特許 6363423 ドラム式洗濯機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6363423

(24)【登録日】2018年7月6日

(45)【発行日】2018年7月25日

(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機

(51)【国際特許分類】

   D06F 33/02 20060101AFI20180712BHJP

   D06F 37/40 20060101ALI20180712BHJP

   D06F 37/04 20060101ALI20180712BHJP

【ＦＩ】

   D06F33/02 K

   D06F33/02 F

   D06F37/40 A

   D06F37/04

【請求項の数】5

【全頁数】19

(21)【出願番号】特願2014-159927(P2014-159927)

(22)【出願日】2014年8月5日

(65)【公開番号】特開2016-36398(P2016-36398A)

(43)【公開日】2016年3月22日

【審査請求日】2017年7月24日

(73)【特許権者】

【識別番号】307036856

【氏名又は名称】アクア株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100111383

【弁理士】

【氏名又は名称】芝野 正雅

(74)【代理人】

【識別番号】100170922

【弁理士】

【氏名又は名称】大橋 誠

(72)【発明者】

【氏名】中本 重陽

【審査官】 大光 太朗

(56)【参考文献】

【文献】 特開昭５６−０６６２９１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００８−１０４６８４（ＪＰ，Ａ）

【文献】 実開昭４９−１３４８５５（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 実開昭４９−１４５４７２（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｄ０６Ｆ ３３／０２

Ｄ０６Ｆ ３７／０４

Ｄ０６Ｆ ３７／４０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

筐体内に配置された外槽と、
前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能なドラムと、
前記ドラムの後部に配置され、表面に洗濯物と接触する突状部を有する回転体と、
前記ドラムおよび前記回転体を回転させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
駆動モータと、
前記ドラムに固定される第１回転軸と、
前記回転体に固定される第２回転軸と、
前記第１回転軸および前記第２回転軸のうち、一方の回転軸に固定され、第１ベルトを介して前記駆動モータに連結される第１プーリと、
第２ベルトを介して前記駆動モータに連結される、前記第１プーリと外径が異なる第２プーリと、
前記駆動部による駆動形態を、前記第１回転軸および前記第２回転軸のうち、他方の回転軸に前記第２プーリの回転が伝達可能となるように前記他方の回転軸と前記第２プーリとを連結することにより、前記ドラムと前記回転体とを互いに異なる回転速度で回転させる第１駆動形態と、前記他方の回転軸に前記第１プーリの回転が伝達可能となるように前記他方の回転軸と前記第１プーリとを連結することにより、前記ドラムと前記回転体とを同じ回転速度で回転させる第２駆動形態との間で切り替えるクラッチ機構部と、を含み、
前記第２回転軸は、前記第１回転軸に内包され、前記第１回転軸と同軸に回転し、
前記第１プーリおよび前記第２プーリは、前記第１回転軸および前記第２回転軸の軸線方向に並ぶように配置され、
前記クラッチ機構部は、
前記第１プーリと前記第２プーリとの間に配置され、前記他方の回転軸に対して前記軸線方向へ移動でき且つ前記他方の回転軸と共に回転できるクラッチ部と、
前記クラッチ部を前記軸線方向に移動させる移動機構部と、を含み、
前記クラッチ部の前記第１プーリ側の部位および前記第２プーリ側の部位には、それぞれ、第１係合部および第２係合部が設けられるとともに、前記第１プーリおよび前記第２プーリには、それぞれ、第１被係合部および第２被係合部が設けられ、
前記第１駆動形態では、前記移動機構部により前記クラッチ部が前記第２プーリ側に移動されて前記第２係合部が前記第２被係合部に係合し、前記第２プーリの回転が前記クラッチ部を介して前記他方の回転軸に伝達される状態となり、
前記第２駆動形態では、前記移動機構部により前記クラッチ部が前記第１プーリ側に移動されて前記第１係合部が前記第１被係合部に係合し、前記第１プーリの回転が前記クラッチ部を介して前記他方の回転軸に伝達される状態となる、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。

【請求項2】

請求項１に記載のドラム式洗濯機において、
前記クラッチ機構部は、前記クラッチ部が回転自在となるように前記クラッチ部を包囲する包囲部を含み、
前記移動機構部は、前記包囲部に連結される、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。

【請求項3】

請求項１または２に記載のドラム式洗濯機において、
前記駆動部は、前記第１プーリおよび前記第２プーリのうち、前側のプーリの前方に、前記第１回転軸を回転自在に支持する軸受部を備え、
前記前側のプーリの前記軸受部側には、前記軸受部の少なくとも一部が収容される凹部が形成される、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。

【請求項4】

筐体内に配置された外槽と、
前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能なドラムと、
前記ドラムの後部に配置され、表面に洗濯物と接触する突状部を有する回転体と、
前記ドラムおよび前記回転体を回転させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
駆動モータと、
前記ドラムに固定される第１回転軸と、
前記回転体に固定される第２回転軸と、
前記第１回転軸および前記第２回転軸のうち、一方の回転軸に固定され、第１ベルトを介して前記駆動モータに連結される第１プーリと、
第２ベルトを介して前記駆動モータに連結される、前記第１プーリと外径が異なる第２プーリと、
前記駆動部による駆動形態を、前記第１回転軸および前記第２回転軸のうち、他方の回転軸に前記第２プーリの回転が伝達可能となるように前記他方の回転軸と前記第２プーリとを連結することにより、前記ドラムと前記回転体とを互いに異なる回転速度で回転させる第１駆動形態と、前記他方の回転軸に前記第１プーリの回転が伝達可能となるように前記他方の回転軸と前記第１プーリとを連結することにより、前記ドラムと前記回転体とを同じ回転速度で回転させる第２駆動形態との間で切り替えるクラッチ機構部と、を含み、
前記第２プーリは、前記他方の回転軸に回転自在に支持される、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。

