【実施例1】
【0012】
本発明の電池システムについて、
図1を用いて説明する。組電池1は、正極ラインPLおよび負極ラインNLを介して、負荷2と接続されている。組電池1は、直列に接続された複数の二次電池(単電池)10を有する。なお、組電池1には、並列に接続された複数の二次電池10が含まれていてもよい。負荷2は、組電池1から出力された電力を受けて動作する。また、負荷2は、発電を行うこともでき、負荷2によって生成された電力は、組電池1に供給される。これにより、組電池1が充電される。
【0013】
図1に示す電池システムは、例えば、車両に搭載できる。負荷2としては、モータ・ジェネレータを用いることができる。モータ・ジェネレータは、組電池1から出力された電力を受けて、車両を走行させるための動力を生成する。モータ・ジェネレータが生成した動力は、車輪に伝達される。モータ・ジェネレータは、車両の制動時に発生する運動エネルギを電力に変換し、この電力を組電池1に供給できる。
【0014】
監視ユニット31は、各二次電池10の電圧値Vbを検出し、検出結果をコントローラ40に出力する。電流センサ32は、二次電池10の電流値Ibを検出し、検出結果をコントローラ40に出力する。本実施例において、二次電池10を放電しているときの電流値Ibを正の値とし、二次電池10を充電しているときの電流値Ibを負の値としている。
【0015】
コントローラ40は、電圧値Vbおよび電流値Ibに基づいて、二次電池10の充放電を制御できる。また、コントローラ40は、電圧値Vbや電流値Ibに基づいて、二次電池10のSOC(State of Charge)を算出できる。SOCとは、満充電容量に対する現在の充電容量の割合である。SOCの算出方法としては、公知の方法を適宜採用できるため、SOCの算出方法に関する詳細な説明は省略する。
【0016】
温度センサ33は、組電池1(二次電池10)の温度(電池温度)Tbを検出し、検出結果をコントローラ40に出力する。ここで、複数の温度センサ33を配置することもできる。複数の温度センサ33を用いることにより、互いに異なる位置に配置された複数の二次電池10の温度Tbをそれぞれ検出することができる。コントローラ40は、メモリ41を有する。メモリ41は、コントローラ40が所定の処理(特に、本実施例で説明する処理)を行うときに用いられる情報を記憶する。なお、メモリ41は、コントローラ40の外部に設けることもできる。
【0017】
次に、二次電池10の構造について、
図2を用いて説明する。
図2において、X軸およびZ軸は、互いに直交する軸である。本実施例では、鉛直方向に相当する軸をZ軸としている。なお、X軸およびZ軸と直交する軸をY軸とする。
【0018】
二次電池10は、電池ケース110および発電要素120を有する。電池ケース110は、発電要素120を収容している。電池ケース110は密閉状態となっており、電池ケース110の内部には電解液が注入されている。電池ケース110には負極端子111および正極端子112が固定されている。負極端子111および正極端子112は、発電要素120と電気的に接続されている。
【0019】
発電要素120は、充放電を行う要素であり、
図3に示すように、負極板(本発明の電極板に相当する)121と、正極板(本発明の電極板に相当する)122と、セパレータ123とを有する。
図3は、発電要素120の一部を展開した図である。負極板121は、集電箔121aと、集電箔121aの表面に形成された負極活物質層121bとを有する。負極活物質層121bは、負極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。負極活物質層121bは、集電箔121aの一部の領域に形成されており、集電箔121aの残りの領域には、負極活物質層121bが形成されていない。
【0020】
正極板122は、集電箔122aと、集電箔122aの表面に形成された正極活物質層122bとを有する。正極活物質層122bは、正極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。正極活物質層122bは、集電箔122aの一部の領域に形成されており、集電箔122aの残りの領域には、正極活物質層122bが形成されていない。
【0021】
負極活物質層121b、正極活物質層122bおよびセパレータ123には、電解液が含浸している。この電解液は、発電要素120の内部に存在する。一方、発電要素120の外部、言い換えれば、発電要素120および電池ケース110の間に形成されたスペースにも、余剰液としての電解液が存在している。
【0022】
図3に示す順番で、負極板121、正極板122およびセパレータ123を積層し、この積層体をX軸の周りで
図4に示す矢印Dの方向に巻くことにより、発電要素120が構成される。ここで、負極板121および正極板122の間には、セパレータ123が配置される。
【0023】
X軸が延びる方向(X方向という)における発電要素120の一端では、負極板121の集電箔121aだけが巻かれている。集電箔121aだけが巻かれた部分は、
図2に示す負極端子111と電気的に接続される。また、X方向における発電要素120の他端では、正極板122の集電箔122aだけが巻かれている。集電箔122aだけが巻かれた部分は、
図2に示す正極端子112と電気的に接続される。
