特許第6363371号(P6363371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363371
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04007 20160101AFI20180712BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20180712BHJP
   H01M 8/06 20160101ALI20180712BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20180712BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20180712BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01M8/04007
   H01M8/04701
   H01M8/06
   H01M8/04 N
   H01M8/04858
   H01M8/12
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-62664(P2014-62664)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-185472(P2015-185472A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】堀内 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 成門
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 勝己
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−230888(JP,A)
【文献】 特開2009−067654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質ガスと酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、
前記燃料電池から導出されるアノードオフガスを燃焼させる燃焼部と、
前記燃焼部によって加熱され、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成する蒸発部と、
前記水蒸気と改質用原料とから前記改質ガスを生成する改質部と、
前記燃料電池の発電する電力を少なくとも制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムであって、
前記蒸発部は、底面に前記改質水が溜まっている水溜り部と、温度が高い高温部と、前記改質水が前記水溜り部から前記高温部に流動する流路と、を備え、
前記燃料電池システムは、前記流路上に前記高温部から所定距離を隔てて配置され、その配置された部位の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記温度センサによって検出される温度が、前記改質水の沸点より高い第一温度から、前記第一温度より低く且つ前記改質水の沸点以上である第二温度まで低下したときに、前記改質水の突沸を、事前に検知し、
前記突沸を事前に検知した場合に、前記燃料電池の燃料利用率を低下させる燃料電池システム。
【請求項2】
前記蒸発部と前記改質部とは隣接して配設され、
前記高温部は、前記改質部に隣接する部位である請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記突沸を事前に検知した場合に、前記燃料電池の発電する電力の減少または前記改質ガスの前記燃料電池への供給量の増加を行う請求項1または請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記燃料電池の発電する電力の減少を行う場合に、前記温度センサによって検出される温度が前記第二温度まで低下したときから前記突沸が発生するまでの時間よりも十分短い時間にて、前記燃料電池の発電する電力の減少を行う請求項記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料改質装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。燃料改質装置100は、特許文献1の図1に示すように、水タンク800に貯められた改質水が、蒸発器700,蒸発器610,蒸発器510,過熱蒸気発生部400の順に段階的に加熱されて改質器200に供給される。改質水は、各蒸発器700,610,510にて沸騰状態になるまで加熱され、過熱蒸気発生部400にて過熱蒸気になるまで加熱される。通常の場合、蒸発器510と過熱蒸気発生部400との間に配置されている温度計430が検出する改質水の温度は、特許文献1の図3に示すように、100℃前後を推移する。
【0003】
しかし、各蒸発器700,610,510に予熱が存在する状態で燃料改質装置100を起動するホットスタートの場合には、改質水が各蒸発器700,610,510の予熱によって急激に加熱される。これにより、改質水が突然沸騰する突沸が発生し、改質器200に供給される水蒸気の量が不安定になる。このような状態で原燃料の改質が改質器200にて行われると、改質水と原燃料との比率を表すS/C(スチーム/カーボン)比が低下し、改質ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が大幅に上昇する場合がある。一酸化炭素の濃度の高い改質ガスが燃料電池の燃料極に供給されると、燃料極の触媒機能を低下させる恐れがある。そこで、燃料改質装置100は、ホットスタートの場合には、特許文献1の図4に示すように、温度計430によって検出される温度が90℃から120℃の間を推移する状態になった後に、改質器200への原燃料の供給を開始する。これにより、燃料改質装置100は、改質水の突沸を抑制した状態にて改質器200にて原燃料の改質を行っている。
【0004】
また、燃料電池発電装置の一形式として、特許文献2に示されているものが知られている。燃料電池発電装置1は、特許文献2の図1に示すように、燃料電池スタック3、燃料改質器4、制御部5および水蒸気発生器10を備えている。制御部5は、燃料電池スタック3の出力に応じて、燃料改質器4に供給する炭素水素系ガスの流量および水蒸気発生器10に供給する水の流量を制御している。ここで、燃料電池スタック3の出力を変化させる場合に、水蒸気発生器10に供給する水の流量を急激に増加させたときは、水蒸気発生器10にて水が突然沸騰する突沸が発生し、水蒸気量が急激に増える可能性がある。水蒸気量が炭素水素系ガス量に対して急激に増えると、燃料改質器4によって生成される燃料ガスの炭素水素濃度が急激に減少するため、燃料電池スタック3の出力が燃料不足により急激に低下する。そして、最悪の場合、燃料電池スタック3を構成する発電セルが発熱した後に破損する恐れが生じる。
【0005】
そこで、制御部5は、燃料電池スタック3の出力を変化させる場合、水蒸気発生器10での水の突沸を抑制するために、水蒸気の発生が緩やかに変化するように制御している。具体的には、制御部5は、特許文献2の図3に示すように、水蒸気発生器10の出口温度の変化率が所定の範囲内となるように水流量を制御するか、あるいは、燃料ガス流量の増減に対して水流量の増減が所定の時間遅れるように制御するか、あるいは、燃料ガス流量の増減に対して水流量が緩やかに増減するように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−67654号公報
