特許第6363434号(P6363434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特許6363434移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム
<>
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000002
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000003
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000004
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000005
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000006
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000007
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000008
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000009
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000010
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000011
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000012
  • 特許6363434-移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363434
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20180712BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20180712BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01C21/34
   G08G1/0969
   H04M11/00 302
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-179404(P2014-179404)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-53518(P2016-53518A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】盧 鋒
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信雄
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−078527(JP,A)
【文献】 特開平10−019591(JP,A)
【文献】 特開2015−197341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/0969
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部と、
移動経路候補内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定部と、
移動経路候補内の通信品質を、受信した通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御装置に対して、前記要求値指定部が指定した前記通信品質の要求値を送信する要求値送信部と、
前記要求値送信部が送信した前記通信品質の要求値に基づいて、前記通信品質制御装置が変更した前記通信品質を示す情報を受信する通信品質情報受信部と、
前記通信品質情報受信部が受信した前記通信品質を示す情報と、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補とによって示される、前記移動経路候補を移動した場合の各経路上における前記無線通信の通信品質に基づいて、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する経路選択部と、
前記経路選択部が選択した前記移動経路を表示する移動経路表示部と、
を備えることを特徴とする移動端末装置。
【請求項2】
前記経路選択部は、
前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補毎の前記通信品質に基づいて、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補の中から、前記無線通信に要求される通信品質を満たす前記移動経路候補を、前記表示対象の移動経路として選択し、
前記移動経路表示部は、
前記経路選択部が選択した、前記無線通信に要求される通信品質を満たす前記移動経路を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動端末装置。
【請求項3】
地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部と、
前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定部と、
受信した前記移動経路候補を示す情報と、受信した当該移動経路候補の前記通信品質の要求値と、当該移動経路候補を移動した場合の前記無線通信の通信品質を示す情報とに基づいて、前記移動経路候補から前記通信品質の要求値を満たす移動経路を選択する移動経路選択部を備える選択装置に対して、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補を示す情報と、前記要求値指定部が指定する前記通信品質の要求値とを送信する品質要求値送信部と、
前記選択装置の前記移動経路選択部が選択した前記移動経路を示す情報を受信する移動経路情報受信部と、
前記選択装置の前記移動経路選択部が選択した前記移動経路を表示する移動経路表示部と、
を備えることを特徴とする移動端末装置。
【請求項4】
地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路を選択する経路選択部と、
前記経路選択部が選択した前記移動経路内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定部と、
受信した前記移動経路を示す情報と、受信した前記通信品質の要求値とに基づいて、前記移動経路内の通信品質を変更する通信品質制御部と、前記通信品質制御部が前記通信品質を変更することにより、前記移動経路が前記通信品質の要求値を満たすことを示す品質確保情報を送信する品質確保情報送信部とを備える制御装置に対して、前記経路選択部が選択出した前記移動経路を示す情報と、前記要求値指定部が指定する前記通信品質の要求値とを送信する品質要求値送信部と、
前記制御装置から前記品質確保情報を受信する品質確保情報受信部と、
前記品質確保情報受信部が受信する前記品質確保情報に基づいて、前記経路選択部が選択した前記移動経路が、前記通信品質の要求値を満たすことを表示する移動経路表示部と、
を備えることを特徴とする移動端末装置。
【請求項5】
地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部を備える移動端末装置から、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補を示す情報を受信する移動経路候補受信部と、
前記移動経路候補受信部が受信した前記移動経路候補を示す情報に基づいて、当該移動経路候補を移動した場合の基地局と前記移動端末装置との間の各地点での無線通信の通信品質を示す情報を生成する通信品質情報生成部と、
前記移動端末装置によって抽出された移動経路候補内の通信品質を、前記移動端末装置から受信した前記通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御部と、
前記通信品質情報生成部が生成した前記通信品質を示す情報及び前記通信品質制御部が変更した前記通信品質を示す情報を、前記移動端末装置に送信する通信品質情報送信部と
を備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項6】
地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部を備える移動端末装置から、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補を示す情報と、当該移動経路候補内の各地点での基地局と前記移動端末装置との間の無線通信の通信品質の要求値とを受信する品質要求値受信部と、
前記品質要求値受信部が受信した前記移動経路候補を示す情報および当該移動経路候補内の前記通信品質の要求値と、当該移動経路候補を移動した場合の基地局と前記移動端末装置との間の各地点での無線通信の通信品質を示す情報とに基づいて、前記移動経路候補から前記通信品質の要求値を満たす移動経路を選択する移動経路選択部と、
