(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
(構成)
1.原子炉格納容器
図1は本実施形態に係る床材ユニットを適用する原子炉格納容器の一構成例の概略構成を表す縦断面図、
図2は
図1のII−II矢視断面図である。
【0011】
図1に示すように、原子炉格納容器(格納容器)50は原子炉圧力容器(圧力容器)1を格納している。圧力容器1は核燃料で構成される炉心(不図示)を収納している。格納容器50の原子炉格納容器床(格納容器床)2には床面から上方に向かって延在する原子炉格納容器側壁(格納容器側壁)3が設けられている。格納容器側壁3は内壁面から圧力容器1に向かって突出する突出部32を備えている。突出部32には、圧力容器1に接続する圧力容器支持構造物21が取り付けられている。すなわち、圧力容器1は圧力容器支持構造物21を介して格納容器側壁3により支持されている。圧力容器1の下方には、格納容器床2及び格納容器側壁3等で囲まれた格納容器下部空間10が形成されている。格納容器下部空間10内には、炉心の出力を制御する制御棒を操作するための制御棒駆動機構、計装管等(不図示)を収容する圧力容器下部構造物12が配置されている。格納容器50は、格納容器50の壁外から格納容器側壁3を貫通して格納容器下部空間10内まで引き伸ばされた格納容器下部空間注水配管(注水配管)5を備えている。例えば、非常用炉心冷却系が作動しない場合には、注水配管5の注水口16から格納容器下部空間10内に冷却水W1が注水される。図中のL1は冷却水W1の注水により格納容器下部空間10内に形成される水プールの水面を示している。冷却水W1の水源としては、例えば、復水貯蔵タンクや消火用のろ過水タンク(不図示)、海水等の外部水源などを利用することができる。格納容器下部空間10への注水手段の他の例として、図示しない格納容器50の空間(例えば、圧力容器1の側方)に貯えられた水を重力落下させ、その一部を圧力容器1と格納容器側壁3との間隙を通して格納容器下部区画10へ流入させる機構もある。
【0012】
格納容器床2の床面には炉心溶融物保持構造材である床材ユニット6が配置されている。床材ユニット6は、圧力容器1の破損部8から落下した炉心溶融物4を保持して冷却する機能を有している。
図2に示すように、床材ユニット6は複数のセグメント6a,6b・・・の集合体であって、複数のセグメント6a,6b・・・を格納容器50の格納容器下部空間扉11から搬入し格納容器床2上に配置して形成されている。本実施形態では、複数のセグメント6a,6b・・・を互いに隣接するもの同士隙間をあけて格納容器床2を覆うように平面方向に並べてある。なお、本実施形態では、隣り合うセグメント同士は連結していない。複数のセグメント6a,6b・・・は平面視で四角形状であるが(セグメント6aを参照)、最外周に配置するものについては格納容器側壁3の内壁面の形状に沿うようにカットしてある(セグメント6bを参照)。以下、床材ユニット6のセグメントの構成についてセグメント6aを例に挙げて説明する。
【0013】
2.床材ユニット
図3は本実施形態に係る床材ユニットのセグメントを示す上面図、
図4は
図3のIV−IV矢視縦断面図である。
図3及び
図4に示すように、セグメント6aは、第1伝熱板7、炉心溶融物保持室18及び炉心溶融物導入流路15を備えている。以降、炉心溶融物保持室18、炉心溶融物導入流路15をそれぞれ保持室18、導入流路15と呼ぶ。
【0014】
第1伝熱板7は平面視で四角形状(この例では正方形状)に形成された板部材である。第1伝熱板7は圧力容器1に格納容器下部空間10を挟んで対向するように配置され、圧力容器1から格納容器床2に向かって落下する炉心溶融物4を受けて保持する。第1伝熱板7は導入孔33と、複数(本実施形態では8つ)の蒸気抜き孔20とを備えている。本実施形態では導入孔33は平面視で第1伝熱板7の中心付近に設けられており、蒸気抜き孔20は導入孔33を囲むように設けられている。蒸気抜き孔20は、格納容器下部空間10と第1伝熱板7の下側に形成された第1の冷却水対流空間(第1の空間)17とを連通している。第1伝熱板7は、上面7Aが格納容器下部空間10に面し、下面7Bが第1の空間17に面しており、格納容器下部空間10と第1の空間17との境界を画定している。また、第1の空間17の外周部は開放されていて、隣接する他のセグメントが備える第1の空間とセグメント6a間の隙間を介してつながっている。
