【0020】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)ガスケットのリップ形状を非対称で、かつ、リップが倒れやすい構造とし、締め代が小さくても、内圧により倒れたガスケットをシール部材に押し付けてシールするガスケットであって、さらに、リップとは反対側の、ガスケット底部に嵌合される取り付け部材の溝底に傾斜を付けて、倒れを確実にする、あるいは、想定側と逆に倒れないようにする。
(2)左右非対称の断面形状よりなるガスケットにおいて、圧縮時にガスケットが倒れ、内圧によってシールする構造を有し、ガスケットの装着溝底が傾斜している構造。また、上記傾斜部に面するガスケット断面形状がビードを有する構造。
(3)取り付け溝底面とガスケット底面の間にスキマあり。
(4)取り付け溝の側壁でガスケットの基部側面を支持する。リップ先端のみが座屈する。
(5)従来通りの底部フラットでは圧縮率14%で漏れたが、溝底に3%の角度を付けることにより漏れが止まった。
【実施例】
【0021】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施例に係る積層部材用ガスケット11の全体平面を示し、この積層部材用ガスケット11は、積層部材の平面上に設けたガスケット装着溝にゴム状弾性体よりなるガスケット本体を装着したものである。
【0023】
積層部材は、具体的には燃料電池用セパレータ21であって、所定の厚み寸法を備えるとともに平面長方形状を呈し、その平面中央に燃料ガス等の流体が流れる流路域22が設けられ、その隅部に流路域22へ流体を供給するための流体供給用マニホールド穴23、および流路域22から流体を排出するための流体排出用マニホールド穴24、ならびに他系統のマニホールド穴25が設けられ、流体供給用マニホールド穴23から流路域22を経由して流体排出用マニホールド穴24へ流れる流体が外部へ漏洩したり他系統のマニホールド穴25へ流れ込んだりしないよう、また他系統のマニホールド穴25を流れる流体が流入したりしないよう流体供給用マニホールド穴23、流路域22および流体排出用マニホールド穴24を囲み、更に他系統のマニホールド穴25を個別に囲むようにガスケット装着溝26が設けられ、この装着溝26にガスケット本体31が装着されている。
【0024】
図2は、
図1におけるC−C線拡大断面を示し、図の左側が密封流体側A、右側が反密封流体側(大気側)Bとされている。セパレータ21の平面上に断面矩形状ないし略矩形状を呈するガスケット装着溝26が設けられ、この装着溝26にゴム状弾性体よりなるガスケット本体31が非接着で装着されている。
【0025】
ガスケット本体31は、装着溝26に嵌め込まれるガスケット基部32と、基部32の平面上に設けられたシールリップ部33とを一体に有している。
【0026】
基部32は、装着溝26の溝幅と同等ないし略同等の横幅を備える横長の断面矩形状ないし略矩形状とされている。
【0027】
シールリップ部33は、基部32の平面上において反密封流体側Bへ偏在して設けられ、その断面形状を先細の三角形状ないし略三角形状とされている。またこの断面三角形状のシールリップ部33は密封流体側Aの斜面33aおよび反密封流体側Bの斜面33bを備えるところ、前者の密封流体側Aの斜面33aのほうが後者の反密封流体側Bの斜面33bよりも傾斜勾配が急に設定されている。したがってシールリップ部33は、セパレータ21が積層されてガスケット本体31がその厚み方向(
図1では上下方向)に圧縮されたときにこのシールリップ部33が密封流体側Aのほうへ倒れるように装着溝26の溝幅方向に非対称の形状とされている。
【0028】
また、装着溝26は上記したように断面矩形状ないし略矩形状とされているところ、シールリップ部33の倒れを助長すべく密封流体側Aから反密封流体側Bへかけて溝深さが徐々に深くなるように装着溝26の溝底面26aが傾斜面状とされている。したがって装着溝26の溝底面26aには、密封流体側Aへ向けての所定の傾斜角度θが設定され、この傾斜角度θは例えば3度前後とされている。