前記移動経路選択部が選択した前記移動経路を示す情報を前記移動端末装置に送信する移動経路情報送信部と
を備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項7】
地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路を選択する経路選択部を備える移動端末装置から、前記経路選択部が選択した前記移動経路を示す情報と、当該移動経路内の各地点での基地局と前記移動端末装置との間の無線通信の通信品質の要求値とを受信する品質要求値受信部と、
前記移動端末装置から受信した前記経路選択部が選択した前記移動経路を示す情報と、前記通信品質の要求値とに基づいて、前記移動端末装置によって選択された前記移動経路内の通信品質を変更する通信品質制御部と、
前記通信品質制御部が前記通信品質を変更することにより、前記移動端末装置によって選択された前記移動経路が、前記通信品質の要求値を満たすことを示す品質確保情報を、前記移動端末装置に送信する品質確保情報送信部と、
を備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項8】
移動端末装置が備えるコンピュータの制御部に、
移動経路候補内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定手順と、
移動経路候補内の通信品質を、受信した通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御装置に対して、前記要求値指定手順において指定された前記通信品質の要求値を送信する要求値送信手順と、
前記要求値送信手順において送信された前記通信品質の要求値に基づいて、前記通信品質制御装置が変更した前記通信品質を示す情報を受信する通信品質情報受信手順と、
地図の情報を記憶する装置に備えられる記憶部に記憶されている地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出手順と、
前記通信品質情報受信手順において受信された前記通信品質を示す情報と、前記経路抽出手順において抽出された前記移動経路候補とによって示される、前記移動経路候補を移動した場合の各経路上における前記無線通信の通信品質を示す情報として、通信品質を記憶する装置に備えられる記憶部に記憶されている通信品質情報に基づいて、前記経路抽出手順によって抽出された前記移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する経路選択手順と、
前記経路選択手順によって選択された前記移動経路を表示する移動経路表示手順と
を実行させるための経路抽出プログラム。
【請求項9】
地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出手順と、
移動経路候補内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定手順と、
移動経路候補内の通信品質を、受信した通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御装置に対して、前記要求値指定手順において指定された前記通信品質の要求値を送信する要求値送信手順と、
前記要求値送信手順において送信された前記通信品質の要求値に基づいて、前記通信品質制御装置が変更した前記通信品質を示す情報を受信する通信品質情報受信手順と、
前記通信品質情報受信手順において受信された前記通信品質を示す情報と、前記経路抽出手順において抽出された前記移動経路候補とによって示される、前記移動経路候補を移動した場合の各経路上における前記無線通信の通信品質に基づいて、前記経路抽出手順によって抽出された前記移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する経路選択手順と、
を有することを特徴とする経路抽出方法。
【請求項10】
無線通信によって情報を互いに送受信する移動端末装置とサーバ装置とを含む経路抽出システムであって、
前記移動端末装置は、
地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部と、
移動経路候補内の基地局と自装置との間の無無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定部と、
移動経路候補内の通信品質を、受信した通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御装置に対して、前記要求値指定部が指定した前記通信品質の要求値を送信する要求値送信部と、
前記要求値送信部が送信した前記通信品質の要求値に基づいて、前記通信品質制御装置が変更した前記通信品質を示す情報を受信する通信品質情報受信部と、
前記通信品質情報受信部が受信した前記通信品質を示す情報と、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補とによって示される、前記移動経路候補を移動した場合の各経路上における前記無線通信の通信品質に基づいて、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する経路選択部と、
前記経路選択部が選択した前記移動経路を表示する移動経路表示部と、
を備え、
前記サーバ装置は、
前記移動端末装置の前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補を示す情報を受信する移動経路候補受信部と、
前記移動経路候補受信部が受信した前記移動経路候補を示す情報に基づいて、当該移動経路候補を移動した場合の基地局と前記移動端末装置との間の各地点での無線通信の通信品質を示す情報を生成する通信品質情報生成部と、
前記移動端末装置によって抽出された移動経路候補内の通信品質を、前記移動端末装置から受信した前記通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御部と、
前記通信品質情報生成部が生成した前記通信品質を示す情報及び前記通信品質制御部が変更した前記通信品質を示す情報を、前記移動端末装置に送信する通信品質情報送信部と
を備えることを特徴とする経路抽出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などの移動体の目的地までの移動経路を表示するナビゲーションシステムがある(例えば、特許文献1を参照。)。このようなナビゲーションシステムは、目的地までの距離や所要時間に加えて、テレビジョン放送などの電波の受信状況に基づいて、移動経路を探索することが行われている。また、過去に自車両が走行したときのディジタルテレビジョン放送の受信品質データや、他車両が持つ受信品質データに基づいて、これから通過する経路におけるディジタルテレビジョン放送の受信状況を通知する手法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。また、携帯端末を含む移動端末が要求するQoS(QoS;Quality of Service;サービス品質)を満足させるように無線リソースを割り当てることが1つのRAN(RADIO ACCESS NETWORK)のみではできない場合(例えば、特許文献3を参照)は、利用可能な複数のRANで対処することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−186347号公報
【特許文献2】特開2009−278353号公報
【特許文献3】特開2011−166583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなナビゲーションシステムは、例えば、救急車などにも採用され、病院までの経路案内などに利用される。このような救急車などの移動体には、移動中に大容量の情報をリアルタイムに無線通信する無線通信システムが搭載されることがある。例えば、上述した救急車には、搬送中の患者の容体を示す動画などの情報をリアルタイムに搬送先の病院に送信することにより、救命率を向上させる無線通信システムが搭載されていることがある。
【0005】