【0015】
保持室18は第1伝熱板7の下側に位置しており、天井面及び底面をそれぞれ第2伝熱板13及び第3伝熱板14としている。第2伝熱板13と第3伝熱板14の互いの外縁部は閉止板19で接続されていて、閉止板19が保持室18の全周を覆う側面を構成している。保持室18は、上記導入流路15との接続部を除き、閉空間構造に形成されている。第2伝熱板13は平面視で外形線が正方形状に形成された板部材であり、第1伝熱板7の下側に第1の空間17を挟んで対向している。つまり、第2伝熱板13は、上面13Aが第1の空間17に面し、下面13Bが保持室18の内部空間に面しており、第1の空間17と保持室18の内部空間との境界を画定している。第2伝熱板13には孔34及びガス抜き孔24が設けられている。孔34は第1伝熱板7の導入孔33に対応する位置に設けられている。ガス抜き孔24は保持室18内と第1の空間17とを連通するものであり、この例では保持室18の四隅に対応する位置に設けられている。第3伝熱板14は平面視で正方形状に形成された板部材であり、第2伝熱板13の下側に保持室18の内部空間を挟んで対向している。第3伝熱板14は導入孔33から流下する溶融デブリ(炉心溶融物4の液相部分)を受けて保持する。第3伝熱板14の下面14Bにはスペーサ26が取り付けられており、第3伝熱板14と格納容器床2との間には第2の冷却水対流空間(第2の空間)23が確保されている。第3伝熱板14は、上面14Aが保持室18の内部空間に面し、下面14Bが第2の空間23に面しており、保持室18の内部空間と第2の空間23との境界を画定している。この例ではスペーサ26は第3伝熱板14の四隅に設けられている。第2の空間23も、セグメント6a間の隙間を介して隣接する他のセグメントが備える第2の空間とつながっている。
【0016】
導入流路15は第1の空間17中を上下に延びて第1伝熱板7の導入孔33と第2伝熱板13の孔34とを接続し、格納容器下部空間10と保持室18とを接続している。導入流路15の内部空間は第1の空間17と隔てられている。この導入流路15の断面形状は特に限定されないが、本実施形態では平面視で円形状に形成されている。なお、導入流路15は保持室18の第2伝熱板13に対して第1伝熱板7を支持する役割を兼ねている。また、第2伝熱板13の上面13Aの外縁部には複数の第1伝熱板支持柱22が立てられており、これら第1伝熱板支持柱22によって第1伝熱板7を支持することにより第1伝熱板7の支持強度を強化してある。
【0017】
(動作)
図5A乃至
図5Dは本実施形態に係る床材ユニットに対する炉心溶融物の動作を説明する図である。
【0018】
万一、圧力容器1への注水機能が停止した場合、例えば圧力容器1内の圧力変動に伴って、圧力容器1の破損部8から炉心溶融物4が落下する前に注水配管5から格納容器下部空間10内に冷却水W1が注水される。格納容器下部空間10内に注水された冷却水W1は、第2の空間23、保持室18、第1の空間17を順次満たしていき、遂には床材ユニット6を冠水させ、格納容器下部空間10に水プールを形成する(
図1を参照)。圧力容器1の破損部8から格納容器床2に向かって落下する炉心溶融物4は水プール内を下方に落下し、セグメント6aの第1伝熱板7上に受けられる。このとき、第1伝熱板7上の炉心溶融物4は一部が冷却水W1で冷却されるため固相部分と液相部分とが混在している。その結果、
図5Aに示すように、炉心溶融物4の液相部分である溶融デブリが第1伝熱板7の導入孔33から導入流路15内に流入し、下方に向かって導入流路15を流れる。導入流路15を下方に流れる溶融デブリは第3伝熱板14上に落下し、