【特許文献2】特開2008−243771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の燃料改質装置100は、過熱蒸気発生部400に供給される水の温度が一定範囲内である必要があるため、水温によらずに蒸発部にて水蒸気が生成される燃料電池システムに適用できない。また、上述した特許文献2に記載の燃料電池発電装置1は、燃料電池スタック3の出力を変化させる場合における突沸を抑制するものであり、燃料電池スタック3の出力が一定の場合に発生する突沸を抑制するものではない。突沸を抑制できない場合は、上述したように、燃料極の触媒機能を低下させる恐れや、発電セルが破損する恐れが生じる。さらに、突沸の発生により燃料電池スタックの発電量が変動した場合には、燃料電池スタック内部の局所的な燃料の欠乏が生じ、燃料電池スタックの耐久性が劣化する恐れがある。よって、突沸の発生は、燃料電池システムの信頼性に影響を及ぼす。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、突沸を抑制することにより、信頼性をより向上することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る燃料電池システムは、改質ガスと酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、燃料電池から導出されるアノードオフガスを燃焼させる燃焼部と、燃焼部によって加熱され、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成する蒸発部と、水蒸気と改質用原料とから改質ガスを生成する改質部と、燃料電池の発電する電力を少なくとも制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムであって、蒸発部は、底面に改質水が溜まっている水溜り部と、温度が高い高温部と、改質水が水溜り部から高温部に流動する流路と、を備え、燃料電池システムは、流路上に高温部から所定距離を隔てて配置され、その配置された部位の温度を検出する温度センサをさらに備え、制御装置は、温度センサによって検出される温度が、改質水の沸点より高い第一温度から、第一温度より低く且つ改質水の沸点以上である第二温度まで低下したときに、改質水の突沸を、事前に検知し、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池の燃料利用率を低下させる。
これによれば、蒸発部においては、通常時において、供給された改質水が蒸発することにより温度センサが水蒸気の温度を検出するため、温度センサによって検出される温度が改質水の沸点よりも高い第一温度に達する。その後、例えば、燃焼部の燃焼状態が変化して蒸発部への供給熱量が減少する等の要因により蒸発部における改質水の蒸発量が減少する場合には、蒸発部内の改質水の量が増加することにより、改質水が水溜り部から高温部に流動する。このとき、改質水が高温部に接触した場合には、改質水が急激に加熱されるため、改質水が突然沸騰する突沸が発生する。
ここで、温度センサは、改質水が水溜り部から高温部に流動する流路上に高温部から所定距離を隔てて配置されている。よって、流路を流れる改質水は、高温部に接触する前に温度センサに接触する。すなわち、温度センサが改質水の温度を検出するため、温度センサによって検出される温度は、改質水の沸点以下に低下する。よって、制御装置は、温度センサによって検出される温度が第一温度に達した後、第一温度より低く且つ改質水の沸点以上である第二温度まで低下したときに、改質水が高温部に向かって流動中であることを、改質水が高温部に到達する前に判定することができる。したがって、改質水が高温部に接触して急激に加熱されることにより突然沸騰する突沸を、事前に確実に検知することができる。
また、制御装置は、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池の燃料利用率(すなわち改質ガスの利用率)を低下させるため、発電に利用されなかった燃料(アノードオフガス)すなわち燃焼部にて燃焼される可燃ガスを増加させることができる。これにより、燃焼部の蒸発部への供給熱量を増加させることができるため、蒸発部における改質水の蒸発量が増加する。よって、蒸発部内の改質水の量が減少するため、改質水の高温部への流動が止まる。これにより、改質水と高温部との接触が避けられるため、改質水の突沸を回避することができる。したがって、改質水の突沸が抑制されることにより、燃料電池システムの信頼性をより向上することができる。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る燃料電池システムにおいて、蒸発部と改質部とは隣接して配設され、高温部は、改質部に隣接する部位である。
これによれば、蒸発部における改質部に隣接する部位は、燃焼部からの供給熱量に加え、改質部にて発生する熱量により、蒸発部の他の部位に比べて高温になっている。よって、蒸発部における改質部に隣接する部位は、蒸発部の他の部位に比べて、改質水の突沸が発生し易い。ここで、温度センサは、改質水が流動する流路上に、蒸発部における改質部に隣接する部位から所定距離を隔てて配置されている。よって、制御装置は、温度センサによって検出される温度が第一温度までに達した後、第二温度まで低下したときに、改質水が蒸発部における改質部に隣接する部位に流動中であると判定することができる。したがって、蒸発部における改質水の突沸が発生し易い改質部に隣接する部位にて発生する突沸を、事前に確実に検知することができる。
【0012】
また、請求項に係る発明は、請求項1または請求項2に係る燃料電池システムにおいて、制御装置は、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池の発電する電力の減少または改質ガスの燃料電池への供給量の増加を行う。
これによれば、制御装置は、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池の発電する電力の減少または改質ガスの燃料電池への供給量の増加を行うため、燃料電池の燃料利用率をより確実に低下させることができる。よって、改質水の突沸がより確実に抑制されるため、燃料電池システムの信頼性をより向上することができる。
【0013】
また、請求項に係る発明は、請求項に係る燃料電池システムにおいて、制御装置は、燃料電池の発電する電力の減少を行う場合に、温度センサによって検出される温度が第二温度まで低下したときから突沸が発生するまでの時間よりも十分短い時間にて、燃料電池の発電する電力の減少を行う。
これによれば、制御装置は、突沸を事前に検知した場合に、温度センサによって検出される温度が第二温度まで低下したときから突沸が発生するまでの時間よりも十分短い時間にて、燃料電池の発電する電力の減少を行うため、より短時間にて燃料電池の燃料利用率を低下させることができる。これにより、蒸発部の改質水の量がより短時間にて減少するため、改質水の高温部への流動がより短時間にて停止する。よって、改質水と高温部との接触がより確実に回避される。したがって、改質水の突沸がより確実に抑制されるため、燃料電池システムの信頼性をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における燃料電池システムの概要図である。
図2図1に示す蒸発部および改質部の側断面およびその近傍を示す図である。
図3図1に示す制御装置にて実行される制御プログラムのフローチャートである。