【請求項5】

筐体内に配置された外槽と、
前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能なドラムと、
前記ドラムの後部に配置され、表面に洗濯物と接触する突状部を有する回転体と、
前記ドラムおよび前記回転体を回転させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
駆動モータと、
前記ドラムに固定される第１回転軸と、
前記回転体に固定される第２回転軸と、
前記第１回転軸および前記第２回転軸のうち、一方の回転軸に固定され、第１ベルトを介して前記駆動モータに連結される第１プーリと、
第２ベルトを介して前記駆動モータに連結される、前記第１プーリと外径が異なる第２プーリと、
前記駆動部による駆動形態を、前記第１回転軸および前記第２回転軸のうち、他方の回転軸に前記第２プーリの回転が伝達可能となるように前記他方の回転軸と前記第２プーリとを連結することにより、前記ドラムと前記回転体とを互いに異なる回転速度で回転させる第１駆動形態と、前記他方の回転軸に前記第１プーリの回転が伝達可能となるように前記他方の回転軸と前記第１プーリとを連結することにより、前記ドラムと前記回転体とを同じ回転速度で回転させる第２駆動形態との間で切り替えるクラッチ機構部と、を含み、
前記第１プーリは前記第１回転軸に固定され、
前記駆動部による駆動形態は、前記ドラムを回転させるとともに前記回転体を回転自由な状態とする第３駆動形態を含み、
前記クラッチ機構部は、前記第３駆動形態では、前記第２回転軸を、前記第１プーリおよび前記第２プーリの何れとも連結しない、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ドラム式洗濯機に関する。かかるドラム式洗濯機は、洗濯から乾燥まで連続的に行うものであっても良いし、洗濯は行うが乾燥は行わないものであっても良い。

【背景技術】

【0002】

従来、ドラム式洗濯機は、底部に水を溜めた外槽内で横軸型のドラムを回転させ、ドラム内に設けたバッフルにより洗濯物を持ち上げては落下させ、洗濯物をドラムの内周面に叩き付けることにより、洗濯物を洗濯する。

【0003】

このように、バッフルにより洗濯物が撹拌される構成では、洗濯物同士が絡み合ったり擦れ合ったりしにくい。このため、ドラム式洗濯機は、洗濯脱水槽内でパルセータを回転させて洗濯物を洗濯する全自動洗濯機に比べ、洗濯物に作用する機械力が小さくなりやすく、洗浄性能が低くなりやすい。

【0004】

そこで、ドラム式洗濯機において、洗浄性能を向上させるため、ドラムの端部に、表面に突状部を有する回転体を設け、洗いやすすぎ時に、ドラムと回転体とを異なる回転速度で回転させる構成が採られ得る。かかるドラム式洗濯機では、洗濯物が適正に脱水されるよう、脱水時には、ドラムと回転体とが同じ回転速度で回転する。

【0005】

ドラムと回転体とを回転させる駆動部は、たとえば、ドラム用の駆動モータと回転体用の駆動モータとを備え、ドラム用の駆動モータの回転をベルトとプーリとによりドラムの回転軸に伝達してドラムを回転させるとともに、回転体用の駆動モータの回転をベルトとプーリとにより回転体の回転軸に伝達して回転体を回転させる構成とすることができる（特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【特許文献1】特開平０３−２８０９９２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

駆動部を上記のような構成とした場合、ベルトとプーリによる減速機構を用いた単純な構成により、ドラムと回転体とに回転速度の差を持たせることができるので、歯車による減速機構を用いた場合に比べて、故障等の面において信頼性が高い。しかしながら、ドラムと回転体とを回転させるために２つの駆動モータを用いるため、駆動部を安価に構成することが難しい。

【0008】

また、上記のように、脱水時には、ドラムと回転体とを同じ回転速度で一体的に回転させる必要があるが、上記の構成では、ドラムと回転体とが洗濯物等から異なる大きさの負荷を受けたときに、２つの駆動モータの回転速度に差が生じる虞がある。こうなると、ドラムと回転体とが異なる回転速度で回転してしまい、適正な脱水が行えない虞がある。

【0009】

本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、安価で且つ信頼の高い駆動部によりドラムおよび回転体を回転させることができるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0010】

本発明の主たる態様に係るドラム式洗濯機は、筐体内に配置された外槽と、前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能なドラムと、前記ドラムの後部に配置され、表面に洗濯物と接触する突状部を有する回転体と、前記ドラムおよび前記回転体を回転させる駆動部と、を備える。ここで、前記駆動部は、駆動モータと、前記ドラムに固定される第１回転軸と、前記回転体に固定される第２回転軸と、前記第１回転軸および前記第２回転軸のうち、一方の回転軸に固定され、第１ベルトを介して前記駆動モータに連結される第１プーリと、第２ベルトを介して前記駆動モータに連結される、前記第１プーリと外径が異なる第２プーリと、前記駆動部による駆動形態を、前記第１回転軸および前記第２回転軸のうち、他方の回転軸に前記第２プーリの回転が伝達可能となるように前記他方の回転軸と前記第２プーリとを連結することにより、前記ドラムと前記回転体とを互いに異なる回転速度で回転させる第１駆動形態と、前記他方の回転軸に前記第１プーリの回転が伝達可能となるように前記他方の回転軸と前記第１プーリとを連結することにより、前記ドラムと前記回転体とを同じ回転速度で回転させる第２駆動形態との間で切り替えるクラッチ機構部と、を含む。

【0011】

上記の構成によれば、ベルトとプーリによる減速機構を用いた単純な構成により、ドラムと回転体とに回転速度の差を持たせることができるので、歯車による減速機構を用いた場合に比べて、故障等の面において、駆動部の信頼性を高くすることができる。しかも、ドラムと回転体とを１つの駆動モータで回転させることができるので、駆動部を安価に構成できるとともに、第２駆動形態において、ドラムと回転体とが洗濯物等から異なる大きさの負荷を受けるようなことが生じても、ドラムと回転体とが異なる回転速度で回転しにくく、適正な脱水が妨げられるようなことが生じにくい。