図5Bに示すように、第3伝熱板14に沿って広がり保持室18内を満たしていく。保持室18内の気体は溶融デブリにより閉止板19側に押し込まれ、第2伝熱板13に形成されたガス抜き孔24を介して保持室18内から第1の空間17に抜けていく。保持室18及び導入流路15が溶融デブリで満たされると、第1伝熱板7から導入流路15内への溶融デブリの流入が止まる。
【0019】
導入流路15の壁面及び第2伝熱板13と接触する溶融デブリは第1の空間17内の冷却水W1との熱交換により冷却され、閉止板19と接触する溶融デブリは閉止板19の外面側を流れる冷却水W1との熱交換により冷却され、第3伝熱板14と接触する溶融デブリは第2の空間23内の冷却水W1との熱交換により冷却される。その後、
図5Cに示すように、導入流路15及び保持室18にある溶融デブリは、導入流路15の壁面、第2伝熱板13、閉止板19及び第3伝熱板14との各接触部にクラスト(溶融デブリが凝固したもの)を形成する。
【0020】
第1の空間17内では、
図5Cに示すように、溶融デブリとの熱交換により冷却水W1が加熱されて沸騰し蒸気泡が生じる。この蒸気泡は、第1の空間17内の冷却水W1を巻き込みながら浮力により上昇し、第1伝熱板7の下面7Bに衝突する。第1の空間17内を第1伝熱板7に向かって上昇する蒸気泡と、第1伝熱板7上の炉心溶融物4との熱交換により第1伝熱板7の下面7B付近で生じた蒸気泡とは、
図5Cに示すように、第1伝熱板7に形成された蒸気抜き孔20を通ったり、
図5Dに示すように、隣接するセグメント6a間の隙間を通ったりして第1の空間17から第1伝熱板7の上方に抜けていく。第2空間23内でも、保持室18内の溶融デブリとの熱交換により冷却水W1が加熱されて沸騰し蒸気泡が生じる。この蒸気泡は、
図5Dに示すように、隣接するセグメント6a間の隙間などを介して第1伝熱板7の上方に抜けていく。
【0021】
(効果)
(1)炉心溶融物の床部への侵食抑制
まず、下側に第1の空間17がある第1伝熱板7で炉心溶融物4を受けることにより、格納容器下部空間10内の冷却水W1により第1伝熱板7上の炉心溶融物4を上側から冷却することができる。加えて、格納容器床2との熱交換に代えて、第1伝熱板7上の炉心溶融物4を第1の空間17内の冷却水W1との熱交換により下側からも次の作用により効果的に冷却することができる。すなわち、導入流路15を介して一部の炉心溶融物4(溶融デブリ)を保持室18に導くことにより、溶融デブリとの熱交換により第1の空間17内に蒸気泡を発生させ、この蒸気泡と第1の空間17内の冷却水W1との気液二相流を第1伝熱面の下面7Bに衝突させることができる。そのため、第1伝熱板7を継続的に冷却し、第1伝熱板7上の炉心溶融物4を下側からも効果的に冷却することができる。仮に保持室18を設けず第1伝熱板7上の炉心溶融物4との熱交換により第1の空間17内の冷却水W1の上部のみを加熱する場合、第1の空間17内の冷却水W1の流動は自然対流に依存することになる。それに対し、本実施形態では保持室18に溶融デブリを導くことにより、第1の空間17内の冷却水W1を下からも過熱して強制的に対流させることができるので、冷却水W1の自然対流に依存する場合よりも大きな除熱量が得られる。
【0022】
また、導入流路15及び保持室18内に導かれた溶融デブリも第1の空間17及び第2空間18内の冷却水W1との熱交換により冷却し凝固させることができる。第2の空間23内の冷却水W1は保持室18内の溶融デブリとの熱交換により上からのみしか加熱されず流動は自然対流に依存するが、溶融デブリの冷却には十分である。保持室18内の溶融デブリは第1伝熱板7上に保持される炉心溶融物4に比べて少量であり、保持室18の底面である第3伝熱板14は第1伝熱板7と同程度の十分な伝熱面積を有するためである。したがって、溶融デブリが第3伝熱板14を貫通して格納容器50の床部に落下することも抑制できる。
【0023】
以上により、炉心溶融物4の冷却性を向上させ格納容器50の床部への炉心溶融物4の侵食を抑制することができる。