【0029】
また、ガスケット本体31における基部32の下面に、シールリップ部33の倒れに際して梃子の支点として作用することが可能なビード状突起34が設けられており、図では同形同大のビード状突起34が3本互いに平行に設けられている。
【0030】
図2は、ガスケット本体31をその厚み方向に圧縮する前の初期的な装着状態を示し、この初期的な装着状態においては、基部32の下面に設けたビード状突起34が装着溝26の溝底面26aに接触するので、装着溝26の溝底面26aと基部32の下面との間に所定の間隔t
1が設けられている。
【0031】
また、上記したように装着溝26は傾斜面状とされているので、ビード状突起34はその3本のうち密封流体側A側のビード状突起34のみが装着溝26の溝底面26aに接触し、中央のビード状突起34と装着溝26の溝底面26aとの間に所定の間隔t
2が設けられ、反密封流体側Bのビード状突起34と装着溝26の溝底面26aとの間にも所定の間隔t
3が設けられている(ただし作図の都合上、t
2は図示していない)。
【0032】
そして、これらの間隔t
1,t
2,t
3の大小関係はt
1>t
3>t
2とされ、またこれらの間隔t
1,t
2,t
3はいずれもガスケット本体31が反密封流体側Bへ傾くための構成として設けられている。
【0033】
図3は、
図2の初期的な装着状態からセパレータ21を積層してガスケット本体31をその厚み方向に圧縮した状態を示し、この装着・圧縮状態において、シールリップ部33はその先端部33cをもって積層の相手方(隣りのセパレータ)41に接触し、更に密封流体側Aへ倒れるよう弾性変形し、このシールリップ部33が倒れる方向は密封流体側Aであるので、装着後は密封流体側Aの圧力Pが高いほどシールリップ部33が積層の相手方41に強く押し付けられるセルフシール機能が発揮される。したがってこのようにセルフシール機能が発揮されるので、ガスケットスペースが小さくガスケット本体21の断面積がそれほど大きくなくても、当該ガスケット11によれば十分なシール性能を発揮することができる。
【0034】
尚、上記構成の積層部材用ガスケット11においては、以下の構成にもとづいて、シールリップ部33が密封流体側Aへ倒れやすくされている。
すなわち第1に、シールリップ部33が装着溝26の溝幅方向に非対称の形状とされていること。
第2に、密封流体側Aから反密封流体側Bへかけて溝深さが徐々に深くなるよう装着溝26の溝底面26aが傾斜面状とされていること。
第3に、ガスケット本体31におけるガスケット基部32の下面に、シールリップ部33の倒れに際して梃子の支点として作用するビード状突起34が設けられていること。
【0035】
この第3点に関しては、セパレータ21が積層されてガスケット本体31がその厚み方向に圧縮されると、先ず、密封流体側A側のビード状突起34を梃子の支点としてガスケット本体31が図上右下がりに傾き、中央のビード状突起34が装着溝26の溝底面26aに接触する。次いで、中央のビード状突起34を梃子の支点としてガスケット本体31が図上右下がりに傾き、反密封流体側Bのビード状突起34が装着溝26の溝底面26aに接触する。次いで更に、反密封流体側Bのビード状突起34を梃子の支点としてガスケット本体31が図上右下がりに傾き、基部32下面の反密封流体側Bの端部が装着溝26の溝底面26aに近付き、或いは近付いたうえで装着溝26の溝底面26aに接触する。
【0036】
したがってこのように3本のビード状突起34が梃子の支点として順次作用するため、ガスケット本体31が段階的にかつ大きく傾くことが可能とされ、これによりシールリップ部33が密封流体側Aへ大きく倒れ込む。
【0037】
但し、本発明において、このようにビード状突起34の形成数を3本としたのは単なる一例であって、ビード状突起34の形成数は1本でも良く、2本でも良く、4本以上であっても良い。また、その形成数にかかわらずビード状突起34と基部32下面の反密封流体側Bの端部との間には所定の溝幅方向の間隔を設けることが好ましい。