特許第6363337号(P6363337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6363337-シート状部材の裁断方法 図000002
  • 特許6363337-シート状部材の裁断方法 図000003
  • 特許6363337-シート状部材の裁断方法 図000004
  • 特許6363337-シート状部材の裁断方法 図000005
  • 特許6363337-シート状部材の裁断方法 図000006
  • 特許6363337-シート状部材の裁断方法 図000007
  • 特許6363337-シート状部材の裁断方法 図000008
  • 特許6363337-シート状部材の裁断方法 図000009
  • 特許6363337-シート状部材の裁断方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363337
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】シート状部材の裁断方法
(51)【国際特許分類】
   D06H 7/00 20060101AFI20180712BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   D06H7/00
   F01N3/28 311P
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-206662(P2013-206662)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-71836(P2015-71836A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 陽児
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−170338(JP,A)
【文献】 特開昭59−093607(JP,A)
【文献】 特開2007−216343(JP,A)
【文献】 特開平07−197374(JP,A)
【文献】 特開平11−131363(JP,A)
【文献】 特開2008−261339(JP,A)
【文献】 特開2006−226287(JP,A)
【文献】 特開2000−161050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06H 7/00−7/24
F01N 3/28
D04H 1/00−18/04
B26D 1/00−11/00
B26F 1/00−3/00
B65H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅を有するシート状部材を、ベルトコンベアを用いて前記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させ、前記シート状部材を裁断して平面視略矩形形状のマットとするシート状部材の裁断方法であって、
前記シート状部材は、無機繊維、有機バインダ及び無機バインダを含むシート状部材であり、
前記平面視略矩形形状のマットは、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材であり、
前記平面視略矩形形状のマットは、一方の辺と、向かい合う辺とで、互いに対応する凸部及び凹部を有しており、
前記ベルトコンベアの上流に配置される第1切断部材を用いて、前記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に、かつ、前記第1切断部材が前記シート状部材の前記幅方向における両方の端部に接触しないように、前記シート状部材の幅方向の一部を切断して第1切断部を形成する第1切断工程と、
前記第1切断工程の後に、前記第1切断部材よりも下流に位置し、前記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された第2切断部材を用いて、前記シート状部材を、前記シート状部材の移動方向に平行な方向に切断して複数の第2切断部を形成する第2切断工程と、を備え、
前記第1切断部は、前記シート状部材の前記幅方向において、前記シート状部材の前記幅方向における一方の端部に最も近い前記第2切断部から他方の端部に最も近い前記第2切断部までを切断しており、
前記第1切断工程及び前記第2切断工程では、前記シート状部材を厚さ方向に圧縮することがなく、
前記第1切断部と前記第2切断部とで囲まれた平面視略矩形形状のマットが形成されることを特徴とするシート状部材の裁断方法。
【請求項2】
前記ベルトコンベアが真空コンベアであって、前記第1切断工程において、前記シート状部材における前記第1切断部材が接近する側の面と反対側の面を前記真空コンベアで吸着することで、前記シート状部材を前記ベルトコンベア上に固定する請求項1に記載のシート状部材の裁断方法。
【請求項3】
前記第1切断部材が、板刃、回転刃、ギロチン刃、レーザー切断装置及びウォータージェット切断装置からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のシート状部材の裁断方法。
【請求項4】
前記ベルトコンベアが真空コンベアであって、前記第2切断工程において、前記シート状部材における前記第2切断部材が接近する側と反対側の面を前記真空コンベアで吸着することで、前記シート状部材を前記ベルトコンベア上に固定する請求項1〜3のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
【請求項5】
前記第2切断部材が、回転刃又はギロチン刃である請求項1〜4のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
【請求項6】
前記複数の第2切断部材を、前記シート状部材の幅方向に沿って移動させることで、前記第2切断部材同士の距離を変更可能である請求項1〜5のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
【請求項7】
前記シート状部材の厚さが15mm以上である請求項1〜6のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
【請求項8】
前記無機繊維は、アルミナ繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜7のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
【請求項9】
前記シート状部材の坪量は2000g/m以上である請求項1〜のいずれかに記載のシート状部材の裁断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材の裁断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、排ガス処理体と金属ケーシングとの間に配設される無機繊維からなる保持シール材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆う金属ケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体と金属ケーシングとの間から排気ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
