特許第6363452号(P6363452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363452
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/06 20060101AFI20180712BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180712BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C08G64/06
   C08J5/18CFD
   G02B1/04
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-198574(P2014-198574)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-69466(P2016-69466A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】本吉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】前川 祥一
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/101265(WO,A1)
【文献】 特開2010−132782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる繰り返し単位が下記式
【化1】
[式(A)中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示す。]
で表される単位(A)と下記式
【化2】
[式(B)中、R、Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子であり、pおよびqは夫々独立して0〜4の整数を示す。Wは、下記式(W)
【化3】
であり、ここにRとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、または炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとRが結合して炭素環または複素環を形成しても良い
で表される単位(B)と下記式
【化4】
[式中、R10およびR11は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、R12およびR13は夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、sおよびtは夫々独立して0〜4の整数を示し、rおよびkは、夫々独立して1以上の整数を示す。]
で表される単位(C)を含むポリカーボネート樹脂であって、単位(A)、(B)および(C)の合計が全繰り返し単位を基準として70モル%以上であり、単位(A)と単位(B)と単位(C)とのモル比(A/B/C)が、単位(A)、単位(B)および単位(C)の合計を100モル%として、A/B/C=3〜90モル%/3〜90モル%/3〜90モル%の範囲であり、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.18〜0.34であるポリカーボネート樹脂を溶融押出して得られる波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が20nm以下であり、厚み方向位相差値Rthの絶対値が50nm以下である光学フィルム。
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が150〜190℃である請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が15nm以下であり、厚み方向位相差値Rthの絶対値が30nm以下である請求項1記載の光学フィルム。
【請求項4】
ゲル数が100個/m以下である請求項1記載の光学フィルム。
【請求項5】
請求項1記載の光学フィルムを用いたタッチパネル用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性が高く、位相差が低く、流動性が良好な光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)にカーボネート前駆物質を反応させて得られるポリカーボネート樹脂(以下、PC−Aという)は透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性が優れているがゆえにエンジニアリングプラスチックとして多くの分野に広く使用されてきた。さらに近年その透明性を生かして光ディスク、フィルム、レンズ等の分野への光学用材料としての利用が展開されている。
【0003】
しかしながら、PC−Aからなるフィルムを透明導電性フィルム用基板に使用する場合、耐熱性が十分ではなく、使用が困難であった。
そこで、上記問題への対策として様々な手法が検討されている。その一つとして、ビスフェノールAと9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンにカーボネート前駆物質を反応させると耐熱性が高いポリカーボネート樹脂が得られることが提案され(例えば特許文献1、2参照)、そのポリカーボネート樹脂を用いてなるフィルムを位相差フィルム用、偏光板の保護フィルム用に使用することが提案されている(例えば特許文献3、4、5、6参照)。しかしながら、上記ポリカーボネート樹脂は溶融粘度が高く、溶液キャスト法での製膜に限られていた。
【0004】
また、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンとスピログリコールからなるポリカーボネート樹脂を溶融製膜法でフィルム化することが提案されている(特許文献7)。しかしながら、ガラス転移温度が150℃以上の樹脂では、熱分解温度が低いため、溶融製膜が困難で、製膜中に分解が起こり、気泡やゲルが発生する問題がある。またフィルムの強度も低く、折り曲げ特性に課題があった。
【0005】
また、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンとビスフェノールAとシロキサン化合物を共重合したポリカーボネート樹脂を溶融製膜したシートが提案されている(特許文献8)。しかしながら、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンの比率が高いため、フィルムが脆く、光学特性に関しては何ら記載がない。また、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを含む偏光板保護フィルムが提案されているが、耐熱性が十分でなかった(特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−331688号公報
【特許文献2】特開平8−134199号公報
【特許文献3】国際公開2000/026705号パンフレット
【特許文献4】国際公開2001/009649号パンフレット
【特許文献5】特開2001−296423号公報
【特許文献6】特開2001−194530号公報
【特許文献7】特許第5119250号公報
【特許文献8】特開2011−89050号公報