【0024】
(2)床材ユニットの省スペース化
本実施形態の床材ユニット6は基本的に第1伝熱板7上で炉心溶融物4を冷却する構造であり、第1の空間17内の冷却水W1を下から加熱するのに必要な量の溶融デブリが保持室18に導かれれば、導入流路15及び保持室18が満たされて炉心溶融物4の大部分は第1伝熱板7上に保持される。このように保持室18はあくまで第1の空間17内の冷却水W1を下から加熱するための一部の炉心溶融物4を導き入れる程度の容積で足りるので床材ユニット6をコンパクトに構成することができる。
【0025】
(3)蒸気膜の形成抑制
第1の空間17内では溶融デブリとの熱交換により冷却水W1の蒸気泡が連続的に発生し得る。そのため、第1伝熱板7の下面7B付近で複数の蒸気泡が合体して蒸気膜を形成してしまうと、この蒸気膜が第1伝熱板7の下面7Bを覆うことにより蒸気泡と冷却水W1との気液二相流を第1伝熱板7の下面7Bに衝突させることができない可能性がある。これに対し、本実施形態では、セグメント6aは格納容器下部空間10と第1の空間17とを連通する第1蒸気抜き孔20を備えている。これにより、第1の空間17内で発生した蒸気泡を第1蒸気抜き孔20を通して第1の空間17から第1の伝熱板7の上方に円滑に抜くことができる。また、上記蒸気泡を隣接するセグメント6a間の隙間を通して第1の伝熱板7の上方に円滑に抜くこともできる。したがって、第1伝熱板7の下面7Bが蒸気膜で覆われることを抑制することができる。その結果、蒸気泡と冷却水W1との気液二相流をより確実に第1伝熱板7の下面7Bに衝突させることができる。
【0026】
(4)保持室内への溶融デブリの導入性向上
本実施形態では、第2伝熱板13にガス抜き孔24を形成し、第1の空間17と保持室18とを連通させている。そのため、保持室18内の気体をガス抜き孔24を介して保持室18内から第1の空間17に抜くことができ、保持室18内の気体により溶融デブリの保持室18内への広がりが損なわれることを抑制できる。
【0027】
<第2実施形態>
図6は本実施形態に係る床材ユニットのセグメントを示す上面図、
図7は
図6のVII−VII矢視縦断面図である。
図6及び
図7において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0028】
図7に示すように、本実施形態に係るセグメント16aでは、導入流路15は流路幅が下方に向かって拡大している。すなわち、導入流路15は入口側(導入孔33側)よりも出口側(孔34側)の流路幅が広くなっている。導入流路15は、例えばテーパ状に広がる形状でも良いが、本実施形態ではR状(ラッパ状)に広がっている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0029】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、次の効果が得られる。
【0030】
導入流路15が直管形状の場合、導入流路15から保持室18に流入する際に溶融デブリの流れ方向が下方から水平方向へ急激に変化する。そのため、溶融デブリは導入流路15を流下した速度で第3伝熱板14に衝突し、第3伝熱板14への熱負荷が増加してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、導入流路15の流路幅が下方に向かって拡大している。そのため、溶融デブリの流れ方向を水平方向に緩やかに変化させることができる。したがって、第3伝熱板14へ衝突する溶融デブリの速度を減少し、第3伝熱板14への熱負荷を緩和することができる。更に、導入流路15の流路断面積が下方ほど広くなるため、溶融デブリの凝固等により、保持室18内に溶融デブリが充填される前に導入流路15、傾斜導入流路27、及び保持室18等が閉塞されることを抑制し、保持室18内の溶融デブリの充填率を向上させることができる。したがって、第1の空間17内で蒸気泡を十分に発生させ、第1伝熱板7の除熱量を十分に確保することができる。以上より、炉心溶融物4の冷却性をより向上させ格納容器50の床部への炉心溶融物4の侵食をより抑制することができる。