しかしながら、このような無線通信システムでは、移動体の移動経路上に無線回線が混雑するなどにより通信品質が低下している場所があると、通信速度が低下することがある。この場合には、大容量の情報をリアルタイムに送受信できなくなることがあるが、上述したようなナビゲーションシステムでは、大容量の情報をリアルタイムに送受信する場合の通信品質の低下が生じにくい移動経路までは提示することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部と、移動経路候補内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定部と、移動経路候補内の通信品質を、受信した通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御装置に対して、前記要求値指定部が指定した前記通信品質の要求値を送信する要求値送信部と、前記要求値送信部が送信した前記通信品質の要求値に基づいて、前記通信品質制御装置が変更した前記通信品質を示す情報を受信する通信品質情報受信部と、前記通信品質情報受信部が受信した前記通信品質を示す情報と、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補とによって示される、前記移動経路候補を移動した場合の各経路上における前記無線通信の通信品質に基づいて、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する経路選択部と、前記経路選択部が選択した前記移動経路を表示する移動経路表示部とを備えることを特徴とする移動端末装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態の移動端末装置は、前記経路選択部は、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補毎の前記通信品質に基づいて、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補の中から、前記無線通信に要求される通信品質を満たす前記移動経路候補を、前記表示対象の移動経路として選択し、前記移動経路表示部は、前記経路選択部が選択した、前記無線通信に要求される通信品質を満たす前記移動経路を表示することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一実施形態の移動端末装置は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部と、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定部と、受信した前記移動経路候補を示す情報と、受信した当該移動経路候補の前記通信品質の要求値と、当該移動経路候補を移動した場合の前記無線通信の通信品質を示す情報とに基づいて、前記移動経路候補から前記通信品質の要求値を満たす移動経路を選択する移動経路選択部を備える選択装置に対して、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補を示す情報と、前記要求値指定部が指定する前記通信品質の要求値とを送信する品質要求値送信部と、前記選択装置の前記移動経路選択部が選択した前記移動経路を示す情報を受信する移動経路情報受信部と、前記選択装置の前記移動経路選択部が選択した前記移動経路を表示する移動経路表示部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一実施形態の移動端末装置は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路を選択する経路選択部と、前記経路選択部が選択した前記移動経路内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定部と、受信した前記移動経路を示す情報と、受信した前記通信品質の要求値とに基づいて、前記移動経路内の通信品質を変更する通信品質制御部と、前記通信品質制御部が前記通信品質を変更することにより、前記移動経路が前記通信品質の要求値を満たすことを示す品質確保情報を送信する品質確保情報送信部とを備える制御装置に対して、前記経路選択部が選択出した前記移動経路を示す情報と、前記要求値指定部が指定する前記通信品質の要求値とを送信する品質要求値送信部と、前記制御装置から前記品質確保情報を受信する品質確保情報受信部と、前記品質確保情報受信部が受信する前記品質確保情報に基づいて、前記経路選択部が選択した前記移動経路が、前記通信品質の要求値を満たすことを表示する移動経路表示部と、を備えることを特徴とする移動端末装置。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部を備える移動端末装置から、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補を示す情報を受信する移動経路候補受信部と、前記移動経路候補受信部が受信した前記移動経路候補を示す情報に基づいて、当該移動経路候補を移動した場合の基地局と前記移動端末装置との間の各地点での無線通信の通信品質を示す情報を生成する通信品質情報生成部と、前記移動端末装置によって抽出された移動経路候補内の通信品質を、前記移動端末装置から受信した前記通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御部と、前記通信品質情報生成部が生成した前記通信品質を示す情報及び前記通信品質制御部が変更した前記通信品質を示す情報を、前記移動端末装置に送信する通信品質情報送信部とを備えることを特徴とするサーバ装置である。
【0013】
また、本発明の一実施形態のサーバ装置は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部を備える移動端末装置から、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補を示す情報と、当該移動経路候補内の各地点での基地局と前記移動端末装置との間の無線通信の通信品質の要求値とを受信する品質要求値受信部と、前記品質要求値受信部が受信した前記移動経路候補を示す情報および当該移動経路候補内の前記通信品質の要求値と、当該移動経路候補を移動した場合の基地局と前記移動端末装置との間の各地点での無線通信の通信品質を示す情報とに基づいて、前記移動経路候補から前記通信品質の要求値を満たす移動経路を選択する移動経路選択部と、前記移動経路選択部が選択した前記移動経路を示す情報を前記移動端末装置に送信する移動経路情報送信部とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一実施形態のサーバ装置は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路を選択する経路選択部を備える移動端末装置から、前記経路選択部が選択した前記移動経路を示す情報と、当該移動経路内の各地点での基地局と前記移動端末装置との間の無線通信の通信品質の要求値とを受信する品質要求値受信部と、前記移動端末装置から受信した前記経路選択部が選択した前記移動経路を示す情報と、前記通信品質の要求値とに基づいて、前記移動端末装置によって選択された前記移動経路内の通信品質を変更する通信品質制御部と、前記通信品質制御部が前記通信品質を変更することにより、前記移動端末装置によって選択された前記移動経路が、前記通信品質の要求値を満たすことを示す品質確保情報を、前記移動端末装置に送信する品質確保情報送信部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一実施形態は、移動端末装置が備えるコンピュータの制御部に、移動経路候補内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定手順と、移動経路候補内の通信品質を、受信した通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御装置に対して、前記要求値指定手順において指定された前記通信品質の要求値を送信する要求値送信手順と、前記要求値送信手順において送信された前記通信品質の要求値に基づいて、前記通信品質制御装置が変更した前記通信品質を示す情報を受信する通信品質情報受信手順と、地図の情報を記憶する装置に備えられる記憶部に記憶されている地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出手順と、前記通信品質情報受信手順において受信された前記通信品質を示す情報と、前記経路抽出手順において抽出された前記移動経路候補とによって示される、前記移動経路候補を移動した場合の各経路上における前記無線通信の通信品質を示す情報として、通信品質を記憶する装置に備えられる記憶部に記憶されている通信品質情報に基づいて、前記経路抽出手順によって抽出された前記移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する経路選択手順と、前記経路選択手順によって選択された前記移動経路を表示する移動経路表示手順とを実行させるための経路抽出プログラムである。
【0016】
また、本発明の一実施形態は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出手順と、移動経路候補内の基地局と自装置との間の無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定手順と、移動経路候補内の通信品質を、受信した通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御装置に対して、前記要求値指定手順において指定された前記通信品質の要求値を送信する要求値送信手順と、前記要求値送信手順において送信された前記通信品質の要求値に基づいて、前記通信品質制御装置が変更した前記通信品質を示す情報を受信する通信品質情報受信手順と、前記通信品質情報受信手順において受信された前記通信品質を示す情報と、前記経路抽出手順において抽出された前記移動経路候補とによって示される、前記移動経路候補を移動した場合の各経路上における前記無線通信の通信品質に基づいて、前記経路抽出手順によって抽出された前記移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する経路選択手順とを有することを特徴とする経路抽出方法である。