【特許文献9】特開2012−103507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐熱性が高く、位相差が低く、流動性が良好な光学フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、2種のフルオレン構造を有するビスフェノール化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物にカーボネート前駆物質を特定の組成比で反応することが重要なことを見出した。この現象は従来の延伸での複屈折の発生現象とは異なり、驚くべきことに非常に狭い領域の組成でのみ位相差を低減できることを究明し、耐熱性が高く、位相差が低く、流動性が良好な光学フィルムが得られることを究明した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0009】
1.主たる繰り返し単位が下記式
【化1】
[式(A)中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示す。]
で表される単位(A)と下記式
【化2】
[式(B)中、R、Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子であり、pおよびqは夫々独立して0〜4の整数を示す。Wは、下記式(W)
【化3】
であり、ここにRとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、または炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとRが結合して炭素環または複素環を形成しても良い
で表される単位(B)と下記式
【化4】
[式中、R10およびR11は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、R12およびR13は夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、sおよびtは夫々独立して0〜4の整数を示し、rおよびkは、夫々独立して1以上の整数を示す。]
で表される単位(C)を含むポリカーボネート樹脂であって、単位(A)、(B)および(C)の合計が全繰り返し単位を基準として70モル%以上であり、単位(A)と単位(B)と単位(C)とのモル比(A/B/C)が、単位(A)、単位(B)および単位(C)の合計を100モル%として、A/B/C=3〜90モル%/3〜90モル%/3〜90モル%の範囲であり、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.18〜0.34であるポリカーボネート樹脂を溶融押出して得られる波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が20nm以下であり、厚み方向位相差値Rthの絶対値が50nm以下である光学フィルム。
2.ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が150〜190℃である前項1記載の光学フィルム。
3.波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が15nm以下であり、厚み方向位相差値Rthの絶対値が30nm以下である前項1記載の光学フィルム。
4.ゲル数が100個/m以下である前項1記載の光学フィルム。
5.前項1記載の光学フィルムを用いたタッチパネル用基板。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリカーボネート樹脂は、2種のフルオレン構造を有するビスフェノール化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物にカーボネート前駆物質を特定の組成比で反応することで、耐熱性が高く、位相差が低く、流動性が良好な光学フィルムとすることが可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、主たる繰り返し単位が、単位(A)と単位(B)と単位(C)とから構成される。
【0012】
(単位(A))
単位(A)は、前記式(A)で示され、R、Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数7〜10のアラルキル基、炭素原子数1〜10のアルケニル基、またはハロゲン基(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)が好ましい。mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示す。
【0013】
具体的には、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどから誘導されるカーボネート単位である。特に、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンから誘導されるカーボネート単位が好ましい。
【0014】
(単位(B))
単位(B)は、前記式(B)に示したように、芳香族構造を有するカーボネート単位である。前記式(B)中、R、Rは、水素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数7〜13のアラルキル基、またはハロゲン原子が好ましい。R、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数6〜9のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数7〜9のアラルキル基、またはハロゲン原子がより好ましく、メチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基がさらに好ましい。p、qはR、Rがベンゼン環上に置換している数を示し、0〜4の整数である。
【0015】
式(B)中のWは前記式(W)で示され、RとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基または炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとRが結合して炭素環または複素環を形成しても良い。RとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、または炭素原子数6〜12アリール基を表す。Rは1〜9のアルキレン基である。aは1〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。
【0016】
具体的には、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサンなどが例示される。なかでも、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールMが耐熱性、流動性の観点から好ましく、特にビスフェノールAが高流動、入手容易性の観点から好ましい。これらは2種類以上併用して用いても良い。
【0017】
(単位(C))