【0024】
本実施例では、上述したように、積層体を巻くことにより、発電要素120を構成しているが、これに限るものではない。具体的には、積層体を巻かずに、負極板121、正極板122およびセパレータ123を積層しただけで、発電要素120を構成することもできる。
【0025】
図4に示す領域Aは、負極活物質層121bおよび正極活物質層122bがセパレータ123を挟んで互いに向かい合う領域である。領域Aにおいて、二次電池10(発電要素120)の充放電に応じた化学反応が行われる。
【0026】
組電池1を構成する複数の二次電池10は、Y軸が延びる方向(Y方向という)に並べて配置されており、Y方向で隣り合う2つの二次電池10の間には、
図5に示す仕切り部材(本発明の拘束部材に相当する)20が配置されている。Y方向における仕切り部材20の一端面には、複数の突起部21が設けられている。各突起部21は、Y方向に突出しており、突起部21の先端は、電池ケース110の外面に接触している。Y方向における仕切り部材20の他端面は、平坦な面で構成されており、
図5に示すように電池ケース110に接触している。
【0027】
突起部21を電池ケース110に接触させることにより、仕切り部材20および電池ケース110の間には、スペースが形成され、このスペースは、二次電池10の温度を調節するための熱交換媒体(空気など)が移動する通路となる。仕切り部材20および電池ケース110の間にスペースを形成できればよく、突起部21の形状は適宜設計できる。
【0028】
Y方向における組電池1の両端には、一対のエンドプレート(図示せず)が配置され、一対のエンドプレートには、Y方向に延びる連結部材の両端が固定される。一対のエンドプレートを互いに近づく方向(Y方向)に変位させることにより、二次電池10は、仕切り部材20からの拘束荷重を受ける。この拘束荷重は、Y方向(本発明の所定方向に相当する)において、二次電池10を拘束する荷重である。
【0029】
図5に示すように、発電要素120の領域Aには、Y方向において突起部21と対向する第1領域A11と、Y方向において突起部21と対向しない第2領域A12とが含まれる。第1領域A11は、突起部21からの荷重を受けやすく、第2領域A12は、突起部21からの荷重を受けにくい。このため、第1領域A11が受ける荷重は、第2領域A12が受ける荷重よりも高くなる。
【0030】
二次電池10では、電解液中の塩濃度に偏りが発生することにより、二次電池10の内部抵抗値が上昇してしまう。このような内部抵抗値の上昇量を抵抗上昇量Rhとする。抵抗上昇量Rhは、二次電池10の劣化に伴う内部抵抗値の上昇量とは異なる。劣化に伴う内部抵抗値の上昇量は増加するだけであり、減少することはない。一方、抵抗上昇量Rhは、塩濃度の偏りに依存するため、塩濃度が偏るほど、抵抗上昇量Rhが増加し、塩濃度の偏りが緩和されるほど、抵抗上昇量Rhが減少する。
【0031】
塩濃度の偏りの状態としては、
図6および
図7に示す状態がある。
図6は、負極板121および正極板122が対向する方向(Y方向)において、塩濃度の偏りが発生する状態を示す。
図6では、負極板121、正極板122およびセパレータ123の位置関係を示す概略図(
図6の上側の図)と、塩濃度の分布(一例)を示す図(
図6の下側の図)とを表している。
【0032】
塩濃度分布を示す図において、縦軸は塩濃度であり、横軸はY方向における位置である。
図6(上側の図)では、負極板121および正極板122がセパレータ123から離れているが、実際には、負極板121および正極板122がセパレータ123に接触している。
図6(下側の図)に示すように、二次電池10の充電時では、塩濃度の偏りとして、実線で示す塩濃度分布が発生することがある。また、二次電池10の放電時では、塩濃度の偏りとして、一点鎖線で示す塩濃度分布が発生することがある。
【0033】
なお、
図6では、Y方向における塩濃度の偏りを示しているが、これに限るものではない。上述したように、本実施例の発電要素120では、負極板121および正極板122がX軸の周りで巻かれているため、負極板121(負極活物質層121b)および正極板122(正極活物質層122b)が対向する方向において、
図6と同様の塩濃度の偏りが発生する。
【0034】
二次電池10の充放電を行うときには、負極板121および正極板122の間において、負極板121および正極板122が対向する方向(例えば、
図6に示すY方向)に塩が移動する。二次電池10がリチウムイオン二次電池であるとき、この塩はリチウム塩となる。負極板121および正極板122が対向する方向に塩が移動することによって、負極板121および正極板122が対向する方向において、塩濃度の偏りが発生する。
【0035】
図7は、負極板121および正極板122のそれぞれの表面上(領域A内)において、塩濃度の偏りが発生する状態を示す。
図6に示す塩濃度の偏りが発生することに応じて、
図7に示す塩濃度の偏りが発生する。
図7では、領域Aを含む負極板121の一部と、領域Aを含む正極板122の一部とを上下に分けて示している。ここで、負極板121の一部と、正極板122の一部とは、セパレータ123を挟んで対向している。
【0036】
図7の矢印で示すように、塩濃度の偏りは、領域A内において、X方向に発生しやすい。