【0031】
<第3実施形態>
図8は本実施形態に係る床材ユニットのセグメントを示す上面図、
図9は
図8のIX−IX矢視縦断面図である。
図8及び
図9において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0032】
図8及び
図9に示すように、本実施形態に係るセグメント26aは蒸気抜き管28を備えている。蒸気抜き管28は、保持室18を貫通するように設けられ、第1の空間17と第2の空間23とを連通している。蒸気抜き管28は、平面視で断面が円形状に形成されている。本実施形態では、蒸気抜き管28は導入孔33を囲むように4つ設けられている。その他の構成は第2実施形態と同様である。
【0033】
上記構成により、本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果に加えて次の効果が得られる。
【0034】
第2の空間23内の蒸気泡は隣接するセグメントとの間の隙間から第1伝熱板7の上方に抜けていく(
図4D参照)が、第2の空間23内を隙間に向かって移動する過程で他の蒸気泡と合体して蒸気膜を形成してしまうと、この蒸気膜が第3伝熱板14の下面14Bを覆うことにより第3伝熱板14の熱伝達率が低下する可能性がある。また、床材ユニット6を複数のセグメントの集合体でなく一体構造とし、セグメント間に隙間が確保できない場合もある。この場合には、第2の空間23内の蒸気泡を床材ユニット6と格納容器側壁3との隙間から第1伝熱板7の上方に抜くことになるが、格納容器側壁3側に向かって移動する過程で他の蒸気泡と合体して蒸気膜を形成し、第3伝熱板14の下面14Bを蒸気膜が覆う可能性も高まる。
【0035】
これに対し、本実施形態では、第1の空間17と第2の空間23とを連通する蒸気抜き管28が備えられている。そのため、第2の空間23内で発生した蒸気泡を第2の空間23から第1の空間17に抜くことができ、第3伝熱板14の下面14Bが蒸気膜で覆われることを抑制して第3伝熱板14の熱伝達率を確保することができる。更に、第2の空間23から第1の空間17に抜けた蒸気泡を第1の空間17内の蒸気泡に加えることにより、第1伝熱板7に向けて上昇する蒸気泡の浮力を増加させ、第1伝熱板7の下面7Bに対する冷却水W1の衝突速度を増加させることができ、第1伝熱板7の除熱量を増加させることができる。以上より、炉心溶融物4の冷却性をより向上させ格納容器50の床部への炉心溶融物4の侵食をより抑制することができる。
【0036】
<第4実施形態>
図10は本実施形態に係る床材ユニットのセグメントを示す上面図、
図11は
図10のXI−XI矢視縦断面図である。
図10及び
図11において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0037】
図10及び
図11に示すように、本実施形態に係るセグメント36aは、第1伝熱板7の縁部に形成された第1伝熱板流通流路(切り欠き)29を備えている。切り欠き29は、平面視で半円形状に形成されている。本実施形態では、切り欠き29は第1伝熱板7の各辺に3つずつ設けられていて隣接するセグメントの切り欠き29と対向するようにしてある。その他の構成は第2実施形態と同様である。
【0038】
上記構成により、本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果に加えて、次の効果が得られる。
【0039】