単位(C)は、前記式(C)で示される。単位(C)中、R10およびR11は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。炭化水素基として、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基が挙げられる。ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0018】
12およびR13は夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、より好ましくはエチレン基である。
rおよびkは、それぞれ−(R12−O)−および−(O−R13)−の繰り返しの数を表す。rおよびkは、夫々独立して、1以上の整数であり、好ましくは1〜20の整数、さらに好ましくは1〜12の整数、さらにより好ましくは1〜8の整数、特に好ましくは1〜4の整数、最も好ましくは1である。sおよびtは、夫々独立して0〜4の整数を示す。
【0019】
単位(B)として、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジフェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロペニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フルオロフェニル]フルオレン、およびこれらの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレンから誘導される単位が挙げられる。また、rおよびkが2以上である9,9−ビス[ヒドロキシポリ(アルキレンオキシ)フェニル]フルオレン等から誘導される単位が挙げられる。
【0020】
これらのうち、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン}等が好ましい。特に、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)から誘導される単位(C1)が好ましい。
【0021】
(組成比)
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の組成比は、単位(A)と単位(B)と単位(C)とのモル比(A/B/C)が、単位(A)、単位(B)および単位(C)の合計を100モル%として、A/B/C=3〜90モル%/3〜90モル%/3〜90モル%の範囲であり、A/B/C=5〜80モル%/10〜80モル%/10〜80モル%の範囲が好ましく、A/B/C=5〜80モル%/10〜60モル%/20〜80モル%の範囲がより好ましく、A/B/C=5〜40モル%/10〜40モル%/40〜70モル%の範囲がさらに好ましい。かかる組成範囲のポリカーボネート樹脂をフィルム化した場合、フィルムの耐熱性、流動性に優れ、光学用途に適したものとなり好ましい。本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、単位(A)と単位(B)と単位(C)とのモル比(A/B/C)が上記範囲を満足すれば、共重合体、ブレンド物、またはその組み合わせであっても良い。例えば、単位(A)と単位(B)の共重合体と単位(C)の樹脂のブレンドなどが挙げられる。
【0022】
モル比は、日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。主たる繰り返し単位とは、単位(A)、(B)および(C)の合計が全繰り返し単位を基準として60モル%以上であり、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上であり、実質的に100モル%であることが特に好ましい。
【0023】
(比粘度:ηSP
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)としては、0.18〜0.34の範囲であり、好ましくは0.20〜0.33の範囲であり、特に好ましくは0.23〜0.32の範囲である。かかる範囲内では、強度等が向上し、且つ流動特性が優れる。
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0024】
なお、本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度を測定する場合は、次の要領で行うことができる。すなわち、ポリカーボネート樹脂をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度をオストワルド粘度計を用いて求める。
【0025】
(ガラス転移温度:Tg)
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは150〜190℃、より好ましくは152〜180℃、特に好ましくは154〜175℃の範囲である。Tgが下限以上であると耐熱安定性が良好となり、フィルムの加工工程でのフィルムの変形を抑制できる。またTgが上限以下の範囲では、フィルムの製膜加工に高い温度は必要なく、従来と異なる特別な加工設備を必要としないため好ましい。Tgは、アルキル基の導入により低くなると推定される。Tgはティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0026】
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明のポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0027】
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。本発明のポリカーボネート樹脂は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよい。
【0028】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0029】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素原子数6〜12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm−クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97〜1.10モル、より好ましは1.00〜1.06モルである。
【0030】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0031】
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
【0032】
アルカリ土類金属化合物としては、具体的に、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。
【0033】
含窒素化合物としては、具体的に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が例示される。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が例示される。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
【0034】
金属化合物としては、亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