このような排ガス処理体用の保持シール材は、シート形状の無機質繊維集合体を排ガス処理体の大きさ等に応じた形状に加工することにより製造される。
【0005】
このような保持シール材の加工方法として、シート形状の無機質繊維集合体を、打ち抜き刃を有する打ち抜き型によって打ち抜く方法(打ち抜き加工ともいう)が従来から用いられている。こうした打ち抜き加工によれば、所定形状の無機質繊維集合体から、複数の保持シール材を成形することができるようになる。
こうした無機質繊維集合体を打ち抜き加工することによって保持シール材を製造するに際して、打ち抜き型を無機質繊維集合体に押し当てることによって、無機質繊維集合体の所定の領域が打ち抜かれることとなる。このときに、打ち抜き刃内部の空間に打ち抜いたマットが引っ掛かり、容易に取り出せないことがある。これを解決するため、打ち抜き型にスポンジやゴム等の弾性体を接着しておき、無機質繊維集合体を打ち抜く際に、弾性体を圧縮し、圧縮された弾性体が元に戻る時の反発力を利用して打ち抜いたマットを打ち抜き刃から離型する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
上述したような、無機質繊維集合体のほかに、有機化合物からなる発泡性樹脂がある。
発泡性樹脂は、排ガス処理体等の高温となる物体を保持することはできないが、衝撃を吸収する能力が高いため、緩衝材として精密機器の運送や保管などに用いられている。
発泡性樹脂からなる発泡性緩衝材の成形方法としては、閉鎖型金型の型内に発泡粒子を充填し、加熱発泡させることにより成形する方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−316965号公報
【特許文献2】特開昭63−212500号公報
【特許文献3】特開2012−214817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、内燃機関に関し、燃費の向上を目的として理論空燃比に近い条件で運転するため、排ガスが高温化、高圧化の傾向にある。排ガス浄化装置に高温、高圧の排ガスが到達すると、排ガス処理体とケーシングとの熱膨張率の差によってこれらの間の間隔が変動することもあることから、保持シール材には多少の間隔の変動によっても変化しない排ガス処理体の保持力が要求される。また、排ガス処理体の排ガス処理性能を有効に機能させるために、排ガス処理体の保温性能に優れる保持シール材への要求も高まりつつある。
【0009】
これらの要求を満たすために、保持シール材の嵩密度を高くして保温性能を高めようとする設計手法が取られている。また、こうした保持シール材において、保持力の要因たる無機繊維の反発力を確保するには、同様に保持シール材の単位面積当たりの重量(坪量)を高くする必要がある。
【0010】
しかしながら、引用文献2に記載の打ち抜き型を用いて、嵩密度や坪量の高い保持シール材を打ち抜いた場合、打ち抜き時の圧縮によって、無機質繊維集合体を構成する無機繊維が破断し、保持シール材の保持能力が低下してしまうことがあった。
【0011】
また、特許文献3に記載の方法により成形された発泡性緩衝材は、打ち抜き工程によって発泡性緩衝材を構成する三次元構造が破壊され、緩衝材としての性能が劣化してしまうことがあった。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、保持シール材や発泡性緩衝材等のシート状部材へのダメージを最小限に抑えることのできる裁断方法、該裁断方法により裁断されたマット及びこれを用いた排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明のシート状部材の裁断方法は、所定の幅を有するシート状部材を、ベルトコンベアを用いて上記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させ、上記シート状部材を裁断して平面視略矩形形状のマットとするシート状部材の裁断方法であって、
上記ベルトコンベアの上流に配置される第1切断部材を用いて、上記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に、かつ、上記第1切断部材が上記シート状部材の上記幅方向における両方の端部に接触しないように、上記シート状部材の幅方向の一部を切断して第1切断部を形成する第1切断工程と、
上記第1切断工程の後に、上記第1切断部材よりも下流に位置し、上記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された第2切断部材を用いて、上記シート状部材を、上記シート状部材の移動方向に平行な方向に切断して複数の第2切断部を形成する第2切断工程と、を備え、
上記第1切断部は、上記シート状部材の上記幅方向において、上記シート状部材の上記幅方向における一方の端部に最も近い上記第2切断部から他方の端部に最も近い上記第2切断部までを切断しており、
上記第1切断部と上記第2切断部とで囲まれた平面視略矩形形状のマットが形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明のシート状部材の裁断方法では、所定の幅を有するシート状部材を、ベルトコンベアを用いて上記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させながら、ベルトコンベアの上流に配置される第1切断部材を用いて、シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に、かつ、第1切断部材がシート状部材の上記幅方向における両方の端部に接触しないように、上記シート状部材の幅方向の一部を切断して、第1切断部を形成する。
第1切断工程において、シート状部材の幅方向における両端部を切断していないため、第1切断工程における衝撃等によって、シート状部材同士の位置がずれることがない。そのため、寸法のずれを最小限に抑えることができる。
さらに、続く第2切断工程では、上記第1切断部材よりも下流に位置し、シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された第2切断部材を用いて、シート状部材をシート状部材の移動方向に平行な方向に切断する。
上記第1切断工程及び第2切断工程を行うことで、第1切断工程により形成された第1切断部と、第2切断工程により形成された第2切断部とにより囲まれる平面視略矩形形状に対応する形状のマットが裁断されることとなる。
第1切断工程及び第2切断工程のいずれにおいても、シート状部材を厚さ方向に圧縮することがない。そのため、本発明のシート状部材の裁断方法により裁断されたマットは、シート状部材の構造が破壊されておらず、高い保持力を発揮することができる。
【0015】
本発明のシート状部材の裁断方法においては、上記ベルトコンベアが真空コンベアであって、上記第1切断工程において、上記シート状部材における上記第1切断部材が接近する側の面と反対側の面を上記真空コンベアで吸着することで、上記シート状部材を上記ベルトコンベア上に固定することが望ましい。
