特許第6363410号(P6363410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363410粘着剤組成物、透明導電層用粘着剤層、積層体、及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363410
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、透明導電層用粘着剤層、積層体、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20180712BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180712BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20180712BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20180712BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180712BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180712BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180712BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J11/06
   C09J7/38
   C09J7/29
   B32B27/00 C
   B32B7/02 104
   G02B5/30
   G02F1/1335
【請求項の数】13
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-130740(P2014-130740)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-145491(P2015-145491A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2017年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-186758(P2013-186758)
(32)【優先日】2013年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-479(P2014-479)
(32)【優先日】2014年1月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-137025(P2013-137025)
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋月 伸介
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】保井 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】永田 みずほ
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−054516(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/014814(WO,A1)
【文献】 特開2012−092184(JP,A)
【文献】 特開2008−189838(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/208695(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/208550(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/103952(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電層を有する透明導電性基材の前記透明導電層と接触する粘着剤層を形成するための粘着剤組成物であって、
重量平均分子量が120万〜300万であるカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体、イソシアネート系架橋剤、及び下記一般式(1):
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である)
で表される化合物を含有し、
前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して0.005〜3重量部であることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、(メタ)アクリル酸エステル及びカルボキシル基含有モノマーを含有するモノマー成分を重合して得られるものであり、前記カルボキシル基含有モノマーは、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成する全モノマー成分100重量部に対して0.05〜10重量部であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着剤組成物が、リン酸を含有し、かつ、一般式(1)のR及びRのいずれか一方が水素原子であり、他方が、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基であるリン酸モノエステル、及び、一般式(1)のR及びRが、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基であるリン酸ジエステルからなる群から選択される1つ以上のリン酸エステルを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着剤組成物が、リン酸及びリン酸モノエステルを含有することを特徴とする、請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記炭素数の1〜18の炭化水素残基が、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記イソシアネート系架橋剤が、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
さらに、過酸化物系架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記透明導電層が、酸化インジウムスズから形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記酸化インジウムスズが、非結晶性の酸化インジウムスズであることを特徴とする請求項8に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成されることを特徴とする、透明導電層用粘着剤層。
【請求項11】
基材フィルム、請求項10に記載の透明導電層用粘着剤層、及び透明導電層を有する透明導電性基材をこの順に含み、前記透明導電層用粘着剤層が前記透明導電性基材の透明導電層に接触することを特徴とする積層体。
【請求項12】
前記基材フィルムが、ヨウ素及び/又はヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有するヨウ素系偏光フィルムであることを特徴とする請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の積層体をタッチパネルとして用いることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電層を有する透明導電性基材の前記透明導電層と接触する粘着剤層を形成するための粘着剤組成物、及び前記粘着剤組成物から形成される透明導電層用粘着剤層に関する。さらに、本発明は、基材フィルム、前記透明導電層用粘着剤層、及び透明導電層をこの順に含む積層体、前記積層体をタッチパネルとして用いる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯用音楽プレイヤー等に用いる液晶表示装置や画像表示装置とタッチパネルを組み合わせて用いる入力装置が普及してきている。タッチパネルには、ガラス板又は透明樹脂フィルムからなる透明基材に透明導電層が形成された基材(例えば、透明導電性フィルム)が使用されており、例えば、静電容量方式のタッチパネルにおいては、当該透明導電層を有する基材の透明導電層表面に両面粘着シートが積層された積層体が形成され、該積層体の粘着剤層を介して他の基材に固定される。
【0003】
前記透明導電層は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等の高い透明性と導電性を有する金属を蒸着して形成される。前記酸化インジウムスズ(ITO)は、配線のパターニングの際のエッチング工程において良好なエッチング特性を有するものであり、さらには、非晶性(アモルファス)の酸化インジウムスズ(ITO)がさらに有利であり、よく用いられている。
【0004】
一般的な粘着剤は、粘着成分の凝集力を上げるために、粘着剤成分としてカルボキシル基含有単量体等が使用されている。しかしながら、このような酸成分を含む粘着剤層が透明導電層に直接接触した場合、酸によって透明導電層が腐食するため、この用途で用いることは困難であった。
【0005】
このような金属腐食の問題を解決する目的で、種々の金属腐食防止性を有する粘着剤組成物が提案されている。具体的には、特定量の窒素原子含有成分を添加して、酸成分含有量を低減させた粘着剤組成物(例えば、特許文献1参照)、酸性基を有しないアクリル系樹脂を主成分として含有する粘着剤組成物(例えば、特許文献2参照)、酸性基を実質的に有しない(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
【0006】
また、リン酸エステル化合物を含有する粘着剤として、例えば、側鎖に水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系共重合体、イオン化合物、硬化剤、及びリン酸エステル化合物を含有する帯電防止アクリル粘着剤(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−144002号公報
【特許文献2】特表2011−225835号公報
【特許文献3】特開2013−018227号公報
【特許文献4】特開2007−2111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1〜3の粘着剤組成物は、カルボキシル基含樹脂等の酸成分の含有量を低減させているか、又は酸成分を用いていないため、金属腐食抑制効果については一定の効果を奏するものである。しかしながら、前記特許文献1〜3の粘着剤組成物では、前記酸成分の含有量が少ないため、樹脂の凝集力が不足し、接着力や保持力等の基本的な物性が不足するものであり、特に透明導電層用の粘着剤としては十分な性能を有しているとは言えないものであった。