これらの重合触媒の使用量は、ジヒドロキシ成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2当量、好ましくは1×10−8〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−3当量の範囲で選ばれる。
【0035】
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、なかでもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0036】
またスルホン酸のエステルとして、具体的に、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が例示される。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が特に好ましい。
【0037】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5〜50モルの割合で、より好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
また、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
【0038】
<光学フィルム>
本発明の光学フィルムは、具体的には、位相差フィルム、プラセル基板フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、輝度上昇フィルム、光ディスクの保護フィルム、拡散フィルム等の用途が挙げられる、なかでも位相差フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルムが好ましい。
【0039】
光学フィルムの製造方法としては、生産性の点から溶融押出法が採用される。
溶融押出法においては、Tダイを用いて樹脂を溶融押出し、冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。このときの溶融押出樹脂温度はポリカーボネート樹脂の分子量、Tg、溶融流動特性等から決められるが、240〜300℃の範囲が好ましく、250℃〜290℃の範囲がより好ましい。240℃より低いと粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすく、また、300℃より高いと熱劣化によるゲル化、着色、Tダイからのダイライン(筋)等の問題が起きやすい。また、減圧状態に保持できる真空ホッパーを使用することが好ましい。真空度は10kPa以下が好ましく、5kPa以下がさらに好ましく、3kPa以下が特に好ましい。
【0040】
未延伸の光学フィルムの厚みとしては、30〜400μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜300μmの範囲である。かかる未延伸光学フィルムは、ディスプレイ用基板やタッチパネル用基板として好適に用いられる。
未延伸光学フィルムは、波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることが特に好ましい。また、波長550nmにおける厚み方向位相差値Rthの絶対値が50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることが特に好ましく、5nm以下であることがもっとも好ましい。
上記範囲であるとディスプレイ用基板やタッチパネル用基板として使用した際に、ディスプレイやタッチパネルの画像のぼやけがなくなり、高精細な画像を表示することができ好ましい。
【0041】
かかる未延伸光学フィルムは延伸配向することにより位相差を調整しても良い。なお、フィルムの製膜する機械軸方向を製膜方向または縦方向と称し、製膜方向とフィルムの厚み方向に直交する方向を横方向または幅方向と称する。延伸方法は、縦一軸延伸、テンター等を用いる横一軸延伸、あるいはそれらを組み合わせた同時二軸延伸、逐次二軸延伸等公知の方法を用いることが出来る。また連続で行うことが生産性の点で好ましいが、バッチ式で行っても良い。延伸温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg+50℃)の範囲、より好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+30℃)の範囲である。この温度範囲であれば、ポリマーの分子運動が適度であり、延伸による緩和が起こり難く、配向制御が容易になり所望する面内位相差が得られ易いため好ましい。延伸温度が低いと位相差が発現しやすくなる傾向がある。
また、得られる光学フィルムのゲル数が100個/m以下であることが好ましく、50個/m以下であることがより好ましい。ゲル数が上記範囲内であるとディスプレイ用基板やタッチパネル用基板として使用した際に、ディスプレイやタッチパネルが高精細な画像を表示することができ好ましい。
【0042】
<タッチパネル用透明導電性フィルム>
本発明の光学フィルムは、タッチパネル用透明導電性フィルムのベースフィルム(基板)として好適に用いられる。
透明導電性フィルムは、ベースフィルムの低屈折率層の上に透明導電膜を設けることにより得られる。
タッチパネルとしては、抵抗膜式タッチパネルと静電容量式タッチパネルが主流であるが、透明導電性フィルムはいずれのタッチパネルにも用いることができる。特に、透明導電性フィルムは、静電容量式タッチパネルに好適である。
【0043】
静電容量式タッチパネルの透明導電性フィルムの透明導電膜は、通常、所定のパターンにパターン化されている。この透明導電膜のパターン化は、透明導電膜をエッチング処理することにより行われる。
パターン化された透明導電膜を有する透明導電性フィルムは、透明導電膜のパターン部(透明導電膜がエッチングされずに残存している部分(導電部))と非パターン部(透明導電膜がエッチングされて除去された部分(非導電部))との反射率や透過率の違い、あるいはパターン部と非パターン部の色調の違いにより、パターン部が視認される、いわゆる「骨見え」が起こり、透明導電膜の視認性を低下させている。この「骨見え」の問題は、本発明のベースフィルムを用いることにより低減される。
【0044】
透明導電膜の材料としては、透明導電性フィルムに用いられる公知の材料を用いることができる。例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、ITO(酸化インジウム錫)、ATO(酸化アンチモン錫)などの金属酸化物、銀ナノワイヤーなどの金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらの中でもITOが好ましく用いられる。
透明導電膜の厚みは、透明導電膜の視認性を向上させるという観点から小さい方が好ましく、具体的には40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、25nm以下が更に好ましく、特に20nm以下が好ましい。透明導電膜の厚みの下限は、低抵抗の透明導電膜を確保するという観点から5nm以上が好ましく、7nm以上がより好ましく、10nm以上が特に好ましい。
【0045】
透明導電膜の表面抵抗値は、1000Ω/□以下が好ましく、500Ω/□以下が好ましい。