図7では、負極板121および正極板122のそれぞれにおいて、領域A内における塩濃度の分布(一例)も示している。塩濃度分布を示す図において、縦軸は塩濃度であり、横軸はX方向における位置である。ここで、二次電池10の充電時では、塩濃度の偏りとして、実線で示す塩濃度分布が発生することがある。また、二次電池10の放電時では、塩濃度の偏りとして、一点鎖線で示す塩濃度分布が発生することがある。
【0037】
上述したように、X方向における発電要素120の両端部では、負極板121(集電箔121a)や正極板122(集電箔122a)がX軸の周りで巻かれているだけである。このため、X方向における発電要素120の両端部では、電解液が通過しやすい。言い換えれば、発電要素120の内部から発電要素120の外部に向かって電解液が移動したり、発電要素120の外部から発電要素120の内部に向かって電解液が移動したりしやすい。
【0038】
これにより、
図7に示すように、領域A内のX方向において、塩濃度の偏りが発生しやすくなる。上述したように、負極板121、正極板122およびセパレータ123を積層しただけの構成であっても、発電要素120の内部から発電要素120の外部に向かって電解液が移動したり、発電要素120の外部から発電要素120の内部に向かって電解液が移動したりしやすい。
【0039】
図7に示す塩濃度の偏りは、電解液の流れによって発生することが分かった。また、この電解液の流れは、電解液の体積変化(膨張および収縮)によって発生することが分かった。具体的には、電解液が膨張すると、X方向において、発電要素120の内部から発電要素120の外部に向かう電解液の流れが発生する。すなわち、
図8において、X方向における領域Aの中心Cを基準として、矢印X1で示す方向に電解液が流れる。一方、電解液が収縮すると、X方向において、発電要素120の外部から発電要素120の内部に向かう電解液の流れが発生する。すなわち、
図8において、領域Aの中心Cに向かう方向(矢印X2で示す方向)に電解液が流れる。矢印X1,X2で示す方向に電解液が流れることにより、
図7に示す塩濃度の偏りが発生する。
【0040】
そこで、本実施例では、電解液の膨張および収縮によって発生する電解液の流れ(流速)を算出することにより、
図7に示す塩濃度の偏り(塩濃度分布)を把握するようにしている。
図7に示す塩濃度の偏りを把握すれば、例えば、この塩濃度の偏りによって発生する抵抗上昇量Rhを把握できる。本発明における塩濃度の分布とは、
図7に示す塩濃度分布である。
【0041】
以下、電解液の流れ(流速)を算出する方法について説明する。
【0042】
下記式(1)は電解液の流れを規定する方程式であり、Brinkman-Navier-Stokes方程式として知られている。下記式(2)は電解液の流れに関する連続式であり、質量保存則から導かれる式である。下記式(1),(2)は、本発明の液流れ方程式に相当する。
【0043】
【数1】
【0044】
上記式(1),(2)において、u
jは電解液の流速、ρは電解液の密度、ε
e,jは電解液の体積分率、tは時刻である。また、上記式(1)において、μは電解液の粘度、K
jは透過係数、pは電解液の圧力である。
【0045】
ここで、添字jは、負極板121、正極板122およびセパレータ123を区別するために用いられ、添字jには「n」、「p」および「s」が含まれる。添字jが「n」であるときには、負極板121に関する値を示し、添字jが「p」であるときには、正極板122に関する値を示し、添字jが「s」であるときには、セパレータ123に関する値を示す。
【0046】
上述したように、電解液は、負極板121(負極活物質層121b)、正極板122(正極活物質層122b)およびセパレータ123のそれぞれに含浸している。このため、電解液に関するパラメータ(流速u
j、体積分率ε
e,j、透過係数K
j)としては、負極板121、正極板122およびセパレータ123のそれぞれにおいて規定される。なお、本明細書では、上記式(1),(2)に示すパラメータ以外にも添字jを用いることがある。
【0047】
粘度μとしては予め定めた固定値を用いたり、電解液の温度に応じて粘度μを変更したりすることができる。電解液の温度としては、温度センサ33によって検出される電池温度Tbが用いられる。粘度μおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、電池温度Tbを検出することにより粘度μを特定できる。粘度μおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報はメモリ41に記憶される。
【0048】
密度ρは、電解液の膨張および収縮を規定するパラメータであり、電解液の膨張および収縮に応じた値を示す。電解液の膨張および収縮は電解液の温度(すなわち、電池温度Tb)に依存し、密度ρも電解液の温度(電池温度Tb)に依存する。したがって、密度ρおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、電池温度Tbを検出することにより密度ρを特定できる。密度ρを特定することにより、電解液の膨張および収縮を把握できる。密度ρおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報はメモリ41に記憶される。透過係数K
jは予め定めた固定値を用いることができる。体積分率ε
