(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363481
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】カバー装置
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-238756(P2014-238756)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-97915(P2016-97915A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】藤田 亮
(72)【発明者】
【氏名】土本 芳裕
【審査官】
三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−148614(JP,A)
【文献】
特開2009−023438(JP,A)
【文献】
特開2001−310680(JP,A)
【文献】
米国特許第5961172(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第102012002031(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のカバー部材と、スリット状の開口が形成された中空の筒状の本体ケースと、前記カバー部材の一端が固定されており、前記本体ケースの内部に配置されている巻き取り軸と、前記本体ケースの長手方向の両端部にそれぞれ配置されて前記巻き取り軸の端部を回転可能に支持する内ホルダと、前記本体ケースの長手方向において前記内ホルダの外側にそれぞれ配置され、前記内ホルダおよび前記本体ケースに対して前記本体ケースの長手方向にスライド可能な外ホルダと、を有し、
前記外ホルダの、少なくとも、前記本体ケースの長手方向における最外端に位置する端面が、前記外ホルダの、前記内ホルダおよび前記本体ケースに対するスライド時に摺擦する摺擦部分に比べて硬度が低い軟質部分である、カバー装置。
【請求項2】
前記外ホルダの前記端面を構成する前記軟質部分の、前記内ホルダ側の面に、前記軟質部分よりも硬度の高い硬質部分が積層形成されて前記外ホルダの底面が形成されている、請求項1に記載のカバー装置。
【請求項3】
前記硬質部分からなる前記底面に貫通孔が設けられており、前記軟質部分の一部が前記端面から前記貫通孔を貫通して前記底面上に突出する回し込み部を構成している、請求項2に記載のカバー装置。
【請求項4】
前記外ホルダの前記軟質部分は前記内ホルダに比べて硬度が低く、前記外ホルダが前記内ホルダに向かってスライドすると、前記硬質部分が前記内ホルダに当接しない状態で前記回し込み部が前記内ホルダに当接する、請求項3に記載のカバー装置。
【請求項5】
前記外ホルダは、前記軟質部分を構成する軟質樹脂と、少なくとも前記摺擦部分を含む硬質部分を構成する硬質樹脂との二色成形によって形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内部に配置されるカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の内部にトノカバー装置やシェード装置などのカバー装置が配置された構成が知られている。例えば、貨物室、いわゆるラゲージルーム(ラゲージスペース)を外部から視認できないようにするためのトノカバー装置は、可撓性シート状のトノカバーと、トノカバーが出入り可能なスリット状の開口を有する本体ケースを備えている。本体ケースの内部には、トノカバーの一端が固定されている巻き取り軸を含む巻き取り装置が配置されている。本体ケース内の巻き取り軸に巻き取られているトノカバーを、必要に応じて、開口を介して本体ケースの外部に引き出し、引き出したトノカバーによってラゲージルームの上部開口を覆うことができる。トノカバーを使用しない時には、巻き取り装置によってトノカバーの大部分を巻き取って本体ケースの内部に収容しておくことができる。
【0003】
本体ケースは、ラゲージルームの幅方向に沿って延びる細長い筒状の中空の容器であり、スリット状の開口は、ラゲージルームの幅方向かつ本体ケースの長手方向に沿って延びている。本体ケース内に配置されている巻き取り軸も、ラゲージルームの幅方向かつ本体ケースの長手方向に沿って延びている。巻き取り軸を本体ケース内に回転可能に保持するために、巻き取り軸の端部を回転可能に支持する凹部を有する内ホルダが、本体ケースの両端部にそれぞれ取り付けられている。
【0004】
