(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363458
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】塗布装置及び塗布装置における気泡抜き方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20180712BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20180712BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20180712BHJP
H01L 21/027 20060101ALN20180712BHJP
G02F 1/13 20060101ALN20180712BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
B05D1/26 Z
!H01L21/30 564Z
!G02F1/13 101
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-201769(P2014-201769)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-68049(P2016-68049A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】平野 梓
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 保次
(72)【発明者】
【氏名】大河原 聡史
【審査官】
高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−043027(JP,A)
【文献】
特開2008−302306(JP,A)
【文献】
特開2010−000443(JP,A)
【文献】
特開2007−152317(JP,A)
【文献】
特開2006−088067(JP,A)
【文献】
特開2007−245136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00−21/00
B05D
B41J2/01;2/165−2/20;2/21−2/215
G02F1/13;1/137−1/141
H01L21/027;21/30;21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液供給部から第1液路を通して供給される塗布液を収容し、複数のノズルから前記塗布液を液滴状にして噴出する塗布ヘッドを有し、該塗布ヘッドの前記複数のノズルから噴出する塗布液を被塗布体の表面に塗布する塗布装置であって、
前記塗布液の希釈液を溜める希釈液貯留部と、
前記第1液路中における前記塗布液の前記塗布ヘッドに向けた圧力を変動させる第1液圧変動機構と、
前記希釈液貯留部に溜められた希釈液中に前記複数のノズルが浸漬するように前記塗布ヘッドを配置させた状態で、前記第1液圧変動機構を動作させる制御ユニットと、
を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布ヘッド内の塗布液を前記複数のノズルを通して排出させる塗布液強制排出機構を備え、
前記制御ユニットは、前記第1液圧変動機構を動作させた後、前記塗布液強制排出機構によって塗布ヘッド内の塗布液を前記複数のノズルを通して排出させる請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布液強制排出機構は、前記塗布液供給部から前記第1液路を通して前記塗布ヘッドに塗布液を圧送させるガス源を有する請求項1記載の塗布装置。
【請求項4】
前記塗布ヘッドから塗布液を排出させる第2液路を有し、
前記塗布液希釈機構は、更に、前記第2液路中における前記塗布液の前記塗布ヘッドに向けた圧力を変動させる第2液圧変動機構を有する請求項3記載の塗布装置。
【請求項5】
前記第1液路に設けられた第1開閉弁を有し、
前記第1液圧変動機構は、前記第1開閉弁を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記第2液路に設けられた第2開閉弁を有し、
前記第2液圧変動機構は、前記第2開閉弁を含む請求項4記載の塗布装置。
【請求項7】
前記希釈液貯留部に溜められた希釈液を加温する加温機構を有する請求項1乃至6のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項8】