【0017】
また、本発明の一実施形態は、無線通信によって情報を互いに送受信する移動端末装置とサーバ装置とを含む経路抽出システムであって、前記移動端末装置は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する経路抽出部と、移動経路候補内の基地局と自装置との間の無無線通信の通信品質の要求値を指定する要求値指定部と、移動経路候補内の通信品質を、受信した通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御装置に対して、前記要求値指定部が指定した前記通信品質の要求値を送信する要求値送信部と、前記要求値送信部が送信した前記通信品質の要求値に基づいて、前記通信品質制御装置が変更した前記通信品質を示す情報を受信する通信品質情報受信部と、前記通信品質情報受信部が受信した前記通信品質を示す情報と、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補とによって示される、前記移動経路候補を移動した場合の各経路上における前記無線通信の通信品質に基づいて、前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する経路選択部と、前記経路選択部が選択した前記移動経路を表示する移動経路表示部と、を備え、前記サーバ装置は、前記移動端末装置の前記経路抽出部が抽出した前記移動経路候補を示す情報を受信する移動経路候補受信部と、前記移動経路候補受信部が受信した前記移動経路候補を示す情報に基づいて、当該移動経路候補を移動した場合の基地局と前記移動端末装置との間の各地点での無線通信の通信品質を示す情報を生成する通信品質情報生成部と、前記移動端末装置によって抽出された移動経路候補内の通信品質を、前記移動端末装置から受信した前記通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御部と、前記通信品質情報生成部が生成した前記通信品質を示す情報及び前記通信品質制御部が変更した前記通信品質を示す情報を、前記移動端末装置に送信する通信品質情報送信部とを備えることを特徴とする経路抽出システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通信品質の低下が生じにくい移動経路を提示する移動端末装置、サーバ装置、経路抽出プログラム、経路抽出方法、及び経路抽出システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る経路抽出システムの構成の一例を示す構成図である。
図2】経路抽出システムのセルの概要の一例を示す概要図である。
図3】統合無線環境情報データベースの構成の概要の一例を示す概要図である。
図4】移動経路探索の手順の一例を示す図である。
図5】移動経路探索で得られた移動経路候補とマクロセルとの関係を例示する概要図である。
図6】移動経路探索方法の手順の変形例を示す図である。
図7】移動端末が予約登録した移動経路候補とマクロセルの関係を例示する概要図である。
図8】本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の一例を示す構成図である。
図9】本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の第1の変形例を示す構成図である。
図10】本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の第2の変形例を示す構成図である。
図11】本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の第3の変形例を示す構成図である。
図12】本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の第4の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態]
以下、図を参照して本実施形態による経路抽出システム1の概要を説明する。
図1は、経路抽出システム1の構成の一例を示す構成図である。図2は、経路抽出システムのセルの概要の一例を示す概要図である。この図1では、移動端末、基地局及びサーバの内部構成を例示し、図2では、経路抽出システム1が複数の無線アクセスネットワーク(RAN)を備える構成を例示している。
【0021】
[経路抽出システムの概要]
本実施形態の経路抽出システム1は、サーバ4、サービスセンター5、基地局10、および移動端末100を含んで構成される。このうち、サーバ4とサービスセンター5とがコアネットワークを介して接続されている。
サーバ4は、統合無線環境情報データベースと、無線リソースマネージャ3とを備えている。このサーバ4の各部の構成については、後述する。
サービスセンター5は、経路探索サービスを提供する。具体的には、サービスセンター5は、サービス利用者からの移動経路探索要求に応じて、移動時間、移動距離、移動コスト等の探索条件を満たす移動経路候補を提供する。
【0022】
なお、この経路抽出システム1は、様々な構成によって実現することができる。例えば、サーバ4や、移動端末100に移動経路探索手段の機能を持たせた構成であってもよい。以下、サービスセンター5が移動経路探索手段の機能を持つ場合について説明する。
【0023】
この経路抽出システム1は、複数の無線アクセスネットワーク(RAN:RADIO ACCESS NETWORK)を有する。この無線アクセスネットワークの一例として、図2に、RAN1と、RAN2と、RAN3とを示す。このうち、RAN1は、マクロセルを提供するマクロセル基地局BS_Aを有する。また、RAN2は、マイクロセルを提供するマイクロセル基地局BS_Bを有する。また、RAN3は、ピコセルを提供するピコセル基地局BS_Cを有する。各セルは重複部分を持ち、セル重複部分に位置する移動端末は重複するセルのいずれをも利用することができる。以下の説明において、マクロセル基地局BS_A、マイクロセル基地局BS_B、およびピコセル基地局BS_Cを総称して、基地局10とも記載する。
【0024】
次に、図1を参照して、基地局10及び移動端末100の基本的構成について説明する。基地局10は、コア網側インタフェース11と、仮想MAC処理部12と、無線方式選定部13と、無線モジュール14と、無線環境検出部15とを備える。
【0025】
コア網側インタフェース11は、コアネットワークとの間でネットワーク層の通信データ(IP(Internet Protocol)パケット)を送受する。仮想MAC処理部12は、仮想MACアドレスを用いたリンクを確立するための処理を行う。無線方式選定部13は、複数の無線モジュール14の中から通信に使用する無線モジュールを選択する。無線モジュール14には、複数のRAN(マクロセル、マイクロセル、ピコセル)にそれぞれ対応する無線モジュール14a,14b,14cが含まれる。
【0026】
無線環境検出部15は、アンテナ16を有し、無線品質情報を取得する。無線環境検出部15は、取得した無線品質情報を、サーバ4の要求に応じてサーバ4に送信する。サーバ4は、この無線品質情報を、サーバ4内の統合無線環境情報データベース2に格納する。この無線品質情報には、例えば、RSSI、バックグラウンド雑音レベル、変調方式、送信バッファに蓄積されている送信待ちのデータ量、送信失敗を示すNACK信号を相手局から受信した回数、相手局から受信した無線フレームの不良率などが含まれる。
【0027】
移動端末100は、ユーザ網側インタフェース101と、仮想MAC処理部102と、無線方式選定部103と、無線モジュール104、無線環境検出部105と、ナビゲーション部110とを備える。
【0028】
ユーザ網側インタフェース101は、ユーザネットワークとの間でネットワーク層の通信データ(例えば、IP(Internet Protocol)パケット)を送受する。仮想MAC処理部102は、仮想MACアドレスを用いたリンクを確立するための処理を行う。無線方式選定部103は、複数の無線モジュール104の中から通信に使用する無線モジュールを選択する。無線モジュール104には、複数のRAN(マクロセル、マイクロセル、ピコセル)にそれぞれ対応する無線モジュール104a,104b,104cが含まれる。
【0029】
無線環境検出部105は、アンテナ106を有し、無線品質情報を取得する。無線環境検出部105は、取得した無線品質情報を、基地局10への登録時に、または、サーバ4からの要求時に、基地局10を介してサーバ4に送信する。サーバ4は、受信した無線品質情報を、サーバ4内の統合無線環境情報データベース2に格納する。この無線環境検出部105が取得する無線品質情報については、基地局10の無線環境検出部15が取得する無線品質情報と同様であるため、説明を省略する。
【0030】
ナビゲーション部110は、探索要求部111と、表示操作部112と、通知部113とを備える。
探索要求部111は、移動端末100を操作するユーザの操作に基づいて、地図情報に含まれる複数の経路の中から、目的地までの移動経路を抽出する要求(探索要求)を、サービスセンター5(経路抽出部)に対して出力する。