【0009】
さらに、特許文献4の帯電防止アクリル粘着剤は、表面保護粘着フィルム用の粘着剤用として用いられるものであり、透明導電層用としては、接着力や接着信頼性等の点で充分なものではなかった。
【0010】
従って、本発明は、接着性に優れ、かつ、透明導電層上に積層された場合にも、前記透明導電層の腐食が抑制され、前記透明導電層の表面抵抗値が上昇することを抑制できる粘着剤層を形成することができる粘着剤組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記粘着剤組成物から形成される透明導電層用粘着剤層、基材フィルム、前記透明導電層用粘着剤層、及び透明導電層をこの順に含む積層体、前記積層体をタッチパネルとして用いる画像表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記粘着剤組成物とすることにより、前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、透明導電層を有する透明導電性基材の前記透明導電層と接触する粘着剤層を形成するための粘着剤組成物であって、
重量平均分子量が120万〜300万であるカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体、イソシアネート系架橋剤、及び下記一般式(1):
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である)
で表される化合物を含有し、
前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して0.005〜3重量部であることを特徴とする粘着剤組成物に関する。
【0013】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、(メタ)アクリル酸エステル及びカルボキシル基含有モノマーを含有するモノマー成分を重合して得られるものであり、
前記カルボキシル基含有モノマーは、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成する全モノマー成分100重量部に対して0.05〜10重量部であることが好ましい。
【0014】
前記粘着剤組成物が、リン酸を含み、かつ、一般式(1)のR及びRのいずれか一方が水素原子であり、他方が、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基であるリン酸モノエステル、及び、一般式(1)のR及びRが、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基であるリン酸ジエステルからなる群から選択される1つ以上のリン酸エステルを含有することが好ましい。
【0015】
前記粘着剤組成物が、リン酸及びリン酸モノエステルを含むことが好ましい。また、リン酸及びリン酸モノエステルの合計量は、前記一般式(1)で表される化合物の全量(100重量%)に対して80重量%以上であることが好ましい。
【0016】
前記炭素数の1〜18の炭化水素残基が、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましい。
【0017】
前記イソシアネート系架橋剤が、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。
【0018】
さらに、過酸化物系架橋剤を含有することが好ましい。
【0019】
前記透明導電層が、酸化インジウムスズから形成されることが好ましい。
【0020】
前記酸化インジウムスズが、非結晶性の酸化インジウムスズであることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、前記粘着剤組成物から形成されることを特徴とする、透明導電層用粘着剤層に関する。
【0022】
また、本発明は、基材フィルム、前記透明導電層用粘着剤層、及び透明導電層を有する透明導電性基材をこの順に含み、前記透明導電層用粘着剤層が前記透明導電性基材の透明導電層に接触することを特徴とする積層体に関する。
【0023】
前記基材フィルムが、ヨウ素及び/又はヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有するヨウ素系偏光フィルムであることが好ましい。ここで、「ヨウ素及び/又はヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子」とは、ヨウ素を含有するヨウ素系偏光子、ヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子、ヨウ素及びヨウ素イオンの両方を含有するヨウ素系偏光子のことであり、本発明においてはいずれであっても好適に用いることができる。
【0024】
さらに、本発明は、前記積層体をタッチパネルとして用いることを特徴とする画像表示装置に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の粘着剤組成物は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むため、高い凝集力を有し、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層は高い接着力を有する。また、本発明の粘着剤組成物は、酸成分であるカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むにもかかわらず、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層を透明導電層上に積層した場合にも、透明導電層の腐食を抑制することができ、透明導電層の表面抵抗上昇を抑制できるものである。これは、本発明の粘着剤組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物がリン酸である場合には、当該リン酸が透明導電層表面において透明導電層の金属イオンと不動態皮膜を形成し、または一般式(1)で表される化合物がリン酸エステルである場合、当該リン酸エステルが選択的に透明導電層表面に吸着して被膜を形成し、粘着剤層中のHを反発して寄せ付けないため、透明導電層の腐食が妨げられ、表面抵抗値の上昇を抑制できると考えられる。また、本発明の粘着剤組成物に含まれるイソシアネート系架橋剤は、酸成分による触媒効果でゲル化する場合があるが、本発明の粘着剤組成物においては、特定の酸性リン酸エステルを特定量含むため当該ゲル化を制御でき、良好なポットライフを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.粘着剤組成物
本発明の粘着剤組成物は、透明導電層を有する透明導電性基材の前記透明導電層と接触する粘着剤層を形成するための粘着剤組成物であって、
重量平均分子量が120万〜300万であるカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体、イソシアネート系架橋剤、及び下記一般式(1):
【化2】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である)で表される化合物を含有し、
前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して0.005〜3重量部であることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、前記一般式(1)中、R及びRのいずれもが、水素原子であるリン酸(HPO)も好適に用いることができ、また、当該リン酸の塩(ナトリウム、カリウム、及び、マグネシウム等の金属塩、アンモニウム塩等)も好適に用いることができる。
【0029】
また、前記一般式(1)中、少なくともR及びRの一方が、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基であるリン酸エステルも好適に用いることができる。酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、−(CHCHO)(Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、又は、炭素数6〜18のアリール基であり、nは0〜15の整数である。)等を挙げることができる。また、アルキル基、アルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。これらの中でも、前記炭素数の1〜18の炭化水素残基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基が好ましく、炭素数2〜6の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。
【0030】
また、本発明においては、一般式(1)で示される化合物としては、例えば、以下の一般式(2):
【化3】
(式中、Rは、前記同様であり、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、又は、アルケニル基であり、nは0〜15の整数である。)で表される酸性リン酸エステルが好ましい。
【0031】
一般式(2)のRは、一般式(1)のRと同様であり、水素原子、又は、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である。酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基としては、前記同様のものをあげることができる。一般式(2)のRとしては、水素原子、炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基、又は、炭素数6〜18のアリール基であることが好ましく、水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、又は炭素数2〜6の直鎖又は分岐のアルキル基であることがさらに好ましい。Rとしては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、又は、炭素数6〜18のアリール基を挙げることができ、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数2〜6のアルキル基がさらに好ましい。また、nは、0〜15の整数であり、0〜10の整数であることが好ましい。また、本発明においては、ポリエチレンオキサイド構造(CHCHO)を含まない(すなわち、式(2)において、n=0)であることが、劣化防止の観点から好ましい。
【0032】
一般式(2)で表される酸性リン酸エステルとしては、透明導電層に対する吸着効果の観点から、Rが水素原子で、Rが、炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基であるリン酸モノエステルが好ましく、Rが水素原子で、Rが、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であるリン酸モノエステルがより好ましく、Rが水素原子で、Rが、炭素数2〜6の直鎖又は分岐のアルキル基であるリン酸モノエステルがさらに好ましい。