本実施形態では、第1伝熱板7の縁部に形成された切り欠き29が備えられている。そのため、第1の空間17内で発生した蒸気泡を空気抜き孔20及び切り欠き29から第1伝熱板7の上方に抜くことができる。したがって、第1伝熱板7の下面7Bが蒸気膜で覆われることを抑制し、第1伝熱板7の除熱量を十分に確保することができる。また、複数のセグメントを単に並べるのではなく、隣接するもの同士を溶接等により連結し、一体構造とした場合にもセグメント間に切り欠き29による孔を確保することができるため、第1の空間17内で発生した蒸気泡を第1伝熱板7の上方に抜くことができる。したがって、この場合にも第1伝熱板7の下面7Aが蒸気膜で覆われることを抑制し、第1伝熱板7の除熱量を十分に確保することができる。以上より、炉心溶融物4の冷却性をより向上させ格納容器50の床部への炉心溶融物4の侵食をより抑制することができる。
【0040】
<第5実施形態>
図12は本実施形態に係る床材ユニットのセグメントを示す上面図、
図13は
図12のXIII−XIII矢視縦断面図である。
図12及び
図13において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0041】
図8及び
図9に示すように、本実施形態に係るセグメント46aは、第1伝熱板47が導入孔33に向かって下り傾斜に形成されている。すなわち、第1伝熱板47が、外縁部に対して導入孔33が下側(保持室18側)に位置するように形成されている。その他の構成は第2実施形態と同様である。
【0042】
上記構成により、本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果に加えて、次の効果が得られる。
【0043】
本実施形態では、第1伝熱板47が導入孔33に向かって下り傾斜に形成されている。そのため、第1伝熱板47上の炉心溶融物4の溶融デブリを重力を利用して導入流路15に積極的に流入させることができ、冷却機能の信頼性を高めることができる。また、第1冷却水流路17内の蒸気泡、及び第1伝熱板47の下面47B付近の蒸気泡の第1伝熱板47の外縁側への流動を促進し、これらの蒸気泡を空気抜き孔20及びセグメント46a間の隙間から第1伝熱板47の上方へ容易に抜くことができる。したがって、第1伝熱板47の下面47Bが蒸気膜で覆われることをより効果的に抑制することができる。複数のセグメントを溶接等により連結して一体構造とした場合にも、格納容器側壁3側に向かう蒸気泡の速度を増加させ、蒸気泡を第1伝熱板47の上方へ迅速に抜くことができる。したがって、この場合にも第1伝熱板47の下面47Bが蒸気膜で覆われることをより効果的に抑制することができる。以上より、炉心溶融物4の冷却性をより向上させ格納容器50の床部への炉心溶融物4の侵食をより抑制することができる。
【0044】
<第6実施形態>
図14は本実施形態に係る床材ユニットのセグメントを示す上面図、
図15は
図14のXV−XV矢視縦断面図、
図16は
図14のXVI−XVI矢視縦断面図である。
図14乃至
図16において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係るセグメント56aにおいては、
図14に示すように、保持室18が平面視で対称形を成す十字型に形成されており、保持室18の周囲で第1の空間17と第2の空間23とが広く接続している。具体的には、第2伝熱板13及び第3伝熱板14がそれぞれ断面U字形状に形成されていて、
図16に示すように、第2伝熱板13と第3伝熱板14とで断面が円形の管路を形成している。すなわち、保持室18は第2伝熱板13及び第3伝熱板14を周壁とする、断面が円形の管路形状に形成されている。
【0046】
図15に示すように、第3伝熱板14の下側には第2の空間23を挟んで第3伝熱板14に対向する第4伝熱板35が備えられている。第4伝熱板35は平面視で正方形状に形成された板部材である。第4伝熱板35の下面35Bにはスペーサ26が取り付けられており、第4伝熱板35と格納容器50の床面2との間には第3の冷却水対流空間(第3の空間)36が確保されている。すなわち、本実施形態では第3伝熱板14は格納容器50の床部2に支持されておらず、保持室18は導入流路15を介して第1の空間17中に吊り下げられた状態で配置されている。なお、本実施形態では、第4伝熱板35の上面35Aの外縁部に第1伝熱板支持柱22が立てられ、第1伝熱板支持柱22を介して第4伝熱板35で第1伝熱板7を支持している。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0047】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、次の効果が得られる。