表示操作部112は、不図示の経路選択部と、移動経路表示部とを備えている。この経路選択部は、サービスセンター5(経路抽出部)が抽出した移動経路を移動した場合の、基地局と自装置との間の無線通信の通信品質に基づいて、経路抽出部が抽出した移動経路の中から表示対象の移動経路を選択する。また、移動経路表示部は、液晶ディスプレイなどを備えており、経路選択部が選択した移動経路を表示する。
【0031】
本実施形態では、ユーザが、探索要求部111を介して、探索要求をサービスセンター5に出力する。この探索要求には、現在地と目的地の地理情報、および移動中に行われる無線通信に対する要求品質を示す情報が含まれる。サービスセンター5は、探索要求を受信すると、予め記憶されている地図情報に基づいて、地図情報に含まれる複数の経路の中から、目的地までの移動経路の候補(移動経路候補)を抽出する。サーバ4は、サービスセンター5が抽出した移動経路候補毎に、移動端末100の移動に伴う移動経路候補上のネットワーク状態を推定する。また、サーバ4は、ユーザが要求した通信品質を満たさない混雑区間があるか否かを判定する。移動端末100は、サービスセンター5が抽出した移動経路候補と、サーバ4が生成した移動経路候補毎の混雑区間の有無を示す情報とを、基地局10を介して受信する。移動端末100は、受信した移動経路候補と、混雑区間の有無を示す情報とを、表示操作部112を介してユーザに提示する。ユーザはいずれかの移動経路候補を選択する。そして、ユーザが選択した移動経路候補は、通知部113を介してサーバ4に送信されて予約登録される。
【0032】
換言すれば、経路選択部は、サービスセンター5(経路抽出部)が抽出した移動経路毎の通信品質に基づいて、サービスセンター5(経路抽出部)が抽出した移動経路の中から、無線通信に要求される通信品質を満たす移動経路を、表示対象の移動経路として選択する。
【0033】
ここで、ユーザが要求する通信品質(QoS;Quality of Service;サービス品質)としては、例えば、スループット[Mbps]、遅延[msec]、パケットロス[%]などが挙げられる。
【0034】
また、移動中に行われる無線通信の要求品質は、ユーザが利用する移動端末100のアプリケーションごとに相違する。例えば、電子メール、データ等を扱うアプリケーションでは、確実性や、機密性が重要となり、IP電話や、ストリーミング等を扱うアプリケーションでは実時間性(速さ)が重要となる。本実施形態のナビゲーション部110では、探索要求部111によって、これらアプリケーションの品質保証ファクタをネットワーク側から見た通信品質ファクタに変換する。
【0035】
例えば、ユーザが移動中に実行させるアプリケーションの動作設定をナビゲーション部110に対して行えば、探索要求部111によって、該アプリケーションの動作設定仕様に基づき、ユーザ要求の通信品質としてスループットの下限値[Mbps]、遅延の上限値[msec]、パケットロスの上限値[%]などに数値化され、ユーザ要求の通信品質として探索条件に付随されるようにする。このように、ユーザ要求の通信品質ファクタの上限値または下限値を設定することにより、表示操作部112を介して、(ユーザ要求の通信品質を満たさない)混雑区間の無い移動経路候補をユーザが選択したとすれば、ユーザが移動経路上でアプリケーションを実行させる際に、アプリケーションの実行品質が保証されることになる。
【0036】
なお、移動中に行われる無線通信に対する要求品質は、上述したスループット、遅延、パケットロスに限定されるものではない。例えば、音声通信などのリアルタイムUGS(帯域授与型サービス)アプリケーションの場合は、遅延の上限値が設定されてもよく、ジッターの上限値が設定されてもよい。
【0037】
また、サービスセンター5による移動経路探索の探索条件には、現在地及び目的地の地理的情報、ユーザが要求する通信品質の他に、移動時間、移動距離及びまたは移動コスト(通信費用や、移動体が車両である場合には燃費など)を含み、これらの探索条件が重み付けされるのが望ましい。
【0038】
また、サーバ4は、混雑区間が存在する移動経路候補について、この混雑区間の地理的区間情報及びまたは混雑予定時間帯情報を移動端末100に送信してもよい。この場合には、移動端末100は、表示操作部112を介して、混雑区間の地理的区間情報及びまたは混雑予定時間帯情報をユーザに提示する。これにより、ユーザは、例えば、混雑区間の地理的区間または混雑予定時間帯が短いと判定される場合などでは、その区間または時間帯についてはアプリケーションの実行品質が保証されなくてもよい、という判断をすることもできる。
【0039】
また、ユーザは、通知部113を介して、サーバ4に対し混雑区間がある移動経路候補を予約登録すると共に、当該移動端末100に無線リソースを優先的に割り当てる優先割当を要求することができる。この場合、サーバ4では、移動経路候補上の混雑区間におけるネットワーク状態(無線リソースの割当状態)を、ユーザが要求する通信品質を満たすよう変更することになる。
【0040】
上述したように、移動体が移動しながら扱うアプリケーションも多様となり、局面によっては、重要性や緊急性といった観点から見たアプリケーションの優先順位も相対的に高いものとなる可能性がある。例えば、救急車両において、医療的措置を施しながら患者を搬送する際に、他の地点にいる専門医からの指示を受けながら医療的措置を施すような場面が想定される。このような場合には、移動中に実行されるアプリケーションとして、VoIPや、(動画)ストリーミング等を扱うアプリケーションが想定され、より短い移動時間と共に高い通信品質が要求される。
【0041】
このような想定場面では、ユーザ要求の通信品質が高いことから、表示操作部112に提示される移動経路候補に混雑区間の存在する移動経路候補が含まれ、しかも該移動経路候補が最短移動時間となる移動経路である可能性がある。このような場合に、移動端末100からサーバ4に対して優先割当要求を行い、サーバ4が混雑区間で移動端末100に無線リソースを優先的に割り当てるようにすれば、アプリケーションの実行品質が保証されつつ、より短い移動時間での移動が可能となる。
【0042】
また、探索要求部111から、特定時刻、特定地点に到達した時、一定周期毎、または、一定距離毎に、移動経路の探索要求を再度行うようにしてもよい。これにより、移動端末100から異なる地点または時刻での位置情報が通知されるので、サーバ4に移動端末100の始動速度をより正確に報知することができ、サーバ4側で、予定移動経路上での通信品質(ネットワーク状態)の推定をより確度よく行うことができる。
【0043】
また、探索要求部111から、一定時間内にユーザが要求する通信品質がそれぞれ異なる複数回の移動経路の探索要求を行い、表示操作部112を介して、該複数回の探索要求で得られた移動経路候補及び移動経路候補毎の混雑区間の有無を識別提示するようにしてもよい。例えば、ユーザが移動中に実行させるアプリケーションの動作設定に幅を持たせることができる場合には、移動経路候補及び移動経路候補毎の混雑区間の有無について、ユーザ要求の通信品質を可変パラメータとした識別提示が可能となり、ユーザに選択の幅を持たせることができ、様々なユーザ要求に的確に対処することができる。
【0044】
[経路抽出システムの構成]
次に、図1及び図2を参照して、サーバ4の構成について説明する。サーバ4は、経路抽出システム1における無線リソース割当に係る集中制御装置、即ち統合無線リソースマネージャ(Integrated Radio Resource Manager:IRRM)として設置される。このサーバ4は、統合無線環境情報データベース(Integrated Radio Environment Database:IRED)2と、無線リソースマネージャ(Radio Resource Manager:RRM)3と、を備える。
【0045】
サーバ4は、移動端末100から、このサーバ4に対して混雑区間を持つ移動経路候補が予約登録されると共に、移動端末100に無線リソースを優先的に割り当てる優先割当が要求されたときには、無線リソースマネージャ3は、移動経路候補上の混雑区間におけるネットワーク状態(無線リソース割当)を、ユーザ要求の通信品質を満たすよう変更する。
【0046】
すなわち、サーバ4は、移動端末100によって指定された移動経路内の通信品質を、移動端末100から受信した要求値に基づいて変更する不図示の通信品質制御部をさらに備えていてもよい。この場合、サーバ4は、この通信品質制御部が変更した通信品質を示す情報を、移動端末100に送信するように構成してもよい。
【0047】
ここで、後述する実施例で参照する図5及び図7の例を用いて説明する。図5の例では、例示された全てのマクロセル312〜374がサーバ4(IRRM)の担当エリアとなる。各マクロセル312〜374内にマイクロセルまたはピコセルが存在する構成であってもよい。また図7に例示されるように、マクロセル343内には、マイクロセル及びピコセルが存在する。また、サーバ4(IRRM)は、担当エリア内の全ての基地局BS_A,BS_B,BS_Cと通信接続し、各基地局BS_A,BS_B,BS_Cとの間でデータを送受することができる。なお、図7中では、経路抽出システム1の移動端末100として、優先割当要求のあった移動端末(以下、優先移動端末と称する)MS_bと、それ以外の移動端末MS_aとを区別して示している。
