特許第6363483号(P6363483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363483
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ホブ盤
(51)【国際特許分類】
   B23F 21/16 20060101AFI20180712BHJP
   B23F 5/22 20060101ALI20180712BHJP
   B23F 23/00 20060101ALI20180712BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B23F21/16
   B23F5/22
   B23F23/00
   B23Q11/00 M
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-243632(P2014-243632)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-107345(P2016-107345A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】三菱重工工作機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】有澤 秀彰
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−149112(JP,A)
【文献】 特開昭57−041168(JP,A)
【文献】 特開2011−202563(JP,A)
【文献】 特開2003−266214(JP,A)
【文献】 特開平07−136805(JP,A)
【文献】 特表2002−524278(JP,A)
【文献】 特開2001−047312(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0302098(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 21/16
B23F 5/22
B23F 23/00
B23Q 11/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中空部、及び、外周面から該第1中空部まで貫通する複数の第1貫通孔を有するホブと、
前記第1中空部に嵌入可能であり、第2中空部、及び、前記複数の第1貫通孔に対応し前記第2中空部まで貫通する複数の第2貫通孔を有するアーバとを備え、
前記ホブの前記第1中空部を成す内周面には、軸方向に延伸する溝が形成され、
前記アーバの外周面には、複数の前記第2貫通孔が複数の前記第1貫通孔と互いに位置が合うように、前記溝に嵌合可能な凸部が形成され
さらに、
前記第2中空部と連通する吸引管と、
密閉されつつ前記吸引管と連通し、ワーク加工時に発生する切粉を蓄積可能な容器と、
前記容器と連通し、ワーク加工時に前記容器内から外部へ向け空気を送出するポンプとを備え、
前記第1貫通孔は、前記ホブにおける前記外周面側の一端よりも前記第1中空部側の他端の方が、前記第2中空部に対し前記吸引管が連通する側に位置するように、傾斜する
ことを特徴とするホブ盤。
【請求項2】
前記第2貫通孔は、前記第1貫通孔と同一方向に傾斜する
ことを特徴とする請求項1に記載のホブ盤。
【請求項3】
前記第1貫通孔は、前記一端が前記他端よりも前記ホブの回転方向前方側に位置するように、傾斜する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のホブ盤。
【請求項4】
前記外周面のうち刃溝から刃部のすくい面までの領域において、前記第1貫通孔の前記一端は、少なくともその一部が該すくい面に形成されるようにして配設される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のホブ盤。
【請求項5】
前記ポンプは、前記容器の鉛直方向上面において前記容器と連通する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のホブ盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホブ盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転工具を備える工作機械として、ホブを用いてワークに歯形を創成するホブ盤が広く普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−233648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホブのドライ加工では、エアブローで切粉をホブの周囲に飛散させてしまうため、高熱を有する切粉が装置内に堆積することで、装置内の温度が上昇して熱変位を引き起こしたり、切粉が加工点に噛み込んだりする等、不具合の原因となる。
【0005】
上記特許文献1では、ホブ及び切粉を冷却する冷媒供給用の流路を工具に設ける技術が開示されている。
【0006】