【0033】
また、本発明においては、一般式(2)で表される化合物を2種以上混合して使用してよく、また、一般式(2)で表される化合物とリン酸(一般式(1)のR=R=水素原子)との混合物を使用してよい。一般に、一般式(2)で示される酸性リン酸エステルは、モノエステル(R=水素原子)とジエステル(R=酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基)の混合物として得られることが多いものであり、前記モノエステルとジエステルの混合物に、前記リン酸をさらに加えて使用してもよい。
【0034】
本発明においては、一般式(2)で示される化合物の塩(ナトリウム、カリウム、及び、マグネシウム等の金属塩、アンモニウム塩等)も好適に用いることができる。
【0035】
前記一般式(2)で示される酸性リン酸エステルの市販品としては、東邦化学工業(株)製の「フォスファノールSM−172」(一般式(2)のR=R=C17、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:219mgKOH/g)、「フォスファノールGF−185」(一般式(2)のR=R=C1327、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:158mgKOH/g)、「フォスファノールBH−650」(一般式(2)のR=R=C、n=1、モノ・ジ混合物、酸価:388mgKOH/g)、「フォスファノールRS−410」(一般式(2)のR=R=C1327、n=4、モノ・ジ混合物、酸価:105mgKOH/g)、「フォスファノールRS−610」(一般式(2)のR=C1327、R=C1327、n=6、モノ・ジ混合物、酸価:82mgKOH/g)、「フォスファノールML−220」(一般式(2)のR=R=C1225、n=2、モノ・ジ混合物)、「フォスファノールML−200」(一般式(2)のR=R=C1225、n=0、モノ・ジ混合物)、「フォスファノールED−200」(一般式(2)のR=R=C17、n=1、モノ・ジ混合物)、「フォスファノールRL−210」(一般式(2)のR=R=C1837、n=2、モノ・ジ混合物)、「フォスファノールGF−339(一般式(2)のR=R=C13〜C1021の混合、n=0、モノ・ジ混合物)、「フォスファノールGF−199」(一般式(2)のR=R=C1225、n=0、モノ・ジ混合物)、「フォスファノールRL−310」(一般式(2)のR=R=C1837、n=3、モノ・ジ混合物)、日光ケミカルズ(株)製の「ニッコールDDP−2」(一般式(2)のR=R=C1225〜C1531の混合物、n=2)、「フォスファノールLP−700」(一般式(2)のR=R=C、n=6、モノ・ジ混合物)、大八化学工業(株)製の「AP−1」(一般式(2)のR=R=CH、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:650mgKOH/g以上)、「AP−4」(一般式(2)のR=R=C、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:452mgKOH/g)、「DP−4」(一般式(2)のR=R=C、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:292mgKOH/g)、「MP−4」(一般式(2)のR=H、R=C、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:670mgKOH/g)、「AP−8」(一般式(2)のR=R=C17、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:306mgKOH/g)、「AP−10」(一般式(2)のR=R=C1021、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:263mgKOH/g)、「MP−10」(一般式(2)のR=H、R=C1021、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:400mgKOH/g)、城北化学(株)製の「JP−508」(一般式(2)のR=R=C17、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:288mgKOH/g)、「JP−513」(一般式(2)のR=R=C1327、n=0、モノ・ジ混合物)、「JP−524R」(一般式(2)のR=R=C2449、n=0、モノ・ジ混合物)、「DBP」(一般式(2)のR=R=C、n=0、モノ・ジ混合物、酸価:266mgKOH/g)、「LB−58」(一般式(2)のR=R=C17、n=0、ジエステル体、酸価:173mgKOH/g)、SIGMA−ALDRICH製のモノ−N−ブチルホスフェート(O=P(OH)(OC)、一般式(2)のR=H、R=C、n=0、Product Nomber:CDS001281、モノエステル体)等ならびにそれらの塩を挙げることができる。なお、上記「モノ・ジ混合物」とは、モノエステル(一般式(2)のR=H)とジエステル(一般式(2)のR=酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基)の混合物であることを示すものであり、例えば、フォスファノールSM−172の場合、モノエステル(一般式(2)のR=H、R=C17、n=0)と、ジエステル(一般式(2)のR=R=C17、n=0)の混合物であることを示す。前記「モノ・ジ混合物」のモノエステルとジエステルの混合割合は、31P−NMRの測定結果より算出することができる。測定方法については、実施例に記載の通りである。
【0036】
本発明で用いる一般式(1)で表される化合物、又は、一般式(2)で表される化合物は、1種単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよいが、透明導電層に対する吸着効果の観点から、リン酸、リン酸モノエステル、及び、リン酸ジエステルからなる群から選択される2つ以上の混合物であることが好ましく、リン酸を含み、かつ、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルからなる群から選択される1つ以上のリン酸エステルを含む混合物であることがより好ましく、リン酸モノエステル及びリン酸を含む混合物であることが特に好ましい。本発明においては、リン酸、リン酸モノエステル、及び、リン酸ジエステルからなる群から選択される1種単独を用いることもできるが、リン酸を単独で使用すると、粘着剤組成物のポットライフが不十分になる場合がある。また、リン酸は非常に極性の高い化合物であり、(メタ)アクリル酸エステル共重合体との相溶性が十分ではないため、リン酸が粘着剤層表面にブリードアウトし、その結果、耐久性の点で問題が発生する場合がある。また、リン酸を使用せず、リン酸エステル(リン酸モノエステル及び/又はリン酸ジエステル)のみを使用すると、非常に過酷な条件での耐久性(例えば、ヒートサイクル試験等)で問題が生じる場合がある。本発明においては、透明導電層の腐食の抑制と非常に過酷な条件での耐久性のバランスの観点からは、リン酸とリン酸モノエステルを含むリン酸系化合物を使用することが最も好ましい。また、リン酸及びリン酸モノエステルの合計量は、特に限定されないが、前記一般式(1)で表される化合物の全量(100重量%)に対して80重量%以上であることが好ましい。ここで、リン酸モノエステルとは、一般式(1)のR及びRのいずれか一方が水素原子であり、他方が、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である化合物(一般式(2)の場合は、Rが水素原子である化合物)であり、リン酸ジエステルとは、一般式(1)のR及びRが、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である化合物(一般式(2)の場合は、Rが酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である化合物)である。
【0037】
前記透明導電層に対する吸着効果は、透明導電層と前記リン酸系化合物が、HSAB則で定義される、すなわち「硬い及び軟らかい酸塩基の法則」に関係すると考えられ、硬い酸には硬い塩基、軟かい酸には軟らかい塩基を組み合わせることで吸着効果が高く、その結果、高い劣化防止効果が得られると考えられる。すなわち、例えば、ITOのInはHSAB則で定義される硬い酸に該当し、リン酸系化合物は、リン酸、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルの順で硬い塩基から軟らかい塩基になるため、前記順で効果的にITOに吸着することができ、その結果、高い劣化防止効果が得られると考えられる。
【0038】
また、モノエステル体とジエステル体の混合物を用いる場合は、モノエステル体を多く含む混合物であることが好ましい。前記モノエステル体とジエステル体の混合物の混合割合(重量比)は、モノエステル体:ジエステル体=6:4〜9:1であることが好ましく、7:3〜9:1であることがより好ましい。前記理由より、モノエステル体を多く含むことで、透明導電層に対する吸着効果が高いため好ましい。
【0039】
また、前述の通り、本発明においては、リン酸エステル系化合物(特にリン酸モノエステル)にさらにリン酸を添加することが好ましく、その場合のリン酸の添加量は、リン酸エステル系化合物100重量部に対して、10〜400重量部であることが好ましく、10〜100重量部であることがより好ましく、10〜50重量部であることが、被着体に対する吸着効果の観点から好ましい。また、非常に過酷な条件での耐久性の観点からは、リン酸の添加量は、リン酸エステル系化合物100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましく、10〜80重量部であることがより好ましい。
【0040】
また、本発明において用いるリン酸化合物の酸価は、900mgKOH/g以下であることが好ましく、50〜800mgKOH/gであることがより好ましく、50〜700mgKOH/gであることが好ましい。また、生産上の取扱いの観点からは、前記酸性リン酸エステルの酸価は、80〜400mgKOH/gであることが好ましく、80〜350mgKOH/gであることがより好ましく、100〜300mgKOH/gであることがさらに好ましく、100〜280mgKOH/gであることが特に好ましい。酸性リン酸エステルの酸価が前記範囲内であることにより、透明導電層の表面抵抗値の上昇を抑制することができ、かつ、加熱・加湿に対する耐久性が向上することができる傾向があり好ましい。また、酸性リン酸エステルは、本発明の粘着剤組成物に含まれるイソシアネート系架橋剤の架橋反応の反応触媒として作用することがあり、粘着剤組成物のポットライフが短くなってしまう場合があった。しかしながら、酸性リン酸エステルの酸価を前記範囲とすることで、反応触媒としての作用することを抑制することができる傾向があるため、粘着剤組成物のポットライフの観点から好ましい。また、前記範囲の酸価を有する酸性リン酸エステルを、後述する添加量で添加することが、効率的にゲル化抑制効果を発揮できる観点から好ましい。