図4】本発明を適用しないことにより意図的に突沸を発生させる場合における図1に示す燃料電池システムの作動を示すタイムチャートである。上段から順に、改質水と改質用原料との比率を表すS/C(スチーム/カーボン)比、蒸発部内圧、温度センサによって検出される温度および燃料電池の出力電圧を示している。
図5図1に示す燃料電池における燃料利用率と発電する電力との関係を示す図である。
図6図3のフローチャートによる作動を示すタイムチャートである。上段から順に、温度センサによって検出される温度、燃料電池の発電する電力および燃料電池の出力電圧を示している。
図7図1に示す蒸発部の第二の変形例を示す側断面図である。
図8図1に示す蒸発部の第三の変形例を示す側断面図である。
図9図1に示す蒸発部の第四の変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による燃料電池システムの一実施形態について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは、発電ユニット10および貯湯槽21を備えている。
発電ユニット10は、燃料電池モジュール11(30)、熱交換器12、インバータ装置13、水タンク14および制御装置15を備えている。
【0016】
燃料電池モジュール11は、後述するように燃料電池34aを少なくとも含んで構成されるものである。燃料電池モジュール11は、改質用原料、改質水およびカソードエアが供給されている。具体的には、燃料電池モジュール11は、一端が供給源Gsに接続されて改質用原料が供給される改質用原料供給管11aの他端が接続されている。改質用原料供給管11aは、原料ポンプ11a1が設けられている。さらに、燃料電池モジュール11は、一端が水タンク14に接続されて改質水が供給される水供給管11bの他端が接続されている。水供給管11bは、改質水ポンプ11b1が設けられている。さらに、燃料電池モジュール11は、一端がカソードエアブロワ11c1に接続されてカソードエアが供給されるカソードエア供給管11cの他端が接続されている。
【0017】
熱交換器12は、燃料電池モジュール11から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され、燃焼排ガスと貯湯水とが熱交換する熱交換器である。具体的には、貯湯槽21は、貯湯水を貯湯するものであり、貯湯水が循環する(図にて矢印の方向に循環する)貯湯水循環ライン22が接続されている。貯湯水循環ライン22上には、下端から上端に向かって順番に貯湯水循環ポンプ22aおよび熱交換器12が配設されている。熱交換器12は、燃料電池モジュール11からの排気管11dが接続(貫設)されている。熱交換器12は、水タンク14に接続されている凝縮水供給管12aが接続されている。
【0018】
熱交換器12において、燃料電池モジュール11からの燃焼排ガスは、排気管11dを通って熱交換器12内に導入され、貯湯水との間で熱交換が行われ凝縮されるとともに冷却される。凝縮後の燃焼排ガスは排気管11dを通って外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管12aを通って水タンク14に供給される。なお、水タンク14は、凝縮水をイオン交換樹脂によって純水化するようになっている。
上述した熱交換器12、貯湯槽21および貯湯水循環ライン22から、排熱回収システム20が構成されている。排熱回収システム20は、燃料電池モジュール11の排熱を貯湯水に回収して蓄える。
【0019】
さらに、インバータ装置13は、燃料電池34aから出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して、交流の系統電源16aおよび外部電力負荷16c(例えば電化製品)に接続されている電源ライン16bに出力する。また、インバータ装置13は、系統電源16aからの交流電圧を電源ライン16bを介して入力し所定の直流電圧に変換して補機(各ポンプ、ブロワなど)や制御装置15に出力する。制御装置15は、補機を駆動して燃料電池システムの運転を制御する。すなわち、制御装置15は、少なくとも燃料電池34aの発電する電力(以下、発電電力とする。)Wを制御するものである。
【0020】
燃料電池モジュール30は、固体酸化物形の燃料電池モジュールである。燃料電池モジュール30は、ハウジング31、蒸発部32、改質部33、燃料電池装置34および燃焼部35である燃焼空間Rを備えている。蒸発部32および改質部33は、燃料電池装置34の上方に位置するように配設されている。また、燃焼空間R(燃焼部35)は、蒸発部32および改質部33と燃料電池装置34との間に配設されている。なお、本明細書においては説明の便宜上、図2における上側および下側をそれぞれ燃料電池モジュール30の上方および下方とし、同じく左側および右側をそれぞれ燃料電池モジュール30の左方および右方として説明する。また、図2には、各方向を示す矢印を示している。
【0021】
ハウジング31は、断面方形状の有底箱状に形成され、図2に示すように、ハウジング31を左右に仕切る板状の第一仕切部材31aを備えている。第一仕切部材31aには、左右方向に貫通する複数の貫通孔31a1が全体に形成されている。ハウジング31および第一仕切部材31aは金属製である。金属は、例えば炭素鋼または合金鋼である。第一仕切部材31aは、例えばパンチングメタルである。そして、蒸発部32は、ハウジング31における第一仕切部材31aの左側に形成されている。また、改質部33は、ハウジング31における第一仕切部材31aの右側に形成されている。すなわち、蒸発部32と改質部33とは、第一仕切部材31aを介して、隣接して配設されている。
【0022】
蒸発部32は、燃焼部35によって加熱され、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成するものである。蒸発部32は、図2に示すように、蒸発部ハウジング32a、第二仕切部材32bおよび複数の球体32cを備えている。
蒸発部ハウジング32aは、ハウジング31における第一仕切部材31aより左側の部位および第一仕切部材31aによって形成されている。蒸発部ハウジング32aの底面32a1は、水平な平面状に形成されている。第二仕切部材32bは、蒸発部ハウジング32aを上下に仕切る金属製の板である。金属は、例えば炭素鋼または合金鋼である。第二仕切部材32bには、上下方向に貫通する複数の貫通孔32b1が全体に形成されている。第二仕切部材32bは、例えばパンチングメタルである。球体32cは、セラミック製の球体である。球体32cを形成するセラミックは、例えばアルミナである。球体32cは、蒸発部ハウジング32aにおける第二仕切部材32bより下側の空間に充填されている。また、蒸発部ハウジング32aにおける第二仕切部材32bより上側の空間には、改質用原料供給管11aの他端および水供給管11bの他端が接続されている。水供給管11bの他端は、蒸発部ハウジング32a内の左右方向における略中央に位置するように配設されている。
【0023】
また、蒸発部32は、水溜り部32dおよび高温部32eをさらに有している。
水溜り部32dは、底面32a1に改質水が溜まっている部位である。具体的には、水溜り部32dは、底面32a1において水供給管11bの他端の下方における所定範囲内に位置する。所定範囲は、ハウジング31の側壁および第一仕切部材31aから空間をおいて形成された範囲である。ここで、水溜り部32dが形成される過程について説明する。蒸発部32は、後述する燃焼ガスにより加熱されることにより、蒸発部ハウジング32aおよび球体32cの温度が高くなっている。また、水供給管11bを介して供給される改質水が、水供給管11bの他端から垂れて、第二仕切部材32bの貫通孔32b1を通過し、球体32cの表面に接触する。そして、改質水が球体32cの表面にて加熱されることにより、改質水の一部が蒸発するため、水蒸気が生成される。さらに、蒸発していない一部の改質水が、蒸発部ハウジング32aの底面32a1に到達し、底面32a1にて加熱される。これにより、底面32a1に到達した改質水の一部が蒸発するため、水蒸気がさらに生成される。そして、底面32a1にて蒸発していない改質水によって、水溜り部32dが形成される。