例えば車両の使用者がラゲージルーム周辺のスペースを広く利用したい場合などに、トノカバー装置を一時的に取り外すことが望まれる場合があるため、トノカバー装置は車両から取り外し可能であることが好ましい。そこで、車室の内壁に取り付け部を形成し、その取り付け部に対してトノカバー装置を取り外し可能に装着する構成が存在する。具体的には、特許文献1に示すように、本体ケースの長手方向の端部において巻き取り軸を回転可能に支持する内ホルダの外側に、外ホルダを、本体ケースに対して長手方向に相対的にスライド可能にはめ込み、この外ホルダと内ホルダの間にバネ等の伸縮部材を介在させた構成がある。車室の内壁には、互いに間隔を置いて対向する1対の取り付け部を形成し、これらの取り付け部の間にトノカバー装置を配置して、トノカバー装置の両端の外ホルダを取り付け部にそれぞれ係合させて装着する。このような構成の場合、外ホルダに力を加えてバネを圧縮させながら内側(本体ホルダの長手方向中心側)に向かってスライドさせると、トノカバー装置全体の長さが短くなり、車室の内壁の取り付け部と外ホルダとの当接および係合が解除されて、トノカバー装置を取り外すことができる。再取り付け時には、トノカバー装置全体の長さを短くした状態から、取り付け部に対向する位置において外ホルダに加えていた外力を解除してバネ力によって外ホルダを外側に広げることにより、外ホルダが取り付け部に当接して係合して、トノカバー装置が車室内に装着される。シェード装置など、トノカバー装置以外のカバー装置においても、同様に車室内に取り外し可能に装着される構成が採用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−264627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたトノカバー装置のように取り外し可能なカバー装置では、トノカバー装置を取り外す時や取り外した後に、誤って落下させるおそれがある。トノカバー装置を落下させると、床面や地面に外ホルダが当接することが多く、その場合、外ホルダに加わった衝撃がバネを縮め、このバネを介して内ホルダにも衝撃が伝わる。このような衝撃で、外ホルダが破損するのみならず、内ホルダも破損すると、巻き取り軸を安定して回転可能に支持することができなくなるおそれがある。また、外ホルダに加わった衝撃が、バネおよび内ホルダを介して巻き取り軸まで破損させる可能性もある。このように内ホルダや巻き取り軸が破損すると、カバー装置としての機能を果たせなくなる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、誤って落下させた場合にも機能を損なうことが抑えられるカバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカバー装置は、シート状のカバー部材と、スリット状の開口が形成された中空の筒状の本体ケースと、カバー部材の一端が固定されており、本体ケースの内部に配置されている巻き取り軸と、本体ケースの長手方向の両端部にそれぞれ配置されて巻き取り軸の端部を回転可能に支持する内ホルダと、本体ケースの長手方向において内ホルダの外側にそれぞれ配置され、内ホルダおよび本体ケースに対して本体ケースの長手方向にスライド可能な外ホルダと、を有する。そして、外ホルダの、少なくとも、本体ケースの長手方向における最外端に位置する端面が、外ホルダの、内ホルダおよび本体ケースに対するスライド時に摺擦する摺擦部分に比べて硬度が低い軟質部分である。
【0009】
この構成によると、カバー装置を誤って落下させた場合などにも、外ホルダの軟質部分が衝撃を吸収して、内ホルダや巻き取り軸にはあまり大きな衝撃は伝わらず、破損するおそれが小さい。従って、カバー装置としての機能が損なわれることが抑えられる。また、外ホルダのスライド時に内ホルダや本体ケースと摺擦する摺擦部分は硬質部分から構成されているので変形しにくく、外ホルダの内ホルダや本体ケースに対するスライドは、支障なく安定的に行える。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカバー装置によると、誤って落下した場合にも機能を損なうことが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のカバー装置の一実施形態を示す平面図である。
【
図3】
図1に示すカバー装置の要部を示す拡大断面図であり、(a)は外ホルダが定常位置にある状態、(b)は外ホルダが内側にスライドした状態を示す。
【
図4】(a)は
図1に示すカバー装置の内ホルダを内側から見た斜視図、(b)はそれを外側から見た斜視図である。
【
図5】(a)は