【0012】

本態様に係るドラム式洗濯機において、前記第２回転軸は、前記第１回転軸に内包され、前記第１回転軸と同軸に回転する構成とされ得る。また、前記第１プーリおよび前記第２プーリは、前記第１回転軸および前記第２回転軸の軸線方向に並ぶように配置される構成とされ得る。この場合、前記クラッチ機構部は、前記第１プーリと前記第２プーリとの間に配置され、前記他方の回転軸に対して前記軸線方向へ移動でき且つ前記他方の回転軸と共に回転できるクラッチ部と、前記クラッチ部を前記軸線方向に移動させる移動機構部と、を含む構成とされる。前記クラッチ部の前記第１プーリ側の部位および前記第２プーリ側の部位には、それぞれ、第１係合部および第２係合部が設けられるとともに、前記第１プーリおよび前記第２プーリには、それぞれ、第１被係合部および第２被係合部が設けられる。前記第１駆動形態では、前記移動機構部により前記クラッチ部が前記第２プーリ側に移動されて前記第２係合部が前記第２被係合部に係合し、前記第２プーリの回転が前記クラッチ部を介して前記他方の回転軸に伝達される状態となり、前記第２駆動形態では、前記移動機構部により前記クラッチ部が前記第１プーリ側に移動されて前記第１係合部が前記第１被係合部に係合し、前記第１プーリの回転が前記クラッチ部を介して前記他方の回転軸に伝達される状態となる。

【0013】

上記の構成によれば、駆動部を、ベルトとプーリによる減速機構を用いる構成とした場合に、第１プーリと第２プーリとの間に配置したクラッチ部と、当該クラッチ部を移動させる移動機構部とにより、駆動部の駆動形態を、第１駆動形態と第２駆動形態との間で良好に切り替えることができるクラッチ機構部を実現することができる。

【0014】

上記の構成とされた場合、さらに、前記クラッチ機構部は、前記クラッチ部が回転自在となるように前記クラッチ部を包囲する包囲部を含む構成とされ得る。この場合、前記移動機構部は、前記包囲部に連結される。

【0015】

このような構成とされれば、回転することがない包囲部を設け、包囲部に移動機構部を連結したので、回転するクラッチ部を、回転しない移動機構部を用いて、軸線方向に移動させることができる。

【0016】

上記の構成とされた場合、さらに、前記駆動部は、前記第１プーリおよび前記第２プーリのうち、前側のプーリの前方に、前記第１回転軸を回転自在に支持する軸受部を備える構成とされ得る。この場合、前記前側のプーリの前記軸受部側には、前記軸受部の少なくとも一部が収容される凹部が形成される。

【0017】

このような構成とされれば、駆動部の前後方向において、軸受部と前側のプーリとが重なるので、駆動部の前後方向のサイズを小さくすることができる。これにより、外槽およびドラムを前後方向に大きくできるので、洗濯容量を多くすることができる。

【0018】

本態様に係るドラム式洗濯機において、前記第２プーリは、前記他方の回転軸に回転自在に支持される構成とされ得る。

【0019】

第２プーリは、他方の回転軸と連結されていないときにも、駆動モータの回転に伴って回転する。上記の構成とされれば、かかる回転のために第２プーリを回転自在に支持する支軸として、他方の回転軸が兼用される。よって、別途、支軸を設ける必要がないので、コストを削減できるとともに、支軸を設けた場合に必要な他方の回転軸との間の軸合わせも不要となり、駆動部の組立作業が容易となる。

【0020】

本態様に係るドラム式洗濯機において、前記第１プーリは前記第１回転軸に固定され得る。また、前記駆動部による駆動形態は、前記ドラムを回転させるとともに前記回転体を回転自由な状態とする第３駆動形態を含み得る。この場合、前記クラッチ機構部は、前記第３駆動形態では、前記第２回転軸を、前記第１プーリおよび前記第２プーリの何れとも連結しない。

【0021】

上記の構成によれば、たとえば、洗い工程またはすすぎ工程において、第３駆動形態への切替えが行われる。外槽内に水が溜められた状態で、駆動モータが回転すると、ドラムが回転し、バッフルにより洗濯物が撹拌される。

【0022】

このとき、ドラムの後側では、洗濯物が回転体に押しつけられた状態となりやすいが、回転体は自由に回転できる状態にあるので、洗濯物がバッフルで撹拌されときに回転体も洗濯物と一緒に回転しやすい。これにより、ドラムの後側でも洗濯物が回転しづらくなるようなことがなく、洗濯物がドラムの前側と同様な回転動作を行う。よって、ドラムの前側と後側とで洗濯物の回転差が生じにくく、回転差による洗濯物のねじれが生じにくい。

【0023】

また、第３駆動形態では、第１駆動形態のように、駆動モータにより回転体が回転されないため、回転体によって洗濯物が擦られることもない。

【0024】

したがって、上記の構成によれば、第３駆動形態により洗いやすすぎを行うことにより、洗濯物にねじれによる傷みや擦れによる傷みが生じにくくすることができ、デリケートな衣類を、傷みの発生を抑えつつ洗ったりすすいだりすることが可能となる。

【発明の効果】

【0025】

本発明によれば、安価で且つ信頼の高い駆動部によりドラムおよび回転体を回転させることができるドラム式洗濯機を提供することができる。

【0026】

本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。

【図面の簡単な説明】

【0027】

【図1】実施の形態に係る、ドラム式洗濯機の構成を示す側面断面図である。

【図2】実施の形態に係る、駆動部の構成を示す断面図である。

【図3】実施の形態に係る、駆動部の構成を示す断面図である。

【図4】実施の形態に係る、翼プーリおよびドラムプーリの構成を示す図である。

【図5】実施の形態に係る、クラッチガイドおよびクラッチ体の構成を示す図である。

【図6】実施の形態に係る、クラッチ体を構成するクラッチ部の構成を示す図である。

【図7】変更例１に係る、ドラム単体駆動形態への切替えが行われた状態の駆動部を示す図である。

【図8】変更例２に係る、駆動部の構成を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0028】

以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態である乾燥機能を有さないドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。

【0029】

図１は、ドラム式洗濯機１の構成を示す側面断面図である。

【0030】

ドラム式洗濯機１は、外観を構成する筐体１０を備える。筐体１０の前面１０ａは、中央部から上部にかけて傾斜し、傾斜した面に洗濯物の投入口１１が形成される。投入口１１は、開閉自在なドア１２により覆われる。