【0048】
統合無線環境情報データベース2(IRED)は、特定の位置におけるRAN毎の無線品質を表す無線品質情報を格納する。
図3は、統合無線環境情報データベース2の構成例を例示する説明図である。図3において、統合無線環境情報データベース2は、地図情報(2次元地図又は3次元地図)と、基地局及び移動端末の位置情報と、各RANの特定の位置における無線品質を表す無線品質情報とを有する。基地局及び移動端末の位置情報は、地図情報と関連付けされている。また、統合無線環境情報データベース2は、各情報を時系列で(例えば時刻情報と共に)蓄積する。
【0049】
ここで、各RANの無線品質情報は、地図情報と関連付けされている。図3では、RANの種類として、マクロセルとして、LTE(Long Term Evolution)のRANを使用し、マイクロセルとして、WiMAX (Worldwide Interoperability for Microwave Access, IEEE802.16)のRANを使用し、ピコセルとして、無線LAN(Local Area Network, IEEE802.11)や小セル無線方式のRANを使用する構成が例示されている。なお、これ以外の他の構成であってもよい。例えば、マクロセルとして、次世代セルラー通信方式、LTE−A(LTE Advanced)、5G LTEやWiMAX 2や、既存の3G無線方式例えばEvDO(Evolution Data Only)のRANを使用し、マイクロセルとして、フェムトセル、無線LANやPHS(Personal Handyphone System) を使用する構成などもある。
【0050】
また、LTEの無線品質情報として受信強度、スループット、遅延及びリソース容量の情報が格納されている。また、WiMAXの無線品質情報としては、RSSI(Received Signal Strength Indicator)またはCINR(Carrier to Interference and Noise power Ratio)、スループット、遅延及びリソース容量の情報が格納されている。さらに、無線LANや小セル無線方式の無線品質情報としては、RSSI、スループット、遅延及びリソース容量の情報が格納されている。
【0051】
無線リソースマネージャ3は、統合無線環境情報データベース2に基づいて優先移動端末MS_bが予約登録した移動経路候補R#01に適するRANを選択し、該選択したRANが必要に応じて他のRANとの間で協調して該端末に無線リソースを割り当てるように無線リソース割当制御を行う。なお、以下の説明では、優先移動端末MS_bと、それ以外の他の移動端末MS_aとを区別して表記し、移動端末100は、優先移動端末MS_b及び他の移動端末MS_aのいずれをも含む表記とする。
【0052】
図1及び図2に示したように、無線リソースマネージャ3は、滞在予想時間算出部31、無線リソース状態推定部32及び協調制御部33を備える。滞在予想時間算出部31は、優先移動端末MS_bがRANの同一セル内に滞在する予想時間を算出する。また、無線リソース状態推定部32は、移動端末100の特定時刻における予想位置を含むセルを有するRAN毎に、該特定時刻における無線リソース状況を推定する。
【0053】
特に、移動端末100から経路探索要求があったときの混雑区間の判定では、サービスセンター5から取得した移動経路候補の各移動経路候補について、移動端末100の特定時刻における予想位置を含むセルを有するRAN毎に、該特定時刻における無線リソース状況を推定する。
【0054】
また特に、優先移動端末MS_bへのリソース割当を優先する際には、優先移動端末MS_bが予約登録した移動経路候補R#01の移動経路上で、混雑区間の開始地点、並びに、該混雑区間の開始地点より特定時間または特定距離だけ前となる地点のそれぞれについて、該地点を含むセルに応じたRAN毎に、該地点予想通過時刻における無線リソース状況を推定する。
【0055】
この無線リソース状況の推定において、無線リソース状態推定部32は、対象となるRANにおいて移動端末100が要求する通信品質を満たすために必要となる無線リソース所要量を割り当てることができるか否かを判定する。また、無線リソース状態推定部32は、対象となるRANの無線リソース利用率が規定値以下であるか否かを判定する。
【0056】
すなわち、この他の移動端末MS_aの収容換えでは、協調制御部33は、混雑区間の開始地点を含むセルに応じたRANのうち、優先移動端末MS_bの滞在予想時間が最大であるRANにおいて該優先移動端末MS_bの要求する通信品質を満たすために必要となる無線リソース所要量を確保するように、該優先移動端末MS_b以外の他の移動端末MS_aを対象として、該優先移動端末MS_bの滞在予想時間が最大であるRANから他の(例えば、滞在予想時間が小さい)RANへの収容換えを検討する。
【0057】
また、協調制御部33は、混雑区間の開始地点を含むセルに応じたRANのうち無線リソース利用率が規定値以下であるRANを優先移動端末MS_bの滞在予想時間が最大であるRANからの収容換え先として、該優先移動端末MS_bの滞在予想時間が最大であるRANにおいて該優先移動端末MS_bの要求する通信品質を満たすために必要となる無線リソース所要量を確保するように、該優先移動端末MS_b以外の他の端末MS_aを対象として収容換えを検討する。
【0058】
以上説明したように、移動端末100の移動に伴う該移動経路候補上のネットワーク状態(無線リソース状況)を、統合無線環境情報データベース2に基づき推定するので、予定移動経路上でのネットワーク状態の推定を確度よく行うことができる。また、推定したネットワーク状態に基づき混雑区間の有無を判定して移動端末100に送信してユーザに提供することができる。
【0059】
[移動経路の探索手順]
次に、本実施形態の移動端末100及びサーバ4または経路抽出システム1が行う移動経路探索方法について、図4及び図5を参照して説明する。
図4は、移動経路探索の手順の一例を示す図である。図5は、移動経路探索で得られた移動経路候補とマクロセルとの関係を例示する概要図である。
【0060】
図4において、ステップS101では、ユーザが、移動端末100の探索要求部111を介して、サーバ4に対して移動経路の探索要求を行う。このとき、移動端末100のサーバ4への登録も同時に行われ、移動端末100の無線状態などがサーバ4の統合無線環境情報データベース2に登録される。
【0061】
次に、ステップS301では、サーバ4(無線リソースマネージャ3)が、サービスセンター5に対して、探索要求を行う。そして、ステップS501で、サービスセンター5による経路探索が行われ、探索結果としての移動経路候補がサーバ4に送信される。
【0062】
次に、ステップS302では、無線リソースマネージャ3が統合無線環境情報データベース2を参照して、移動経路候補の移動経路候補毎に、移動端末100の移動に伴う該移動経路候補上のネットワーク状態を推定し、ユーザが要求した通信品質を満たさない混雑区間があるか否かを判定する。
【0063】
具体的には、無線リソースマネージャ3の無線リソース状態推定部32により、移動経路候補の各移動経路候補について、移動端末100の特定時刻における予想位置または特定位置を含むセルを有するRAN毎に、該特定時刻または特定位置における無線リソース状況を推定する。ここで、特定時刻または特定位置のサンプリングの刻みは任意であってよいが、少なくともピコセルの短軸方向の距離以下に相当する値であることが望ましい。
【0064】
この無線リソース状況の推定において、無線リソース状態推定部32は、対象となるRANにおいて移動端末100が要求する通信品質を満たすために必要となる無線リソース所要量を割り当てることができるか否かを判定し。また、対象となるRANの無線リソース利用率が規定値以下であるか否かを判定する。
【0065】
判定の結果、要求通信品質を満たすために必要となる無線リソース所要量の割当ができないと判定され、対象となるRANの無線リソース利用率が規定値以上であるとき、特定時刻または特定位置は、混雑区間に在ると判断される。
【0066】
例えば、図5の例では、サービスセンター5による経路探索の結果は、移動経路候補R#01〜R#04であり、その内、移動経路候補R#01についてはマクロセル343内で混雑区間((xj,yj,zj)地点から(xk,yk,zk)地点までの区間)が存在し、また移動経路候補R#02についてはマクロセル322内で混雑区間が存在している。
【0067】
次に、ステップS303では、サーバ4(無線リソースマネージャ3)が、移動経路候補及び移動経路候補毎の混雑区間の有無情報を移動端末100に通知する。次に、ステップS102では、サーバ4から受信した移動経路候補及び移動経路候補毎の混雑区間の有無情報が、表示操作部112を介してユーザに提示される、ユーザはいずれかの移動経路候補を選択することになる。そして、ステップS103では、ユーザが選択した移動経路候補を、移動端末100の通知部113を介してサーバ4に送信され、統合無線環境情報データベース2に予約登録される。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の経路抽出システム1では、目的地までの移動経路を、移動経路上の通信品質に基づいて抽出する。これにより、経路抽出システム1は、移動経路上に無線回線が混雑するなどにより通信品質が低下している場所がある場合に、その場所を回避した移動経路を提示することができる。