e,jの算出方法については、後述する。
【0049】
上記式(1)では、流速u
jおよび圧力pが未知数となるため、上記式(2)に示す連続式を規定して上記式(1),(2)の連立方程式を解くことにより、流速u
jおよび圧力pを算出できる。上記式(1),(2)には、電解液の膨張および収縮を規定する密度ρが含まれているため、上記式(1),(2)の連立方程式を解くことにより、電解液の膨張および収縮に応じた流速u
jを算出できる。この流速u
jには、
図8の矢印X1で示す方向の流速と、
図8の矢印X2で示す方向の流速とが含まれる。流速u
jを算出するときには、例えば、上記式(1),(2)を用いて収束計算を行うことができる。また、上記式(1),(2)を用いた演算は所定の周期で行われるが、前回の演算周期で算出された値を今回の演算周期で用いることにより、流速u
jを算出できる。
【0050】
負極板121では、負極活物質層121bの内部において電解液が移動する。このため、流速u
j(すなわち、流速u
n)は、負極活物質層121bの内部における位置毎に算出される。
図7に示す塩濃度の偏りを把握するときには、X方向で互いに異なる位置において、流速u
nが算出される。
【0051】
正極板122では、正極活物質層122bの内部において電解液が移動する。このため、流速u
j(すなわち、流速u
p)は、正極活物質層122bの内部における位置毎に算出される。
図7に示す塩濃度の偏りを把握するときには、X方向で互いに異なる位置において、流速u
pが算出される。セパレータ123では、この内部において電解液が移動する。このため、流速u
j(すなわち、流速u
s)は、セパレータ123の内部における位置毎に算出される。
図7に示す塩濃度の偏りを把握するときには、X方向で互いに異なる位置において、流速u
sが算出される。
【0052】
一方、上記式(1),(2)において、様々な条件を仮定した上で、上記式(1)を簡易化することもできる。以下、上記式(1)を簡易化するときの手法(一例)について説明する。
【0053】
電解液の密度ρが流速u
jを算出する位置(X方向の位置を含む)に関わらず一定であると仮定すると、上記式(2)は下記式(3)で表される。
【0054】
【数2】
【0055】
上記式(3)から下記式(4)が導き出せる。下記式(4)に示すv
p,v
n,v
sは、正極板122、負極板121およびセパレータ123のそれぞれにおける電解液の動粘性係数(v=μ/ρ)である。下記式(4)に示すx,yは、X方向およびY方向における位置をそれぞれ示す。ここで、Y方向とは、負極板121および正極板122がセパレータ123を挟んで対向する方向(
図8の上下方向)である。
【0056】
【数3】
【0057】
電解液の連続性を考慮すると、上記式(4)は下記式(5)で表される。
【0058】
【数4】
【0059】
一方、上記式(1)において、下記式(6)に示す仮定を行うと、下記式(7)が得られる。
【0060】
【数5】
【0061】
X方向における電解液の圧力分布に関して、負極板121、正極板122およびセパレータ123における圧力分布が互いに等しいと仮定すると、下記式(8)が得られる。
【0062】
【数6】
【0063】
上記式(5),(8)によれば、下記式(9)が導き出せる。下記式(9)は、負極板121において、X方向の位置に応じた流速u
nを示している。下記式(9)に示すxはX方向の位置を示している。
【0064】
【数7】
【0065】
上記式(9)をxで積分し、xが0であるときの流速u
nを0と仮定すると、下記式(10)が得られる。ここで、xが0であるときの位置は、X方向における領域Aの一端を示している。また、X方向における領域Aの長さをLとすると、X方向における領域Aの他端については、xがLになる。
【0066】
【数8】
【0067】
流速u
nと同様に、流速u
p,u
sは下記式(11),(12)で表される。
【0068】
【数9】
【0069】
上記式(10)〜(12)は上記式(1)を簡易化した式となり、負極板121、正極板122およびセパレータ123のそれぞれにおいて、X方向の位置に応じた流速u
n,u
p,u
sを算出できる。上記式(10)〜(12)は、本発明における液流れ方程式に相当する。なお、電解液の流速u
jを算出するための方程式は、上記(1),(2),(10)〜(12)に限るものではない。電解液の流れは電解液の体積変化によって発生するため、電解液の体積変化を規定する電解液の密度をパラメータ(変数)として含み、電解液の流れを規定できる方程式であれば、本発明を適用できる。
【0070】
流速u
jを算出すれば、下記式(13)に基づいて、電解液中の塩濃度c
e,jを算出できる。ここで、塩濃度c
e,jを算出するときには、流速u
n,u
p,u
sのすべてを考慮してもよいし、流速u
n,u
p,u
sの一部(例えば、流速u
n)だけを考慮してもよい。
【0071】
【数10】
【0072】
上記式(13)において、D
e,jeffは、電解液の実効拡散係数であり、t
+0は電解液中の塩の輸率である。Fはファラデー定数であり、j
jは、単位体積および単位時間において、電解液中の塩の生成量である。
【0073】
上記式(13)の左辺第1項は、所定時間Δtにおける塩濃度の変化を規定している。上記式(13)の左辺第2項は、電解液の流れ(流速u
