切断した際の刃の倒れを抑制することができる。
なお、このような構成の切断部材25における刃部27の切り込み角度は、
図8に示すように、刃部27の先端から胴体部26に向かって垂直に伸ばした線と刃部27を構成する面とのなす角で表される(
図8中、θ
7及びθ
8で示される)。
また、胴体部26(
図8中、両矢印L
6で示される部分)の厚さの平均値を胴体部26の厚さとする。
【0071】
切断部材としては、上記の板刃のほかにも、切り込み工程において用いられる回転刃やギロチン刃等も用いることもでき、さらに、ウォータージェットやレーザーによる従来公知の切断方法を用いることもできる。このような切断部材を用いる場合、ベルトコンベアを一旦停止させて、静止したシート状部材に対して切断工程を行ってもよい。また、切断部材に応じて、ベルトコンベアの種類を変更してもよい。
【0072】
切断工程においては、ベルトコンベアの動きを一旦止めて切断工程を行ってもよく、ベルトコンベアの動きを止めずに切断工程を行ってもよい。
【0073】
図9は、安全ケースを用いた切断工程の一例を模式的に示した斜視図である。
図9に示すように、安全ケース40は、切断部材20を収納するようになっており、切断部材20が通過可能なスリット42を有する底板41と、壁部43から構成されている。
切断工程においては、シート状部材を切断した後の切断部材に、シート状部材が付着することがある。このような場合、切断したシート状部材が切断部材と共にベルトコンベア上から持ち上げられ、シート状部材がたわんだり、シワが発生することがあるため、これを防ぐために、シート状部材と切断部材との間に、安全ケースをさらに備えていてもよい。
【0074】
図10(a)は、
図9において、切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したH−H線断面図であり、
図10(b)は、
図9において、切断部材がシート状部材を切断し、シート状部材から離れる瞬間の一例を模式的に示したH−H線断面図であり、
図10(c)は、
図9において、切断部材がシート状部材を切断し、安全ケース内に収納される瞬間の一例を模式的に示したH−H線断面図である。
図10(a)に示すように、切断部材20は、切断工程が行われる瞬間だけ、安全ケース40に形成されたスリット42を通過してシート状部材100に接触する。
また、
図10(b)に示すように、切断部材20が切断工程においてシート状部材100を切断した時に、シート状部材100が切断部材20に付着し、シート状部材100がベルトコンベア1上から持ち上げられてしまうことがある。
シート状部材100がベルトコンベア1上から持ち上げられてしまったとしても、
図10(c)に示すように、切断部材20は安全ケース40に設けられたスリット42を通過可能であるが、シート状部材100はスリット42を通過できないため、切断部材20が安全ケース40内に収納されると、切断部材20とシート状部材100とが分離されることとなる。安全ケース40内に収納された切断部材20は、次の切断工程までは安全ケース40内に収納されているため、作業者が切断部材20に接触する危険性を低減することができる。そのため、安全ケースを用いることで、作業者が切断部材に接触する危険性を低減することができ、かつ、シート状部材が切断部材に付着した場合に、シート状部材がたわんだり、シワが発生することを抑制することができる。
【0075】
安全ケースを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、金属、プラスチック、木材等が挙げられ、成形性及び取り扱い性の観点から、プラスチック製であることが好ましい。
【0076】
シート状部材を構成する材料としては、無機質繊維集合体や有機化合物からなる発泡性緩衝材が挙げられる。これらは、従来の裁断方法によってシート状部材を構成する無機繊維や泡等の三次元構造が破壊されるため、保持力、緩衝力等の低下が問題となっていた。これに対して、本発明のシート状部材の裁断方法では、シート状部材を圧縮する工程がないため、シート状部材の構造に与えるダメージを最小限とすることができ、保持力、緩衝力の高いシート状部材を得ることができる。
【0077】
シート状の無機質繊維集合体は、主に無機繊維から構成されており、従来公知のものを好適に用いることができる。
【0078】
無機繊維は、特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、ムライト繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種から構成されていることが望ましく、アルミナ繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより望ましい。
無機繊維がアルミナ繊維である場合には、耐熱性に優れているので、高温に晒された場合であっても、変質等が発生することがないため、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材として特に好適である。
また、無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製する際に、飛散した無機繊維を吸入等しても、生体内で溶解するため、作業員の健康に害を及ぼすことがない。