【0031】

筐体１０内には、外槽２０が、複数のダンパー２１により弾性的に支持される。外槽２０内には、ドラム２２が回転自在に配される。外槽２０およびドラム２２は、水平方向に対し、後面側が低くなるよう傾斜する。これにより、ドラム２２は、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。外槽２０およびドラム２２の傾斜角度は、１０〜２０度程度とされ得る。外槽２０の前面の開口部２０ａおよびドラム２２の前面の開口部２２ａは、投入口１１に対向し、投入口１１ともにドア１２により閉鎖される。ドラム２２の周壁には、多数の脱水孔２２ｂが形成される。さらに、ドラム２２の内周面には、３つのバッフル２３が周方向にほぼ等しい間隔で設けられる。

【0032】

ドラム２２の後部には、回転体２４が回転自在に配される。回転体２４は、ほぼ円盤形状を有する。回転体２４の表面には、中央部から放射状に延びる複数の突状部２４ａが形成される。回転体２４は、ドラム２２と同軸に回転する。

【0033】

外槽２０の後方には、ドラム２２および回転体２４を駆動するトルクを発生させる駆動部３０が配される。駆動部３０は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム２２および回転体２４を同一方向に異なる回転速度で回転させる。

【0034】

具体的には、駆動部３０は、ドラム２２を、ドラム２２内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転させ、回転体２４を、ドラム２２の回転速度よりも速い回転速度で回転させる。

【0035】

一方、駆動部３０は、脱水工程時には、ドラム２２および回転体２４を、ドラム２２内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転させる。駆動部３０の詳細な構成は、追って説明される。

【0036】

外槽２０の底部には、排水口部２０ｂが形成される。排水口部２０ｂには、排水バルブ４０が設けられる。排水バルブ４０は、排水ホース４１に接続される。排水バルブ４０が開放されると、外槽２０内に溜められた水が排水ホース４１を通じて機外へ排出される。

【0037】

筐体１０内の前方上部には、洗剤ボックス５０が配される。洗剤ボックス５０には、洗剤が収容される洗剤容器５０ａが前方から引き出し自在に収容される。洗剤ボックス５０は、筐体１０内の後方上部に配された給水バルブ５１に、給水ホース５２によって接続される。また、洗剤ボックス５０は、外槽２０の上部に、注水管５３により接続される。給水バルブ５１が開放されると、水道栓から水道水が、給水ホース５２、洗剤ボックス５０および注水管５３を通じて外槽２０内に供給される。この際、洗剤容器５０ａに収容された洗剤が、水に押し流れて外槽２０内に供給される。

【0038】

次に、駆動部３０の構成について詳細に説明する。

【0039】

図２および図３は、駆動部３０の構成を示す断面図である。図２は、駆動部３０の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられた状態を示し、図３は、駆動部３０の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられた状態を示す。図４は、翼プーリ５１０およびドラムプーリ６１０の構成を示す図である。図４（ａ）は、翼プーリ５１０を前方から見た図であり、図４（ｂ）は、ドラムプーリ６１０を後方から見た図である。図５は、クラッチガイド７１０およびクラッチ体７２０の構成を示す図である。図５（ａ）は、クラッチガイド７１０およびクラッチ体７２０の側面断面図、図５（ｂ）は、クラッチガイド７１０を前方から見た図、図５（ｃ）は、クラッチガイド７１０を後方から見た図である。図６は、クラッチ体７２０を構成するクラッチ部７２１の構成を示す図である。図６（ａ）は、クラッチ部７２１を前方から見た図、図６（ｂ）は、クラッチ部７２１の側面図、図６（ｃ）は、クラッチ部７２１を後方から見た図である。

【0040】

駆動部３０は、駆動モータ１００と、第１回転軸２００と、第２回転軸３００と、軸受ユニット４００と、翼減速機構５００と、ドラム減速機構６００と、クラッチ機構部７００とを含む。

【0041】

駆動モータ１００は、ドラム２２および回転体２４を駆動するためのトルクを発生する。駆動モータ１００は、たとえば、インナーロータ型のＤＣブラシレスモータであり、ハウジング１１０内でロータに接続されたモータ軸１２０が、ハウジング１１０から後方に延びる。

【0042】

第１回転軸２００は、中空形状を有する。第１回転軸２００の内部には、前部および後部に、それぞれ、第１すべり軸受２１１および第２すべり軸受２１２が設けられ、前端部に、メカニカルシール２１３が設けられる。

【0043】

第２回転軸３００は、第１回転軸２００に内包される。第２回転軸３００の前部は、第１回転軸２００から前方に突出し、第２回転軸３００の後部は、第１回転軸２００から後方に突出する。第２回転軸３００は、外周面が第１すべり軸受２１１および第２すべり軸受２１２により受けられ、第１回転軸２００内において円滑に回転する。また、メカニカルシール２１３により、第２回転軸３００と第１回転軸２００との間への水の侵入が防止される。

【0044】

軸受ユニット４００には、中央部にほぼ円筒状の軸受部４１０が設けられる。軸受部４１０の内部には、前部および後部に、それぞれ、第１転がり軸受４１１および第２転がり軸受４１２が設けられ、前端部に、メカニカルシール４１３が設けられる。第１回転軸２００は、外周面が第１転がり軸受４１１および第２転がり軸受４１２により受けられ、軸受部４１０内において円滑に回転する。また、メカニカルシール４１３により、第１回転軸２００と軸受部４１０との間への水の侵入が防止される。さらに、軸受ユニット４００には、軸受部４１０の周囲に固定フランジ部４２０が形成される。

【0045】

軸受ユニット４００は、固定フランジ部４２０において、ネジ止等の固定方法により、外槽２０の後面に固定される。軸受ユニット４００が外槽２０に装着された状態において、第２回転軸３００および第１回転軸２００が外槽２０の内部に臨む。ドラム２２が図示しないネジにより第１回転軸２００に固定され、回転体２４がネジ３１０により第２回転軸３００に固定される。

【0046】

翼減速機構５００は、翼プーリ５１０と、第１モータプーリ５２０と、翼ベルト５３０とを含む。駆動モータ１００の回転が、翼プーリ５１０と第１モータプーリ５２０との外径比で決まる減速比に従って減速され、第２回転軸３００に伝達される。