塗布液を収容し、複数のノズルから前記塗布液を液滴状にして噴出する塗布ヘッドと、
第1液路と、
第2液路と、
前記第1液路を通して前記塗布ヘッドに前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記第2液路を通して前記塗布ヘッドに連通する溶液貯留部と、
前記第1液路に設けられた第1開閉弁と、
前記第2流路に設けられた第2開閉弁とを有し、
前記塗布ヘッドの前記複数のノズルから噴出する塗布液を被塗布体の表面に塗布する塗布装置であって、
前記塗布液の希釈液を溜める希釈液貯留部と、
前記希釈液貯留部に溜められた希釈液中に前記複数のノズルが浸漬するように前記塗布ヘッドを配置させた状態で、前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁のうちの少なくとも一方を繰り返し開閉動作させる弁制御手段と、
該弁制御手段により前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁のうち少なくとも一方が開閉動作を行った後に、前記第1開閉弁を開放させた状態で、前記塗布液供給部から前記第1液路を通して前記塗布ヘッドに塗布液を圧送させる塗布液圧送制御手段とを有する塗布装置。
【請求項9】
塗布液供給部から第1液路を通して供給される塗布液を収容し、複数のノズルから前記塗布液を液滴状にして噴出する塗布ヘッドを有し、該塗布ヘッドの前記複数のノズルから噴出する塗布液を被塗布体の表面に塗布する塗布装置における気泡抜き方法であって、
前記塗布液の希釈液を溜める希釈液貯留部に溜められた前記希釈液中に前記複数のノズルが浸漬するように前記塗布ヘッドを配置させるステップと、
前記複数のノズルを前記希釈液中に浸漬させた状態で、前記第1液路中における前記塗布液の前記塗布ヘッドに向けた圧力を変動させる第1液圧変動ステップとを備えた、塗布液希釈ステップと、
を有する塗布装置における気泡抜き方法。
【請求項10】
塗布液希釈ステップにより前記塗布液が希釈された後に、前記塗布液供給部から前記第1液路を通して前記塗布ヘッドに塗布液を圧送させる塗布液強制排出ステップを有する請求項9記載の気泡抜き方法。
【請求項11】
前記塗布装置は、前記塗布ヘッドから塗布液を排出させる第2液路を有し、
前記塗布液希釈ステップは、前記第2液路中における前記塗布液の前記塗布ヘッドに向けた圧力を変動させる第2液圧変動ステップを有する請求項9または10記載の気泡抜き方法。
【請求項12】
前記塗布装置は、前記第1液路に設けられた第1開閉弁を有し、
前記第1液圧変動ステップは、前記第1開閉弁を繰り返し開閉動作させる第1弁開閉ステップを有する請求項9乃至11のいずれかに記載の気泡抜き方法。
【請求項13】
前記塗布装置は、前記第2液路に設けられた第2開閉弁を有し、
前記第2液圧変動ステップは、前記第2開閉弁を繰り返し開閉動作させる第2弁開閉ステップを有する請求項11記載の気泡抜き方法。
【請求項14】
前記希釈液貯留部に溜められた希釈液を加温しておく希釈液加温ステップを有する請求項9乃至13のいずれかに記載の気泡抜き方法。
【請求項15】
塗布液を収容し、複数のノズルから前記塗布液を液滴状にして噴出する塗布ヘッドと、
第1液路と、
第2液路と、
前記第1液路を通して前記塗布ヘッドに前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記第2液路を通して前記塗布ヘッドに結合する塗布液貯留部と、
前記第1液路に設けられた第1開閉弁と、
前記第2流路に設けられた第2開閉弁とを有し、
前記塗布ヘッドの前記複数のノズルから噴出する塗布液を被塗布体の表面に塗布する塗布装置における気泡抜き方法であって、
希釈液貯留部に溜められた希釈液中に前記複数のノズルが浸漬するように前記塗布ヘッドを配置させた状態で、前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁のうちの少なくとも一方を繰り返し開閉動作させる弁開閉ステップと、
