特許第6363442号(P6363442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363442
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】トリガギャップ
(51)【国際特許分類】
   H01T 2/02 20060101AFI20180712BHJP
   H01H 33/00 20060101ALI20180712BHJP
   H01H 33/66 20060101ALI20180712BHJP
   G01R 31/327 20060101ALI20180712BHJP
   G01R 31/333 20060101ALI20180712BHJP
   H05H 1/48 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01T2/02 A
   H01H33/00 A
   H01H33/66 T
   G01R31/327
   G01R31/333
   H05H1/48
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-186001(P2014-186001)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-58340(P2016-58340A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】種子田 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健作
(72)【発明者】
【氏名】工藤 喜悦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優平
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−005545(JP,B1)
【文献】 実開昭63−123026(JP,U)
【文献】 特公昭46−023303(JP,B1)
【文献】 特公昭46−042808(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 2/023
H01H 33/00
H01H 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1の電極及び第2の電極がギャップを介して対向するように設けられたトリガギャップであって、
前記第1の電極は、アークプラズマを発生させるトリガ付電極であり、
前記第2の電極は、前記トリガ付電極の前記アークプラズマが曝される部分に、交換部を備え、
前記トリガ付電極は、
内部に設けられた蓄圧室と、
前記蓄圧室内に設けられ、前記蓄圧室内壁との間でアーク放電を発生させるためのトリガ電極と、
前記蓄圧室と前記ギャップとを連通させるノズルと、を備え、
前記アーク放電により前記蓄圧室内で発生したアークプラズマが、前記蓄圧室内で圧力上昇し前記ノズルを通じて対向する前記第2の電極に放出されることを特徴とするトリガギャップ。
【請求項2】
前記交換部は、前記第2の電極本体よりも前記アークプラズマによる損耗の少ない低損耗金属で構成されていることを特徴とする請求項に記載のトリガギャップ。
【請求項3】
前記第1の電極及び前記第2の電極が、共に前記トリガ付電極であることを特徴とする請求項1に記載のトリガギャップ。
【請求項4】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、一方の電極に対して他方の電極が相対的に移動可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項の何れかに記載のトリガギャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力用開閉装置の合成投入試験に使用するトリガギャップに関する。
【背景技術】
【0002】
電力用開閉装置は、電力系統において事故電流遮断や系統切替、機器保守等に用いられる。このような電力用開閉装置は、一対の電極を備え、これらの電極を接離させることで電路を開閉する。事故電流が検知されると、電力用開閉装置には遮断信号が入力され、電力用開閉装置はこの遮断信号を契機に電流を遮断すべく各電極を開離させる。
【0003】