【0047】

翼プーリ５１０は、第２回転軸３００の後端部により回転自在に支持される。翼プーリ５１０には、中央部に第２回転軸３００が挿入される挿入孔５１１が形成され、この挿入孔５１１と第２回転軸３００との間に前後２つの転がり軸受５１２、５１３が介在する。翼プーリ５１０は、２つの転がり軸受５１２、５１３により、第２回転軸３００に対して円滑に回転する。

【0048】

図４（ａ）に示すように、翼プーリ５１０の前面には、環状の被係合凹部５１４が形成される。被係合凹部５１４の外周面には、全周に亘ってスプライン５１５が形成される。スプライン５１５は、本発明の第２被係合部に相当する。第２回転軸３００の後端部に取り付けられた固定ネジ３２０によって、翼プーリ５１０の後方への抜けが防止される。

【0049】

第１モータプーリ５２０は、駆動モータ１００のモータ軸１２０の先端部に取り付けられる。翼ベルト５３０は、翼プーリ５１０と第１モータプーリ５２０との間に架け渡される。

【0050】

ドラム減速機構６００は、ドラムプーリ６１０と、第２モータプーリ６２０と、ドラムベルト６３０とを含む。駆動モータ１００の回転が、ドラムプーリ６１０と第２モータプーリ６２０との外径比で決まる減速比に従って減速され、第１回転軸２００に伝達される。

【0051】

ドラムプーリ６１０は、前面が開放された皿状に形成され、プーリ部６１１とプーリ部６１１より外径の小さな固定部６１２とを含む。プーリ部６１１の外径、即ち、ドラムプーリ６１０の外径は、翼プーリ５１０の外径より大きいため、ドラム減速機構６００による減速比は、翼減速機構５００による減速比よりも大きい。

【0052】

固定部６１２には、中央部に挿入孔６１３が形成される。挿入孔６１３に第１回転軸２００の後端部が挿入され、スプラインを用いた圧入等、所定の固定方法により第１回転軸２００の後端部が挿入孔６１３に固定される。これにより、ドラムプーリ６１０が第１回転軸２００の後端部に固定される。

【0053】

図４（ｂ）に示すように、固定部６１２の後面には、挿入孔６１３の外周に、環状の被係合凹部６１４が形成される。被係合凹部６１４の外周面には、全周に亘ってスプライン６１５が形成される。スプライン６１５は、本発明の第１被係合部に相当する。

【0054】

後方に凹む凹部６１６であるプーリ部６１１の内部に、軸受部４１０の後端部が収容される。これにより、駆動部３０の前後方向において、軸受ユニット４００とドラムプーリ６１０とが重なる。

【0055】

第２モータプーリ６２０は、駆動モータ１００のモータ軸１２０の根元部に取り付けられる。ドラムベルト６３０は、ドラムプーリ６１０と第２モータプーリ６２０との間に架け渡される。

【0056】

なお、ドラムプーリ６１０は、本発明の第１プーリに相当し、ドラムベルト６３０は、本発明の第１ベルトに相当する。また、翼プーリ５１０は、本発明の第２プーリに相当し、翼ベルト５３０は、本発明の第２ベルトに相当する。

【0057】

クラッチ機構部７００は、駆動部３０による駆動形態を、第２回転軸３００に翼プーリ５１０の回転が伝達可能となるように第２回転軸３００と翼プーリ５１０とを連結することにより、ドラム２２と回転体２４とを互いに異なる回転速度で回転させる二軸駆動形態と、第２回転軸３００にドラムプーリ６１０の回転が伝達可能となるように第２回転軸３００とドラムプーリ６１０とを連結することにより、ドラム２２と回転体２４とを同じ回転速度で回転させる一軸駆動形態との間で切り替える。二軸駆動形態は、本発明の第１駆動形態に相当し、一軸駆動形態は、本発明の第２駆動形態に相当する。

【0058】

クラッチ機構部７００は、クラッチガイド７１０と、クラッチ体７２０と、クラッチレバー７３０と、レバー支持部７４０と、クラッチ駆動装置７５０とを含む。

【0059】

クラッチガイド７１０およびクラッチ体７２０は、第１回転軸２００および第２回転軸３００の軸線方向に並ぶドラムプーリ６１０と翼プーリ５１０との間に配置される。

【0060】

図５に示すように、クラッチガイド７１０は、前面が開放された円筒形状を有する。クラッチガイド７１０の外周面には、全面に、全周に亘ってスプライン７１１が形成される。クラッチガイド７１０の中央部には、挿入孔７１２が形成される。挿入孔７１２には、キー溝７１３が形成される。クラッチガイド７１０は、挿入孔７１２が第２回転軸３００に通され、キー溝７１３と図示しないキーとを用いた固定方法により第２回転軸３００に固定される。これにより、クラッチガイド７１０は、第２回転軸３００とともに回転する。

【0061】

図５（ａ）に示すように、クラッチ体７２０は、クラッチ部７２１と、包囲部７２２と、転がり軸受７２３とを含む。クラッチ部７２１は、前面および後面が開放された円筒形状を有する。図６に示すように、クラッチ部７２１の外周面には、前部および後部に、それぞれ全周に亘って前スプライン７２４および後スプライン７２５が形成される。前スプライン７２４は、本発明の第１係合部に相当し、後スプライン７２５は、本発明の第２係合部に相当する。

【0062】

クラッチ部７２１の内径は、クラッチガイド７１０の外径とほぼ等しくされ、クラッチ部７２１の前後の寸法は、クラッチガイド７１０の前後の寸法より大きくされる。クラッチ部７２１の内部に、クラッチガイド７１０が挿入される。クラッチ部７２１の内周面には、全周に亘って内スプライン７２６が形成され、この内スプライン７２６が、クラッチガイド７１０のスプライン７１１に噛み合う。内スプライン７２６の前後の寸法は、スプライン７１１の前後の寸法より大きくされる。

【0063】

内スプライン７２６とスプライン７１１と係合により、クラッチ部７２１は、クラッチガイド７１０、即ち、クラッチガイド７１０が固定された第２回転軸３００に対して第２回転軸３００の軸線方向への移動でき且つ第２回転軸３００と共に回転できる状態となる。