本発明では、切粉を外部に飛散させることなく回収しながら、ワークを加工することにより、装置内の温度上昇を低減し、かつ、切粉が加工点に噛み込む等の不具合の原因を抑制することができる、ホブ盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係るホブ盤は、
第1中空部、及び、外周面から該第1中空部まで貫通する複数の第1貫通孔を有するホブと、
前記第1中空部に嵌入可能であり、第2中空部、及び、前記複数の第1貫通孔に対応し前記第2中空部まで貫通する複数の第2貫通孔を有するアーバとを備え、
前記ホブの前記第1中空部を成す内周面には、軸方向に延伸する溝が形成され、
前記アーバの外周面には、複数の前記第2貫通孔が複数の前記第1貫通孔と互いに位置が合うように、前記溝に嵌合可能な凸部が形成され
さらに、
前記第2中空部と連通する吸引管と、
密閉されつつ前記吸引管と連通し、ワーク加工時に発生する切粉を蓄積可能な容器と、
前記容器と連通し、ワーク加工時に前記容器内から外部へ向け空気を送出するポンプとを備え、
前記第1貫通孔は、前記ホブにおける前記外周面側の一端よりも前記第1中空部側の他端の方が、前記第2中空部に対し前記吸引管が連通する側に位置するように、傾斜する
ことを特徴とする。
上記課題を解決する第2の発明に係るホブ盤は、
上記第1の発明に係るホブ盤において、
前記第2貫通孔は、前記第1貫通孔と同一方向に傾斜する
ことを特徴とする。
上記課題を解決する第3の発明に係るホブ盤は、
上記第1又は2の発明に係るホブ盤において、
前記第1貫通孔は、前記一端が前記他端よりも前記ホブの回転方向前方側に位置するように、傾斜する
ことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第の発明に係るホブ盤は、
上記第1から3のいずれか1つの発明に係るホブ盤において、
前記外周面のうち刃溝から刃部のすくい面までの領域において、前記第1貫通孔の前記一端は、少なくともその一部が該すくい面に形成されるようにして配設される
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第5の発明に係るホブ盤は、
上記第1から4のいずれか1つの発明に係るホブ盤において、
前記ポンプは、前記容器の鉛直方向上面において前記容器と連通する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るホブ盤によれば、切粉を外部に飛散させることなく回収しながら、ワークを加工することにより、装置内の温度上昇を低減し、かつ、切粉が加工点に噛み込む等の不具合の原因を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係るホブ盤の側面図である。
図2】本発明の実施例1に係るホブ及びホブ盤の上面図である。
図3】本発明の実施例1に係るホブ及びホブ盤の一部を拡大した斜視図である。
図4】本発明の実施例1に係るホブの正面断面矢視図である。
図5図4のA方向矢視図である。
図6図4のB‐B断面矢視図である。
図7】本発明の実施例1におけるアーバの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るホブ盤を実施例にて図面を用いて説明する。
【0015】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係るホブ盤の側面図である。また、図2は、本発明の実施例1に係るホブ及びホブ盤の上面図である。さらに、図3は、本発明の実施例1に係るホブ及びホブ盤の一部を拡大した斜視図である。
【0016】
本発明の実施例1に係るホブ盤は、図1〜3に示すように、まず、取付具1、テーブル2、サポートセンタ3、ホブ4(本発明の実施例1に係るホブ)、ホブヘッド5、アーバ6、ノズル7、ベッド8、コラム9、及び、昇降ヘッド10を備え、ワークWを加工する。
【0017】
取付具1は、回転自在なテーブル2に固定されている。また、ワークWは、サポートセンタ3と取付具1とにより把持されている。そして、テーブル2の回転により、取付具1に支持されたワークWが回転するようになっている。
【0018】
ホブ4は、周面に高速度鋼からなる刃部(詳細は後述)を備えるものである。また、ホブヘッド5にはアーバ6が駆動回転自在に設けられ、アーバ6にはホブ4が固定されている(詳細は後述)。これにより、アーバ6の駆動回転によりホブ4が回転するようになっている。なお、図3に示すノズル7からは、ホブ4のワークWへの加工位置へ向けて冷却用空気が供給される。
【0019】
また、ベッド8には、コラム9が水平方向(ワークWに対し接離する方向、図1,2中の左右方向)に移動自在に支持されており、コラム9の前面(ワークWと対向する面、図1,2中の右側の面)には、昇降ヘッド10が鉛直方向に摺動自在に支持されている。
【0020】
ワークWに歯形を創成する場合、サポートセンタ3と取付具1とによりワークWを把持し、ホブヘッド5のアーバ6にホブ4を固定する。テーブル2を回転させることにより、ワークWを回転させると共に、アーバ6を駆動回転させることにより、ホブ4を回転させる。
【0021】
そして、ホブ4及びワークWを回転させた状態で、ホブ4をワークWに切り込ませることで、ワークWの周面がホブ4の刃部22により削り取られて歯形が創成される。
【0022】