【0041】
また、本発明においては、前記一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される酸性リン酸エステル等の二量体、三量体等の多量体も用いることができる。
【0042】
前記一般式(1)で表される化合物の添加量は、後述するカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して、0.005〜3重量部であり、0.005〜2.5重量部であることが好ましく、0.01〜1重量部であることがより好ましく、0.01〜2重量部であることがさらに好ましく、0.02〜0.4重量部であることが特に好ましい。一般式(1)で表される化合物の添加量が前記範囲内であることにより、透明導電層の表面抵抗値の上昇を抑制することができ、かつ、加熱・加湿に対する耐久性が向上することができるため好ましい。また、本発明においては、一般式(1)で表される化合物を2つ以上用いることができるが、その場合は、合計量が上記範囲になるように添加することができる。
【0043】
本発明においては、前記一般式(1)で表される化合物を含む粘着剤組成物から形成される粘着剤層に、透明導電層を積層しても、透明導電層の表面抵抗上昇を抑制できるものである。これは、本発明の粘着剤組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物がリン酸である場合には、当該リン酸が透明導電層表面において透明導電層の金属イオンと不動態皮膜を形成し、または一般式(1)で表される化合物がリン酸エステルである場合、当該リン酸エステルが選択的に透明導電層表面に吸着して被膜を形成し、粘着剤層中のHを反発して寄せ付けないため、透明導電層の腐食が妨げられ、表面抵抗値の上昇を抑制できると考えられる。
【0044】
ここでいう腐食について、金属酸化物では、一般的な金属腐食とは異なる機構で腐食が起こっている。
【0045】
ITOのような金属酸化物の場合、腐食反応は、一般的な酸性物質が存在する条件下で金属酸化物を溶解させ、結果として、当該金属酸化物を含む層(金属酸化物層)の抵抗値の上昇といった不具合を生じる。また、前記酸性物質以外の物質の場合は、その物質が金属酸化物層中に染み込み、金属酸化物のキャリアー移動度を低下させるため、抵抗値の上昇が生じる。
【0046】
上記、金属腐食と金属酸化物の腐食の作用機構の違いにより、ITOのような金属酸化物に対して、一般的な防錆剤を用いても腐食抑制効果が見られない場合がある。
【0047】
本発明において用いる一般式(1)で表される化合物は酸性物質であるが、当該酸性物質による腐食の影響は小さく、金属又は金属酸化物の表面に被膜等を形成することによって、粘着剤層に含まれる酸やその他の劣化を及ぼす物質による抵抗値上昇を抑えている。
【0048】
一般式(1)で表される化合物による腐食抑制効果は、特に透明導電層に用いられる金属酸化物のときに効果が大きく、更にはITOのときによりよい効果を発揮する。
【0049】
本発明で用いるカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びカルボキシル基含有モノマーを含有するモノマー成分を重合して得られるものであることが好ましく、炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有し、かつ、カルボキシル基含有アルキル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分を重合して得られたものであることがより好ましい。なお、アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0050】
炭素数4〜18のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状の各種のものを用いることができる。前記炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、又は、ドデシル(メタ)アクリレート等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらの中でも、炭素数4〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0051】
前記炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成するモノマー成分100重量部に対して、50重量部以上であることが好ましく、60重量部以上であることが好ましく、70重量部以上であることがより好ましく、80重量部以上であることがさらに好ましく、90重量部以上であることが特に好ましい。
【0052】
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等が挙げられ、これらは単独又は組み合わせて使用できる。
【0053】
カルボキシル基含有モノマーは、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成するモノマー成分100重量部に対して、0.05〜10重量部であることが好ましく、0.3〜10重量部であることがより好ましい。カルボキシル基含有モノマーを前記範囲内とすることで、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体の凝集力を向上させることができ、十分な接着力や保持力を得ることができるため好ましい。
【0054】
また、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成するモノマー成分には、前記炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有アルキル(メタ)アクリレート以外にも、ヒドロキシル基含有モノマー、アリール基含有モノマー、その他の共重合モノマーを添加することができる。
【0055】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらを1種単独で、又は、2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましく、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基との架橋点を効率よく確保することができる点から、4−ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましい。
【0056】
ヒドロキシル基含有モノマーは、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成するモノマー成分100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましく、0.1〜3重量部がさらに好ましい。
【0057】
アリール基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつアリール基を有するものを特に制限なく用いることができる。アリール基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。
【0058】
アリール基含有モノマーは、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成するモノマー成分100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、1〜20重量部がより好ましく、5〜15重量部がさらに好ましい。
【0059】
その他の共重合モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合に係る重合性の官能基を有するものであれば特に制限されず、例えば、プロピル(メタ)アクリレート等の炭素数3以下又は19以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステル;例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;例えば、スチレンなどのスチレン系モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどの官能性モノマー;例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;例えば、ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;例えば、塩化ビニルなどのハロゲン原子含有モノマー類;例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等の環状窒素含有モノマー等が挙げられる。
【0060】
また、共重合性モノマーとして、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル
(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0061】
また、共重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;その他、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルや、フッ素(メタ)アクリレートなどの複素環や、ハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0062】
さらに、共重合性モノマーとして、多官能性モノマーを用いることができる。多官能性モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する化合物などが挙げられる。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノ又はポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノ又はポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノ又はポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル等の反応性の不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。また、多官能性モノマーとしては、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0063】