【0069】
[移動経路の探索手順(変形例)]
次に、本実施形態の移動端末100及びサーバ4または経路抽出システム1が行う移動経路探索方法おいて、優先割当要求があった時の無線リソース優先割当処理について、図6及び図7を参照して説明する。
図6は、移動経路探索方法の手順の変形例を示す図である。図7は、移動端末が予約登録した移動経路候補とマクロセルの関係を例示する概要図である。
【0070】
この変形例では、移動端末100は救急車両に搭載されるものとし、上述したような医療的措置を施しながら患者を搬送する際に、他の地点にいる専門医からの指示を受けながら医療的措置を施すような場面を想定する。この場合においても、移動経路の探索要求を行ってから、表示操作部112に移動経路候補及び移動経路候補毎の混雑区間の有無情報が提示されるまでの手順は、上述したステップS101〜ステップS102と同様であるため、その説明を省略する。
【0071】
次に、図6において、ステップS111では、移動端末100は、ユーザが選択した(混雑区間を持つ)移動経路候補を、通知部113を介してサーバ4に送信して統合無線環境情報データベース2に予約登録すると共に、当該移動端末100に無線リソースを優先的に割り当てる優先割当を要求する。
【0072】
なお、無線リソースの優先割当要求は、他のユーザに対してRANの収容換えを強いるものであることから、安易に行われるものであってはならず、事前にユーザまたは移動端末100の登録及び許可が必要となる。また、優先割当要求の段階で、サーバ4はユーザの個人認証または移動端末100の機器認証を行って、事前に許可されたユーザまたは移動端末100からの要求であることを確認する。このような認証確認の後、移動端末100は優先移動端末MS_bであると認識される。
【0073】
図7において、優先移動端末MS_bが移動経路候補R#01上の(xi,yi,zi)地点に到達したとき、移動速度から判定して、優先移動端末MS_bは、T時間後には移動経路候補R#01上の混雑区間の開始地点である(xj,yj,zj)地点に到達する。この例では、(xj,yj,zj)地点は、マクロセル343内にあって、マイクロセル及びピコセルと通信可能エリアが重なっている区域に位置する。混雑区間では、事前(経路探索要求時)に無線リソースマネージャ3によってネットワーク状態が推定され、ユーザ要求の通信品質を満たさないと判定されているから、優先移動端末MS_bの要求する通信品質を満たすために必要となる無線リソース所要量を確保するように、該優先移動端末MS_b以外の他の移動端末MS_aを対象としたRANへの収容換えを検討する。
【0074】
まず、ステップS112では、優先移動端末MS_bの現在地(xi,yi,zi)を含むマクロセル343のRAN1のサービスエリア内に位置する全ての移動端末MS_a及びMS_bが、それぞれの無線状態、要求通信品質、現在地などの情報を統合無線環境情報データベース2に登録する。
【0075】
次に、ステップS211i,S221i,S231iでは、優先移動端末MS_bの現在地(xi,yi,zi)でアクセス可能なRAN1,RAN2,RAN3の各基地局が、無線リソースマネージャ3からの要求に応じて、無線リソース状況(混雑情報、場所)を統合無線環境情報データベース2へ登録する。
【0076】
次に、ステップS211j,S221j,S231jでは、特定時刻(T時間後)の優先移動端末MS_bの予想位置(xj,yj,zj)でアクセス可能なRAN1,2,3の各基地局が、無線リソースマネージャ3からの要求に応じて、無線リソース状況(混雑情報、場所)を統合無線環境情報データベース2へ登録する。
【0077】
次に、ステップS312では、無線リソースマネージャ3は、優先移動端末MS_bの移動速度及び移動経路候補R#01に基づいて特定時刻(T時間後)の優先移動端末MS_bの予想位置(xj,yj,zj)でアクセス可能な各基地局のセル内の移動距離を算出する。そして、無線リソースマネージャ3は、優先移動端末MS_bの移動速度及び各基地局のセル内の移動距離に基づいて優先移動端末MS_bの各基地局のセル内の滞在予想時間を算出する。また、無線リソースマネージャ3は、RAN1,RAN2,RAN3毎に、優先移動端末MS_bの要求QoSを満たすための無線リソース所要量を算出する。
なお、各セル内の移動距離と移動速度が分かれば滞在予想時間は自明であるので、移動速度が粗同じである場合は、滞在予想時間を計算しないで、滞在予想時間の代わりに移動距離を比較するようにしてもよい。
【0078】
次に、ステップS313では、無線リソースマネージャ3は、特定時刻(T時間後)の優先移動端末MS_bの予想位置(xj,yj,zj)におけるRAN1,RAN2,RAN3の無線リソース状況及び端末の収容状況に基づいて、無線リソース割当に係るRAN間協調の指針を決定する。
【0079】
次に、ステップS314では、無線リソースマネージャ3が、各基地局に対し、無線リソース割当に係るRAN間協調を依頼する。つまり、優先移動端末MS_bに最適なRAN(RAN1)が混雑しているので、無線リソースマネージャ3は、RAN1で収容している他の移動端末MS_aを他のRAN2または3へ収容換えすることを依頼する。
【0080】
次に、ステップS212,S222,S232では、各基地局が、無線リソース割当に係るRAN間協調の結果としての無線リソース状況(混雑情報、場所)を、無線リソースマネージャ3からの要求に応じて、統合無線環境情報データベース2へ登録する。
【0081】
さらに、ステップS315では、無線リソースマネージャ3が、優先移動端末MS_bに対し、混雑区間の開始位置(xj,yj,zj)で利用可能なRAN(RAN1)を通知する。
【0082】
以上説明したように、この変形例において、サーバ4は、指定された移動経路内の通信品質を、受信した要求値に基づいて変更する通信品質制御装置の機能を有している。これにより、経路抽出システム1は、移動経路上の無線回線の通信品質を、要求される品質に維持(確保)することができる。また、経路抽出システム1は、移動経路上に無線回線が混雑するなどにより通信品質が低下している場所がある場合に、その場所の通信品質を、要求される品質にまで向上させることができる。
【0083】
[経路抽出システムの機能構成]
次に、これまで説明した経路抽出システム1の機能構成について、図8から図11を参照して説明する。
【0084】
ここで、上述した実施形態においては、サービスセンター5が移動経路候補を抽出(探索)するとして説明したが、これに限られない。この経路抽出システム1は、移動端末100が備えるナビゲーション部110が経路抽出部の機能を有していてもよい。この構成の場合には、移動端末100は、ナビゲーション部110が抽出した移動経路候補と、通信の要求品質を示す情報とをサーバ4に送信する。
【0085】
図8は、本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の一例を示す構成図である。上述したように経路抽出システム1は、サーバ4と移動端末100とが通信を行うことにより、移動経路を抽出する。このサーバ4は、移動経路受信部41と、各移動経路候補の品質生成部42と、移動経路品質送信部43とを、その機能部として備える。また、移動端末100は、移動経路抽出部141と、移動経路品質取得部142と、移動経路選択部143と、移動経路表示部144とを、その機能部として備える。
【0086】
移動経路抽出部141は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する。
移動経路品質取得部142は、移動経路抽出部141が抽出した移動経路候補の情報をサーバ4に送信する。また、移動経路品質取得部142は、移動経路候補の情報をサーバ4に送信した結果、サーバ4から送信される移動経路の品質情報を受信する。ここで、サーバ4から送信される移動経路の品質情報とは、移動経路抽出部141が抽出した移動経路候補を移動した場合の、各経路上における基地局と自装置との間の無線通信の通信品質を示す情報である。
【0087】
次に、サーバ4の機能部について説明する。
サーバ4の移動経路受信部41は、移動端末100から、移動経路候補を示す情報を受信する。ここで、この移動端末100は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する移動経路抽出部141を備える。すなわち、移動経路受信部41は、地図情報における複数の経路の中から、目的地までの移動経路候補を抽出する移動経路抽出部141を備える移動端末100から、移動経路抽出部141が抽出した移動経路候補を示す情報を受信する。
各移動経路候補の品質生成部42は、移動経路受信部41が受信した移動経路候補を示す情報に基づいて、当該移動経路候補を移動した場合の基地局と移動端末100との間の各地点での無線通信の通信品質を示す情報を生成する。
移動経路品質送信部43は、各移動経路候補の品質生成部42が生成した通信品質を示す情報を、移動端末100に送信する。
【0088】