真空コンベアを用いて、第1切断工程においてシート状部材をコンベア上に固定することで、第1切断工程における衝撃及び振動によってシート状部材がずれることを抑制することができる。そのため、第1切断工程においてシート状部材がずれにくく、裁断したマットの寸法がずれることを抑制することができる。
また、真空コンベアの他、シート幅に配置された板状ガイドなどの使用でも、シート状部材のずれを抑制することも可能であり、真空コンベアの代わりに板状ガイドのみの使用や、真空コンベアと板状ガイドとの組み合わせでも可能である。
【0016】
本発明のシート状部材の裁断方法では、上記第1切断部材が、板刃、回転刃、ギロチン刃、レーザー切断装置及びウォータージェット切断装置からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
第1切断部材として、板刃、回転刃、ギロチン刃、レーザー切断装置及びウォータージェット切断装置からなる群から選択される少なくとも1種を用いることで、シート状部材の構造を破壊せずに、シート状部材を容易に切断することができる。
【0017】
本発明のシート状部材の裁断方法では、上記ベルトコンベアが真空コンベアであって、上記第2切断工程において、上記シート状部材における上記第2切断部材が接近する側と反対側の面を上記真空コンベアで吸着することで、上記シート状部材を上記ベルトコンベア上に固定することが望ましい。
真空コンベアを用いて、第2切断工程においてシート状部材をコンベア上に固定することで、第2切断工程における衝撃及び振動によってシート状部材がずれることを抑制することができる。そのため、第2切断工程においてシート状部材がずれにくく、裁断したマットの寸法がずれることを抑制することができる。
また、真空コンベアの他、シート幅に配置された板状ガイドなどの使用でも、シート状部材のずれを抑制することも可能であり、真空コンベアの代わりに板状ガイドのみの使用や、真空コンベアと板状ガイドとの組み合わせでも可能である。
【0018】
本発明のシート状部材の裁断方法では、上記第2切断部材が、回転刃又はギロチン刃であることが望ましい。
第2切断部材が回転刃又はギロチン刃であると、第2切断工程においてシート状部材の構造を破壊することなく、第2切断部を容易に形成することができる。
【0019】
本発明のシート状部材の裁断方法では、上記複数の第2切断部材を、上記シート状部材の幅方向に沿って移動させることで、上記第2切断部材同士の距離を変更可能であることが望ましい。
複数の第2切断部材がシート状部材の幅方向に沿って移動可能であると、第2切断部材の位置を変えることによって、シート状部材の裁断寸法を容易に変更することができる。
【0020】
本発明のシート状部材の裁断方法では、上記シート状部材の厚さが15mm以上であることが望ましい。
シート状部材の厚さが15mm以上であると、従来の裁断方法によってはシート状部材の構造が破壊されることがある。そのため、厚さが15mm以上であるシート状部材を裁断する場合、本発明の裁断方法を好適に用いることができる。
【0021】
本発明のシート状部材の裁断方法において、上記平面視略矩形形状のマットは、一方の辺と、向かう合う辺とで、互いに対応する凸部及び凹部を有することが望ましい。
このような形状のマットは、保持対象となる物体に巻き付けた際に、マットの端部同士の接触面積が大きくなるため、巻き付けたマットが緩んだり、ずれたりすることを抑制することができる。そのため、保持性能の優れたマットを製造することができる。
【0022】
本発明のシート状部材の裁断方法では、上記平面視略矩形形状のマットが、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材であることが望ましい。
本発明のシート状部材の裁断方法では、シート状部材の構造が破壊されにくいため、高い保持力を有するマットを製造することができる。そのため、高い面圧が要求される保持シール材を裁断する方法として、特に好適に用いることができる。
【0023】
本発明のシート状部材の裁断方法において、上記シート状部材は、湿式法で製造され、無機繊維、有機バインダ及び無機バインダを含むシート状部材であることが望ましい。
このような方法で製造されたシート状部材を従来の裁断方法で裁断した場合、有機バインダ及び無機バインダが剥離しやすいため、シート状部材の構造が破壊されやすかった。本発明のシート状部材の裁断方法では、シート状部材を圧縮することがないため、シート状部材の構造が破壊されにくく、有機バインダ及び無機バインダの剥離を抑制することができる。そのため、従来の裁断方法でダメージを受けやすいシート状部材であっても、その構造を維持したまま裁断することができる。
【0024】
本発明のシート状部材の裁断方法において、上記無機繊維は、アルミナ繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが望ましい。
無機繊維がアルミナ繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むと、保持シール材として必要な断熱性、安定性等を充分に備えることができる。
【0025】
本発明のシート状部材の裁断方法において、上記シート状部材の坪量は2000g/m以上であることが望ましい。
シート状部材の坪量が2000g/m以上であると、従来の裁断方法では、シート状部材の構造が破壊されてしまい、保持力が低下してしまうことがあったが、本発明のシート状部材の裁断方法では、シート状部材の構造が破壊されにくいため、高い保持力を有するシート状部材を得ることができる。
【0026】
本発明のシート状部材の裁断方法では、上記シート状部材が、発泡性緩衝材であることが望ましい。
本発明のシート状部材の裁断方法では、シート状部材の構造が破壊されにくいため、高い緩衝力を要求される発泡性緩衝材を裁断する方法として好適に用いることができる。
【0027】
本発明の平面視略矩形形状のマットは、本発明のシート状部材の裁断方法により裁断されたことを特徴とする。
本発明の平面視略矩形形状のマットは、本発明のシート状部材の裁断方法により裁断される。そのため、シート状部材の構造が破壊されておらず、高い保持力を発揮することができる。
【0028】
本発明の排ガス浄化装置は、ケーシングと、上記ケーシングに収容された排ガス処理体と、上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、上記排ガス処理体及び上記ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は本発明のシート状部材の裁断方法により裁断された平面視略矩形形状のマットであることを特徴とする。
本発明の排ガス浄化装置には、保持シール材として本発明のシート状部材の裁断方法により裁断された平面視略矩形形状のマットが用いられている。上記平面視略矩形形状のマットは、裁断工程においてシート状部材の構造が破壊されていないため、高い保持力を発揮することができる。そのため、本発明の排ガス浄化装置は排ガス処理体が安定的に保持されており、振動等によって排ガス処理体と保持シール材とがずれることがなく、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明のシート状部材の裁断方法における、第1切断工程と第2切断工程とを模式的に示した俯瞰図である。