その他の共重合モノマーの割合は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成するモノマー成分100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましく、15重量部以下が特に好ましい。前記共重合モノマーの割合が多くなりすぎると、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層のガラスやフィルム、透明導電層等の各種の被着体に対する密着性低下などの粘着特性が低下するおそれがある。
【0064】
本発明で用いるカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、120万〜300万であり、120万〜270万が好ましく、140万〜250万がより好ましい。重量平均分子量が120万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が120万より小さいと、粘着剤組成物中に低分子量成分が多くなり、当該低分子量成分が粘着剤層からブリードアウトして、透明性を損なう場合があった。また重量平均分子量が120万より小さい(メタ)カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いて得られた粘着剤層は、耐溶剤性や力学特性が劣る場合があった。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると、塗工するための粘度に調整するために多量の希釈溶剤が必要となり、コストの観点から好ましくない。また、重量平均分子量が、前記範囲内にあることで、耐腐食性、耐久性の観点からも好ましい。前記重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0065】
このようなカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択でき、特に限定されるものではない。また、得られるカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0066】
溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0067】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0068】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(商品名:VA−057、和光純薬工業(株)製)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成するモノマー成分100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましい。
【0070】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが挙げられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0071】
本発明の粘着剤組成物には、高温多湿条件下での密着性を向上させるために、各種のシランカップリング剤を添加することができる。シランカップリング剤としては、任意の適切な官能基を有するものを用いることができる。官能基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロキシ基、アセトアセチル基、イソシアネート基、スチリル基、ポリスルフィド基等が挙げられる。具体的には、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のポリスルフィド基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0072】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成するモノマー成分100重量部に対して、1重量部以下であることが好ましく、0.01〜1重量部であることがより好ましく、0.02〜0.8重量部であることがさらに好ましく、0.05〜0.7重量部であることが特に好ましい。シランカップリング剤の配合量が1重量部を超えると、未反応カップリング剤成分が発生し、耐久性の点で好ましくない。
【0073】
なお、前記シランカップリング剤が、前記モノマー成分とラジカル重合によって共重合し得る場合には、当該シランカップリング剤を前記モノマー成分として用いることができる。その割合は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体を形成するモノマー成分100重量部に対して、0.005〜0.7重量部であるのが好ましい。
【0074】
本発明粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を含むことで、粘着剤の耐久性に関係する凝集力を付与できる。
【0075】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。
【0076】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。
【0077】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートHL、日本ポリウレタン工業(株)製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX、日本ポリウレタン工業(株)製)などのイソシアネート付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名:D110N、三井化学(株)製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名:D160N、三井化学(株)製);ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどを挙げることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネートを用いることが、反応速度が速いため、好ましい。
【0078】
本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の配合割合は、特に限定されないが、例えば、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.01〜5重量部であることがより好ましい。
【0079】
また、本発明の粘着剤組成物においては、前記イソシアネート系架橋剤とともに、過酸化物系架橋剤を用いることが好ましい。
【0080】
前記過酸化物系架橋剤としては、各種過酸化物が用いられる。過酸化物としては、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−へキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、などがあげられる。これらの中でも、特に架橋反応効率に優れる、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシドが好ましく用いられる。
【0081】
本発明の粘着剤組成物における過酸化物系架橋剤の配合割合は、特に限定されないが、例えば、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、0.01〜10重量部であることがより好ましく、0.01〜5重量部であることがさらに好ましい。
【0082】
また、架橋剤として、前記イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他の架橋剤も用いることができる。
【0083】
架橋剤としては、前記以外の有機系架橋剤や多官能性金属キレートが挙げられる。前記以外の有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属原子が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
さらには、本発明の粘着剤組成物には、必要に応じて、粘度調整剤、剥離調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤(顔料、染料など)、pH調整剤(酸又は塩基)、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜使用することもできる。
【0085】
本発明の粘着剤組成物は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体、イソシアネート系架橋剤を含むものであり、当該粘着剤組成物を架橋することで粘着剤層を形成することができる。本発明の粘着剤組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物は、イソシアネート系架橋剤や過酸化物系架橋剤等の架橋剤の架橋促進効果を有するため、本発明の粘着剤組成物は、製造初期段階から、粘着剤層のゲル分率を高めることができる。その結果、加工性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0086】
本発明の粘着剤組成物において、加工性・生産性を高めるためには、粘着剤組成物を加熱架橋(155℃、2分)した2時間後の粘着剤層のゲル分率を、45〜95重量%とすることが好ましく、55〜95重量%とすることがより好ましく、60〜85重量%とすることがさらに好ましい。ゲル分率が、45重量%未満の場合は、粘着剤層が柔らかすぎるため、この状態で加工を行うと、加工の際に刃に糊がつく等の問題が発生する傾向がある。また架橋後の粘着剤層の巻き取り工程で打痕が発生し、外観に問題が出るため生産性に劣る。なお、粘着剤層のゲル分率の測定は、実施例に記載の方法で行うことができる。
【0087】
2.透明導電層用粘着剤層
本発明の透明導電層用粘着剤層は、前記粘着剤組成物から形成されることを特徴とする。粘着剤組成物としては、前述の本発明の粘着剤組成物を用いることができる。また、粘着剤層の形成方法は、後述する。
【0088】
3.積層体
本発明の積層体は、基材フィルム、前記透明導電層用粘着剤層、及び透明導電層を有する透明導電性基材をこの順に含み、前記透明導電層用粘着剤層が前記透明導電性基材の透明導電層に接触することを特徴とする。
【0089】
透明導電層用粘着剤層としては、前述の本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を用いることができる。
【0090】
前記粘着剤層の形成方法は特に限定されないが、各種基材上に前記粘着剤組成物を塗布し、熱オーブン等の乾燥器により乾燥して、溶剤等を揮散させて粘着剤層を形成し、前記基材フィルム上に、当該粘着剤層を転写する方法であってもよく、前記基材フィルム上に直接前記粘着剤組成物を塗布して、粘着剤層を形成してもよい。
【0091】
前記基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、離型フィルム、透明樹脂フィルム基材等の各種基材を挙げることができる。