【0024】
水溜り部32dを形成する改質水は、底面32a1に到達するまでに加熱されて沸騰している。よって、水溜り部32dを形成する改質水の温度は、沸点(100℃)に達している。また、水溜り32dを形成する改質水の量は、改質水の供給量と蒸発量との差によって定まる。また、水溜り32dを形成する改質水の量は、燃料電池システムの運転中における通常時は、所定量に保たれている。すなわち、水溜り部32dが、蒸発部ハウジング32aの側壁すなわちハウジング31の側壁および第一仕切部材31aに接触しない量に保たれている。
【0025】
高温部32eは、蒸発部32における温度が高い部位である。ここで、蒸発部32の水溜り部32dに接触している部位は、燃焼部35から供給された熱量が水溜り部32dを形成する改質水に奪われる。よって、蒸発部32の水溜り部32dに接触している部位の温度は、水溜り部32dを形成する改質水の温度と同じ、すなわち改質水の沸点(100℃)となっている。一方、蒸発部32の水溜り部32dに接触していない部位は、燃焼部35から供給された熱量が改質水に奪われないため、改質水の沸点よりも高い。また、第一仕切部材31aは、燃焼部35から供給される熱量に加え、後述する改質部33が発生する熱量によりさらに加熱されている。よって、第一仕切部材31aの温度が蒸発部32の温度のうち最も高温(およそ500℃)になっている。このように、高温部32eは、本実施形態においては、第一仕切部材31aである。また、蒸発部32と改質部33とは、第一仕切部材31aを介して、隣接して配設されているため、高温部32eは、改質部33に隣接する部位である。
【0026】
温度センサ37は、流路32f上に高温部32eから所定距離Lを隔てて配置され、その配置された部位の温度を検出するものである。流路32fは、図2に破線にて示すように、改質水が水溜り部32dから高温部32eに流れる路である。所定距離Lは、高温部32eと水溜り部32dとの距離よりも短い距離である。すなわち、温度センサ37は、水溜り部32dと高温部32eとの間に配置されている。温度センサ37の温度を検出する検出部は、底面32a1および球体32cと接触しないように配置されている。また、温度センサ37と制御装置15とは、電気的に接続されている。温度センサ37によって検出された信号は、制御装置15に送信される。
【0027】
また、蒸発部32は、改質用原料供給管11aを介して供給された改質用原料を予熱するものである。そして、蒸発部32は、改質水を蒸発させて生成された水蒸気(改質用水蒸気)と予熱された改質用原料を混合して貫通孔31a1を介して改質部33へ導出するものである。改質用原料としては天然ガス、LPGなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料があり、本実施形態においては天然ガスにて説明する。
【0028】
改質部33は、水蒸気(改質用水蒸気)と改質用原料とから改質ガスを生成するものである。改質部33は、改質部ハウジング33aおよび触媒33bを備えている。改質部ハウジング33aは、ハウジング31における第一仕切部材31aより右側の部位および第一仕切部材31aによって形成されている。触媒33bは、例えば、RuまたはNi系の触媒であり、改質部ハウジング33a内に充填されている。ここで、改質部33は、後述する燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部32から供給された混合ガス(改質用原料、改質用水蒸気)から改質ガスを生成する。具体的には、混合ガスが触媒33bによって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素ガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素ガスと二酸化炭素とに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。これら生成された改質ガス(アノードガス)は改質ガス供給管33cを介して燃料電池装置34に導出されるようになっている。アノードガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、一酸化炭素シフト反応は発熱反応である。この改質部33における一酸化炭素シフト反応にて発生する熱によっても、第一仕切部材31aが加熱されている。
【0029】
燃料電池装置34は、図1に示すように、燃料電池34aおよびマニホールド34bを備えている。燃料電池34aは、改質ガス(アノードガス)と酸化剤ガス(カソードガス)とにより発電するものである。酸化剤ガスは、空気である。燃料電池34aは、燃料極、空気極(酸化剤極)、及び両極の間に介装された電解質からなる複数のセル34a1が図1における左右方向に沿って積層されて構成されている。本実施形態の燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池34aの燃料極には、燃料として水素、一酸化炭素、メタンガスなどが供給される。動作温度は400〜1000℃程度である。
【0030】
セル34a1の燃料極側には、燃料である改質ガスが流通する燃料流路34a2が形成されている。セル34a1の空気極側には、酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する空気流路34a3が形成されている。
【0031】
燃料電池34aは、マニホールド34b上に設けられている。マニホールド34bには、改質部33からの改質ガスが改質ガス供給管33cを介して供給される。燃料流路34a2は、その下端(一端)がマニホールド34bの燃料導出口に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され上端から導出されるようになっている。一方、カソードエアは、カソードエアブロワ11c1によってカソードエア供給管11cを介して供給され、空気流路34a3の下端から導入され上端から導出されるようになっている。
【0032】
燃料電池34aにおいては、燃料極に供給された改質ガスと空気極に供給された酸化剤ガスによって発電が行われる。すなわち、燃料極では、下記化1及び化2に示す反応が生じ、空気極では、下記化3に示す反応が生じている。すなわち、空気極で生成した酸化物イオン(O2−)が、電解質を透過し、燃料極で水素と反応することにより電気エネルギーを発生させている。したがって、燃料流路34a2及び空気流路34a3からは、発電に使用されなかった改質ガス及び酸化剤ガス(空気)が導出する。
(化1)
+O2−→HO+2e
(化2)
CO+O2−→CO+2e
(化3)
1/2O+2e→O2−
【0033】
そして、燃料流路34a2及び空気流路34a3から導出した、発電に使用されなかった改質ガス(アノードオフガス)は、燃焼空間Rにて、発電に使用されなかった酸化剤ガス(カソードオフガス)によって燃焼され、その燃焼ガス(火炎36)によって蒸発部32及び改質部33が加熱される。さらに、燃焼ガスは、燃料電池モジュール30内を動作温度に加熱している。このように、燃焼空間Rが、燃料電池34aからのアノードオフガスと燃料電池34aからのカソードオフガスとを燃焼して蒸発部32および改質部33を加熱する燃焼部35である。
【0034】