透明導電膜の屈折率1.81以上であることが好ましい。さらに透明導電膜の屈折率は1.85以上が好ましく、1.90以上がより好ましい。上限は2.20以下が好ましく、2.10以下がより好ましい。
透明導電膜の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスを用いることができる。
【0046】
透明導電膜はパターン化されていることが好ましい。透明導電膜のパターン化は、透明導電性フィルムが適用される用途に応じて、各種のパターンを形成することができる。なお、透明導電膜のパターン化により、パターン部と非パターン部が形成されるが、パターン部のパターン形状としては、例えば、ストライプ状、格子状、あるいはこれらの組み合わせ等が挙げられる。具体的には、例えば、特開2006−344163号公報、特開2011−128896号公報等に開示されているパターンが挙げられる。
【0047】
透明導電膜のパターン化は、一般的にはエッチングによって行われる。例えば、透明導電膜上に所定パターンのエッチングレジスト膜を、フォトリソグラフィ法、レーザー露光法、あるいは印刷法により形成した後エッチン処理することにより、透明導電膜がパターン化される。
エッチング液としては、従来公知のものが用いられる。例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が用いられる。
【実施例】
【0048】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用した使用樹脂および評価方法は以下のとおりである。
【0049】
1.ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
【0050】
2.比粘度
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0051】
3.ガラス転移温度
ポリカーボネート樹脂8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC−2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0052】
4.ゲル数
実施例で得られた光学フィルムをカラー3Dレーザ顕微鏡を用いて、500mm×1000mmに存在する長軸の直径が300μm以上の干渉縞を有するゲル数をフィルム1m中に換算して求めた。
【0053】
5.位相差測定
実施例で得られた光学フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用して測定した。
【0054】
6.Haze
実施例で得られた光学フィルムを用いて濁度計NDH−2000型(日本電色工業(株)製)を使用し、JIS K7105に準拠して、フィルムのHazeを測定した。
【0055】
[実施例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)194.6部,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下BPEFと略す)901.8部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と略称することがある)(以下BPAと略す)195.6部、ジフェニルカーボネート749.7部および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド3.6×10−3部と炭酸水素ナトリウム1.6×10−4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、20℃/hrの速度で270℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行った。
反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。
<光学フィルムの製造>
次に、40mmφの単軸押出機に幅650mmのTダイを取り付け、得られたポリカーボネート樹脂を280℃で溶融製膜することにより透明な厚さ50μmの押出未延伸フィルムを得た。得られた光学フィルムの位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。結果を表1に示した。
【0056】
[実施例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF129.7部、BPEF901.8部、BPA234.7部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。結果を表1に示した。
【0057】
[実施例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF259部、BPEF751.5部、BPA234.7部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。結果を表1に示した。
【0058】
[実施例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF389.1部、BPEF751.5部、BPA156.5部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。結果を表1に示した。
【0059】
[実施例5]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF129.7部、BPEF901.8部、BPA234.7部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。結果を表1に示した。
【0060】
[比較例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BPEF901.7部、BPA312.9部として、BCFを用いなかった他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。結果を表1に示した。
【0061】
[比較例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF389.1部、BPA547.6部として、BPEFを用いなかった他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。結果を表1に示した。
【0062】
[比較例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF389.1部、BPEF1052.1部として、BPAを用いなかった他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。結果を表1に示した。
【0063】
[比較例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
最終重合温度を285℃とした以外は実施例3と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。結果を表1に示した。
【0064】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の光学フィルムは、透明導電性フィルムの基板として有用である。