(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363472
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】生物支持体を備えた排水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/06 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
C02F3/06
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-230783(P2014-230783)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-93778(P2016-93778A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 智樹
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−328676(JP,A)
【文献】
特開昭53−039655(JP,A)
【文献】
実開昭53−138461(JP,U)
【文献】
特開平01−119395(JP,A)
【文献】
特開平07−136688(JP,A)
【文献】
実開平02−147297(JP,U)
【文献】
特開平09−137500(JP,A)
【文献】
特開2002−011491(JP,A)
【文献】
米国特許第06843909(US,B1)
【文献】
特開2004−066189(JP,A)
【文献】
特開2007−021398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理槽中に、その表面に生物を保持するための複数の揺動性担体、該揺動性担体を排水中で揺動可能に支持する複数のフレームを備えた排水処理装置において、該フレームが断面コ字形の長尺材の上下両端を内側に折り曲げて溝構造を形成したレール構造体であり、該溝構造の開口部を互いに向かい合う形で平行にフレームを形成すると共に、該溝にスライド自在に係合するスライダーを該揺動性担体の四隅に備え、該スライダーは、揺動性担体を取り付けるためのハンガー部を備えた、概ね平行六面体形状であり、該レール構造体の溝にスライダーを係合させることでフレームに揺動性担体を取り付けるとともに、平行六面体形状のスライド方向の長さを該揺動性担体をフレームに複数支持する際の設置間隔の長さとしたことを特徴とする排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機排水などを生物処理する微生物を担持させる微生物付着用担体を備えた排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から家庭排水、工場排水などの有機性排水の処理には微生物処理が有効であり、下水処理場をはじめとする大規模処理場では、主に水中に浮遊させる微生物によって有機物の分解を行う活性汚泥処理が用いられている。また、排水負荷変動に強く、余剰汚泥発生量が少ない等の理由から小規模の排水処理を中心に、微生物を礫や布帛、紐や各種形状の支持担体に付着させる生物処理が行われている。
【0003】
かかる生物処理は支持担体に微生物を付着させ、排水を接触させて有機物を分解するものである。生物処理槽内に設置した繊維織布や不織布等を生物処理材として用い、ステンレスなどの支持棒で槽内に支持固定したり、フレームで固定したりする処理槽が知られている(特許文献1,2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−59734号公報
【特許文献2】特開2002−355688号公報
【特許文献3】米国特許第7731852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
繊維織物や不織布、紐状部材など、微生物担持用の揺動担体を用いる場合、生物処理槽中で支持担体は吸水し、微生物等が付着した重量物となるため、担体を支持するために支持部材には強度が必要である。また水中での錆腐食を防止する必要があることから、一般にステンレス製の支持棒や支持枠が用いられている。
【0006】
揺動担体上に生物膜を均一に維持するためには、適切な張力を用いて一定間隔で支持部材であるフレームに固定する必要がある。
揺動担体の張力が不足し、揺動担体相互の間隔が一定に保てない場合には、担体表面に形成された生物膜同士が固着し、生物膜が厚みを増す形態で成長し、重量に耐えきれずに脱落してしまうことがある。そのためフレームの強度維持と共に、揺動担体の張力を維持した状態での取付けが必要となる。繊維織物などの揺動担体をフレームに固定するためには、複数箇所をステンレスワイヤー等で固定する必要があり、その為には固定部であるフレームの該当箇所に穴を開ける必要が生じ、加工費が高額になる。揺動担体の取付けや交換作業も煩雑となり、より簡便な担体の固定方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決する手段として、本願発明者は強度、耐久性は勿論のこと、安価で取扱性、加工性に優れた揺動性担体のフレームへの取付け方法として、カーテンレール様部材を備えた以下の排水処理装置を見出した。
【0008】
1.排水処理槽中に、その表面に生物を保持するための揺動性担体、該揺動性担体を排水中で揺動可能に支持するフレームを備えた排水処理装置において、該フレームが断面コ字形の長尺材の上下両端を内側に折り曲げて溝構造を形成したレール構造体であり、該溝構造の開口部を互いに向かい合う形で平行にフレームを形成すると共に、該溝にスライド自在に係合するスライダーを該揺動性担体の少なくとも四隅に備え、該レール構造体の溝にスライダーを係合させることでフレームに揺動性担体を取り付けたことを特徴とする排水処理装置。
2.該スライダーの保持胴体が略方形体であり、保持胴体の長径が該揺動性担体の設置間隔の長さとなる上記1記載の排水処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、排水処理槽中に装填し、表面に生物を保持するための揺動性担体をフレームに支持する処理ユニットを備えた排水処理装置であり、従来のステンレス製のフレーム部材にワイヤー等で担体を固定すると同様の強度、耐久性、耐腐食性等の性能を維持しつつ、取り付けや交換作業が容易に可能な装置を提供することが出来る。