燃焼部35(燃焼空間R)は、可燃性ガスと酸化剤ガスとを燃焼するものである。可燃性ガスは、燃えるガスであり、本実施形態では改質用燃料、アノードオフガス、一酸化炭素などである。すなわち、燃焼部35は、燃料電池34aから導出されるアノードオフガスを燃焼させるものである。そして、燃焼部35は、アノードオフガスを燃焼させ、燃焼排ガスを発生する。その燃焼排ガスは排気管11dを介して燃料電池モジュール30から排気される。
【0035】
次に、上述した燃料電池システムの系統電源16aから送電がある場合の基本的動作の一例について説明する。制御装置15は、スタートスイッチ(図示なし)が押されて運転が開始される場合、または計画運転にしたがって運転が開始される場合には、起動運転を開始する。
【0036】
起動運転が開始されるときは、制御装置15は、補機を作動させる。具体的には、制御装置15は、ポンプ11a1,11b1を作動させ、蒸発部32に改質用原料および改質水の供給を開始する。上述したように、蒸発部32では混合ガスが生成されて、混合ガスは改質部33に供給される。改質部33では、供給された混合ガスから改質ガスが生成されて、改質ガスが燃料電池34aに供給される。そして、燃焼部35において、燃料電池34aから導出された改質用原料および改質ガスが燃焼される。改質部33が燃料電池34aの動作温度(例えば400℃)になれば、起動運転が終了し、発電運転を開始する。
【0037】
発電運転中では、制御装置15は、燃料電池34aの発電電力Wが外部電力負荷16cの消費電力となるように、ポンプ11a1,11b1およびブロワ11c1を作動させて改質用原料、改質水および空気の供給量を制御するとともに、インバータ装置13を制御する(負荷追従運転)。燃料電池34aの発電する電力より外部電力負荷16cの消費電力が上回った場合、その不足電力が系統電源16aから受電して補われるようになっている。
【0038】
また、発電運転中は、熱交換器12において、燃料電池34aおよび改質部33の少なくともいずれか一方からの排熱を含む燃料電池モジュール11からの排気ガスが冷却されるとともに凝縮されて、その排熱が貯湯水に回収される。これにより貯湯水が加熱され、加熱された貯湯水は貯湯槽21に貯められる。また、凝縮された凝縮水は水タンク14に貯められ、改質水として蒸発部32に供給される。
【0039】
このような発電運転中に、ストップスイッチ(図示なし)が押されて発電運転が停止される場合、または運転計画にしたがって運転が停止される場合には、制御装置15は、燃料電池システムの停止運転(停止処理)を実施する。制御装置15は、改質用原料および改質水の蒸発部32への供給を停止し、改質ガスおよび空気の燃料電池34aへの供給を停止する。残原料による燃料電池34aの発電が終了すれば、停止運転は終了する。
【0040】
このような停止運転が終了すると、燃料電池システムは待機状態(待機時)となる。待機時は、燃料電池システムの発電停止状態(すなわち、起動運転、発電運転、停止運転のいずれの運転中でない状態である。)のことであり、発電指示(スタートスイッチのオンなど)を待っている状態のことである。すなわち、停止運転状態終了時点の状態が維持される。
【0041】
次に、改質水が突然沸騰する突沸の事前検知および突沸の抑制について、図3に示すフローチャートに沿って説明する。燃料電池システムが発電運転中である場合について説明する。なお、このとき、蒸発部32内は水蒸気で満たされており、かつ、温度センサ37と水溜り部32dとが接触していない。よって、温度センサ37は、水蒸気の温度を検出する。本実施形態において、発電運転中における水蒸気の温度は、およそ150℃〜300℃を推移する。また、燃料電池システムが負荷追従運転を行っているため、燃料電池34aの発電電力Wが外部電力負荷16cの消費電力となる。
【0042】
はじめに、制御装置15は、温度センサ37によって検出される温度(以下、検出温度とする。)Thが第一温度Th1よりも高いか否かを判定する(ステップS102)。第一温度Th1は、改質水の沸点(100℃)より高い温度である。第一温度Th1は、改質の沸点(100℃)より高く、かつ、発電運転中における水蒸気の推移する温度(およそ150℃〜300℃)より低い温度に設定されている。具体的には、第一温度Th1は、140℃に設定されている。制御装置15は、検出温度Thが第一温度Th1以下である場合、ステップS102にて「NO」と判定し、ステップS102の判定を繰り返し実行する。
一方、燃料電池システムが発電運転中である場合には、蒸発部32が少なくとも100℃以上に加熱されているため、水蒸気が蒸発部32内を満たしている。よって、温度センサ37が水蒸気の温度を検出した場合、検出温度Thが第一温度Th1(140℃)よりも高くなる。この場合、制御装置15は、ステップS102にて「YES」と判定し、プログラムをステップS104に進める。
【0043】
制御装置15は、突沸が事前に起きるか否かを判定する。具体的には、制御装置15は、検出温度Thが第二温度Th2以下に低下したか否かを判定する(ステップS104)。第二温度Th2は、第一温度Th1より低く且つ改質水の沸点以上の温度である。本実施形態において、第二温度Th2は、100℃以上かつ140℃未満の温度に設定することができる。具体的には、第二温度Th2は、110℃に設定されている。なお、各温度Th1,Th2は、第一温度Th1と第二温度Th2との間に10℃以上の差を有するように、設定されていることが望ましい。
制御装置15は、検出温度Thが第二温度Th2まで低下していない場合、ステップS104にて「NO」の判定を繰り返し実行する。一方、制御装置15は、検出温度Thが第二温度Th2まで低下した場合、突沸を事前に検知したと判定する。
【0044】
ここで、本発明者によって見出された突沸が発生する原理について説明する。燃料電池システムの運転中において、例えば、燃焼部35において想定されていない燃料の濃度の変化によって火炎36が小さくなる場合または部分的に火炎36が吹き消えた場合には、蒸発部32への供給熱量が減少するときがある。この場合、蒸発部32の温度が下がるため、蒸発部32における改質水の蒸発量が減少する。これにより、水溜り部32dの改質水の量が増加するため、改質水が水溜り部32dから高温部32e(第一仕切部材31a)に流路32fに沿って流動する(広がる)場合がある。そして、改質水が高温部32eに到達し、改質水と高温部32eとが接触したときには、改質水が急激に加熱されるため、突沸が発生する。
【0045】
さらに、本発明を適用しないことにより意図的に突沸を発生させる場合における上述した燃料電池システムの作動について、図4に示すタイムチャートに沿って説明する。燃料電池システムが発電運転中であり、改質水と改質用原料との比率を表すS/C(スチーム/カーボン)比がおよそ2.5である状態から説明する。なお、このとき、蒸発部32内は水蒸気で満たされており、かつ、温度センサ37と水溜り部32dとが接触していない。よって、温度センサ37は、水蒸気の温度(この場合においては、およそ200℃になっている。)を検出する。
【0046】
制御装置15は、S/C比をおよそ2.8にするように、改質水ポンプ11b1を制御して、改質水の供給量を増加させる(時刻t1)。これにより、改質水の蒸発量が増えるため、水蒸気の量が増加する。よって、蒸発部内圧Pがおよそ1.7kPaから増加しはじめ(時刻t2)、およそ1.9kPaにて一旦安定する。一方、改質水の供給量が増加することにより、水溜り部32dの改質水も増加するため、改質水が水溜り部32dから流路32fに沿って流動する。ここで、温度センサ37は、流路32f上に高温部32eから所定距離Lを隔てて配置されているため、改質水は、高温部32eよりも先に温度センサ37に到達する。
【0047】