【0092】
前記基材フィルムや基材への塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ファウンテンコーター、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0093】
乾燥条件(温度、時間)は、特に限定されるものではなく、粘着剤組成物の組成、濃度等により適宜設定することができるが、例えば、80〜170℃程度、好ましくは90〜200℃で、1〜60分間、好ましくは2〜30分間である。
【0094】
粘着剤層の厚さ(乾燥後)は、例えば、5〜100μmであることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましく、12〜40μmであることがさらに好ましい。粘着剤層の厚さが5μm未満では、被着体に対する密着性が乏しくなり、高温、高温多湿下での耐久性が十分ではない傾向がある。一方、粘着剤層の厚さが100μmを超える場合には、粘着剤層を形成する際の粘着剤組成物の塗布、乾燥時に十分に乾燥しきれず、気泡が残存したり、粘着剤層の面に厚みムラが発生したりして、外観上の問題が顕在化し易くなる傾向がある。
【0095】
前記離型フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点から樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0096】
前記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0097】
前記離型フィルムの厚みは、通常5〜200μmであり、好ましくは5〜100μm程度である。前記離型フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をすることもできる。特に、前記離型フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜行うことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0098】
前記透明樹脂フィルム基材としては、特に制限されないが、透明性を有する各種の樹脂フィルムが用いられる。当該樹脂フィルムは1層のフィルムにより形成されている。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂である。前記透明樹脂フィルム基材の厚みは、15〜200μmであることが好ましい。
【0099】
また、基材フィルムと粘着剤層との間には、アンカー層を有していてもよい。アンカー層を形成する材料は特に限定されないが、例えば、各種ポリマー類、金属酸化物のゾル、シリカゾル等が挙げられる。また、前記アンカー層を形成するアンカー剤には、帯電防止剤を含有させることができる。また、アンカー層の厚みは、特に限定されるものではないが、5〜300nm程度であることが好ましい。
【0100】
また、前記アンカー剤には、アンカーコート層と接触する際に生じる粘着剤層や基材フィルムの劣化等を抑制する目的で各種の添加剤を配合することができ、またアンカーコート層に機能付与する目的で各種添加剤を配合することができる。例えば、酸化防止剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤等を添加することができる。
【0101】
本発明の積層体に使用される基材フィルムとしては、樹脂フィルム、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられる光学フィルム等の各種フィルムを用いることができ、その種類は特に制限されない。前記樹脂フィルムとしては、本明細書に記載の樹脂フィルムを挙げることができる。前記光学フィルムとしては偏光フィルムが挙げられる。偏光フィルムは、偏光子の片面、又は、両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0102】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好ましく、ヨウ素及び/又はヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子がより好ましい。また、これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0103】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0104】
また、本発明においては、厚みが10μm以下の薄型偏光子も用いることができる。薄型化の観点から言えば当該厚みは1〜7μmであるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光フィルムとしての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
【0105】
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51−069644号公報や特開2000−338329号公報や、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、または特許4751481号明細書や特開2012−073563号公報に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法により得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0106】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、または特許4751481号明細書や特開2012−073563号公報に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許4751481号明細書や特開2012−073563号公報に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。
【0107】
前記偏光子の片面、又は、両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は、前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0108】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄膜性などの点より1〜500μm程度である。
【0109】
前記偏光子と保護フィルムとは通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。電子線硬化型偏光フィルム用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
【0110】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0111】
本発明においては、基材フィルムとして、前記ヨウ素及び/又はヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有するヨウ素系偏光フィルムを用いることができる。当該ヨウ素系偏光フィルムとITO等の透明導電層とを、粘着剤層を介して積層した場合、ヨウ素系偏光フィルムからの微量のヨウ素が前記粘着剤層中に染み出し、それがITO等の透明導電層を腐食させるという問題もあった。しかしながら、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層に含まれる一般式(1)で表される化合物は、前述の通り、透明導電層表面に被膜を形成するため、偏光子から染み出したヨウ素が透明導電層表面に移行することも防ぐことができるものである。
【0112】
また偏光フィルム以外の光学フィルムとしては、例えば、反射板や反透過板、位相差板
(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光フィルムに、実用に際して積層して、1層、又は、2層以上用いることができる。
【0113】
また、前記光学フィルムには活性化処理を施すことができる。活性化処理は各種方法を採用でき、例えばコロナ処理、低圧UV処理、プラズマ処理等を採用できる。
【0114】
透明導電層を有する透明導電性基材としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができるが、一般的に、透明基材上に透明導電層を有するものが使用されている。
【0115】
透明基材としては、透明性を有するものであればよく、例えば、樹脂フィルムや、ガラスなどからなる基材(例えば、シート状やフィルム状、板状の基材など)などが挙げられ、樹脂フィルムが特に好ましい。透明基材の厚さは、特に限定されないが、10〜200μm程度が好ましく、15〜150μm程度がより好ましい。
【0116】
前記樹脂フィルムの材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料が挙げられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂である。
【0117】
また、前記透明基材には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電層の前記透明基材に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電層を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0118】
前記透明導電層の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。また、ITOの中でも、非結晶性の酸化インジウムスズが、本発明の効果が顕著に発現されるため、好ましい。ITOとしては、酸化インジウム80〜99重量%及び酸化スズ1〜20重量%を含有することが好ましい。
【0119】
前記透明導電層の厚みは特に制限されないが、10nm以上とするのが好ましく、15〜40nmであることがより好ましく、20〜30nmであることがさらに好ましい。
【0120】
前記透明導電層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0121】
前記透明導電層を有する基材の厚みとしては、15〜200μmを挙げることができる。さらに、薄膜化の観点では15〜150μmであることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましい。前記透明導電層を有する基材が抵抗膜方式で使用される場合、例えば100〜200μmの厚みを挙げることができる。また静電容量方式で使用される場合、例えば15〜100μmの厚みが好適であり、特に、近年の更なる薄膜化要求に伴い15〜50μmの厚みがより好ましく、20〜50μmの厚みがさらに好ましい。