j)に依存する塩濃度の変化を規定している。上記式(13)の右辺第1項は、電解液中の塩の拡散状態を規定している。上記式(13)の右辺第2項は、塩の生成量を規定している。ここで、二次電池10の放電時では、負極板121の表面(負極活物質層121b)において塩が生成され、二次電池10の充電時では、正極板122の表面(正極活物質層122b)において塩が生成される。
【0074】
次に、体積分率ε
e,jの算出方法について説明する。電解液の流れは、電解液の膨張および収縮に加えて、活物質(正極活物質や負極活物質)の膨張および収縮によって発生する。活物質の膨張や収縮によって各活物質層121b,122bの体積が変化する。各活物質層121b,122bの体積が変化すると、各活物質層121b,122bにおいて、電解液が存在する空間の体積が変化することに応じて体積分率ε
e,jが変化する。
【0075】
正極活物質層122b、負極活物質層121bおよびセパレータ123のそれぞれにおいて、電解液が存在する空間の体積V
e,jの変化量ΔV
e,jは、下記式(14)に基づいて算出される。
【0076】
【数11】
【0077】
上記式(14)において、V
s,jは、各活物質層121b,122bでは、各活物質層121b,122bに含まれる活物質の体積(V
s,n、V
s,p)を示し、セパレータ123では、セパレータ123自体の体積(V
s,s)を示す。ここで、体積V
s,jは、電解液を除く発電要素120の体積となる。そして、体積V
s,jの変化量がΔV
s,jとなる。V
all,jは体積V
s,jおよび体積V
e,jの総和である。ここで、体積V
all,jは、電解液を含む発電要素120の体積となる。そして、体積V
all,jの変化量がΔV
all,jとなる。
【0078】
変化量ΔV
all,jおよび変化量ΔV
s,jは、下記式(15),(16)によって表される。
【0079】
【数12】
【0080】
体積V
all,jは、第1領域A11および第2領域A12における体積V
s,j,V
e,jの総和となる。このため、上記式(15)に示すように、変化量ΔV
all,jは、
図5に示す第1領域A11における体積(体積V
s,j,V
e,jの合計)の変化量ΔV
11,jと、
図5に示す第2領域A12における体積(体積V
s,j,V
e,jの合計)の変化量ΔV
12,jとの和になる。ここで、
図5に示すように、第1領域A11が複数設けられているため、変化量ΔV
11,jは、すべての第1領域A11における体積の変化量の総和となる。同様に、変化量ΔV
12,jは、すべての第2領域A12における体積の変化量の総和となる。
【0081】
各変化量ΔV
11,j,ΔV
12,jは、電解液の圧力pに依存する。このため、各変化量ΔV
11,j,ΔV
12,jおよび圧力pの対応関係(マップ又は演算式)を実験などに基づいて予め求めておくことができる。
図9には、各変化量ΔV
11,j,ΔV
12,jおよび圧力pの対応関係(一例)を示す。
図9に示すように、圧力pの変化に応じて、各変化量ΔV
11,j,ΔV
12,jが変化する。ただし、圧力pが高いほど、各変化量ΔV
11,j,ΔV
12,jが変化しにくくなる。
【0082】
ここで、圧力pが等しいとき、変化量ΔV
12,jは、変化量ΔV
11,jよりも大きくなる。第2領域A12が受ける荷重は、第1領域A11が受ける荷重よりも低いため、変化量ΔV
12,jは、変化量ΔV
11,jよりも大きくなる。各変化量ΔV
11,j,ΔV
12,jおよび圧力pの対応関係に基づいて、各変化量ΔV
11,j,ΔV
12,jを算出するときには、圧力pとして、前回の演算周期で算出された圧力pの値を用いることができる。
【0083】
上述したように、第1領域A11および第2領域A12が受ける荷重は互いに異なる。このため、第1領域A11における体積の変化量と、第2領域A12における体積の変化量とは互いに異なる。そこで、上述したように、第1領域A11および第2領域A12において、各変化量ΔV
11,j,ΔV
12,jを算出することにより、第1領域A11および第2領域A12における体積変化の相違を考慮して、変化量ΔV
all,jを算出できる。
【0084】
上記式(16)において、β
j(具体的にはβ
n又はβ
p)は活物質(負極活物質又は正極活物質)の体積膨張率である。上記式(16)に示す体積分率ε
e,jおよび体積V
all,jとしては、前回の演算周期で算出された値が用いられる。
【0085】
ここで、変化量Δε
e,jを最初に算出するとき、前回の体積分率ε
e,jとしては、電池温度Tbや二次電池10のSOCに応じた値を用いることができる。電池温度TbおよびSOCの少なくとも一方と、体積分率ε
e,jとの対応関係を示す情報を実験などによって予め求めておけば、電池温度TbやSOCを特定することにより、体積分率ε
e,jを特定できる。
【0086】
体積膨張率β
jは線膨張率α
jから算出できる。すなわち、線膨張率α
jの3倍の値が体積膨張率β
jとなる。ここで、線膨張率α
jは、電池温度Tbや二次電池10のSOCに依存するため、電池温度TbおよびSOCの少なくとも一方から線膨張率α
jを特定できる。例えば、線膨張率α
jおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、電池温度Tbの検出又は推定によって線膨張率α