図2図2(a)は、第1切断工程において用いられる第1切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、図2(b)は図2(a)におけるB−B線断面図である。
図3図3は、第1切断工程において用いられる第1切断部材の別の一例を模式的に示した断面図である。
図4図4(a)は、第2切断工程において用いられる第2切断部材の一例を模式的に示した断面図であり、図4(b)は図4(a)におけるC−C線断面図であり、図4(c)は、第2切断工程において用いられる第2切断部材の別の一例を模式的に示した断面図であり、図4(d)は図4(c)におけるD−D線断面図である。
図5図5は、安全ケースを用いた第1切断工程の一例を模式的に示した斜視図である。
図6図6(a)は、図5において、第1切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したE−E線断面図であり、図6(b)は、図5において、第1切断部材がシート状部材を切断し、シート状部材から離れる瞬間の一例を模式的に示したE−E線断面図であり、図6(c)は、図5において、第1切断部材がシート状部材を切断し、安全ケース内に収納される瞬間の一例を模式的に示したE−E線断面図である。
図7図7は、本発明のシート状部材の裁断方法により得られるマットの一例を模式的に示した斜視図である。
図8図8は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図9図9は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示した斜視図である。
【0030】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のシート状部材の裁断方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0031】
以下、本発明のシート状部材の裁断方法について説明する。
本発明のシート状部材の裁断方法は、所定の幅を有するシート状部材を、ベルトコンベアを用いて上記シート状部材の幅方向に対して垂直な方向に移動させ、上記シート状部材を裁断して平面視略矩形形状のマットとするシート状部材の裁断方法であって、上記ベルトコンベアの上流に配置される第1切断部材を用いて、上記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に、かつ、上記第1切断部材が上記シート状部材の上記幅方向における両方の端部に接触しないように、上記シート状部材の幅方向の一部を切断して第1切断部を形成する第1切断工程と、上記第1切断工程の後に、上記第1切断部材よりも下流に位置し、上記シート状部材の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置された第2切断部材を用いて、上記シート状部材を、上記シート状部材の移動方向に平行な方向に切断して複数の第2切断部を形成する第2切断工程と、を備え、上記第1切断部は、上記シート状部材の上記幅方向において、上記シート状部材の上記幅方向における一方の端部に最も近い上記第2切断部から他方の端部に最も近い上記第2切断部までを切断しており、上記第1切断部と上記第2切断部とで囲まれた平面視略矩形形状のマットが形成されることを特徴とする。
【0032】
図1は、本発明のシート状部材の裁断方法における、第1切断工程と第2切断工程とを模式的に示した俯瞰図である。図1に示すように、本発明のシート状部材の裁断方法では、所定の幅(図1中、両矢印Wで示される長さ)を有するシート状部材100を、ベルトコンベア1を用いてシート状部材100の幅方向に垂直な方向(図1中、矢印Aで示される方向)に移動させる。そして、第1切断部材10を用いてシート状部材100に第1切断部110を形成したあと、第1切断部材10よりも下流に配置される第2切断部材20を用いてシート状部材100に第2切断部120を形成する。
【0033】
第1切断工程では、第1切断部材10を用いて、第1切断部材10がシート状部材100の幅方向における両方の端部と接触しないように、シート状部材100の幅方向の一部を切断して第1切断部110を形成する。
第1切断工程では、第1切断部材10がシート状部材100の幅方向における両方の端部と接触しないため、第1切断部110には、シート状部材100の幅方向における端部105に最も近い端部111(図1中、破線で囲まれる部分)と、もう一方の端部106に最も近い端部112(図1中、破線で囲まれる部分)が存在している。言い換えると、シート状部材100の一方の端部105から第1切断部の一方の端部111までと、シート状部材100のもう一方の端部106から第1切断部のもう一方の端部112までは、シート状部材100が切断されていない。そのため、第1切断工程によってシート状部材がばらけることがなく、続く第2切断工程における寸法のずれを抑制することができる。
【0034】
続く第2切断工程では、第2切断部材20を用いて、シート状部材100をシート状部材100の移動方向に対して平行な方向に切断し、第2切断部120を形成する。第2切断部材20は、シート状部材100の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個(20a、20b、20c)が配置されており、複数個の第2切断部材20のうち、シート状部材100の幅方向における最も外側に位置する第2切断部材20a及び20cは、それぞれが、第1切断工程において形成された第1切断部110の端部111及び112(図1中、破線で囲まれる部分)よりもシート状部材100の幅方向における内側に位置している。そのため、シート状部材100の幅方向における一方の端部105に最も近い第2切断部120aから他方の端部106に最も近い第2切断部120cまでが、第1切断部110によって切断されるように、第2切断部120a及び120cが形成されている。
【0035】
第2切断工程を終えることで、第1切断部材10により形成された第1切断部110と、第2切断部材20により形成された第2切断部120とによって囲まれる略矩形形状に、シート状部材100が裁断されて、平面視略矩形形状のマット200となる。第1切断工程では、上述したように、シート状部材が幅方向に完全に切断されていなため、シート状部材が分離したり、ずれたりすることがない。従って、第2切断工程によって、シート状部材を正確な寸法で裁断することができる。
【0036】
第2切断工程において用いられる第2切断部材20は、シート状部材100の移動方向に対して垂直な方向に沿って複数個配置されているが、これらの第2切断部材同士のシート状部材の幅方向における間隔(図1中、両矢印W及び両矢印Wで示される長さ)は、調整可能であることが望ましい。第2切断部材同士のシート状部材の幅方向における間隔を調整することで、第2切断部が形成される位置を変更することができ、ひいては、裁断されるマットの形状や寸法を調整することができる。
【0037】