再び、移動端末100の機能部について説明する。移動経路選択部143は、移動経路抽出部141が抽出した移動経路候補を移動した場合の、各経路上における基地局と自装置との間の無線通信の通信品質に基づいて、移動経路抽出部141が抽出した移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する。
移動経路表示部144は、移動経路選択部143が選択した移動経路を表示する。
【0089】
また、この構成の場合には、移動端末100は、図9に示すように経路選択を行う機能部を備えていてもよい。
図9は、本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の第1の変形例を示す構成図である。
【0090】
この変形例において、移動端末100は、移動経路品質比較・経路選択部131と、要求品質を満たした移動経路表示部132とを、その機能部として備えている。
移動経路品質比較・経路選択部131は、移動経路抽出部141が抽出した移動経路候補毎の通信品質に基づいて、移動経路抽出部141が抽出した移動経路候補の中から、無線通信に要求される通信品質を満たす移動経路候補を、表示対象の移動経路として選択する。ここで、移動経路品質比較・経路選択部131は、各移動経路候補について、移動経路上の複数の通信品質のうち最小の通信品質と、移動経路品質の要求値とを比較する。移動経路品質比較・経路選択部131は、各移動経路候補についての、それぞれの比較結果に基づいて、複数の移動経路候補のうち、要求品質を満たす移動経路を、表示対象の移動経路として選択する。
移動経路表示部132は、移動経路品質比較・経路選択部131が選択した、無線通信に要求される通信品質を満たす移動経路を表示する。
【0091】
また、この構成の場合には、移動端末100は、図10に示すように、サーバ4との間において情報を送受信する機能部を備えていてもよい。
図10は、本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の第2の変形例を示す構成図である。
【0092】
この移動端末100は、移動中の通信品質要求値指定部151と、移動経路品質要求値送信部152と、移動経路品質受信部153と、移動経路品質比較・経路選択部154と、移動経路表示部155とを、その機能部として備えている。また、この場合、サーバ4は、移動経路と移動経路品質要求値とを受信する受信部51と、品質要求値を満たす移動経路候補の品質生成部52と、移動経路品質送信部53とを、その機能部として備えている。
【0093】
移動中の通信品質要求値指定部151は、移動経路候補内の無線通信の通信品質の要求値を指定する。
移動経路品質要求値送信部152は、移動経路候補の情報を通信品質制御装置の一例であるサーバ4に対して送信する。また、移動経路品質要求値送信部152は、移動経路候補内の通信品質を、サーバ4に対して、移動中の通信品質要求値指定部151が指定した通信品質の要求値を送信する。この場合、サーバ4とは、受信した通信品質の要求値に基づいて変更する通信品質制御装置の一例である。
【0094】
次に、サーバ4の機能部について説明する。
サーバ4の受信部51は、移動端末100の移動経路品質要求値送信部152が送信する移動経路候補と移動経路品質要求値とを受信する。
品質要求値を満たす移動経路候補の品質生成部52は、受信部51が受信した移動経路候補と、移動経路品質要求値とに基づいて、移動経路候補内の通信品質を変更する。すなわち、品質要求値を満たす移動経路候補の品質生成部52は、移動端末100によって抽出された移動経路候補内の通信品質を、移動端末100から受信した通信品質の要求値に基づいて変更する。
移動経路品質送信部53は、品質要求値を満たす移動経路候補の品質生成部52が変更した通信品質を示す情報を、移動端末100に送信する。
【0095】
再び、移動端末100の機能部について説明する。
移動経路品質受信部153は、移動経路品質要求値送信部152が送信した通信品質の要求値に基づいて、サーバ4が変更した通信品質を示す情報を受信する。この場合、サーバ4とは、通信品質制御装置の一例である。
移動経路品質比較・経路選択部154は、移動経路品質受信部153が受信した通信品質を示す情報に基づいて、移動経路抽出部141が抽出した移動経路候補の中から表示対象の移動経路を選択する。
移動経路表示部155は、移動経路品質比較・経路選択部154が選択した、無線通信に要求される通信品質を満たす移動経路を表示する。
【0096】
また、経路抽出システム1は、図11に示すように構成することもできる。
図11は、本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の第3の変形例を示す構成図である。
この図11に示す構成の場合には、移動端末100は、移動経路候補と移動中の通信品質要求値指定部161と、移動経路品質要求値送信部162と、移動経路表示部163とを、その機能部として備えている。サーバ4は、移動経路と移動経路品質要求値とを受信する受信部61と、品質要求値を満たす移動経路候補の品質生成部62と、移動経路品質比較・経路選択部63と、選択した移動経路の送信部64とを備えている。
すなわち、図11に示す経路抽出システム1は、図10に示す経路抽出システム1において移動端末100が備える移動経路品質比較・経路選択部154に対応する機能部である、移動経路品質比較・経路選択部63を、サーバ4が備える点において、図10に示す経路抽出システム1と異なる。
【0097】
また、経路抽出システム1は、図12に示すように構成することもできる。
図12は、本発明の一実施形態に係る経路抽出システム1の機能構成の第4の変形例を示す構成図である。
この図12に示す構成の場合には、移動端末100は、移動経路選択部171と、選択した移動経路及び該当経路における通信品質要求値の送信部172と、品質要求を満たした移動経路受信部を確保完了/確保するメッセージの受信部173と、選択した移動経路走行可能表示部174とを、その機能部として備える。また、サーバ4は、選択された移動経路と移動経路品質要求値の受信部71と、品質要求値を満たす移動経路を確保完了/確保するメッセージの送信部72とを、その機能部として備える。また、この構成の場合、サーバ4は、上述した統合無線環境情報データベース2と、無線リソースマネージャ3とを、その機能部として備える。
【0098】
すなわち、図12に示す経路抽出システム1は、移動端末100が経路を選択し、選択した経路に対する通信品質の要求値をサーバ4に送信する点において、図10に示す経路抽出システム1と異なる。また、図12に示す経路抽出システム1は、サーバ4が、移動端末100から送信された経路に対する通信品質の要求値を満たすように、この選択された経路上の各地点における無線リソースの協調制御を行う点において、図10に示す経路抽出システム1と異なる。また、図12に示す経路抽出システム1は、サーバ4が、無線リソースの協調制御を行なった結果、通信品質の要求値を満たすような経路の確保を完了し、この確保の完了を示すメッセージを移動端末100に送信する点において、図10に示す経路抽出システム1と異なる。
【0099】
このように構成しても、経路抽出システム1は、移動経路上に無線回線が混雑するなどにより通信品質が低下している場所がある場合に、その場所を回避した移動経路を提示することができる。また、経路抽出システム1は、移動経路上の無線回線の通信品質を、要求される品質にまで維持(確保)することができる。また、経路抽出システム1は、移動経路上に通信品質が低下している場所がある場合に、その場所の通信品質を、要求される品質にまで向上させることができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0101】
なお、上述の各装置は内部にコンピュータを有している。そして、上述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0102】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…経路抽出システム、2…統合無線環境情報データベース(IRED)、3…無線リソースマネージャ(RRM)、4…サーバ、5…サービスセンター、10…基地局、31…滞在予想時間算出部、32…無線リソース状態推定部、33…協調制御部、41…移動経路受信部、42…各移動経路候補の品質生成部、43…移動経路品質送信部、51…移動経路と移動経路品質要求値とを受信する受信部、52…品質要求値を満たす移動経路候補の品質生成部、53…移動経路品質送信部、61…移動経路と移動経路品質要求値とを受信する受信部、62…品質要求値を満たす移動経路候補の品質生成部、63…移動経路品質比較・経路選択部、64…選択した移動経路の送信部、110…ナビゲーション部、111…探索要求部、112…表示操作部、113…通知部、131…移動経路品質比較・経路選択部、132…要求品質を満たした移動経路表示部、141…移動経路抽出部、142…移動経路品質取得部、143…移動経路選択部、144…移動経路表示部、151…移動中の通信品質要求値指定部、152…移動経路品質要求値送信部、153…移動経路品質受信部、154…移動経路品質比較・経路選択部、155…移動経路表示部、161…移動経路候補と移動中の通信品質要求値指定部、162…移動経路品質要求値送信部、163…移動経路表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12