図1に示すカバー装置の外ホルダの側面断面図、(b)はその正面断面図、(c)はそれを上方から見た斜視図、(d)はそれを内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明のカバー装置の一実施形態であるトノカバー装置1の平面図、
図2はその側面断面図である。トノカバー装置1は、可撓性のシート状のカバー部材であるトノカバー2と、トノカバー2を巻き取り可能な巻き取り軸6を含む巻き取り装置4と、巻き取り装置4を収容する中空の筒状の本体ケース3とを有する。本体ケース3には、トノカバー2の幅以上の幅を有するスリット状の開口5が設けられている。本体ケース3内の巻き取り装置4は、巻き取り軸6と、図示しないが巻き取り軸6の回転を制御する回転制御機構が設けられている。図示しない回転制御機構は、巻き取り軸6を巻き取り方向に回転するように付勢するコイルばね等の付勢部材と、巻き取り軸6を静止させることができる停止機構とを含む公知の構成である。
【0013】
トノカバー2の一端は本体ケース3内の巻き取り軸6に固定されている。トノカバー2の他端は、開口5を介して本体ケース3の外部に引き出され、開口5の幅方向外側に突出するストッパー7が取り付けられている。このストッパー7は開口5を通過することができないため、トノカバー2の他端側の一部は、本体ケース3内に進入不可能であって本体ケース3の外部に常に保持される。
【0014】
本体ケース3は、開口5を有する両端開放の中空の円筒状または角筒状であり、長手方向の両端部に内ホルダ8が取り付けられて本体ケース3の端部を塞いでいる。
図3,4に示すように、内ホルダ8は、巻き取り軸6を回転可能に支持する軸受け部8aと、バネ受け部8bを有し、ねじ止め等によって本体ケース3に固定されている。
【0015】
図3に示すように、本体ケース3の長手方向において、内ホルダ8よりもさらに外側に外ホルダ9が配置されている。外ホルダ9は、本体ケース3および内ホルダ8に対して固定されてはおらず、本体ケース3および内ホルダ8に対して本体ケース3の長手方向にスライド可能である。具体的には、外ホルダ9は内ホルダ8よりも一回り大きく、内ホルダ8を内部に収容可能なキャップ形状である。内ホルダ8と外ホルダ9の間にはバネ10等の伸縮部材が配置されている。
【0016】
そして、本実施形態のトノカバー装置1の外ホルダ9は、
図3,5に示すように、硬質部分11と軟質部分12とを含む。具体的には、少なくとも、外ホルダ9の、本体ケース3の長手方向の再外端に位置する端面(端面部)12aは軟質部分12である。そして、少なくとも、外ホルダ9の、内ホルダ8と直接または不織布14(
図3参照)等の緩衝材を介して間接的に摺擦する摺擦部分11aは、硬質部分11である。さらに、外ホルダ9の、端面12aの反対面(内ホルダ8に対向する面)である底面(底面部)11bも硬質部分であることが好ましい。このように、本実施形態の外ホルダ9は、少なくとも部分的に2層構造である複合部材である。
【0017】
このようなトノカバー装置1は、一般に、車両のリアシートの後方において、トノカバー2の幅方向、すなわち本体ケース3の長手方向が車幅方向に実質的に沿うように、かつ、本体ケース3の開口5が車両の後方を向いていて、トノカバー2が車幅方向に直交する方向に後方に向かって引き出せるように配置されている。本実施形態のトノカバー装置1によると、トノカバー2の、本体ケース3の外側に位置するストッパー7を含む部分を引っ張ることにより、巻き取り軸6を巻き取り方向と反対の繰り出し方向に回転させながらトノカバー2を引き出すことができる。引き出したトノカバー2は、図示しない公知の回転制御機構の固定機構によって、例えばラゲージルーム13(
図2参照)を覆った状態に保持することができる。そして、その固定機構による固定を解除すると、図示しない付勢部材の付勢力によって巻き取り軸6が巻き取り方向に回転し、ストッパー7が本体ケース3の開口5の縁部に当接する位置まで、トノカバー2は本体ケース3の内部に引き込まれて巻き取り軸6に巻き取られる。
【0018】
トノカバー装置1を取り外す際には、使用者の手等で、外ホルダ9を、本体ケース3の長手方向中央部に向かって内側に押して、バネ10を押し縮めながら外ホルダ9を本体ケース3および内ホルダ8に対してスライドさせる。その結果、トノカバー装置1全体の幅(一方の外ホルダ9の端面12aから他方の外ホルダ9の端面12aまでの距離)が短くなる。それにより、外ホルダ9と車室内の図示しない取り付け部との当接および係合を解除して、トノカバー装置1を車室から取り外すことができる。
【0019】