jを特定できる。また、線膨張率α
jおよびSOCの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、SOCの推定によって線膨張率α
jを特定できる。上述した対応関係を示す情報はメモリ41に記憶しておくことができる。なお、線膨張率α
jを算出せずに、電池温度TbおよびSOCの少なくとも一方から体積膨張率β
jを直接算出することもできる。
【0087】
なお、上述した説明では、透過係数K
jを固定値としているが、体積膨張率β
jに基づいて透過係数K
jを変更することもできる。具体的には、透過係数K
jおよび体積膨張率β
jの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、体積膨張率β
jに応じた透過係数K
jを特定できる。このように特定した透過係数K
jは、上記式(1)又は上記式(10)〜(12)において用いることができる。
【0088】
上記式(15),(16)に基づいて変化量ΔV
all,j,ΔV
s,jを算出すれば、上記式(14)に基づいて変化量ΔV
e,jを算出できる。ここで、上記式(14)には体積膨張率β
jが含まれているため、体積膨張率β
jに基づいて変化量ΔV
e,jを算出できる。
【0089】
電解液の流速u
jを算出する式(上記式(1),(10)〜(12))では、変化量ΔV
e,jがパラメータとして含まれていない。ただし、電解液が存在する空間の体積が変化するときには、電解液の体積分率ε
e,jが変化するため、変化量ΔV
e,jを変化量Δε
e,jに変換することができる。具体的には、体積V
all,jが予め定めた一定の体積V
all_model,jであると仮定したとき、下記式(17)に示すように、体積V
all_model,jおよび変化量ΔV
e,jから変化量Δε
e,jを算出できる。
【0090】
【数13】
【0091】
変化量Δε
e,jを算出すれば、前回の演算周期で算出された体積分率ε
e,jに変化量Δε
e,jを加算することにより、今回の体積分率ε
e,jを算出できる。今回算出した体積分率ε
e,jを用いれば、上記式(1),(2)に基づいて、又は、上記式(10)〜(12)に基づいて、流速u
jを算出できる。また、上記式(13)に基づいて塩濃度c
e,jを算出するときにも、今回算出した体積分率ε
e,jを用いることができる。
【0092】
なお、各活物質層121b,122bに関する変化量Δε
e,n,Δε
e,pに加えて、セパレータ123に関する変化量Δε
e,sを算出してもよい。変化量Δε
e,sを算出するとき、上記式(16)に示す体積膨張率β
j(すなわち、β
s)は、セパレータ123を構成する材料の体積膨張率となる。体積膨張率β
sは電池温度Tbに依存する。このため、体積膨張率β
sおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、電池温度Tbの検出又は推定によって体積膨張率β
sを特定できる。
【0093】
上記式(13)によれば、
図6および
図7に示す塩濃度の偏りを把握することができる。上記式(13)を解くことにより塩濃度c
e,jを算出できる。ここで、流速u
jとしては、X方向の位置に応じた流速u
jが用いられるため、上記式(13)を解くことにより、X方向の位置に応じた塩濃度c
e,jを算出できる。これにより、X方向における塩濃度c
e,jの分布(
図7参照)を算出できる。
【0094】
なお、塩濃度c
e,jの算出方法は、上記式(13)を用いた方法に限るものではない。X方向において塩濃度c
e,jのバラツキが発生している状態であれば、流速u
jに基づいて、X方向における塩濃度c
e,jの分布を算出できる。上記式(13)では、塩濃度c
e,jのバラツキを把握するために、塩の拡散状態および塩の生成量を規定している。例えば、塩濃度c
e,jのバラツキを予め設定すれば、塩の拡散状態や生成量を考慮せずに、流速u
jに基づいて塩濃度c
e,jの分布を算出できる。
【0095】
また、上記式(13)によれば、電解液中の塩の拡散状態を規定しているが、塩の拡散状態を考慮しなくてもよい。塩の拡散に関する時定数は、塩の生成に関する時定数よりも大きいため、塩の拡散が発生していないこともある。そこで、塩濃度c
e,jの分布を算出するときに、塩の拡散状態を考慮しないようにしてもよい。
【0096】
上述したように塩濃度c
e,jの分布を算出すれば、塩濃度c
e,jの最大差(塩濃度差)Δc
e,j_maxを算出できる。塩濃度差Δc
e,j_maxは、塩濃度(最大値)c
eおよび塩濃度(最小値)c
eの差である。
【0097】
図10に示すように、抵抗上昇量Rhおよび塩濃度差Δc
e_maxの対応関係を実験などによって予め求めておけば、塩濃度差Δc
e_maxを算出することにより、この塩濃度差Δc
e_maxに対応した抵抗上昇量Rhを算出できる。
図10に示すように、塩濃度差Δc
e_maxが大きくなるほど、抵抗上昇量Rhが大きくなる。言い換えれば、塩濃度差Δc
e_maxが小さくなるほど、抵抗上昇量Rhが小さくなる。上記式(13)によれば、塩濃度c
eは、負極板121および正極板122のそれぞれで算出される。ここで、
図10に示す塩濃度差Δc
e_maxを算出するときには、まず、負極板121および正極板122における塩濃度c