【0048】
本実施形態では、第3伝熱板14の下側に第2の空間23を挟んで対向する第4伝熱板35を備えている。そのため、万一、第3伝熱板14が保持室18内の溶融デブリにより浸食され破損した場合でも、破損部から落下する溶融デブリを第4伝熱板35で保持することができる。第4伝熱板35で保持された溶融デブリは、第3の空間36内の冷却水W1との熱交換により冷却し凝固させることができる。したがって、第3伝熱板14及び第4伝熱板35の二重の防護境界により格納容器50の床面2への溶融デブリの落下を防止することができる。
【0049】
また、本実施形態では、保持室18を管路形状に形成して第1の空間17と第2の空間23とを広範に接続しているため、第2の空間23で発生した蒸気泡を第1の空間17に直接抜くことができる。その際、保持室18の断面を円形にしたことにより、保持室18の断面が四角形等の場合に比べて、保持室18の下面付近における冷却水W1の流れの抵抗を低減することができる。したがって、第1の空間17及び第2の空間23内の冷却水W1の対流をより促進することができる。
【0050】
以上より、炉心溶融物4の冷却性をより向上させ格納容器50の床部2への炉心溶融物4の侵食をより抑制することができる。
【0051】
<その他>
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0052】
各実施形態において、炉心溶融物導入流路15の断面が円形状の場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の本質的効果は、炉心溶融物の冷却性の向上により原子炉格納容器の床部への炉心溶融物の侵食を抑制することができるコンパクトな床材ユニットを提供することであり、この本質的効果を得る限りにおいては炉心溶融物導入流路15の断面形状は限定されない。例えば、炉心溶融物導入流路15の断面を矩形状としても良い。
【0053】
また、各実施形態において、複数のセグメント6a,6b・・・を互いに離間して配置して床材ユニット6を形成した場合を例示している。しかしながら、本発明の本質的効果を得る限りにおいては床材ユニット6は上述の構成に限定されない。例えば、複数のセグメント6a,6b・・・を搬入し、その後溶接等により一体構造としても良く、複数のセグメント6a,6b・・・を予め溶接等により一体構造とし、その後搬入しても良い。
【0054】
また、各実施形態において、第1伝熱板7に8つの蒸気抜き孔20を形成した場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の本質的効果を得る限りにおいては、第1伝熱板7に形成される蒸気抜き孔20の数は限定されない。例えば、9つ以上又は7つ以下の蒸気抜き孔20を形成してもよい。
【0055】
また、各実施形態において、複数のセグメント6a,6b・・・がそれぞれ1つの導入流路15を備えた場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の本質的効果を得る限りにおいては、複数のセグメント6a,6b・・・がそれぞれ複数の導入流路15を備えても良い。
【0056】
また、各実施形態においては、床材ユニット6を複数のセグメントの集合体としたのでセグメントの数だけ保持室18を備える場合を例に挙げて説明したが、例えば床材ユニット自体を1つのセグメントと同等の構成として保持室18を1つだけ備えた構成とすることもできる。
【0057】
また、本発明に係る床材ユニットは、沸騰水型原子炉、加圧水型原子炉等の軽水炉を始めとする各種原子炉の格納容器に適用可能である。