図2(a)は、第1切断工程において用いられる第1切断部材の一例を模式的に示した斜視図であり、図2(b)は図2(a)におけるB−B線断面図である。
図2(a)に示すように、第1切断部材10としては、胴体部11と刃部12とを有する板状金属を所望の形状に折り曲げた板刃を用いることができる。
【0038】
第1切断部材10の長さ(図2(b)中、両矢印Lで示される長さ)は、特に限定されないが、切断するシート状部材の厚さよりも長いことが望ましい。
【0039】
第1切断部材10を構成する胴体部11の厚さ(図2(b)中、両矢印Mで示される長さ)は特に限定されないが、0.5〜1.5mmであることが望ましく、0.8〜1.2mmであることがより望ましく、0.95〜1.05mmであることが特に望ましい。胴体部11の厚さが0.5mmよりも薄いと第1切断部材10の強度が低下しやすく、1.5mmよりも厚いと折り曲げ加工が困難になるとともに、切断するシート状部材の形状に影響を与えることがある。
【0040】
図2(b)に示すように、第1切断部材10は、胴体部11から所定の切り込み角度(図2(b)中、θ及びθで表される角度)で切り込まれることにより刃部12が形成されている。θ及びθの角度差は、10°以内が望ましく、より望ましくは5°以内、さらに望ましくは0°である。θ及びθの角度差が10°を超える場合、第1切断部材10をシート状部材に押圧したときに、刃部12が切り込み角度の小さい側に折れ曲がり、第1切断部材10の耐久性が低下することや、切断するシート状部材の寸法がずれることがある。
【0041】
θ及びθはそれぞれ10〜30°であることが望ましく、15〜25°であることがより望ましく、17〜22°であることがさらに望ましい。
θ又はθの角度が10°未満の場合には刃部12の強度が不足して刃部12が刃こぼ
れを起こすことがあり、θ又はθの角度が30°を超える場合には、切断に要する圧力が大きくなるため、第1切断部材10の耐久性が低下することがある。
θ及びθはそれぞれ異なっていてもよく、同一であってもよいが、シート状部材を切断する際の抵抗を低減する観点から、θとθとが同一(θとθとの角度差が0°)であることが望ましい。
【0042】
また、第1切断部材10は両刃であることが望ましい。第1切断部材10が両刃であるとは、θ及びθがいずれも0°を超えている状態を指す。第1切断部材10が両刃であると、シート状部材を切断する際の抵抗を低減することができる。
【0043】
第1切断部材10を構成する金属材料としては炭素鋼、ステンレス鋼、モリブデン鋼、特殊鋼(合金鋼)等の鋼類、コバルト合金(ステライト)、チタン合金等の合金類、ジルコニア、アルミナ等のファインセラミックス類が挙げられる。これらの中で、焼入れ処理により硬度を上昇させることができる鋼類が好ましく使用できる。さらに、硬度、耐久性が比較的高く、入手が容易であり、また、炭素の含有量を変化させることにより目的に応じ機械的特性を容易に変化させることができる炭素鋼がより好ましく使用される。炭素鋼は、炭素(C)含有量が2%以下の鉄と炭素の合金であり、通常、微量のケイ素、マンガン、リン、硫黄を含有する。炭素鋼は、炭素の含有量により、0.12%以下:極軟鋼、0.12〜0.2%:低炭素鋼(軟鋼)、0.2〜0.45%:中炭素鋼(半軟鋼、半硬鋼)、0.45〜0.8%:高炭素鋼(硬鋼)、0.8〜1.7%:最硬鋼(至硬鋼)に分けられる。炭素の含有量が多いほど焼き入れ硬化処理を施した際、硬さが上昇する。逆に、炭素の含有量が少ないほど防錆性が向上する。炭素鋼中の炭素の量は切断するシート状部材の材質、目的等に応じ適宜設定される。また、複数の金属材料が接合されるグラット材として使用しても良い。例えば、刃部12を硬くするために先端部に炭素含有量の高い炭素鋼を使用しても良い。また、表面の防錆性を向上させるために炭素含有量の低い炭素鋼を両面に積層させる三層構造の複層構造として構成してもよい。また、折り曲げ加工性を向上させるために屈曲部においては炭素含有量の低い炭素鋼を使用してもよい。シート状部材としてアルミナファイバを使用する場合、炭素含有率の高い炭素鋼を使用することが望ましい。
【0044】
第1切断部材10の表面には、低摩擦処理が施されていることが望ましい。低摩擦処理としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂によるコーティング等が挙げられる。加えて、ナノオーダーの酸化アルミニウム砥粒などの、非常に粒子径が小さい砥粒を用いて第1切断部材10の表面を研磨することにより低摩擦化する方法も有効である。
第1切断部材10の表面に低摩擦処理が施されていると、第1切断部を形成する際に、シート状部材と第1切断部材とが滑りやすく、第1切断部工程におけるシート状部材へのダメージを最小限に抑えることができる。
【0045】
図3は、第1切断工程において用いられる第1切断部材の別の一例を模式的に示した断面図である。図3に示すように、第1切断部材15は、胴体部16の厚さが刃部17から遠ざかるにつれて順次厚くなっていてもよい。胴体部16の厚さが刃部17から遠ざかるに連れて順次厚くなっていると、第1切断部材15の強度を向上させることができ、さらに、シート状部材を裁断した際の刃の倒れを抑制することができる。
なお、このような構成の第一切断部材15における刃部17の切り込み角度は、図3に示すように、刃部17の先端から胴体部16に向かって垂直に伸ばした線と刃部17を構成する面とのなす角で表される。(図3中、θ及びθで示される)。
また、胴体部16(図3中、両矢印Lで示される部分)の厚さの平均値を胴体部16の厚さとする。
【0046】
第1切断部材としては、上記の板刃のほかにも、回転刃やギロチン刃等も用いることもでき、さらに、ウォータージェットやレーザーによる従来公知の切断方法を用いることもできる。このような切断部材を用いる場合、ベルトコンベアを一旦停止させて、静止したシート状部材に対して切断工程を行ってもよい。また、切断部材に応じて、ベルトコンベアの種類を変更してもよい。
【0047】
図4(a)は、第2切断工程において用いられる第2切断部材の一例を模式的に示した断面図であり、図4(b)は図4(a)におけるC−C線断面図であり、図4(c)は、第2切断工程において用いられる第2切断部材の別の一例を模式的に示した断面図であり、図4(d)は図4(c)におけるD−D線断面図である。
第2切断部材20は、シート状部材100を切断することができれば特に限定されないが、図4(a)に示すような回転刃21や、図4(c)に示すようなギロチン刃25を用いることができる。
【0048】
図4(b)に示すように、回転刃21は、円盤部22から所定の切り込み角度(図4(b)中、θ及びθで表される角度)で切り込まれることにより刃部23が形成されている。回転刃21を構成する材料、切り込み角度等の好ましい範囲は、第1切断部材10と同様であり、第1切断部材10と同様の低摩擦処理が施されることも好ましい。また、円盤部22の厚さ(図4(b)中、両矢印Nで示される長さ)は、特に限定されないが、第1切断部材の胴体部の厚さと同様であることが好ましい。
【0049】
図4(d)に示すように、ギロチン刃25は、胴体部26から所定の切り込み角度(図4(d)中、θ及びθで表される角度)で切り込まれることにより刃部27が形成されている。ギロチン刃25を構成する材料、切り込み角度等の好ましい範囲は、第1切断部材10と同様であり、第1切断部材10と同様の低摩擦処理が施されることも好ましい。また、胴体部26の厚さ(図4(d)中、両矢印Nで示される長さ)は、特に限定されないが、第1切断部材10の胴体部の厚さと同様であることが望ましい。
