特許第6363440号(P6363440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363440
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】学習用時計
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/12 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   G09B19/12
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-184874(P2014-184874)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-57520(P2016-57520A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000147567
【氏名又は名称】株式会社誠文社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永橋 明
【審査官】 上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−050048(JP,U)
【文献】 実開昭47−036553(JP,U)
【文献】 特開2004−198913(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3136360(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0254351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00− 9/56,17/00−19/26
G04B 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計文字盤の中心を貫通した内外二重構造の回転軸に各々取り付けられた分針及び時針が、円盤状の操作板の回転操作により歯車を介して各々回転するように構成された学習用時計であって、
前記操作板は、前記時計文字盤と同軸状に配置されるとともに、その中心が前記分針の前記回転軸に固定され、かつ、その周縁部が時計筐体の周縁部に設けられた開口部から外部に露出する構成とされており、
前記操作板には、前記分針の一目盛りに対応する角度ごとに回転を一旦停止させるクリック機構が設けられ、
前記クリック機構は、前記操作板の一方の面の周縁部に沿って前記回転軸と同心円状に形成された係止環と、前記操作板の前記一方の面に対向する前記時計筐体の内壁に設けられた前記係止環に圧接される係止体とを備え、
前記係止環は、60個の凹部が全周にわたって等間隔に連続して形成されており、
前記係止体は、前記係止環の凹部に嵌まり込む作用部と、この作用部を前記係止環に圧接するように弾性変位自在に支持する腕部とからなることを特徴とする学習用時計。
【請求項2】
請求項1に記載の学習用時計であって、
前記操作板には、裏面の周辺に分数字が表記されており、
前記操作板の裏面と対向する前記時計筐体の背面には、前記分数字を表示する表示窓が設けられていることを特徴とする学習用時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の学習用時計であって、
前記開口部は、前記時計筐体の周縁部のうち、少なくとも、前記時計筐体の中央上部を介した左右2箇所の側部にそれぞれ設けられていることを特徴とする学習用時計。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の学習用時計であって、
前記開口部は、前記時計筐体の周縁部のうち、前記時計筐体の左側の側部から中央上部を通って右側の側部まで一連に設けられていることを特徴とする学習用時計。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の学習用時計であって、
前記開口部は、前記時計筐体の周縁部のうち、前記時計筐体の下部中央部に設けられていることを特徴とする学習用時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低学年の学童や幼児などに時刻の読み方を教えるために使用する学習用時計に関する。