eの分布を合算する。具体的には、負極板121および正極板122において、互いに対向する位置における塩濃度c
eを合算する。そして、合算した塩濃度c
eの分布において、塩濃度(最大値)c
eおよび塩濃度(最小値)c
eの差を塩濃度差Δc
e_maxとして算出する。
【0098】
抵抗上昇量Rhおよび塩濃度差Δc
e_maxの対応関係は、マップ又は演算式として表すことができる。そして、この対応関係を特定する情報はメモリ41に記憶しておくことができる。上記式(13)によれば、所定時間(演算周期)Δtが経過するたびに塩濃度c
e,jが算出されて塩濃度c
e,jの分布を把握できるため、所定時間Δtが経過するたびに抵抗上昇量Rhが算出される。これに伴い、抵抗上昇量Rhの変化を把握できる。
【0099】
一方、抵抗上昇量Rhは、平均塩濃度c
e_aveに依存することがある。そこで、平均塩濃度c
e_aveに基づいて、抵抗上昇量Rhを算出することもできる。平均塩濃度c
e_aveとは、負極板121および正極板122における塩濃度(上述した合算値)c
eの分布を平均化した塩濃度(平均値)である。塩濃度差Δc
e_maxと同様に、抵抗上昇量Rhおよび平均塩濃度c
e_aveの対応関係(マップ又は演算式)を実験などによって予め求めておけば、平均塩濃度c
e_aveを算出することにより、この平均塩濃度c
e_aveに対応した抵抗上昇量Rhを算出できる。
【0100】
また、塩濃度差Δc
e_maxおよび平均塩濃度c
e_aveに基づいて、抵抗上昇量Rhを算出することもできる。この場合には、塩濃度差Δc
e_max、平均塩濃度c
e_aveおよび抵抗上昇量Rhの対応関係(マップ又は演算式)を予め求めておけばよい。塩濃度差Δc
e_maxおよび平均塩濃度c
e_aveを算出すれば、算出した塩濃度差Δc
e_maxおよび平均塩濃度c
e_aveに対応する抵抗上昇量Rhを算出できる。
【0101】
図11は、塩濃度分布を算出する処理を示すフローチャートである。
図11に示す処理は、コントローラ40によって実行される。
【0102】
ステップS101において、コントローラ40は、温度センサ33を用いて電池温度Tbを検出する。ステップS102において、コントローラ40は、電解液の流速u
jを算出する。具体的には、上述したように、コントローラ40は、X方向の位置に応じた流速u
jを算出する。流速u
jを算出するときには、ステップS101の処理で検出された電池温度Tbが用いられる。
【0103】
ステップS103において、コントローラ40は、ステップS102の処理で算出された流速u
jに基づいて塩濃度c
e,jの分布を算出する。塩濃度c
e,jの分布を算出する方法は上述した通りである。
【0104】
本実施例では、ステップS101の処理において、温度センサ33を用いて電池温度Tbを検出しているが、これに限るものではない。具体的には、ステップS101の処理において、二次電池10を充放電したときの発熱量(電池温度Tbの上昇量)と、二次電池10の放熱量(電池温度Tbの低下量)とを考慮することにより、電池温度Tbを推定できる。
【0105】
二次電池10の発熱量は、二次電池10の電流値Ibおよび内部抵抗値から算出できる。二次電池10の内部抵抗値は、電流値Ibおよび電圧値Vbから算出できる。二次電池10の放熱量は、電池温度Tbと、二次電池10の周囲に存在する大気中の温度(環境温度)とに基づいて算出できる。ここで、電池温度Tbが環境温度よりも高いときにおいて、電池温度Tbおよび環境温度の差が広がるほど、放熱量が大きくなりやすい。
【0106】
二次電池10を充放電していなければ、電池温度Tbは環境温度と等しくなる。そこで、温度センサ33とは異なる温度センサを用いて環境温度を検出しておき、二次電池10を充放電するたびに算出される発熱量と、二次電池10の放熱量とに基づいて、現在の電池温度Tbを算出(推定)できる。発熱量および放熱量に基づいて電池温度Tbを推定する方法は、公知の方法を適宜採用できる。二次電池10を車両に搭載したとき、車両には、車両の外部における温度を検出する温度センサが設けられている。この温度センサを用いて、環境温度を検出できる。
【0107】
図11に示す処理によって塩濃度分布を算出したときには、この塩濃度分布に基づいて抵抗上昇量Rhを算出し、この抵抗上昇量Rhに基づいて二次電池10の充放電を制御できる。ここで、二次電池10の充放電を制御するときの処理(一例)について、
図12に示すフローチャートを用いて説明する。
図12に示す処理は、コントローラ40によって実行される。
【0108】
ステップS201において、コントローラ40は、
図11に示す処理で算出した塩濃度c
e,jの分布に基づいて抵抗上昇量Rhを算出する。抵抗上昇量Rhを算出する方法は上述した通りである。ステップS202において、コントローラ40は、抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるか否かを判別する。閾値Rh_thは、抵抗上昇量Rhの上限値であり、二次電池10の劣化を抑制する観点に基づいて適宜設定できる。閾値Rh_thを特定する情報は、メモリ41に記憶しておくことができる。
【0109】
抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるとき、コントローラ40は、ステップS203において、充電電力許容値Winや放電電力許容値Woutを低下させる。充電電力許容値Winは、二次電池10の充電を許容する上限の電力値であり、放電電力許容値Woutは、二次電池10の放電を許容する上限の電力値である。
【0110】
上述したように、二次電池10を充電したときの電流値Ibは負の値となるため、充電電力値も負の値となる。一方、二次電池10を放電したときの電流値Ibは正の値となるため、放電電力値は正の値となる。二次電池10を充電するときには、充電電力値(絶対値)が充電電力許容値(絶対値)Winよりも高くならないように充電が制御される。また、二次電池10を放電するときには、放電電力値が放電電力許容値Woutよりも高くならないように放電が制御される。
【0111】
電池温度Tbや二次電池10のSOCに基づいて、基準値としての充電電力許容値Win_refや放電電力許容値Wout_refが設定される。ステップS203の処理では、充電電力許容値(絶対値)Winを充電電力許容値(絶対値)Win_refよりも低下させたり、放電電力許容値Woutを放電電力許容値Wout_refよりも低下させたりする。充電電力許容値Winや放電電力許容値Woutを低下させることにより、抵抗上昇量Rhの増加を抑制できる。
【0112】
抵抗上昇量Rhが閾値Rh_thよりも小さいとき、コントローラ40は、
図12に示す処理を終了する。このとき、充電電力許容値Winとしては、上述した充電電力許容値Win_refが設定され、放電電力許容値Woutとしては、上述した放電電力許容値Wout_refが設定される。
【0113】
図12に示す処理では、抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるとき、充電電力許容値(絶対値)Winおよび放電電力許容値Woutを低下させているが、これに限るものではない。具体的には、充電電力許容値(絶対値)Winおよび放電電力許容値Woutの一方だけを低下させることができる。
【0114】
抵抗上昇量Rhとしては、二次電池10の充電に起因した抵抗上昇量Rhと、二次電池10の放電に起因した抵抗上昇量Rhとがある。
図7に示すように、充電時および放電時において、塩濃度c
e,jの分布が異なる。したがって、塩濃度c
e,jの分布を把握すれば、二次電池10の充電に起因した抵抗上昇量Rhと、二次電池10の放電に起因した抵抗上昇量Rhとを区別できる。
【0115】
ここで、二次電池10の充電によって塩濃度差Δc
e_maxが発生し、この塩濃度差Δc
e_maxから算出された抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるときには、充電電力許容値(絶対値)Winだけを低下させることができる。これにより、充電に起因した抵抗上昇量Rhに関して、抵抗上昇量Rhの増加を抑制したり、抵抗上昇量Rhを減少させたりすることができる。
【0116】
一方、二次電池10の放電によって塩濃度差Δc
e_maxが発生し、この塩濃度差Δc
e_maxから算出された抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるときには、放電電力許容値Woutだけを低下させることができる。これにより、放電に起因した抵抗上昇量Rhに関して、抵抗上昇量Rhの増加を抑制したり、抵抗上昇量Rhを減少させたりすることができる。
【0117】
本実施例では、塩濃度c
eの分布に基づいて抵抗上昇量Rhを算出しているが、これに限るものではない。すなわち、本実施例のように塩濃度c
eの分布を算出すれば、この塩濃度c
eの分布を、二次電池10の内部状態を把握するための様々な技術に応用することができる。二次電池10の内部状態としては、例えば、以下に説明するように、SOCや電流値の分布がある。
【0118】
例えば、特開2013−083525号公報に記載の技術によれば、二次電池10のOCV(Open Circuit Voltage)からSOC(推定値)を算出し、SOC(補正量)を用いてSOC(推定値)を補正している。SOC(補正量)は、SOC(推定値)および電池温度Tbから特定される基本値にゲインを乗算することによって算出される。ゲインは、塩濃度の偏りに応じて設定される。
【0119】
特開2013−083525号公報では、二次電池10の電流値を積算した電流積算値と電池温度Tbとに基づいて、ゲインを算出している。すなわち、電流積算値および電池温度Tbを用いて塩濃度の分布を間接的に把握した上でゲインを算出している。ここで、本実施例のように、塩濃度c
eの分布を算出すれば、この塩濃度c
eの分布に基づいてゲインを算出することができる。
【0120】
一方、塩濃度c
eの分布を把握できれば、
図7に示すX方向の位置に応じた電流値の分布を把握できる。塩濃度c
eが変化すれば、電流の流れやすさ(すなわち、電流値)が変化する。このため、塩濃度c
eが互いに異なる位置(
図7に示すX方向の位置)では、電流値が互いに異なることになる。二次電池10がリチウムイオン二次電池であるとき、電流が流れやすくなるほど、リチウムが析出されやすくなることが知られている。このため、塩濃度c
eの分布から把握される電流値の分布を用いて、リチウムの析出状態を把握することも可能と考えられる。