このようにして取り外したトノカバー装置1を誤って落下させた場合、車室の床面や地面に外ホルダ9が最初にぶつかる可能性が高い。本実施形態では、外ホルダ9の軟質部分12(特に端面12a)が、床面や地面にぶつかった時の衝撃を吸収し、外ホルダ9の内側に位置する内ホルダ8や巻き取り装置4等の部材にはあまり大きな衝撃は伝わらない。従って、外ホルダ9が多少傷つく可能性はあっても、その内側の内ホルダ8や巻き取り装置4が破損することはなく、トノカバー装置1としての機能が損なわれることはない。
【0020】
また、外ホルダ9は、トノカバー装置1の取り付けおよび取り外し時に、内ホルダ8および本体ケース3に対してスライドする。仮に、外ホルダ9の、内ホルダ8および本体ケース3に対して直接または間接的に摺擦する摺擦部分11aが外部からの衝撃等によって変形すると、円滑なスライドが行えず、取り付けおよび取り外しに支障が生じる。本発明では、外ホルダ9のうち、少なくとも内ホルダ8および本体ケース3に対する摺擦部分11aは硬質部分11であるため、変形を生じにくく、円滑なスライドを安定して行うことができ、取り付けおよび取り外しに支障を来すことはない。
さらに、外ホルダ9の端面の反対面(内ホルダ8に対向する面)である底面11bが硬質部材であると、内ホルダ8との間でバネ10をしっかりと保持することができる。
【0021】
このように、本実施形態によると、取り外し可能なカバー装置1において、車室から取り外した時に誤って落下させても、カバー装置1の機能を担う巻き取り装置4とそれを支持する内ホルダ8に及ぶ衝撃を小さく抑えられる。すなわち、カバー装置1が、落下等の影響で作用を発揮できす使用不能になることが抑えられる。さらに、外ホルダ9の、内ホルダ8および本体ケース3に対する円滑なスライドは確保され、バネ10を安定して保持して付勢力を働かせることができるため、トノカバー装置1の取り付けおよび取り外しは良好に行える。
【0022】
以上説明したトノカバー装置1の各部材の詳細について説明する。
本体カバー3は、例えば、アルミニウム等の比較的軟らかい金属からなる筐体であり、材料である金属の可塑性を利用して押し出し成形により形成されることが多い。本実施形態の本体ケース3は、断面が略矩形状の筒状であり、各側面の肉厚は1〜5mm程度である。
図1〜3に示す例では、アルミニウム合金であるA6063Sにアルマイト処理および塗装を施したものを材料として押し出し成形を行い、各側面の肉厚が約1.2mmの角筒状に形成された本体ケース3が用いられている。
【0023】
トノカバー2は、部分的に巻き取られて本体ケース3内に収容できる可撓性のシート状であり、塩化ビニル(PVC)等からなる。
図1,2に示す例では、金巾レザー0.5t(PVC:0.3t+基布:0.2t)からなるトノカバー2が用いられている。
【0024】
本体ケース3の両端部にそれぞれ配置されて端部を塞ぐ内ホルダ8は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂からなる板状の部材である。
図1,3,4に示す例では、PBTからなる内ホルダ8がねじ止めによって本体ケース3に固定されている。そして、内ホルダ8の内側面に設けられた軸受け部8aが、巻き取り軸6の端部を回転可能に支持している。内ホルダ8の外側面に設けられたバネ受け部8bは、バネ10の一端を支持している。
【0025】
図1,3,5に示す例の外ホルダ9は、一端が開放し他端が塞がれた短い筒状であり、この筒状部の内部に内ホルダ8が挿入されている。すなわち、外ホルダ9は内ホルダ8を外側から覆っており、内ホルダ8と内ホルダ8が固定されている本体ケース3とによって内側から支持されている。ただし、外ホルダ9は、内ホルダ8および本体ケース3に固定されておらず、内ホルダ8および本体ケース3に対して、本体ケース3の長手方向にスライド可能である。一例としては、
図5(d)に示すように、外ホルダ9に、本体ケース3の長手方向に沿って延びる長孔9aが形成され、本体ケース3に取り付けられたねじ(図示せず)が、長孔9aに挿通させられている。すなわち、本体ケースに取り付けられたねじが長孔9a内に位置し、ねじが長孔9aの一端部と他端部との間で移動する範囲内で、外ホルダ9は内ホルダ8および本体ケース3に対してスライド可能である。このねじのねじ頭が外ホルダ9の外表面の外側に位置し、ねじ頭の外径が長孔9aの幅よりも大きいと、長孔9aおよびねじが、外ホルダ9が内ホルダ8および本体ケース3から外れることを防ぐ脱落防止機構として機能するのでより好ましい。外ホルダ9の、内ホルダと対向する面(筒状部の底面11b)にバネ受け部11cが設けられている。内ホルダ8のバネ受け部8bと外ホルダ9のバネ受け部11cとの間にバネ10等の伸縮部材が配置されている。外ホルダ9には、スライド時に本体ケース3の開口5を狭くすることがないように、開口5と対向可能にスリット9bが設けられる場合がある。
【0026】