【0064】

包囲部７２２は、円環状に形成され、クラッチ部７２１が回転自在となるように、クラッチ部７２１の中央部を包囲する。クラッチ部７２１と包囲部７２２との間に、転がり軸受７２３が設けられる。転がり軸受７２３は、大小２つの止め輪７２７、７２８により前後に動かないよう固定される。転がり軸受７２３により、クラッチ部７２１は、包囲部７２２に対して、円滑に回転する。

【0065】

クラッチレバー７３０は、その上端部が、包囲部７２２に、包囲部７２２に対して回転可能となるように連結される。また、クラッチレバー７３０は、レバー支持部７４０に設けられた支軸７４１に回動自在に支持される。

【0066】

クラッチ駆動装置７５０は、アクチュエータ７５１と、操作レバー７５２とを含む。アクチュエータ７５１は、操作レバー７５２を前後に移動させる。操作レバー７５２は、クラッチレバー７３０の下端部に連結される。クラッチレバー７３０の下端部は、操作レバー７５２に対して回転可能である。

【0067】

レバー支持部７４０およびクラッチ駆動装置７５０は、図示しない取付プレートに固定され、この取付プレートが、軸受ユニット４００、または、外槽２０に装着される。

【0068】

なお、クラッチレバー７３０、レバー支持部７４０およびクラッチ駆動装置７５０は、本発明の移動機構部を構成する。

【0069】

駆動部３０の駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる場合、図２に示すように、アクチュエータ７５１の内部から操作レバー７５２が前方に押し出される。クラッチレバー７３０の下端部が、操作レバー７５２に押されて前方に移動し、クラッチレバー７３０が支軸７４１を中心に後方へ回転する。クラッチレバー７３０の上端部が後方へ移動し、クラッチ体７２０が、クラッチレバー７３０の上端部に押されて後方に移動する。これにより、クラッチ部７２１の後スプライン７２５と翼プーリ５１０のスプライン５１５とが係合する。

【0070】

後スプライン７２５とスプライン５１５とが係合すると、クラッチ部７２１と翼プーリ５１０とが回転方向に関して固定されるため、翼プーリ５１０の回転を、クラッチ部７２１およびクラッチガイド７１０を介して第２回転軸３００に伝達できる状態となる。このような状態において、駆動モータ１００が回転すると、当該回転が翼減速機構５００を介して第２回転軸３００に伝達され、第２回転軸３００に固定された回転体２４が回転する。回転体２４は、駆動モータ１００の回転速度が翼減速機構５００による減速比に従って低下した回転速度で回転する。また、駆動モータ１００の回転がドラム減速機構６００を介して第１回転軸２００に伝達され、第１回転軸２００に固定されたドラム２２が回転する。ドラム２２は、駆動モータ１００の回転速度がドラム減速機構６００による減速比に従って低下した回転速度で回転する。上述の通り、ドラム減速機構６００による減速比は、翼減速機構５００による減速比より大きいため、回転体２４が、ドラム２２よりも速い回転速度でドラム２２と同じ方向に回転する。

【0071】

ここで、クラッチ部７２１は、翼プーリ５１０とともに回転するが、クラッチレバー７３０は、クラッチ部７２１が回転自在な状態で連結された包囲部７２２に連結されているので、クラッチ部７２１が回転しても、その回転がクラッチレバー７３０にほぼ伝わることがない。

【0072】

一方、駆動部３０の駆動形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる場合、図３に示すように、アクチュエータ７５１の内部へ操作レバー７５２が引き込まれる。即ち、操作レバー７５２が後方へ移動する。クラッチレバー７３０の下端部が、操作レバー７５２に引かれて後方に移動し、クラッチレバー７３０が支軸７４１を中心に前方へ回転する。クラッチレバー７３０の上端部が前方へ移動し、クラッチ体７２０が、クラッチレバー７３０の上端部に押されて前方に移動する。これにより、クラッチ部７２１の前スプライン７２４とドラムプーリ６１０のスプライン６１５とが係合する。

【0073】

前スプライン７２４とスプライン６１５とが係合すると、クラッチ部７２１とドラムプーリ６１０とが回転方向に関して固定されるため、ドラムプーリ６１０の回転を、クラッチ部７２１およびクラッチガイド７１０を介して第２回転軸３００に伝達できる状態となる。このような状態において、駆動モータ１００が回転すると、当該回転がドラム減速機構６００を介して第１回転軸２００および第２回転軸３００に伝達され、ドラム２２および回転体２４が回転する。ドラム２２および回転体２４は、駆動モータ１００の回転速度がドラム減速機構６００による減速比に従って低下した回転速度で同じ方向に一体的に回転する。

【0074】

なお、一軸駆動形態において、駆動モータ１００が回転すると、当該回転に伴って翼プーリ５１０も回転する。しかしながら、翼プーリ５１０は第２回転軸３００に対して空回りするだけであり、翼プーリ５１０の回転は第２回転軸３００に伝達されない。

【0075】

さて、ドラム式洗濯機１は、各種運転コースの洗濯運転を行う。洗濯運転は、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程を含む。

【0076】

洗い工程およびすすぎ工程では、駆動部３０の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられる。外槽２０内に、投入口１１の下縁に至らない所定の水位まで水が溜められた状態で、駆動モータ１００が、交互に、右回転および左回転する。これにより、ドラム２２と回転体２４とが、回転体２４の回転速度がドラム２２の回転速度より速い状態で、交互に右回転および左回転する。このとき、ドラム２２の回転速度は、ドラム２２内の洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度となるように設定される。

【0077】

ドラム２２および回転体２４が回転すると、ドラム２２内の洗濯物が、バッフル２３で掻き上げられては落とされることにより、ドラム２２の内周面に叩き付けられる。加えて、ドラム２２の後部では、回転する回転体２４の突状部２４ａに洗濯物が接触し、突状部２４ａに洗濯物が擦られたり、突状部２４ａによって洗濯物が撹拌されたりする。これにより、洗濯物が洗われる、あるいは、すすがれる。