【0079】
アルミナ繊維には、アルミナ以外に、例えば、カルシア、マグネシア、ジルコニア等の添
加剤が含まれていてもよい。
アルミナシリカ繊維の組成比としては、重量比でAl
2O
3:SiO
2=60:40〜80:20であることが好ましく、Al
2O
3:SiO
2=70:30〜74:26であることがより好ましい。
また、アルミナ繊維のムライト結晶化率は繊維100重量部に対して5重量部以下が好ましいが、さらには3重量部以下が好ましく、1重量部以下が最も好ましい。ムライト結晶化率は蛍光X線装置にて測定でき、5重量部以下であると繊維は脆くなく、弾力性があるため、保持力及び緩衝性の優れた無機質繊維集合体となる。
【0080】
無機繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、望ましくは0.05〜150mm、より望ましくは0.35〜100mmである。
無機繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、マットの強度及び柔軟性の観点から、望ましくは1〜20μm、より望ましくは1〜10μmである。
無機質繊維集合体は湿式法で作られることが望ましく、その際の望ましい平均繊維長は0.05〜5mmであり、さらには0.5〜3mmが望ましい。湿式法により、容易に広範囲の坪量の無機質繊維集合体を製造することが可能であり、特に坪量は限定されないが、望ましい坪量は2000g/m
2〜6000g/m
2であり、より望ましくは3000〜5000g/m
2である。
【0081】
無機質繊維集合体は、無機繊維の他に、有機バインダ及び無機バインダを含んでいても良い。無機質繊維集合体が有機バインダ及び無機バインダを含んでいると、無機質繊維集合体を構成する無機繊維同士の絡み合いが強固となり、面圧の高い無機質繊維集合体となる。
【0082】
有機バインダとしては、特に限定されず、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0083】
無機質繊維集合体に含まれる有機バインダは、固形分として、無機繊維100重量部に対して0.1〜15重量部含まれることが望ましく、1〜12重量部含まれることがより望ましく、3〜10重量部含まれることがさらに望ましい。
【0084】
無機バインダとしては、特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
【0085】
無機質繊維集合体に含まれる無機バインダは、固形分として、無機繊維100重量部に対して0.1〜10重量部含まれることが望ましく、0.1〜3重量部含まれることがより望ましく、0.1〜2重量部含まれることがさらに望ましい。
【0086】
無機質繊維集合体の厚さは、15mm以上であることが望ましく、20mm以上であることがより望ましく、25mm以上であることがさらに望ましい。また、50mm以下であることが望ましく、40mm以下であることがより望ましい。厚さが上記範囲内である無機質繊維集合体は、本発明の裁断方法によって、無機質繊維集合体にダメージを与えずに裁断することができるため、高い面圧を有するマットとなる。
【0087】
有機化合物からなる発泡性緩衝材を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0088】
本発明のマットは、上述した本発明のシート状部材の裁断方法により、シート状部材を裁断することにより得られる。
図11は、本発明のシート状部材の裁断方法により得られるマットの一例を模式的に示した斜視図である。
図11に示すマット200は、所定の長手方向の長さ(以下、単に全長ともいう。
図11中、両矢印L
7で示す)、幅(
図11中、矢印W
7で示す)及び厚さ(
図11中、矢印T
7で示す)を有している。マット200は平面視略矩形形状であって、凸部201aが形成された端面201と、凹部202aが形成された端面202と、長手方向の側面である第1の側面203と、第1の側面203の反対側の側面である第2の側面204とを備えている。長手方向の側面とは、マット200を平面視した際に、矩形の長辺を形成する部分に位置する面のことである。凸部201a及び凹部202aは、互いに対応しており、マット200を円筒形状の物品に巻き付けた際には、ちょうど互いに嵌合するような形状である。
【0089】
本発明の排ガス浄化装置は、ケーシングと、上記ケーシングに収容された排ガス処理体と、上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、上記排ガス処理体及び上記ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は、本発明のシート状部材の裁断方法により裁断された平面視略矩形形状のマットであることを特徴とする。
図12は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図12に示すように、本発明の排ガス浄化装置300は、ケーシング310と、ケーシング310に収容された排ガス処理体320と、排ガス処理体320及びケーシング310の間に配設されたマット200とを備えている。