【0050】
また、第2切断部材としては、ウォータージェットやレーザーによる従来公知の切断装置を用いることもできる。このような切断装置を用いる場合、ベルトコンベアを一旦停止させて、静止したシート状部材に対して第2切断工程を行ってもよい。また、第2切断部材の種類に応じて、ベルトコンベアの種類を変更してもよい。
【0051】
ベルトコンベアとしては、シート状部材を安定的に移動させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ゴムベルトコンベア、スチールベルトコンベア、金網ベルトコンベア、真空コンベア等であってよく、複数のベルトコンベアを隣接させて用いてもよい。真空コンベアは、シート状部材をコンベア上に安定的に保持することができるため、シート状部材のズレ等を抑制できる点で望ましい。
第1切断工程において、シート状部材における第1切断部材が接近する側の面と反対側の面を真空コンベアで吸着することで、シート状部材を真空コンベア上に固定することができるため、第1切断工程におけるシート状部材のずれをさらに抑制することができる。
同様の理由で、第2切断工程において真空コンベアを用いると、シート状部材をより正確な寸法で裁断することができる。
【0052】
図5は、安全ケースを用いた第1切断工程の一例を模式的に示した斜視図である。
図5に示すように、安全ケース30は、第1切断部材10を収納するようになっており、第1切断部材10が通過可能なスリット32を有する底板31と、壁部33から構成されている。
第1切断工程においては、シート状部材を切断した後の第1切断部材に、シート状部材が付着することがある。このような場合、切断したシート状部材が第1切断部材と共にベルトコンベア上から持ち上げられ、シート状部材がたわんだり、シワが発生することがあるため、これを防ぐために、シート状部材と第1切断部材との間に、安全ケースをさらに備えていてもよい。
【0053】
図6(a)は、図5において、第1切断工程が行われる瞬間の一例を模式的に示したE−E線断面図であり、図6(b)は、図5において、第1切断部材がシート状部材を切断し、シート状部材から離れる瞬間の一例を模式的に示したE−E線断面図であり、図6(c)は、図5において、第1切断部材がシート状部材を切断し、安全ケース内に収納される瞬間の一例を模式的に示したE−E線断面図である。
図6(a)に示すように、第1切断部材10は、切断工程が行われる瞬間だけ、安全ケース30に形成されたスリット32を通過してシート状部材100に接触する。
また、図6(b)に示すように、第1切断部材10が切断工程においてシート状部材100を切断した時に、シート状部材100が第1切断部材10に付着し、シート状部材100がベルトコンベア1上から持ち上げられてしまうことがある。
シート状部材100がベルトコンベア1上から持ち上げられてしまったとしても、図6(c)に示すように、第1切断部材10は安全ケース30に設けられたスリット32を通過可能であるが、シート状部材100はスリット32を通過できないため、第1切断部材10が安全ケース30内に収納されると、第1切断部材10とシート状部材100とが分離されることとなる。安全ケース30内に収納された第1切断部材10は、次の第1切断工程までは安全ケース30内に収納されているため、作業者が第1切断部材10に接触する危険性を低減することができる。そのため、安全ケースを用いることで、作業者が第1切断部材に接触する危険性を低減することができ、かつ、シート状部材が第1切断部材に付着した場合に、シート状部材がたわんだり、シワが発生することを抑制することができる。
【0054】
安全ケースを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、金属、プラスチック、木材等が挙げられ、成形性及び取り扱い性の観点から、プラスチック製であることが好ましい。
【0055】
シート状部材を構成する材料としては、無機質繊維集合体や有機化合物からなる発泡性緩衝材が挙げられる。これらは、従来の裁断方法によってシート状部材を構成する無機繊維や泡等の三次元構造が破壊されるため、保持力、緩衝力等の低下が問題となっていた。これに対して、本発明のシート状部材の裁断方法では、シート状部材を圧縮する工程がないため、シート状部材の構造に与えるダメージを最小限とすることができ、保持力、緩衝力の高いシート状部材を得ることができる。
【0056】
シート状の無機質繊維集合体は、主に無機繊維から構成されており、従来公知のものを好適に用いることができる。
【0057】
無機繊維は、特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、ムライト繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種から構成されていることが望ましく、アルミナ繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより望ましい。
無機繊維がアルミナ繊維である場合には、耐熱性に優れているので、高温に晒された場合であっても、変質等が発生することがないため、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材として特に好適である。
また、無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製する際に、飛散した無機繊維を吸入等しても、生体内で溶解するため、作業員の健康に害を及ぼすことがない。
【0058】
アルミナ繊維には、アルミナ以外に、例えば、カルシア、マグネシア、ジルコニア等の添
加剤が含まれていてもよい。
アルミナシリカ繊維の組成比としては、重量比でAl:SiO=60:40〜80:20であることが好ましく、Al:SiO=70:30〜74:26であることがより好ましい。
また、アルミナ繊維のムライト結晶化率は繊維100重量部に対して5重量部以下が好ましいが、さらには3重量部以下が好ましく、1重量部以下が最も好ましい。ムライト結晶化率は蛍光X線装置にて測定でき、5重量部以下であると繊維は脆くなく、弾力性を有するため、保持力及び緩衝性に優れた無機質繊維集合体となる。
【0059】
無機繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、望ましくは0.05〜150mm、より望ましくは0.35〜100mmである。
無機繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、マットの強度及び柔軟性の観点から、望ましくは1〜20μm、より望ましくは1〜10μmである。
無機質繊維集合体は湿式法で作られることが望ましく、その際の望ましい平均繊維長は0.05〜5mmであり、さらには0.5〜3mmが望ましい。湿式法により、容易に広範囲の坪量の無機質繊維集合体を製造することが可能であり、特に坪量は限定されないが、望ましい坪量は2000g/m〜6000g/mであり、より望ましくは3000〜5000g/mである。
