(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363484
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】冷却ブロワ
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20180712BHJP
B60H 1/00 20060101ALN20180712BHJP
【FI】
B60K11/06
!B60H1/00 102F
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-244933(P2014-244933)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-107703(P2016-107703A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 清恵
(72)【発明者】
【氏名】土生 雅和
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮
(72)【発明者】
【氏名】日高 将人
(72)【発明者】
【氏名】磯田 峰明
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−83882(JP,A)
【文献】
特開2008−221988(JP,A)
【文献】
特開2005−199872(JP,A)
【文献】
実開昭55−2767(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0191556(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0297136(US,A1)
【文献】
特開2000−154926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に連通された吸気口を介して車室から吸気した空気を、車載二次電池へ送る冷却ブロワであって、
車両前後方向と略平行な軸周りに回転するブロワファンと、
前記ブロワファンを挟んで前記吸気口と反対側に設けられ、前記ブロワファンを回転駆動するモータユニットと、
前記ブロワファンおよび前記モータユニットを収容するケースと、
を備え、前記ケースのうち、前記ブロワファンより前記モータユニット寄りの位置、かつ、前記モータユニットより下方の位置に、液体を外部に放出するための排液孔が形成されている、ことを特徴とする冷却ブロワ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に連通された吸気口を介して車室から吸気した空気を、車載二次電池へ送る冷却ブロワに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハイブリッド自動車や電気自動車のように、車両の動力源の一つとして回転電機を搭載した電動車両が知られている。かかる電動車両では、車両走行用の電力を供給する電池および当該電池を強制空冷するための冷却ブロワが搭載される。この電池および冷却ブロワは、リアシートの下方に設置されることが多い。例えば、特許文献1には、電池および冷却ブロワを、リアシートの下方に設置した車両が開示されている。特許文献1において、冷却ブロワは、車室内の空気を吸気口を介して吸気し、その空気を電池に送っている。これにより、電池を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−083882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車室内の空気を取り込む関係上、冷却ブロワの吸気口は車室内に連通している。したがって、車室内に水等の液体をこぼした場合には、当該液体が、吸気口を介して冷却ブロワのケース内に入り込むことがある。そして、そのケース内に入り込む液量によっては、冷却ブロワに搭載されているモータや回路基板等からなるモータユニットが浸水するおそれがあった。
【0005】
かかる問題を避けるためには、ケースの底部に排液孔を設けることが考えられる。しかし、ケースの底部に排液孔を設けた場合、風漏れが生じ、風量低下による冷却性能の低下や、排液孔を風が抜けることによる笛吹き音の発声等が懸念される。
【0006】
そこで、本発明では、冷却ブロワの性能低下を防止しつつ、モータユニットの浸水を防止できる冷却ブロワを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷却ブロワは、車室内に連通された吸気口を介して車室から吸気した空気を、車載二次電池へ送る冷却ブロワであって、