【背景技術】
【0002】
小学校の一年生や二年生の低学年の学童などに時計の時刻の読み方を教えるのに、例えば図11乃至図13に示すような学習用時計101が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この学習用時計101は、樹脂製の時計筐体102と、その下部に一体に形成された台座部103とを備えている。時計筐体102の内部は奥行き方向の中間に仕切壁104が設けられて前空間部105と後空間部106とに区画されている。そして、前空間部105に装着される時計文字盤107の外周には、汎用の時計と同様に、分目盛りと時刻数字とがそれぞれ表示されており、その中央部には分針108と時針109とが配置され、前面は透明樹脂製のカバー110により塞がれている。
【0004】
後空間部106側の仕切壁104には、その一部が時計筐体102の周面から突出した操作ダイヤル111が回転自在に設けられている。操作ダイヤル111は、その回転中心周りにピニオン112が固定され、このピニオン112に大径の中間歯車113が噛合されている。そして、この中間歯車113は小径の分歯車114と噛合されており、中間歯車113の回転中心周りに固定されたピニオン115は大径の時歯車116と噛合されている。
【0005】
また、時歯車116の中心に固定された円筒部117内には、分歯車114の中心から前方に突出した前軸118が回転自在に挿入されており、時計文字盤107の中心を貫通したこれら内外二重構造の軸(円筒部117及び前軸118)のうち、前軸118には分針108の基部が挿入固定され、円筒部117には時針109の基部が挿入固定されている。
【0006】
この構成によれば、操作ダイヤル111を左右に回転すると、この操作ダイヤル111のピニオン112に噛合する中間歯車113が同方向に回転する。そして、この中間歯車113の回転により、これと噛合する分歯車114、及び、中間歯車113のピニオン115と噛合する時歯車116がそれぞれ回転し、分針108及び時針109がそれぞれ所定の関係をもって回動する。そして、このときの分針108と時針109とがそれぞれ指した時刻を、時計文字盤107の外周に表示した分目盛りと時刻数字により読ませて、時刻の読み方を理解させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−112337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような構成の学習用時計101では、操作ダイヤル111が時計筐体102の一方の側(正面より見て右側)にのみ突出していることから、左利きの子供にとっては操作し辛いといった問題があった。
【0009】
また、このような構成の学習用時計101では、操作ダイヤル111の1回転が分針108の1回転と対応するようにそのギヤ比が設定されているものがある。しかし、小さな操作ダイヤル111を操作して分針108と時針109とを動かすため、特に、長針である分針108を1分単位で進めたり戻したりするといった細かな操作が難しいといった問題があった。
【0010】
そこで、操作ダイヤル111を若干回転させるごとにその回転を一旦停止させるクリック機構を設けることで、操作ダイヤル111を操作する手にクリック感を伝えるようにしたものがある。
【0011】
しかし、小さな円盤である操作ダイヤル111を、1/60回転させる操作(すなわち、分針を1分進める若しくは戻す操作)は極めて細かな回転操作であり、クリック機構があったとしても、ちょっとした操作で3〜4クリックいってしまう(つまり、分針が3〜4分一気に進む若しくは戻ってしまう)といった問題があった。また、分針が3〜4分一気に進んだ後、その反動で後戻りするバックラッシュが発生するといった問題もあった。
【0012】
一方、1クリックで確実に停止させるようにクリックの係合構造をある程度強固にすることも考えられるが、そうすると、今度は1クリックの操作に力が必要となり、分針を早く進めたい場合の操作性が極めて悪くなるといった問題がある。また、力をいれてしまうことで、やはり分針が3〜4クリック一気にいってしまうといった問題もある。
【0013】