該弁開閉ステップにより前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁のうち少なくとも一方が開閉動作を行った後に、前記第1開閉弁を開放させた状態で、前記塗布液供給部から前記塗布液を圧送させる塗布液圧送ステップとを有する塗布装置における気泡抜き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗布装置における気泡抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される塗布装置が知られている。この塗布装置は、給液タンクから給液管を通して供給される塗布液を収容し、複数のノズルから前記塗布液を液滴状にして噴出する塗布ヘッドを有している。当該塗布ヘッドにおいて各ノズルに対して設けられた圧電素子の加圧作用によって、前記複数のノズルのそれぞれから塗布液が液滴状になって噴出する。そして、各ノズルから液滴状になって噴出する塗布液が塗布ヘッドに対向して配置される半導体基板や液晶基板等の被塗布体の表面に塗布される。
【0003】
このような塗布装置では、塗布ヘッド内のノズルを含む流路内の気泡抜きが行われる。この気泡抜きでは、給液管を通して塗布液を塗布ヘッドに圧送供給して、塗布ヘッドから塗布液とともに気泡を排出させる。これにより、塗布ヘッド内の気泡を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−50059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、比較的粘度が高い塗布液が使用されるようになってきており、このような粘度の高い塗布液では、給液管を通して塗布ヘッドに塗布液を単に圧送供給するだけでは、塗布ヘッド内の流路の隅や段差部分等にある気泡を除去することが難しい。このため、塗布液の圧送供給に十分な時間をかける必要があり、気泡抜きに要する時間が長くなる傾向にある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、気泡抜きに要する時間を短くすることができる塗布装置及び塗布装置における気泡抜き方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る塗布装置は、塗布液供給部から第1液路を通して供給される塗布液を収容し、複数のノズルから前記塗布液を液滴状にして噴出する塗布ヘッドを有し、該塗布ヘッドの前記複数のノズルから噴出する塗布液を被塗布体の表面に塗布する塗布装置であって、前記塗布液の希釈液を溜める希釈液貯留部と、前記第1液路中における前記塗布液の前記塗布ヘッドに向けた圧力を変動させる第1液圧変動機構と、前記希釈液貯留部に溜められた希釈液中に前記複数のノズルが浸漬するように前記塗布ヘッドを配置させた状態で、前記第1液圧変動機構を動作させる制御ユニットと、を有する構成となる。
【0008】
また、本発明に係る塗布装置は、塗布液を収容し、複数のノズルから前記塗布液を液滴状にして噴出する塗布ヘッドと、第1液路と、第2液路と、前記第1液路を通して前記塗布ヘッドに前記塗布液を供給する塗布液供給部と、前記第2液路を通して前記塗布ヘッドに連通する溶液貯留部と、前記第1液路に設けられた第1開閉弁と、前記第2流路に設けられた第2開閉弁とを有し、前記塗布ヘッドの前記複数のノズルから噴出する塗布液を被塗布体の表面に塗布する塗布装置であって、前記塗布液の希釈液を溜める希釈液貯留部と、前記希釈液貯留部に溜められた希釈液中に前記複数のノズルが浸漬するように前記塗布ヘッドを配置させた状態で、前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁のうちの少なくとも一方を繰り返し開閉動作させる弁制御手段と、該弁制御手段により前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁のうち少なくとも一方が開閉動作を行った後に、前記第1開閉弁を開放させた状態で、前記塗布液供給部から前記第1液路を通して前記塗布ヘッドに塗布液を圧送させる塗布液圧送制御手段とを有する構成となる。
【0009】
本発明に係る塗布装置における気泡抜き方法は、塗布液供給部から第1液路を通して供給される塗布液を収容し、複数のノズルから前記塗布液を液滴状にして噴出する塗布ヘッドを有し、該塗布ヘッドの前記複数のノズルから噴出する塗布液を被塗布体の表面に塗布する塗布装置における気泡抜き方法であって、前記塗布液の希釈液を溜める希釈液貯留部に溜められた前記希釈液中に前記複数のノズルが浸漬するように前記塗布ヘッドを配置させるステップと、前記複数のノズルを前記希釈液中に浸漬させた状態で、前記第1液路中における前記塗布液の前記塗布ヘッドに向けた圧力を変動させる第1液圧変動ステップとを備えた、塗布液希釈ステップと、を有する構成となる。
【0010】