ここで、本発明の実施例1に係るホブ盤は、図1〜3に示すように、さらに、吸引管11、容器12、及び、ポンプ13を備える。
【0023】
吸引管11は、一端が、ホブヘッド5を貫通し、アーバ6の第2中空部17(後述)に連通している。また、吸引管11の他端は容器12に繋がっている。さらに、吸引管11は、鋼管であり、各角部においてフレキシブルに可動する可動部11aを有している。
【0024】
容器12は、密閉されており、吸引管11及びポンプ13と連通し、テーブル8と別設されているものである。また、容器12は、ワークWの加工中に発生する切粉Cの量に対して十分な余裕を持った容積を有している。なお、容器12はテーブル8上に載置されているものとしてもよい。
【0025】
ポンプ13は、容器12の鉛直方向上面において容器12と連通し、容器12内の空気を外部へ送出する向きに設置される。
【0026】
ここで、図4は、ホブ4の正面断面矢視図である。また、図5は、図4のA方向矢視図である。さらに、図6は、図4のB‐B断面矢視図である。
【0027】
図4,6に示すように、ホブ4は、第1中空部21を有している。また、第1中空部21は、第1所定位置に軸方向に延伸するキー溝25が配設されている。
【0028】
さらに、ホブ4は、周面から該第1中空部まで貫通する複数の第1貫通孔24を有している。この第1貫通孔24は、特に、一端が、上記周面のうち各刃部22のすくい面22aに配設されるのが好ましい。ただし、図4,5に示すように、第1貫通孔24の上記一端は、刃部22のすくい面22aと刃溝23とに跨がって配設されてもよい。
【0029】
また、ホブ4の第1中空部21には、アーバ6が固定される。ただし、ホブ4とアーバ6は初めから一体のものとしてもよい。
【0030】
ここで、図7は、アーバ6の斜視図である。図7に示すように、アーバ6は、第2中空部27を有している。さらに、アーバ6の周面には、ホブ4の各第1貫通孔24に連通し、第2中空部27まで貫通する、複数の第2貫通孔28が配設される。
【0031】
また、アーバ6は、周面の所定位置にキー26が配設されている。このキー26をホブ4の第1中空部21のキー溝25に嵌合させることで、ホブ4がアーバ6に対し、各第1貫通孔24と各第2貫通孔28との位置を互いに正確に合わせて連通するように、固定されることを可能とする。
【0032】
そして、ポンプ13は、ワークWの加工中に発生する切粉Cを容器12内まで吸引することのできる程度の力を有する。
【0033】
上記構成とすることで、本発明の実施例1に係るホブ盤では、ワークWの加工中に発生する切粉Cを、吸引することができる。なお、各図中の白抜き矢印は、ワークWの加工時にポンプ13を駆動した際の空気の流れを示している。
【0034】
より詳述すると、本発明の実施例1に係るホブ盤は、まず、ポンプ13を駆動した状態でワークWの加工を開始する。このとき、吸引管11は可動部11aを有していることで、加工中のホブ4の動きに追従することができる。すると、ワークWの加工中に発生した切粉Cは、ポンプ13の吸引力によりホブ4に配設された第1貫通孔24へ吸引される。その後、切粉Cは、第1貫通孔24→第2貫通孔28→アーバ6の第2中空部27→吸引管11→容器12の順に移動するように吸引され、容器12に蓄積される。
【0035】
なお、ポンプ13が容器12の鉛直方向上面に配設されていることから、容器12内に堆積した切粉Cがポンプ13により外部へ排出されることはない。
【0036】
また、第1貫通孔24の一端がすくい面22aに配設されることで、ワークWの加工中にホブ4の刃部22により削り取った切粉Cが、直接第1貫通孔24に入るため、回収効率が向上する。
【0037】
ただし、上述した如く、第1貫通孔24の一端が、すくい面22aから刃溝23に跨って配設されている場合であれば、切粉Cが直接第1貫通孔24に入り、同様の効果を得ることができる。
【0038】
さらに、第1貫通孔24は、ホブ4の軸方向に傾斜することで、遠心力による外向きの力を低減することができ、切粉Cをより吸引しやすくなる。
【0039】
特に、第1貫通孔24は、図6に示すように、ホブ4の軸方向において、ホブ4の周面から第1中空部21に傾斜するようにし、加えて、第2貫通孔28も第1貫通孔24の傾斜に対応して傾斜する(不図示)ように配設することで、ポンプ14駆動時の吸引による空気の流れがより良好になる。
【0040】
これにより、本発明の実施例1に係るホブ盤では、切粉Cを外部に飛散させることなく、容器12内に回収しながら、ワークWを加工することにより、装置内の温度上昇を低減することができる。そのため、本発明の実施例1に係るホブ盤は、特に、従来はエアブローで切粉をホブの周囲に飛散させていたドライ加工において、顕著な効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ホブ盤として好適である。
【符号の説明】
【0042】
1 取付具
2 テーブル
3 サポートセンタ
4 ホブ
5 ホブヘッド
6 アーバ
7 ノズル
8 ベッド
9 コラム
11 吸引管
12 容器
13 ポンプ
21 第1中空部
22 刃部
22a すくい面
23 刃溝
24 第1貫通孔
25 キー溝
26 キー
27 第2中空部
28 第2貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7