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、操作ダイヤル(操作板)を大きくし、かつ、時計筐体から突出する部分を正面から見て左右両側に設けることで、利き手に関係なく操作性を向上させた学習用時計を提供することにある。また、他の目的は、操作ダイヤルを大きくし、かつ、分針と同軸に固定して、操作ダイヤルと分針の進み具合を一致させ、かつ、分針の1分が1クリックに対応するようにクリック機構を設けることで、特に分針の進み(若しくは戻し)の操作性を向上させた学習用時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の学習用時計は、時計文字盤の中心を貫通した内外二重構造の回転軸に各々取り付けられた分針及び時針が、円盤状の操作板の回転操作により歯車を介して各々回転するように構成された学習用時計であって、前記操作板は、前記時計文字盤と同軸状に配置されるとともに、その中心が前記分針の前記回転軸に固定され、かつ、その周縁部が時計筐体の周縁部に設けられた開口部から外部に露出する構成としている。
【0015】
この構成によれば、時計文字盤と同軸状に配置されている操作板によって分針の回転軸を直接回転させる構造であるため、操作板の1回転と分針の1回転とが直接対応している。また、この操作板は、時計筐体の周縁部から外部に露出するように大径の円盤に形成されているため、分針の先端の1分(表示盤の一目盛り)の移動量(回転量)と、操作板の1分に対応した移動量(回転量)とがほぼ等しい移動量(回転量)となっている。そのため、学童や幼児(以下、子供という。)にとっては、分針を1分進めるための微妙な回転操作が不要となり、極めて操作性の優れたものとなる。
【0016】
また、本発明の学習用時計によれば、前記開口部は、前記時計筐体の周縁部のうち、少なくとも、前記時計筐体の中央上部を介した左右2箇所の側部にそれぞれ設けられた構成としてもよい。また本発明の学習用時計によれば、前記開口部は、前記時計筐体の周縁部のうち、前記時計筐体の左側の側部から中央上部を通って右側の側部まで一連に設けられた構成としてもよい。この構成によれば、利き手に関係なく、右利きの子供も左利きの子供も同じように操作板を操作することができる。
【0017】
また、本発明の学習用時計によれば、前記開口部は、前記時計筐体の周縁部のうち、前記時計筐体の下部中央部に設けられた構成としてもよい。この構成によれば、学習用時計を例えば机の上に載せて左右に移動させることで操作板を操作することができる。
【0018】
また、本発明の学習用時計によれば、前記操作板には、前記分針の一目盛りに対応する角度ごとに回転を一旦停止させるクリック機構が設けられた構成としている。
【0019】
この構成によると、操作板を分針の進み量と同じ量だけ操作板を回転するごとに、クリック機構が働いてクリック感を得ることができるので、子供にとって操作性が向上する。
【0020】
また、本発明の学習用時計によれば、前記クリック機構は、前記操作板の一方の面の周縁部に沿って前記回転軸と同心円状に形成された係止環と、前記操作板の前記一方の面に対向する前記時計筐体の内壁に設けられた前記係止環に圧接される係止体とを備え、前記係止環は、60個の凹部が全周にわたって等間隔に連続して形成されており、前記係止体は、前記係止環の凹部に嵌まり込む作用部と、この作用部を前記係止環に圧接するように弾性変位自在に支持する腕部とから構成されている。
【0021】
この構成によれば、操作板を軽く操作(回す)だけで、分針が1分進む(若しくは戻る)ごとに、軽いクリック感とともに操作板の回転が一旦止まるので、1分刻みの操作性が向上する。
【0022】
また、本発明の学習用時計によれば、前記操作板には、裏面の周辺に分数字が表記されており、前記操作板の裏面と対向する前記時計筐体の背面には、前記分数字を表示する表示窓が設けられた構成としてもよい。この構成によれば、分針の指す位置を、表示窓の数字で子供に容易に確認させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、操作板によって分針の回転軸を直接回転させる構造であり、操作板の1回転と分針の1回転とが直接対応しているので、子供にとっては、分針を一目盛り(1分)進める若しくは戻すための回転操作が容易となる。また、操作板は、少なくとも時計筐体の左右の2箇所に設けられた開口部から外部に露出しているので、利き手に関係なく、右利きの子供も左利きの子供も同じように操作板を操作することができる。
【0024】