【0060】
無機質繊維集合体は、無機繊維の他に、有機バインダ及び無機バインダを含んでいても良い。無機質繊維集合体が有機バインダ及び無機バインダを含んでいると、無機質繊維集合体を構成する無機繊維同士の絡み合いが強固となり、面圧の高い無機質繊維集合体となる。
【0061】
有機バインダとしては、特に限定されず、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0062】
無機質繊維集合体に含まれる有機バインダは、固形分として、無機繊維100重量部に対して0.1〜15重量部含まれることが望ましく、1〜12重量部含まれることがより望ましく、3〜10重量部含まれることがさらに望ましい。
【0063】
無機バインダとしては、特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
【0064】
無機質繊維集合体に含まれる無機バインダは、固形分として、無機繊維100重量部に対して0.1〜10重量部含まれることが望ましく、0.1〜3重量部含まれることがより望ましく、0.1〜2重量部含まれることがさらに望ましい。
【0065】
無機質繊維集合体の厚さは、15mm以上であることが望ましく、20mm以上であることがより望ましく、25mm以上であることがさらに望ましい。また、50mm以下であることが望ましく、40mm以下であることがより望ましい。厚さが上記範囲内である無機質繊維集合体は、本発明の裁断方法によって、無機質繊維集合体にダメージを与えずに裁断することができるため、高い面圧を有するマットとなる。
【0066】
有機化合物からなる発泡性緩衝材を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0067】
本発明のマットは、上述した本発明のシート状部材の裁断方法により、シート状部材を裁断することにより得られる。
図7は、本発明のシート状部材の裁断方法により得られるマットの一例を模式的に示した斜視図である。
図7に示すマット200は、所定の長手方向の長さ(以下、単に全長ともいう。図7中、両矢印Lで示す)、幅(図7中、両矢印Wで示す)及び厚さ(図7中、両矢印Tで示す)を有している。マット200は平面視略矩形形状であって、凸部201aが形成された端面201と、凹部202aが形成された端面202と、長手方向の側面である第1の側面203と、第1の側面203の反対側の側面である第2の側面204とを備えている。長手方向の側面とは、マット200を平面視した際に、矩形の長辺を形成する部分に位置する面のことである。凸部201a及び凹部202aは、互いに対応しており、マット200を円筒形状の物品に巻き付けた際には、ちょうど互いに嵌合するような形状である。
【0068】
本発明の排ガス浄化装置は、ケーシングと、上記ケーシングに収容された排ガス処理体と、上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、上記排ガス処理体及び上記ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は、本発明のシート状部材の裁断方法により裁断された平面視略矩形形状のマットであることを特徴とする。
図8は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図8に示すように、本発明の排ガス浄化装置300は、ケーシング310と、ケーシング310に収容された排ガス処理体320と、排ガス処理体320及びケーシング310の間に配設されたマット200とを備えている。
排ガス処理体320は、多数のセル325がセル壁326を隔てて長手方向に併設された柱状のものであり、セル325のいずれか一方の端部は、封止材328によって封止されている。なお、ケーシング310の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
【0069】
上述した構成を有する排ガス浄化装置300を排ガスが通過する場合について、図8を参照して以下に説明する。
図8に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置300に流入した排ガス(図8中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)320の排ガス流入側端面320aに開口した一のセル325に流入し、セル325を隔てるセル壁326を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁326で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス処理側端面320bに開口した他のセル325から流出し、外部に排出される。
【0070】
次に、本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシング及び排ガス処理体(ハニカムフィルタ)について説明する。
なお、排ガス浄化装置を構成するマットの構成については、本発明のマットとしてすでに説明しているので省略する。
【0071】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0072】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状や、断面形状が略楕円型形状の筒形、断面形状が略多角形形状の筒形等を好適に用いることができる。
【0073】
続いて、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体について説明する。
【0074】
図9は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示した斜視図である。
図9に示す排ガス処理体320は、多数のセル325がセル壁326を隔てて長手方向に併設される柱状のセラミック質からなるハニカム構造体である。また、セル325のいずれか一方の端部は、封止材328で封止されている。また、ハニカム構造体の外周には、ハニカム構造体の外周部を補強したり、形状を整えたり、ハニカム構造体の断熱性を向上させたりする目的で、外周コート層327が設けられている。
【0075】
セル325のいずれか一方の端部が封止されている場合、排ガス処理体320の一方の端部からみたときに、端部が封止されたセルと封止されていないセルとが交互に配置されていることが望ましい。
【0076】
排ガス処理体320を長手方向に垂直な方向に切断した断面形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形でもよく、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形であってもよい。
【0077】
排ガス処理体320を構成するセル325の断面形状は、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形でもよく、また、略円形、略楕円形であってもよい。また、排ガス処理体320は、複数の断面形状のセルが組み合わされたものであってもよい。
【0078】