改質水が温度センサ37に接触したときには、改質水の温度が沸点(100℃)であるため、検出温度Thが下がり始める(時刻t3)。さらに改質水が流動し、温度センサ37が改質水にて覆われたときには、検出温度Thがおよそ100℃になる(時刻t4)。さらに、改質水が流動して高温部32eに到達したときには、改質水と高温部32eとが接触することにより、突沸が発生する。突沸が発生した後、蒸発部内圧Pが変動し始める(時刻t5)。これにより、燃料電池34aに供給される改質ガスの濃度が変動するため、およそ100Vにて安定していた燃料電池34aの出力電圧Vが変動し始める(時刻t5)。
【0048】
一方、改質水の突沸により流路32f上の改質水が減少するため、温度センサ37を覆っている改質水の量が減少する。これにより、温度センサ37が水蒸気の温度を検出し始めるため、検出温度Thが上昇し始める(時刻t5)。しかし、改質水が水溜り部32dから流路32fに沿ってさらに流動していることにより、改質水と温度センサ37とが接触するため、検出温度Thが再び下がり始める(時刻t6)。そして、温度センサ37が改質水にて再び覆われるため、検出温度Thが100℃に低下する(時刻t7)。また、突沸によって生じた蒸発部内圧Pおよび出力電圧Vの変動が収まり(時刻t8)、次の突沸が発生するまで、蒸発部内圧Pがおよそ1.9kPaにて安定し、出力電圧Vがおよそ100Vにて安定する。
【0049】
図3に示すフローチャートに戻って説明する。制御装置15は、ステップS104において、検出温度Thが第二温度Th2まで低下した場合、改質水が流路32fを流動し、改質水と高温部32eとが接触することにより発生する突沸を事前に検知したと判定する。すなわち、制御装置15は、改質水が水溜り部32dから流路32fを流動し、温度センサ37に接触したと判定する。突沸を事前に検知した場合、制御装置15は、ステップS104にて「YES」と判定し、突沸の抑制を行う。具体的には、制御装置15は、燃料利用率Ufを燃料利用率Uf0から燃料利用率Uf0より燃料利用率Ufが低い燃料利用率Uf1に低下させる(ステップS106)。
【0050】
ここで、燃料利用率Uf=(発電に利用される燃料の量(燃料流量)/燃料電池34aに供給される燃料の量)である。発電に利用される燃料流量は、発電電力Wにほぼ比例する。また、燃料電池34aに供給される燃料流量は、燃料電池34aに供給される改質ガスの流量にほぼ比例する。改質ガスの流量は、原料ポンプ11a1によって改質部33に供給される改質用原料の流量で決まる。そして、燃料電池34aに供給される燃料のうち発電に利用されない燃料が、燃料電池34aから導出し、燃焼部35にて燃焼される。すなわち、燃料電池34aに供給される燃料流量=(発電に利用される燃料流量+発電に利用されずに燃焼部35にて燃焼される燃料流量)である。
【0051】
ここで、発電電力Wが低いほど(すなわち発電に利用される燃料流量が少ないほど)、燃料電池34aの動作温度が下がる。よって、燃料電池モジュール30内の温度を燃料電池34aの動作温度に保持するため、発電電力Wが低いほど、燃焼部35における燃焼ガスの熱量を増加させている。すなわち、発電に利用される燃料流量が少ないほど、発電に利用されずに燃焼部35にて燃焼される燃料流量が増加するように、燃料電池34aに供給される燃料流量が設定されている。よって、図5に示すように、発電電力Wが低いほど、燃料利用率Ufが低くなるように設定されている。制御装置15は、燃料電池34aの発電電力Wと燃料電池34aの燃料利用率Ufとが図5に示す関係になるように、補機およびインバータ装置13を制御する。
【0052】
図3に示すフローチャートに戻って説明する。本実施形態では、制御装置15は、燃料利用率Ufを低下させるときに、発電電力Wの減少を行う。具体的には、制御装置15は、負荷追従運転を解除し、比較的低い所定発電電力にて発電運転を行う定値運転に切り替える。所定発電電力は、例えば最低出力電力である50Wである。すなわち、制御装置15は、発電電力Wを外部電力負荷16cの消費電力から所定発電電力に減少させる。
【0053】
そして、制御装置15は、突沸の抑制を終了させるか否かを判定する。具体的には、制御装置15は、検出温度Thが第三温度Th3より高いか否かを判定する(ステップS108)。第三温度Th3は、第二温度Th2より高く、かつ、第一温度Th1以下の温度に設定されている。第三温度Th3は、例えば125℃である。検出温度Thが第三温度Th3以下である場合、制御装置15は、ステップS108にて「NO」の判定を繰り返す。一方、検出温度Thが第三温度Th3よりも高くなった場合、制御装置15は、ステップS108にて「YES」と判定し、燃料利用率Ufを燃料利用率Uf0に復帰させる(ステップS110)。具体的には、制御装置15は、定値運転を解除し、負荷追従運転に切り替えて燃料電池システムの発電運転を継続する。すなわち、制御装置15は、発電電力Wを所定発電電力から外部電力負荷16cの消費電力に復帰させる。
【0054】
次に、上述したフローチャートに沿って、燃料電池システムが作動した場合について、図6に示すタイムチャートを用いて説明する。燃料電池システムが発電電力Wを300Wにして発電運転(負荷追従運転)中である場合について説明する。燃料電池システムが発電運転中であるため、蒸発部32内は水蒸気で満たされている。よって、温度センサ37は水蒸気の温度(この場合においては、およそ200℃になっている。)を検出するため、検出温度Thは第一温度Th1(140℃)より高い(ステップS102)。このとき、蒸発部32内に比較的小さい水溜り部32dが形成されている。
【0055】
そして、例えば、燃焼部35において燃料の濃度の変化によって火炎36が部分的に吹き消えたことにより、燃焼部35から蒸発部32への供給熱量が減少した場合、水溜り部32dを形成する改質水の量が増加する。これにより、改質水が水溜り部32dから高温部32eに向かって流路32fに沿って流動する。そして、改質水が高温部32eに到達する前に温度センサ37に接触するため(温度センサ37が改質水に浸水し始めるため)、検出温度Thが低下し始める(時刻t1)。その後、改質水が温度センサ37を覆うため、検出温度Thが第二温度Th2(110℃)まで低下する(時刻t2;ステップS104)。このとき、制御装置15が燃料利用率Ufを燃料利用率Uf1に低下させる(ステップS106)。すなわち、制御装置15は、発電電力Wの低下を開始する(時刻t2)。具体的には、制御装置15は、負荷追従運転を解除して、インバータ装置13によって発電電力Wを50Wに減少させて定値運転を開始する(時刻t3)。ここで、発電電力Wが減少されたため、燃料電池34aの発電電流が減少する。これにより、燃料電池34aの内部抵抗が小さくなるため、出力電圧Vが大きくなる。本実施形態においては、出力電圧Vが100Vから110Vに上昇する(時刻t3)。
【0056】
制御装置15が燃料利用率Ufを低下させることにより、アノードオフガス中の改質ガス量が増加し、燃焼部35へ導出される可燃ガスが増加するため、燃焼部35での燃焼熱量が増加する。これにより、燃焼部35から蒸発部32への供給熱量が増加するため、改質水の蒸発量が増加する。よって、蒸発部32内の流路32f上の改質水の量が減少するため、改質水の高温部32eへの流動が停止する。したがって、温度センサ37まで達している改質水の流動が高温部32eに到達する前に停止するため、改質水と高温部32eとが接触することにより発生する突沸が回避される。
【0057】