車両前後方向と略平行な軸周りに回転するブロワファンと、前記ブロワファンを挟んで吸気口と反対側に設けられ、前記ブロワファンを回転駆動するモータユニットと、前記ブロワファンおよび前記モータユニットを収容するケースと、を備え、前記ケースのうち、前記ブロワファンより前記モータユニット寄りの位置、かつ、前記モータユニットより下方の位置に、液体を外部に放出するための排液孔が形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブロワファンよりモータユニット寄りの位置、かつ、モータユニットより下方の位置に、排液孔が形成されているため、冷却ブロワの性能低下を防止しつつ、モータユニットの浸水を効果的に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、冷却ブロワ10の設置位置を説明する図である。また、
図2は、冷却ブロワ10の概略断面図である。
【0011】
冷却ブロワ10は、車載の電池パック100を冷却するために搭載される。電池パック100は、ハイブリッド車両や電気自動車において、走行に用いられるエネルギを出力するもので、充電が可能な二次電池である。この電池パック100は、車室内のシート、例えば、リアシート102の下方に形成されたスペースに配置され、フロアパネルに固定されている。なお、本実施例では、リアシート102の下方に電池パック100を配置しているが、電池パック100は、他のスペースに配されてもよい。例えば、電池パック100は、リアシート102の後方に位置するラゲッジスペースに配されてもよい。
【0012】
電池パック100のケース内には、複数の単電池(セル)を直接に接続したセルスタック(図示せず)が1以上収容されている。このセルスタックを冷却するために、リアシート102の下方には、冷却ブロワ10も設けられている。冷却ブロワ10は、樹脂等からなるケース16や、複数の羽根を有するブロワファン12、このブロワファン12を回転駆動させるモータユニット14等を備えている。ブロワファン12は、円筒状に配置された回転軸R方向に長い複数の羽根を有しており、回転軸R回りに回転することで、車室内の空気を吸気する。冷却ブロワ10は、このブロワファン12の回転軸Rが、車両のFR方向と略平行となるように配置されている。
【0013】
モータユニット14は、冷却ブロワ10を回転させるブロワモータと、当該ブロワモータの回転を制御するための回路基板と、を備える。ブロワモータの回転軸Rは、ブロワファン12の回転軸Rと直接、または、変速機を介して間接的に接続されている。図示しないECUは、電池パック100内の温度をモニタリングし、得られた温度に応じて、ブロワモータの駆動を制御する。回路基板は、ECUから送られた制御信号に応じて、ブロワモータに駆動電圧を印加し、ブロワモータを駆動する。
【0014】
冷却ブロワ10のケース16は、樹脂等からなる略円筒形状であり、回転軸R方向の一端面には、吸気口18が形成されている。また、ケース16の周面のうち、電池パック100と対向する位置には、吸気ダクトとの接続口(図示せず)が形成されている。吸気口18は、車室内の空気の吸い込み口であり、略円筒形のケース16のうち、車室に対向する側の軸方向端面に形成されている。この吸気口18は、ブロワファン12とほぼ同じか僅かに小さい径を有した開口であり、吸気通路(図示せず)を介して車室内と連通している。吸気通路は、その一端が車室内に露出し、他端が吸気口18に接続された配管である。ケース16のうち吸気口18と対向する面、すなわち、回転軸R方向の他端面にも開口19が形成されているが、この開口19には、略円筒形のモータユニット14が挿入され、固定されており、当該開口19は、閉塞されている。
【0015】
ケース16の周面のうち、電池パック100と略対向する位置には、吸気ダクトと接続するための接続開口が形成されている。吸気ダクトは、冷却ブロワ10と電池パック100とを接続する配管で、車両幅方向に延びている。吸気ダクトを介して電池パック100に送られた吸気は、電池パック100に設けられた流路を通過する過程で電池セルと熱交換を行い、電池セルを冷却する。
図1において白抜きの矢印は、車室から吸気した空気の流れを示している。冷却後の排気は、排気ダクト(図示せず)に流れ込み、当該排気ダクトを介して車室内に放出される。
【0016】
ところで、これまでの説明で明らかな通り、本実施形態の冷却ブロワ10は、車室内から空気を吸い込む関係上、吸気口18は、車室と連通している。その結果、ユーザが車室内で水等の液体をこぼした場合、当該液体が吸気口18から冷却ブロワ10のケース16内に進入することがある。この液体が、冷却ブロワ10のモータユニット14を構成するブロアモータや回路基板にかかると動作不良が生じ、場合によっては、電池パック100を適切に冷却できなくなるおそれがある。
【0017】