排ガス処理体320を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。これらのうち、特に、炭化ケイ素質又は窒化ケイ素質等の非酸化物多孔質焼成体であることが望ましい。
これら多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、本発明の排ガス浄化装置では、排ガス処理体の側面の周囲にはマットが介在し、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体にクラック等が発生するのを防止することができる。特に、本発明のマットは既に説明したように、保持力に優れており、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
【0079】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、この中では、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いる事もできる。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0080】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含むペーストを介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
【0081】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【0082】
以下に、本発明のシート状部材の裁断方法の作用について説明する。
(1)本発明のシート状部材の裁断方法では、第1切断工程においてシート状部材を幅方向に完全に切断しないまま、第2切断工程を行う。そのため、第1切断工程を終えたシート状部材がベルトコンベア上を移動する際の振動等によりたわんだり、ずれたりすることがない。そのため、第2切断工程において正確な寸法で裁断を行うことができ、マットの寸法のずれを抑制することができる。
(2)本発明のマットは、第1切断工程及び第2切断工程においてマットの構造破壊の原因となる圧縮行程などを受けていないため、マットの構造が破壊されておらず、高い面圧や緩衝性を発揮することができる。
(3)本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体とケーシングの間に本発明のシート状部材の裁断方法により裁断された平面視略矩形形状のマットが配設されているため、排ガス処理体の保持性能に優れている。
【0083】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
(製造例1)
(a)無機質繊維集合体製造工程
三菱樹脂(株)製のアルミナシリカ繊維67.5gを、その繊維長が0.1〜5.0mmとなるように、ミキサーを用いて湿式解繊した。
上記解繊繊維に水18Lを加え、攪拌機を用いて攪拌した。続いて、有機バインダとしてLx−852(日本ゼオン社製)を4.725gと、無機バインダとしてDISPERAL P2(サソールジャパン株式会社製)を0.81g加え、さらに撹拌した。その後、凝集剤としてPERCOL47(BASF社製)0.5重量%溶液を22.5g加えて攪拌することにより、混合液を調製した。
次に、底面にろ過用のメッシュ(メッシュ寸法:30メッシュ)が形成された成形器に混合液を流し込んだ後、混合液中の水をメッシュを介して脱水することにより、150mm×150mmの大きさの原料シートを作製した。
続いて、得られた原料シートを成形器から取り出し、プレス機を用いて厚さが16.5mmとなるように圧縮すると同時に、150℃で加熱乾燥させることにより、抄造シートを作製した。
抄造シートを、加熱炉を用いて600℃で1時間加熱して有機分を除去することにより、無機質繊維集合体を製造した。
製造した無機質繊維集合体は、坪量が3000g/mであり、厚さは16.5mmであった。
【0085】
(製造例2)
製造例1におけるアルミナシリカ繊維、有機バインダ、無機バインダ、凝集剤の添加量を1.5倍とし、坪量が4500g/m、厚さが24.8mmとなるよう変更したほかは、製造例1と同様の方法で製造例2に係る無機質繊維集合体を製造した。
【0086】
(実施例1)
製造例1に係る無機質繊維集合体を、無機質繊維集合体を圧縮することなく、50mm×50mmの正方形に裁断した。裁断方法としては、まず、板刃を用いて第1切断部を形成し、続いて、ギロチン刃により上記第1切断部に対して垂直な方向に第2切断部を形成することにより、実施例1に係るマットを製造した。板刃及びギロチン刃は炭素鋼から構成されており、刃部の角度は両面ともに20°であった。
【0087】
(実施例2)
製造例1に係る無機質繊維集合体に代わり、製造例2に係る無機質繊維集合体を用いたほかは、実施例1と同様の方法で実施例2に係るマットを製造した。
【0088】
(比較例1)
厚さが18mmであるベニヤ板に対して、一辺が50mmの正方形状に厚さ1mmの板状の炭素鋼を埋め込んだ。続いて、板状金属が埋め込まれているベニヤ板の表面に厚さ35mmのN−145ゴムスポンジ((株)イノアックコーポレーション製)を添着した打ち抜き型を製造した。打ち抜き型から突出する板状金属の長さは30mmで、刃部の角度は、両面ともに20°であった。上記打ち抜き型を用いて製造例1に係る無機質繊維集合体を打ち抜くことで比較例1に係るマットを製造した。
【0089】
(比較例2)
比較例1で用いた打ち抜き型を用いて、製造例2に係る無機質繊維集合体を打ち抜くことで、比較例2に係るマットを製造した。
【0090】
(面圧の測定)
万能試験機で圧縮復元サイクル試験を行うため、実施例1〜2及び比較例1〜2に係るマットを試験機にセッティングし、室温状態で、1mm/minの速度でマットの嵩密度(GBD)が所定の値(0.2g/cm、0.25g/cm、0.3g/cm)となるまで圧縮し、このときの荷重を各GBDにおける面圧として測定した。
なお、評価サンプルの嵩密度(GBD:Gap Bulk Density)は、「嵩密度=評価サンプルの重量/(評価サンプルの面積×評価サンプルの厚さ)」で求められる値である。
【0091】
実施例1に係るマットの各GBD(0.2g/cm、0.25g/cm、0.3g/cm)における面圧を100%とした場合に、比較例1に係るマットの各GBDにおける面圧は、それぞれ、66%、82%、92%であった。
また、実施例2に係るマットの各GBDにおける面圧を100%とした場合に、比較例2に係るマットの各GBDにおける面圧は、それぞれ、48%、65%、83%であった。
このことから、無機質繊維集合体は裁断時に圧縮されることにより面圧が低下してしまうこと、及び、本発明のシート状部材の裁断方法を用いることで、面圧の高いマットを製造できることがわかった。
【符号の説明】
【0092】
1 ベルトコンベア
10 第1切断部材
20 第2切断部材
100 シート状部材
110 第1切断部
120 第2切断部
200 マット
300 排ガス浄化装置
310 ケーシング
320 排ガス処理体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9