排ガス処理体320は、多数のセル325がセル壁326を隔てて長手方向に併設された柱状のものであり、セル325のいずれか一方の端部は、封止材328によって封止されている。なお、ケーシング310の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
【0090】
上述した構成を有する排ガス浄化装置300を排ガスが通過する場合について、
図12を参照して以下に説明する。
図12に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置300に流入した排ガス(
図12中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)320の排ガス流入側端面320aに開口した一のセル325に流入し、セル325を隔てるセル壁326を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁326で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス処理側端面320bに開口した他のセル325から流出し、外部に排出される。
【0091】
次に、本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシング及び排ガス処理体(ハニカムフィルタ)について説明する。
なお、排ガス浄化装置を構成するマットの構成については、本発明のマットとしてすでに説明しているので省略する。
【0092】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0093】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状や、断面形状が略楕円型形状の筒形、断面形状が略多角形形状の筒形等を好適に用いることができる。
【0094】
続いて、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体について説明する。
【0095】
図13は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示した斜視図である。
図13に示す排ガス処理体320は、多数のセル325がセル壁326を隔てて長手方向に併設される柱状のセラミック質からなるハニカム構造体である。また、セル325のいずれか一方の端部は、封止材328で封止されている。また、ハニカム構造体の外周には、ハニカム構造体の外周部を補強したり、形状を整えたり、ハニカム構造体の断熱性を向上させたりする目的で、外周コート層327が設けられている。
【0096】
セル325のいずれか一方の端部が封止されている場合、排ガス処理体320の一方の端部からみたときに、端部が封止されたセルと封止されていないセルとが交互に配置されていることが望ましい。
【0097】
排ガス処理体320を長手方向に垂直な方向に切断した断面形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形でもよく、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形であってもよい。
【0098】
排ガス処理体320を構成するセル325の断面形状は、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形でもよく、また、略円形、略楕円形であってもよい。また、排ガス処理体320は、複数の断面形状のセルが組み合わされたものであってもよい。
【0099】
排ガス処理体320を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。これらのうち、特に、炭化ケイ素質又は窒化ケイ素質等の非酸化物多孔質焼成体であることが望ましい。
これら多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、本発明の排ガス浄化装置では、排ガス処理体の側面の周囲にはマットが介在し、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体にクラック等が発生するのを防止することができる。特に、本発明のマットは既に説明したように、保持力に優れており、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
【0100】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、この中では、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いる事もできる。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0101】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含むペーストを介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
【0102】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【0103】
以下に、本発明のシート状部材の裁断方法、マット及び排ガス浄化装置の作用について説明する。