また、本発明に係る塗布装置における気泡抜き方法は、塗布液を収容し、複数のノズルから前記塗布液を液滴状にして噴出する塗布ヘッドと、第1液路と、第2液路と、前記第1液路を通して前記塗布ヘッドに前記塗布液を供給する塗布液供給部と、前記第2液路を通して前記塗布ヘッドに結合する塗布液貯留部と、前記第1液路に設けられた第1開閉弁と、前記第2流路に設けられた第2開閉弁とを有し、前記塗布ヘッドの前記複数のノズルから噴出する塗布液を被塗布体の表面に塗布する塗布装置における気泡抜き方法であって、希釈液貯留部に溜められた希釈液中に前記複数のノズルが浸漬するように前記塗布ヘッドを配置させた状態で、前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁のうちの少なくとも一方を繰り返し開閉動作させる弁開閉ステップと、該弁開閉ステップにより前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁のうち少なくとも一方が開閉動作を行った後に、前記第1開閉弁を開放させた状態で、前記塗布液供給部から前記塗布液を圧送させる塗布液圧送ステップとを有する構成となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、気泡抜きに要する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る塗布装置における塗布液を噴出させる塗布液噴出機構の構成を示す図である。
【
図2A】
図1に示す塗布液噴出機構における塗布ヘッドの正面断面図である。
【
図2B】
図1に示す塗布液噴出機構における塗布ヘッドの詳細な構造を示す拡大部分側面断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る塗布装置の全体の構成を示す図である。
【
図4】塗布ヘッドを浸漬バット内の希釈液に浸漬させた状態を示す図である。
【
図5A】
図1及び
図4に示す第1開閉弁の詳細な構造を示す拡大断面図である。
【
図5B】
図1及び
図4に示す第1開閉弁の弁が閉状態のときの構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る塗布装置における塗布液噴出機構は、
図1に示すように構成される。
【0015】
図1において、塗布液噴出機構21は、塗布ヘッド10、供給タンク20(塗布液供給部)及び加圧タンク30(塗布液貯留部)を有している。供給タンク20の底部近傍に端口が配置された給液路Cin(第1液路)が供給タンク20から延びて塗布ヘッド10の注入口INに至っている。供給タンク20には、例えば、液晶基板の配向膜を形成するためのポリイミド溶液や半導体基板のレジスト層を形成するためのレジスト溶液等、被塗布体の表面に塗布すべき塗布液Eが溜められている。また、塗布ヘッド10の排出口OUTから延びる排液路Cout(第2液路)が加圧タンク30に接続されている。給液路Cinには、第1開閉弁41が設けられ、排液路Coutには、第2開閉弁42が設けられている。加圧タンク30には、供給タンク20に補給すべき塗布液Eが溜められている。なお、
図1では、加圧タンク30を供給タンク20と塗布ヘッド10よりも上方に位置するかのように示しているが、実際には、加圧タンク30は、供給タンク20、塗布ヘッド10よりも下側に配置されている。そのため、後述するように、加圧タンク30から供給タンクに塗布液Eを補給するときには、加圧タンク30に高圧ガスが供給される。
【0016】
給液路Cinの第1開閉弁41と供給タンク20との間の位置と、排液路Coutの第2開閉弁42と加圧タンク30との間の位置とが渡し液路Ccon(第3液路)によって結合されている。渡し液路Cconには、第3開閉弁43が設けられている。また、加圧タンク30と供給タンク20とが、補給液路Cspによって結合されている。補給液路Cspには開閉弁49及びフィルタユニット50が設けられている。
【0017】
供給タンク20は、開閉弁44の設けられた配管22を介して大気に連通され、また、開閉弁45の設けられた配管23を介して高圧ガス源(例えば、高圧窒素ガス源:図示略)に接続されている。加圧タンク30も、供給タンク20と同様に、開閉弁46の設けられた配管24を介して大気に連通され、また、開閉弁47の設けられた配管25を介して高圧ガス源(例えば、高圧窒素ガス源)に接続されている。加圧タンク30は、更に、開閉弁48が設けられた配管26を介して塗布液Eの供給口に連通されている。通常、開閉弁44が開放されるとともに開閉弁45が閉鎖されて、供給タンク20内が大気開放の状態にあり、また、開閉弁46が開放されるとともに開閉弁47が閉鎖されて、加圧タンク30も同様に大気開放の状態にある。
【0018】
複数のノズルの形成された塗布ヘッド10は、例えば、
図2A、