このような電力用開閉装置の形式試験項目として、投入試験がある。投入試験は、開閉装置の投入能力を検証するための試験である。投入試験では開極している開閉装置に定格電圧を印加した状態で、開閉装置を閉路動作させる。この際、開閉装置の電極間が所定の距離まで接近すると、機械的に接触する前に電極間で絶縁破壊を引き起こし、プレアークと呼ばれる放電が発生する。電極間は機械的には接続されていないが、電気的に接続されるので開閉装置には短絡電流が通電される。以上の過程で、開閉装置の投入能力を検証する。
【0004】
直接投入試験と呼ばれる単一電源による投入試験では、試験設備の能力によるが試験可能な開閉装置の定格電圧に限度があり、設備能力を超える定格電圧の開閉装置は、合成投入試験と呼ばれる複数電源による投入試験により試験が実施される。
【0005】
合成投入試験では、開閉装置を閉路する際に通電される主電流と呼ばれる電流と、閉路動作時にプレアークが発生するまでに開閉装置の電極間に印加される定格電圧とを、それぞれ別電源により供給する。
【0006】
すなわち、合成投入試験を行う合成投入試験回路は、試験対象の開閉装置と、電源を有し当該開閉装置に主電流を供給する電流源回路と、電源を有し開閉装置の電極に定格電圧を印加するための電圧源回路とを備える。合成投入試験においては、電流源回路と電圧源回路が別回路であるので、主電流の供給開始をプレアーク発生時に同期させるように制御しなければならない。この点、大電力関連規格として、開閉装置がプレアークを発生した直後から300μs以内に主電流が供給されなければならないと定められている。そのため、電流源回路にはトリガギャップと呼ばれるスイッチが設けられており、プレアーク発生に合わせてトリガギャップを制御してスイッチングさせることにより、開閉装置に主電流を供給する。
【0007】
このトリガギャップには、電圧源による印加電圧ではギャップ間が絶縁破壊せず、プレアーク発生後は300μs以内に電流源回路をスイッチングすることが求められる。また、スイッチングさせる際は、電圧源による印加電圧の数十分の一の電圧である電流源電圧のみがギャップ間に印加された状態でギャップ間を絶縁破壊させてスイッチングさせなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEC 62271−101 High− voltage switchgear and controlgear−Part 101: Synthetic testing
【非特許文献2】工藤喜悦、宮崎健作、三宅信之、鈴木克己「合成投入試験用トリガギャップのトリガ特性」電気学会全国大会講演論文集、1999年3月10日、1999巻、6号、p.6453
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
次に、従来のトリガギャップの構成と、トリガギャップがスイッチングされ主電流が供給される過程について説明する。
【0010】
従来のトリガギャップは、それぞれ半球形状を有する一対の対向側電極及びトリガ付電極を備えている。対向側電極とトリガ付電極とはそれぞれの半球部分が所定のギャップを介して対向して配置されている。
【0011】
トリガ付電極には断面T字状の空間が設けられており、この断面T字状空間の一方向が両電極と共通する中心軸上に、他の一方向が中心軸と直交する方向に設けられている。中心軸上の空間には、円柱状のトリガ電極が挿入されて配置され、トリガ電極の一端が対向側電極と対面している。中心軸と直交する方向の空間には絶縁物が配置され、トリガ電極の他端と接続されている。これらの全ての部材は、ガスタンク中に設置されており、ガスタンク中はSFガスが充填されている。
【0012】
対向側電極とトリガ付電極間のギャップ長は、合成投入試験を行う開閉装置の定格電圧で絶縁破壊しない距離に保持されている。トリガ電極は、予め充電されているコンデンサ等で構成された電源回路にギャップを隔てて接続されている。
【0013】
合成投入試験においてトリガギャップをスイッチングさせるタイミングで電源回路をトリガ電極に接続し、トリガ電極にトリガ電圧を印加する。すると、対向側電極とトリガ付電極間で火花放電が発生し、両電極間が電気的に導通状態となる。このようにトリガギャップがスイッチングされて開閉装置に主電流が供給される。
【0014】
上記のように、対向側電極とトリガ付電極間のギャップ長は、合成投入試験を行う開閉装置の定格電圧で絶縁破壊しない距離に保持されている。ところが、定格電圧印加時に必要な絶縁距離のギャップ長を確保すると、トリガギャップのスイッチングの際、すなわちギャップ間で火花放電を発生させるために必要なトリガ電圧を発生させることが不可能となり、トリガギャップをスイッチングさせることができない場合があった。
【0015】
そのため、スイッチングさせるにはトリガギャップを複数台直列に接続する必要があった。また、複数台使用する場合、それぞれのトリガギャップの電圧分担率の調整や、複数台同時に制御する構成などが別途必要になり、試験が複雑化するという問題があった。