また、本発明によれば、操作板を分針の進み量と同じ量だけ回転するごとに、クリック機構が働いてクリック感を得ることができるとともに、分針の進退を1分(一目盛り)ごとに一旦停止できるので、子供にとって操作性が向上する。特に、分針の進み方を学習する上での操作性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る学習用時計を正面側から見た斜視図である。
図2】本実施形態に係る学習用時計を正面側から見た分解斜視図である。
図3】本実施形態に係る学習用時計を背面側から見た分解斜視図である。
図4】本実施形態に係る学習用時計の内部機構を示す分解斜視図である。
図5】本実施形態に係る学習用時計を正面側から透視的に見た概略図である。
図6A】クリック機構の他の実施例を一部拡大して示す説明図である。
図6B】クリック機構のさらに他の実施例を一部拡大して示す説明図である。
図7】時計筐体の周縁部に設ける開口部の他の実施例を示す斜視図である。
図8】時計筐体の周縁部に設けられる開口部のさらに他の実施例を示す正面図である。
図9】学習用時計に分表示窓を追加した構成を示す分解斜視図である。
図10】学習用時計に分表示窓を追加した構成を示す背面図である。
図11】従来の学習用時計の一例を示す分解斜視図である。
図12】従来の学習用時計を正面側から透視的に見た概略図である。
図13】従来の学習用時計の内部機構を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る学習用時計を正面側から見た斜視図、図2は、本実施形態に係る学習用時計を正面側から見た分解斜視図、図3は、本実施形態に係る学習用時計を背面側から見た分解斜視図、図4は、本実施形態に係る学習用時計の内部機構を示す分解斜視図、図5は、本実施形態に係る学習用時計を正面側から透視的に見た概略図である。
【0028】
本実施形態に係る学習用時計1は、上部が半円弧状に形成された樹脂製の時計筐体2と、その下部に一体に形成された台座部3とを備えている。時計筐体2は、前後方向の中央部で前後2分割された前側筐体2aと後側筐体2bとからなり、台座部3は前側筐体2aに設けられている。
【0029】
前側筐体2aの前面壁2a1に装着される時計文字盤7の外周には、汎用の時計と同様に、分目盛りと時刻数字とがそれぞれ表示されており、その中央部には分針8と時針9とが配置されて、前側筐体2aの前面壁2a1の全体が透明樹脂製のカバー10により閉塞されている。
【0030】
前側筐体2a及び後側筐体2bには、その周縁面を1段凹ませたところにそれぞれ開口部4a,4bが設けられている。この開口部4a,4bも前後に2分割された状態で設けられており、両開口部4a,4bを合わせることで、周縁面に沿って長い一つの開口部4が形成されるようになっている。この開口部4は、本実施形態では時計筐体2の周縁部のうち、時計筐体2の中央上部2dを介した左右2箇所の側部(より具体的には、時計筐体2を両手で持った状態で、左右それぞれの人指し指で操作し易い左右2箇所の上側部)2c,2eにそれぞれ設けられている。ただし、開口部4を設ける箇所は2箇所に限定されるものではない。例えば、これら開口部4,4の下側の側部にさらに開口部4,4をそれぞれ設けて、計4箇所とすることも可能である。
【0031】
前側筐体2aの後面壁2a2には、その一部が時計筐体2の開口部4,4から突出した操作板11が回転自在に設けられている。この操作板11は、その回転中心から前方に突出した前軸(回転軸)18を備えており、この前軸18の周りにピニオン12が固定され、このピニオン12に中間歯車13が噛合されている。そして、この中間歯車13の回転中心周りに固定されたピニオン15に大径の時歯車16が噛合されている。
【0032】
また、時歯車16の中心に固定された円筒部17内には、操作板11の中心から前方に突出した前軸18が回転自在に挿入されており、時計文字盤7の中心を貫通したこれら内外二重構造の軸(円筒部17及び前軸18)のうち、前軸18には分針8の基部が挿入固定され、円筒部17には時針9の基部が挿入固定されている。すなわち、操作板11は、時計文字盤7と同軸状に配置されている。
【0033】
この構成によれば、開口部4から突出している操作板11を左右に回転すると、これに直結されている分針8が同方向に同じ移動量だけ回転する。このとき、この操作板11のピニオン12に噛合する中間歯車13が同方向に回転し、この中間歯車13の回転により、中間歯車13のピニオン15と噛合する時歯車16が回転する。これにより、針8及び時針9が歯車比による所定の関係をもってそれぞれ回動する。