かかる問題を避けるために、車室内と吸気口18とを連通する吸気通路を、吸気口18に近づくにつれ高くなるようにすることも考えられる。このように吸気通路に高低差を持たせることで、液体の冷却ブロワ10への進入を効果的に防止できる。しかし、こうした高低差を設けた場合、その高低差の分だけ余分なスペースが必要になるため、ラゲッジスペースや客室空間の減少につながる。
【0018】
また、冷却ブロワ10の中でもブロワファン12は、液体に濡れても問題ないため、モータユニット14周辺にのみ、防水用のシール部材を設けることも考えられる。しかし、こうした防水シール部材の設置は、製造工程の煩雑化や、製造コストの増加といった新たな問題を招く。
【0019】
そこで、ケース16のうちブロワファン12の真下位置、例えば、
図2におけるA部に液体を排出するための排液孔を設けることも提案されている。かかる構成によれば、比較的低コストで、電子機器の浸水を防止できる。しかしながら、ブロワファン12の真下位置は、送風される風の圧力(送風圧力)が、比較的高い。そのため、ブロワファン12の真下位置に孔を設けた場合、当該孔から液体だけでなく風も抜けてしまう。その結果、電池パック100に送る風量の低下に起因する冷却性能の低下や、風が孔を抜けることにより生じる笛吹き音等の雑音の発生という別の問題が生じる。
【0020】
本実施形態では、こうした問題を避けつつも、ケース16内の電子機器への浸水を防止するために、ケース16のうち、ブロワファン12よりモータユニット14寄りの位置、かつ、モータユニット14より下方の位置に、液体を外部に放出するための排液孔20を設けている。この排液孔20は、
図2に示すように、略円筒形のケース16の背面と周面とのコーナ部近傍に設けられている。より詳細に説明すると、ケース16の背面には、ブロワファン12より背面側位置から突出し、回転軸Rと同心の円筒部16aが設けられている。この円筒部16aの底面に、下方に向かって開口した排液孔20が形成されている。
【0021】
この排液孔20は、ブロワファン12よりもモータユニット寄りの位置に設けられているため、ブロワファン12が回転したとしても、当該排液孔20周辺には、送風圧力は殆ど生じない。その結果、送風される風の一部が、当該排液孔20から抜け出ることが殆どなく、風量低下や雑音発生を効果的に防止できる。
【0022】
その一方で、この排液孔20は、モータユニット14よりも下方に位置している。そのため、ケース16内に液体が進入し、ケース16底部に液体が溜まったとしても、当該液体は、モータユニット14に到達する前に、排液孔20から外部に放出される。その結果、モータユニット14の浸水を効果的に防止できる。
【0023】
以上の説明から明らかな通り、本実施形態によれば、風量低下や雑音発生を防止しつつ、モータユニット14の浸水を効果的に防止できる。また、本実施形態では、ケース16の所定位置に排液孔20を設けただけの構成であり、樹脂成形時の型を変えるだけで容易に実現できる。換言すれば、本実施形態は、別途、部品や製造工程を追加することなく、モータユニット14の浸水を防止でき、製造コストの増加を効果的に防止できる。
【0024】
ところで、
図2に示すように、軸方向位置がブロワファン12とずれていれば、送風圧力は、低くなる。そのため、ブロワファン12よりモータユニット14寄りの位置ではなく、ブロワファン12より吸気口18寄りの位置(
図2における位置B)に排液孔20を設けることも一応考えられる。この場合でも、風量低下や雑音発生は、防止できる。しかし、この場合、車両が坂道において、吸気口18よりもモータユニット14が低くなる姿勢を取った場合に適切に排液できない恐れがある。一方、本実施形態のようにブロワファン12よりモータユニット14寄りの位置に排液孔20を設けた場合、車両が吸気口18よりもモータユニット14が低くなる姿勢を取った場合にも適切に排液できる。また、逆に車両がモータユニット14よりも吸気口18が低くなる姿勢を取った場合には、排液孔20からの排液はできないが、かわりに、吸気口18から排液できるため、モータユニット14の浸水は防止される。
【0025】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、ブロワファン12よりモータユニット14寄りの位置、かつ、モータユニット14より下方の位置に、液体を外部に放出するための排液孔20が形成されるのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、本実施形態では、ケース16の形状を略円筒形としているが、他の形状、例えば直方体形状等でもよい。また、本実施形態では、排液孔20を、ケース16の最底部より一段上に上がった位置に設けているが、排液孔20は、ケース16の最底部に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 冷却ブロワ、12 ブロワファン、14 モータユニット、16 ケース、18 吸気口、20 排液孔、100 電池パック、102 リアシート。