【0016】
本実施形態に係るトリガギャップは、上記のような課題を解決するためになされたものであり、従来よりもギャップ間の耐電圧性能を向上させ、トリガギャップ一台で合成投入試験可能なトリガギャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本実施形態のトリガギャップは、一対の第1の電極及び第2の電極がギャップを介して対向するように設けられたトリガギャップであって、前記第1の電極は、アークプラズマを発生させるトリガ付電極であり、前記第2の電極は、前記トリガ付電極の前記アークプラズマが曝される部分に、交換部を備え、前記トリガ付電極は、内部に設けられた蓄圧室と、前記蓄圧室内に設けられ、前記蓄圧室内壁との間でアーク放電を発生させるためのトリガ電極と、前記蓄圧室と前記ギャップとを連通させるノズルと、を備え、前記アーク放電により前記蓄圧室内で発生したアークプラズマが、前記蓄圧室内で圧力上昇し前記ノズルを通じて対向する前記第2の電極に放出されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係るトリガギャップの全体構成を示す断面図である。
図2】第1の実施形態に係るトリガギャップを用いた合成投入試験回路図である。
図3】電流源回路の一部を示す回路図である。
図4】第2の実施形態に係るトリガギャップの全体構成を示す断面図である。
図5】第3の実施形態に係るトリガギャップの全体構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
(構成)
以下では、図1図3を参照しつつ、本実施形態のトリガギャップ及びこれを用いた合成投入試験回路について説明する。図1は、本実施形態のトリガギャップの全体構成を示す断面図である。図2は、第1の実施形態に係るトリガギャップを用いた合成投入試験回路図である。
【0020】
図2に示すように、合成投入試験回路は、試験対象の電力用開閉装置TOと、電源Gを有し当該開閉装置TOに主電流を供給する電流源回路Cと、電源を有し開閉装置TOの電極に定格電圧を印加するための電圧源回路(不図示)とを備えている。電流源回路C及び電圧源回路については基本構成は公知の構成を用いることができるためその説明は省略するが、図2に示すように、電流源回路Cは、電源G、コイルL、変圧器Tr1、トリガギャップTG、補助遮断器AB、試験対象の開閉装置TOを有する。電圧源回路は、電源、変圧器Tr2を有する。なお、電圧源回路は図2に図示していないが、変圧器Tr2側に配置される。
【0021】
本実施形態のトリガギャップTGの全体構成を説明する。トリガギャップTGは、電力用開閉装置TOの合成投入試験回路において、当該開閉装置TOに主電流を供給する電流源回路Cに設けられるスイッチである。トリガギャップTGは、図2に示すように開閉装置TOと電源Gとの間であって、補助遮断器ABと並列に設けられる。
【0022】
図1に示すように、トリガギャップTGは、ギャップ8を介して設けられた一対の対向電極1及びトリガ付電極2を備えている。両電極1、2は、電流源回路Cにおいて、電流源回路Cの電源Gと試験対象の開閉装置TOと間に設けられる。
【0023】
両電極1、2は、それぞれ半球形状を有する導体であり、所定のギャップ8を介し互いの半球の湾曲部分を対向させて配置されている。両電極1、2は例えばカーボンで形成される。この両電極1、2は、SFガスなどの絶縁媒体となるガスが充填されたガスタンク内に設けられている。なお、本実施形態ではこの絶縁媒体がプラズマ化するガスである。そのため、一般的なプラズマ切断機などの構造にあるプラズマガスを供給する構成が不要であるので構造が簡略化できる。
【0024】
トリガ付電極2は、ガスタンク内の絶縁媒体となるガスをプラズマ化させ、アークプラズマを発生させるものである。具体的には、トリガ付電極2は、内部に設けられた蓄圧室4と、蓄圧室4内に設けられ、アーク放電を発生させるトリガ電極5と、蓄圧室4とギャップ8とを連通するノズル3と、トリガ電極5に接続された絶縁物7と、を有している。
【0025】
蓄圧室4では、その内部で生成されたアークプラズマ6の圧力が上昇する。そのために、蓄圧室4は、閉塞しやすいように構成されている。具体的には、蓄圧室4は、トリガ付電極2の内壁によって形成された空間であり、半球形状であるトリガ付電極2底面の中心から対向電極1に向かって同径の筒状に延び、その途中から縮径し窄んだ形状を有している。蓄圧室4のテーパー形状部分は窄んでいるため、当該部分を形成するトリガ付電極2の内壁面はトリガ電極5の先端を覆い被さるようになっている。このテーパー形状の窄んだ先にはノズル3が設けられている。