【0034】
本実施形態によれば、操作板11によって分針8の回転軸である前軸18を直接回転させる構造であるため、操作板11の1回転と分針8の1回転とが直接対応している。また、この操作板11は、時計筐体2の周縁面の開口部4,4から外部に露出するように大径の円盤に形成されている。そのため、分針8の先端の1分(表示盤の一目盛り)の移動量(回転量)と、操作板11の1分に対応した移動量(回転量)とがほぼ等しい移動量(回転量)となっている。従って、子供にとっては、従来の学習用時計のような分針8を1分進める(若しくは戻す)ための微妙な回転操作が不要となり、特に、分針8の進め方を学習する上で極めて操作性に優れたものとなっている。また、開口部4は、少なくとも時計筐体2の中央上部2dを介した左右2箇所の側部2c,2eに設けられている。そのため、利き手に関係なく、右利きの子供も左利きの子供も同じように操作板11を操作することができるようになっている。
【0035】
また、本実施形態では、操作板11には、分針8の一目盛りに対応する角度ごとに回転を一旦停止させるクリック機構20が設けられている。
【0036】
このクリック機構20は、操作板11の前面側の周縁部に沿って前軸18と同心円状に形成された係止環21と、操作板11の前面に対向する前側筐体2aの後面壁2a2に設けられた、係止環21に圧接される係止体25とを備えている。
【0037】
係止環21は、主に図4及び図5に示すように、60個の凹部21aが全周にわたって等間隔に連続して形成されており、そのピッチPは、時計文字盤7の分目盛のピッチ(一目盛りの間隔)Pとほぼ一致している。
【0038】
一方、係止体25は、係止環21の凹部21aに嵌まり込む作用部26と、この作用部26を係止環21に圧接するように弾性変位自在に支持する腕部27とからなる。
【0039】
腕部27の基端部27aは、前側筐体2aの後面壁2a2に固定(具体的には、後面壁2a2に形成された2つの突起に、基端部27aに形成された2つの嵌入孔をそれぞれ挿入固定)され、その先端部にリング状(円環状)の作用部26が一体形成されている。係止体25は樹脂の一体成形であり、腕部27は、樹脂のもつ弾性力によって作用部26を弾性変位自在に支持している。ただし、耐久性等を考慮すれば、腕部27は金属製のバネ体を用いても良い。
【0040】
この構成によれば、操作板11を分針8の進み量(具体的には一目盛り)と同じ量だけ回転するごとに、作用部26が係止環21を一つの凹部21aから一山越えて隣の凹部21aに嵌まり込むことでクリック感を得ることができる。すなわち、操作板11を軽く操作する(軽く回す)だけで、分針8が1分進む(若しくは戻る)ごとに、軽いクリック感とともに操作板11の回転が一旦止まるので、分針8を1分刻みで進めるときの操作性が向上する。従って、子供にとって1分(一目盛り)の進み具合を手の感触でも擬似的に体感することができるので、時間の学習をより直感的に行うことができる。
【0041】
ここで、本実施形態では、係止環21の凹部21aを三角形状とし、作用部26をリング状(円環状)としている。すなわち、凹部21aと作用部26とが異なる形状であるため、作用部26は凹部21aに完全には合致せず、緩やかな係合構造となる。そのため、操作板11を軽く操作する(軽く回す)だけで、分針8が1分進む(若しくは戻る)ごとに軽いクリック感とともに操作板11の回転が緩やかに止まるので、1分刻みの操作性が極めて良好なものとなっている。
【0042】
すなわち、従来の学習用時計では、操作ダイヤルを強く操作することにより分針が数分一気に進むといった事態や、その反動で分針が逆戻りするといったバックラッシュが発生していたが、本実施形態の学習用時計1ではこのような事態はほとんど発生しない。
【0043】
図6A及び図6Bは、クリック機構20の他の実施例を示している。
【0044】