フレームに平行に取付けた所謂カーテンレールに、揺動性担体に取付けたスライダーを順次差し込んでいくことで、担体の張力を維持しつつ、一定間隔で担体を固定することができるなど、排水処理槽への処理ユニットの設置、担体の交換作業が容易に行うことが出来るなど、メンテナンス効率もアップする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】揺動性担体を取り付けた処理ユニットの模式図。
【
図3】揺動性担体とフレームとの接続を示す模式図。
【
図4】排水処理槽に揺動性担体を取り付けた処理ユニットを装填した排水処理装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の排水処理装置の実施態様例を、図面を用いて説明する。
図1は本発明の排水処理装置の模式図である。2槽以上の生物処理槽を備えた多段式の生物処理槽1により汚水を微生物により分解消化し、汚泥発生量を極小化する。
本装置に適用可能な排水は、生物により分解が可能な有機物を含んだ排水であり、生活排水、食品工場排水、化学工場排水、製薬工場排水など多岐にわたる。また、有機物を消化する微生物等に対して有毒物を含む排水であっても、これを前処理により、該有毒物を事前に除去することにより処理が可能となる。
【0012】
処理する生活排水や工場排水などの有機系の排水の原水中に含まれる固形物をスクリーンにより除去した後、原水調整槽に一時貯留し、中和剤を加えることにより、排水の水素イオン濃度をPH6〜8程度の中性域に調整した後、生物処理槽1に導入する。排水中に多量の固形物を含まれるときは、加圧浮上装置などの物理・化学的原理を応用した分離装置により、前処理を行い、該固形物を事前に取り除くことが一般的である。
【0013】
かかる生物処理槽1は、内部に散気管3および送気用の空気配管を備え、生物槽内に空気を送ることができる構造となっている。該散気管3は好気性の微生物に酸素を供給することを目的としており、できるだけ水への溶存率を高めることが求められているが、同時に散気管の表面に微生物の繁殖による閉塞が起こらないことに配慮することも重要な要件となっている。散気管のタ
イプには酸素の溶存効率を優先させた微細散気管や微生物による耐閉塞性を優先させた粗気散気管など様々なタイプが使用可能である。
【0014】
2槽以上の多段に構成した生物処理槽1は、固定担体を使用した接触酸化槽であることを特徴とする。かかる生物処理槽は、コンクリート、プラスチック、金属性などの仕切り壁によって区切られた空間を備え、一つの槽内に仕切り壁を入れることにより、2槽、3槽と多段に構成する。槽から槽への排水の流れは、常に一方向であり、仕切り壁の上側をオーバーフローするか、仕切り壁の下側で槽間を連通することで流れることになる。具体的にはAquarias社の多段生物処理槽であるMSABP(登録商標)を用いることができる。
【0015】
生物
担持体2を使用した生物槽は、バクテリアが担持体表面に固着するため槽外に流出することなく、槽内に固定されるので汚泥齢が高くなる。汚泥齢が高くなることにより、難分解性有機物への分解能力が上がるというメリットがある。また、担体表面に形成される微生物膜は、表面は好気菌で構成されるが、微生物膜の奥側は酸素濃度が低くなるため、通性嫌気菌が住み着くようになり、微生物膜の多様化が進むことになる。通性嫌気菌と好気菌は相互に捕食しあうと考えられており、結果として、微生物膜内でも汚泥が減容するというメリットが発現する。
【0016】
生物処理槽1を2槽以上の多段に構成することにより、生物の優先種が前段から後段の槽に向かってバクテリア、原生生物、後生生物と変化し、多種多様な微生物により排水中の有機物は分解され浄化される。食物連鎖を構成することで余剰汚泥が効率よく自己消化され、汚泥の減容化を図ることが出来る。
多段式生物処理装置(MSABP:登録商標)の場合には、散気管3、生物担持体2を含む曝気槽を4〜16段(通常8〜12段)に多段化することで生物処理槽内に食物連鎖を再現し、生物処理を効率的に実施することができる。
【0017】
本発明で生物担持体として使用する揺動性担体4を排水中に固定支持するためのフレーム10は、
図2に示すようなステンレス製等の金属、樹脂等のフレームを用いて方形枠として形成する。かかるフレーム10は排水中で生物膜を形成した揺動性担体4を固定維持するだけの強度と耐腐食性が必要となる。その他、樹脂製のパネルやFRPグレーチングなどの格子状の方形枠として一体成型したフレームを用いても良い。
【0018】
本発明の使用する揺動性担体4としては、繊維織物等を用いることが出来る。具体的には、Aquarius Technologies Inc.社の多段生物処理槽であるMSABP(登録商標)などを用いるような、繊維表面に微生物を担持させ、排水中の有機物を分解する生物分解相を構成する繊維織物や不織布、繊維束等を用いることができる。
【0019】
かかる揺動性担体4を
図2の様に複数枚を所定間隔でフレーム枠に固定して担体ユニットを構成し、生物処理槽内の各段に設置する。
従前は、揺動性担体4とステンレスフレームとの固定には、強度および耐腐食性を有するステンレスワイヤーや結束バンドを用いる固定していた。排水中で生物膜が成長しても一定の張力を維持したまま固定する必要があり、この為にはフレームへの固定箇所の穴開け加工や固定作業など煩雑な動作が必要となる。
【0020】
本願発明ではフレームの両端にカーテンレール11,12,13,14,15,16を備え、揺動性担体4の両端にカーテンレール内を往復運動自在可動なスライダー17を設け、スライダー17を順次カーテンレールに挿入していくことで揺動性担体4をフレームに固定することが出来る。
【0021】
かかるカーテンレール11〜16を構成するフレームは、断面コ字形の長尺材の上下両端を内側に折り曲げて溝構造を形成したレール構造体であり、該溝構造の開口部を互いに向かい合う形で平行にフレームを形成する(11−12、13−14、15−16)。また、かかる溝にスライド自在に係合するスライダー17を該揺動性担体4の四隅や中央端部に備え、該レール構造体の溝にスライダーを係合させることでフレームに揺動性担体を取り付ける。これにより一定の張力で揺動性担体をフレームに固定することが出来る。
【0022】
図4に示すように、スライダー17は概ね平行六面体の形状をしており、担体との取付けるためのハンガー部18を備える。ハンガー部18と担体の固定は高強度繊維やステンレスワイヤー等で固定したり、フックで引っかけ固定しても良い。
スライダー17のスライド方向の長さを担体間の固定間隔の長さとすることで、スライダー17をカーテンレール11〜16に押し込むことで、等間隔で揺動性担体を設置固定することが出来る。