【0122】
また、透明導電層と透明基材との間に、必要に応じて、アンダーコート層、オリゴマー防止層等を設けることができる。
【0123】
4.画像表示装置
前述の通り、本発明の粘着剤層は、透明導電層に当該粘着剤層を積層した場合にも、透明導電層の腐食を抑制することができ、透明導電層の表面抵抗上昇を抑制できるものである。従って、本発明の粘着剤層は、透明導電層を有する画像表示装置の当該透明導電層に接する態様であれば、好適に用いることができる。
【0124】
例えば、本発明の粘着剤層を有する積層体は、入力装置(タッチパネル等)を備えた画像表示装置(液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなど)、入力装置(タッチパネル等)等の機器を構成する基材(部材)又はこれらの機器に用いられる基材(部材)の製造において好適に用いることができるが、特に、タッチパネル用の光学基材の製造において好適に用いることができる。また、抵抗膜方式や静電容量方式といったタッチパネル等の方式に関係なく使用することができる。
【0125】
また、本発明の積層体に、裁断、レジスト印刷、エッチング、銀インキ印刷等の処理が施されて、得られた透明導電性フィルムは、光学デバイス用基材(光学部材)として用いることができる。光学デバイス用基材としては、光学的特性を有する基材であれば、特に限定されないが、例えば、画像表示装置(液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなど)、入力装置(タッチパネル等)等の機器を構成する基材(部材)又はこれらの機器に用いられる基材(部材)が挙げられる。
【0126】
本発明の粘着剤層を用いた画像表示装置の具体例としては、例えば、透明導電層を帯電防止層用途として使用する画像表示装置や、透明導電層をタッチパネルの電極用途として使用する画像表示装置を挙げることができる。透明導電層を帯電防止層用途として使用する画像表示装置としては、具体的には、例えば、図1に示すように、偏光フィルム1/粘着剤層2/帯電防止層3/ガラス基板4/液晶層5/駆動電極6/ガラス基板4/粘着剤層2/偏光フィルム1からなる構成であって、前記帯電防止層3、駆動電極6が透明導電層から形成される画像表示装置が挙げられる。当該画像表示装置の上側(視認側)の粘着剤層2として本発明の粘着剤層を用いることができる。また、透明導電層をタッチパネルの電極用途として使用する画像表示装置としては、例えば、偏光フィルム1/粘着剤層2/帯電防止層兼センサー層7/ガラス基板4/液晶層5/駆動電極兼センサー層8/ガラス基板4/粘着剤層2/偏光フィルム1の構成(インセル型タッチパネル、図2)や、偏光フィルム1/粘着剤層2/帯電防止層兼センサー層7/センサー層9/ガラス基板4/液晶層5/駆動電極6/ガラス基板4/粘着剤層2/偏光フィルム1の構成(オンセル型タッチパネル、図3)であって、帯電防止層兼センサー層7、センサー層9、駆動電極6が透明導電層から形成される画像表示装置が挙げられる。当該画像表示装置の上側(視認側)の粘着剤層付偏光フィルム(1、2)として本発明の粘着剤層付偏光フィルムを用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部、%はいずれも重量基準である。
【0128】
製造例1(基材フィルム(1)の作製)
非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)基材に、9μm厚のポリビニルアルコール(PVA)層が製膜された積層体を、延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成した。次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成した。さらに、着色積層体を、温度65℃のホウ酸水中において、総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸し、4μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって、非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向され、高機能偏光子とすることができる。さらに、当該光学フィルム積層体の偏光子の表面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布しながら、けん化処理した40μm厚のアクリル樹脂フィルム(透明保護フィルム(1))を貼合せたのち、非晶性PET基材を剥離し、薄型偏光子を用いた片側保護偏光フィルムを作製した。以下、これを基材フィルム(1)という。
【0129】
製造例2(基材フィルム(2)の作製)
厚さ80μmのPVAフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総延伸倍率が6倍になるように延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ20μmの偏光子を得た。さらに、当該偏光子の一方の表面にPVA系接着剤を塗布しながら、けん化処理した40μm厚のアクリル樹脂フィルム(透明保護フィルム(1))を貼合せたのち、偏光子の他の表面に、厚さ40μmのノルボルネン系フィルム(透明保護フィルム(2))を、PVA系接着剤により貼り合せて、両面保護偏光フィルムを作製した。以下、これを基材フィルム(2)という。
【0130】
製造例3(アクリル酸エステル共重合体(A−1)を含有する溶液の作製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、ブチルアクリレート95部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1部、アクリル酸4部、及び、開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマー(固形分)100部に対して1部を酢酸エチルと共に加えて、窒素ガス気流下、60℃で7時間反応させた。その後、その反応液に、酢酸エチルを加えて、重量平均分子量200万のアクリル酸エステル共重合体(A−1)を含有する溶液を得た(固形分濃度30重量%)。
【0131】
製造例4〜10(アクリル酸エステル共重合体(A−2)〜(A−8)を含有する溶液の作製)
モノマーの組成を表1に示す組成に変更した以外は、製造例3と同様にして、アクリル酸エステル共重合体(A−2)〜(A−8)を含有する溶液を得た(それぞれの溶液について、固形分濃度30重量%)。
【0132】
製造例11(アクリル酸エステル共重合体(A−9)を含有する溶液の作製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、ブチルアクリレート84.9部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1部、アクリル酸5部、ベンジルアクリレート10部及び、開始剤として、AIBNをモノマー(固形分)100部に対して1部を酢酸エチルと共に加えて窒素ガス気流下、60℃で7時間反応させた。その後、その反応液に、酢酸エチルを加えて、重量平均分子量200万のアクリル酸エステル共重合体(A−9)を含有する溶液を得た(固形分濃度30重量%)。
【0133】
【表1】
表1中の略記は、それぞれ以下の通りである。
BA:ブチルアクリレート
BzA:ベンジルアクリレート
AA:アクリル酸
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
【0134】
また、製造例3〜11で得られたアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、以下の測定方法により測定した。
<アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定>
作製したアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:
サンプルカラム:東ソー社製、TSKguardcolumn Super HZ−H
(1本)+TSKgel Super HZM−H(2本)
リファレンスカラム:東ソー社製、TSKgel Super H−RC(1本)
流量:0.6mL/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
溶離液:THF
注入試料濃度:0.2重量%
検出器:示差屈折計
なお、重量平均分子量はポリスチレン換算により算出した。
【0135】
実施例1
(アクリル系粘着剤組成物の調整)
製造例3で得られたアクリル酸エステル共重合体(A−1)を含有する溶液(固形分濃度30重量%)の固形分100部あたり、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体(商品名:タケネートD160N、三井化学
(株)製)を0.1部と、ジベンゾイルパーオキサイドを0.3部、酸性リン酸エステルとして、フォスファノールSM−172(商品名、酸価:219mgKOH/g、東邦化学工業(株)製)を0.07部と、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製)を0.075部と、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(IRGANAOX
1010、BASFジャパン(株)製)0.3部を配合して、アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0136】
(粘着剤層付基材フィルムの作製)
前記アクリル系粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(基材)の表面に、ファウンテンコーターで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、基材の表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、基材フィルム(1)の保護フィルムを有さない面に、粘着剤層を形成したセパレータを移着させ、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0137】
実施例2〜4
酸性リン酸エステルの添加量を、0.07部から表3に記載の部数に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0138】
実施例5
フォスファノールSM−172(商品名、東邦化学工業(株)製)0.07部を、フォスファノールRS−410(商品名、酸価:105mgKOH/g、東邦化学工業(株)製)0.07部に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0139】
実施例6
フォスファノールSM−172(商品名、東邦化学工業(株)製)0.07部を、リン酸(試薬特級)(和光純薬工業(株)製)0.05部に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0140】