外ホルダ9は、
図6に示す硬質部分11と軟質部分12とからなる。一例としては、硬質部分11はポリアセタール(POM)などの硬質樹脂からなり、軟質部分12は、ショアA硬度が85のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)などの軟質樹脂からなる。そして、二色成形によって硬質部分11と軟質部分12とが一体形成されている。硬質部分11は、少なくとも、外ホルダ9の、内ホルダ8や本体ケースと摺擦する可能性がある摺擦部分(主に外ホルダ9の内面)を構成している。軟質部分12は、少なくとも、外ホルダ9の、本体ケース3の長手方向の最外端に位置する端面12aを構成している。軟質部分12は、少なくとも硬質部分11よりも硬度が低いものである。また、軟質部分12は内ホルダ8よりも硬度が低い。外ホルダ9の、内ホルダと対向する面(筒状部の底面11b)は、硬質部分11であることが好ましい。この外ホルダ9の底面11bは、外ホルダ9の端面12aを構成する軟質部分12の、内ホルダ8側の面に、硬質部分11が積層形成されることにより形成される。硬質部分11には、前述したポリアセタールのほか、ナイロン、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などゴム弾性を有さない硬質樹脂が適する。軟質部分12には、前述したTPOのほか、スチレン系熱可塑性エラストマーなどゴム弾性を有する軟質樹脂が適する。
【0027】
また、
図5(a),(b),6に示すように、軟質部分12の内面に係合突起12bが設けられ、硬質部分11の外面には軟質部分12の係合突起12bが嵌合する係合凹部11dが設けられていると、これらの係合により、硬質部分11と軟質部分12とが互いにより強固に固定される。ただし、硬質部分11に係合突起が設けられ軟質部分12に係合凹部が設けられている構成にしてもよい。また、係合突起および係合凹部は必ずしも必須の構成要件ではなく、係合突起および係合凹部を持たない構成にすることも可能である。
【0028】
外ホルダ9の硬質部分11である底面11bに貫通孔11eが設けられ、軟質部分12の一部が、端面12aの内側から底面11bの貫通孔11eを貫通して内側に突出していることが好ましい、この突出部は、硬質部分11からなる底面11b上に部分的に設けられた軟質部分12であり、回し込み部12cと称される。この回し込み部12cは、射出成形の一種である二色成形で外ホルダ9を形成することによって容易に形成できる。
【0029】
外ホルダ9がこのような構成であるため、トノカバー装置1を誤って落下させた場合などに外ホルダ9が床面や地面にぶつかって衝撃が加わったとしても、外ホルダ9の軟質部分12が衝撃を吸収して、内ホルダ8や巻き取り軸6にはあまり大きな衝撃は伝わらない。従って、内ホルダ8に保持された巻き取り軸6が回転可能な状態が保たれ、トノカバー装置1としての機能が損なわれない。特に、回し込み部12cが設けられていると、衝撃によってバネ10が縮んだとしても、内ホルダ8は、硬質部分11に当接しない状態で、軟質部分12である回し込み部12cに当接するので、破損する危険性が非常に小さい。なお、この内ホルダ8の破損防止には、バネの伸縮による衝撃の吸収も大きく寄与している。さらに、回し込み部12cの外径が貫通孔11eの内径よりも大きいと、回し込み部12cは、硬質部分11と軟質部分12の剥離や抜け落ちを防止して係合力を高める作用も発揮する。
【0030】
そして、外ホルダ9の、スライド時に内ホルダ8や本体ケース3と摺擦する摺擦部分は硬質部分11から構成されているので、変形しにくく、傷や跡残りも生じにくい。従って、外ホルダ9の内ホルダ8や本体ケース3に対するスライドは、支障なく安定的に行える。また、外ホルダ9の、内ホルダと対向する面(筒状部の底面11b)は硬質部分11であるため、バネ受け部11cによってバネ10を安定的に保持することができる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態であるトノカバー装置1について説明したが、カバー部材と巻き取り部と内ホルダと外ホルダとを含む構成であれば、シェード装置等の、トノカバー装置1以外のカバー装置においても本発明を採用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 トノカバー装置(カバー装置)
2 トノカバー(カバー部材)
3 本体ケース
4 巻き取り装置
5 開口
6 巻き取り軸
8 内ホルダ
8a 軸受け部
8b バネ受け部
9 外ホルダ
10 バネ(伸縮部材)
11 硬質部分
11a 摺擦部分
11b 底面
11c バネ受け部
12 軟質部分
12a 端面