(1)本発明のシート状部材の裁断方法においては、切り込み工程及び切断工程においてシート状部材を完全に切断することがないため、裁断されるシート状部材がベルトコンベア上を移動する際にずれることがなく、正確な寸法で裁断される。さらに、切り込み工程及び切断工程ではシート状部材を圧縮することがないため、圧縮に伴いシート状部材の構造が破壊されることがない。そのため、物体を保持する能力の高いマットが得られる。
(2)本発明のマットは、切り込み工程及び切断工程においてマットの構造破壊の原因となる圧縮工程などを受けていないため、マットの構造が破壊されておらず、高い面圧や緩衝性を発揮することができる。
(3)本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体とケーシングの間に本発明のシート状部材の裁断方法により裁断された平面視略矩形形状のマットが配設されているため、排ガス処理体の保持性能に優れている。
【0104】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0105】
(製造例1)
(a)無機質繊維集合体製造工程
三菱樹脂(株)製のアルミナシリカ繊維67.5gを、その繊維長が0.1〜5.0mmとなるように、ミキサーを用いて湿式解繊した。
上記解繊繊維に水18Lを加え、攪拌機を用いて攪拌した。続いて、有機バインダとしてLx−852(日本ゼオン社製)を4.725gと、無機バインダとしてDISPERAL P2(サソールジャパン株式会社)を0.81g加え、さらに撹拌した。その後、凝集剤としてPERCOL47(BASF社製)0.5重量%溶液を22.5g加えて攪拌することにより、混合液を調製した。
次に、底面にろ過用のメッシュ(メッシュ寸法:30メッシュ)が形成された成形器に混合液を流し込んだ後、混合液中の水をメッシュを介して脱水することにより、150mm×150mmの大きさの原料シートを作製した。
続いて、得られた原料シートを成形器から取り出し、プレス機を用いて厚さが16.5mmとなるように圧縮すると同時に、150℃で加熱乾燥させることにより、抄造シートを作製した。
抄造シートを、加熱炉を用いて600℃で1時間加熱して有機分を除去することにより、無機質繊維集合体を製造した。
製造した無機質繊維集合体は、坪量が3000g/m
2であり、厚さは16.5mmであった。
【0106】
(製造例2)
製造例1におけるアルミナシリカ繊維、有機バインダ、無機バインダ、凝集剤の添加量を1.5倍とし、坪量が4500g/m
2、厚さが24.8mmとなるよう変更したほかは、製造例1と同様の方法で製造例2に係る無機質繊維集合体を製造した。
【0107】
(実施例1)
製造例1に係る無機質繊維集合体を、無機質繊維集合体を圧縮することなく、50mm×50mmの正方形に裁断した。裁断方法としては、回転ミシン刃を用いて切り込み部を形成し、続いて、ギロチン刃により上記切り込み部に対して垂直な方向に切断した。最後に手で切り込み部を引き裂くことにより、実施例1に係るマットを製造した。
回転ミシン刃及びギロチン刃は炭素鋼から構成されており、刃部の角度は両面ともに20°であった。
【0108】
(実施例2)
製造例1に係る無機質繊維集合体に代わり、製造例2に係る無機質繊維集合体を用いたほかは、実施例1と同様の方法で実施例2に係るマットを製造した。
【0109】
(比較例1)
厚さが18mmであるベニヤ板に対して、一辺が50mmの正方形状に厚さ1mmの板状の炭素鋼を埋め込んだ。続いて、板状金属が埋め込まれているベニヤ板の表面に厚さ35mmのN−145ゴムスポンジ((株)イノアックコーポレーション製)を添着した打ち抜き型を製造した。打ち抜き型から突出する板状金属の長さは30mmで、刃部の角度は、両面ともに20°であった。上記打ち抜き型を用いて製造例1に係る無機質繊維集合体を打ち抜くことで比較例1に係るマットを製造した。
【0110】
(比較例2)
比較例1で用いた打ち抜き型を用いて、製造例2に係る無機質繊維集合体を打ち抜くことで、比較例2に係るマットを製造した。
【0111】
(面圧の測定)
万能試験機で圧縮復元サイクル試験を行うため、実施例1〜2及び比較例1〜2に係るマットを試験機にセッティングし、室温状態で、1mm/minの速度でマットの嵩密度(GBD)が所定の値(0.2g/cm
3、0.25g/cm
3、0.3g/cm
3)となるまで圧縮し、このときの荷重を各GBDにおける面圧として測定した。
なお、評価サンプルの嵩密度(GBD:Gap Bulk Density)は、「嵩密度=評価サンプルの重量/(評価サンプルの面積×評価サンプルの厚さ)」で求められる値である。
【0112】
実施例1に係るマットの各GBD(0.2g/cm
3、0.25g/cm
3、0.3g/cm
3)における面圧を100%とした場合に、比較例1に係るマットの各GBDにおける面圧は、それぞれ、66%、82%、92%であった。
また、実施例2に係るマットの各GBDにおける面圧を100%とした場合に、比較例2に係るマットの各GBDにおける面圧は、それぞれ、48%、65%、83%であった。
このことから、無機質繊維集合体は裁断時に圧縮されることにより面圧が低下してしまうこと、及び、本発明のシート状部材の裁断方法を用いることで、面圧の高いマットを製造できることがわかった。