図2Bに示すように、前述した注入口IN及び排出口OUTにつながる共通流路27が形成されており、その共通流路27からノズル13毎に分岐された個別流路12と、個別流路12に接続され、ノズル13に連通する圧力室28とが設けられている。各ノズル13に対向して圧電素子11が設けられている。塗布液Eが共通流路27、個別流路12、圧力室28、ノズル13からなる流路に満たされた状態で、圧電素子11が駆動することにより、各ノズル13から塗布液が液滴状(DL)になって噴出する。
【0019】
図1に戻って、大気開放の状態にある供給タンク20内に溜められた塗布液Eの液面と塗布ヘッド10の各ノズル13の高さ方向の位置との高低差によって、塗布液Eが、供給タンク20から給液路Cin(開閉弁41は開放状態)を通して塗布ヘッド10に供給されるようになっている。また、開閉弁46が閉鎖されるとともに開閉弁47が開放され、更に、開閉弁49が開放されると、高圧ガス源からの高圧ガスが加圧タンク30に流入し、その圧力によって、加圧タンク30から塗布液Eが補給液路Cspを通して供給タンク20に補給される。
【0020】
図1に示す塗布液噴出機構21を有する塗布装置の全体的な構成は、例えば、
図3に示すようになっている。
【0021】
図3において、塗布装置29は、液晶基板や半導体基板等の塗布液を塗布すべき被塗布体Wがセットされるステージ60を有し、ステージ60に対して複数のノズルが対向するように塗布ヘッド10が配置されている。なお、
図3には示されていないが、前記塗布液噴出機構21の塗布ヘッド10を除く部分(
図1に示す供給タンク20、加圧タンク30、種々の液路Cin、Cout、Csp及び開閉弁41〜49、フィルタ50)が設けられている。また、ステージ60の近傍には塗布液Eを希釈するための希釈液SLVが溜められた浸漬バット61(希釈液貯留部)が設けられている。浸漬バット61には、希釈液SLVを加温するためのヒータ62(加温機構)が設けられている。希釈液SLVとして、例えば、塗布液Eの溶媒を用いることができる。具体的には、液晶基板の配向膜を形成するために、塗布液Eとしてポリイミド溶液が用いられる場合、希釈液SLVとして、ポリイミド液の溶媒であるNMP(N−メチルピロリドン)を用いることができる。
【0022】
上記塗布装置29は、更に、制御ユニット100、シーケンサ101、ドライバ102、カメラ103及び表示部104を有している。シーケンサ101は、制御ユニット100の制御のもと、
図1に示す各種開閉弁41〜49(電磁弁)の開閉駆動を行うともに、塗布ヘッド10の各ノズル13に対向して設けられた圧電素子11(
図2B参照)を駆動させる。ドライバ102は、制御ユニット100の制御のもと、ステージ60を所定の方向に移動させる。このステージ60の移動によってステージ60にセットされた被塗布体Wと塗布ヘッド10とが相対的に移動し、塗布ヘッド10の各ノズル13から液滴状DLに噴出する塗布液Eが被塗布体Wの表面に順次塗布される。ドライバ102は、ステージ60の移動とともに、浸漬バット61を所定のホーム位置と塗布ヘッド10の各ノズル13が希釈液に浸漬する浸漬位置との間で移動させることができる。カメラ103での撮影により得られる被塗布体Wの表面画像は、制御ユニット100の制御のもと、表示部104に表示することができる。
【0023】
上述した塗布装置29では、第1開閉弁41を開放、第2開閉弁42及び第3開閉弁43を閉鎖させた状態で、各ノズル13に対向する圧電素子11を動作させることにより、塗布ヘッド10の各ノズル13から塗布液Eが液滴状DLになって噴出する。また、ステージ60が移動して被塗布体Wが塗布ヘッド10の下を通過するタイミングに合わせて、被塗布体Wに対向して位置することとなる各ノズル13から塗布液Eを噴射させて被塗布体Wの表面に塗布液Eを塗布する。これにより、被塗布体Wの表面に、塗布液Eの膜である配向膜等の機能性膜が形成される。
【0024】
次に、前述した構造の塗布装置29における気泡抜きは次の手順で行われる。
【0025】
まず、塗布ヘッド10の下方に浸漬バット61を移動させ、その後、浸漬バット61を昇降手段(不図示)にて所定量上昇させ、
図4に示すように、塗布ヘッド10を各ノズル13が希釈液SLVに浸漬するように塗布ヘッド10を配置させる。
【0026】