【0078】

このように、洗いおよびすすぎ時には、ドラム２２の回転による機械力のみならず回転体２４による機械力が洗濯物に付与されるので、洗浄性能の向上が期待できる。 次に、中間脱水工程および最終脱水工程では、駆動部３０の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられる。駆動モータ１００は、一方向に高速で回転し、ドラム２２および回転体２４は、ドラム２２内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム２２の内周面に押しつけられ、脱水される。

【0079】

このように、脱水時には、ドラム２２と回転体２４とが一体的に回転するので、ドラム２２に張り付いた洗濯物が回転体２４により撹拌されるようなことがなく、洗濯物を良好に脱水できる。

【0080】

＜実施の形態の効果＞
本実施の形態によれば、ベルトとプーリによる減速機構を用いた単純な構成により、ドラム２２と回転体２４とに回転速度の差を持たせることができるので、歯車による減速機構を用いた場合に比べて、故障等の面において、駆動部３０の信頼性を高くすることができる。しかも、ドラム２２と回転体２４とを１つの駆動モータ１００で回転させることができるので、駆動部３０を安価に構成できるとともに、一軸駆動形態において、ドラム２２と回転体２４とが洗濯物等から異なる大きさの負荷を受けるようなことが生じても、ドラム２２と回転体２４とが異なる回転速度で回転しにくく、適正な脱水が妨げられるようなことが生じにくい。

【0081】

さらに、本実施の形態によれば、駆動部３０を、ベルトとプーリによる減速機構を用いる構成とした場合に、ドラムプーリ６１０と翼プーリ５１０との間に配置したクラッチ体７２０と、クラッチ体７２０を移動させるクラッチレバー７３０およびクラッチ駆動装置７５０とにより、駆動部３０の駆動形態を、二軸駆動形態と一軸駆動形態との間で良好に切り替えることができるクラッチ機構部７００を実現することができる。

【0082】

さらに、本実施の形態によれば、クラッチ部７２１を回転自在な状態で包囲する包囲部７２２を設け、この包囲部７２２にクラッチレバー７３０を連結するようにしたので、回転するクラッチ部７２１を、回転しない移動機構部を用いて、第２回転軸３００の軸線方向に移動させることができる。

【0083】

さらに、本実施の形態によれば、駆動部３０の前後方向において、軸受ユニット４００とドラムプーリ６１０とが重なるので、駆動部３０の前後方向のサイズを小さくすることができる。これにより、外槽２０およびドラム２２を前後方向に大きくできるので、洗濯容量を多くすることができる。

【0084】

さらに、本実施の形態によれば、一軸駆動形態において翼プーリ５１０を回転させるために必要となる、翼プーリ５１０を回転自在に支持する支軸として、第２回転軸３００が兼用される。これにより、別途、支軸を設ける必要がないので、コストを削減できるとともに、支軸を設けた場合に必要な第２回転軸３００との間の軸合わせも不要となり、駆動部３０の組立作業が容易となる。

【0085】

＜変更例１＞
上記実施の形態では、駆動部３０の駆動形態が、ドラム２２と回転体２４とを、互いに異なる回転速度で回転させる二軸駆動形態と、ドラム２２と回転体２４とを同じ回転速度で一体的に回転させる一軸駆動形態との間で切り替えられる。

【0086】

これに対し、本変更例では、駆動部３０の駆動形態を、二軸駆動形態および一軸駆動形態だけでなく、ドラム２２を回転させるとともに回転体２４を回転自由な状態とするドラム単体駆動形態に切り替えることができる。ドラム単体駆動形態は、本発明の第３駆動形態に相当する。

【0087】

図７は、本変更例に係る、ドラム単体駆動形態への切替えが行われた状態の駆動部３０を示す図である。

【0088】

図７に示すように、ドラム単体駆動形態では、クラッチレバー７３０により、前スプライン７２４がドラムプーリ６１０のスプライン６１５と係合せず、後スプライン７２５も翼プーリ５１０と係合しない位置に、クラッチ部７２１が移動される。即ち、クラッチ機構部７００は、第２回転軸３００を、ドラムプーリ６１０および翼プーリ５１０の何れとも連結しない。

【0089】

このような状態において、駆動モータ１００が回転すると、ドラム２２は回転するが、第２回転軸３００には何れのプーリ５１０、６１０の回転も伝達されないので、回転体２４は回転しない。しかしながら、第２回転軸３００は、第１回転軸２００に対して回転可能であるため、回転体２４は、自由に回転できる状態となる。

【0090】

たとえば、洗い工程またはすすぎ工程において、ドラム単体駆動形態への切替えが行われる。外槽２０内に水が溜められた状態で、駆動モータ１００が回転すると、ドラム２２が回転し、バッフル２３により洗濯物が撹拌される。

【0091】

このとき、ドラム２２の前側では、洗濯物は、バッフル２３によりドラム２２の真上近くまで持ち上げられると落下するので、ドラム２２が１回転する間にほぼ２回転することになる。一方、ドラム２２の後側では、洗濯物が回転体２４に押しつけられた状態となりやすい。上述のように、回転体２４は自由に回転できる状態にあるので、洗濯物がバッフル２３で撹拌されて回転したときに回転体２４も洗濯物と一緒に回転しやすい。これにより、ドラム２２の後側でも、前側と同様、洗濯物は、ドラム２２が１回転する間にほぼ２回転することになる。よって、ドラム２２の前側と後側とで洗濯物の回転差が生じにくく、回転差による洗濯物のねじれが生じにくい。

【0092】

なお、ドラム２２に対して回転体２４が自由に回転できない場合、ドラム２２の後側では、洗濯物が回転体２４に押しつけられると、バッフル２３で撹拌されたときに、洗濯物がドラム２２の真上近くで落下せず、回転体２４に張り付いて回転するような状態となる。こうなると、ドラム２２の後側では、洗濯物は、ドラム２２が１回転する間にほぼ１回転しかしないため、ドラム２２の前側と後側とで洗濯物の回転差が生じ、洗濯物がねじれやすくなる。