【0026】
ノズル3は、トリガ付電極2内の蓄圧室4と、対向電極1とトリガ付電極2との間のギャップ8とを連通させる。より詳細には、ノズル3は、対向電極1と対向するトリガ付電極2の半球湾曲部分であって、対向電極1及びトリガ付電極2の中心軸上に設けられている。換言すると、ノズル3は、トリガ付電極2のギャップ8の長さが最短となる箇所に設けられている。
【0027】
一方、対向電極1と反対側であるトリガ付電極2の底面側には、蓄圧室4の筒状部分より幅広の内部空間が設けられている。絶縁物7はこの内部空間に設けられている。絶縁物7は平板形状を有する。絶縁物7はトリガ電極5の支持絶縁物である。すなわち、絶縁物7には円柱状のトリガ電極5が対向電極1側に向けて取り付けられ、絶縁物7はトリガ電極5を支持し、トリガ付電極2とトリガ電極5を絶縁させる。
【0028】
トリガ電極5は、円柱形状の導体であり、蓄圧室4内に配置されている。トリガ電極5は、アーク放電を発生させる。トリガ電極5は絶縁物7から対向電極1の方へ延びるが、その先端は蓄圧室4のテーパー形状部分までは延びていない。すなわち、トリガ電極5の先端は蓄圧室4の筒状部分の途中に位置しており、トリガ電極5の先端より対向電極1側の蓄圧室4の空間が、アーク放電を発生させる空間となっている。蓄圧室4のテーパー形状部分はノズル3に向けて窄んでいるため、当該部分を形成するトリガ付電極2の内壁はトリガ電極5の先端を向いている。
【0029】
トリガ電極5は、電流源回路の一部を示す図3に示すように、電源C0にギャップTを隔てて接続されており、当該電源C0は例えばコンデンサであり予め充電されている。この電源C0は合成投入試験においてトリガギャップTGをスイッチングさせるタイミングでトリガ電極5に電圧印加できるように構成されている。すなわち、ギャップTを放電させ電源C0から電圧印加されると、トリガ電極5の先端と蓄圧室4を構成するトリガ付電極2内壁との間でアーク放電が発生し、アークプラズマ6が生成されるようになっている。
【0030】
(作用)
合成投入試験では、まず、電圧源回路の電源によって、試験対象の開閉装置TOの電極間に電圧を印加する。この段階ではトリガギャップTGは電気的に接続されていないため、電流源回路Cの電源Gは開閉装置TOから切り離されている。開閉装置TOの電極間の電圧の印加により、この電極間にプレアークが発生すると、トリガギャップTGをスイッチングさせる。
【0031】
すなわち、予め充電された電流源回路Cの電源C0をトリガ電極5に接続して当該トリガ電極5に電圧を印加する。すると、トリガ電極5先端と蓄圧室4を構成するテーパー形状のトリガ付電極2内壁間でアーク放電が発生し、蓄圧室4でアークプラズマ6が生成される。なお、トリガ付電極2の平面部分である底面には蓋がされており、トリガ電極5の後端方向にアークプラズマが進出することはない。
【0032】
このようにトリガ電極5の先端近傍で生成されたアークプラズマ6は、蓄圧室4のテーパー形状部分がトリガ電極5の先端に向けられているため、閉塞しやすくなっている。そのため、蓄圧室4でアークプラズマ6の圧力が上昇する。圧力上昇したアークプラズマ6は蓄圧室4の対向電極1側に設けられたノズル3を通じて対向電極1に向けて放出される。
【0033】
ノズル3から放出されたアークプラズマ6によりトリガ付電極2と対向電極1との間が絶縁破壊され、ギャップ8間が電気的に導通状態となる。従って、電流源回路Cの電源Gから開閉装置TOに主電流が供給される。この主電流の供給はプレアーク発生後300μs以内である。以上のようにトリガギャップTGを用いて開閉装置TOに主電流を供給し、開閉装置TOの投入能力を検証する合成投入試験が行われる。
【0034】
(効果)
本実施形態のトリガギャップTGは、一対の対向電極1及びトリガ付電極2がギャップ8を介して対向するように設けられたトリガギャップであって、トリガ付電極2は、アークプラズマ6を発生させるものであり、内部に設けられた蓄圧室4と、蓄圧室4内に設けられ、蓄圧室4内壁との間でアーク放電を発生させるためのトリガ電極5と、蓄圧室4とギャップ8とを連通するノズル3と、を備え、アーク放電により蓄圧室4内で発生したアークプラズマ6を、蓄圧室4内で圧力上昇させノズル3を通じて対向する対向電極1に放出するようにした。
【0035】
これにより、蓄圧室4で圧力上昇してアークプラズマ6が放出されるため、アークプラズマ6が加速進展する。従って、従来のトリガギャップと比べて長いギャップ長のギャップ間を絶縁破壊させることが可能である。すなわち、従来よりもギャップ間の耐電圧性能を向上させることができる。
【0036】