各ノズル13が浸漬バット61の希釈液SLVに浸漬するように塗布ヘッド10が配置された状態で、第1開閉弁41(第1液圧変動機構)と、第2開閉弁42(第2液圧変動機構)とを繰り返し開閉動作させる(例えば、1秒程度の周期で開閉を複数回、例えば、10回程度繰り返す)。この第1開閉弁41の開閉動作によって、給液路Cin内の塗布液Eの塗布ヘッド10に向けた圧力及び排液路Cout内の塗布液Eの塗布ヘッド10に向けた圧力が変動する。それらの圧力変動が塗布ヘッド10内の塗布液Eに伝搬して、浸漬パネル61の希釈液SLVに浸漬された各ノズル13から希釈液SLVが塗布ヘッド10内に引き込まれていき、塗布ヘッド10内の塗布液E、給液路Cinの第1開閉弁41から塗布ヘッド10までの間の部分の塗布液E、及び排液路Coutの第2開閉弁42から塗布ヘッドまでの間の部分の塗布液Eが順次希釈液SLVによって希釈される。これにより、塗布ヘッド10内、前記給液路Cinの部分及び前記排液路Coutの部分の塗布液Eの粘度が低下した状態になる。
【0027】
図5Aに示すように、第1、第2開閉弁41、42は、例えば、エアオペレートバルブで、次のように構成されている。また、第1、第2開閉弁41、42は、同一構成であるから、第1開閉弁41について説明し、第2開閉弁42の説明は省略する。第1開閉弁41は、第1ボディ41a、第2ボディ41b、ダイヤフラム41c、ピストン41dを有する。第1ボディ41aには、第1流路41a1と第2流路41a2が形成されている。ここで、第1流路41a1は、塗布ヘッド10に接続され、第2流路41a2は、供給タンク20に接続される。第1流路41a1と第2流路41a2との間には弁座41a3が形成され、弁座41a3の径内にある弁孔41a4は、第2流路41a2と連通している。ダイヤフラム41cが弁座41a3から離間すると、第1流路41a1と第2流路41a2とが、ダイヤフラム41cと弁座41a3との間に形成された流路を通じて連通し、一方、ダイヤフラム41cが弁座41a3に当接すると、第1流路41a1と第2流路41a2とは遮断される(
図5B参照)。ダイヤフラム41cはピストン41dと一体に設けられ、ピストン41dの動作で弁座41a3に対して接離する。ピストン41dは、第2ボディ41bに形成された加圧室41b1に気体流路41b3を介して加圧気体が供給されることでばね41b2による押し付けに抗して上昇し、ダイヤフラム41cを弁座41a3から離間させる。また、ピストン41dは、加圧室41b1内の加圧気体が放出されるとばね41b2の押し付けにより下降し、ダイヤフラム41cを弁座41a3に当接させる(
図5B参照)。
【0028】
このように構成された第1開閉弁41においては、ダイヤフラム41cが弁座41a3に当接したり、離間したりする動作時に、第1流路41a1および第2流路41a2の塗布液Eに圧力の変動を生じさせる。具体的には、ダイヤフラム41cが弁座41a3に当接するときには、供給タンク20側と塗布ヘッド10側に塗布液Eが押し出され、ダイヤフラム41cが弁座41a3から離間するときには、供給タンク20側と塗布ヘッド10側から第1開閉弁41側に塗布液Eが引き戻されることとなる。そして、この塗布液Eの押し出しと引き戻しのうち、塗布ヘッド10側に作用する押し出しと引き戻しにより、塗布ヘッド10の流路内の塗布液Eの希釈が行なわれる。つまり、塗布液Eが引き戻されるときに、ノズル13から希釈液SLVが塗布ヘッド10の流路内に引き込まれ、さらに、塗布液Eの押し出しと引き戻しの繰り返しによって、塗布ヘッド10の流路内に引き込まれた希釈液SLVが流路内で拡散するとともに、流路内全体へと徐々に行き渡り、流路内の塗布液が希釈される。なお、このような作用を生じさせるために、第1、第2開閉弁41、42は、ダイヤフラム41cによる流路の開閉動作によって生じる圧力変動(塗布液Eの押し出し、引き戻し)をノズル13まで伝えることができるものを選定する。このような開閉弁41、42は、実験によって最適なものを選定することができる。
【0029】
なお、開閉弁41は、ダイヤフラム41cで流路を開閉するエアオペレートバルブに限らず、開閉の際に、液路Cin、Cout内の塗布液に圧力変動(塗布液Eの押し出し、引き戻し)を生じさせ、かつ、その圧力変動をノズル13まで伝達可能なものであれば、他の開閉弁(グローブ弁、ゲート弁、バタフライ弁など)を用いることも可能であり、駆動方式も空圧式に限らず電磁式等種種のものを用いることが可能である。
【0030】
なお、浸漬バット61、第1開閉弁41(第1液圧変動機構)、第2開閉弁42(第2液圧変動機構)、第1開閉弁41及び第2開閉弁42の開閉駆動制御を行う制御ユニット100及びシーケンサ101が塗布液希釈機構に相当し、特に、制御ユニット100及びシーケンサ101が弁制御手段に相当する。
【0031】