【0093】

また、ドラム単体駆動形態では、二軸駆動形態のように、駆動モータ１００により回転体２４が回転されないため、回転体２４によって洗濯物が擦られることもない。

【0094】

このように、洗い工程またはすすぎ工程において、ドラム単体駆動形態で駆動モータ１００を動作させた場合には、洗濯物にねじれによる傷みや擦れによる傷みが生じにくい。よって、本変更例によれば、デリケートな衣類を、傷みの発生を抑えつつ洗ったりすすいだりすることが可能となる。

【0095】

＜変更例２＞
図８は、本変更例に係る、駆動部３０の構成を示す図である。図８は、駆動部３０の後部の拡大図である。

【0096】

上記実施の形態では、ドラムプーリ６１０が第１回転軸２００の後端部に固定され、翼プーリ５１０が、第２回転軸３００に対して回転自在となるように、前後２つの転がり軸受５１２、５１３を介して第２回転軸３００の後端部に取り付けられる。さらに、クラッチガイド７１０が第２回転軸３００に固定される。

【0097】

これに対し、本変更例では、図８に示すように、翼プーリ５１０Ａが、スプラインを用いた圧入等の固定方法を用いて、第２回転軸３００Ａの後端部に固定される。また、ドラムプーリ６１０Ａが、第１回転軸２００Ａに対して回転自在となるように、前後２つの転がり軸受６１７、６１８を介して第２回転軸３００Ａの後端部に取り付けられる。さらに、クラッチガイド７１０Ａが第１回転軸２００Ａに固定される。

【0098】

本変更例では、二軸駆動形態への切替えが行われると、図８に示すように、クラッチ部７２１が、ドラムプーリ６１０Ａ側に移動し、前スプライン７２４とスプライン６１５とが係合する。これにより、ドラムプーリ６１０Ａの回転を、クラッチ部７２１およびクラッチガイド７１０Ａを介して第１回転軸２００Ａに伝達できる状態となる。このような状態において、駆動モータ１００が回転すると、当該回転がドラム減速機構６００を介して第１回転軸２００Ａに伝達され、第１回転軸２００Ａに固定されたドラム２２が回転する。また、駆動モータ１００の回転が翼減速機構５００を介して第２回転軸３００Ａに伝達され、第２回転軸３００Ａに固定された回転体２４が回転する。こうして、回転体２４が、ドラム２２よりも速い回転速度でドラム２２と同じ方向に回転する。

【0099】

一方、一軸駆動形態への切替えが行われると、図８に一点鎖線で示すように、クラッチ部７２１が、翼プーリ５１０Ａ側に移動し、後スプライン７２５とスプライン５１５とが係合する。これにより、翼プーリ５１０Ａの回転を、クラッチ部７２１およびクラッチガイド７１０を介して第１回転軸２００Ａに伝達できる状態となる。このような状態において、駆動モータ１００が回転すると、当該回転が翼減速機構５００を介して第１回転軸２００Ａおよび第２回転軸３００Ａに伝達され、ドラム２２および回転体２４が回転する。即ち、ドラム２２および回転体２４が、等しい回転速度で一体的に同じ方向に回転する。

【0100】

本変更例によっても、上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。

【0101】

なお、本変更例では、ドラムプーリ６１０Ａが、本発明の第２プーリに相当し、ドラムベルト６３０が、本発明の第２ベルトに相当する。また、翼プーリ５１０Ａが、本発明の第１プーリに相当し、翼ベルト５３０が、本発明の第１ベルトに相当する。

【0102】

＜その他の変更例＞
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。

【0103】

たとえば、上記実施の形態では、クラッチ部７２１の前スプライン７２４とドラムプーリ６１０のスプライン６１５との係合により、クラッチ部７２１とドラムプーリ６１０とが回転方向に関して固定される。また、クラッチ部７２１の後スプライン７２５と翼プーリ５１０のスプライン５１５との係合により、クラッチ部７２１と翼プーリ５１０とが回転方向に関して固定される。しかしながら、クラッチ部７２１の前部をドラムプーリ６１０に係合させる構成、およびクラッチ部７２１の後部を翼プーリ５１０に係合させる構成は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その他の構成であっても良い。たとえば、クラッチ部７２１の前部および後部に突起が形成されるとともに、ドラムプーリ６１０および翼プーリ５１０に窪みまたは孔が形成され、突起が窪みまたは孔に嵌り込むような構成が採られても良い。

【0104】

また、上記実施の形態では、翼プーリ５１０と第２回転軸３００との間に２つの転がり軸受５１２、５１３が設けられる。また、クラッチ部７２１と包囲部７２２との間に転がり軸受７２３が設けられる。しかしながら、これら転がり軸受５１２、５１３、７２３がすべり軸受に置き換えられても良い。同様に、上記変更例２の転がり軸受６１７、６１８がすべり軸受に置き換えられても良い。

【0105】

さらに、上記実施の形態では、ドラム２２が、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。しかしながら、ドラム式洗濯機１は、ドラム２２が、水平軸を中心に回転するような構成とされても良い。

【0106】

さらに、上記実施の形態のドラム式洗濯機１は、乾燥機能を備えていないが、本発明は、乾燥機能を備えたドラム式洗濯機、即ち、ドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。

【0107】

この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。

【符号の説明】

【0108】

１０ 筐体
２０ 外槽
２２ ドラム
２４ 回転体
２４ａ 突状部
３０ 駆動部
１００ 駆動モータ
２００ 第１回転軸
３００ 第２回転軸
４００ 軸受ユニット
４１０ 軸受部
５００ 翼減速機構
５１０ 翼プーリ（第２プーリ、第１プーリ）
５１５ スプライン（第２被係合部）
５３０ 翼ベルト（第２ベルト）
６００ ドラム減速機構
６１０ ドラムプーリ（第１プーリ、第２プーリ）
６１５ スプライン（第１被係合部）
６１６ 凹部
６３０ ドラムベルト（第１ベルト）
７００ クラッチ機構部
７２０ クラッチ体
７２１ クラッチ部
７２２ 包囲部
７２４ 前スプライン（第１係合部）
７２５ 後スプライン（第２係合部）
７３０ クラッチレバー（移動機構部）
７４０ レバー支持部（移動機構部）
７５０ クラッチ駆動装置（移動機構部）

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】