実施例7〜11
製造例3で得られたアクリル酸エステル共重合体(A−1)を含有する溶液を、それぞれ、製造例4〜7で得られたアクリル酸エステル共重合体(A−2)〜(A−5)を含有する溶液に変更し、かつ、実施例8では、ジベンゾイルパーオキサイドを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0141】
実施例12〜14
実施例1の(粘着剤層付基材フィルムの作製)において、基材フィルム(1)を、製造例2で得られた基材フィルム(2)、基材フィルム(3)(厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製)、基材フィルム(4)(厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0142】
実施例15
フォスファノールSM−172(商品名、東邦化学工業(株)製)0.3部を、MP−4(酸価:670mgKOH/g、大八化学工業(株)製)0.08部に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0143】
実施例16、17
製造例3で得られたアクリル酸エステル共重合体(A−1)を含有する溶液を、製造例11で得られたアクリル酸エステル共重合体(A−9)を含有する溶液に変更し、かつ、MP−4(酸価:670mgKOH/g、大八化学工業(株)製)の添加量を0.08部から表3に記載の添加量に変更した以外は、実施例15と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0144】
実施例18
実施例17の(粘着剤層付基材フィルムの作製)において、基材フィルム(1)を、製造例2で得られた基材フィルム(2)に変更した以外は、実施例17と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0145】
実施例19
MP−4(酸価:670mgKOH/g、大八化学工業(株)製)0.05部を、リン酸(試薬特級)(和光純薬工業(株)製)0.08部とMP−4(酸価:671mgKOH/g、大八化学工業(株)製)0.02部(リン酸:MP−4=4:1(重量比))に変更した以外は、実施例16と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0146】
実施例20〜22
アクリル酸エステル共重合体含有する溶液の種類、リン酸及び/又はリン酸エステルの種類と添加量を表3に記載の種類と添加量に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0147】
比較例1
酸性リン酸エステルの添加量を0.07部から、5部に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0148】
比較例2
酸性リン酸エステルの添加量を0.07部から、0.002部に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0149】
比較例3〜5
製造例3で得られたアクリル酸エステル共重合体(A−1)を含有する溶液を、それぞれ、製造例8〜10で得られたアクリル酸エステル共重合体(A−6)〜(A−8)を含有する溶液に変更し、かつ、比較例3、5では、酸性リン酸エステルを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付基材フィルムを作製した。
【0150】
実施例及び比較例で使用したリン酸エステルについて以下の通り分析を行った。その結果を表2に示す。
(分析方法)
実施例及び比較例で使用したリン酸エステルの組成を、31P−NMR(Acetone−d6、室温)の測定結果に基づき算出した。測定により得られたピークの積分値より、mol%を算出した後、エステルのアルコール成分のアルキル鎖から含有量比(重量%)を算出した。
31P−NMR測定条件)
測定装置:Bruker Biospin、AVANCEIII−400
観測周波数:160MHz(31P)
フリップ角:30°
測定溶媒:Acetone−d6(重アセトン)
測定温度:室温
化学シフト標準:P=(OCH in Acetone−d6(31P;140ppm 外部標準)
【0151】
【表2】
【0152】
表2において、リン酸モノエステルとは、一般式(1)のR及びRのいずれか一方が水素原子であり、他方が、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である化合物(一般式(2)の場合は、Rが水素原子である化合物)であり、リン酸ジエステルとは、一般式(1)のR及びRが、酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である化合物(一般式(2)の場合は、Rが酸素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18の炭化水素残基である化合物)である。例えば、フォスファノールSM−172の場合、「モノエステル」は、一般式(2)のR=H、R=C17、n=0である化合物、「ジエステル」は、一般式(2)のR=R=C17、n=0である化合物を示す。
【0153】
<ゲル分率>
実施例及び比較例で得られたアクリル系粘着剤組成物を、155℃、2分で架橋反応させて粘着剤層を得、架橋反応終了後2時間後、当該粘着剤層を0.2gとり、あらかじめ重量を測定したフッ素樹脂フィルム(TEMISH NTF−1122、日東電工(株)製)(重量:Wa)に包み、アクリル系粘着剤組成物が漏れないように縛った。これを、測定サンプルとする。測定サンプルの重量を測定し(重量:Wb)、サンプル瓶にいれた。サンプル瓶に酢酸エチルを40cc加えて、7日間放置した。その後、測定サンプル(フッ素樹脂フィルム+アクリル系粘着剤組成物)を取り出し、当該測定サンプルをアルミカップ上で、130℃、2時間乾燥させた。測定サンプルの重量(Wc)を測定し、次式によりゲル分率を求めた。
【数1】
【0154】
<耐腐食性試験>
表面に非晶性ITO層が形成された導電性フィルム(商品名:エレクリスタ(P400L)、日東電工(株)製、以下「透明導電性基材(E−1)」ということもある)を15mm×15mmに切断し、この導電性フィルム上の中央部に、実施例、及び比較例で得られた粘着剤層付基材フィルムを8mm×8mmに切断して貼り合わせた後、50℃、5atmで15分間オートクレーブにかけたものを耐腐食性の測定用サンプルとした。得られた測定用サンプルの抵抗値を後述の測定装置を用いて測定し、これを「初期抵抗値」とした。
その後、測定用サンプルを、温度60℃、湿度90%の環境に、500時間投入した後に、抵抗値を測定したものを、「湿熱後の抵抗値」とした。なお、上記の抵抗値は、Accent Optical Technologies社製 HL5500PCを用いて測定を行った。上述のように測定した「初期抵抗値」及び「湿熱後の抵抗値」から、次式にて抵抗値変化率(%)を算出し、以下の評価基準により評価した。
【数2】
(評価基準)
◎:抵抗値変化率が、150%未満(湿熱による抵抗値の上昇幅小さい(耐腐食性良好))
○:抵抗値変化率が、150%以上300%未満
△:抵抗値変化率が、300%以上400%未満
×:抵抗値変化率が、400%以上(湿熱による抵抗値の上昇幅大きい(耐腐食性不良))
【0155】
また、実施例1の粘着剤層付基材フィルムにおいては、上記透明導電性基材(E−1)の他に、以下の透明導電性基材を使用して耐腐食性試験を行った。
透明導電性基材(E−2):結晶性ITO層が形成されたフィルム(商品名:V150−G5Y、日東電工(株)製)
透明導電性基材(E−3):非晶性ITO層が形成されたガラス
透明導電性基材(E−4):結晶性ITO層が形成されたガラス
【0156】
なお、透明導電性基材(E−3)及び透明導電性基材(E−4)の製造方法は以下の通りである。
【0157】
(透明導電性基材(E−3)及び透明導電性基材(E−4)の作製)
無アルカリガラスの一方の面に、スパッタリング法によりITO膜を形成し、結晶化ITO薄膜を有する透明導電性基材(E−4)、及び非結晶化ITO膜を有する透明導電性基材(E−3)を作製した。それぞれの基材を、実施例及び比較例で得られた粘着剤層付基材フィルムと貼り合せる前に140℃30分間の加熱処理をした。結晶性ITO薄膜のSn比率は、10重量%であった。非結晶性ITO薄膜のSn比率は、3重量%であった。なお、ITO薄膜のSn比率の算出方法は前述の通りである。
【0158】
<粘着剤の耐久性試験(剥がれ及び発泡)>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付基材フィルムのセパレータを剥がし、結晶性ITOが形成されたガラス(透明導電性基材(E−4))のITO面に貼り合わせ、50℃、5atm、15分間のオートクレーブ処理を行った後、80℃及び100℃の加熱オーブン及び60℃/90%RH及び85℃/85%RHの恒温恒湿機に投入した。500時間後の基材フィルムの剥がれ及び発泡を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。また、85℃と−40℃の環境を1サイクル1時間で300サイクル施した後(ヒートショック試験(HS試験))の偏光フィルムの剥がれ及び発泡を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。
◎:全く剥がれまたは発泡が認められなかった。
○:目視では確認できない程度の剥がれまたは発泡が認められた。
△:目視で確認できる小さな剥がれまたは発泡が認められた。
×:明らかな剥がれまたは発泡が認められた。
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
表3中の略記は、それぞれ以下の通りである。
(酸性リン酸エステル)
B−1:フォスファノールSM−172、酸価:219mgKOH/g、モノ・ジ混合物、東邦化学工業(株)製
B−2:フォスファノールRS−410、酸価:105mgKOH/g、モノ・ジ混合物、東邦化学工業(株)製
B−3:リン酸(試薬特級)、和光純薬工業(株)製
B−4:MP−4、酸価:670mgKOH/g、モノ・ジ混合物、大八化学工業(株)製
B−5:モノ−N−ブチルホスフェート(O=P(OH)(OC)、Product Nomber:CDS001281)、SIGMA−ALDRICH製
【0162】
(架橋剤)
過酸化物系:ジベンゾイルパーオキサイド
イソシアネート系:トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(商品名:タケネートD110N)(三井化学(株)製)
【0163】
(透明導電性基材)
E−1:透明導電性基材(E−1)
E−2:透明導電性基材(E−2)
E−3:透明導電性基材(E−3)
E−4:透明導電性基材(E−4)
【符号の説明】
【0164】
1 偏光フィルム
2 粘着剤層
3 帯電防止層
4 ガラス基板
5 液晶層
6 駆動電極
7 帯電防止層兼センサー層
8 駆動電極兼センサー層
9 センサー層
図1
図2
図3