上記のように塗布液Eの粘度を低下させた後、第1開閉弁41、第2開閉弁42及び第3開閉弁43を開放させたまま、開閉弁44を閉鎖させて、開閉弁45を開放する。すると、高圧ガス源からの高圧ガスが供給タンク20に供給され、その圧力により、塗布液Eが、供給タンク20から、上述したのと同様に、給液路Cin、渡し液路Ccon及び排液路Coutを通って、塗布ヘッド10に圧送供給される。この供給タンク20からの塗布液Eの圧送供給により、塗布ヘッド10内、給液路Cinの前記部分及び排液路Coutの部分にある希釈されて気泡が動きや易い状態の塗布液Eが各ノズル13から押し出されるように噴出する。なお、この場合、排液路Coutの渡し液路Cconと加圧タンク30との間に開閉弁を設け、この開閉弁を閉じておくようにすると、加圧タンク30への塗布液Eの流出が阻止されるので、ノズル13からより多くの塗布液(希釈されて気泡が動きやすい状態の塗布液)Eを排出させることができる。
【0032】
なお、供給タンク20、供給タンク20に連通する高圧ガス源、開閉弁44、45及び開閉弁44、45の駆動制御を行う制御ユニット100及びシーケンサ101が、塗布液強制排出機構に相当し、特に、制御ユニット100及びシーケンサ101が塗布液圧送制御手段に相当する。
【0033】
上述したような塗布装置29によれば、希釈されて粘度が低下して気泡が動き易くなった塗布液が塗布ヘッド10の複数のノズル13を通して強制的に排出されるので、希釈された状態の塗布液とともに気泡が排出され易くなり、結果として、気泡抜きに要する時間を短くすることができる。
【0034】
また、浸漬バット61に溜められた希釈液はヒータ62によって加温されているので、各ノズル13を通して塗布ヘッド10に吸い込まれる希釈液SLVは、塗布ヘッド10内の塗布液Eとの温度差によって対流を生じ、当該塗布液E中で拡散し易く、当該塗布液Eをより効率的に希釈させることができる。
【0035】
上述した例では、第1開閉弁41及び第2開閉弁42の双方を開閉動作させて、塗布ヘッド10内の塗布液Eを希釈させるようにしたが、これに限定されず、第1開閉弁41だけを開閉動作させるようにしてもよい。また、第1開閉弁41及び第2開閉弁42ではなく、給液路Cinまたは排液路Cout、あるいは、給液路Cin及び排液路Coutの双方に塗布ヘッド10に向かう圧力を変動させる機構(弁等)を設けるようにしてもよい。例えば、給液路Cinまたは排液路Coutをテフロン(登録商標)等の可撓性のチューブで形成するとともに、このチューブを押し潰したり復元させたりする、空気圧や電磁力で開閉するチャック機構を設ける。そして、このチャック機構で、チューブに対して径方向の狭持と開放を繰り返して行なうことで、チューブを押し潰したり復元させたりし、給液路Cinまたは排液路Cout内の塗布液Eに圧力変動(塗布ヘッド10側への押し出しと塗布ヘッド10側からの引き戻し)を生じさせ、この圧力変動をノズル13に伝達させるようにしても良い。
【0036】
なお、上述した塗布装置29では、各開閉弁41〜49は、電磁弁であり、制御ユニット10及びシーケンサ101の駆動制御によって開閉動作を行うものであったが、これに限られず、それら全部または一部を、手動で開閉動作させるものであってもよい。
【0037】
また、なお、上述した塗布装置29において、第1開閉弁41及び第2開閉弁42を開放する一方、第3開閉弁42を閉鎖させた状態で、供給タンク20から塗布液Eを塗布ヘッドに向けて圧送することもできる。この場合、供給タンク20から給液路Cinを通して塗布ヘッド10に圧送供給される塗布液Eは、排出口OUTから排出され、排液路Coutを通って加圧タンク30に戻る。このようにして、給液路Cin、塗布ヘッド10及び排液路Coutに存在する気泡を除去することもできる。また、供給タンク20に高圧ガス源がから高圧ガスを供給することで、塗布ヘッド内の塗布液を複数のノズルを通して強制的に排出させるものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、給液路Cinの途中に圧送用のポンプを設け、または、給液路Cinに並列に分岐した液路に圧送用ポンプを設け、このポンプによって塗布液Eをノズルから排出させるようにしても良く、供給タンク20内の液面高さをノズル13の下端よりも高くし、水頭差を利用して塗布液Eをノズルから排出させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 塗布ヘッド
11 圧電素子
12 液路
13 ノズル
20 供給タンク
21 塗布液噴出機構
29 塗布装置
30 加圧タンク
41 第1開閉弁
42 第2開閉弁
43 第3開閉弁
44〜49 開閉弁
50 フィルタ
60 ステージ
61 浸漬バット
62 ヒータ
100 制御ユニット
101 シーケンサ
102 ドライバ
103 カメラ
104 表示部