一方、検出温度Thが第二温度Th2まで低下したとき(時刻t2)、温度センサ37が高温部32eに流動する改質水によって一旦覆われるため、検出温度Thが改質水の沸点(100℃)に低下する(時刻t4)。しかし、その後、改質水の蒸発量が増加し、改質水の量が減少するため、高温部32eに流動する改質水が後退する。これにより、温度センサ37が蒸発部32内の温度を再び検出し始めるため、検出温度Thが上昇し始める(時刻t5)。そして、検出温度Thが第三温度Th3(125℃)より高くなったとき(時刻t6;ステップS108)、制御装置15が燃料利用率Ufを、燃料利用率Uf1から燃料利用率Uf0に復帰させる(時刻t6;ステップS110)。具体的には、制御装置15は、定値運転を解除し、負荷追従運転を再開する。その後、検出温度Thが水蒸気の温度(およそ200℃)に復帰する(時刻t7)。また、外部電力負荷16cの消費電力が300Wである場合には、発電電力Wが300Wに復帰する(時刻t8)。そして、出力電圧Vが100Vに復帰する(時刻t8)。
【0058】
本実施形態によれば、燃料電池システムは、改質ガスと酸化剤ガスとにより発電する燃料電池34aと、燃料電池34aから導出されるアノードオフガスを燃焼させる燃焼部35と、燃焼部35によって加熱され、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成する蒸発部32と、水蒸気と改質用原料とから改質ガスを生成する改質部33と、燃料電池34aの発電電力Wを少なくとも制御する制御装置15と、を備えた燃料電池システムであって、蒸発部32は、底面32a1に改質水が溜まっている水溜り部32dと、温度が高い高温部32eと、改質水が水溜り部32dから高温部32eに流動する流路32fと、を備え、燃料電池システムは、流路32f上に高温部32eから所定距離Lを隔てて配置され、その配置された部位の温度を検出する温度センサ37をさらに備え、制御装置15は、検出温度Thが、改質水の沸点より高い第一温度Th1から、第一温度Th1より低く且つ改質水の沸点以上である第二温度Th2まで低下したときに、改質水の突沸を、事前に検知する。
これによれば、蒸発部32においては、通常時において、供給された改質水が蒸発することにより温度センサ37が水蒸気の温度を検出するため、検出温度Thが改質水の沸点よりも高い第一温度Th1に達する。その後、例えば、燃焼部35の燃焼状態が変化して蒸発部32への供給熱量が減少する等の要因により蒸発部32における改質水の蒸発量が減少する場合には、蒸発部32内の改質水の量が増加することにより、改質水が水溜り部32dから高温部32eに流動する。このとき、改質水が高温部32eに接触した場合には、改質水が急激に加熱されるため、改質水が突然沸騰する突沸が発生する。
ここで、温度センサ37は、改質水が水溜り部32dから高温部32eに流動する流路32f上に高温部32eから所定距離Lを隔てて配置されている。よって、流路32fを流れる改質水は、高温部32eに接触する前に温度センサ37に接触する。すなわち、温度センサ37が改質水の温度を検出するため、検出温度Thは、改質水の沸点に低下する。よって、制御装置15は、検出温度Thが第一温度Th1に達した後、第一温度Th1より低く且つ改質水の沸点以上である第二温度Th2まで低下したときに、改質水が高温部32eに向かって流動中であることを、改質水が高温部32eに到達する前に判定することができる。したがって、改質水が高温部32eに接触して急激に加熱されることにより突然沸騰する突沸を、事前に確実に検知することができる。
【0059】
また、蒸発部32と改質部33とは隣接して配設され、高温部32eは、改質部33に隣接する部位である。
これによれば、蒸発部32における改質部33に隣接する部位は、燃焼部35からの供給熱量に加え、改質部33にて発生する熱量により、蒸発部32の他の部位に比べて高温になっている。よって、蒸発部32における改質部33に隣接する部位は、蒸発部32の他の部位に比べて、改質水の突沸が発生し易い。ここで、温度センサ37は、改質水が流動する流路32f上に、蒸発部32における改質部33に隣接する部位から所定距離Lを隔てて配置されている。よって、制御装置15は、検出温度Thが第一温度Th1までに達した後、第二温度Th2まで低下したときに、改質水が蒸発部32における改質部33に隣接する部位に流動中であると判定することができる。したがって、蒸発部32における改質水の突沸が発生し易い改質部33に隣接する部位にて発生する突沸を、事前に確実に検知することができる。
【0060】
また、制御装置15は、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池34aの燃料利用率Ufを低下させる。
これによれば、制御装置15は、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池34aの燃料利用率Ufを低下させるため、発電に利用されなかった燃料(アノードオフガス)すなわち燃焼部35にて燃焼される可燃ガスを増加させることができる。これにより、燃焼部35の蒸発部32への供給熱量を増加させることができるため、蒸発部32における改質水の蒸発量が増加する。よって、蒸発部32内の改質水の量が減少するため、改質水の高温部32eへの流動が止まる。これにより、改質水と高温部32eとの接触が避けられるため、改質水の突沸を回避することができる。したがって、改質水の突沸が抑制されることにより、燃料電池システムの信頼性をより向上することができる。
【0061】
また、制御装置15は、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池34aの発電電力Wの減少を行う。
これによれば、制御装置15は、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池34aの発電電力Wの減少を行うため、燃料電池34aの燃料利用率Ufをより確実に低下させることができる。よって、改質水の突沸がより確実に抑制されるため、燃料電池システムの信頼性をより向上することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態において、燃料電池システムの一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、上述した実施形態において、制御装置15は、検出温度Thが第二温度Th2まで低下したときに、すなわち、突沸を事前に検知した場合に、燃料利用率Ufを低下させるために、燃料電池34aの発電電力Wの減少を行うが、これに代えて、突沸を事前に検知したときの発電電力Wを維持するように定値運転を行い、改質ガスの燃料電池34aへの供給量の増加を行うようにしても良い。これによれば、燃焼部35へ導出される可燃ガスが増加することにより、燃焼部35の燃焼ガスの熱量が増加するため、蒸発部32における改質水の蒸発量が増加する。よって、蒸発部32内の改質水の量が減少するため、改質水の高温部32eの流動が停止する。よって、改質水と高温部32eとが接触することにより発生する突沸を回避できる。また、本実施形態における改質ガスの燃料電池34aへの供給量の増加は、燃料電池システムが、起動運転を行っている場合においても、実行することができる。よって、燃料電池システムが、起動運転を行っている場合においても、蒸発部32内にて発生する突沸を回避することができる。
【0063】
すなわち、制御装置15は、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池34aの発電電力Wの減少または改質ガスの燃料電池34aへの供給量の増加を行うようにしても良い。
これによれば、制御装置15は、突沸を事前に検知した場合に、燃料電池34aの発電電力Wの減少または改質ガスの燃料電池34aへの供給量の増加を行うため、燃料電池34aの燃料利用率Ufをより確実に低下させることができる。よって、改質水の突沸がより確実に抑制されるため、燃料電池システムの信頼性をより向上することができる。