特に、定格電圧が245kV以上の開閉装置が投入試験の対象である場合、従来のトリガギャップでは、定格電圧印加時に必要な絶縁距離のギャップ長を確保すると、トリガギャップのスイッチングの際、すなわちギャップ間で火花放電させるために必要なトリガ電圧を発生させることが不可能となり、トリガギャップをスイッチングさせることができなかった。そのため従来ではトリガギャップを複数台直列に接続して使用する必要があり、またその場合にはそれぞれのトリガギャップの電圧分担率の調整や複数台を同時に制御するための同期制御技術を用いる必要があり、試験が複雑化していた。
【0037】
しかし、本実施形態によれば、使用可能な試験電圧範囲を拡大することができるため、定格電圧が245kV以上の開閉装置の場合であっても、一台のトリガギャップTGで投入試験が可能であるため、合成投入試験回路を簡素化することが可能である。
【0038】
[第2の実施形態]
(構成)
第2の実施形態について、図4を用いて説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と基本構成は同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
図4は、第2の実施形態に係るトリガギャップの全体構成を示す断面図である。図4に示すように、対向電極1は、トリガ付電極2のアークプラズマに曝される部分に交換部10を備えている。このアークプラズマが曝される部分としては、例えばトリガ付電極2からアークプラズマが照射される部分が挙げられる。交換部10は、対向電極1本体とは別体としてカセット交換可能に構成されている。この交換部10は、対向電極1と同一材料により形成しても良いし、異なる材料で形成しても良い。本実施形態では交換部10は、対向電極1と異なる材料で形成されている。この異なる材料は、対向電極1本体よりもアークプラズマによる損耗の少ない低損耗金属であり、例えばタングステンなどが挙げられる。
【0040】
(作用・効果)
(1)本実施形態の対向電極1は、トリガ付電極2のアークプラズマが曝される部分に交換可能な交換部10を備えるようにした。これにより、トリガギャップTGを繰り返し使用する過程でアークプラズマが曝される部分は損耗していくが、メンテナンスは交換部10の交換だけで済む。すなわち、対向電極1全体を交換する必要がないので、メンテナンスが容易になる。
【0041】
(2)交換部10は、対向電極1本体よりもアークプラズマによる損耗の少ない低損耗金属で構成するようにした。これにより、電極寿命を長くすることができる。
【0042】
[第3の実施形態]
第3の実施形態について、図5を用いて説明する。第3の実施形態は第1の実施形態と基本構成は同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図5は、第3の実施形態に係るトリガギャップの全体構成を示す断面図である。図5に示すように、第1の実施形態の対向電極1に代えて、トリガ付電極2が設けられている。すなわち、ギャップ8を介して対向配置される一対の電極は、両方がトリガ付電極2である。共に同一の構成を有しているためその説明は省略する。
【0044】
本実施形態では、一対の電極が共にトリガ付電極2であるため、両方のトリガ付電極2からアークプラズマ6が放出される。従って、第1の実施形態よりも更に長いギャップ間を絶縁破壊させることが可能である。よって、さらに電極間のギャップを長くすることができるので、ギャップ間の耐電圧性能を更に向上させることができる。本実施形態のトリガギャップTGによれば、使用可能な試験電圧範囲をさらに拡大することができる。
【0045】
[その他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0046】
例えば、第1乃至第3の実施形態では、特に言及していなかったが、トリガギャップTGの一対の電極は、一方の電極に対して他方の電極が相対的に移動可能に構成されていても良い。これにより、所望のギャップ長とすることができるので、所望の耐電圧性能を得ることができる。例えば、第1の実施形態では、対向電極1を固定とし、トリガ付電極2を移動機構と接続し、トリガ付電極2を対向電極1に対して移動可能することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…対向電極
2…トリガ付電極
3…ノズル
4…蓄圧室
5…トリガ電極
6…アークプラズマ
7…絶縁物
8…ギャップ
10…交換部
AB…補助遮断器
C…電流源回路
C0…電源
G…電源
L…コイル
T…ギャップ
TG…トリガギャップ
TO…開閉装置
Tr1…変圧器
Tr2…変圧器
図1
図2
図3
図4
図5