図6Aでは、係止環21の凹部21aを連続する半円弧形状(若しくはサインカーブ状)の波片に形成している。ただし、凹部21aの曲率に比べて、作用部26の曲率が緩やかな曲率となるように構成している。これにより、凹部21aと作用部26との係合は、完全には嵌まり合わない緩やかな係合構造となり、緩やかなクリック感や停止感を実現することができる。なお、作用部26の形状としては、凹部21aに接触する部分(作用する部分)のみを円弧状とした半円形状としてもよい。また、このような完全な円弧形状ではなく、例えば楕円形状等であってもよい。つまり、作用部26の凹部21aに接触する部分(作用する部分)の形状は湾曲状であればよく、円や楕円に限るものではない。
【0045】
図6Bでは、半円弧形状(若しくはサインカーブ状)の凹部21aに対して、作用部26を三角形状に形成したものである。この場合においても、凹部21aと作用部26との係合は、完全には嵌まり合わない緩やかな係合構造となり、緩やかなクリック感や停止感を実現することができる。なお、作用部26の形状としては、この三角形状の他にも、例えば5角形や6角形若しくはそれ以上の多角形状としてもよい。
【0046】
また、図7は、時計筐体2の周縁部に設けられる開口部4の他の実施例を示す斜視図である。
【0047】
上記実施形態では、開口部4は、時計筐体2の周縁部のうち、時計筐体2の中央上部を介した左右2箇所の側部にそれぞれ設けられているが、図7に示す実施例では、開口部4は、時計筐体2の周縁部のうち、時計筐体2の左側の側部2cから中央上部2dを通って右側の側部2eまで一連に(すなわち、一つの長い開口部として)設けられている。従って、この場合も、利き手に関係なく、右利きの子供も左利きの子供も同じように操作板11を操作することができる。
【0048】
また、図8は、時計筐体2の周縁部に設けられる開口部4のさらに他の実施例を示す正面図である。
【0049】
図8に示す実施例では、図7に示す開口部4に加え、同様の構成の別の開口部4を、時計筐体2の下部中央部2fに設けたものである。
【0050】
この構成によれば、学習用時計1を例えば机の上に載せて左右に移動させることで操作板11を操作することができる。従って、例えば時間軸を横方向にとって、操作板11の1分の移動量に対応するように分数字をその時間軸上に順次表記したシートを用意し、このシート上に学習用時計1を載せて左右に移動させることで、時間の進み具合を学習用時計1自体の実際の移動量によって視覚的に体感させることができる。すなわち、時間の長さといった概念を、時間軸上の移動量として(すなわち、分数字の差分として)視覚的に示すことが可能となる。
【0051】
なお、図8では、図7に示す開口部4に加えて、時計筐体2の下部中央部2fに開口部4を設けているが、例えば図1に示す左右2箇所の開口部4,4に加えて、時計筐体2の下部中央部2fに開口部4を設ける構成としてもよい。
【0052】
また、図9及び図10は、学習用時計1に分表示窓を追加した構成を示しており、図9は分解斜視図、図10は背面図である。ただし、図10に示す背面図では、分数字を一部透視的に示している。
【0053】
すなわち、操作板11の裏面周辺に分数字22を表記し、操作板11の裏面と対向する時計筐体2の背面である後側筐体2bに、操作板11の分数字22を表示する表示窓23を設けた構成としたものである。この構成によれば、分針8の指す分目盛りの位置を、表示窓23の数字で子供に容易に確認させることができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、係止環21の凹部21aは、係止環21の内周面に沿って形成されている。すなわち、係止環21の中心に向かって凹凸を繰り返す構造としているが、係止環21の上端面に沿って上下に(すなわち、時計筐体2の前後方向に)凹凸を繰り返す構造としてもよい。この場合、係止体25の作用部26を例えば球体とし、係止環21の上端面に圧接させて、上下に弾性変位自在に設けておけばよい。
【0055】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 学習用時計
2 時計筐体
2a 前側筐体
2a1 前面壁
2a2 後面壁
2b 後側筐体
2c 左側の側部
2d 中央上部
2e 右側の側部
3 台座部
4,4a,4b 開口部
7 時計文字盤
8 分針
9 時針
10 カバー
11 操作板
12 ピニオン
13 中間歯車
15 ピニオン
16 時歯車
17 円筒部(回転軸)
18 前軸(回転軸)
20 クリック機構
21 係止環
21a 凹部
25 係止体
26 作用部
27 腕部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13