【0064】
また、制御装置15は、突沸を事前に検知した場合に、改質水の蒸発部32への供給量の減少を行うようにしても良い。改質水の供給量を減少させた場合は、蒸発部32内の改質水の量が減少するため、改質水が高温部32eに到達する前に、改質水の高温部32eの流動が停止する。よって、改質水と高温部32eとが接触することにより発生する突沸を回避できる。また、本実施形態における改質水の蒸発部32への供給量の減少は、起動運転を行っている場合においても、実行することができる。よって、燃料電池システムが、起動運転を行っている場合においても、蒸発部32内にて発生する突沸を回避することができる。なお、本実施形態においては、制御装置15が改質水の供給量を精度よく制御できるようにするために、改質水の流量を検出する流量センサを水供給管11bに配設するようにしても良い。そして、制御装置15が、改質水の供給量が増加したことを流量センサによって検出し、制御装置15が突沸を事前に検知したときに、改質水の蒸発部32への供給量の減少を行うようにしても良い。
【0065】
また、制御装置15は、上述した実施形態において、燃料電池34aの発電電力Wの減少を行う場合に、検出温度Thが第二温度Th2まで低下したときから突沸が発生するまでの時間よりも十分短い時間にて、燃料電池34aの発電電力Wの減少を行うようにしても良い。ここで、検出温度Thが第二温度Th2まで低下したときから突沸が発生するまでの時間は、検出温度Thが第二温度Th2に低下したときから改質水が高温部32eに到達するまでの時間である。また、制御装置15が燃料電池34aの発電電力Wの減少を行う時間(時刻t1から時刻t2までの時間;図6参照)は、例えば1秒である。
これによれば、制御装置15は、突沸を事前に検知した場合に、検出温度Thが第二温度Th2まで低下したときから突沸が発生するまでの時間よりも十分短い時間にて、燃料電池34aの発電電力Wの減少を行うため、より短時間にて燃料電池34aの燃料利用率Ufを低下させることができる。これにより、蒸発部32内の改質水の量がより短時間にて減少するため、改質水の高温部32eへの流動がより短時間にて停止する。よって、改質水と高温部32eとの接触がより確実に回避される。したがって、改質水の突沸がより確実に抑制されるため、燃料電池システムの信頼性をさらに向上することができる。
【0066】
また、上述した実施形態において、底面32a1が水平な平面であるため、流路32fが水平に形成されるが、これに代えて、蒸発部32の第一の変形例として、改質水が流路32fに沿って高温部32e(図2の右側)に流動するにしたがって改質水が上方に上ってゆくように、底面32a1を傾けるようにすると良い。これによれば、流路32fを流動する改質水の速度を小さくすることができるため、流路32fを流動する改質水の水溜り部32dから高温部32eに到達する時間を長くすることができる。よって、流路32fを流動する改質水の蒸発量がより多くなるため、改質水が高温部32eに到達する前に、改質水の流動をより確実に停止させることができる。したがって、改質水と高温部32eとの接触がより確実に回避される。
【0067】
また、上述した実施形態において、底面32a1は、平面状に形成されているが、これに代えて、蒸発部32の第二の変形例として、図7に示すように、底面32a1に凹部32a1aを形成し、凹部32a1aの底部に水溜り部32dが形成されるようにしても良い。具体的には、水供給管11bの他端の下方に凹部32a1aが配設されるようにすると良い。また、温度センサ37が凹部32a1aの周縁に配置されるようにすると良い。これによれば、改質水の量が増加して、改質水が凹部32a1aからあふれ出した後、比較的短い時間にて改質水が温度センサ37に接触するため、制御装置15は、改質水が増加して高温部32eに流動中であることを、改質水が高温部32eに到達する前により確実に検知することができる。
【0068】
さらに、蒸発部32の第三の変形例として、図8に示すように、流路32fを一端が凹部32a1aに接続する溝状に形成するようにしても良い。また、この場合、流路32fの溝幅を温度センサ37の幅と略同一にすると良い。これによれば、増加した改質水を凹部32a1aから流路32fに確実に流動させることができる。よって、増加した改質水が確実に温度センサ37に接触するため、制御装置15は、改質水が増加して高温部32eに流動中であることを、改質水が高温部32eに到達する前にさらに確実に検知することができる。
【0069】
また、上述した実施形態において、温度センサ37は、図1図7および図8に示すように、蒸発部ハウジング32aの第二仕切部材32bより下側の部位に球体32cとともに配設されているが、これに代えて、蒸発部32の第四の変形例として、図9に示すように、温度センサ37を、空間部32a2に配設するようにしても良い。空間部32a2は、蒸発部ハウジング32aにおける第二仕切部材32bより下側の部位を左右に仕切る第三仕切部材32gによって仕切られた右側の部位である。第三仕切部材32gには、左右方向に貫通する複数の貫通孔が全体に形成されている。第三仕切部材32gは、例えばパンチングメタルである。また、空間部32a2には、球体32cが配設されていない。
これによれば、上述した実施形態と比較して、温度センサ37と球体32cとの距離を長くすることができるため、温度センサ37と水蒸気とをより多く接触させることができる。よって、温度センサ37が水蒸気の温度をより精度よく検出することができる。
【0070】
また、上述した実施形態において、水供給管11bの他端は、蒸発部ハウジング32a内の左右方向における略中央に位置するように配設されているが、これに代えて、蒸発部ハウジング32a内の左右方向における左側に配設されるようにしても良い。これによれば、水供給管11bの他端が蒸発部ハウジング32a内の左右方向における略中央に位置する場合に比べ、水供給管11bの他端の下方に形成される水溜り部32dと高温部32eとの距離が長くなる。これにより、流路32fの長さが長くなるため、改質水の水溜り部32dから高温部32eに到達する時間を長くすることができる。よって、流路32fを流動する改質水の蒸発量がより多くなるため、改質水が高温部32eに到達する前に、改質水の流動をより確実に停止させることができる。したがって、改質水と高温部32eとの接触がより確実に回避される。
【0071】
また、上述した実施形態において、高温部32eは、第一仕切部材31aであるが、これに代えて、蒸発部ハウジング32aにおける第一仕切部材31a以外の側壁とするようにしても良い。例えば、燃焼部35の形状により、蒸発部ハウジング32aの左側壁がもっとも加熱されることによって、蒸発部ハウジング32aの温度のうち蒸発部ハウジング32aの左側壁の温度が最も高くなる場合には、高温部32eは、蒸発部ハウジング32aの左側壁となる。
また、上述した実施形態において、燃料電池34aは、固体酸化物形燃料電池であるが、これに代えて、本発明を固体高分子形燃料電池に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
11,30…燃料電池モジュール、13…インバータ装置、15…制御装置、31…ハウジング、31a…第一仕切部材、32…蒸発部、32a…蒸発部ハウジング、32a1…底面、32b…第二仕切部材、32c…球体、32d…水溜り部、32e…高温部、32f…流路、33…改質部、33a…改質部ハウジング、34a…燃料電池、35…燃焼部、37…温度センサ、L…所定距離、Th…検出温度、Th1…第一温度、Th2…第二温度、Uf…燃料利用率、V…出力電圧、W…発電電力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9